まず、従来の面内予測の概念を、図4を用いて説明し、次に、本発明の実施の形態に係る面内予測の原理を、図5を用いて説明する。
図4は、従来の面内予測による残差成分作成手順を示す概念図である。図4の符号400は符号化済みの参照信号、符号401は符号化対象の原信号、符号406は面内予測信号、符号411は残差信号である。ここでは、簡単のため画像信号を、縦軸を信号値とする一次元信号で説明する。
原信号401における符号402,403,404,405は、それぞれ原信号の位置0,1,2,3における原信号の信号値s0,s1,s2,s3を高さで示している。符号400は、参照信号400の信号値d−1を高さで示している。
面内予測信号406における符号407,408,409,410は、原信号と同一位置0,1,2,3における、参照信号400を用いた予測信号の信号値p0,p1,p2,p3を高さで示しており、それぞれ参照信号400の信号値d−1と同一の値を取る。
原信号402,403,404,405の信号値s0,s1,s2,s3から予測信号407,408,409,410の信号値p0,p1,p2,p3をそれぞれ減ずることにより、残差信号411の符号412,413,414,415で示す残差信号の信号値r0,r1,r2,r3が得られる。符号416で示すレベルは、残差信号412,413,414,415のDC値である。
予測精度が悪い時、特に低域成分の予測が悪い時に、符号416で示すDC値の絶対値は大きくなる。本発明の実施の形態は、残差信号のDC値を用いて、残差信号の近似信号を作成し、残差信号の情報量を削減することにより、符号化効率の向上を実現する。
図5は、本発明の実施の形態に係る近似信号作成手順を示す概念図である。図5の符号501は面内予測の残差信号、符号508は近似信号を減じた最終残差信号を示す。
残差信号501における符号502,503,504,505は、原信号と同一位置0,1,2,3における残差信号の信号値r0,r1,r2,r3であり、それぞれ図4の符号412,413,414,415で示す残差信号と同一である。符号506で示すレベルは、残差信号502,503,504,505のDC値であり、図4の符号416で示すレベルと同一である。
残差信号502の位置0と残差信号505の位置3の中点位置1.5におけるDC値506がqであるとして、点(1.5,q)を通る直線であって、残差信号のサンプル点(0,r0),(0,r1),(0,r2),(0,r3)を線形近似する直線を求める。たとえば最小二乗法によって、線形近似直線を求める。あるいは、参照信号400の位置−1における信号値が0であるとして、点(−1,0)と点(1.5,q)を通る直線を線形近似直線としてもよい。こうして得られた線形近似直線が符号507で示されている。
残差信号502,503,504,505の信号値r0,r1,r2,r3から、それぞれの位置において線形近似直線507が示す値を減ずることにより、最終残差信号508を算出する。最終残差信号508における符号509,510,511,512は、原信号と同一位置0,1,2,3における最終残差信号の信号値r’0,r’1,r’2,r’3を高さで示している。最終残差信号509,510,511,512の符号化情報量は、近似前の残差信号502,503,504,505の符号化情報量と比べ小さくなることが期待できる。
図4および図5では、一次元の信号で説明したが、二次元画像信号の場合は、予測残差信号の近似直線が近似平面になる。
このようにして、一般に、動画像の複数のサンプル点が与えられると、各サンプル点の画素値とそのサンプル点の第1の予測値の差分を求めることにより、各サンプル点の第1の誤差値を取得する。次に、各サンプル点の第1の誤差値の総和もしくは平均値をもとに得られる線形近似係数を各サンプル点の第2の予測値とする。さらに、各サンプル点の第1の誤差値とそのサンプル点の第2の予測値の差分を求めることにより、各サンプル点の新たな誤差値(第2の誤差値)を取得する。こうして得られた各サンプル点の第1の誤差値の平均値と第2の誤差値を統合して符号化することで、サンプル点の予測誤差を効率的に符号化することができる。
復号の際は、画像の原信号における複数のサンプル点について、各サンプル点の第1の予測値、および、各サンプル点の原信号の値と第2の予測値との差分値を復号する。前記差分値を直流成分(サンプル点の誤差値の総和もしくは平均値に相当する)と交流成分(最終残差成分に相当する)に分離する。次に、各サンプル点の差分値の直流成分をもとに得られる線形近似係数を各サンプル点の第2の予測値として求める。こうして得られた第1の予測値、第2の予測値、および差分値の交流成分を足し合わせることにより、復号信号を得ることができる。
