図16は、従来の歯科診療用ユニットにおける診療態様の例を示す説明図であり、特許文献1に開示されたものと類似するものであって、歯科診療用トレーテーブルに対して水平旋回自在に取付けられた歯科用インスツルメントホルダーを備えた歯科診療用ユニットの使用状態の例を示している。図16に示す歯科診療用ユニット500は、患者が着座乃至仰臥して診療を受ける歯科診療台501と、該診療台501の側部にハンガーアーム502によって移動可能に支持された歯科診療用トレーテーブル503と、該トレーテーブル503の側辺部に水平旋回可能に取付けられた歯科用インスツルメントホルダー504と、該トレーテーブル503から導出され作用媒体管路を内装するチューブの先端に装着された複数の歯科用インスツルメント505…とを備えている。これら歯科用インスツルメント505…は、前記歯科用インスツルメントホルダー504に設けられた保持部504a…に取出し自在に保持される。歯科用インスツルメントホルダー504は、該トレーテーブル503に対して垂直支軸504bを介してその軸心周りに回動可能に支持されている。
このような歯科診療用ユニット500において、術者(ドクターまたはナース)Dは、歯科診療台501上の患者の頭部周りを移動して適正な位置取りをし、この位置移動に応じて、前記歯科診療用トレーテーブル503を扱い易い位置に引寄せる。そして、該トレーテーブル503の上に置かれた診療器具や薬品等を使用し、或いは、前記歯科用インスツルメントホルダー504から適宜歯科用インスツルメント505を取出して診療作業を行う。図16は、右利きの術者Dが、所謂9時の位置で診療を行う状態を示している。歯科用インスツルメントホルダー504に設けられる保持部504a…は、これに保持される歯科用インスツルメント505…が術者にとって扱い易い位置に向くよう形成されている。ところで、上述のように、該トレーテーブル503を術者の診療位置に応じて移動させた際、保持部504a…に保持された歯科用インスツルメント505…が歯科診療台501上の患者に向くことがあり、これが各歯科用インスツルメント505の取出しに支障を来たしたり、或いは、患者に圧迫感を与えたりすることにもなる。その為、図16に示すように、該トレーテーブル503を適性位置に位置決めした上で、歯科用インスツルメントホルダー504を前記垂直支軸504bの周りに回動させて、歯科用インスツルメント505…の向きを変えるような調整がなされる。しかし、歯科用インスツルメントホルダー504を回動させることによって、垂直支軸504bから離れた位置の歯科用インスツルメント505が、術者Dから遠くなり、これが診療作業の円滑性を損なう原因になることもある。また、歯科用インスツルメントホルダー504の向きと、術者Dとの相対位置関係によっては、一例として、術者Dが9時の位置で診療を行う際、図16には示されていないが、垂直支軸504bから離れた位置の歯科用インスツルメント505へのアクセスを高めるため、術者Dに近付けるように歯科用インスツルメントホルダー504を回動させるような場合には、当該インスツルメント505の取出しや戻しの際に、隣接する歯科用インスツルメント505と干渉し、その作業の邪魔になることもある。
一方、特許文献2に開示された歯科用インスツルメントホルダーの場合、トレーテーブルに対して、各ホルダー本体が個々に回転軸周りに回動可能に支持されているから、インスツルメントの向きを個々に調整することができ、前記のようにいずれかのインスツルメントが術者から遠くなって診療作業の円滑性が損なわれるようなことが少なくなる。一方、インスツルメントの向きを個々に調整する構成であるが為に、インスツルメント毎に行う適切な向きへの調整作業に煩わしさを伴うことがある。また、その向きによっては隣接するインスツルメント同士が干渉し、インスツルメントの取出しや戻し作業の邪魔になるなどの不都合を生じることがある。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、複数の歯科用インスツルメントが常に術者の作業に適正な位置に向くよう、且つ、インスツルメント同士が干渉せず、取出し及び戻し作業に支障を来たさないよう保持し得ると共に、その調整作業が簡単に行うことができる歯科用インスツルメントホルダーと、これを用いた歯科診療用トレーテーブル及び歯科診療用ユニットを提供することを目的とする。
第1の発明に係る歯科用インスツルメントホルダーは、複数のインスツルメント保持部材を備えた歯科用インスツルメントホルダーであって、前記複数のインスツルメント保持部材の夫々が、ホルダー基体に対して、該複数のインスツルメント保持部材毎に設けられる支軸を介し、該支軸の夫々の軸心周りに回動可能且つ並列状態で支持されると共に、連動部材を介して相互に連結され、前記連動部材の作動によって、前記複数のインスツルメント保持部材が、夫々の前記軸心周りの回動を伴い前記インスツルメント保持部材の並列方向に一斉にスイング揺動し得るよう構成されていることを特徴とする。
本発明において、前記連動部材に関与しない非連動のインスツルメント保持部材を更に含んでいても良い。また、前記複数のインスツルメント保持部材の前記連動部材に対する連結部分のうち少なくとも1つには、連結解除手段が介在されていても良い。
また、本発明において、前記連動部材に更に差動機構が連接され、前記ホルダー基体に対して支軸を介し該支軸の軸心周りに回動可能に支持されると共に前記差動機構に連結されたインスツルメント保持部材を更に含み、前記連動部材の作動によって、前記差動機構に連結されたインスツルメント保持部材を他のインスツルメント保持部材とは異なったスイング揺動をするよう構成しても良い。
また、本発明において、前記インスツルメント保持部材の前記ホルダー基体に対する回動可能な支持を、支持部材を介して行うようにし、当該インスツルメント保持部材を前記支持部材に上下傾動自在に取付けるようにしても良い。
また、本発明において、前記連動部材をリンク部材からなるものとし、前記ホルダー基体、前記複数のインスツルメント保持部材及び当該リンク部材によって、平行リンク機構を構成するようにしても良い。或いは、前記支軸を前記インスツルメント保持部材に固定し、前記連動部材を、前記支軸の周りに掛け渡された無端の索状伝動部材によって構成しても良い。この無端の索状伝動部材としては、タイミングベルトやチェーン等が採用される。
第2の発明に係る歯科診療用トレーテーブルは、歯科診療台の側部に移動自在に付設される歯科診療用トレーテーブルであって、前記いずれかの歯科用インスツルメントホルダーが、トレーテーブル本体の一側辺部に設けられていることを特徴とする。
第3の発明に係る歯科診療用ユニットは、歯科診療台と、該歯科診療台の側部に移動自在に付設された歯科診療用トレーテーブルと、複数の歯科診療用インスツルメントとを含む歯科診療用ユニットであって、前記歯科診療用トレーテーブルが、前記いずれかの歯科用インスツルメントホルダーを備え、前記歯科診療用インスツルメントが、該歯科用インスツルメントホルダーの前記インスツルメント保持部材に対して取出し自在に保持可能とされていることを特徴とする。
