以下に、本発明にかかる無線通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。図示したように、本実施の形態の無線通信システムは、SONサーバ(SON Server)1、MME/GW(Mobility Management Entity/Gateway)2、複数の基地局(eNB:evolved Node B)3、および移動局(UE:User Equipment)4から構成される。
SONサーバ1は、無線伝送性能、ユーザ動線情報、基地局負荷情報およびユーザ分布情報を収集し統計するSON情報収集部11と、システム内の各基地局3をグループ化して移動グループ、干渉グループおよびCoMP(Coordinated Multipoint)グループを生成するSONグループ生成部12とを備える。
MME/GW2は、複数の基地局3を収容し、これらの基地局3配下で通信を行っている移動局4の移動管理を行う。また、ユーザ移動情報およびユーザ分布情報を収集するMME/GW情報収集部21と、RAB(Radio Access Bearer)管理、高信頼データ伝送処理を行うMME/GWグループ制御部22とを備える。
各基地局3は同一構成であり、移動局にて測定された無線性能(移動局測定無線性能と呼ぶ)、自局で測定した無線性能(基地局測定無線性能と呼ぶ)、ハンドオーバの成否を含むハンドオーバ情報、基地局の動作負荷情報、収容ユーザ数などの収容ユーザ情報等を収集する基地局情報収集部31と、移動局との無線インタフェースを通して伝送制御を行う基地局伝送制御部32と、グループセル(詳細は後述する)を構成する基地局間でコネクション情報、上り帯域要求などのアクセス情報の同期をとるための基地局グループ制御部33とを備える。なお、移動局測定無線性能および基地局測定無線性能は、基地局3と移動局4との間の無線伝送制御を通して収集される。移動局測定無線性能とは下り方向の無線通信品質であり、基地局測定無線性能とは上り方向の無線通信品質である。
移動局4は、基地局3との間で無線伝送制御を行う移動局伝送制御部41を備え、無線伝送制御を通してハンドオーバ制御情報や、受信電力情報(RSSI:Received Signal Strength Indicator,CINR:Carrier Interference Noise Ratioなどの無線性能測定結果)などを基地局に通知する。
このように構成された本実施の形態の無線通信システムでは、MME/GE2のMME/GW情報収集部21で収集された情報(収集情報#1)と、基地局3の基地局情報収集部31で収集された情報(収集情報#2)をSONサーバ1に集約する。
本実施の形態の自律的セル調整を行う無線通信システムを構成するSONサーバ1は、これらのMME/GW2および各基地局3から収集した情報(収集情報#1,#2)をもとに、複数の基地局3を必要に応じてグループ化して移動グループ,干渉グループ,CoMPグループを生成する。また、基地局3は、同じグループに属している他の基地局とともに1つのセルを形成する。移動グループとは、ユーザ(移動局4)の動線(移動)にあわせて複数のセルを束ねて1つのセルを形成する基地局のグループである。干渉グループとは、強いセル間干渉を作る複数のセルを束ねて1つのセルを形成する基地局のグループである。CoMPグループとは、CoMP(多地点協調)を実行する複数のセルを束ねて1つのセルを形成する基地局のグループである。以下、グループ化された各基地局のセルを束ねて形成されたセルをグループセルと呼ぶ。
なお、図1においては、SONサーバ1(SONグループ生成部12)が移動グループ、干渉グループおよびCoMPグループを生成する場合の例を示しているが、これらを全て生成することが必須ではない。この中の一部のみを生成するようにしてもよい。また、これら以外のグループを生成するようにしてもよい。
図2は、3GPPのLTE(Long Term Evolution)で規定されたサブフレームの構成例を示す図である。このサブフレームは、ユーザバーストの伝送で使用する(ユーザバーストを格納する)データチャネル領域(一部、Synchronization Signalを含む)と、ユーザバーストのマッピング情報を格納するPDCCH(Physical Downlink Control Channel)、フィードバック情報を伝送するPCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)、およびHARQ(Hybrid ARQ)の送達確認情報を伝送するPHICH(Physical Hybrid ARQ Indicator Channel)からなる制御チャネル領域と、を含む。