面内予測で大きな残差が発生するのは、予測方向に沿った信号の変化を十分に捉えることができていないことが一つの原因である。そのとき、予測方向は間違っていなくても、AC成分とともにDC成分が発生する。そこで、本発明の実施の形態では、面内予測の残差信号のDC成分から自身のAC成分を予測することにより、残差信号の情報量を削減することを狙いとしている。
具体的には、予測残差信号と同じDC値を持つ線形信号を残差近似信号と仮定し、予測残差信号から減ずることにより、最終的な残差成分を求める。最終的な残差成分は、AC成分のみを持つ信号であるため、DC成分位置に予め算出した予測残差のDC成分を埋め込んで符号化し伝送する。
全ブロックに対して、上述の残差信号の近似手法を適用する場合、面内予測の復号DC値から予測信号を作成することができるため、符号化データに追加情報を必要としない。ブロック単位で残差信号の近似機能の有効・無効を切り替える構成を取る場合は、ブロック単位での1ビットの切り替えフラグのみを追加することで実現することができる。
以下、本発明の実施の形態における画像符号化装置において、1ブロックを符号化する例を説明する。
図3は、実施の形態に係る画像符号化装置の構成図である。画像符号化装置は、符号化対象ブロックの面内予測信号を作成する面内予測部301、面内予測画像の予測残差を算出する減算部302、面内予測の予測残差の直流成分を算出するDC値算出部303、予測残差の直流成分の量子化を行うDC値量子化部304、量子化した予測残差の直流成分を復号するDC値逆量子化部305、予測残差の線形近似信号を作成する残差近似信号作成部306、最終残差成分を算出する減算部307、最終残差成分の符号化処理を行う直交変換部308及び量子化部309、符号化係数の直流成分と交流成分を統合する直交変換係数統合部310、直交変換係数の直流成分と交流成分を分離する直交変換係数分離部311、量子化直交変換係数の復号処理を行う逆量子化部312及び逆直交変換部313、局所復号信号を算出する加算部314、復号信号を格納する復号フレームバッファ315、及び、符号化情報を出力ビット系列に変換する可変長符号化部316を含む。
面内予測部301は、符号化対象ブロックの原信号を取得し、また、復号フレームバッファ315から面内予測の予測参照信号を取得する。面内予測部301は、最適な面内予測モードを決定し、符号化対象ブロックの面内予測信号を第一の予測値として生成する。
面内予測モードの決定手順は、従来と同様である。例えば、原信号の形状に応じて面内予測モード候補を決定する。あるいは、全ての面内予測モード候補の面内予測信号を作成し、原信号との評価値が最小になるモードを最適面内予測モードとする。評価値としては、絶対値差分和や最小二乗誤差、あるいは対象ブロックの仮符号化による発生ビット長を用いる。
面内予測部301は、決定した面内予測モードを残差近似信号作成部306と可変長符号化部316へ伝送し、生成した面内予測信号を減算部302と、加算部314へ伝送する。
減算部302は、符号化対象ブロックの原信号を取得し、また、面内予測部301から面内予測信号を取得する。減算部302は、原信号から面内予測信号を減ずることにより、面内予測画像の予測残差(第1の残差信号)を算出する。減算部302は、算出された予測残差をDC値算出部303と減算部307へ伝送する。
DC値算出部303は、減算部302から面内予測画像の予測残差を取得し、予測残差のDC値を算出し、算出したDC値をDC値量子化部304へ伝送する。
DC値量子化部304は、DC値算出部303から予測残差のDC値を取得し、予測残差のDC値に対し所定の量子化処理を行い、残差DC量子化値を算出する。DC値量子化部304は、残差DC量子化値をDC値逆量子化部305と直交変換係数統合部310へ伝送する。
DC値逆量子化部305は、DC値量子化部304から残差DC量子化値を取得し、残差DC量子化値に対し所定の逆量子化処理を行い、復号残差DC値(第1の残差信号の直流成分)を算出する。DC値逆量子化部305は、復号残差DC値を残差近似信号作成部306へ伝送する。
残差近似信号作成部306は、面内予測部301から使用された面内予測モードの情報を取得し、DC値逆量子化部305から復号残差DC値を取得する。
残差近似信号作成部306は、残差近似の有効性を評価し、残差近似有効性フラグを算出する。残差近似有効性フラグは、暗示的無効、明示的無効、明示的有効の3つの状態のうちどれか一つを取り、それぞれの状態に値0、1、2を割当てる。
残差近似信号作成部306は、復号残差DC値が0である場合、または、面内予測モードがDCモードである場合、残差近似を暗示的に無効とし、残差近似有効性フラグに暗示的無効を示す2を割り当てる。
