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JP5298451B2 - 摺動構造 - Google Patents

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Description

本発明は、相互に摺動する一対の摺動部材のうち、一方の摺動部材の摺動面に非晶質炭素被膜が形成された一対の摺動部材を含む摺動構造に係り、特に、該一対の摺動部材間に有機モリブデン化合物を含有した潤滑剤を含む摺動構造に関する。
従来から、自動車において、エンジン、トランスミッションなど様々な機器に摺動部材が用いられている。そこでは、摺動部材の摺動抵抗を低減してエネルギ損失を減らし、地球環境の保護のための今後の燃費規制に対応すべく、様々な研究開発が進められている。
例えば、このような研究開発の1つに、摺動部材の耐摩耗性を向上させると共に低摩擦特性を得るために、摺動部材の摺動面にコーティングを行う技術がある。近年、このコーティング材料として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの非晶質炭素材料が注目されている。該非晶質炭素材料により形成された被膜(非晶質炭素被膜)は、炭素を主成分とする硬質の被膜であり、該硬質の被膜の炭素は固体潤滑剤としても作用するので、低い摺動抵抗と高い耐摩耗性とを両立できる被膜である。
一方、前記摺動部材を摺動するにあたって、摺動部材の摺動面に供給される潤滑剤(潤滑油、グリース)は、摺動部材の摺動特性に大きな影響を与えるため、摺動部材の材質、表面粗さ、その使用環境等を考慮して、最適な摺動構造となるように潤滑剤を選定することは非常に重要である。
例えば、このような一例として、基材の表面にDLC被膜(非晶質炭素被膜)を形成した一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の摺動面に、ジジチオリン酸モリブデン(Mo−DTC)又はジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTP)等の有機モリブデン化合物を金属系摩擦調整剤として含有した潤滑剤と、を備えた摺動構造が提案されている(特許文献1参照)。
この摺動構造によれば、摺動時に、前記有機モリブデン化合物は、摺動面間において二硫化モリブデンとなる。該二硫化モリブデンは固体潤滑剤として作用するので、摺動部材の摺動特性を向上させることができる。
特開2005−060416号公報
ところで、前記非晶質炭素被膜を化学気相成長法(CVD)により成膜した場合には、物理的蒸着法(PVD)により成膜したものに比べて、表面にドロップレット等が生成されないため、非晶質炭素被膜の表面粗度を低くすることができ、摺動部材の摩擦係数及び相手部材に対する相手攻撃性を低減することができる。しかし、前記CVDにより非晶質炭素被膜を成膜した場合には、非晶質炭素被膜に水素元素が含有することがあり、このような場合には、前記摺動部材を摺動するに従って、非晶質炭素被膜のアモルファス構造と前記潤滑剤中の有機モリブデン化合物とが化学的に反応し、非晶質炭素被膜の摩耗が進行することがある。
具体的には、図6に示すように、有機モリブデン化合物の一部が、摺動部材間の摩擦熱により熱分解し、酸化触媒である三酸化モリブデン(MoO)が生成される。該三酸化モリブデンが存在する環境下において、摺動部材が、高面圧、高数動速度で接触した場合、一種の還元作用により、非晶質炭素被膜中の水素元素が被膜から脱離し、非晶質炭素被膜の強度低下を招くことがある。このようにして、該水素元素が脱離した炭素が活性点となり、活性点となった炭素は、三酸化モリブデンと化学的に反応して被膜から脱離し、一酸化炭素または二酸化炭素のガスとなる。さらに、該反応による炭素の脱離により、脱離した炭素と結合していた炭素も活性点となって、三酸化モリブデンと化学的に反応して被膜から脱離し、一酸化炭素または二酸化炭素のガスとなる。このように、非晶質炭素被膜の表面において、前記化学的な反応が重畳的に繰返されることにより、非晶質炭素被膜の摩耗が進行すると考えられる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水素元素を含有した非晶質炭素被膜に有機モリブデン化合物を含む潤滑剤を使用した場合であっても、非晶質炭素被膜と有機モリブデン化合物との化学的な反応による非晶質炭素被膜の摩耗を抑制することができる摺動構造を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、有機モリブデン化合物から三酸化モリブデンが生成される熱分解反応に着眼した。そして、発明者らは、このような熱分解反応の現象が生じないように、潤滑剤に所定の添加剤を加えることにより、非晶質炭素被膜からの水素元素の脱離を抑え、非晶質炭素被膜が摩耗する化学反応を抑制することができるとの知見を得た。