本実施の形態の無線通信システムでは、図2に示した制御チャネル領域に設定する制御情報がグループ内の基地局間で同一となるようにする(同一グループ内の各基地局から同一の制御信号が送信されるようにする)ことを特徴とする。すなわち、グループセルでは、移動局4がグループセル内のどのセルに移動しても同じ制御チャネル情報を取得することを可能とする。これにより、たとえば、干渉回避を目的に構成されたグループセルでは、制御チャネル領域に対して干渉レスとすることに加え、ダイバーシチ効果でカバレッジエリアを拡大できる。なお、これ以降の説明においては、便宜上、同一グループ内の各基地局から送信する同一の制御チャネル情報をグループ制御チャネル情報と呼び、グループ化されていない基地局が送信する制御チャネル情報(他のいずれの基地局とも同一ではない制御チャネル情報)を単独制御チャネル情報と呼んで区別する。本実施の形態では、制御チャネル領域に複数のグループセルのためのPDCCH情報(グループ制御チャネル情報,単独制御チャネル情報)の設定を可能とする。すなわち、基地局3はグループAに属しつつ他のグループBにも属することができる。また、基地局3は、ある移動局Xに対して、他の基地局とともにグループセルを構成してグループ制御情報を送信する処理と、他の移動局Yに対して単独制御情報を送信する処理を同時に行うことができる。
既に説明したように、本実施の形態の無線通信システムでは、移動局4の動線(移動局4の移動の履歴を示したユーザ動線)やセル間干渉に基づき基地局3をグループ化して移動グループや干渉グループを生成するが、移動グループの各基地局3がグループセル(以下、移動グループセルと呼ぶ)を形成した場合、および干渉グループの各基地局3がグループセル(以下、干渉グループセルと呼ぶ)を形成した場合には、それぞれ以下に示すような効果が得られる。
<移動グループセルを形成した場合の効果>
図3−1および図3−2は、基地局3をユーザ動線に基づいてグループ化した場合の効果を説明するための図である。
図3−1は、6つの基地局(図示は省略している)のセル51〜56がグループ化されていない状態においてユーザ動線57に沿って移動局4が移動した場合のハンドオーバ発生地点を示したものである。図示したように、各基地局が独立で異なる制御チャネル領域を作る(各基地局が制御チャネル領域に単独制御チャネル情報を設定して送信する)伝送方式では、各基地局のセル境界でハンドオーバが発生し、ユーザ動線57に沿って移動局4が移動した場合には、地点58−1〜58−3において、合計3回のハンドオーバが発生する。
一方、図3−2は、図3−1に示したセル51〜56の各基地局が2つの移動グループにグループ化された状態においてユーザ動線57に沿って移動局4が移動した場合のハンドオーバ発生地点を示したものである。図示したように、基地局をグループ化してグループセル(移動グループセル)を形成した状態(同一グループの各基地局から同一のグループ制御チャネル情報を送信する状態)では、セル51〜53を束ねて形成された移動グループセル(グループセル#1)とセル54〜56を束ねて形成された移動グループセル(グループセル#2)の境界でハンドオーバが発生する。よって、ユーザ動線57に沿って移動局4が移動した場合には、地点58−2においてのみハンドオーバが発生する。すなわち、セル51〜56がグループ化されていない場合には3回発生していたハンドオーバが1回に削減される。
このように、移動グループセルを形成することにより、フェムト基地局などの小型セルが導入されるIMT-Advancedにおいて、ハンドオーバ発生率を削減することが可能となる。
<干渉グループセルを形成した場合の効果>
図4−1および図4−2は、基地局3をセル間干渉に基づいてグループ化した場合の効果を説明するための図である。
図4−1は、3つの基地局(基地局#1〜#3)がグループ化されていない状態における信号レベルの一例を示したものである。この図では、各基地局の送信電力を100mWとした場合のパスロスモデルIMT Advanced Urban Micro NLOS(Non Line Of Site)におけるCINR(Carrier Interference Noise Ratio)が1dBの地点をライン61として示している。
一方、図4−2は、3つの基地局(基地局#1〜#3)がグループ化された状態における信号レベルの一例を示したものであり、3つの基地局がグループ化され、各基地局から同じ制御チャネルを送信するように構成した点以外は、図4−1に示した場合と同一である。図4−2においては、CINRが1dBの地点をライン62としている。
400m×400mのエリアにおいて、3つの基地局が独立に伝送した場合(図4−1に示した場合)のカバレッジエリアは、11%となっているが、3つの基地局にてグループセルを構成した場合(図4−2に示した場合)のカバレッジエリアは、マクロダイバーシチ効果で25%となる。このように、自律的なセル調整によりグループセルを構成することで、セル間干渉を無くすことができるとともに、ダイバーシチ効果でカバレッジエリアを拡大することができる。
なお、移動グループセルおよび干渉グループセルはともに、近隣の基地局同士によって形成されるので、干渉グループセルを形成した場合においてもハンドオーバの発生率を削減できることは明らかである。一方、移動グループセルを形成した場合においても、ハンドオーバの発生率を削減する効果に加えて、セル間干渉を削減できるとともにカバレッジエリアを拡大できることは明らかである。よって、移動グループセルと干渉グループセルの違いは、グループ化を行う際に使用する情報のみとなる。すなわち、ハンドオーバの発生頻度を抑えることを主目的としたものかセル間干渉の削減を主目的としたものかの違いである。
