(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、例えば精密機器の製造において、精密な研削加工の行われるワークの温度を制御する温度制御システムとして具体化している。
図1に示すように、この温度制御システムは、要するに調温ブロック10(熱交換部)を流通する流体の温度を調整することで、調温ブロック10に保持されるワークW(温度制御対象)の温度を所望の温度に制御するものである。温度制御システムは、調温ブロック10に流体を供給する構成として、常温の水(第1流体)を供給口21から調温ブロック10に供給する水通路20(第1供給通路)と、水を内部に貯留して加熱することによりその温度を調整するタンク40(貯留容器)と、タンク40内で温度調整された湯(第2流体)をタンク40から調温ブロック10へ供給する湯通路30(第2供給通路)とを備えている。また、温度制御システムは、調温ブロック10を流通した流体を排出及び回収する構成として、水と湯との混合湯(混合流体)を調温ブロック10から排出口52へ排出する排出通路50と、混合湯を調温ブロック10からタンク40へ回収する回収通路60とを備えている。
水通路20において、上流側の端部が水道水の供給口21に接続されており、下流側の端部が調温ブロック10に接続されている。そして、供給口21から水通路20へ常温の水が供給される。なお、水を供給する水道は、公共の市水を供給するものであってもよいし、地下水をポンプにより汲み上げて供給するものであってもよい。
水通路20には、水の流れの上流側から順に、開閉弁22、レギュレータ23、圧力センサ24、及び混合弁80A(混合比調節手段)が設けられている。開閉弁22は、水通路20の流路を開閉することにより、水の供給と遮断とを切り替える。レギュレータ23は、水通路20を流通する水の圧力を所定圧(例えば0.1MPa)に調整する。圧力センサ24は、水通路20内の水の圧力P1を検出する。なお、水通路20において、混合弁80Aよりも下流側の部分は共通供給通路26となっている。
湯通路30において、上流側の端部がタンク40内にその底部付近まで挿入されており、下流側の端部が調温ブロック10に接続されている。湯通路30には、湯の流れの上流側から順に、ポンプ31、圧力センサ34、温度センサ35、及び上記混合弁80Aが設けられている。ポンプ31は、タンク40内の湯を汲み上げて下流側へ送出する。ポンプ31は、タンク40内の湯を汲み上げて下流側に送出する。ポンプ31は、例えばダイアフラムポンプや、渦流ポンプ、カスケードポンプ等である。圧力センサ34は、湯通路30内の湯の圧力P2を検出する。温度センサ35は、湯通路30内の湯の温度T2を検出する。なお、湯通路30において、混合弁80Aよりも下流側の部分は上記共通供給通路26となっている。すなわち、水通路20と湯通路30とは、混合弁80Aよりも下流側の部分が共通となっている。
また、湯通路30には、湯通路30を流通する湯の一部をタンク40内へ戻す戻し通路32が設けられている。戻し通路32の一端はポンプ31と混合弁80Aとの間に接続されており、戻し通路32の他端はタンク40内に挿入されている。戻し通路32には、その流路面積を調節する調節弁33(電磁弁)が設けられている。そして、その駆動回路が制御されることにより調節弁33の開度が調節され、戻し通路32を通じてタンク40内へ戻される湯の流量が調節される。
混合弁80Aは、エアオペレート式の三方弁であり、操作圧を印加する電空レギュレータ81Aを有している。混合弁80Aにおいて、一次側の第1流路及び第2流路に水通路20及び湯通路30がそれぞれ接続され、二次側の第3流路に共通供給通路26が接続されている。混合弁80Aは、水通路20を通じて共通供給通路26へ供給される水と、湯通路30を通じて共通供給通路26へ供給される湯とを混合する比率を調節する。そして、これらの水と湯とが共通供給通路26で混合され、その混合湯が共通供給通路26を通じて調温ブロック10へ供給される。すなわち、水と湯との混合比(流量比)の調節によって、調温ブロック10へ供給される混合湯の温度が調節される。なお、共通供給通路26を省略して、混合弁80Aの二次側の流路を調温ブロック10に直に接続してもよい。
調温ブロック10は、ワークW(加工対象)を保持可能な直方体状のブロックからなり、調温ブロック10とワークWとの間で熱交換が行われてワークWの温度が適宜調整される。すなわち、調温ブロック10とワークWとは直に面接触しており、ワークWに必要な熱量を伝達することの可能な接触面積が確保されている。詳しくは、調温ブロック10の内部には、水通路20及び湯通路30を通じて供給される混合湯が流通する通路が設けられており、この通路を流通する混合湯の熱が調温ブロック10に伝達され、その結果としてワークWの温度が調整される。調温ブロック10は、熱伝導率の高いSiC又はアルミナにより形成されるとともに、熱容量が小さくなるように薄肉に形成されている。このため、調温ブロック10の温度を迅速に変更することができるとともに、混合湯の熱をワークWに効率的に伝達することができる。
温度制御システムは、ワークWの温度Twを検出する温度センサ73を備えている。温度センサ73は、接触式のものであってもよいし、非接触式のものであってもよい。非接触式の温度センサ73を採用することにより、ワークWを移動させつつ加工を行う場合等にも容易に温度を検出することができる。
上記排出通路50において、上流側の端部が調温ブロック10に接続されており、下流側の端部が混合湯の排出口52に接続されている。そして、排出口52から外部へ混合湯が排出される。排出通路50には、混合湯の流れの上流側から順に、分配弁80B(分配比調節手段)及び開閉弁51が設けられている。開閉弁51は、排出通路50の流路を開閉することにより、混合湯の排出と遮断とを切り替える。なお、排出通路50において、分配弁80Bよりも上流側の部分は共通流出通路27となっている。
上記回収通路60において、上流側の端部が調温ブロック10に接続されており、下流側の端部がタンク40内に挿入されている。そして、回収通路60を通じて混合湯がタンク40内へ回収される。回収通路60には、上記分配弁80Bが設けられている。なお、回収通路60において、分配弁80Bよりも上流側の部分は上記共通流出通路27となっている。すなわち、排出通路50と回収通路60とは、分配弁80Bよりも上流側の部分が共通となっている。
分配弁80Bは、上記混合弁80Aと同一の三方弁であり、操作圧を印加する電空レギュレータ81Bを有している。分配弁80Bにおいて、一次側の第3流路に共通流出通路27が接続され、二次側の第1流路及び第2流路に排出通路50及び回収通路60がそれぞれ接続されている。分配弁80Bは、共通流出通路27を通じて流出する混合湯を、排出通路50を通じて排出口52へ排出される混合湯と、回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯とに分配する比率を調節する。すなわち、この分配比(流量比)の調節によって、調温ブロック10を流通した混合湯の回収率、ひいては混合湯の回収量が調節される。なお、共通流出通路27を省略して、分配弁80Bの一次側の流路を調温ブロック10に直に接続してもよい。