本発明は、本発明者らが得た上記の新たな知見に基づくものであり、本発明は、相互に摺動する一対の摺動部材のうち、一方の摺動部材の摺動面に水素元素を含む非晶質炭素被膜が形成された一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に存在し、有機モリブデン化合物を少なくとも含む潤滑剤と、を少なくとも備えた摺動構造であって、前記潤滑剤は、銅系の添加剤をさらに含有していることを特徴としている。
本発明によれば、前記一対の摺動部材の摺動面間に存在する潤滑剤に、銅系の添加剤を含有させることにより、有機モリブデン化合物からの三酸化モリブデンの生成を抑制することができる。すなわち、これまでは、摺動部材の摺動時に発生する摩擦熱により、有機モリブデンが熱分解して、三酸化モリブデンが生成されていたが、本発明では、潤滑剤に銅系の添加剤を含有することにより摩擦熱による発熱を抑え、有機モリブデン化合物の熱分解による三酸化モリブデンの生成を抑制することができる。この結果、三酸化モリブデンによる非晶質炭素被膜の水素元素の脱離現象が抑えられ、化学的な反応に起因した非晶質炭素被膜の摩耗を低減することができる。
本発明にいう「相互に摺動する一対の摺動部材」とは、少なくとも一方の摺動部材が他方の摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材をいい、相対的な摺動とは、直線運動、回転運動、又はこれらの運動の組み合わせにより摺動することをいう。
また、前記非晶質炭素被膜は、いわゆるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)からなる被膜(DLC被膜)であり、該非晶質炭素被膜は、スパッタリング、真空蒸着、イオン化蒸着、イオンプレーティング、などを利用した物理的蒸着法(PVD)により成膜してもよく、プラズマ処理などを利用した化学気相成長法(CVD)により、成膜してもよく、これらの方法を組み合わせた方法により成膜してもよい。また、前記非晶質炭素被膜には、Si、Cr、Mo、Fe、Wなどの添加元素を含有させてもよく、このような元素を添加することにより、被膜の表面硬さを調整することもできる。
また、摺動部材の非晶質炭素被膜の表面硬さは、Hv1000からHv4000の範囲内にあることが好ましく、Hv1000未満の場合には、非晶質炭素被膜は摩耗し易く、Hv4000以上の場合には、非晶質炭素被膜と摺動部材の基材との密着力が低下する。また、摺動部材の被膜の膜厚は、0.1μm以上の厚みであることが好ましく、この膜厚よりも小さい場合には、摺動時にこの被膜がすぐに摩滅してしまい、所望の効果を得ることができない。さらに、基材と非晶質炭素被膜との間には、非晶質炭素被膜の密着性を向上させるために、Ta、Ti、Cr、Al、Mg、W、V、Nb、Moから選択される一種以上の金属元素からなる中間層を形成してもよい。
本発明に係る銅系の添加剤としては、有機銅化合物が好ましく、例えば、銅−アミン錯体、銅−コハク酸イミド錯体、有機酸の銅塩、アルコールの銅塩、ジアルキルジチオカルバミン酸銅(Cu−DTC)またはジチオリン酸銅(Cu−DTP)などを挙げることができるが、より好ましい態様としては、本発明に係る銅系の添加剤は、ジチオリン酸銅(Mo−DTP)である。
本発明によれば、ジチオリン酸銅(Cu−DTP)を潤滑剤に含有させることにより、非晶質炭素被膜を形成した摺動部材の相手側の摺動部材(他方の摺動部材)の摺動面に、硫化銅(Cu)やリン酸銅(CuPO)の銅系物質を含む放熱性に優れ、かつトライポロジ性に優れた膜を生成することができる。
すなわち、潤滑剤に含有したジチオリン酸銅に含有した銅だけでなく、発熱箇所である摺動面に、銅系物質からなる膜を形成することにより、有機モリブデン化合物の熱分解(三酸化モリブデン)の生成を抑制する効果をさらに発揮することができる。この結果、化学的な反応に起因した非晶質炭素被膜の摩耗をさらに抑制することができる。
このようなジチオリン酸銅(Cu−DTP)の具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸銅、ジイソブチルジチオリン酸銅、ジプロピルジチオリン酸銅、ジブチルジチオリン酸銅、ジペンチルジチオリン酸銅、ジヘキシルジチオリン酸銅、ジヘプチルジチオリン酸銅、及びジオクチルジチオリン酸銅等の炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸銅;ジフェニルジチオリン酸銅、及びジトリルジチオリン酸銅等の炭素数6〜18のアリール若しくはアルキルアリール基を有する((アルキル)アリール)ジチオリン酸銅などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