以上のように、本実施の形態の無線通信システムは、ユーザ動線に基づいて自律的にセル調整を行うことにより、ハンドオーバ頻度が増加する問題や干渉領域が増大する問題に対処してハンドオーバ頻度の削減やカバレッジの増大を実現している。したがって、マクロ基地局を主に想定している従来の最適化技術(各基地局の送信電力やアンテナ角を調整することによる最適化技術)とは異なり、特にセルの小型化(ピコセル,フェムトセル)に伴ってハンドオーバ頻度が増加する問題や干渉領域が増大する問題の改善に有効である。
次に、本実施の形態の無線通信システムにおいて、移動局4のハンドオーバ成功情報に基づいてユーザ動線を求めて自律的に移動グループを制御する方法を説明する。この制御は、図1に示したSONサーバ1が行う。
たとえば、図3−1に示した状態(各基地局が単独制御チャネル情報を送信している状態)において、ハンドオーバが発生し、ハンドオーバが成功した場合には、このハンドオーバに関わった基地局3の基地局情報収集部31が、ハンドオーバが発生したことを示す情報(以下、ハンドオーバ成功情報と呼ぶ)を、MME/GW2を介してSONサーバ1のSON情報収集部11へ送信する。SONサーバ1のSON情報収集部11は、基地局3から取得したハンドオーバ成功情報を蓄積する。ハンドオーバ成功情報は、少なくともハンドオーバ元のセルを示す情報(セルID)とハンドオーバ先のセルを示す情報(セルID)を含む。ハンドオーバ成功情報を統計処理することにより、ユーザの移動情報すなわちユーザ動線を得ることができ、移動グループを作成することが可能となる。移動グループの作成(基地局のグループ化)は、SONグループ生成部12がユーザ動線(ハンドオーバ成功情報)に基づいて所定のタイミングで実施する。なお、上記のセルIDは、基地局の識別情報(基地局ID)と読み替えてもよい。ハンドオーバ成功情報はハンドオーバ元の基地局3とハンドオーバ先の基地局3の双方が送信するようにしてもよい。
一方、図3−2に示した状態においては、グループセルが存在しているため、移動局4は個別の基地局3を認識することができず、グループセル間のハンドオーバのみが発生する。そのため、ハンドオーバ成功情報(ハンドオーバ元の基地局3に対応するセルID,ハンドオーバ先の基地局3に対応するセルID)が収集できず、ハンドオーバ結果からユーザ動線を得ることは難しい。そのため、グループ化されている各基地局3の基地局情報収集部31は、上り信号の受信電力を測定してその結果(上り受信電力情報)をSONサーバ1のSON情報収集部11へ送信し、SON情報収集部11は上り受信電力情報に基づいて、グループセル内部における各移動局4のユーザ動線を求める。このグループセル内部におけるユーザ動線の取得方法を以下に示す。
図5は、図3−2に示した状態において、連続通信中の移動局4がユーザ動線57に沿って移動した場合のグループセル#1を構成する各基地局3(基地局#1,#2,#3とする)における、この移動局4からの上り信号の受信強度の時間変化の一例を示した図である。ここで、基地局#1のセルがセル51、基地局#2のセルがセル52、基地局#3のセルがセル53であるものとする。この場合、SONサーバ1のSON情報収集部11は、最大の受信信号強度で上り信号を受信している基地局3の近傍に移動局4が存在するものと判定し、各基地局3における受信電力の変化の様子を監視することにより、移動局4の移動を検出する。すなわち、上り信号の受信電力が最大となっている基地局3が変化した場合、変化する前の基地局3配下から変化後の基地局3配下へ移動局4が移動したと判断し、これらの基地局3に対応するセルIDを、上記のハンドオーバ成功情報(ハンドオーバ元のセルID,ハンドオーバ先のセルID)として蓄積する。なお、このグループセル内部における移動の検出においては、受信信号強度が最大となっている基地局3の頻繁な変動を抑制するために、時間もしくは信号強度に閾値を設定するようにしてもよい。時間に対して閾値を与える場合には、受信信号強度が最大の基地局3が変化した後、閾値とする時間の間に、再び受信信号強度が最大の基地局3が変化しなかった場合に移動局4の移動を検出したものとする。一方、信号強度に閾値を与える場合には、受信信号強度が最大の基地局3が変化した後、それまで受信信号強度が最大であった基地局3の信号強度と、新たに受信信号強度が最大となった基地局3の信号強度との差分が、閾値とする信号強度を超えた場合に移動局4の移動を検出したものとする。
移動局4の上り通信がバースト的である場合、図3−2に示したグループセル#1を構成する基地局#1,#2,#3における、上り信号の受信強度の時間変化は、たとえば、図6に示した実線部のようになる。このような場合においても上述した方法と同様に、受信信号強度が最大となっている基地局の変化により移動局4の移動情報を取得できる。しかしながら、移動局4の上り無通信期間(図6参照)が長時間となる場合、取得した移動情報(上り信号の受信電力に基づいて判定した移動結果)が実際のユーザ動線とは異なる移動情報となる恐れがある。そこで、上り無通信期間に閾値を設定し、この閾値を超える上り無通信期間の前後で受信信号強度が最大の基地局が変化した場合は、ユーザの移動情報検出の対象外とするようにしてもよい。