タンク40は、その内部に貯留された水(回収された混合湯)を加熱するヒータ41と、タンク40内の水の液面が所定位置に達しているか否か、すなわちタンク40内の水の量が所定量に達しているか否かを検出するレベルセンサ43A〜43C(検出手段)とを有している。ヒータ41には、駆動信号に基づいてヒータ41の発熱量を調節する駆動回路42が設けられている。レベルセンサ43A〜43Cは、タンク40内の水の液面が、高位置(タンク40の最上部近傍)、中位置(タンク40の中央部近傍)、及び低位置(タンク40の最下部近傍)にそれぞれ達しているか否かを検出する。レベルセンサ43A〜43Cは、例えば電極間に水が存在すると電流が流れ、存在しないと電流が流れない電極式のレベルセンサである。
共通供給通路26と共通流出通路27とは調温ブロック10を介して接続されており、共通供給通路26を通じて調温ブロック10へ流入した混合湯は、全て共通流出通路27へ流出するようになっている。このため、共通供給通路26を流通する混合湯の流量と、共通流出通路27を流通する混合湯の流量とは等しくなっている。すなわち、水通路20を通じて調温ブロック10へ供給される水及び湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の合計流量と、排出通路50を通じて排出口52へ排出される混合湯及び回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の合計流量とは等しくなっている。
温度制御システムは、ワークWの温度制御に係る各種制御を実行する制御装置70(第1制御手段及び第2制御手段)を備えている。制御装置70は、CPUや各種メモリ等を有してなる演算部としてのマイクロコンピュータを備えている。制御装置70には、圧力センサ24,34により検出される圧力P1,P2、温度センサ35,73により検出される温度T2,Tw、及びレベルセンサ43A〜43Cにより検出される液面位置情報等が逐次入力される。制御装置70は、これらの情報に基づいて、電空レギュレータ81A,81Bの駆動状態を制御することにより、混合弁80A及び分配弁80Bの各弁体の位置を制御する。詳しくは、電空レギュレータ81A,81Bは、制御装置70からの駆動信号に基づいて、混合弁80A及び分配弁80Bにそれぞれ印加する操作圧を制御する制御回路を有している。これにより、ワークWの温度が所望の温度に制御されるとともに、調温ブロック10を流通した混合湯の回収率が制御される。
次に、図2を参照して、混合弁80A及び分配弁80Bを構成する三方弁の構造を説明する。なお、図2は三方弁を示す部分断面図である。
この三方弁は、2つのハウジング82,83と2つカバー84,99とを有しており、これらが図の上下方向に積層して一体化されている。各ハウジング82,83とカバー84,99とは、それらが重なる部位(接合される部位)で外形及びその大きさが同一となっており、それらの組み付け状態では全体として直方体状となっている。両ハウジング82,83及びカバー84は、その積層方向に延びる中空部を有しており、その中空部に弁部材85が往復移動可能に設けられている。なお、以下の説明では、ハウジング82を上側ハウジング82、ハウジング83を下側ハウジング83とも称することとする。
下側ハウジング83には、図の上方(上側ハウジング82側)に開口する略円柱状のシリンダ部86が形成されるとともに、そのシリンダ部86に連通する第1流路87A,第2流路87B,第3流路87Cが形成されている。これら3つの流路87A,87B,87Cはいずれも円形の開口断面を有し、第1流路87Aと第2流路87Bとがシリンダ部86から同一の方向に延びるように平行に形成され、第3流路87Cがシリンダ部86から第1流路87A及び第2流路87Bと反対方向に延びるように形成されている。シリンダ部86の延びる方向に関して、第3流路87Cは第1流路87Aと第2流路87Bとの間の中央に形成されている。
シリンダ部86の上部及び下部には、弁支持部材88,100がそれぞれ設けられている。これらの弁支持部材88,100は中空円柱状をなしており、それらの中央部には弁支持孔88a,100aがそれぞれ形成されている。弁支持部材88には、その内周部及び外周部に凹溝が形成されており、各凹溝に環状のシール部材が収容されている。弁支持部材88の上端面には環状の凹溝が形成されており、この凹溝にもシール部材が収容されている。また、弁支持部材100には、その外周部に凹溝が形成されており、凹溝に環状のシール部材が収容されている。弁支持部材100の下端面にはカバー99が当接しており、これらの間がシール部材によってシールされている。
シリンダ部86に弁支持部材88が組み付けられることにより、シリンダ部86内に流体室89が形成されている。上記混合弁80Aでは、上述したように、第1流路87A及び第2流路87Bに水通路20及び湯通路30がそれぞれ接続され、第3流路87Cに共通供給通路26が接続される。そして、流体室89に第1流路87Aから水が流入するとともに第2流路87Bから湯が流入し、これらの混合湯が第3流路87Cから流出する。また、上記分配弁80Bでは、上述したように、第3流路87Cに共通流出通路27が接続され、第1流路87A及び第2流路87Bに排出通路50及び回収通路60がそれぞれ接続される。そして、流体室89に第3流路87Cから混合湯が流入し、この混合湯が第1流路87Aと第2流路87Bとから流出する。
また、上側ハウジング82には、図の上方(カバー84側)に開口するシリンダ部90が形成されており、そのシリンダ部90の底部90bには、シリンダ部90と同軸(中心位置が同一)でかつシリンダ径よりも小径の弁支持孔90aが形成されている。弁支持孔90aは、上述した弁支持部材88の弁支持孔88aと同軸でかつ同径の貫通孔となっている。弁支持孔90aの内周部には凹溝が形成されており、その凹溝に環状のシール部材が収容されている。
カバー84には、その中央部に弁支持孔84aが形成されている。この弁支持孔84aは、上述した弁支持部材88の弁支持孔88aや上側ハウジング82の弁支持孔90aと同軸の貫通孔となっている。
例えば、下側ハウジング83はフッ素系樹脂等の合成樹脂材料により形成され、上側ハウジング82及びカバー84はステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料により形成されている。ただし、下側ハウジング83は、三方弁を流通する流体(液体)に接触しても腐食等が生じない耐腐食性を有する材料により構成されればよく、ステンレス鋼など、耐腐食性の高い金属を用いることも可能である。
弁部材85は、2つのロッド91,92と2つの弁体93,94とを一体化して構成されている。2つのロッド91,92は、互いの端部同士が連結されることにより長尺状に形成されている。2つの弁体93,94は、略円錐状に形成されており、互いの頂点側の端部同士が連結(ねじ締結)されている。詳しくは、弁体93(第2弁体)の頂点側の端部に雄ねじ部93aが形成されており、弁体94(第1弁体)の頂点側の端部に雌ねじ部94aが形成されている。これらの雄ねじ部93a及び雌ねじ部94aは、それぞれ弁体93,94の軸線に沿って延びるように形成されている。そして、これらの雄ねじ部93aと雌ねじ部94aとをねじ締結することにより、弁体93,94が一体化されている。このため、弁体93,94を同軸の状態で正確に一体化することができる。
このように一体化された弁体93,94は、その軸線方向の中央に関して略対称の形状となっている。そして、ロッド91の一端(図では下端)に弁体94が連結(ねじ締結)されている。なお、以下の説明では、上側のロッド92を上ロッド92、下側のロッド91を下ロッド91とも称する。
下ロッド91の上部には、シリンダ部90の内径と同一の外形寸法を有する略円板状のピストン部95が設けられており、そのピストン部95の外周部がシリンダ部90の内面に接触している。ピストン部95の外周部には凹溝が形成されており、その凹溝にシール部材が収容されている。
