通信信号によって情報伝達を行う通信システムでは、通信信号が送信装置から受信装置まで伝播する間に、多くの場合、通信信号にノイズが重畳してしまってエラーが生じてしまうため、例えば、受信確認の返信を受信することで送信装置側で受信装置の受信確認を行うデータ伝送制御が行われる。
例えば、802.11a規格では、次のように行われる。図12は、802.11a規格で通信を行った場合における送受信装置間の通信のタイムチャートを示す図である。図13は、データ信号およびACK信号の各フレーム構成を示す図である。図14は、PLCPヘッダ部の構成を示す図である。図15および図16は、データ信号を再送する場合における送受信装置間の通信のタイムチャートを示す図である。
図12に示すように、送信装置が情報伝達を行うべくデータ信号1を送信し、受信装置がこれを正しく(正常に)受信すると、その旨(受信確認)を送信装置に通知すべく、受信装置は、ACK信号を返信する。そして、送信装置は、受信装置からこのACK信号を受信することによって受信装置の受信確認を行って、次の情報伝達を行うべく、送信装置は、データ信号2を送信する。
802.11a規格では、通信信号のフレーム構成は、図13(A)および(B)に示すように、16μs(マイクロ秒)のPLCP(Physical Layer Convergence Procedure)プリアンブル部と、これに続く4μsのPLCPヘッダ部と、これに続くデータ部と、これに続く6ビット(bit)のPLCPテイル部とを備えて構成される。データ部には、データ信号では、図13(A)に示すように、16ビットのサービス(SERVICE)、24バイト(byte)のMAC(Medium Access Control)ヘッダ、8バイトのLLCヘッダ、IPの最大パケット長では1500バイトのIPパケットおよび4バイトフレームチェックシーケンスが収容される。また、ACK信号では、データ部には、16ビットのサービス、10バイトのACKおよび4バイトのフレームチェックシーケンスが収容される。また、PLCPヘッダ部には、図14に示すように、伝送速度を示す4ビットのRATE、1ビットの予約領域(Reserved)、データ部のデータ長を示す12ビットのLENGTH、1ビットのパリティ(Parity)、6ビットのテイル(Tail)および16ビットのサービスが含まれる。
このヘッダ部のサービスは、データ部のサービスであり、データ部に収容されている。これらサービスを除く、RATE、予約領域、LENGTH、パリティおよびテイルの各ヘッダ情報(SIGNAL)は、いわゆる逆高速フーリエ変換されることによってOFDM変調され、さらにガードインターバルが付加されることによって1つのOFDMシンボルとなる。
ここで、IPパケット長がイーサネット(登録商標)における最大値1500バイトであって、符号化率が64QAMであるとすると、伝送速度が54Mbpsであり、この場合におけるデータ信号の占有時間は、248μsであり、ACK信号の占有時間は、23μsである。
また、802.11a規格では、アクセス制御にCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)が採用されており、通信効率を改善すべく、フレーム間隔(IFS、InterFrame Space)を制御する優先制御が行われている。フレーム間隔には、3態様があり、第1に、ACK信号の応答(受信待ち)を待つ16μsのショート・IFS(Short IFS、SIFS)と、第2に、キャリアセンスを行う際にチャネルがビジー(占有状態)からアイドル(非占有状態)に変わったと判断されるまでに必要な待ち時間である34μsのDCF・IFS(Distributed Coordination Function IFS)と、第3に、ビジーがフレームエラーと検出された場合の待ち時間である73μsのイクステンド・IFS(EIFS=SIFS+ACKフレーム長+DIFS)とがあり、SIFSの優先度は、最も高く、DCF・IFSの優先度は、低い。
通信周期は、一のデータ信号を送信(送出)してから次のデータ信号を送信するまでの時間と定義すると、802.11a規格では上記各フレーム間隔があるため、図12に示すように、データ信号およびACK信号の占有時間だけでなく、データ信号1の送信からACK信号の受信までの16μsのSIFSと、ACK信号の受信から次のデータ信号2の送信までの“101.5μsのDIFS+バックオフ”とを加えた時間となる。したがって、正常な通信では、スループットは、31Mbpsとなる。
一方、エラーが生じた場合について説明する。エラー検出には、ヘッダ部のRATE、予約およびLENGTHの偶パリティ(XOR演算)がパリティとして用いられている。