このように、各基地局における上り信号の受信強度を監視することによりグループセル内部におけるユーザ移動情報を取得する。これにより、ユーザ動線の把握を目的として収集する情報の精度をグループセルに在圏中の状態においても維持することができる。すなわち、グループセルを設定した後にユーザ動線が変化した場合であってもユーザ動線の変化をグループ構成に反映できる効果を得ることができる。
以上のように、本実施の形態の無線通信システムでは、移動局のハンドーバ結果や基地局における上り信号の受信結果に基づいてユーザ動線を求め、さらに、ユーザ動線に基づいて基地局をグループ化し、同一グループの各基地局から同一の制御チャネル情報(グループ制御チャネル情報)を送信することとした。これにより、基地局の送信電力調整やアンテナ角調整を実施する従来のセルの自己最適化と比較して、より簡単な機構でセルの自己最適化を実現できる。
実施の形態2.
本実施の形態では、自律的セル調整を行う無線通信システムにおいて、グループセルを構成するセルの各基地局から送信する同一の制御チャネル情報(PDCCH等)であるグループ制御チャネル情報を生成する方法について説明する。
図7は、本実施の形態の無線通信システムの構成例を示す図であり、各基地局3から各セルに送信する制御チャネル情報(グループ制御チャネル情報,単独制御チャネル情報)を生成するための装置および機能構成を示している。簡単化のためにSONサーバ1と移動局4の記載は省略している。
図7において、実施の形態1で説明したMME/GW2に相当するMME/GW2は、各基地局3に接続し、さらに、グループ制御チャネル情報を生成してグループセルに属する移動局(グループセルに在圏して通信を行う移動局)の伝送制御を行うグループセル基地局伝送制御装置5に接続している。MME/GW2は、グループセルに属する移動局の伝送制御で使用する所定の情報を各基地局から収集し、さらに、この収集した情報をグループセル基地局伝送制御装置5に出力する。
基地局3は実施の形態1で説明した基地局3に相当する。グループセル基地局伝送制御装置5は、グループセルを構成する各セルの基地局から送信させるグループ制御チャネル情報を生成する。この伝送制御のためのグループ制御チャネル情報は、MME/GW2経由で各基地局3から受け取った情報(MME/GW2が各基地局3から収集した情報)に基づいて生成する。ここで、図7では、グループセル基地局伝送制御装置5をMME/GW2や基地局3、SONサーバ1(図示は省略している)とは異なる独立の装置として記載しているが、このグループセル基地局伝送制御装置5の機能(伝送制御動作)をMME/GW2やSONサーバ1が行うようにしてもよい。また、グループセルを形成している基地局の中の1つの基地局が代表して行うようにしてもよい。すなわち、グループセル基地局伝送制御装置5を単独の装置として実現してもよいし、ある装置(SONサーバ1、MME/GW2または基地局3)備える機能の一部として実現してもよい。
グループセル基地局伝送制御装置5は、高信頼データ伝送部、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)およびMAC(Media Access Control)からなり、グループセルに属する移動局の無線伝送制御を実行する。
各基地局3は、グループセル基地局伝送制御部32−1および単独セル基地局伝送制御部32−2を備える。グループセル基地局伝送制御部32−1は、グループセルMAC処理部およびHARQ部(UM)からなる。HARQ部(UM)は非送達確認モード(UM:Unacknowledged Mode)でHARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)を行う。このグループセル基地局伝送制御部32−1は、自身(自基地局)がグループセルを構成している場合にグループセル基地局伝送制御装置5で生成され・送信されてくるグループ制御チャネル情報を受け取って配下の移動局4に向けて送信する。単独セル基地局伝送制御部32−2は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Media Access Control)およびHARQ部(AM)からなる。HARQ部(AM)は、送達確認モード(AM:Acknowledged Mode)でHARQを行う。この単独セル基地局伝送制御部32−2は、グループセルを形成していない状態(単独セルの基地局として動作している状態)において単独制御チャネル情報を生成して配下の移動局4に向けて送信する。