上ロッド92は、カバー84に形成された弁支持孔84aに挿通され、下ロッド91は、上側ハウジング82の弁支持孔90aと下側ハウジング83に設けた弁支持部材88の弁支持孔88aとに挿通されている。
また、シリンダ部90の底部90bと下ロッド91のピストン部95との間には圧力制御室96が形成されている。圧力制御室96には、上側ハウジング82に形成されたエア導入通路82aを通じて外部(電空レギュレータ81A,81B)から操作エアが導入され、それにより圧力制御室96内の操作圧が調整される。一方、カバー84と下ロッド91のピストン部95との間にはスプリング室97が形成されており、そのスプリング室97内には渦巻きコイル状のスプリング98が配設されている。したがって、ロッド91,92には、圧力制御室96内の操作圧とスプリング98の付勢力とが相反する方向に作用し、それらの力のバランスによってロッド91,92の位置が調整される。
弁体93,94は、下ロッド91の下端部に連結されており、ロッド91,92と共に上記流体室89の延びる方向(図の上下方向)に往復動作する。流体室89内には、弁体93,94の往復動に伴って、弁体93,94にそれぞれ当接する弁座部材101,102が設けられている。流体室89(シリンダ部86)の延びる方向に関して、弁座部材101は第2流路87Bと第3流路87Cとの間に設けられており、弁座部材102は第1流路87Aと第3流路87Cとの間に設けられている。これらの弁座部材101,102は中空円柱状をなしており、それらの中央部には連通孔101a,102aがそれぞれ形成されている。弁座部材101,102には、その外周部に凹溝が形成されており、各凹溝に環状のシール部材が収容されている。
弁座部材101,102の各連通孔101a,102aに、弁体93,94がそれぞれ挿入されている。流体室89の延びる方向に関して、弁体93は第2流路87B側ほど径が大きくなっており、弁体94は第1流路87A側ほど径が大きくなっている。そして、弁体93,94では、その小径部分の径が弁座部材101,102の各連通孔101a,102aの内径よりも小さく、その大径部分の径が各連通孔101a,102aの内径よりも大きくなっている。
このため、弁体93,94が上方向(第1流路87A側)へ移動することにより、弁体93の外周面と連通孔101aの内周面との隙間で構成される流体流路の面積が小さくなるとともに、弁体94の外周面と連通孔102aの内周面との隙間で構成される流体流路の面積が大きくなる。反対に、弁体93,94が下方向(第2流路87B側)へ移動することにより、弁体93の外周面と連通孔101aの内周面との隙間で構成される流体流路の面積が大きくなるとともに、弁体94の外周面と連通孔102aの内周面との隙間で構成される流体流路の面積が小さくなる。なお、図2は、弁体93,94が下方向へ最も移動した状態を示している。
また、上述したように、弁体93,94は、それらの有する雄ねじ部93aと雌ねじ部94aとをねじ締結することにより一体化されている。このため、流体室89内に弁座部材101,102を取り付けた後に、弁座部材101,102の各連通孔101a,102aに雄ねじ部93a及び雌ねじ部94aをそれぞれ挿通して互いにねじ締結することにより、弁体93,94を一体化することができる。したがって、弁体93,94の組付けを容易化することができる。
そして、弁体94の外周面が連通孔102aの内周面に当接すると、第1流路87Aと第3流路87Cとの間における流体の流量(第1流量)が最小(0)になるとともに、第2流路87Bと第3流路87Cとの間における流体の流量(第2流量)が最大になる。反対に、弁体93の外周面が連通孔101aの内周面に当接すると、第1流路87Aと第3流路87Cとの間における流体の流量(第1流量)が最大になるとともに、第2流路87Bと第3流路87Cとの間における流体の流量(第2流量)が最小(0)になる。本実施形態では、上記第1流量の減少量(増加量)と上記第2流量の増加量(減少量)とが等しくなるように、弁体93,94及び弁座部材101,102が構成されている。すなわち、この三方弁では、第1流量と第2流量との合計が一定に維持される。なお、第1流量の減少量(増加量)と第2流量の増加量(減少量)とが等しくない構成を採用することもできる。
このようにして、弁体93,94の動作位置に応じて、第1流路87Aと第3流路87Cとを連通する流体流路の面積と、第2流路87Bと第3流路87Cとを連通する流体流路の面積とが連続的に変更される。その結果、上記混合弁80Aでは、第1流路87Aから第3流路87Cへ流通する水と、第2流路87Bから第3流路87Cへ流通する湯との混合比が連続的に調節される。また、上記分配弁80Bでは、第3流路87Cから第1流路87Aへ流通する混合湯と、第3流路87Cから第2流路87Bへ流通する混合湯との分配比が連続的に調節される。
ここで、混合弁80Aと分配弁80Bとは同一の三方弁のため、弁体93,94の動作位置が互いに等しい場合には、各流路87A〜87Cを流通する流体の流量比が混合弁80Aと分配弁80Bとで等しくなる。このため、混合弁80Aにおいて第2流路87Bから第3流路87Cへ流通する湯の比率(水と湯との合計流量に対する湯の流量の比率)と、分配弁80Bにおいて第3流路87Cから第2流路87Bへ流通する混合湯の比率(混合湯の総流量に対する第2流路87Bへ流通する混合湯の流量の比率)とが等しくなる。したがって、混合弁80Aにおいて第2流路87Bから第3流路87Cへ流通する湯の比率が高いほど、分配弁80Bにおいて第3流路87Cから第2流路87Bへ流通する混合湯の比率が高くなる。また、各流路87A〜87Cを流通する流体の流量比が混合弁80Aと分配弁80Bとで等しくなるため、これらの流路87A〜87Cを流通する流体の圧力がどのように設定されている場合であっても対応することができる。
さらに、水通路20を通じて調温ブロック10へ供給される水及び湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の合計流量と、排出通路50を通じて排出口52へ排出される混合湯及び回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の合計流量とが等しくなっている。このため、混合弁80Aと分配弁80Bとにおいて弁体93,94の動作位置を等しくすることにより、湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の流量と、回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の流量とを等しくすることができる。
また、上下の各ハウジング82,83の側面には、弁体93,94の位置を検出するための位置検出器105が設けられている。位置検出器105は、ケース105aと、そのケース105a内に収容された位置センサとを備えている。位置センサは、センサ本体と、このセンサ本体に対して入出方向(図の上下方向)に移動可能な可動ロッド105bとを有している。可動ロッド105bは、スプリング105cによりセンサ本体から突出する方向に付勢されており、先端部が押圧されることにより入出量が変更される。
弁体93,94の位置検出に関する構成として詳しくは、弁部材85において弁体93,94と逆側の端部(図の上端部)がカバー84から突出しており、その突出部分に、ねじによりアーム106が連結されている。アーム106は、弁部材85の軸方向に直交する方向に延びるよう設けられ、弁部材85との接続側とは反対側の先端部には位置調整ねじ107が設けられている。なお、カバー84の上面には、アーム106の途中部分を移動可能に支持する支持部材108が設けられている。