エラー検出に成功した場合では、図15に示すように、送信装置がデータ信号1を送信すると、受信装置は、ヘッダ部を用いてエラー検出を行う。エラーが検出されると、受信装置は、直ちにアイドル状態(受信待ち状態)に初期化され、キャリアセンスを行う。伝送路には、送信装置によるデータ信号1が存在するため、受信装置は、ビジーと判断し、前記アイドル状態を維持する。この間、送信装置は、248μsのデータ信号1の送信を終了し、ACK信号の応答を“16μsのSIFS+139.5μsのバックオフ”だけ待機し、ACK信号の応答がない場合にはデータ信号1の送信失敗と判断し、データ信号1の再送を行い、以下、図12と同様となる。したがって、このエラー検出に成功し、再送が一度だけ実行される場合では、スループットは、15.2Mbpsとなる。
なお、バックオフは、端末間の送信機会を公平にするために、各端末にランダム(無作為)に与えられる再送するまでの待ち時間である。バックオフ時間は、スロット時間にランダム係数を乗算して決定される。このランダム係数の取り得る値の範囲は、コンテンションウィンドウ(CW)と呼ばれ、スロット時間の2のべき乗で増加する。ランダム係数の各値を取る確率は、等しいため、バックオフ時間は、スロット時間にCW/2を乗算して計算され、スロット時間は、9μsであり、CWは、再送ごとに、15、31、63、・・・と増加して行く。例えば、1回目の再送では、バックオフ時間は、139.5μsである。
一方、図14に示すように、パリティは、1ビットであるから、エラー検出に1/2の確率で失敗する可能性が存在する。ヘッダ部によるエラー検出に失敗すると、受信装置は、受信波の復調処理を続け、最終的にフレームチェックシーケンス(Frame Check Sequence、FCS)によってパケットのエラーを検出することになる。
また、パリティのエラー検出に失敗するのではなく、RATEのRATE情報やLENGTHのLENGTH情報が間違っていると、データ信号の受信時間(パケット長)を間違って計算してしまう。この確率は、4ビットのRATEが1ビット固定であるため3ビットでRATE情報が判断され、そして、LENGTHが12ビットであるため、(パリティのチェックが正しくない確率)×((有効なRATEおよびLENGTHの全ビットの組み合わせ)−(全ての正しい組み合わせ))/(有効なRATEおよびLENGTHの全ビットの組み合わせ)であるから、(1/2)×(2^15−1)/2^15でほぼ1/2である。したがって、パリティのエラー検出に失敗するのではなく、RATEのRATE情報やLENGTHのLENGTH情報が間違っている場合では、各時間を次のように定義すると、再送は、時間B(n)<時間A<時間C(n)のケース1と、時間C(n)<時間A<時間B(n+1)のケース2とがある(nは1以上の整数)。
時間A ;誤認識したパケット長+EIFS+バックオフ時間
時間B(n);(正しいパケット長+SIFS+バックオフ時間)×n
時間C(n);(正しいパケット長×2+SIFS+バックオフ時間)×n
これらケース1およびケース2は、いずれもフレームエラー検出によるエラー検出であるため、受信装置の待ち時間は、EIFS(73μS)となる。
ケース1では、図16(B)に示すように、再送のデータ信号1がキャリアセンス中に検出されるため、ヘッダ部によるエラー検出に失敗する場合と同様のタイムチャートとなり、スループットは、15.2Mbpsとなる。
また、ケース2では、図16(A)および(C)に示すように、再送のデータ信号1が受信されないため、再々送のデータ信号1が受信されることになるため、スループットは、9Mbpsとなってしまう。
守倉正博、久保田周治(監修)、インプレス標準教科書シリーズ「改訂版 802.11高速無線LAN教科書」、インプレスR&D、2006年2月21日発行
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。また、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態におけるOFDM送信装置およびOFDM受信装置は、プリアンブル部と前記プリアンブル部以降のヘッダ部と前記ヘッダ部以降のデータ部とを備えるフレーム構造における前記ヘッダ部のみを拡散符号で拡散変調する変調方法によって生成された通信信号を送信および受信する通信システムを構成する送信装置および受信装置のそれぞれ一例である。前記通信信号には、ブロック伝送方式が採用され、前記拡散符号で拡散変調する拡散工程は、前記ブロック伝送方式におけるガードインターバルを付加する前に、前記ヘッダ部に収容されるべきヘッダ情報に基づく変調データを前記拡散符号で拡散変調するものである。そして、本実施形態では、前記ブロック伝送方式の一例としてOFDM方式が採用されており、また、拡散符号の一例としてBarker符号が採用されている。