このように、本実施の形態の無線通信システムにおいては、グループ制御チャネル情報をグループセル基地局伝送制御装置5が生成し、単独制御チャネル情報は、この情報を送信する基地局3の単独セル基地局伝送制御部32−2が生成する。基地局3は、グループセルを構成する基地局としての動作とグループセルを構成しない基地局としての動作を同時に行うことが可能である。たとえば、配下の移動局Aに対してグループ制御チャネル情報を送信しつつ他の移動局Bに対しては単独制御チャネル情報を送信することが可能である。この場合、基地局3は、グループセル基地局伝送制御装置5から受け取ったグループ制御チャネル情報と自装置の単独セル基地局伝送制御部32−2で生成した単独制御チャネル情報を合成して送信する。
次に、図7を参照しながら、本実施の形態の無線通信システムにおいてグループ制御チャネル情報および単独制御チャネル情報を生成して送信する動作を説明する。
グループセル基地局伝送制御装置5は、グループセルを構成する各基地局においてRRCメッセージとユーザデータの送信同期をとるため、RRCおよびPDCPの処理を実行し、MACでPDCCH情報を生成する。また、グループセル基地局伝送制御装置5は、グループセルを構成する複数基地局間において短時間の再送処理同期をとることを避けるため、たとえば消失訂正符号を用いたデータ伝送制御を行う高信頼データ伝送部を備えており、RLCは非送達確認モードで動作する。また、グループセル基地局伝送制御装置5のRRCは、グループセルを構成する各基地局3のHARQを非送達確認モードとし、さらに、グループセルを構成する各基地局3でのHARQのバーストサイズ、変調度および誤り訂正のレートを同じにするため、これらの設定値を決定してグループセルを構成する各基地局3のグループセル基地局伝送制御部32−1内のグループセルMAC処理部に通知する。この通知は、たとえばCGroup_MAC_Config_Reqメッセージを用いて行う。
グループセルを構成する各基地局3において、グループセル基地局伝送制御部32−1のグループMAC処理部は、グループセル基地局伝送制御装置5のRRCから上記のCGroup_MAC_Config_Reqメッセージを受信すると、メッセージで指定された設定内容に従いHARQ部を非送達確認動作モードに設定し、さらに、バーストサイズ、変調度および誤り訂正レートを指定された値に設定する。また、グループセルMAC処理部は、グループセルのMAC PDU(Protocol Data Unit)とPDCCH情報をグループセル基地局伝送制御装置5から受信すると、図8に示したサブフレームの制御チャネル領域からグループセルのためのPDCCH情報を設定する領域(図示した「グループセルで利用するPDCCH領域」に相当)などを減算し、単独セル(グループセルを形成していないセル)で利用可能なPDCCH領域を算出する。グループセルMAC処理部は、この算出結果(単独セルで利用可能なPDCCH領域)を単独セル基地局伝送制御部32−2のMACに通知する。この通知を受けたMACのMAP生成部は、この単独セルで利用可能なPDCCH領域サイズ情報を受け取ると、このサイズ以内で単独セル用のPDCCHを構築する(図8に示されている「単独セルで利用可能なPDCCH領域」に制御情報を設定する)。
また、グループセル基地局伝送制御部32−1のグループセルMAC処理部は、グループセルに属する移動局4からの上り帯域要求を受けると、この要求内容をグループセル基地局伝送制御装置5のMACに通知し、グループセル基地局伝送制御装置5のMACは、移動局4の上り帯域割当を実施し、上りバーストのためのグループセル用PDCCH情報要素を生成する。この情報はグループセルMAC処理部に送信され、この情報で示された上り帯域を要求元の移動局4に割り当てる。
これにより、グループセルに属する移動局4の伝送制御をグループセル基地局伝送制御装置5で実施し、単独セルに属する移動局4の伝送制御を単独セル基地局伝送制御装部32−2(基地局3)で実行するハイブリッド構成によるPDCCH構築が可能となり、グループセルに属する基地局において、グループセルのPDCCHの同期と単独セルのPDCCHの構築が可能となる。
本実施の形態において、グループセルを構成する各セルの基地局3は、移動局4から受信した上り信号を、その受信強度とともに、グループセル基地局伝送制御装置5に送信する。グループセル基地局伝送制御装置5は、各基地局3からの同一の上り信号を判別し、受信強度を比較することで、実施の形態1において図5,図6を用いて説明したユーザの移動情報の取得を実施する。これにより、ユーザ動線の把握を目的として収集する情報の精度をグループ伝送の状態においても維持することができ、実施の形態1と同様、グループ伝送の設定後に、ユーザ動線が変化した場合であってもユーザ動線の変化をグループ構成に反映できる。
このように、本実施の形態の無線通信システムは、グループセルを構成しているセルの基地局が送信する制御信号(グループ制御チャネル情報)を生成して各基地局に配信するグループセル基地局伝送制御装置を備えることとした。これにより、グループセルを構成している各セルの基地局から同一の制御チャネル情報(グループ制御チャネル情報)を送信することができる。
実施の形態3.
