本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光束は、整形光学系2により所要の断面形状の光束に変換された後、例えば輪帯照明用の回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ4に入射する。
アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と回折光学素子3の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的には、輪帯照明用の回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。
したがって、回折光学素子3に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、輪帯状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中において、その瞳位置またはその近傍には、補正フィルター6が配置されている。補正フィルター6は平行平面板の形態を有し、その光学面にはクロムや酸化クロム等からなる遮光性ドットの濃密パターンが形成されている。すなわち、補正フィルター6は、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する。補正フィルター6の具体的な作用については後述する。
アフォーカルレンズ4を介した光は、σ値(σ値=照明光学系のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)8に入射する。マイクロフライアイレンズ8は、例えば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であって、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。
マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロフライアイレンズ8として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置またはその近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
したがって、マイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ8における各微小レンズの入射面(すなわち単位波面分割面)は、例えばZ方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状であって、マスクM上において形成すべき照明領域の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。
マイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の位置(ひいては照明瞳の位置)には、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源(瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、遮光部9が配置されている。遮光部9の構成および作用については後述する。
また、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、必要に応じて、輪帯状の二次光源に対応した輪帯状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り(不図示)が配置されている。照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
マイクロフライアイレンズ8および遮光部9を経た光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、マイクロフライアイレンズ8の微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとからなる結像光学系12を介して、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
マスクステージMS上に保持されたマスクMには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。マスクMのパターン領域を透過した光は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。すなわち、マスクM上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上においてもY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域(実効露光領域)にパターン像が形成される。
こうして、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式にしたがって、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内において、X方向(走査方向)に沿ってマスクステージMSとウェハステージWSとを、ひいてはマスクMとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には静止露光領域のY方向寸法に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有するショット領域(露光領域)に対してマスクパターンが走査露光される。
本実施形態では、上述したように、マイクロフライアイレンズ8により形成される二次光源を光源として、照明光学系(2〜12)の被照射面に配置されるマスクMをケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系(2〜12)の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。