図1は、実施形態におけるOFDM送信装置およびOFDM受信装置の各構成を示す図である。図2は、実施形態におけるデータ信号およびACK信号のフレーム構成を示す図である。
OFDM送信装置は、周波数軸上で直交関係を有する狭帯域サブキャリア(狭帯域搬送波)をディジタル変調して多重化する通信方式であるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式の通信信号(OFDM信号)を生成して送信するための装置であり、OFDM受信装置は、このOFDM信号を受信するための装置である。これらOFDM送信装置およびOFDM受信装置からOFDM通信システムが構成される。そして、このOFDM信号には、本実施形態では、適応サブキャリア変調が適用されている。
適用サブキャリア変調は、各サブキャリア(搬送波)ごとに変調方式、送信電力および符号化率等の伝送パラメータをOFDM送受信装置間の伝送路特性(伝送路の通信状態)に応じて適応的に決定する方式である。この適用サブキャリア変調では、情報データの通信開始に先立って、まず、伝送路特性を評価するための評価用パケットをOFDM送信装置がOFDM受信装置へ送信し、この評価用パケットに基づいてOFDM受信装置がいわゆるエラーベクトルマグニチュード(EVM)を見積もり、この見積もったEVMに基づいて予め設定された所定の基準に従って、OFDM送受信装置間で使用するサブキャリア、変調方式および符号化率等の伝送パラメータを決定し、この決定した伝送パラメータに関する情報をOFDM送信装置へ返送する。これによってOFDM送信装置は、OFDM受信装置で決定した伝送パラメータに応じてOFDM信号のパケットを作成し、情報データの通信を開始する。
このようなOFDM送信装置SDは、例えば、図1に示すように、1次変調部1、11と、シリアル/パラレル変換部(S/P変換部)2、12と、OFDM変調部3、13と、ガードインターバル付加部(GI付加部)4と、アップサンプル(Up-sample)/FIR部5と、ディジタル/アナログ変換部(DAC部)6と、Barker符号生成部14と、拡散変調部15と、プリアンブル生成部21とを備えて構成されている。
送信すべきデータ(送信データ)は、例えば64QAM変調によって1次変調部1で1次変調され、S/P変換部2に入力される。S/P変換部2では、1次変調された送信データは、シリアル/パラレル変換(直列/並列変換)されることによってサブキャリア数に分割され、OFDM変調部3へ入力される。例えば、802.11a規格では、52本のサブキャリアが利用されるが、パイロット用に4本のサブキャリアが使用されるため、データ用に48本のサブキャリアが使用される。OFDM変調部3では、各サブキャリアは、逆高速フーリエ変換されることによって周波数領域から時間領域へ変換(OFDM変調)され、これによって送信データのマルチキャリア信号となる。
一方、ヘッダ情報は、予め設定された所定の変調方式、例えばBPSK変調によって1次変調部11で1次変調され、S/P変換部12に入力される。S/P変換部12では、1次変調されたヘッダ情報は、シリアル/パラレル変換(直列/並列変換)されることによってサブキャリア数に分割され、OFDM変調部13へ入力される。ヘッダ情報は、物理レイヤにおいてパケット信号を受信処理する上で必要な情報であり、例えば、データ部103の伝送速度やデータ長等が含まれる。また、本実施形態では、ヘッダ情報には、伝送パラメータを示す適応サブキャリア変調の制御信号が含まれる。OFDM変調部13では、各サブキャリアは、逆高速フーリエ変換されることによって、周波数領域から時間領域へ変換(OFDM変調)され、これによってヘッダ情報のマルチキャリア信号となる。そして、このヘッダ情報のマルチキャリア信号は、拡散変調部15へ入力され、Barker符号生成部14で生成され、拡散変調部15へ入力されたBarker符号で拡散変調される。Barker(バーカー)符号は、[1、−1、1、1、−1、1、1、1、−1、−1、−1]で構成される拡散符号の一つであり、例えば、802.11b規格で拡散符号として利用されている。