本実施の形態では、実施の形態1,2で説明した無線通信システムにおいて、移動局4の隣接セルサーチを効率化する方式について図9を用いて説明する。図9は、移動局4が図示したユーザ動線上を移動する場合のグループセルの構成例を示しており、この例では、セル71〜73がグループセル#1を、セル74〜76がグループセル#2を、セル77〜79がグループセル#3を構成している。
実施の形態1,2で示した無線通信システムにおいて、MME/GW2および基地局3で収集された情報(収集情報#1,収集情報#2)を集約して管理するSONサーバ1は、グループセル#2に在圏する移動局4の移動情報、すなわち、セル74〜76の各基地局のいずれの近傍に存在していたかの履歴を把握している。ある移動局4がある時点においてセル76の基地局近傍に存在する場合、特に移動局4がセル74→セル75→セル76の順に移動した履歴を有する場合には、SONサーバ1は、グループセル#2の隣接セルであるグループセル#1とグループセル#3のうち、グループセル#3にハンドオーバする可能性が高いと判断する(次のハンドオーバにおける移動先がグループセル#3になると予測する)。そして、この移動局4に対してグループセル#3を高優先とした隣接セルリストを個別に通知する。移動局4は、この隣接セルリストを参照した動作を行うことにより、効率的な隣接セルサーチができる。すなわち、ハンドオーバ先となる可能性の高いグループセル#3を優先的にサーチすることで、グループセル#1のサーチを省略することが可能となる。SONサーバ1において、隣接セルリストの生成はSONグループ生成部12が行ってもよいし、隣接セルリスト生成部を別途設けてここで行うようにしてもよい。
このように、本実施の形態の無線通信システムでは、各移動局4の移動履歴に基づきハンドオーバする可能性のより高い隣接セルを移動局4ごとに個別に予測し、予測した隣接セルを高優先度に設定した(優先的にサーチするセルとした)隣接セルリストを各移動局4に個別に通知することとした。これにより、移動局4は、通知された隣接セルリストを参照してセルサーチを効率的に行うことができる。
実施の形態4.