なお、瞳強度分布とは、照明光学系(2〜12)の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。マイクロフライアイレンズ8による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ8の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、回折光学素子3、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7、およびマイクロフライアイレンズ8は、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、複数極照明(2極照明、4極照明、8極照明など)用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、複数極照明を行うことができる。複数極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに複数極状(2極状、4極状、8極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、複数極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした複数の所定形状(円弧状、円形状など)の照野からなる複数極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ複数極状の二次光源が形成される。
また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。回折光学素子3の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
以下の説明では、本実施形態の作用効果の理解を容易にするために、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、図2に示すような4極状の瞳強度分布(二次光源)20が形成されるものとする。また、本発明の原理の理解を容易にするために、本実施形態にかかる遮光部9ではなく、X方向にほぼ平行に延びる単一のフィン部材(プレート状の形態を有する遮光部材)90が、4極状の瞳強度分布20の形成面の直後に配置されているものとする。また、以下の説明において単に「照明瞳」という場合には、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳を指すものとする。
図2を参照すると、照明瞳に形成される4極状の瞳強度分布20は、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の円弧状の実質的な面光源(以下、単に「面光源」という)20a,20bと、光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた一対の円弧状の実質的な面光源20c,20dとを有する。なお、照明瞳におけるX方向はマイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの短辺方向であって、ウェハWの走査方向に対応している。また、照明瞳におけるZ方向は、マイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの長辺方向であって、ウェハWの走査方向と直交する走査直交方向(ウェハW上におけるY方向)に対応している。
ウェハW上には、図3に示すように、Y方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域ERが形成され、この静止露光領域ERに対応するように、マスクM上には矩形状の照明領域(不図示)が形成される。ここで、静止露光領域ER内の1点に入射する光が照明瞳に形成する4極状の瞳強度分布は、入射点の位置に依存することなく、互いにほぼ同じ形状を有する。しかしながら、4極状の瞳強度分布を構成する各面光源の光強度は、入射点の位置に依存して異なる傾向がある。
具体的には、図4に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布21の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源21cおよび21dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源21aおよび21bの光強度よりも大きくなる傾向がある。一方、図5に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1からY方向に間隔を隔てた周辺の点P2,P3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布22の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源22cおよび22dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源22aおよび22bの光強度よりも小さくなる傾向がある。
一般に、照明瞳に形成される瞳強度分布の外形形状にかかわらず、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に関する瞳強度分布(中心点P1に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)のZ方向に沿った光強度分布は、図6(a)に示すように、中央において最も小さく周辺に向かって増大する凹曲線状の分布を有する。一方、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、図6(b)に示すように、中央において最も大きく周辺に向かって減少する凸曲線状の分布を有する。
そして、瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、静止露光領域ER内のX方向(走査方向)に沿った入射点の位置にはあまり依存しないが、静止露光領域ER内のY方向(走査直交方向)に沿った入射点の位置に依存して変化する傾向がある。このように、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)がそれぞれほぼ均一でない場合、ウェハW上の位置毎にパターンの線幅がばらついて、マスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができない。