さらに、潤滑剤に含有する前記有機モリブデン化合物としては、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)またはジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)などを挙げることができ、より好ましい態様としては、本発明に係る有機モリブデン化合物は、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)またはジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)である。
本発明によれば、有機モリブデン化合物として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)またはジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)を用いることにより、他方の摺動部材の表面には二硫化モリブデン(MoS)が生成され、該に硫化モリブデンは、摺動面に固体潤滑剤の膜として形成されることになる。この結果、前記摺動部材の摺動面に形成された非晶質炭素被膜の化学的な摩耗を抑制するに加えて、摺動面同士の機械的な接触による摺動部材の磨耗もさらに抑制することができる。
特に、汎用性、コスト面等を考慮すると、潤滑剤に含有させる有機モリブデン化合物は、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)がより好ましく、生成方法により分子中のアルキル基の構造は異なる。例えば、アルキルジチオカルバミン酸モリブデンの具体例としては、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジペンチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘキシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘプチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジオクチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジノニルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジウンデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジドデシルジチオカルバミン酸モリブデン、ジトリデシルジチオカルバミン酸モリブデン等を挙げることができる。
また本発明に係る摺動構造は、前記ジチオリン酸銅(Cu−DTP)が、前記潤滑剤に対して0.05〜0.5質量%含有していることがより好ましい。すなわち、本発明によれば、潤滑剤に対するジチオリン酸銅の含有量を前記範囲とすることにより、非晶質炭素被膜の摩耗量を低減することができる。すなわち、ジチオリン酸銅が潤滑剤に対して0.05質量%よりも少ない場合には、有機モリブデン化合物の熱分解作用を抑制するに充分ではなく、非晶質炭素被膜の摩耗量は増加する傾向にある。また、ジチオリン酸銅が潤滑剤に対して0.5質量%よりも多い場合であっても、有機モリブデン化合物の熱分解作用の抑制をさらに期待することは難しく、経済的ではない。
また、潤滑剤のベース油は、前述したような添加剤を含むのであれば鉱油、合成油などが挙げられ、特に限定されるものではない。また、このような潤滑剤は、酸化防止剤、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、金属不活性剤、清浄剤、防錆剤、泡消剤などを適宜追加することができる。なお、潤滑剤の代わりに、例えば、有機モリブデン化合物、銅系添加剤を含む基油にさらに増稠剤を分散させたグリースであっても、前述した有機モリブデン化合物の熱分解抑制の効果が得られる。
また、この潤滑剤の給油機構としては、循環潤滑機構、ミスト潤滑機構、又は、オイルバスによる油浴潤滑機構など等が挙げられ、摺動時に摺動部材間に、潤滑剤を給油することができるのであれば、特に限定さるものではない。
また、本発明に係る摺動構造は、前記他方の摺動部材は、鉄系材料からなる摺動部材であることがより好ましい。本発明によれば、他方の摺動部材を鉄系材料とすることにより、ジチオリン酸銅が鉄系材料に反応して銅系物質からなる膜を他方の摺動部材の摺動面に形成しやすく、さらに、有機モリブデン化合物が二硫化モリブデンとなり、鉄系材料と馴染み性が良いので、鉄系材料の摩耗ばかりでなく非晶質炭素被膜の摩耗も抑制することができる。また、本発明にいう「鉄系材料」とは、鋼系の材料、鋳鉄系の材料いずれの材料であってもよく、非晶質炭素被膜を接触し摺動する面の材料が鋼、又は鉄系の材料であれば特に限定されるものではない。