本実施の形態では、実施の形態1〜3で説明した無線通信システムにおいて、1つの基地局が複数のグループセルを構築する場合の方法について説明する。本実施の形態では、LTEの同期方式を適用した場合の例について説明する。
ここでまず、3GPPのLTEにおいて使用されているフレームの構成について説明する。図10は、3GPPのLTEで規定されたフレームの構成を示す図である。図10に示したように、1フレームは、サブフレーム#0〜#9の10サブフレームで構成され、10msの長さとなっている。1サブフレームは2つのスロット(スロット#1,#2)からなり、各スロットは7つのシンボル(OFDMシンボル)を含んで構成されている。各サブフレームのスロット#1の先頭から3つのシンボルにはPCFICH、PHICHおよびPDCCHが配置されている。サブフレーム#0および#5には、移動局4が同期を確立してセルID(識別子)を取得するための同期チャネル(PSS:Primary Synchronization Signal,SSS:Secondary Synchronization Signal)が配置されている。また、このフレームが送信されているセルの報知情報(PBCH:Physical Broadcast Channel)がサブフレーム#0の同期チャネルの直後に配置されている。LTEを適用したシステムにおいて、移動局は、同期チャネルを受信して同期を確立するとともにセルIDを取得し、さらに、制御チャネルをデコードするために必要となる物理レイヤパラメータであるスクランブルパターンおよび擬似ランダムシーケンスを取得する。
次に、本実施の形態の無線通信システムで使用するフレームの構成について説明する。図11は、本実施の形態の無線通信システムで使用するフレームの構成例を示す図であり、図10に示したフレームの一部を変更したものである。
具体的には、グループセルごとに時分割にサブフレームを利用するように構成しており、サブフレーム#0〜#4をグループセル#1に割り当て、サブフレーム#5〜#9をグループセル#2に割り当てた構成としている。そして、サブフレーム#0および#5に同期チャネル(PSS,SSS)を設定する。これらのサブフレーム#0および#5には、対応するグループセルに応じた情報を設定する。すなわち、サブフレーム#0の同期チャネルにはグループセル#1のセルIDからなる同期信号を設定し、サブフレーム#5の同期チャネルにはグループセル#2のセルIDからなる同期信号を設定する。また、サブフレーム#0の同期チャネルの直後にグループセル#1の報知情報(PBCH)を設定し、サブフレーム#5の同期チャネルの直後にグループセル#2の報知情報(PBCH)を設定する。
なお、グループセル#1に割り当てたサブフレーム#0〜#4およびグループセル#2に割り当てたサブフレーム#5〜#9は、単独セル用に設定して使用することも可能とする。ただしサブフレーム#0〜#4を使用する単独セルとサブフレーム#5〜#9を使用する単独セルが同じセルIDを利用する場合(サブフレーム#0〜#9を1つの単独セルに割り当てる場合)は、サブフレーム#5の報知情報(PBCH)を省略する。すなわち、図10に示したフレームと同様の構成とする。
このように、本実施の形態の無線通信システムでは、3GPPのLTEで使用されているフレーム構成を利用し、1フレームをサブフレーム#0〜#4と#5〜#9に分割して2つのグループセルに割り当てるようにした。これにより、基地局3は、2つのグループに所属し、それぞれのグループにおいて移動局4と通信できる。
実施の形態5.
本実施の形態では、実施の形態4の変形例について示す。実施の形態4では、1フレーム内のサブフレームを2つのグループセルに均等に割り当てる場合について説明したが、本実施の形態では、各グループセルに割り当てるサブフレームの数を可変とする場合について説明する。
本実施の形態の無線通信システムにおいては、たとえば、図11に示したフレームの報知情報(サブフレーム#0,#5のPBCH)に対して、図12に示すサブフレームごとのグループ属性を示すグループ構成インデックス(0〜6の値)を設定して送信する。
図12において、グループ構成インデックス0は、サブフレーム#0〜#4がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#5〜#9がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス1は、サブフレーム#0〜#3がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#4〜#9がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス2は、サブフレーム#0〜#2がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#3〜#9がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス3は、サブフレーム#0〜#1がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#2〜#9がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス4は、サブフレーム#0〜#4,#9がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#5〜#8がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス5は、サブフレーム#0〜#4,#8〜#9がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#5〜#7がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。グループ構成インデックス6は、サブフレーム#0〜#4,#7〜#9がグループセル#1(G1)に割り当てられ、サブフレーム#5〜#6がグループセル#2(G2)に割り当てられていることを示す。
このように、各々のグループセルに属するサブフレームを報知情報にて移動局4に通知することにより、たとえば、グループセルごとの負荷率(各グループセル配下の移動局の数)に応じてフレーム構成、すなわち、各グループに割り当てるサブフレームの数を適応的に変更できる。
実施の形態6.
本実施の形態では、実施の形態1〜3で説明した無線通信システムにおいて、実施の形態4,5とは異なる手法にて1つの基地局が複数のグループセルを構築する方法について説明する。
本実施例の無線通信システムにおいて、基地局3は、図13に示した構成のサブフレームを使用する。すなわち、グループセルごとに異なるセルIDを用いてスクランブリングと擬似シーケンスを適用するPDCCHを有し、かつ物理リソースユニット単位でサブフレームを共有するように構成したサブフレームを使用する。
図13に示した構成のサブフレームの詳細について説明すると、3シンボルで構成される制御チャネルは、グループセル#1のセルID(セルID#1)を用いたスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#1用のPDCCH(グループセル#1PDCCH領域)と、グループセル#2のセルID(セルID#2)を用いたスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#2用のPDCCH(グループセル#2PDCCH領域)とを含んだ構成としている。また、サブフレームは、グループセル#1領域およびグループセル#2領域を含んでおり、グループセル#1領域には、セルID#1でのスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#1のデータバーストをマッピングする。グループセル#2領域には、セルID#2でのスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#2のデータバーストをマッピングする。
なお、グループセル#2のPDCCHには、単独セル用のPDCCHを設定することも可能とし、単独セル用のPDCCHを設定する場合には、単独セルのセルIDでスクランブルを行い、擬似シーケンスを適用するデータバーストをグループセル#2用の領域にマッピングする。
また、3シンボルの制御チャネルに2つ以上のグループセルのPDCCHを設定することを可能とし、スロット#1の4シンボル目以降とスロット#2には複数のグループに属するデータバーストのマッピングを行うことを可能とする。
このように、複数のグループセルに属するPDCCHをサブフレームに設定可能とすることで、1つの基地局が複数のグループセルのデータバーストを伝送できる。
実施の形態7.