本実施形態では、上述したように、アフォーカルレンズ4の瞳位置またはその近傍に、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する補正フィルター6が配置されている。また、アフォーカルレンズ4の瞳位置は、その後側レンズ群4bとズームレンズ7とにより、マイクロフライアイレンズ8の入射面と光学的に共役である。したがって、補正フィルター6の作用により、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される光強度分布が調整(補正)され、ひいてはマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される瞳強度分布も調整される。
ただし、補正フィルター6は、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を、各点の位置に依存することなく一律に調整する。その結果、補正フィルター6の作用により、例えば中心点P1に関する4極状の瞳強度分布21がほぼ均一になるように、ひいては各面光源21a〜21dの光強度が互いにほぼ等しくなるように調整することはできるが、その場合には周辺点P2、P3に関する4極状の瞳強度分布22の面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の差は却って大きくなってしまう。
すなわち、補正フィルター6の作用により、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整するには、補正フィルター6とは別の手段により、各点に関する瞳強度分布を互いに同じ性状の分布に調整する必要がある。具体的には、例えば中心点P1に関する瞳強度分布21および周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22において、面光源21a,21bと面光源21c,21dとの光強度の大小関係と面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の大小関係とをほぼ同じ比率で一致させる必要がある。
本実施形態では、中心点P1に関する瞳強度分布の性状と周辺点P2,P3に関する瞳強度分布の性状とをほぼ一致させるために、周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22において面光源22a,22bの光強度の方が面光源22c,22dの光強度よりも小さくなるように調整する調整手段として遮光部9を備えている。しかしながら、上述したように、本発明の原理の理解を容易にするために、本実施形態にかかる遮光部9と同じ原理にしたがって減光作用を奏する単一のフィン部材90を備えた構成について考察する。図7および図8は、単一のフィン部材90の作用を説明する図である。図9は、単一のフィン部材90の減光率特性を示す図である。
プレート状の形態を有するフィン部材90は、図2に示すように、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20a,20bに対応するようにX方向にほぼ平行に位置決めされている。具体的には、フィン部材90は、例えば外形形状が矩形状の平行平面板の形態を有し、その厚さ方向(Z方向)が照明瞳の面(XZ平面)とほぼ平行で、且つその幅方向(Y方向)が光軸AXの方向とほぼ平行になるように配置されている。すなわち、フィン部材90の厚さ方向は、マイクロフライアイレンズ8の矩形状の単位波面分割面の長辺方向とほぼ一致している。
したがって、4極状の瞳強度分布20のうち、面光源20aおよび20bからの光はフィン部材90の作用を受けるが、面光源20cおよび20dからの光はフィン部材90の作用を受けない。この場合、図7に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の中心点P1’に達する光は、フィン部材90の照明瞳側の端面におけるXZ平面に対して入射角度0で入射するので、フィン部材90により遮られる光の量は僅かである。換言すれば、中心点P1に関する瞳強度分布21の面光源21aおよび21bからの光のフィン部材90による減光率は0%に近い値になる。
一方、図8に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の周辺点P2’,P3’に達する光は、フィン部材90の照明瞳側の端面におけるXZ平面に対して入射角度±θで入射するため、フィン部材90により遮られる光の量は比較的多い。換言すれば、周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22の面光源22aおよび22bからの光のフィン部材90による減光率は、入射角度±θの絶対値の大きさに応じて比較的大きな値になる。
このように、被照射面である静止露光領域ER上の1点に向かう光のフィン部材90による減光率は、図9に示すように、フィン部材90の照明瞳側の端面におけるXZ平面に対する入射角度の絶対値の大きさに応じて増大するように、すなわち静止露光領域ERの中心から周辺にかけて増大するように構成されている。さらに具体的には、フィン部材90は、マイクロフライアイレンズ8の矩形状の単位波面分割面の長辺方向(Z方向:静止露光領域ER上ではY方向)に沿って、静止露光領域ERの中心から周辺へ減光率が増大するように構成されている。
なお、図7および図8において、参照符号B1は面光源20a(21a,22a)のX方向に沿った最外縁の点(図2を参照)を示し、参照符号B2は面光源20b(21b,22b)のX方向に沿った最外縁の点(図2を参照)を示している。さらに、図7および図8に関連する説明の理解を容易するために、面光源20c(21c,22c)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B3で示し、面光源20d(21d,22d)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B4で示している。ただし、上述したように、面光源20c(21c,22c)および面光源20d(21d,22d)からの光は、フィン部材90の減光作用を受けない。