本発明によれば、水素元素を含む非晶質炭素被膜が形成された摺動面に、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤を使用した場合であっても、非晶質炭素被膜の水素元素と有機モリブデン化合物との化学的反応に起因した非晶質炭素被膜の摩耗を抑制することができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
[実施例]
(摺動構造)
以下に、図1(a)に示すように、相互に摺動する一対の摺動部材10,20のうち、一方の摺動部材10の基材12の摺動面に水素元素を含む非晶質炭素被膜11が形成された摺動部材10と、該摺動部材10の摺動面を摺動する他方の摺動部材20と、該一対の摺動部材10,20の間に存在し、有機モリブデン化合物、銅系の添加剤を少なくとも含む潤滑剤30とを備えた摺動構造1を準備した。より具体的には、図2(a)に示すように、一方の摺動部材10としてプレート試験片10A、他方の摺動部材としてボール試験片20A、潤滑剤30としてグリース30Aを準備した。その詳細を以下に示す。
尚、図1(a)は、本発明に係る摺動構造の概念図であり、(b)は、本発明に係る摺動構造における摺動状態を説明するための図であり、図2(a)は、本実施例に係る摺動構造を説明するための図であり、(b)は、本実施例に係る摺動後(摩擦試験終了後)のプレート試験片の状態を説明するための図であり、(c)は、(b)のA−A’断面図である。
<プレート試験片>
図2(a)に示すように、非晶質炭素被膜11Aを形成する基材12Aとして、表面粗さを十点平均粗さRz0.1μmにした直径24mm×厚さ7.9mm表面硬さHv700の高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2:JIS規格)を準備し、この基材12Aの直径24mmの表面に、プラズマCVDにより、厚さ6μm、表面硬さHv2000程度となるように、水素元素を含有した非晶質炭素被膜11A(HT−DLC(厚膜、高信頼性DLC:日本アイ・ティ・エフ株式会社製)が形成されたプレート試験片10Aを準備した。
<ボール試験片>
図2(a)に示すように、直径10mm、ロックウェル硬さHRC62(ビッカース硬さHv700相当)、材質100CR−6(JIS規格:高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)相当)の球状のボール試験片20Aを準備した。
<グリース>
図2(a)に示すように、プレート試験片10Aとボール試験片20Aとの間に供給する潤滑剤として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTP)を含有したグリースを準備し、該グリースに対して、さらにジチオリン酸銅(Cu−DTP)を0.5質量%含有したグリース30Aを準備した。
<摩擦摩耗試験>
SRV試験機を用いて、摩耗試験を行った。具体的には、プレート試験片10Aとボール試験片20Aとの間にグリース30Aを供給し、プレート試験片10Aとボール試験片20Aとに、摺動時の面圧が2.0〜2.47GMaとなるように荷重80〜150Nを作用させ、周波数50Hz、摺動時の振幅1.5mm、すべり速度0.15mm/秒、摺動時間10分で摺動させ、室温の温度条件下で試験を行った。なお、摺動時におけるプレート試験片の摺動部近傍の温度も測定した。
プレート試験片の摺動面の外観を観察した。この結果を図3(a)に示す。図2(b),(c)に示すように、プレート試験片10Aの摺動面の摺動箇所のA−A’の矢視線に沿った摩耗深さを測定した。この結果を、図4に示す。また、上記試験と同じようにして、プレート試験片10Aとボール試験片20Aとに作用させる荷重を図5に示すような荷重に変化させると共に、各荷重に合わせた摩擦係数を測定した。この結果を図5に示す。
[比較例1]
実施例と同じプレート試験片とボール試験片とを準備した。実施例と異なる点は、潤滑剤であるグリースに、ジチオリン酸銅(Cu−DTC)を含有させなかった点である。そして、実施例と同じように、摩擦摩耗試験を行った。外観観察の結果を図3(b)に示し、摩耗深さの結果を図4に示し、荷重に合わせた摩擦係数の測定結果を図5に示す。また、同様に、摺動時におけるプレート試験片の摺動部近傍の温度も測定した。
[比較例2]
実施例と同じプレート試験片とボール試験片とを準備した。実施例と異なる点は、潤滑剤であるグリースに、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)、ジチオリン酸銅(Cu−DTC)を含有させなかった点である。そして、実施例と同じように、摩擦摩耗試験を行い、荷重に合わせた摩擦係数の測定を行った。この結果を図5に示す。
[結果1]
図3(b)に示すように、比較例1のプレート試験片の摺動面には、摩耗痕が形成されていた。図4に示すように、実施例は、比較例1に比べて、摩耗深さは小さかった。さらに、実施例の摺動時におけるプレート試験片の摺動部近傍の温度の方が、比較例1に比べて低かった。