位置調整ねじ107と位置センサの可動ロッド105bとは先端部同士が当接しており、弁部材85が移動すると、それに伴いアーム106が図の上下方向に移動するとともに可動ロッド105bの入出量が変更される。これにより、位置検出器105によって弁体93,94の位置が検出される。この検出された弁体93,94の位置は、対応する電空レギュレータ81A,81Bにそれぞれ入力される。
次に、図3のフローチャートを参照して、温度制御の処理手順について説明する。本処理は、制御装置70により所定の周期をもって繰返し実行される。なお、本処理の実行に先立って、水通路20の開閉弁22及び排出通路50の開閉弁51がそれぞれ開かれる。
この一連の処理では、まず混合弁へ供給される第1流体の圧力と第2流体の圧力とが等しくなるように調整する(S10)。具体的には、水通路20では、混合弁80Aへ供給される水(第1流体)の圧力が、レギュレータ23によって所定圧に調整されている。レギュレータ23の下流側において水の圧力P1が圧力センサ24によって検出されており、この検出された圧力P1が制御装置70に逐次入力される。また、湯通路30では、ポンプ31により湯(第2流体)が所定流量で混合弁80Aへ送出されており、ポンプ31の下流側において湯の圧力P2が圧力センサ34によって検出されている。この検出された圧力P2が制御装置70に逐次入力される。
そして、制御装置70は、湯の圧力P2を水の圧力P1に等しくすべく、調節弁33の駆動回路を制御することにより調節弁33の開度を調節し、戻し通路32を通じてタンク40内へ戻される湯の流量を調節する。例えば、水の圧力P1と湯の圧力P2との偏差に基づくPID(比例積分微分)演算により、調節弁33の開度をフィードバック制御する。これにより、水通路20を通じて混合弁80Aへ供給される水の圧力P1と、湯通路30を通じて混合弁80Aへ供給される湯の圧力P2とが等しくなる。なお、このS10の処理が圧力調整手段としての処理に相当する。
続いて、混合弁へ供給される第2流体の温度が設定温度となるように調整する(S11)。具体的には、湯通路30では、ポンプ31の下流側において湯の温度T2が温度センサ35によって検出されており、この検出された温度T2が制御装置70に逐次入力される。制御装置70は、湯の温度T2を常温よりも高い設定温度Th(例えば80℃)とすべく、ヒータ41の駆動回路を制御することにより、タンク40内に貯留された水を加熱するヒータ41の発熱量を調節する。例えば、設定温度Thと湯の温度T2との偏差に基づくPID演算により、ヒータ41の発熱量をフィードバック制御する。これにより、湯通路30を通じて混合弁80Aへ供給される湯の温度T2が、設定温度Thに調整される。
続いて、ワークの目標温度が入力されるとともに(S12)、ワークの温度を検出する(S13)。具体的には、温度制御システムの他の制御装置や手動操作により、制御装置70へワークWの目標温度Ttが入力される又は予め入力されている。また、ワークWの温度Twが温度センサ73によって検出されており、この検出された温度Twが制御装置70に逐次入力される。
これらのワークの目標温度及び検出温度に基づいて、混合弁の制御量を算出する(S14)。具体的には、制御装置70は、ワークWの検出温度Twを目標温度Ttに制御すべく、混合弁80Aの弁体位置を制御するための制御量Fmを算出する。例えば、ワークWの目標温度Ttと検出温度Twとの偏差に基づくPID演算により、混合弁80Aの弁体位置をフィードバック制御するための制御量Fmを算出する。
こうして算出された混合弁の制御量を、混合弁(分配弁)の目標弁体位置に変換する(S15)。具体的には、制御装置70は、混合弁80Aの制御量Fmの増大に伴って、流体室89(シリンダ部86)の延びる方向に関して、弁体93,94の目標位置が第1流路87A側から第2流路87B側へ変化するように設定する。すなわち、混合弁80Aの制御量Fmの増大に伴って、第2流路87Bから第3流路87Cへ流通する湯の比率が高くなり、第1流路87Aから第3流路87Cへ流通する水の比率が低くなるように、弁体93,94の目標位置を設定する。また、分配弁80Bの弁体93,94の目標位置を、混合弁80Aの弁体93,94の目標位置に等しく設定する。
こうした処理によれば、ワークWの目標温度Ttに対して検出温度Twが低いほど、湯通路30から混合弁80Aを介して調温ブロック10へ供給される湯の比率(流量)が増やされ、水通路20から混合弁80Aを介して調温ブロック10へ供給される水の比率(流量)が減らされる。このとき、調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、すなわちエネルギが注入され温度調整された湯が混合湯に多く混合されるほど、調温ブロック10を流通した混合湯に残存しているエネルギ(ワークWの加熱に使用可能なエネルギ)の量が多くなる。反対に、調温ブロック10へ供給される湯の比率が低いほど、調温ブロック10を流通した混合湯の温度が常温に近くなり、この混合湯に残存しているエネルギの量が少なくなる。
続いて、これらの目標弁体位置に基づいて、混合弁及び分配弁の各電空レギュレータを駆動する(S16)。具体的には、制御装置70は、混合弁80Aの電空レギュレータ81A及び分配弁80Bの電空レギュレータ81Bに、それぞれ目標弁体位置を駆動信号として出力する。このとき、混合弁80A及び分配弁80Bでは弁体93,94の目標位置が等しいため、電空レギュレータ81A,81Bに同一の駆動信号を同時に出力する。すなわち、制御装置70は、電空レギュレータ81A,81Bをそれぞれ介して、混合弁80A及び分配弁80Bを同一の駆動信号により同期させて制御する。
各電空レギュレータ81A,81Bでは、位置検出器105により検出される弁体93,94の位置を目標位置にすべく、混合弁80A,分配弁80Bに印加される操作圧を制御する。電空レギュレータ81A,81Bの制御回路は、例えば弁体93,94の目標位置と検出位置との偏差に基づくPID演算により、弁体93,94の位置をフィードバック制御を実行する。これにより、混合弁80A及び分配弁80Bの弁体93,94がそれぞれ目標位置に制御され、混合弁80Aではその弁体93,94の位置に応じた混合比で水と湯とが混合され、分配弁80Bではその弁体93,94の位置に応じた分配比で混合湯が分配される。このとき、上述したように、湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の流量と、回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の流量とが等しくなる。
続いて、タンク内の流体量が適正であるか否か判定され(S17)、流体量が適正であると判定された場合には(S17:YES)、流体量が適正である旨を表示し(S18)、流体量が適正でないと判定された場合には(S17:NO)、流体量が不適正である旨を警告する(S19)。