これら送信データのマルチキャリア信号と拡散変調されたヘッダ情報のマルチキャリア信号とは、GI付加部4へ入力され、ガードインターバル(GI)がGI付加部で付加され、その時間的な先頭に、プリアンブル生成部21で生成されたPLCPプリアンブルが付け加えられてフレーム化される。このフレーム化されたOFDM信号は、アップサンプル/FIR部5に入力され、アップサンプル/FIR部5では、ナイキストの定理で示される理論上必要な2倍以上のサンプル周波数にアップサンプリングされ、DAC部6へ入力される。DAC部6では、OFDM信号は、ディジタルからアナログへ変換され、図略のアナログフロントエンド部へ入力され、図略の送信アンテナから送信される。
なお、このようなヘッダ情報を拡散変調したOFDM信号は、拡散後のスペクトラム広がりを抑制するべく、いわゆるルートコサインフィルタで波形整形されてもよい。
一方、OFDM受信装置RDは、例えば、図1に示すように、復調部31、41と、パラレル/シリアル変換部(P/S変換部)32、42と、OFDM復調部33、43と、GI除去部34と、FIR/ダウンサンプル(down-sample)部35と、アナログ/ディジタル変換部(ADC部)36と、Barker符号生成部44と、逆拡散変調部45とを備えて構成されている。
図略の受信アンテナで受信された受信波は、図略のアナログフロントエンド部を介してADC部36へ入力され、ADC部36でアナログからディジタルへ変換され、FIR/ダウンサンプル部35へ入力され、FIR/ダウンサンプル部35でデジタル回路の所定のサンプル周波数にダウンサンプルされ、GI除去部34へ入力され、GI除去部34でGIが除去される。GIが除去されたデータ部103は、OFDM復調部33へ入力される一方、GIが除去されたPLCPヘッダ部102は、逆拡散変調部45へ入力される。
データ部103は、OFDM復調部33で高速フーリエ変換されることによって時間領域から周波数領域へ変換(OFDM復調)され、これによって各サブキャリア信号となり、P/S変換部32へ入力される。これら各サブキャリア信号は、P/S変換部32でパラレル/シリアル変換(並列/直列変換)されることによって1つの受信データとされ、復調部31へ入力される。この受信データは、復調部31でPLCPヘッダ部102に収容されていたヘッダ情報のRATE情報に従って64QAM復調処理され、データが復調される。
また、PLCPヘッダ部102(102−1〜102−11)は、逆拡散変調部45で、Barker符号生成部44で生成され、逆拡散変調部45へ入力されたBarker符号で圧縮処理(逆拡散処理)され、OFDM復調部43へ入力される。圧縮処理されたPLCPヘッダ部102は、OFDM復調部43で高速フーリエ変換されることによって時間領域から周波数領域へ変換(OFDM復調)され、これによって各サブキャリア信号となり、P/S変換部42へ入力される。これら各サブキャリア信号は、P/S変換部42でパラレル/シリアル変換(並列/直列変換)されることによって1つの受信データとされ、復調部41へ入力される。この受信データは、復調部41で予め設定された所定の復調処理、例えばBPSK復調処理され、ヘッダ情報が復調される。
図3は、実施形態におけるOFDM送受信装置間の通信のタイムチャートを示す図である。図4は、実施形態における、データ信号を再送する場合におけるOFDM送受信装置間の通信のタイムチャートを示す図である。図4(A)は、送信側を示し、図4(B)は、受信側を示す。
このような構成のOFDM送信装置SDでは、データ信号やACK信号等のOFDM信号100は、図2に示すように、背景技術と同様に、受信同期を確立するためのプリアンブル信号を収容するPLCPプリアンブル部101と、ヘッダ情報を収容するPLCPヘッダ部102と、送信すべきデータを収容するデータ部103と、畳み込み符号化を終端するための付加ビットを収容するPLCPテイル部104とを備えて構成されるが、ヘッダ情報がBarker符号によって拡散変調されているので、PLCPヘッダ部102は、信号ベクトル長が11倍に長くなり、11のOFDMシンボル102−1〜102−11となっている。通常のPLCPヘッダ部は、4μSであるが、このように本実施形態のPLCPヘッダ部102(102−1〜102−11)は、帯域を広げないためにサンプルレートを変えることなく、Barker符号の拡散符号でヘッダ情報を拡散変調されるので、11倍の44μSとなる。なお、一般に、拡散変調は、拡散変調しない場合の通常のサンプルレートよりも早いレートで拡散される。
したがって、データ信号を再送することなく、OFDM送信装置SDおよびOFDM受信装置RD間で通信を行った場合には、図3に示すように、IPパケット長がイーサネットにおける最大値1500バイトであるとすると、通信周期は、“248μS+40μS”のデータ信号1の送信と、16μSのSIFSと、“23μS+40μS”のACK信号の受信と、101.5μSのバックオフ時間とから構成され、スループットは、25.6Mbpsとなる。