第1乃至第3の発明によれば、複数のインスツルメント保持部材のそれぞれに対して、歯科用インスツルメントが取出自在に保持可能とされているから、術者は診療態様等に応じた歯科用インスツルメントを適宜取出して診療等の作業を実施することができる。そして、複数のインスツルメント保持部材が連動部材を介して相互に連結され、該連動部材の作動によって、前記複数のインスツルメント保持部材が、夫々の前記支軸周りの回動を伴い一斉にスイング揺動し得るよう構成されているから、ホルダー基体を静止させた状態で、即ち、歯科診療用トレーテーブルを静止させた状態で、複数のインスツルメント保持部材の相互の位置関係を維持して、これらに保持される歯科用インスツルメントの向きを適正に調整することができる。従って、歯科用インスツルメントの向きを調整したことによって、一部のインスツルメントが術者から遠ざかったり、扱い難い位置に変位したり、更には取り出しの際に術者にストレスがかかったりするようなことがない。また、インスツルメント保持部材毎に方向調整するというような煩雑さも伴わない。特に、歯科診療の場合、術者は歯科診療台に仰臥する患者の頭部周りを、所謂3時の位置、12時の位置、更には9時の位置間で移動し、その都度歯科診療用トレーテーブルを術者の扱い易い位置に引き寄せて診療作業を行うが、本発明のように、前記歯科用インスツルメントホルダーが該トレーテーブルに設けられていると、該トレーテーブルと各歯科用インスツルメントホルダーとの相対位置は、術者との関係で常に適正な位置に維持され、患者等との関係で、歯科用インスツルメントホルダーに保持されたインスツルメントの向きを調整する際、これらが一斉に調整されることになり、極めて合理的である。しかも、歯科用インスツルメントの向きを簡易に調整することができるから、調整によって診療作業の流れが妨げられることもない。更に、術者の利手に関係なく適正な位置への調整が可能とされるから、歯科用インスツルメントホルダー及び歯科診療用トレーテーブルの製造の合理化が図られる。
前記連動部材に関与しない非連動のインスツルメント保持部材を更に含んでいるようにすれば、インスツルメントのグリップ部の形状的特性や術者の把持癖等によっては、インスツルメントの向きが変動しない方が扱い易い場合があり、このような場合に、この非連動のインスツルメント保持部材を選択することができ便利である。また、前記インスツルメント保持部材の前記連動部材に対する連結部分に、連結解除手段が介在されているものとすれば、前記のようなグリップ部の特性や術者の把持癖等に応じて、一部のインスツルメント保持部材の連動部材との連結を解除して非連動の状態で使用することができたり、また連動させる必要があるときは連結の状態へと切換えたりできるので、これらを適宜組合せることによって、多様な使用態様に対応させることができる。
歯科用インスツルメントのグリップ部の形状的特性によっては、取扱い性の点から、その適正な向きが他のインスツルメントとは異なることがあり、このような場合、前記連動部材に更に差動機構を連接し、この前記差動機構に連結されたインスツルメント保持部材を他のインスツルメント保持部材とは異なったスイング揺動をするよう構成すれば、他のインスツルメント保持部材の揺動範囲とは異なる揺動範囲で方向変化を行うことができるので、このような特性にも対応させることができる。
前記インスツルメント保持部材の前記ホルダー基体に対する回動可能な支持を、支持部材を介して行うようにし、当該インスツルメント保持部材を前記支持部材に上下傾動自在に取付けるようにした場合、インスツルメント保持部材の上下傾動角度を適宜調整することにより、インスツルメントの横向き角度だけでなく、上下の傾き角度も、取扱い性を勘案して適宜調整することができる。
前記連動部材をリンク部材からなるものとし、前記ホルダー基体、前記複数のインスツルメント保持部材及び当該リンク部材によって、平行リンク機構を構成するようにした場合、前記のようなインスツルメント保持部材を一斉にスイング揺動させる機構を簡易に構成することができる。また、前記連動部材を、前記無端の索状伝動部材によって構成した場合も、同様に、一斉にスイング揺動させる機構を簡易に構成することができる。
以下、本発明の最良の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明の歯科診療用ユニットの一実施形態を示す概念的全体斜視図、図2は同歯科診療用ユニットを構成する本発明の歯科診療用トレーテーブルの平面図、図3は同歯科診療用トレーテーブルに組付けられる本発明の歯科用インスツルメントホルダーの連動機構部を含む平面図、図4はインスツルメント保持部材の支持構造を示す図3のX−X線矢視断面図、図5は図4におけるY線方向から見た図、図6は同支持構造の別態様を示す分解斜視図、図7(a)(b)(c)は同歯科用インスツルメントホルダーにおける差動機構を含む平行リンク機構部分の動作状態を示す平面図、図8(a)(b)は同歯科診療用ユニットにおける診療態様の例を示す説明図、図9(a)(b)は歯科用インスツルメントホルダーにおける差動機構及び平行リンク機構部分の更に他の実施形態の動作状態を示す平面図、図10(a)(b)は歯科用インスツルメントホルダーにおける差動機構を含む平行リンク機構部分の他の実施形態の動作状態を示す平面図、図11は歯科用インスツルメントホルダーの更に他の実施形態を示す平面図、図12(a)(b)は歯科用インスツルメントホルダーの更に他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。図13は図12の実施形態におけるインスツルメント保持部材の支持構造を示す分解斜視図、図14(a)(b)(c)は連結解除手段を備えたインスツルメント保持部材の一例を示す別角度から見た斜視図であり、(b)(c)は一部を切欠いた状態を示している。図15(a)(b)は同連結解除手段の使用状態を示し、(a)は歯科用インスツルメントホルダーの機構部を前面側から見た斜視図、(b)は同背面側から見た斜視図を示している。
図1に示す歯科診療用ユニットAは、歯科診療台1と、該歯科診療台1の側部に配設された歯科診療用トレーテーブル(以下、トレーテーブルと略称する)2と、術者が着座する術者用椅子3とよりなるが、不図示の歯科診療に必要な他の備品、装置等が歯科診療台1の近傍に配設されることは言うまでもない。歯科診療台1は、基台1aに対して上下昇降自在な座板シート1bと、該座板シート1bの一端に起伏自在に連結された背板シート1cと、該背板シート1cの上端に傾動自在に取付けられたヘッドレスト1dとよりなり、仰臥診療及び座位診療が可能とされている。該歯科診療台1の側部には、トレーテーブル2が、歯科診療台1から張出すよう装備されたハンガーアーム2aを介して、歯科診療台1の側部に沿って位置移動可能に設置され、且つ、該ハンガーアーム2aの先端の垂直支軸2b(図2参照)周りに水平回動可能に支持されている。ハンガーアーム2aは、床面や壁面に取付けられているものであっても良い。また、トレーテーブル2は、キャスター(不図示)付きの移動テーブルであっても良く、術者用椅子3に着座した術者の手が届く範囲に移動可能とされており、その上にピンセット等の各種診療器具や薬品等が置かれると共に歯牙充填物等の調製作業等に供される。