こうして、中心点P1に関する瞳強度分布21のうち、面光源21aおよび21bからの光は、フィン部材90の減光作用を受けるものの、その光強度はほとんど変化しない。面光源21cおよび21dからの光は、フィン部材90の減光作用を受けないため、その光強度は変化しない。その結果、中心点P1に関する瞳強度分布21は、図10に示すように、フィン部材90の減光作用を受けても、元の分布21とほぼ同じ性状の瞳強度分布21’に僅かに調整されるだけである。すなわち、フィン部材90により調整された瞳強度分布21’においても、Z方向に間隔を隔てた面光源21c,21dの光強度の方がX方向に間隔を隔てた面光源21a’,21b’の光強度よりも大きい性状は維持される。
一方、周辺点P2、P3に関する瞳強度分布22のうち、面光源22aおよび22bからの光は、フィン部材90の減光作用を受けて、その光強度は低下する。面光源22cおよび22dからの光は、フィン部材90の減光作用を受けないため、その光強度は変化しない。その結果、周辺点P2、P3に関する瞳強度分布22は、図11に示すように、フィン部材90の減光作用により、元の分布22とは異なる性状の瞳強度分布22’に調整される。すなわち、フィン部材90により調整された瞳強度分布22’では、Z方向に間隔を隔てた面光源22c,22dの光強度の方がX方向に間隔を隔てた面光源22a’,22b’の光強度よりも大きい性状に変化する。
こうして、フィン部材90の減光作用により、周辺点P2、P3に関する瞳強度分布22は、中心点P1に関する瞳強度分布21’とほぼ同じ性状の分布22’に調整される。同様に、中心点P1と周辺点P2、P3との間でY方向に沿って並んだ各点に関する瞳強度分布、ひいてはウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布も、中心点P1に関する瞳強度分布21’とほぼ同じ性状の分布に調整される。換言すれば、フィン部材90の減光作用により、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布は互いにほぼ同じ性状の分布に調整される。さらに別の表現をすれば、フィン部材90は、各点に関する瞳強度分布を互いにほぼ同じ性状の分布に調整するために必要な所要の減光率特性を有する。
このように、図1に示す照明光学系(2〜12)の構成において、X方向にほぼ平行に延びる単一のフィン部材90を瞳強度分布の形成面(すなわち照明瞳)の直後に配置すると、ウェハW上の静止露光領域ERへの光の入射位置に応じて変化する所要の減光率特性を有し、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整するフィン部材90と、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を一律に調整する補正フィルター6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整することができる。
ただし、図12に示すようにマイクロフライアイレンズ8の矩形状の単位波面分割面8aの短辺方向、すなわちX方向にほぼ平行に延びるフィン部材90を用いる場合、以下のような不都合が発生する可能性がある。なお、図12では、マイクロフライアイレンズ8の一部の単位波面分割面8aだけを示し、図示したすべての単位波面分割面8aに対応して小光源23(ハッチングを施した楕円形で模式的に表す)が形成されている様子を示している。図12の左側の図に示すように単一のフィン部材90がX方向に対して僅かに傾いて(図12では説明の理解を容易するために傾き角が誇張されているが、例えば1度程度の角度だけ傾いて)配置されている場合、図12の右側の図に示すように黒塗りした単位波面分割面8aに対応して形成される小光源23からの光に対して単一のフィン部材90が減光作用を発揮する。換言すると、図12の右側の図において破線で示す単一のフィン部材90に対向する一連の単位波面分割面8aのうち、減光作用を受けない比較的多くの単位波面分割面8aが単一のフィン部材90の長手方向に沿って連続的に存在する。
その結果、図13に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内のある点に関する4極状の瞳強度分布24において、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源24a,24bのうち、例えば一方の面光源24bがフィン部材90の所望の減光作用を受けることができなくなる可能性がある。図13では、X方向にほぼ平行に延びる3つのフィン部材90の面光源24aおよび24bに対する減光作用を、それぞれX方向に延びる線分によって模式的に表している。また、図13では、面光源24aに対して3つのフィン部材90がすべて所望の減光作用を発揮し、面光源24bに対して両端のフィン部材90が所望の減光作用を発揮しているが中央のフィン部材90が減光作用をほとんど発揮していない状態を例示している。この場合、面光源24bを所望の光強度に調整することができず、ひいては光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた面光源24aと24bとの間で光強度のバランスを欠いてしまう。
なお、図2において単一のフィン部材90に加えて、同じくX方向にほぼ平行に延びる1つまたは複数のフィン部材(例えば単一のフィン部材90と同じ構成を有するフィン部材)を配置しても、これらの互いに平行な複数のフィン部材は、単一のフィン部材90と同様に、静止露光領域ERの中心から周辺へ減光率が増大するような性状の減光率特性を有する。また、図2において単一のフィン部材90を光軸AX廻りに適当な角度(例えば45度以下の任意の角度)だけ回転させて単一のフィン部材90がX方向と交差する方向に延びるように配置しても、このX方向に対して傾いた単一のフィン部材90は、X方向にほぼ平行に延びる単一のフィン部材90と同様に、静止露光領域ERの中心から周辺へ減光率が増大するような性状の減光率特性を有する。換言すれば、照明瞳の直後の位置において照明瞳の面(XZ平面)とほぼ平行な面に沿って配置されるフィン部材の数および向きを適宜設定することにより、静止露光領域ERの中心から周辺へ減光率が増大するような所望の減光率特性を確保し、ひいては静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に所望の通り調整することができる。