具体的には、タンク40では、レベルセンサ43A〜43Cによりタンク40内の水の量が所定量に達しているか否か検出されており、この検出結果が制御装置70に逐次入力される。制御装置70は、レベルセンサ43Aによりタンク40内の水の液面が高位置に達していないことが検出され、且つレベルセンサ43B又はレベルセンサ43Cによりタンク40内の水の液面が中位置又は低位置に達していることが検出された場合に、タンク40内の水の量が適正であると判定する。また、レベルセンサ43A,43B,43Cによりタンク40内の水の液面が高位置,中位置,低位置に達していることがそれぞれ検出された場合、又はレベルセンサ43A,43B,43Cによりタンク40内の水の液面が高位置,中位置,低位置に達していないことがそれぞれ検出された場合に、タンク40内の水の量が不適正であると判定する。
そして、それぞれの判定結果に応じて、例えばタンク40内の水の量が適正であることを示す表示灯、又はタンク40内の水の量が不適正であることを示す警告灯を点灯させる。このように警告等を点灯させることにより、タンク40内の水の量を適正な量に調整することを、使用者に促すことができる。こうして、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
・ワークWの温度Twが目標温度Ttとなるように混合弁80Aを制御する際に、常温の水道水と温度調整済みの湯とを混合する比率を調節することにより、調温ブロック10へ供給される混合湯の温度が変更される。このため、水を加熱又は冷却することで水の温度を変更する場合と比較して、調温ブロック10へ供給される水の温度を迅速に変更することができる。したがって、ワークWの温度Twと目標温度Ttとの偏差が大きくなった場合であっても、ワークWの温度Twを迅速に変更することができる。
・調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が高くなるように分配弁80Bが制御されるため、混合湯に残存しているエネルギを効率的に回収することができる。一方、調温ブロック10へ供給される湯の比率が低いほど、すなわち調温ブロック10へ供給される常温の水道水の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が低くされる。このため、混合湯の温度が水道水の温度(常温)に近いほど、タンク40へ回収される混合湯の流量を減らすことができる。したがって、タンク40内の水の温度が湯の設定温度(80℃)から水道水の温度に近付くことを抑制することができ、タンク40内の水の温度を調整するために用いられるエネルギの量を抑制することができる。これらの結果、温度制御システムにおけるエネルギの消費量を抑制することができる。
・調温ブロック10へ供給される湯の比率と、タンク40へ回収される混合湯の比率とが等しくされるため、湯によって混合湯に注入されるエネルギの量に合わせて、混合湯から回収するエネルギの量を調節することができる。このため、例えば調温ブロック10へ供給される湯の比率が100%である場合には、タンク40へ回収される混合湯の比率が100%とされ、混合湯に残存しているエネルギを最大限回収することができる。また、調温ブロック10へ供給される湯の比率が0%である場合には、タンク40へ回収される混合湯の比率が0%とされる。したがって、湯によって混合湯にエネルギが注入されていない場合には、タンク40内の水の温度が湯の設定温度から水道水の温度に近付くことを最大限抑制することができる。
・水通路20及び湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される水道水及び湯の合計流量と、排出通路50及び回収通路60を通じて調温ブロック10から流出する混合湯の合計流量とが等しくされている。このため、調温ブロック10へ供給される湯の比率と、タンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくすることにより、湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の流量と、回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の流量とを等しくすることができる。その結果、タンク40からの水の流出量と、タンク40への混合湯の流入量とを等しくすることができるため、タンク40内の水の量を一定に保つことができる。
・同一の三方弁が、第1流路87A及び第2流路87Bから流入する流体の混合比を調節して、第3流路87Cから混合流体を流出させる混合弁80Aと、第3流路87Cから流体を流入させて、第1流路87A及び第2流路87Bへ流出する流体の分配比を調節する分配弁80Bとして用いられている。そして、調温ブロック10へ供給される湯の比率とタンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくするように、分配弁80Bが制御される。このため、制御装置70を共通化して、電空レギュレータ81A,81Bをそれぞれ介して、混合弁80A及び分配弁80Bを同一の駆動信号により制御することができる。その結果、温度制御システムの制御系統を共通化して、コストの低減を図ることができる。
・制御装置70は、電空レギュレータ81A,81Bをそれぞれ介して、混合弁80A及び分配弁80Bを同一の駆動信号により同期させて制御している。このため、電空レギュレータ81A,81Bの双方へ同一の駆動信号を同時に送信することにより、混合弁80A及び分配弁80Bの調節状態が変更される過程を一致させることができる。その結果。調温ブロック10へ供給される湯の比率とタンク40へ回収される混合湯の比率とを、応答性よく一致させることができる。
・弁体93,94は、共に円錐状に形成されているため、弁座部材101,102の各連通孔101a,102aに雄ねじ部93a及び雌ねじ部94aをそれぞれ挿通することができる。そして、弁体93,94において、それらの一方(弁体93)には頂点側の端部に雄ねじ部93aが設けられるとともに、それらの他方(弁体94)には頂点側の端部に雌ねじ部94aが設けられている。このため、これらの雄ねじ部93aと雌ねじ部94aとをねじ締結することにより弁体93,94を一体化することができ、弁体93,94の組み付けを容易化することができる。
・混合弁80Aにより、水通路20を通じて調温ブロック10へ供給される水道水と、湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯との混合比が変更されたとしても、混合弁80Aへ供給される水道水及び湯の圧力が等しくなるように調整される。このため、調温ブロック10へ供給される水道水と湯との混合比の変化にかかわらず、調温ブロック10へ供給される水道水と湯との流量比を適切に制御することができる。
・常温の流体の供給源として水道を採用しているため、常温の流体を供給するコストを低減することができる。
(第2実施形態)
本実施形態の温度制御システムでは、混合弁80Aに代えて2つの流量調節弁で水と湯との混合比を調節するとともに、分配弁80Bに代えて2つの流量調節弁で混合湯の分配比を調節する構成としている。なお、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の符号を付することにより説明を省略する。
具体的には、図4に示すように、水通路20において、上流側の端部が水道水の供給口21に接続されており、下流側の端部が調温ブロック10に接続されている。水通路20には、水の流れの上流側から順に、開閉弁22、レギュレータ23、及び流量調節弁182Aが設けられている。レギュレータ23は、水通路20を流通する水の圧力を所定圧に調整する。なお、本実施形態では圧力センサ24が設けられていない。