残差近似信号作成部306は、復号残差DC値が0でない、かつ、面内予測モードがDCモードでない場合は、復号残差DC値を利用して残差近似信号を作成し、残差近似の有効性を判定する。例えば符号化対象ブロックの中心位置で復号残差DC値を通る平面であって、残差信号のサンプル点を線形近似する平面を最小二乗法によって求め、この平面上の対応する点を残差近似信号とする。ただし、本実施の形態では、前述の線形近似平面が復号残差DC値を通る位置を符号化対象ブロックの中心位置に限定するものではなく、参照信号位置であってもよいし、符号化対象ブロックの先頭位置でもよいし、参照信号位置と符号化対象ブロックの先頭位置の間であってもよい。
残差近似信号作成部306は、さらに、残差近似信号の誤差評価を行い、残差近似の有効性を決定し、残差近似有効性フラグに明示的無効を示す0か明示的有効を示す1のどちらかを割り当てる。たとえば、残差近似を行った場合と行わなかった場合で残差成分の大小比較をし、残差近似を行った方が最終的な残差成分が小さくなる場合には、残差近似を明示的有効と判定し、そうでない場合は明示的無効と判定する。誤差評価においては、面内予測部301での判定と同様、誤差の絶対値差分和や最小二乗誤差、あるいは対象ブロックの仮符号化による発生ビット長を用いる。さらに、面内予測モード判定と、残差近似の有効性を別々で行うのではなく、同時に行うこともできる。
残差近似信号作成部306は、残差近似を明示的無効、または暗示的無効とした場合には、残差近似信号を0とする。
残差近似信号作成部306は、残差近似有効性フラグを直交変換係数統合部310と直交変換係数分離部311と可変長符号化部316へ伝送し、残差近似信号を減算部307と加算部314へ伝送する。
ここで示した残差近似信号の作成手順に加え、残差近似信号の傾き方向を制御することもできる。例えば、残差近似信号の傾き方向を残差近似モードとして、図2の201に示す面内予測モード候補と対応した方向のうち、いずれか一つをとるものとする。その際には、決定済みの該ブロックの面内予測モードを参照し、発生頻度の高い残差近似モードに対し、より小さな割当値を決定することで追加符号量を削減できる。
減算部307は、減算部302から予測残差を取得し、残差近似信号作成部306から残差近似信号を取得する。減算部307は、予測残差信号(第1の残差信号)から予測残差の線形近似信号を減ずることにより、最終残差成分(第2の残差信号)を算出する。ここで、残差近似信号作成部306において、残差近似を無効と決定した場合には、残差近似信号が0であるため、減算部307の出力である最終残差成分(第2の残差信号)は予測残差(第1の残差信号)と等価となる。減算部307は、算出された最終残差成分を直交変換部308へ伝送する。
直交変換部308及び量子化部309は、減算部307から最終残差成分を取得し、最終残差成分に対し、所定の直交変換・量子化処理を行い、最終残差成分の量子化直交変換係数を算出する。量子化部309は、最終残差成分の量子化直交変換係数を直交変換係数統合部310に伝送する。残差近似信号作成部306において、残差近似を無効と決定した場合には、直交変換部308の入力である最終残差成分は予測残差と等価となり、量子化部309の出力は、予測残差の量子化直交変換係数となる。
直交変換係数統合部310は、DC値量子化部304から残差DC量子化値を取得し、量子化部309から最終残差成分の量子化直交変換係数を取得し、さらに、残差近似信号作成部306から残差近似有効性フラグを取得する。直交変換係数統合部310は、最終残差成分(第2の残差信号)の量子化直交変換係数のDC値位置に残差DC量子化値(第1の残差信号の直流成分の量子化値)を代入することにより、交流成分と直流成分を統合させた結合残差成分(第3の残差信号)の量子化直交変換係数を算出する。直交変換係数統合部310は、統合残差成分量子化直交変換係数を直交変換係数分離部311と可変長符号化部316へ伝送する。
ここで、残差近似有効性フラグが明示的無効を意味する0である場合、または暗示的無効を示す2である場合は、残差DC量子化値(第1の残差信号の直流成分の量子化値)と、最終残差成分(第2の残差信号)量子化直交変換係数のDC成分は等価となるため、最終残差成分量子化直交変換係数のDC値位置に残差DC量子化値を代入する処理を省略し、最終残差成分量子化直交変換係数をそのまま統合残差成分(第3の残差信号)量子化直交変換係数とすることもできる。
このように、残差近似を暗示的に無効と判定した場合は、最終残差成分(第2の残差信号)は予測残差(第1の残差信号)と等価であるから、可変長符号化部316で可変長符号化される統合残差成分(第3の残差信号)は、予測残差(第1の残差信号)そのものである。したがって、その場合は、予測残差(第1の残差信号)を最終残差成分(第2の残差信号)として直交変換・量子化処理を行えば、最終残差成分(第2の残差信号)量子化直交変換係数のDC値位置に残差DC量子化値(第1の残差信号の直流成分の量子化値)を代入して交流成分と直流成分を統合する直交変換係数統合部310の処理を省略することができる。