本実施の形態では、実施の形態6の変形例について示す。本実施の形態では、基地局から送信するサブフレームが、グループセルのPDCCHの中に異なるグループセルのPDCCH情報とセルIDを含むことを特長とする(図14参照)。
図14は、本実施の形態の無線通信システムで使用するサブフレームの構成例を示す図であり、このサブフレームでは、グループセルのPDCCH(グループセル#1PDCCH)の中に異なるグループセルのPDCCH情報要素を設定するようにしている。
図14に示した構成のサブフレームにおいて、グループセル#1のPDCCH(グループセル#1PDCCH領域)では、グループセル#1のセルID(セルID#1)を用いたスクランブルと擬似シーケンスを適用する。さらに、このグループセル#1のPDCCH内にはグループセル#2のPDCCH情報要素を設定する領域が含まれている。このグループセル#2のPDCCH情報要素はグループセル#2のセルID(セルID#2)を含んでいる。グループセル#1領域には、セルID#1でのスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#1のデータバーストをマッピングする。グループセル#2領域には、セルID#2でのスクランブルと擬似シーケンスを適用するグループセル#2のデータバーストをマッピングする。
また、グループセル#1のPDCCHには、複数のグループセルのPDCCH情報要素を設定可能とする。このグループセル#1のPDCCHに含まれるPDCCH情報要素は、単独セルのPDCCH情報要素であってもよい。
このように、サブフレーム内のグループセル#1のPDCCHに複数のグループセルのPDCCH情報要素を設定することで、1つの基地局が複数のグループセルのデータバーストを伝送できる。
実施の形態8.
本実施の形態では、実施の形態4,5,6,7において説明した無線通信システム、すなわち、1つの基地局3が複数のグループセルを構成する(または、グループセルと単独セルを構成する)無線通信システムにおいて、1つの基地局3が、カバーエリアの大きさが異なるセル(グループセル,単独セル)を構成する場合に、移動局4の収容効率を向上させる方式について説明する。
図15は、本実施の形態の無線通信システムを説明するための図である。図15においては、セル81〜セル87がグループセル#1を形成しているが、これらの各セルの基地局3は、グループセル#1を形成する動作(他の基地局と同じ制御チャネル情報であるグループ制御チャネル情報を生成して送信する動作)を行うとともに、単独セル81〜87を提供する動作(自基地局独自の制御チャネル情報である単独制御チャネル情報を生成して送信する動作)も行っているものとする。
このとき、無線通信システムのSONサーバ1は、実施の形態1,2で説明したように、グループセル#1に在圏する移動局4の移動情報、すなわち、セル81〜87の各基地局のいずれの近傍に存在していたかの履歴を把握している。そのため、SONサーバ1は、この移動情報を解析し、グループセル#1に在圏している移動局4が、一定期間以上一つの基地局3(たとえばセル84の基地局)の近傍に存在している(移動を行っていない)ことを検出した場合、この移動局4をグループセル#1から単独セル(セル84)にハンドオーバさせる。たとえば、SONサーバ1は、MME/GW2に対して移動局4を単独セル(セル84)にハンドオーバさせるように指示を行い、MME/GW2は、移動局4に対して制御信号を送信してセル84へのハンドオーバを指示する。この制御信号を受信した移動局4は、ハンドオーバを実施してセル84に移動する。
このように、本実施の形態の無線通信システムでは、グループセルに在圏している各移動局4の移動量を確認し、移動量の少ない移動局4については、単独セルにハンドオーバさせることとした。これにより、ハンドオーバ発生率を低減させつつ移動の少ない移動局4を単独セルに移すことができる。この結果、移動局4をグループセルと単独セルに分散させることができ、各セルの効率的な利用が実現できる。