前記トレーテーブル2は、図1及び図2に示すように、トレーテーブル本体2Aと、その一側部下面に設けられた歯科用インスツルメントホルダー4とよりなる。このトレーテーブル本体2Aの下面からは、先端に歯科診療用インスツルメント(以下、インスツルメントと略称する)5〜8が接続されると共に該インスツルメント5〜8の作用媒体用管路(不図示)を内装するチューブ5a〜8aが導出されている。図示のインスツルメント5〜8は、椅子3に着座する術者(ドクター)によって主に使用されるもので、マイクロモータハンドピース5、エアタービンハンドピース6,7、スリーウェイシリンジ8からなり、各チューブ5a〜8aの先端に着脱自在に接続されている。これらインスツルメント5〜8は、非使用時には図1に示すように、歯科用インスツルメントホルダー4に保持される。上記各作用媒体用管路は、歯科診療台1の近傍に設置された不図示の作用媒体供給元或いは排出先に接続されている。歯科診療用インスツルメントとしては、前記以外に、バキュームシリンジ、スケーラ、更には口腔内撮影器等が挙げられ、これらも適宜歯科用インスツルメントホルダー4に取出し自在に保持される。
歯科用インスツルメントホルダー(以下、インスツルメントホルダーと略称する)4は、前記トレーテーブル本体2Aの板金基体(不図示)に、ねじ等により固設される板金製のホルダー基体40(図3参照)と、該ホルダー基体40に対して、支軸9a〜13aを介し該支軸9a〜13aの軸心周りに回動可能に支持された5個のインスツルメント保持部材9〜13と、各インスツルメント保持部材9〜13に着脱自在に挿着されたアタッチメント14〜18と、これらインスツルメント保持部材9〜13を後記するようにスイング揺動させる連動部材19及び差動機構20,21とより構成されている。5個のインスツルメント保持部材9〜13のうち、3個のインスツルメント保持部材10〜12は、図3に示すように、いずれもが同方向に向いた並列状態で、ホルダー基体40の先端に該ホルダー基体40の一部をなすようねじ40aにより固着された固定側リンク部材41に、前記支軸10a〜12aを介して各軸心周りに回動可能に支持されている。連動部材19は可動側リンク部材19Aとされ、前記3個のインスツルメント保持部材10〜12は、各支軸10a〜12aより夫々の長手方向に沿った等しい位置において、可動側リンク部材19Aにピン結合(10b〜12b)されている。従って、本実施形態においては、前記固定側リンク部材41、可動側リンク部材19A、及び固定側リンク部材41と可動側リンク部材19Aとに働く作用を連携共有させる連結部材(本実施例では3個のインスツルメント保持部材10〜12が相当)、によって平行リンク機構が構成される。また、両側の2個のインスツルメント保持部材9,13は、前記インスツルメント保持部材10〜12より後方に控えた位置において、支軸9a,13aを介し、直接ホルダー基体40に各軸心周りに回動可能に支持されている。そして、前記可動側リンク部材19Aの両側には、前記差動機構20,21が連接され、2個のインスツルメント保持部材9,13は、各支軸9a,13aより夫々の長手方向に沿った等しい位置において、差動機構20,21にピン結合(9b,13b)を以って連関している。平行リンク機構190及び差動機構20,21の詳細については後記する。
3個のインスツルメント保持部材10〜12の前記固定側リンク部材41及び可動側リンク部材19Aに対する支持構造について、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は、インスツルメント保持部材11を例示しているが、他のインスツルメント保持部材10,12も同様に構成される。当該インスツルメント保持部材11は、合成樹脂の成型体からなり、下向きに開環した筒状体からなる。該インスツルメント保持部材11の上部には取付ボス部110が形成され、このボス部110において、ボルト(支軸)11a、11bを介して前記固定側リンク部材41及び可動側リンク部材19Aにピン結合されている。即ち、ボルト11aは、カラー11cに挿通された状態で、樹脂製ワッシャ11d、固定側リンク部材41、樹脂製ワッシャ11e及びスプリングワッシャ(皿ばね、ウエーブワッシャ等も可)11fを貫通し、前記ボス部110の上面に形成された雌ねじ部110aに螺合される。この螺合は、前記スプリングワッシャ11fの圧縮を伴い、前記カラー11cで規制されるまでなされ、これにより、固定側リンク部材41と保持部材11との螺合結合がなされる。この螺合結合状態では、カラー11cにより、ボルト(支軸)11aが円滑に回動する効果や、部材同士の接触・摩擦による鋼材の磨耗を低減する効果に加え、スプリングワッシャ11fの過度の圧縮が阻止され、固定側リンク部材41と保持部材11との間には、スプリングワッシャ11fの圧縮反力によるボルト11aの長手方向に沿ったフリクションが付与される。従って、固定側リンク部材41とインスツルメント保持部材11とは、人手によって操作し得る程度の抵抗を以って、ボルト11aの軸心周りに相互に回動可能とされる。
また、前記ボス部110における前記ボルト11aの螺合位置からインスツルメント保持部材11の長手方向に沿って所定距離離れた位置で、ボルト11bが、カラー11gに挿通された状態で、樹脂製ワッシャ11h、可動側リンク部材19A、樹脂製ワッシャ11i及びスプリングワッシャ(皿ばね、ウエーブワッシャ等も可)11jを貫通し、前記ボス部110の上面に形成された雌ねじ部110bに螺合される。この螺合は、ボルト11aの場合と同様、前記スプリングワッシャ11jの圧縮を伴い、前記カラー11gで規制されるまでなされ、これにより、可動側リンク部材19Aとインスツルメント保持部材11との螺合結合がなされる。この螺合結合状態では、カラー11gにより、ボルト(支軸)11bが円滑に回動する効果や、部材同士の接触・摩擦による鋼材の磨耗を低減する効果に加え、スプリングワッシャ11jの過度の圧縮が阻止され、可動側リンク部材19Aとインスツルメント保持部材11との間には、スプリングワッシャ11jの圧縮反力によるボルト11bの長手方向に沿ったフリクションが付与される。従って、可動側リンク部材19Aとインスツルメント保持部材11とは、人手によって操作し得る程度の抵抗を以って、ボルト11bの軸心周りに相互に回動可能とされる。尚、本実施形態における可動側リンク部材19Aとインスツルメント保持部材11との螺合結合の方法においては、樹脂製ワッシャ11i及びスプリングワッシャ11jは、強固な螺合を実現できる限りにおいて無くてもよい。また、樹脂製ワッシャ11hは、可動側リンク部材19Aによるボス部110の変形を防止する効果があるので設けられていることが望ましい。