一方、データ信号を再送する場合では、ヘッダ情報が拡散変調されているので、背景技術の欄で説明したようなRATEのRATE情報の誤りやLENGTHのLENGTH情報の誤りは、ほとんど生じることないため、図16に示す各ケースを想定する必要がない。この場合では、データ部103のエラーに起因する再送のケースが想定され、図4に示すように、OFDM受信装置RVは、受信波の復調処理を続け、最終的にフレームチェックシーケンス(FCS)によってパケットのエラーを検出することになるが、16μSのSIFSおよび139.5μSのバックオフ時間後の再送によるデータ信号1をキャリアセンス中に検出することができ、以下図3に示すタイムチャートとなる。したがって、スループットは、13.7Mbpsとなる。
このように本実施形態におけるOFDM送信装置SDおよびOFDM変調方法では、ヘッダ情報が拡散変調されるため、正常にデータを送受信する場合にはPLCPヘッダ部102の冗長性によりスループットが上述のように若干低下するが、データ信号を再送する場合にはPLCPヘッダ部102の耐ノイズ性能の向上により背景技術の図16に示す各ケースが想定されず、図4に示すケースであるから、最低のスループットが背景技術の9Mbpsから上述の13.7Mbpsに向上する。このように本実施形態におけるOFDM送信装置SDおよびOFDM変調方法では、PLCPヘッダ部102を拡散変調することによってPLCPヘッダ部102のロバスト性を向上することができ、伝送路のSNが劣化した場合でもスループットの低下を抑制することが可能となる。最悪のケースで、背景技術では、スループットが約71%(=(1−9/31)×100)低下するが、本実施形態では、約56%(=(1−13.7/31)×100)のスループットの低下で済む。なお、正常にデータを送受信する場合におけるスループットの若干の低下は、より低い多値変調(例えば、BPSKやQPSK)が用いられる場合には、より少なくなる。
また、OFDM信号に適応サブキャリア変調方式が用いられ、適応サブキャリア変調に応じた制御を行う場合に、この適応サブキャリア変調の制御情報がヘッダ情報に含まれるので、適応サブキャリア変調の制御情報のロバスト性を向上することができ、適応サブキャリア変調に応じた制御を確実に行うことが可能となる。
図5は、BPSK変調におけるSN比対エラー率を示す図である。図5の横軸は、dB単位で表すSN比(SNR)であり、その縦軸は、ビットエラー率(BER)である。図6は、特定の周波数にAM変調波を妨害波(ノイズ)として注入した場合におけるOFDM信号の波形を示す図である。図6の横軸は、周波数(frequency)であり、その縦軸は、dB単位で表す信号レベル(level)である。図6(A)は、PLCPヘッダ部102を拡散変調する本実施形態の場合であり、図6(B)は、PLCPヘッダ部を拡散変調しない背景技術の場合である。図5に示す◆および○は、図6に示すように、特定の周波数にAM変調波を妨害波(ノイズ)として注入した場合のビットエラー率を示している。図5に示す○は、PLCPヘッダ部102を拡散変調する本実施形態の場合であり、図5に示す◆は、PLCPヘッダ部を拡散変調しない背景技術の場合である。
図5に示すように、例えば、ビットエラー率が10^−8となるためには、PLCPヘッダ部102を拡散変調する本実施形態の場合では、符号化利得が約9dBである誤り訂正符号を用いることによって前記ビットエラー率10^−8を達成することが可能である。しかしながら、PLCPヘッダ部を拡散変調しない背景技術の場合では、SN比が0dBでの前記ビットエラー率10^−8がいわゆるシャノン限界を超えており、実現することができない。
さらに、ガードインターバルを拡散後に付加することにより、対象とする伝送路の遅延プロファイルに従って最適なガードインターバル長を選択することができ、効率的な伝送が実現できる。例えば、遅延プロファイルの測定の結果、有意な遅延波が5μSまで存在する場合では、ガードインターバル長を5μSとすればよい。
なお、上述の実施形態では、拡散変調の拡散符号にBarker符号を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、M系列符号、Gold符号、嵩(かさみ)符号およびウォルシュ−アダマール符号を利用することが可能である。