湯通路30において、上流側の端部がタンク40内にその底部付近まで挿入されており、下流側の端部が調温ブロック10に接続されている。湯通路30には、湯の流れの上流側から順に、ポンプ31、レギュレータ133、温度センサ35、及び流量調節弁183Aが設けられている。本実施形態では、戻し通路32及び調節弁33が設けられておらず、代わりにレギュレータ133が設けられている。レギュレータ133は、湯通路30を流通する湯の圧力を所定圧に調整する。水通路20のレギュレータ23と湯通路30のレギュレータ133とは、同一の圧力(例えば0.1MPa)に設定されている。すなわち、レギュレータ23,133によって圧力調整手段が構成されている。なお、本実施形態では圧力センサ34が設けられていない。
水通路20において、流量調節弁182Aと調温ブロック10との間に、湯通路30が接続されている。換言すれば、湯通路30において、流量調節弁183Aと調温ブロック10との間に、水通路20が接続されている。そして、水通路20及び湯通路30において、互いの接続部分よりも下流側の部分は共通供給通路126となっている。共通供給通路126は調温ブロック10に接続されており、この共通供給通路126を通じて水と湯との混合湯が調温ブロック10に供給される。
排出通路50において、上流側の端部が調温ブロック10に接続されており、下流側の端部が混合湯の排出口52に接続されている。排出通路50には、混合湯の流れの上流側から順に、流量調節弁182B及び開閉弁51が設けられている。
回収通路60において、上流側の端部が調温ブロック10に接続されており、下流側の端部がタンク40内に挿入されている。回収通路60には、流量調節弁183Bが設けられている。
排出通路50において、調温ブロック10と流量調節弁182Bとの間に、回収通路60が接続されている。換言すれば、回収通路60において、調温ブロック10と流量調節弁183Bとの間に、排出通路50が接続されている。そして、排出通路50及び回収通路60において、互いの接続部分よりも上流側の部分は共通流出通路127となっている。共通流出通路127は調温ブロック10に接続されており、この共通流出通路127を通じて混合湯が調温ブロック10から流出する。
上記流量調節弁182A,183A,182B,183Bは、公知のエアオペレート式の二方弁であり、操作圧を印加する電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bをそれぞれ有している。そして、流量調節弁182A,183A,182B,183Bは、各電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bからの操作圧に基づいて、各通路20,30,50,60を流通する流体の流量を調節する。本実施形態では、流量調節弁182A,183A,182B,183Bは全て同一の構成を有しており、電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bは全て同一の構成を有している。
そして、流量調節弁182A,183Aにより、水通路20,湯通路30を通じて共通供給通路126へ供給する水,湯の流量をそれぞれ調節する。これにより、これら水と湯との混合比(流量比)が調節され、共通供給通路26を通じて調温ブロック10へ供給される混合湯の温度が調節される。なお、これらの流量調節弁182A,183Aにより、混合比調節手段が構成される。
また、流量調節弁182B,183Bにより、共通流出通路127から排出通路50,回収通路60へ流出する混合湯の流量をそれぞれ調節する。これにより、調温ブロック10を流通した混合湯の分配比(流量比)、ひいてはタンク40への混合湯の回収率が調節される。なお、これらの流量調節弁182B,183Bにより、分配比調節手段が構成される。
共通供給通路126と共通流出通路127とは調温ブロック10を介して接続されており、共通供給通路126を通じて調温ブロック10へ流入した混合湯は、全て共通流出通路127へ流出するようになっている。このため、共通供給通路126を流通する混合湯の流量と、共通流出通路127を流通する混合湯の流量とは等しくなっている。すなわち、水通路20を通じて調温ブロック10へ供給される水及び湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の合計流量と、排出通路50を通じて排出口52へ排出される混合湯及び回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の合計流量とは等しくなっている。
温度制御システムは、ワークWの温度制御に係る各種制御を実行する制御装置170(第1制御手段及び第2制御手段)を備えている。制御装置170は、CPUや各種メモリ等を有してなる演算部としてのマイクロコンピュータを備えている。制御装置170には、温度センサ35,73により検出される温度T2,Tw、及びレベルセンサ43A〜43Cにより検出される液面位置情報等が逐次入力される。制御装置170は、これらの情報に基づいて、電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bの駆動状態を制御することにより、流量調節弁182A,183A,182B,183Bの開度をそれぞれ制御する。これにより、ワークWの温度が所望の温度に制御されるとともに、調温ブロック10を流通した混合湯の回収率が制御される。
次に、図5のフローチャートを参照して、温度制御の処理手順について説明する。本処理は、制御装置170により所定の周期をもって繰返し実行される。本実施形態の温度制御では、第1実施形態の温度制御と比較して、S10の処理が省略されており、S11〜S13,S17〜S19の処理は同一であり、S14〜S16の処理がS24〜S26の処理に変更されている。なお、第1実施形態の温度制御と同一の処理については、同一のステップ番号を付することにより説明を省略する。また、本処理の実行に先立って、水通路20の開閉弁22及び排出通路50の開閉弁51がそれぞれ開かれる。
本実施形態では、水通路20,湯通路30にそれぞれ設けられたレギュレータ23,133により、共通供給通路126へ供給される水の圧力と湯の圧力とが等しくなるように調整されている。このため、第1実施形態の温度制御において、混合弁へ供給される第1流体の圧力と第2流体の圧力とが等しくなるように調整する処理(S10)は、本実施形態では省略されている。
そして、流量調節弁183Aへ供給される湯の温度が設定温度となるように調整し(S11)、ワークWの目標温度Ttが入力されるとともに(S12)、ワークWの温度Twを検出する(S13)。
これらのワークの目標温度及び検出温度に基づいて流量調節弁の制御量を算出する(S24)。具体的には、制御装置170は、ワークWの検出温度Twを目標温度Ttに制御すべく、流量調節弁182A,183Aの開度を制御するための制御量Fmを算出する。例えば、ワークWの目標温度Ttと検出温度Twとの偏差に基づくPID演算により、流量調節弁182A,183Aの開度をフィードバック制御するための制御量Fmを算出する。
こうして算出された流量調節弁の制御量を、各流量調節弁の目標開度に変換する(S25)。具体的には、制御装置170は、制御量Fmの増大に伴って、湯通路30の流量調節弁183Aの目標開度が大きくなり、水通路20の流量調節弁182Aの目標開度が小さくなるように設定する。すなわち、制御量Fmの増大に伴って、湯通路30を通じて共通供給通路126へ流通する湯の比率が高くなり、水通路20を通じて共通供給通路126へ流通する水の比率が低くなるように、流量調節弁183A,182Aの目標開度を設定する。