他の2個のインスツルメント保持部材10,12においても、ボルト10a,12aと固定側リンク部材41、及びボルト10b,12bと可動側リンク部材19Aが同様にピン結合されている。そして、ボルト10a,11a,12aを結ぶ線分とボルト10b,11b,12bを結ぶ線分とが平行とされ、且つボルト10a,10bを結ぶ線分、ボルト11a,11bを結ぶ線分及びボルト12a,12bを結ぶ線分が互いに平行とされ、これによって平行リンク機構190が構成される。即ち、インスツルメント保持部材10〜12のいずれかに、前記各支軸(ボルト10a,11a,12a)の軸心周りに前記フリクション力を上回る力が作用すると、可動側リンク部材19Aが左右に揺動変位し、これに伴い前記ピン結合部分(ボルト10b,11b,12b)が連動し、インスツルメント保持部材10〜12が、夫々が前記ボルト10a,11a,12aの軸心周りの回動を伴って、一斉にスイング揺動する。このスイング揺動の機構の詳細については、図7を参照して後述する。
インスツルメント保持部材11は、前述のように下向きに開環する開環部111aを有する開環円筒状体からなり、その内筒部111には、合成樹脂の成型体からなるアタッチメント16が着脱自在に挿着可能とされている。該アタッチメント16は、インスツルメント保持部材11の開環部111aに整合する開環部161aを有する開環円筒状体からなり、その内筒部161に、インスツルメント(エアタービンハンドピース)6を挿通保持し得るよう構成されている。即ち、内筒部161の内径は、該インスツルメント6のグリップ部60の外径よりやや大とされ、該グリップ部60の外径は前記開環部161aの開環幅よりやや大とされている。また、開環部161aの開環幅は、インスツルメント6に接続されるチューブ6aの外径より大とされ、これにより、図1に示すようにトレーテーブル2の下面より導出されたチューブ6aが、この開環部161aに挿通された状態で、アタッチメント16にインスツルメント6が保持されると共に、このアタッチメント16からインスツルメント6の取出しが可能とされる。アタッチメント16の先側下部は、前方に突出するよう形成され、この突出部分の開環部161aに架設された軸162aに鼓形状のガイドローラ162が回転可能に支持されている。このガイドローラ162は、歯科診療用インスツルメント6が取出され、該インスツルメント6に接続されるチューブ6aが繰出された際に、チューブ6aがアタッチメント16から外れないように保持する為のものである。これによって、該インスツルメント6をアタッチメント16の内筒部161に戻す際の操作も円滑になされる。
図例では、ガイドローラ162を軸162aと共にアタッチメント16の先側下部に形成された横向き収容穴163に収容可能とされており、診療態様によって、ガイドローラ162がインスツルメント6の使用時の円滑性を欠くことになる場合は、軸162aと一体に形成されたレバー162bの操作によりガイドローラ162を収容穴163内に収容することができる。他のアタッチメント14,15,17,18もアタッチメント16と同様に構成されるが、これらアタッチメント14〜18は、各種インスツルメントの形状的特性に応じて内筒部の径等が設定され、使用者の使い勝手によって、前記インスツルメント保持部材9〜13に適宜選択的に挿着される。またこの他にも、図には例示していないが、シャーシ等のアダプター部材を内筒部161の奥部に設けることで内筒部161の長さが設定され、使用者の使い勝手によって、前記インスツルメント保持部材9〜13に適宜選択的に挿着される。
前記可動側リンク部材19Aの両端には、図3に示すように、前記差動機構20,21を構成する連杆20A,21Aが鉤型に延設されている。該連杆20A,21Aに形成された異形長孔20a,21aと、ホルダー基体40に形成された円弧溝40b、40c(図7も参照)とに、前記インスツルメント保持部材9,13の可動側ピン結合部を構成するボルト9b,13bが相対摺接可能に挿通され、これによって差動機構20,21が構成される。このように、各ボルト9b,13bが、夫々異形長孔20a,21a及び円弧溝40b、40cに相対摺接可能に挿通されていることにより、可動側リンク部材19Aの左右の変位の際、異形長孔20a,21a及び円弧溝40b、40cの合成された規制作用により、各ボルト9b,13bが可動側リンク部材19Aの動きと直接連動せず、動作ストローク等が異なった挙動をする。従って、可動側リンク部材19Aが左右変位動作する際、このボルト9b,13bが結合されるインスツルメント保持部材9,13は、前記3個のインスツルメント保持部材10〜12とは、スイング角度の異なる動作パターンでスイング揺動する。この差動機構20,21によるインスツルメント保持部材9,13のスイング揺動の機構の詳細については、図7を参照して後述する。
前記インスツルメント保持部材9,13の取付構造について、図6を参照して説明する。図6は、インスツルメント保持部材9を例示しているが、インスツルメント保持部材13は、向きが左右逆になるだけで同様に構成される。図6において、ホルダー基体40(図3参照)の下面に取付ブロック22が配され、該取付ブロック22の上面には、2個の雌ねじ穴22a,22bが形成されている。図4に示すボルト11aの螺合構成と同様に、カラー(不図示)に挿通されたボルト9aが、樹脂製ワッシャ(不図示)、ホルダー基体40、樹脂製ワッシャ(不図示)及びスプリングワッシャ(不図示、皿ばね、ウエーブワッシャ等も可)を貫通して、一方の雌ねじ穴22aに螺合される。この螺合状態では、取付ブロック22が、ボルト9aの長手方向に沿ったフリクションが付与された状態で、ホルダー基体40に対してボルト9aの軸心周りに回動可能に支持される。また、他方の雌ねじ穴22bにはボルト9bが螺合されるが、この螺合は、ボルト9bを、カラー(不図示)に挿通した状態で前記連杆20Aの異形長孔20a及び円弧溝40bに挿通し、適宜樹脂製ワッシャ及びスプリングワッシャ等のフリクション付与部材を介してなされる。この螺合状態では、ボルト9bの長手方向に沿ったフリクションが付与された状態で、且つ、ボルト9bが異形長孔20a及び円弧溝40bによって規制された範囲での移動が許容された状態で、ホルダー基体40及び連杆20Aに対し、取付ブロック22が支持される。