直交変換係数分離部311は、直交変換係数統合部310から統合残差成分量子化直交変換係数を取得し、残差近似信号作成部306から残差近似有効性フラグを取得する。
残差近似有効性フラグが明示的無効を示す0、または暗示的無効を示す2である場合、直交変換係数分離部311は、統合残差成分量子化直交変換係数をそのまま残差成分量子化直交変換係数として、逆量子化部312へ伝送する。
残差近似有効性フラグが明示的有効を示す1である場合、直交変換係数分離部311は、統合残差成分量子化直交変換係数のDC値に0を代入することにより、残差AC成分量子化直交変換係数を算出し、残差AC成分量子化直交変換係数を逆量子化部312へ伝送する。
逆量子化部312及び逆直交変換部313は、直交変換係数分離部311から残差成分量子化直交変換係数または残差AC成分量子化直交変換係数を取得し、残差成分量子化直交変換係数または残差AC成分量子化直交変換係数に対し、所定の逆量子化・逆直交変換を行い、復号残差成分を算出する。逆直交変換部313は、復号残差成分を加算部314へ伝送する。
加算部314は、面内予測部301から面内予測信号を取得し、残差近似信号作成部306から残差近似信号を取得し、逆直交変換部313から復号残差成分を取得する。加算部314は、面内予測信号、残差近似信号、及び復号残差成分を足し合わせることにより、局所復号信号を算出し、算出した局所復号信号を復号フレームバッファ315へ伝送する。
復号フレームバッファ315は、加算部314から局所復号信号を取得し、保持する。また、復号フレームバッファ315からは、面内予測の参照信号として、予測参照位置の信号が面内予測部301へ伝送される。
可変長符号化部316は、面内予測部301から面内予測モードの情報を取得し、残差近似信号作成部306から残差近似有効性フラグを取得し、また、直交変換係数統合部310から統合残差成分量子化直交変換係数を取得する。可変長符号化部316は、面内予測モードの情報と統合残差成分量子化直交変換係数に対し、所定の可変長符号化を行い、符号化系列を作成する。残差近似有効性フラグに対しては、残差近似有効性フラグが暗示的無効を示す2である場合は、可変長符号化部316は残差近似有効性フラグは符号化データとして伝送しないが、暗示的無効でない場合、すなわち明示的無効を示す0もしくは明示的有効を示す1である場合は、残差近似有効性フラグも可変長符号化して、符号化系列を作成する。
次に、本実施の形態に係る画像符号化装置によって1ブロックを符号化する手順を、図6のフローチャートを参照して説明する。
ステップS601の面内予測信号生成処理において、面内予測部301が、符号化対象ブロックの原信号の入力を受け、復号フレームバッファ315に格納された面内予測の参照信号を利用して、最適な面内予測モードのもとで符号化対象ブロックの面内予測信号を作成し、ステップS602へ進む。
ステップS602の面内予測残差信号算出処理において、減算部302が、符号化対象ブロックの原信号から面内予測信号を減ずることにより面内予測の予測残差を算出し、ステップS603へ進む。
ステップS603の残差信号の復号DC値算出処理において、DC値算出部303、DC値量子化部304、及びDC値逆量子化部305が、予測残差信号のDC値を算出し、量子化し、さらに、逆量子化することにより、復号残差DC値を算出し、ステップS604へ進む。
ステップS604の残差近似の暗示的有効性判定処理において、残差近似信号作成部306が、残差近似が暗示的に有効であるか否かを判定する。残差近似信号作成部306は、復号残差DC値が0である場合、または、面内予測モードがDCモードである場合は、面内予測の残差信号が一方向に強い相関を持たないと判断し、残差近似信号を暗示的に無効と判定し、残差近似有効性フラグに対し、暗示的無効を示す2を割り当て、ステップS614へ進む。
残差近似信号作成部306は、面内予測モードがDCモードでなく、かつ、復号残差DC値が0でない場合は、暗示的無効ではないと決定し、残差近似有効性フラグの割り当てを先送りし、ステップS605へ進む。
ステップS605の残差近似信号作成処理において、残差近似信号作成部306が、決定された面内予測モードのもと、復号残差DC値から残差近似信号を作成する。例えば符号化対象ブロックの中心位置で復号残差DC値を通る線形近似平面を、残差信号のサンプル点を用いた最小二乗法によって求め、この平面で残差信号を近似する。そして、ステップS606へ進む。