こうした処理によれば、ワークWの目標温度Ttに対して検出温度Twが低いほど、湯通路30から流量調節弁183Aを介して調温ブロック10へ供給される湯の比率(流量)が増やされ、水通路20から流量調節弁182Aを介して調温ブロック10へ供給される水の比率(流量)が減らされる。
また、排出通路50の流量調節弁182Bの目標開度を水通路20の流量調節弁182Aの目標開度に等しく設定し、回収通路60の流量調節弁183Bの目標開度を湯通路30の流量調節弁183Aの目標開度に等しく設定する。このため、調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が高くなるように、排出通路50の流量調節弁182Bと回収通路60の流量調節弁183Bとが制御される。一方、調温ブロック10へ供給される湯の比率が低いほど、すなわち調温ブロック10へ供給される常温の水道水の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が低くなるように、排出通路50の流量調節弁182Bと回収通路60の流量調節弁183Bとが制御される。
続いて、各流量調節弁の目標弁体位置に基づいて、対応する各電空レギュレータを駆動する(S26)。具体的には、制御装置170は、流量調節弁182A,183A,182B,183Bの電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bに、それぞれ目標開度を駆動信号として出力する。このとき、水通路20の流量調節弁182Aと排出通路50の流量調節弁182Bとでは目標開度が等しいため、電空レギュレータ184A,184Bに同一の駆動信号を同時に出力する。また、湯通路30の流量調節弁183Aと回収通路60の流量調節弁183Bとでは目標開度が等しいため、電空レギュレータ185A,185Bに同一の駆動信号を同時に出力する。
各電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bでは、流量調節弁182A,183A,182B,183Bの開度をそれぞれ目標開度にすべく、流量調節弁182A,183A,182B,183Bに印加される操作圧をそれぞれ制御する。電空レギュレータ184A,185A,184B,185Bの制御回路は、例えば目標開度と検出開度との偏差に基づくPID演算により、流量調節弁182A,183A,182B,183Bに印加される操作圧をフィードバック制御する。これにより、流量調節弁182A,183A,182B,183Bの検出開度がそれぞれ目標開度となるように制御され、流量調節弁182A,183Aにより水と湯との混合比が調節され、流量調節弁182B,183Bにより混合湯の分配比が調節される。
ここで、上述したように、水通路20を通じて調温ブロック10へ供給される水及び湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の合計流量と、排出通路50を通じて排出口52へ排出される混合湯及び回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の合計流量とは等しくなっている。そして、流量調節弁182A,183A,182B,183Bは全て同一の二方弁であり、水通路20の流量調節弁182Aと排出通路50の流量調節弁182Bとが同一の目標開度となるように制御され、湯通路30の流量調節弁183Aと回収通路60の流量調節弁183Bとが同一の目標開度となるように制御される。このため、湯通路30を通じて調温ブロック10へ供給される湯の流量と、回収通路60を通じてタンク40へ回収される混合湯の流量とが等しくなる。
続いて、タンク内の流体量が適正であるか否か判定され(S17)、流体量が適正であると判定された場合には(S17:YES)、流体量が適正である旨を表示し(S18)、流体量が適正でないと判定された場合には(S17:NO)、流体量が不適正である旨を警告する(S19)。こうして、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。なお、第1実施形態と異なる利点についてのみ以下に示す。
・調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が高くなるように流量調節弁182B,183Bが制御される。このため、混合湯に残存しているエネルギを効率的に回収することができる一方、タンク40内の水の温度を調整するために用いられるエネルギの量を抑制することができる。これらの結果、温度制御システムにおけるエネルギの消費量を抑制することができる。
・それぞれ駆動信号により制御される同一の二方弁が、水通路20を流通する水道水の流量を調節する流量調節弁182Aと、排出通路50を流通する混合湯の流量を調節する流量調節弁182Bとして用いられている。そして、これらの流量調節弁182A,182Bが同一の目標開度となるように制御される。このため、制御装置170を共通化して、流量調節弁182A,182Bを同一の駆動信号により制御することができる。また、同様にして、制御装置170を共通化して、湯通路30の流量調節弁183Aと回収通路60の流量調節弁183Bとを同一の駆動信号により制御することができる。その結果、温度制御システムの制御系統を共通化して、コストの低減を図ることができる。
上記各実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
・第1流体(水道水)の供給圧力と第2流体(湯)の供給圧力とが等しくなるように調整する構成及び処理を、第1実施形態と第2実施形態とで入れ替えてもよい。また、ポンプ31として可変容量ポンプを採用し、制御装置70は、湯の圧力P2を水の圧力P1に等しくすべく、可変容量ポンプの吐出量を制御してもよい。具体的には、ポンプの回転速度を制御するインバータを備え、水の圧力P1と湯の圧力P2との偏差に基づくPID演算により、ポンプの回転速度をフィードバック制御することができる。なお、この場合には、戻し通路32の調節弁33を一定開度又は全閉にしておけばよい。
・上記第1実施形態では、制御装置70は、電空レギュレータ81A,81Bをそれぞれ介して、混合弁80A及び分配弁80Bを同一の駆動信号により同期させて制御したが、必ずしも混合弁80A及び分配弁80Bを完全に同期させて制御しなくてもよい。上記第2実施形態においても同様である。
・上記第1実施形態では、混合弁80Aと分配弁80Bとを同一の三方弁により構成したが、これらは必ずしも同一の三方弁でなくてもよく、例えば弁構造は異なるものの同一の駆動信号により制御可能な三方弁であってもよい。こうした構成であっても、調温ブロック10へ供給される湯の比率とタンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくするように、分配弁80Bを制御することにより、第1実施形態と同様の利点を得ることができる。
・上記第2実施形態では、流量調節弁182A,183A,182B,183Bを全て同一の二方弁により構成したが、これらは必ずしも同一の二方弁でなくてもよく、例えば弁構造は異なるものの同一の駆動信号により制御可能な二方弁であってもよい。こうした構成であっても、調温ブロック10へ供給される湯の比率とタンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくするように、流量調節弁182B,183Bを制御することにより、第2実施形態と同様の利点を得ることができる。