前記取付ブロック22の側面には、横向きの雌ねじ孔22cが設けられ、該雌ねじ孔22cには倒L形のブラケット23がボルト24によって取付けられる。このブラケット23と前記取付ブロック22とにより、インスツルメント保持部材9の支持部材が構成される。即ち、ボルト24がカラー24dに挿通された状態で、樹脂製ワッシャ24a、ブラケット23の縦向片23a、樹脂製ワッシャ24b及び皿ばね(スプリングワッシャ、ウエーブワッシャ等も可)24cを貫通し、前記雌ねじ孔22cに螺合される。この螺合状態では、圧縮された皿ばね24cによってボルト24の長手方向に沿ってフリクションが付与された状態で、且つ、カラー24dによりブラケット23が、ボルト24の周りの回動の円滑性が確保されると共に、過度の螺合が阻止された状態で取付ブロック22に結合される。そして、ブラケット23の横向片23bには、インスツルメント保持部材9が、2本のボルト25,26の螺合によって、その下面に吊持されるよう取付支持される。前記皿ばね24cによるフリクション力は、インスツルメント保持部材9を手持ちしてボルト24の軸心周りに捻回操作させた際に上下に傾動し、手離した時にはその位置に維持されるように設定される。従って、使用者の使い勝手に応じてインスツルメント保持部材9の上下の傾き角度を任意に調整することができる。取付ブロック22の側面には規制ピン22dが突設され、ブラケット23の縦向片23aには、前記ボルト24の軸心を曲率中心とする円弧溝23cが形成され、ボルト24による前記結合状態では、規制ピン22dが該円弧溝23cに挿通され、この円弧溝23cと規制ピン22dとによって、インスツルメント保持部材9の上下傾動角度が規制される。他方のインスツルメント保持部材13も、同様のブラケット27に2本のボルト28,29によって取付けられ(図3参照)、取付ブロック30(図3参照)に対し、上下傾動可能に支持される。取付ブロック30と、ボルト13aを介したホルダー基体40に対する支持関係、及び、円弧溝40c及び異形長孔21aに挿通されたボルト13bを介したホルダー基体40及び連杆21Aに対する支持関係は、前述の取付ブロック22の支持関係と同様である。図3では、両インスツルメント保持部材9,13が、夫々の上下傾斜角度が異なった状態で支持されていることを示している。ボルト24による取付ブロック22に対する螺合は、ダブルナットによってなすことも可能で、これにより長期の使用での緩みを防止することができる。
次に、前記平行リンク機構190及び差動機構20,21によるインスツルメント保持部材9〜13のスイング揺動の機構を図7(a)(b)(c)を参照して説明する。図において各インスツルメント保持部材9〜13を便宜上1点鎖線で示し、この1点鎖線の向きは、各インスツルメント保持部材9〜13の長手方向に沿っていることを表している。図7(a)は、各インスツルメント保持部材9〜13の先側が左斜め方向を向いており、中央の3個のインスツルメント保持部材10〜12は、同じ大きな傾き角度で左方向に向いている。また、両側の2個のインスツルメント保持部材9,13は、同じ小さな傾き角度で左方向に向いている。インスツルメント保持部材9,13における固定側ボルト9a,13aと可動側ボルト9b、13bとの距離は、インスツルメント保持部材10〜12における同ボルト間距離と等しく設定されている。差動機構20,21を構成する円弧溝40b,40cは、前記ボルト9a,13aの軸心を曲率中心とする円弧形状であり、この円弧角がボルト9b,13bのボルト9a,13aの軸心を支点とした回動範囲とされる。このボルト9b,13bの回動範囲は、前記インスツルメント保持部材10〜12のボルト10b〜12bの、ボルト10a〜12aの軸心を支点とした回動範囲より小さく設定されている。従って、可動側リンク部材19Aと一体の連杆20A,21Aには、ボルト9b,13bに作用するも、円弧溝40b,40cにより規制される前記回動範囲内での回動を許容するよう、図示のような直状部と円弧部が組合わさった略レ(逆レ)形状の異形長孔20a,21aが形成されている。
図7(a)に示す状態は、各インスツルメント保持部材9〜13がいずれも左前方への傾き角度が最大の状態であることを示している。ホルダー基体40には、可動側リンク部材19Aの揺動範囲を規制する円弧溝40dが形成され、可動側リンク部材19Aには、該円弧溝40dに挿通されるガイドピン19aが固設されている。円弧溝40dの曲率半径は前記ボルト間距離と等しくされ、また、円弧溝40dの円弧長が可動側リンク部材19Aの揺動可動範囲を規制する。図7(a)ではガイドピン19aが円弧溝40dの右端に位置している。そして、右端のインスツルメント保持部材9におけるボルト9bは、円弧溝40bの右端で異形長孔20aの直状部の後端に位置し、左端のインスツルメント保持部材13におけるボルト13bは、円弧溝40cの右端で異形長孔21aの円弧部の左端に位置に位置している。この状態で、前記インスツルメント保持部材10〜12に対してその先側を右側に向くようスイング揺動させるような外力が作用すると、前記フリクション力に抗し、可動側リンク部材19Aを介して3個のインスツルメント保持部材10〜12が、各ボルト10a〜12aの軸心周りに反時計方向に一斉に回動し、図7(b)に示すような中立位置に達する。
この移行過程では、前記円弧溝40b,40c内の右端にあるインスツルメント保持部材9,13のボルト9b,13bは、異形長孔20a,21aの作用を受けて円弧溝40b,40c内を左方向に移行するが、異形長孔20a,21a内を相対摺接するから、連杆20A,21A(可動側リンク部材19A)の揺動速度より遅い速度で移行し、3個のインスツルメント保持部材10〜12が中立位置に達した時には、右端のインスツルメント保持部材9は、ボルト9bが略レ形状の異形長孔20aの直状部と円弧部の接点部分を通過する際に、前記異形長孔20aと円弧溝40bとが重畳する空隙及び略レ形状の異形長孔20aの壁面からボルト9bが受ける摺接の圧力の組み合わせによって、中立位置に達する。一方、左端のインスツルメント保持部材13は、この実施例の構成では、3個のインスツルメント保持部材10〜12が中立位置に達した時には、ボルト13bが略逆レ形状の異形長孔21aの円弧部と直状部の接点部分に差し掛かるような略逆レ形状の異形長孔21aが加工されている。従って、ボルト13bは、前記異形長孔21aと円弧溝40cとが重畳する空隙及び略逆レ形状の異形長孔21aの壁面から摺接の圧力を受けないため、(a)の位置を維持したまま、インスツルメント保持部材13の先端は左方向を向いたままである。3個のインスツルメント保持部材10〜12が更に前記の回動を進めると、このインスツルメント保持部材13の先端は右方向への回動を始め、(c)の状態へと移行していく。本実施例では異形長孔20a,21aを略レ(逆レ)形状としているが、この形状の他にも、逆円弧形状、凹型形状や、図9の実施例のような逆二等辺三角形状等にしても、前記のような差動機構の実現は可能である。孔と溝の形状の組合せによっては、差動のタイミングや差動機構を設けた保持部材の回動領域を変えることができるので、使用者の使い勝手に応じて、孔と溝の形状の組み合わせが差動機構においては適切な差動がなされるとともに、インスツルメント保持部材が充分な回動範囲を有するよう構成されることが望ましい。
図7(b)に示す状態から、更に、前記インスツルメント保持部材10〜12に対してその先側を右側に向くようスイング揺動させるような外力が作用すると、前記と同様に一斉に回動し、図7(c)に示すように前記インスツルメント保持部材10〜12の先側が右斜め前方に向き、前記ガイドピン19aが円弧溝40dの左端に達すると共に、両端のインスツルメント保持部材9,13のボルト9b,13bが円弧溝40b,40cの左端に至る。この状態が、各インスツルメント保持部材9〜13の右側前方への傾き角度が最大の状態とされる。この状態に移行する過程においても、インスツルメント保持部材9,13のボルト9b,13bの移行速度が遅く、図7(c)に示す最大右側傾き位置でも、前記インスツルメント保持部材10〜12の傾き角度より小さい状態とされる。このように、両端のインスツルメント保持部材9,13のスイング揺動の態様を中央のインスツルメント保持部材10〜12のそれと異ならせたのは、保持されるインスツルメントの種類や形状的特性(特にグリップ部の形状)によっては、その向きの変化が左程使い勝手に影響しないものがあり、このようなインスツルメントの場合は、両端のインスツルメント保持部材9,13のいずれかに保持させるようにすれば、総合的なインスツルメントの取扱性が向上する。また、両端にこのようなスイング揺動の態様が異なるインスツルメント保持部材9,13を配したのは、右利きの術者或いは左利きの術者に応じて適宜使い分けができるようにすることを意図したからである。