[結果2]
図5に示すように、実施例1及び比較例1の摩擦係数は同程度であり、比較例2の摩擦係数よりも低かった。
[考察1]
結果1に示すように、実施例のほうが比較例1よりも摩耗深さが小さかったのは、実施例のほうが比較例1に比べて摺動時におけるプレート試験片の摺動部近傍の温度が低かったことに大きく起因していると考えられる。すなわち、実施例は、グリースに銅系の添加剤であるジチオリン酸銅を添加したことにより、有機モリブデン化合物から三酸化モリブデンへの熱分解が抑制されたことが起因していると考えられる。さらに、図1(b)に示すように、基材12の非晶質炭素被膜11が形成された摺動部材10の相手側の摺動部材20(この場合はボール試験片)の表面に、ジチオリン酸銅(Cu−DTP)から硫化銅(Cu)やリン酸銅(CuPO)からなる銅系物質からなる膜が形成され、該膜上に、固体潤滑剤として作用する二硫化モリブデンからなる膜がさらに形成されることにより、有機モリブデン化合物であるジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)から三酸化モリブデンへの熱分解を抑制して化学的な反応による摩耗を抑え、かつ機械的な磨耗も抑えられたからであると考えられる。
[考察2]
結果2に示すように、実施例及び比較例1が比較例2に比べて、摩擦係数の値が小さかったのは、有機モリブデン化合物として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)を用いたことにより、上述したように、摺動面に二硫化モリブデンの膜が形成されたことによると考えられる。また、実施例は、比較例1に比べて、摩耗深さが小さくなったにもかかわらず、摩擦係数が比較例1と同程度であったことからしても、実施例の摺動構造が、単に機械的に耐摩耗性を向上させたものではなく、上述したように、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)から三酸化モリブデンへの熱分解を抑制し、化学的反応による摩耗が抑制されたと考えられる。
本発明に係る摺動構造は、ピストンリングとシリンダを組み合わせたエンジンの摺動部、カムとカムフォロアを組み合わせたカムリフタの摺動部など、摺動する頻度が高く、耐摩耗、及び、低摩擦が要求されるような環境において使用することが好ましい。
図1(a)は、本発明に係る摺動構造の概念図であり、(b)は、本発明に係る摺動構造における摺動状態を説明するための図。 、図2(a)は、本実施例に係る摺動構造を説明するための図であり、(b)は、本実施例に係る摺動後(摩擦試験終了後)のプレート試験片の状態を説明するための図であり、(c)は、(b)のA−A’断面図。 実施例と比較例1の非晶質炭素被膜が形成された摺動面の外観観察をした際の写真図であり、(a)は、実施例の摺動面の写真図であり、(b)は、比較例1の摺動面の写真図。 実施例と比較例1の摺動面に形成された非晶質炭素被膜の摩耗深さを測定した測定結果を示した図。 実施例と比較例1,2の摺動構造において、荷重を変化させた際の摩擦係数の変化を測定した結果を示した図。 非晶質炭素被膜の化学的な反応による摩耗発生のメカニズムを説明するための図。
符号の説明
1,1A:摺動構造、10:一方の摺動部材、10A:プレート試験片、11,11A:非晶質炭素被膜、12,12A:基材、20:他方の摺動部材、20A:ボール試験片、30:潤滑剤、30A:グリース

Claims (1)

  1. 相互に摺動する一対の摺動部材のうち、一方の摺動部材の摺動面に水素元素を含む非晶質炭素被膜が形成された一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に存在し、有機モリブデン化合物を少なくとも含む潤滑剤と、を少なくとも備えた摺動構造であって、
    前記他方の摺動部材は、鉄系材料からなる摺動部材であり、
    前記潤滑剤には、前記有機モリブデン化合物として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)またはジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)を含むと共に、
    前記潤滑剤は、前記一対の摺動部材の摺動時に、前記他方の摺動部材の摺動面に、銅系物質からなる膜が形成されるように、ジチオリン酸銅(Cu−DTP)からなる銅系の添加剤をさらに含有していることを特徴とする摺動構造。
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KR20190097690A (ko) * 2018-02-13 2019-08-21 호서대학교 산학협력단 내부식 방열 도료 및 그 제조 방법
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