ステップS606の残差近似の明示的有効性判定処理において、残差近似信号作成部306が残差近似が明示的に有効であるか否かを判定する。残差近似信号作成部306は、残差近似信号の誤差評価を行い、元の残差信号と比べ、残差近似をした方が誤差が小さくなる場合に、残差近似を明示的有効であると判定し、残差近似有効性フラグを明示的有効を示す値1に設定し、ステップS607へ進み、残差近似をしても誤差が小さくならない場合は、残差近似を明示的無効であると判定し、残差近似有効性フラグを明示的無効を示す値0に設定し、ステップS614へ進む。
ステップS607の最終残差信号作成処理において、減算部307が予測残差から残差近似信号を減ずることにより、最終残差成分を算出し、ステップS608へ進む。
ステップS608の最終残差AC成分の符号化処理において、直交変換部308及び量子化部309が、最終残差成分に対し、所定の直交変換・量子化処理を行い、最終残差成分の量子化直交変換係数を算出し、ステップS609へ進む。
ステップS609の最終残差成分作成処理において、直交変換係数統合部310が、最終残差成分の量子化直交変換係数のDC値位置に残差DC量子化値を代入することにより、統合残差成分量子化直交変換係数を算出する。ただし、本ステップを通るのは残差近似有効性フラグが1のときのみである。そして、ステップS610へ進む。
ステップS610の符号化情報の可変長符号化処理において、可変長符号化部316が、面内予測モードの情報、残差近似有効性フラグ、及び統合残差成分量子化直交変換係数を可変長符号化して、符号化系列を生成する。ただし、本ステップを通るのは残差近似有効性フラグが1のときのみである。そして、ステップS611へ進む。
ステップS611の最終残差成分の分離処理において、直交変換係数分離部311が、統合残差成分量子化直交変換係数のDC値に0を代入することにより、残差AC成分量子化直交変換係数を算出する。ただし、本ステップを通るのは残差近似有効性フラグが1のときのみである。そして、ステップS612へ進む。
ステップS612の最終残差AC成分の復号処理において、逆量子化部112及び逆直交変換部313は、残差AC成分量子化直交変換係数に対し、逆量子化・逆直交変換を行い、復号残差AC成分を算出し、ステップS613へ進む。
ステップS613の復号信号作成処理において、加算部314は、面内予測信号、残差近似信号、及び復号残差AC成分を足し合わせることにより、局所復号信号を算出し、復号フレームバッファ315に格納する。これで残差近似が明示的に有効である場合のブロックの符号化処理が完了する。
残差近似が明示的に無効である場合、ステップS614の面内予測残差成分の符号化処理が行われる。本ステップ開始時点で、残差近似有効性フラグは明示的無効を示す0、または暗示的無効を示す2のどちらかに設定され、残差近似信号は0が設定されている。
ステップS614において、減算部307が、予測残差から残差近似信号を減ずることにより、最終残差成分を算出する。または、残差近似信号が0であるため、予測残差をそのまま最終残差成分としても等価である。そして、直交変換部308及び量子化部309が、最終残差成分に対し、直交変換・量子化処理を行い、最終残差成分の量子化直交変換係数を算出する。そして、ステップS615へ進む。
ステップS615の符号化情報の可変長符号化処理において、直交変換係数統合部310は、残差近似有効性フラグが明示的無効を示す0または暗示的無効を示す2であることから、最終残差成分の量子化直交変換係数をそのまま統合残差成分量子化直交変換係数として出力する。可変長符号化部316は、面内予測モードの情報、残差近似有効性フラグ、および統合残差成分量子化直交変換係数に対して、可変長符号化処理を行い、符号化系列を生成する。本ステップを通るのは残差近似有効性フラグが明示的無効を示す0または暗示的無効を示す2のときのみであり、可変長符号化部316は、残差近似有効性フラグが暗示的無効を示す2である場合は、残差近似有効性フラグの符号化を行わず、暗示的無効でない場合、すなわち明示的無効を示す0である場合は、残差近似有効性フラグの可変長符号化を行い、符号化系列を作成する。そして、ステップS616へ進む。
ステップS616の面内予測残差成分の復号処理において、直交変換係数分離部311は、残差近似有効性フラグが明示的無効を示す0または暗示的無効を示す2であるため、統合残差成分量子化直交変換係数をそのまま残差成分量子化直交変換係数として出力する。逆量子化部112及び逆直交変換部313は、残差成分量子化直交変換係数に対し、逆量子化・逆直交変換を行い、復号残差成分を算出する。そして、ステップS617へ進む。
ステップS617の復号信号作成処理において、加算部314は、面内予測信号と復号残差成分を足し合わせることにより、局所復号信号を算出し、算出した局所復号信号を復号フレームバッファ315に格納する。これで残差近似有効性フラグが明示的に無効であるか、暗示的に無効である場合のブロックの符号化処理が完了する。