尚、平行リンク機構190を構成する可動側リンク部材19Aと、固定側リンク部材41との位置関係は、図示の例とは前後逆であっても良い。また、インスツルメント保持部材として、固定側リンク部材41に対して回動不能に固着する方法によって、可動側リンク部材19Aに関与しない非連動のインスツルメント保持部材を含ませても良い。取扱い上方向性が問題とならないインスツルメントの場合、このインスツルメント保持部材に保持させることにより、前記と同様、総合的な歯科用インスツルメントの取扱性が向上する。
図8(a)(b)は、前記のような構成のインスツルメントホルダー4及びトレーテーブル2を備えた歯科診療用ユニットAにおける診療態様の例を説明する図であり、図は右利きの術者Dが所謂12時の位置(a)乃至9時の位置(b)間で診療作業を行う場合の状態を示している。図示のように術者Dは患者の頭部周りを適宜移動しながら歯科診療を行う。そして、移動の都度、図示のようにトレーテーブル2を扱い易い位置に引寄せて診療を行うが、トレーテーブル2に付設されたインスツルメントホルダー4もその位置が定まる。しかし、該インスツルメントホルダー4に保持されているインスツルメント5〜8は、その向きが必ずしも術者Dの取扱性に適しているとは限らず、また診療台1上の患者の腕等に向いているようなこともある。このような場合、術者Dは、インスツルメント保持部材9〜13のいずれかを把持し、前記支軸の軸心周りの回動操作をすれば、インスツルメント保持部材9〜13が一斉にスイング揺動し、保持された歯科診療用インスツルメント5〜8を取扱い等に適した方向に向けることができる。この場合、各インスツルメント保持部材9〜13はフリクション力が付与された状態で支持されているから、回動操作をやめるとその位置に静止させることができる。また、一斉にスイング揺動するから、隣合うインスツルメント同士が互いに干渉しあうことがない。左利きの術者の場合、3時の位置乃至12時の位置で診療作業を行うことが多いが、この場合も、術者は該トレーテーブル2を扱い易い位置に引寄せ、その都度インスツルメント保持部材9〜13の向きを、例えば図7(b)乃至(c)の位置になるよう調整することにより、簡易にその取扱性の向上を図ることができる。
図9(a)(b)は、ホルダー基体401と固定側リンク部材411が一体である変形例を示す。即ち、平行リンク機構190及び差動機構20,21の作用効果は前記と同様であるが、図7の例ではホルダー基体40の先側に該ホルダー基体40の一部をなすようねじ40aにより固着されていた別部材の固定側リンク部材41が、図9の構成ではホルダー基体401と同一の部材で構成されている。つまり、ホルダー基体401と固定側リンク部材411とを単一部材によって平行リンク機構190の一部をなすよう構成した点で異なる。加えて本構成においては、ホルダー基体401にスイング揺動用穿孔SHを形成して、インスツルメント保持部材10〜12が前記のようなスイング揺動を行える構成にする。インスツルメント保持部材10〜12がスイング揺動するとき、該保持部材と固定側リンク部材411とのピン結合の軸心は移動を伴わない一方で、該保持部材と可動側リンク部材19Aとのピン結合の軸心は回動と同時にスイング揺動をなす。本実施例の場合、インスツルメント保持部材10〜12と可動側リンク部材19Aとのピン結合の軸心であるボルト10b〜12bの移動軌跡に合わせて、扇状形のスイング揺動用穿孔SHを成形した。なお、スイング揺動用穿孔SHの形状は、本実施例の限りではない。例えば、ホルダー基体401に形成された円弧溝40dによって規制される可動リンク部材19Aの揺動範囲に対応して、インスツルメント保持部材10〜12と可動側リンク部材19Aとのピン結合の軸心(10b〜12bに相当)が揺動する場合は、スイング揺動用穿孔SHは該軸心の揺動軌道を阻害しない形状であればよい。あるいは、インスツルメント保持部材10〜12と可動側リンク部材19Aとのピン結合の軸心(10b〜12bに相当)の揺動軌道を調整して該保持部材10〜12の回動範囲を規制する場合は、所望の回動範囲に対応するように、該軸心(10b〜12b)の揺動軌道を規制する形状に合わせたスイング揺動用穿孔SHを形成してもよい。図9の実施形態であれば、部材加工を簡素化でき、更に部材点数を減らすことができるため組立工程を簡素化でき、より安価に本発明を実施できるのでよい。
また図9の例で実現される、インスツルメント保持部材10〜12の前記固定側リンク部材411及び可動側リンク部材19Aに対する支持構造や、スイング揺動の作用の詳細については、図7に示す例と同様のため、その説明は割愛する。共通部分については同一の符号を付し、説明は割愛する。
図9(a)(b)には、更に、差動機構20,21の変形例を示す。
図9(a)に示す状態は、各インスツルメント保持部材9〜13がいずれも左前方への傾き角度が最大の状態であることを示している。この時、ガイドピン19aは円弧溝40dの右端に位置している。そして、右端のインスツルメント保持部材9におけるボルト9bは、円弧溝40bの右端で逆二等辺三角孔20bの左鋭角に位置し、左端のインスツルメント保持部材13におけるボルト13bは、円弧溝40cの右端で逆二等辺三角孔21bの左鋭角に位置している。この状態で、前記インスツルメント保持部材10〜12に対してその先側を右側に向くようスイング揺動させるような外力が作用すると、ボルト9b,13bは、逆二等辺三角孔20b,21bの周縁の斜辺部分に沿って相対摺接する。結果、図7に示す例と同様に3個のインスツルメント保持部材10〜12が、各ボルト10a〜12aの軸心周りに反時計方向に一斉に回動し、図9(b)に示すような中立位置に達する。この移行過程では、図9の逆二等辺三角孔20b,21bを用いる差動機構は、図7の例の略レ形状の異形長孔20a,21aを用いる差動機構に対して、差動のタイミングや差動機構を設けた保持部材の回動領域が異なるだけであり、差動機構による作用効果は図7の例と同様である。従って、共通部分には同一の符号を付し、その説明は割愛する。