・混合弁80Aへ供給される湯の温度T2が設定温度Thとなるように調整する場合に、湯の温度T2が設定温度Thとなってから図3の温度制御を開始してもよいし、この温度制御を実行しつつ湯の温度T2を設定温度Thに調整してもよい。
・上記各実施形態では、水道水の供給口21から水を供給するとともに、調温ブロック10を流通した混合湯を排出口52から排出するようにした。しかしながら、調温ブロック10を流通した混合湯を常温まで冷却して、これを常温の水としてポンプにより水通路20へ供給するようにしてもよい。こうした構成によれば、常温の水の使用量を抑制することができる。また、そうした構成において、水道から供給される水を使用せず、循環される常温の水のみを使用するようにしてもよい。
ここで、温度制御を開始する際や、ワークWの目標温度Ttが湯の温度T2よりも低く設定されている場合には、共通供給通路26,調温ブロック10,共通流出通路27の内部に、湯の温度T2よりも低い温度の水(混合湯)が存在している。このため、ワークWの目標温度Ttが湯の温度T2に近い温度に設定又は変更されたとしても、しばらくの間はこの低い温度の水が調温ブロック10へ供給されることとなる。これに対して、温度制御の開始時又はワークWの目標温度Ttが高くされた場合において、調温ブロック10を流通した混合湯をタンク40へ回収せず、水通路20へ一定期間循環させるようにしてもよい。これにより、低温の水がタンク40へ回収されることを抑制することができる。
なお、共通供給通路26や共通流出通路27を流通する混合湯の温度を検出して、この検出された温度に基づいてこうした制御を行ってもよい。また、共通供給通路26や共通流出通路27を流通する混合湯の流量を検出して、この検出された流量やその積算流量に基づいてこうした制御を実行する期間を調節してもよい。
・また、調温ブロック10を流通した混合湯をポンプにより水通路20へ供給して、このように循環される水のみを使用する場合において、その循環経路に水を冷却する冷却装置を備えるようにしてもよい。例えば、ワークWの研削加工において発生する熱が多い場合には、調温ブロック10へ供給される常温の水の比率を100%にしても冷却能力が不足することも考えられる。このような場合には、冷却装置を作動させて、循環される水の温度を低下させるようにするとよい。
・調温ブロック10へ供給される湯の比率と、タンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくするように、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)を制御したとしても、混合弁80A及び分配弁80Bの個体差やタンク40内の水の蒸発等によって、調温ブロック10へ供給される湯の流量とタンク40へ回収される混合湯の流量とが等しくならないおそれがある。この場合、タンク40からの湯の流出量と、タンク40への混合湯の流入量とが異なるため、タンク40内の水の量を一定に保つことができないおそれがある。
この点、タンク40内の水の液面が所定位置に達しているか否かを検出するレベルセンサ43A〜43C(検出手段)を備え、制御装置70(170)は、レベルセンサ43Cにより水の液面が所定の低位置に達していないことが検出された場合に、タンク40へ回収される混合湯の比率を調温ブロック10へ供給される湯の比率よりも高くするように、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)の制御を変更するといった構成や、制御装置70(170)は、レベルセンサ43Aにより水の液面が所定の高位置に達していることが検出された場合に、タンク40へ回収される混合湯の比率を調温ブロック10へ供給される湯の比率よりも低くするように、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)の制御を変更するといった構成を採用することが有効である。
これらの構成によれば、タンク40内の水の量が、下限量よりも少なくなった場合や上限量よりも多くなった場合に、タンク40へ回収される混合湯の比率を変更することにより、タンク40内の水の量を適切な量に戻すことができる。したがって、タンク40に水を補充するといった操作や、タンク40から水を排出するといった操作を別途行うことなく、タンク40内の水の量を適切な量に保つことができる。
また、湯通路30を流通する湯の流量を検出する流量検出手段(流量センサ)と、回収通路60を流通する混合湯の流量を検出する流量検出手段(流量センサ)とを備え、これらの流量検出手段の検出値に基づいて、湯通路30を流通する湯の流量と回収通路60を流通する混合湯の流量とを等しくするように、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)の制御を変更してもよい。こうした構成によっても、調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が高くなるように分配弁80B(流量調節弁182B,183B)が制御されるとともに、タンク40内の水の量を一定に保つことができる。
・上記各実施形態では、調温ブロック10へ供給される湯の比率と、タンク40へ回収される混合湯の比率とを等しくするように、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)を制御した。しかしながら、これらの比率は必ずしも等しくなくてもよく、調温ブロック10へ供給される湯の比率が高いほど、タンク40へ回収される混合湯の比率が高くなるように分配弁80B(流量調節弁182B,183B)を制御するものであればよい。例えば、ワークWの目標温度Ttと検出温度Twとの偏差が大きくなるのに伴って、調温ブロック10へ供給される湯の比率を高くする態様と、タンク40へ回収される混合湯の比率を高くする態様とを互いに異ならせてもよい。
・混合弁80A(流量調節弁182A,183A)や、分配弁80B(流量調節弁182B,183B)として、エアオペレート式の弁に限らず、電動式の弁や電磁式の弁を採用することもできる。
・上記各実施形態では、常温の水道水と温度調整された湯とを混合して、ワークWの温度が目標温度となるように制御したが、ワークWの目標温度が常温よりも低い場合には、常温の水道水と常温よりも低い温度に調整された冷却水とを混合して、ワークWの温度が目標温度となるように制御すればよい。この場合は、調温ブロック10へ供給される冷却水の比率が高いほど、タンク40へ回収される水道水と冷却水との混合水の比率が高くなるように分配弁80B(流量調節弁182B,183B)を制御する。
こうした構成であっても、混合水に残存しているエネルギ(ワークWの冷却に使用可能なエネルギ)を効率的に回収することができるとともに、タンク40内の水を冷却するために用いられるエネルギの量を抑制することができる。これらの結果、温度制御システムにおけるエネルギの消費量を抑制することができる。
・調温ブロック10に流通させる流体として、油や他の液体を採用することもできる。例えば、ガルデンやフロリナートを採用することができる。こうした液体によれば、水では固体や気体に状態変化する温度においても、ワークWの温度を制御するために使用することができる。
・上記各実施形態では、ワークWの温度Twを検出して、この検出された温度Twが目標温度Ttとなるように制御したが、調温ブロック10の温度を検出して、この温度が目標温度となるように制御してもよい。その他、調温ブロック10及びワークWに当接する部材の温度を検出して、この温度が目標温度となるように制御してもよい。