図7は、第1変形形態におけるOFDM送信装置およびOFDM受信装置の各構成を示す図である。図8は、第1変形形態におけるデータ信号およびACK信号のフレーム構成を示す図である。
また、上述の実施形態では、OFDM変調部13でヘッダ情報を逆高速フーリエ変換することによってOFDM変調したヘッダ情報を拡散変調した後にGIを付加したが、ヘッダ情報を逆高速フーリエ変換することによってOFDM変調したPLCPヘッダ部102にGIを付加した後に拡散変調してもよい。
また、上記第1変形形態において、PLCPヘッダ部102に収容されるべきヘッダ情報を逆高速フーリエ変換してさらにGIを付加した信号を拡散符号で拡散変調してもよい。
このような第1変形形態におけるOFDM送信装置SDAは、例えば、図7に示すように、1次変調部1、11と、S/P変換部2、12と、OFDM変調部3、13と、ガードインターバル付加部(GI付加部)51、52と、アップサンプル/FIR部5と、DAC部6と、Barker符号生成部14と、拡散変調部15と、プリアンブル生成部21とを備えて構成されている。
すなわち、このOFDM送信装置SDAは、図1に示すOFDM送信装置SDに対し、OFDM部3の出力および拡散変調部15の出力が入力されるGI付加部4に代え、OFDM変調部3の出力が入力されるGI付加部51、および、OFDM変調部13の出力が入力されるとともにその出力が拡散変調部15へ出力されるGI付加部52を備えている。
このような構成のOFDM送信装置SDAでは、OFDM変調部3でOFDM変調されて生成された送信データのマルチキャリア信号は、GI付加部51でガードインターバル(GI)が付加される。また、OFDM変調部13でOFDM変調されて生成されたヘッダ情報のマルチキャリア信号は、GI付加部52でガードインターバル(GI)が付加される。このGIを付加されたヘッダ情報のマルチキャリア信号は、拡散変調部15へ入力され、Barker符号生成部14で生成され、拡散変調部15へ入力されたBarker符号で拡散変調される。そして、これら拡散変調部15から出力された拡散変調のヘッダ情報のOFDMシンボルと、GI付加部51から出力された送信データのOFDMシンボルとは、その時間的な先頭に、プリアンブル生成部21で生成されたPLCPプリアンブルが付け加えられてフレーム化される。
このため、このOFDM送信装置SDAで生成されるOFDM信号100Aは、図8に示すように、背景技術と同様に、PLCPプリアンブル部101と、PLCPヘッダ部201と、データ部103と、PLCPテイル部104とを備えて構成とされるが、PLCPヘッダ部201がBarker符号によって拡散変調されたGI202およびヘッダ情報(SIGNAL)203を備えた構成となる。このPLCPヘッダ部201は、従来のPLCPヘッダ部を11倍に長くしたものとなり、44μSとなる。
この第1変形形態では、サブキャリア本数Nsは、そのままで、高速フーリエ変換のサンプリング周波数fsは、Pを拡散長とすると、fs/Pとなり、また、PLCPヘッダ部201のOFDMシンボルは、1個である。
一方、第1変形形態におけるOFDM受信装置RDAは、例えば、図7に示すように、復調部31、41と、P/S変換部32、42と、OFDM復調部33、43と、GI除去部53、54と、FIR/ダウンサンプル部35と、ADC部36と、Barker符号生成部44と、逆拡散変調部45とを備えて構成されている。
図1に示すOFDM受信装置RDでは、FIR/ダウンサンプル部35の出力がGI除去部34を介してOFDM復調部33および逆拡散変調部45へそれぞれ入力されたが、このOFDM受信装置RDAでは、FIR/ダウンサンプル部35の出力がGI除去部53を介してOFDM復調部33へ入力されるとともにFIR/ダウンサンプル部35の出力が逆拡散変調部45およびGI除去部54を介してOFDM復調部43へ入力される。
このような構成のOFDM受信装置RDAでは、FIR/ダウンサンプル部35でデジタル回路の所定のサンプル周波数にダウンサンプルされた受信信号は、GI除去部53へ入力され、GI除去部53でGIが除去され、OFDM復調部33へ入力され、OFDM復調部33でOFDM復調される。また、FIR/ダウンサンプル部35でデジタル回路の所定のサンプル周波数にダウンサンプルされた受信信号は、逆拡散変調部45へ入力され、逆拡散変調部45で、Barker符号生成部44で生成され、逆拡散変調部45へ入力されたBarker符号で圧縮処理され、GI除去部54へ入力され、GI除去部54でGIが除去され、OFDM復調部43へ入力され、OFDM復調部43でOFDM復調される。