図10(a)(b)は、差動機構20,21の変形例を示す。即ち、平行リンク機構190の構成は前記と同様であるが、可動側リンク部材19Aの両端に、別部材からなるリンク部材20B,21Bを、インスツルメント保持部材10,12のボルト10b,12bによってピン結合してトグル状に接続し、各リンク部材20B,21Bの先側にその長手方向に沿った直状の長孔20c,20dを形成した点で異なる。ホルダー基体40には、前記と同様の円弧溝40b、40cが形成されており、該円弧溝40b、40cと前記長孔20c,20dとには、両端のインスツルメント保持部材9,13のボルト9b、13bが相対摺接可能に挿通され、ホルダー基体40とリンク部材20B,21Bとがピン結合されている。ボルト9b、13bは、夫々円弧溝40b及び長孔20c、円弧溝40c及び長孔20d内を相互摺接可能な状態とされる。従って、図10(a)(b)に示すように、可動側リンク部材19Aが左右に揺動すると、リンク部材20B,21Bは、ピン結合部分(10b、12b)の周りの回動を伴いながらこれに連動する。この時、前記長孔20c、20dがボルト9b、13bに作用するが、この作用は長孔20c、20dの長さ分可動側リンク部材19Aの動作より遅れる。そして、長孔20c、20dの端部の作用(引張り及び押出し作用)を受けてボルト9b、13bが円弧溝40b,40c内を摺接し、これにより、インスツルメント保持部材9,13は、他のインスツルメント保持部材10,12より小さな角度でスイング揺動する。その他の構成は図7に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
図11は、連動部材19及び差動機構20,21の別実施形態を示している。この例では、インスツルメント保持部材10〜12に固定され、前記と同様に固定側リンク部材41にピン結合された支軸としてのボルト10a〜12aに、同径のタイミングプーリー10aa〜12aaを固着し、該タイミングプーリー10aa〜12aaに無端のタイミングベルト(索状伝動部材)19Bを掛け渡し、このタイミングベルト19Bを連動部材としている。また、両端のインスツルメント保持部材9,13の支軸としてのボルト9a,13aには、前記タイミングプーリー10aa〜12aaより大径のタイミングプーリー9aa,13aaが固着され、タイミングプーリー10aaとタイミングプーリー9aa間、及びタイミングプーリー12aaとタイミングプーリー13aa間には、タイミングベルト20C及びタイミングベルト21Cが夫々掛け渡されている。これによって、差動機構20,21が構成される。
この例の場合、インスツルメント保持部材10〜12のいずれかに、その軸心周りに回動させるような外力が付加されると、当該回動作用がタイミングベルト19Bを介して各タイミングプーリー10aa〜12aaに伝達され、これによってインスツルメント保持部材10〜12が一斉にスイング揺動する。また、この回動作用は、タイミングプーリー10aaからタイミングベルト20Cを介してタイミングプーリー9aaに、タイミングプーリー12aaからタイミングベルト21Cを介してタイミングプーリー13aaに、それぞれ伝達される。この時、タイミングプーリー9aa,13aaは、タイミングプーリー10aa,12aaより径が大とされているから、タイミングプーリー9aa,13aaの回転角速度がタイミングプーリー10aa,12aaのそれより小さく、従って、インスツルメント保持部材9,13のスイング揺動は、インスツルメント保持部材10〜12のそれより小さな角度でなされることになる。このようなタイミングプーリー及びタイミングベルトによる伝動構造に代え、ギヤプーリー及びチェーンによる伝動構造も採用することができる。
その他の構成は前記実施形態と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。尚、インスツルメント保持部材10〜12の固定側リンク部材41に対する支持構造は、図3に示す例とは異なっており、これについては図12及び図13で説明する。
図12(a)(b)に示すインスツルメントホルダー4は、図3に示す例と、インスツルメント保持部材10〜12の固定側リンク部材41に対する支持構造が異なるが、その他の構成は同一である。即ち、インスツルメント保持部材10〜12の固定側リンク部材41(ホルダー基体40)に対する回動自在な支持が、ブラケット31〜33を介してなされ、これらインスツルメント保持部材10〜12は該ブラケット31〜33に上下傾動自在に取付けられている。この支持構造を、図13を参照して説明する。図13は、インスツルメント保持部材11の例で示しているが、インスツルメント保持部材10,12も同様の構成で固定側リンク部材41に回動自在に支持される。図13において、ブラケット32は、横向片32aと縦向片32bとよりなる倒L形の部片からなり、横向片32aには2個の雌ねじ孔32c,32dが形成されている。雌ねじ孔32cには、支軸としてのボルト11aが螺合され、このボルト11aによって、前記と同様にフリクション付与手段を介してブラケット32と固定側リンク部材41(図12参照)とがピン結合される。また、雌ねじ孔32dには、ボルト11bが螺合され、このボルト11bによって、前記と同様にフリクション付与手段を介してブラケット32と可動側リンク部材19A(図12参照)とがピン結合される。他のブラケット31,33も同様に固定側リンク部材41及び可動側リンク部材19Aとピン結合され、これにより図12(a)に示すように平行リンク機構190が構成される。
この実施形態における両端のインスツルメント保持部材9,13は、図7と同じ動きをするが、長孔と溝との重畳で生じる空隙部分には、遊びがあるので、使用者がこれらを手で操作して、図12(a)に示すように、両インスツルメント保持部材9,13共中立位置にすることも可能である。これは、図3及び図7に示す例においても同様である。
インスツルメント保持部材11の上面には、垂下片35aを有する取付片35がボルト35b,35cによって固着されている。この取付片35と前記ブラケット32とによりインスツルメント保持部材11の支持部材が構成される。他のインスツルメント保持部材10,12にも同様に取付片34,36が固着されている(図12参照)。垂下片35aにはボルト挿通孔35dが形成され、その背面にはナット35eが固着されている。この場合、ボルト挿通孔35dを雌ねじ孔として、ナットの機能を持たせても良い。前記ブラケット32の縦向片32bにはボルト挿通孔32eが開設され、このボルト挿通孔32eには皿ばね38a、樹脂製ワッシャ38bを介してダイヤル付ボルト38が挿通され、更に、このダイヤル付ボルト38は樹脂製ワッシャ38cを介して前記ボルト挿通孔35dに挿通され、前記ナット35eに螺合される。このダイヤル付ボルト38の螺合締結によりインスツルメント保持部材11が、取付片35を介してブラケット32に支持される。他のインスツルメント保持部材10,12も同様に取付片34,36を介してブラケット31,33に支持される(図12参照)。