そこで、本実施形態では、図14に示すように、照明瞳の直後の位置に配置されて照明瞳の面とほぼ平行な面に沿って互いに交差するように延びる一対の遮光部材9aおよび9bからなる遮光部9を備えている。以下、説明を簡単にするために、一対の遮光部材9aおよび9bは、互いに同じ構成(例えば図14の紙面に垂直な面に沿って延びるプレート状の互いに同じ形態)を有し、X方向に対して同じ角度だけ傾いているものとする。すなわち、一対の遮光部材9aおよび9bは、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20aおよび20bと重なる角度範囲で適宜選択された所要の角度だけX方向に対して傾くように、光軸AXを通りX方向に延びる軸線に関して対称に配置されているものとする。
この場合、図15の上側の図に示すように一方の遮光部材9aがX方向に対して比較的大きく傾いて(図15では説明の理解を容易するために傾き角が図14に示す角度よりも大きく誇張されている)配置されているので、図15の下側の図に示すように遮光部材9aの長手方向に沿ってほぼ連続的に点在する黒塗りの単位波面分割面8aに対応して形成される小光源23からの光に対して減光作用が発揮される。同様に、他方の遮光部材9bもX方向に対して比較的大きく傾いて配置されているので、図15の下側の図に示すように遮光部材9bの長手方向に沿ってほぼ連続的に点在する黒塗りの単位波面分割面8aに対応して形成される小光源23からの光に対して減光作用が発揮される。換言すると、図15の下側の図において破線で示す一対の遮光部材9aおよび9bに対向する一連の単位波面分割面8aでは、減光作用を受けない比較的多くの単位波面分割面8aが連続的に存在するような不都合、すなわちX方向にほぼ平行に延びるフィン部材を用いる場合に発生する可能性のある不都合は回避される。
したがって、本実施形態では、X方向にほぼ平行に延びる1つまたは複数のフィン部材90を用いる場合とは異なり、図16に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内のある点に関する4極状の瞳強度分布24において、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源24aおよび24bに対して一対の遮光部材9aおよび9bがともに所要の減光作用を発揮し、面光源24aと24bとの間で光強度のバランスを欠くことは回避される。図16では、X方向に対して傾いて配置された一対の遮光部材9a,9bの面光源24aおよび24bに対する減光作用を、それぞれX方向に対して傾いた線分によって模式的に表している。
なお、本実施形態では、遮光部9を構成する一対の遮光部材9aおよび9bが、瞳強度分布の形成面である照明瞳の直後の位置に配置され、且つ光軸AX方向に所定の寸法を有するプレート状に形成されている。したがって、図17に示すように、いわゆる視差の影響により、一対の遮光部材9a,9bの瞳強度分布に対する減光作用の位置が、ウェハW上の静止露光領域ER内の着目する点の位置に応じてZ方向に位置ずれする。一対の遮光部材9a,9bの瞳強度分布に対する減光作用の位置が視差の影響を受けて位置ずれすることは、単一のフィン部材90に関する図7および図8などから容易に推測される。
図17では、一対の遮光部材9a,9bの瞳強度分布に対する減光作用の位置を、それぞれX方向に対して傾いた線分9aa,9baによって模式的に表している。具体的に、図17の中央の図に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布25(25a〜25d)に対する一対の遮光部材9a,9bの減光作用の位置9aa,9baが、視差の影響をほとんど受けない。したがって、X方向に間隔を隔てた面光源25aおよび25bは、一対の遮光部材9a,9bによる所要の減光作用を受ける。
一方、図17の左側および右側の図に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1からY方向に間隔を隔てた周辺の点P2またはP3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布26(26a〜26d)または瞳強度分布27(27a〜27d)に対する一対の遮光部材9a,9bの減光作用の位置9aa,9baが、視差の影響を受けてZ方向に位置ずれする。すなわち、図17の左側の図に示すように、X方向に間隔を隔てた面光源26aおよび26bのうち、面光源26aは遮光部材9bによる減光作用を受けるが、遮光部材9aによる減光作用を受けなくなる可能性がある。逆に、面光源26bは、遮光部材9aによる減光作用を受けるが、遮光部材9bによる減光作用を受けなくなる可能性がある。
また、図17の右側の図に示すように、X方向に間隔を隔てた面光源27aおよび27bのうち、面光源27aは遮光部材9aによる減光作用を受けるが、遮光部材9bによる減光作用を受けなくなる可能性がある。逆に、面光源27bは、遮光部材9bによる減光作用を受けるが、遮光部材9aによる減光作用を受けなくなる可能性がある。ただし、本実施形態では、図17を参照して明らかなように、一対の遮光部材9aと9bとが互いに交差するように配置されているので、静止露光領域ER内の任意の点に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布において、X方向に間隔を隔てた一対の面光源に対する減光作用は視差の影響を受けても互いに等しく、ひいてはX方向に間隔を隔てた一対の面光源の間で光強度のバランスを欠くことはない。