次に、本実施の形態の画像符号化装置で符号化された画像を復号する画像復号装置において、1ブロックを復号する例を説明する。
図7は、実施の形態に係る画像復号装置の構成図である。画像復号装置は、入力ビット系列の構文を解析し、可変長復号する可変長復号部701、復号対象ブロックの面内予測信号を作成する面内予測部702、直交変換係数の直流成分と交流成分を分離する直交変換係数分離部703、量子化した予測残差の直流成分を復号するDC値逆量子化部704、予測残差の線形近似信号を作成する残差近似信号作成部705、残差成分の復号処理を行う逆量子化部706及び逆直交変換部707、復号信号を算出する加算部708、復号信号を格納する復号フレームバッファ709、及び、残差近似信号の有効性に基づき処理の流れを切り替えるためのスイッチ710、711を含む。
可変長復号部701は、ビット系列を入力し、構文を解析し、面内予測モードの情報と量子化直交変換係数の可変長復号を行う。可変長復号部701は、面内予測モードを面内予測部702と残差近似信号作成部705へ伝送し、量子化直交変換係数をスイッチ711へ伝送する。
可変長復号部701は、さらに、残差近似信号有効性フラグの復号を行う。本実施の形態では、復号DC値を用いて残差近似信号の傾きレベルを決定する。また、面内予測モードを用いて残差近似信号の傾き方向を決定する。復号DC値が0である場合、または、面内予測モードがDCモードである場合、面内予測の残差信号が一方向に強い相関を持たないと判断し、残差近似信号を暗示的に無効とする。
可変長復号部701は、面内予測モードがDCモードである場合、または、量子化直交変換係数のDC成分が0である場合、暗示的に残差近似信号有効性フラグを、無効を示す0と決定する。そうでないとき、すなわち面内予測モードがDCモードでない、かつ、量子化直交変換係数のDC成分が0でない場合は、可変長復号部701は、明示的に残差近似信号有効性フラグの復号を行い、有効か無効かを決定する。
可変長復号部701は、決定または復号された残差近似信号有効性フラグをスイッチ710とスイッチ711へ伝送する。
面内予測部702は、可変長復号部701から面内予測モードを取得し、復号フレームバッファ709から面内予測の予測参照信号を取得する。面内予測部702は、面内予測モードのもとで、予測参照信号を利用して所定の面内予測処理を行い、面内予測信号を作成する。面内予測処理手順は、従来と同様である。面内予測部702は、作成した面内予測信号を加算部708へ伝送する。
直交変換係数分離部703は、スイッチ710から量子化直交変換係数を取得し、量子化直交変換係数のDC値とAC成分を分離する。直交変換係数分離部703は、量子化DC値をDC値逆量子化部704へ伝送し、量子化AC成分を逆量子化部706へ伝送する。
DC値逆量子化部704は、直交変換係数分離部703から予測残差の量子化DC値を取得し、予測残差の量子化DC値に対し所定の逆量子化処理を行い、復号DC値を算出する。DC値逆量子化部704は、算出した復号DC値を残差近似信号作成部705へ伝送する。
残差近似信号作成部705は、可変長復号部701から面内予測モードを取得し、DC値逆量子化部704から復号DC値を取得する。残差近似信号作成部705は、復号DC値を利用して残差近似信号を作成する。符号化装置の残差近似信号作成部306と同様に、例えば符号化対象ブロックの中心位置で復号残差DC値を通る平面であって、残差信号のサンプル点を線形近似する平面を最小二乗法によって求め、この平面上の対応する点を残差近似信号とする。残差近似信号作成部705は、残差近似信号をスイッチ711へ伝送する。
逆量子化部706及び逆直交変換部707は、スイッチ710から量子化直交変換係数を取得するか、もしくは、直交変換係数分離部703から量子化AC成分を取得する。逆量子化部706及び逆直交変換部707は、取得した量子化直交変換係数または量子化AC成分に対し、所定の逆量子化処理と逆直交変換処理を行い、復号残差信号を作成し、作成した復号残差信号を加算部708へ伝送する。
加算部708は、面内予測部702から面内予測信号を取得し、逆直交変換部707から復号残差信号を取得し、スイッチ711から残差近似信号を取得する。加算部708は、
面内予測信号、復号残差信号、および残差近似信号を足し合わせることにより、復号信号を作成し、作成した復号信号を復号フレームバッファ709へ伝送する。
復号フレームバッファ709は、加算部708から対象ブロックの復号信号を取得し、保持する。また、復号フレームバッファ709から面内予測の参照信号として、予測参照位置の信号が面内予測部702へ伝送される。
スイッチ710は、可変長復号部701から量子化直交変換係数と残差近似信号有効性フラグを取得する。残差近似信号有効性フラグが有効である場合、スイッチ710は、可変長復号部701と直交変換係数分離部703を接続し、量子化直交変換係数を直交変換係数分離部703へ伝送する。残差近似信号有効性フラグが無効である場合、スイッチ710は、可変長復号部701と逆量子化部706を接続し、量子化直交変換係数を逆量子化部706へ伝送する。