このような構成によってもOFDM送信装置SDAおよびその変調方法は、PLCPヘッダ部201を拡散変調することによってPLCPヘッダ部201のロバスト性を向上することができ、伝送路のSN比が劣化した場合でもスループットの低下を抑制することが可能となる。また、GIが11倍に長くなるため、より長い遅延波に対応可能となる。
図9は、第2変形形態におけるOFDM送信装置およびOFDM受信装置の各構成を示す図である。図10は、第2変形形態におけるデータ信号およびACK信号のフレーム構成を示す図である。
また、上述の実施形態では、PLCPヘッダ部102に収容されるべきヘッダ情報を逆高速フーリエ変換した信号を拡散変調した後にGIを付加したが、ヘッダ情報のOFDMシンボルを複数コピーし、これらヘッダ情報の各OFDMシンボルとBarker符号を構成する各符号とをそれぞれ乗算することによって拡散変調してもよい。
このような第2変形形態におけるOFDM送信装置SDBは、例えば、図9に示すように、1次変調部1、11と、S/P変換部2、12と、OFDM変調部3、13と、ガードインターバル付加部(GI付加部)61、62と、コピー部63と、カウント部64と、アップサンプル/FIR部5と、DAC部6と、Barker符号生成部14と、拡散変調部65と、プリアンブル生成部21とを備えて構成されている。
すなわち、このOFDM送信装置SDBは、図1に示すOFDM送信装置SDに対し、OFDM部3の出力および拡散変調部15の出力が入力されるGI付加部4に代え、OFDM変調部3の出力が入力されるGI付加部61、および、OFDM変調部13の出力が入力されるとともにその出力がコピー部63を介して拡散変調部65へ出力されるGI付加部52を備え、さらに、Barker符号生成部14に接続されBarker符号生成部14から出力される符号数をカウント(計数)するカウント部64を備えている。
このような構成のOFDM送信装置SDBでは、OFDM変調部3でOFDM変調されて生成された送信データのマルチキャリア信号は、GI付加部61でガードインターバル(GI)が付加される。また、OFDM変調部13でOFDM変調されて生成されたヘッダ情報のマルチキャリア信号は、GI付加部52でガードインターバル(GI)が付加される。このGIを付加されたヘッダ情報のマルチキャリア信号は、ヘッダ情報のOFDMシンボルであり、コピー部63で順次にコピー(複製)され、そのコピーのヘッダ情報のOFDMシンボルが拡散変調部65へ入力される。一方、このコピーのヘッダ情報のOFDMシンボルがコピー部63から拡散変調部65へ入力されるタイミングに合わせて、Barker符号を構成する各符号が順次にBarker符号生成部14から拡散変調部65へ入力される。そして、拡散変調部65では、図10に示すように、コピー部63から入力されたコピーのヘッダ情報のOFDMシンボル301とBarker符号生成部14から入力されたBarker符号を構成する符号が乗算される。
例えば、上述したように、barker符号は、[1、−1、1、1、−1、1、1、1、−1、−1、−1]の各符号で構成される拡散符号であり、第1番目の“1”と第1番目にコピーされたヘッダ情報のOFDMシンボル301−1とが拡散変調部65で乗算され、第2番目の“−1”と第2番目にコピーされたヘッダ情報のOFDMシンボル301−2とが拡散変調部65で乗算され、そして、第3番目の“1”と第3番目にコピーされたヘッダ情報のOFDMシンボル301−3とが拡散変調部65で乗算され、以下同様に、第11番目まで演算される。
また、カウント部64は、Barker符号生成部14から出力される符号数をカウントしており、そのカウント値がbarker符号の符号数である11になると、コピー部63に制御信号を出力し、コピーのヘッダ情報のOFDMシンボルを出力することをコピー部63に停止させる。
そして、これら拡散変調部65から出力された拡散変調のヘッダ情報の11個のOFDMシンボルと、GI付加部61から出力された送信データのOFDMシンボルとは、その時間的な先頭に、プリアンブル生成部21で生成されたPLCPプリアンブルが付け加えられてフレーム化される。
このため、このOFDM送信装置SDBで生成されるOFDM信号100Bは、図10に示すように、背景技術と同様に、PLCPプリアンブル部101と、PLCPヘッダ部301と、データ部103と、PLCPテイル部104とを備えて構成とされるが、PLCPヘッダ部301がBarker符号の各符号[1、−1、1、1、−1、1、1、1、−1、−1、−1]とそれぞれ乗算されたヘッダ情報のOFDMシンボル301−1、301−2、301−3、・・・、301−11によって構成される。したがって、このPLCPヘッダ部301は、Barker符号の各符号でそれぞれ乗算された従来のPLCPヘッダ部を11個備えたものとなり、44μSとなる。