ちなみに、一方の遮光部材9aだけを用いる比較例では、図18に示すように、X方向に間隔を隔てた一対の面光源に対する減光作用が視差の影響を受けて全く異なるものとなる可能性がある。すなわち、図18の中央の図に示すように、面光源25aおよび25bは視差の影響をほとんど受けることなく遮光部材9aによる所要の減光作用を受ける。しかしながら、図18の左側の図に示すように、面光源26bは遮光部材9aによる減光作用を受けるが、面光源26aは遮光部材9aによる減光作用を受けなくなる可能性がある。また、図18の右側の図に示すように、面光源27aは遮光部材9aによる減光作用を受けるが、面光源27bは遮光部材9aによる減光作用を受けなくなる可能性がある。このように視差の影響により対向する一対の面光源の間で光強度のバランスを欠く可能性は、一方の遮光部材9aに加えて、遮光部材9aとほぼ平行に延びる1つまたは複数の遮光部材(例えば遮光部材9aと同じ構成を有するフィン部材)を配置しても同様である。
以上のように、本実施形態の照明光学系(2〜12)では、照明瞳の直後の位置に配置されて照明瞳の面とほぼ平行な面に沿って互いに交差するように延びる一対の遮光部材9aおよび9bからなる遮光部9を備えている。その結果、X方向にほぼ平行に延びる単一のフィン部材90またはX方向に対してほぼ同じ向きに傾いて配置される1つまたは複数のフィン部材を用いる場合に発生する可能性のある不都合を回避しつつ、ウェハW上の静止露光領域ERへの光の入射位置に応じて変化する所要の減光率特性を有し、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する一対の遮光部材9aおよび9bと、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を一律に調整する補正フィルター6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整することができる。
したがって、本実施形態の露光装置(1〜WS)では、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点での瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する照明光学系(2〜12)を用いて、マスクMの微細パターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいてはマスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができる。
本実施形態において、ウェハ(被照射面)W上の光量分布が、例えば遮光部9の減光作用(調整作用)の影響を受けることが考えられる。この場合、必要に応じて、公知の構成を有する光量分布調整部の作用により、静止露光領域ER内の照度分布または静止露光領域(照明領域)ERの形状を変更することができる。具体的に、照度分布を変更する光量分布調整部としては、特開2001−313250号および特開2002−100561号(並びにそれらに対応する米国特許第6771350号および第6927836号)に記載された構成および手法を用いることができる。また、照明領域の形状を変更する光量分布調整部としては、国際特許公開第WO2005/048326号パンフレット(およびそれに対応する米国特許公開第2007/0014112号公報)に記載された構成および手法を用いることができる。
なお、上述の実施形態では、光軸AXの位置またはその近傍において実際に部材同士が交差する一対の遮光部材9aおよび9bを用いている。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図19に示すように、面光源20aに対向して配置された一対の遮光部材9cおよび9dと、面光源20bに対向して配置された一対の遮光部材9eおよび9fとを用いることにより、上述の実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。ここで、遮光部材9cおよび9fは遮光部材9aの一部分に対応し、遮光部材9dおよび9eは遮光部材9bの一部分に対応している。そして、これらの遮光部材9c〜9fのX方向に対する傾き角度を適宜変更しても、上述の実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。
すなわち、本発明にかかる遮光部は、照明瞳の面とほぼ平行な面に沿って互いに交差するように延びる少なくとも2つの遮光部材を有し、被照射面上の1点に向かう光の遮光部による減光率が被照射面の中心から周辺にかけて増大するように構成されていることが重要である。ここで、例えば光軸を通る所定の軸線に関してほぼ対称に配置される2つの遮光部材(図19における一対の遮光部材9cと9d、または一対の遮光部材9eと9f)は実際に部材同士が交差している必要はなく、長手方向の延長線が互いに交差するように配置されていればよい。このように、遮光部9の構成については、様々な形態が可能である。
一例として、図20に示すように、照明瞳の面とほぼ平行な面に沿って網目状の形態を有する遮光部9を用いることができる。遮光部9は、面光源20aからの光に作用するように配置されて網目状の形態を有する第1遮光部材群9gと、面光源20bからの光に作用するように配置されて網目状の形態を有する第2遮光部材群9hとを有する。第1遮光部材群9gと第2遮光部材群9hとは、例えば光軸AXを通りZ方向に延びる軸線および光軸AXを通りX方向に延びる軸線に関してほぼ対称に構成されている。
この場合、網目状の第1遮光部材群9gおよび第2遮光部材群9hを構成する単位部材としての遮光部材9jを、1つの矩形状の網目の一辺に対応する部材と考えることもできるし、複数の隣接する網目の各辺を結んで直線状に延びる部材と考えることもできる。いずれにしても、遮光部材9jは、例えば図20の紙面(XZ平面)に垂直な面に沿って延びるプレート状の形態を有し、照明瞳の面とほぼ平行な面に沿って互いに交差するように配置されている。図20に示す構成を有する遮光部9は、例えば矩形状の外形形状を有する金属プレート91に、放電加工、エッチング加工などを施すことにより得られる。