スイッチ711は、可変長復号部701から残差近似信号有効性フラグを取得する。残差近似信号有効性フラグが有効である場合、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続し、残差近似信号を加算部708へ伝送する。残差近似信号有効性フラグが無効である場合、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続しない。
次に、本実施の形態に係る画像復号装置によって1ブロックを復号する手順を、図8のフローチャートを参照して説明する。
ステップS801の可変長復号処理において、可変長復号部701が面内予測モードと残差量子化直交変換係数を復号し、ステップS802へ進む。
ステップS802の面内予測信号生成処理において、面内予測部702が、可変長復号部701から取得した面内予測モードのもとで、復号フレームバッファ709に格納された面内予測の予測参照信号を利用して、面内予測信号を作成し、ステップS803へ進む。
ステップS803の残差近似の暗示的有効性判定処理において、可変長復号部701が、
ステップS801で復号した面内予測モードと量子化直交変換係数のDC成分を参照し、残差近似が暗示的に有効であるか否かを判定する。可変長復号部701は、面内予測モードがDCモードであるか、または、量子化直交変換係数のDC成分が0である場合は、残差近似が暗示的に無効であると判定し、ステップS810へ進む。そうでない場合、すなわち、面内予測モードがDCモードでなく、かつ、量子化直交変換係数のDC成分が0でない場合は、残差近似が暗示的無効でないと判定し、ステップS804へ進む。
ステップS804の残差近似信号有効性フラグの可変長復号処理において、可変長復号部701が、明示的に残差近似信号有効性フラグの復号を行う。本ステップに入るのは、残差近似有効性が暗示的無効でない場合、すなわち面内予測モードがDCモードでなく、かつ、量子化直交変換係数のDC成分が0でない場合である。そして、ステップS805へ進む。
ステップS805の残差近似の明示的有効性判定処理において、可変長復号部701が、明示的に復号した残差近似信号有効性フラグの値によって残差近似が明示的に有効か否かを判定し、残差近似信号有効性フラグをスイッチ710とスイッチ711に伝送し、スイッチの切替えを行う。
残差近似信号有効性フラグが明示的有効を示す値2である場合、スイッチ710は、可変長復号部701と直交変換係数分離部703を接続し、量子化直交変換係数は直交変換係数分離部703へ伝送し、さらにスイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続し、残差近似信号は加算部708へ伝送する。そして、ステップS806へ進む。
残差近似信号有効性フラグが明示的無効を示す値1である場合、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続せず、スイッチ710は、可変長復号部701と逆量子化部706を接続し、量子化直交変換係数を逆量子化部706へ伝送する。そして、ステップS811へ進む。
ステップS806に入るときは、残差近似有効性が有効となる場合であり、スイッチ710は、可変長復号部701と直交変換係数分離部703を接続するように設定されている。ステップS806の最終残差成分の分離処理において、直交変換係数分離部703は、スイッチ710を介し可変長復号部701から量子化直交変換係数を取得し、量子化直交変換係数のDC値とAC成分を分離し、量子化DC値をDC値逆量子化部704へ伝送し、量子化AC成分を逆量子化部706へ伝送する。そして、ステップS807へ進む。
ステップS807の残差近似信号作成処理において、DC値逆量子化部704が、予測残差の量子化DC値に対し所定の逆量子化処理を行い、復号DC値を算出する。残差近似信号作成部705は、面内予測モードのもとで、復号DC値にもとづいて残差近似信号を作成する。そして、ステップS808へ進む。
ステップS808に入るときは、残差近似有効性が有効となる場合であり、スイッチ710は、可変長復号部701と直交変換係数分離部703を接続するように設定されている。ステップS808の最終残差AC成分の復号処理において、逆量子化部706及び逆直交変換部707は、量子化AC成分に対し、所定の逆量子化処理と逆直交変換処理を行い、復号残差信号を作成し、ステップS809へ進む。