そして、ダイヤル付ボルト38のダイヤル部を手操作して緩めると、インスツルメント保持部材11が、取付片35と共に、ダイヤル付ボルト38の軸心周りに回動可能とされる。従って、インスツルメント保持部材11を所望の上下傾き状態となるようにした上で、再度ダイヤル付ボルト38を螺合締結すれば、その状態に維持させることができる。他のインスツルメント保持部材10,12においても、ダイヤル付ボルト37,39の緩締操作により、同様に上下の傾き角度の調整をすることができる。前記ブラケット32の縦向片32bには、前記ボルト挿通孔32eの中心を曲率中心とする円弧溝32fが形成され、この円弧溝32fには前記取付片35の垂下片35aに突設されたピン35gが相互摺接可能に挿通される。このピン35gの円弧溝32fに対する相互摺接可能な挿通関係により、インスツルメント保持部材の上下傾動範囲が規制される。尚、本実施例では、緩締操作を行う部材として、ダイヤル付ボルトを用いているが、この他にも六角ボルトや、ハンドル形状のもの、更には自転車のサドル調整部のようなストッパーが兼備されたような部材でも良く、少なくとも堅固な締結と簡単な緩締操作がなし得るものは望ましく採用される。
前述のように、インスツルメント保持部材10〜12の夫々が、上下傾動自在に支持されることにより、インスツルメントの形状的特性に応じ、上下傾斜角度を個々に設定することができ、インスツルメント毎の取扱性の適正化を図ることができる。例えば、コントラアングル型のインスツルメントの場合は、上向き角度を小さくし、ストレートタイプのインスツルメントの場合は、上向き傾斜角度を大きくするなどにより、個々のインスツルメントの形状的特性に応じた取扱性の適正化を図ることができる。
図14(a)(b)(c)及び15(a)(b)は、前記インスツルメント保持部材10〜12が、連動部材19との連結を解除可能とする連結解除手段を備えている例を示す。図14(a)(b)(c)は、インスツルメント保持部材11での例を示している。インスツルメント保持部材11の上部には取付ボス部110が形成され、該取付ボス部110には、前記と同様に固定側リンク部材41(図3等参照)にピン結合される支軸としてのボルト11aが螺合され、インスツルメント保持部材11は、固定側リンク部材41に対し、該ボルト11aを介し、その軸心周りに回動自在に支持される。また、可動側リンク部材19A(図3等参照)にピン結合される前記ボルト11bに代え、取付ボス部110にその上面より出没自在とされたロックピン11cが収容されている。このロックピン11cは、取付ボス部110内に収容された圧縮スプリング11dによって上向きに弾力付勢状態とされている。ロックピン11cの胴部には、取付ボス部110の後側部に突出する操作レバー11caが設けられている。取付ボス部110の後側部には、ロックピン11cの長手方向に沿った縦溝112aと、該縦溝112aの下端に直交するよう連設された横溝112bからなるガイド溝112が形成され、該操作レバー11caはこのガイド溝112に相対摺接可能に挿通された状態で取付ボス部110の後側部に突出している。
前記ロックピン11c、圧縮スプリング11d及びガイド溝112によって、前記連結解除手段52が構成される。図14(a)(b)(c)は、いずれも前記操作レバー11caが、縦溝112a内にあり、その為、圧縮スプリング11dの付勢弾力を受けてロックピン11cは取付ボス部110の上面より突出した状態で維持される。このように、取付ボス部110の上部より突出したロックピン11cは、図15に示すように、可動側リンク部材19Aに形成された透孔19cに挿通され、可動側リンク部材19Aとピン結合状態とされる。従って、可動側リンク部材19Aの左右への揺動によって、インスツルメント保持部材11は、ロックピン11cを介して連動し、ボルト11aの軸心周りにスイング揺動する。そして、図14(c)の矢印aに示すように、操作レバー11caを前記圧縮スプリング11dの弾力に抗して下向きに操作し、横溝112b内に収容係止させると、ロックピン11cは取付ボス部110内に没入し、可動側リンク部材19Aとのピン結合が解除される。従って、当該インスツルメント保持部材11は、可動側リンク部材19Aの動作に関与しなくなる。
図15(a)(b)は、2個のインスツルメント保持部材10,12も前記と同様の連結解除手段51,53を備え、インスツルメント保持部材10が、その連結解除手段51をして可動側リンク部材19Aとのピン結合が解除されている状態を示している。インスツルメント保持部材10,12の上部にも前記と同様の取付ボス部100,120が形成され、該取付ボス部100,120にロックピン10c,12cが圧縮スプリング(一部図示省略)によって上向き付勢状態で該取付ボス部100,120の上面より突出するよう収容されている。そして、操作レバー10ca,12caのガイド溝102,122に沿った操作により、ロックピン10c,12cを取付ボス部100,120内に没入状態に維持し得るようになされ、これらにより前記連結解除手段51,53が構成される。
図15(a)(b)は、インスツルメント保持部材10のロックピン10cが、その操作レバー10caの操作により、取付ボス部100に没入されて、インスツルメント保持部材10と可動側リンク部材19Aとのピン結合が解除された状態を示している。従って、インスツルメント保持部材10は、可動側リンク部材19Aの動作に関与しない状態とされ、可動側リンク部材19Aの左右揺動によっても、これに連動せず静止した状態に維持され、図15(a)に示すように、ロックピン10cと透孔19bとに位置ずれが生じる。また、他のインスツルメント保持部材11,12は、ロックピン11c,12cが突出して可動側リンク部材19Aの透孔19c、19dを介して可動側リンク部材19Aにピン結合されている。従って、当該インスツルメント保持部材11,12は、可動側リンク部材19Aの左右揺動に連動して前記スイング揺動がなされる。そして、操作レバー10caの操作によりロックピン10cを取付ボス部100の上面に突出させ、可動側リンク部材19Aの透孔19bに挿入させることにより、インスツルメント保持部材10と可動側リンク部材19Aとのピン結合状態が簡易に達成される。このように、インスツルメント保持部材11〜12のいずれを非連動の状態にするかは、使用者の診療態様や、保持されるインスツルメントの種類に応じて適宜選択される。また、連結解除手段は、インスツルメント保持部材9〜13の全てに設けても良く、或いは少なくとも1つに設けても良く、これらは製品仕様に応じて適宜選択設定される。その他の構成は、図3に示すものと同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。尚、図15(a)(b)では、他の結合部分等の一部図示を省略している。
尚、前記実施形態では、本発明に係る歯科用インスツルメントホルダーが5個のインスツルメント保持部材を備えた例を示したが、インスツルメント保持部材の数はこれに限定されるものではない。また、連動部材19としては、例示のような平行リンク機構や、索状伝動部材によるものの他に、ラックとピニオンの組合せによるものであっても良い。更に、例示の連動部材19の作動は手動でなされるが、エア式駆動手段(例えば、エアシリンダ)や電気式駆動手段によってなされるようにしても良い。この場合、歯科用診療用ユニットAの適所にセンサ等を設け、術者の動きを検知し、この検知情報に基づき、自動的にインスツルメント保持部材を一斉にスイング揺動するよう構成することも可能である。