一方、第2変形形態におけるOFDM受信装置RDBは、例えば、図9に示すように、復調部31、41と、P/S変換部32、42と、OFDM復調部33、43と、GI除去部66、67と、カウンタ部68と、FIR/ダウンサンプル部35と、ADC部36と、Barker符号生成部44と、逆拡散変調部69とを備えて構成されている。
図1に示すOFDM受信装置RDでは、FIR/ダウンサンプル部35の出力がGI除去部34を介してOFDM復調部33および逆拡散変調部45へそれぞれ入力されたが、このOFDM受信装置RDBでは、FIR/ダウンサンプル部35の出力がGI除去部66を介してOFDM復調部33へ入力されるとともにFIR/ダウンサンプル部35の出力が逆拡散変調部69およびGI除去部67を介してOFDM復調部43へ入力され、そして、Barker符号生成部14から出力される符号数をカウントするカウント部68がBarker符号生成部14に接続されている。
このような構成のOFDM受信装置RDBでは、FIR/ダウンサンプル部35でデジタル回路の所定のサンプル周波数にダウンサンプルされた受信信号は、GI除去部66へ入力され、GI除去部66でGIが除去され、OFDM復調部33へ入力され、OFDM復調部33でOFDM復調される。また、FIR/ダウンサンプル部35でデジタル回路の所定のサンプル周波数にダウンサンプルされた受信信号は、逆拡散変調部69へ入力され、逆拡散変調部69で、Barker符号生成部44で生成され、逆拡散変調部69へ入力されたBarker符号の各符号で圧縮処理され、GI除去部67へ入力され、GI除去部67でGIが除去され、OFDM復調部43へ入力され、OFDM復調部43でOFDM復調される。
このような構成によってもOFDM送信装置SDBおよびその変調方法は、PLCPヘッダ部301(301−1、301−2、301−3、・・・)を拡散変調することによってPLCPヘッダ部301のロバスト性を向上することができ、伝送路のSN比が劣化した場合でもスループットの低下を抑制することが可能となる。
また、妨害波(ノイズ)がAM変調信号である場合において、このAM変調信号におけるキャリア(搬送波)の周波数がOFDM信号におけるサブキャリアの周波数に一致すると、Barker符号で逆拡散処理(圧縮処理)する場合にサンプルされるポイントによっては、拡散符号の位相が打ち消され、逆拡散の効果が減殺されてしまう。しかしながら、この第2変形形態におけるOFDM送信装置SDBおよびその変調方法では、拡散変調されたサンプルが時間方向に間隔を置いて配置されるので、AM変調信号の位相がBarker符号の位相情報を消し難くなる。したがって、この第2変形形態におけるOFDM送信装置SDBおよびその変調方法は、より優れた拡散変調の効果を奏する。その一例を図11に示す。
図11は、AM変調信号をBarker符号で逆拡散した場合におけるそのAM値を示す図である。図11の横軸は、周波数であり、その縦軸は、逆拡散後のAM値である。
AM変調信号は、その変調周波数がキャリア周波数に較べて充分に低いと仮定され、そのキャリア周波数分のみが対象とされ、sin(2π・k・△f・n・Ts)と関数表現した。ここで、Tsは、802.11a規格の場合の1/20MHzとされ、△fは、fs/NFFT=20MHz/64とされた。
図11(A)は、Σsin(2π・k・△f・n・Ts)*Barker(n)で上述の実施形態により得られた逆拡散値であり、図11(B)は、Σsin(2π・k・△f・(1+80(n−1))・Ts)*Barker(n)で上述の第2変形形態により得られた逆拡散値である。ここで、Barker(n)は、第n番目のBarker符号の符号値である。したがって、本実施形態および第2変形形態では、Σは、nについて1から11までの和を求める。
図11(A)と図11(B)を比較するとから分かるように、逆拡散後にAM変調信号の影響が小さくなる0クロスの周波数が図11(A)よりも図11(B)の方が多く存在している。したがって、第2変形形態は、様々な周波数のAM変調信号のノイズに対してロバスト性が向上している。
ここで、実施形態及びその第1変形形態では、OFDM変調部3、13およびOFDM復調部33、43のサンプル周波数fsは、それぞれfsおよびfs/Pであるが、第2変形形態におけるOFDM変調部3、13およびOFDM復調部33、43のサンプル周波数fsは、fsである。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。