なお、図21に示すように、例えばピッチの比較的小さいパターンの転写に際して比較的外径の大きい(照明NAの比較的大きい)4極状の瞳強度分布20(20a〜20d)を形成し、ピッチの比較的大きいパターンの転写に際して比較的外径の小さい(照明NAの比較的小さい)4極状の瞳強度分布28(28a〜28d)を形成することがある。この場合、遮光部9の第1遮光部材群9gおよび第2遮光部材群9hにおいて、遮光部材9jの光軸AX方向(Y方向)の寸法が位置により異なる構成を採用することにより、一対の面光源20aおよび20bに対して所要の減光作用を発揮するとともに、一対の面光源28aおよび28bに対しても所要の減光作用を発揮することができる。
具体的に、図21の構成では、一対の面光源20aおよび20bに対向して配置される遮光部材群9gaおよび9haにおける遮光部材の光軸AX方向の寸法よりも、一対の面光源28aおよび28bに対向して配置される遮光部材群9gbおよび9hbにおける遮光部材の光軸AX方向の寸法の方が小さく設定されている。換言すれば、光軸AXから離れて配置された遮光部材9jの光軸AX方向の寸法よりも、光軸AXの近くに配置された遮光部材9jの光軸AX方向の寸法の方が小さく設定されている。
あるいは、図22に示すように、遮光部9の第1遮光部材群9gおよび第2遮光部材群9hにおいて、遮光部材群の網目の粗さが位置により異なる構成を採用することにより、一対の面光源20aおよび20bに対して所要の減光作用を発揮するとともに、一対の面光源28aおよび28bに対しても所要の減光作用を発揮することができる。具体的に、図22の構成では、一対の面光源20aおよび20bに対向して配置される遮光部材群9gc,9hcの網目よりも、一対の面光源28aおよび28bに対向して配置される遮光部材群9gd,9hdの網目の方が粗く設定されている。換言すれば、光軸AXから離れて配置された遮光部材群9gc,9hcの網目よりも、光軸AXの近くに配置された遮光部材群9gd,9hdの網目の方が粗く設定されている。
なお、上述の説明では、照明瞳に4極状の瞳強度分布が形成される変形照明、すなわち4極照明を例にとって、本発明の作用効果を説明している。しかしながら、4極照明に限定されることなく、例えば輪帯状の瞳強度分布が形成される輪帯照明、4極状以外の他の複数極状の瞳強度分布が形成される複数極照明などに対しても、同様に本発明を適用して同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
また、上述の説明では、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳の直後に遮光部9を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳の直前に遮光部9を配置することもできる。また、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の別の照明瞳の直前または直後、例えば結像光学系12の前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとの間の照明瞳の直前または直後に遮光部9を配置することもできる。なお、照明瞳の位置に遮光部9が配置される場合、遮光部9が光軸方向に沿って寸法を有するため、照明瞳の直前および直後に遮光部9が配置されているものと見なすことができる。
なお、上述の説明における補正フィルター6としては、例えば特開2005−322855号公報や特開2007−27240号公報に開示されているものを参照することができる。また、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を持たせるための遮光性ドットの濃密パターンを有する補正フィルターに代えて、図23に示す開口絞り板60を用いてもよい。図23において、開口絞り板60は、開口絞り板60の位置に形成される4極状の瞳強度分布の位置に形成された4つの開口部61a〜61dを備えている。そして、開口部61bおよび61cは遮光部62bおよび62cを備えている。この構成により、開口部61bおよび61cを通過する光束の光強度を減衰させて、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布のうち、開口部61bおよび61cを通過する光束により形成される瞳強度分布を、各点の位置に依存することなく一律に調整する。なお、この開口絞り板60は、遮光性の金属板に開口を開けることにより形成することができる。
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図24は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図24に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
図25は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図25に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルター形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
ステップS52のカラーフィルター形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルターを形成する。
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルターとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルターとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
また、上述の実施形態では、ウェハWのショット領域にマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、ウェハWの各露光領域にマスクMのパターンを一括露光する動作を繰り返すステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスクまたはウェハを照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスクまたはウェハ以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。