ステップS809に入るときは、残差近似有効性が有効となる場合であり、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続するように設定されている。ステップS809の復号信号作成処理において、加算部708は、面内予測信号、復号残差信号、および残差近似信号を足し合わせることにより、復号信号を作成し、復号フレームバッファ709に格納する。これで残差近似が明示的に有効である場合の復号対象ブロックの復号を完了し、次のブロックの復号を開始する。
ステップS810に入るのは、残差近似有効性が暗示的無効である場合、すなわち面内予測モードがDCモードであるか、または、量子化直交変換係数のDC成分が0である場合である。ステップS810において、可変長復号部701が、残差近似信号有効性フラグを暗示的に無効を示す値に設定し、スイッチ710とスイッチ711に暗示的無効を示す残差近似有効性フラグを伝送する。このとき、スイッチ710は、可変長復号部701と逆量子化部706を接続し、量子化直交変換係数を逆量子化部706へ伝送し、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続しないように設定される。そして、ステップS811へ進む。
ステップS811に入るときは、残差近似が無効となる場合であり、スイッチ710は、可変長復号部701と逆量子化部706を接続するように設定されている。ステップS811の面内予測残差成分の復号処理において、逆量子化部706及び逆直交変換部707は、取得した量子化直交変換係数に対し、逆量子化処理と逆直交変換処理を行い、復号残差信号を作成する。そして、ステップS812へ進む。
ステップS812に入るときは、残差近似が無効となる場合であり、スイッチ711は、残差近似信号作成部705と加算部708を接続しないように設定されている。ステップS812の復号信号作成処理において、加算部708は、面内予測信号と復号残差信号を足し合わせることにより、復号信号を作成し、作成した復号信号を復号フレームバッファ709に格納する。これで残差近似が暗示的に無効または明示的に無効である場合の復号対象ブロックの復号を完了し、次のブロックの復号を開始する。
以上述べたように、実施の形態に係る画像符号化装置によれば、残差成分の符号化に先立ち、面内予測信号の復号DC値を算出し、面内予測信号の復号DC値を利用して残差の近似信号を算出すること、面内予測信号の残差成分から、復号DC値を元に決定した近似信号を減ずることにより、最終残差成分とすることから、符号化すべき残差成分の情報量を削減することが出来る。
近似信号の生成に際しては、面内予測信号の復号DC値と、面内予測モードを参照する。面内予測モードと同じ傾き方向で、DC値が面内予測信号の復号DC値となる近似信号を生成する。作成する近似信号のDC値を、面内予測の復号DC値と等価とし、最終残差成分の量子化直交変換係数をAC成分のみで表現し、最終残差成分の量子化直交変換係数のDC成分に面内予測信号の量子化DC値を代入する。
近似信号生成時に参照する、面内予測信号の復号DC値と、面内予測モードは本来符号化すべき情報であるために、発生符号量は増加しない。符号化単位であるブロック毎に残差近似の手法の適用の有無を適応的に切り替える構成を取る場合は、符号化単位であるブロックにつき、残差近似適用の有無を示す1ビットのフラグのみ追加すればよい。したがって、少ない情報量の増加で残差成分の情報量削減効果を得ることができる。
以上の符号化及び復号に関する処理は、ハードウェアを用いた伝送、蓄積、受信装置として実現することができるのは勿論のこと、ROM(リード・オンリ・メモリ)やフラッシュメモリ等に記憶されているファームウェアや、コンピュータ等のソフトウェアによっても実現することができる。そのファームウェアプログラム、ソフトウェアプログラムをコンピュータ等で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも、有線あるいは無線のネットワークを通してサーバから提供することも、地上波あるいは衛星ディジタル放送のデータ放送として提供することも可能である。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上記の実施の形態では、予測残差信号を最小二乗法により線形近似することで予測残差近似信号を生成したが、最小二乗法以外の方法で線形近似してもよい。また、線形近似に限らず、2次関数など所定の関数で予測残差信号を近似してもよい。
上記の実施の形態では、画像を例に予測残差信号を近似し、効率的に予測残差信号を圧縮符号化する方法を説明したが、この圧縮符号化方法は、画像以外の情報に対しても適用することができる。たとえば、音声データのような1次元データの予測符号化にも適用できる。また、時間方向または空間方向に変化する任意のデータの予測符号化にも適用できる。