実施の形態1.
図1乃至図12は、この発明に係わる実施の形態1を示す図で、図1は、実施の形態1に示す空気調和機の室内機1を室内から見た外観図、図2はその室内機1の縦断面図、図3はその室内機1の横断面図で、図2におけるX1−X2−X3−X4−X5−X6線で切断される断面図である。なお、図2は、図3におけるY2−O−Y1線で切断される断面図となっている。図4は、上記の室内機1に送風手段として収納され、空気流を生成する遠心ファンの1種であるターボファン10を、一部を切り欠いて示す斜視図である。図5は、室内機1に収納され、ターボファン10の周囲を取り囲む熱交換器60の斜視図である。図6は、室内機1のファン吹き出し空間41における空気流の状態を説明する図で、図3の横断面図をベースとしている。図7も、ファン吹き出し空間41の空気流を説明する図で、こちらは図2の縦断面図の片側(0−Y1断面)をベースとしている。図8は、室内機1の間隙20を図3の横断面図をベースとして説明する図である。図9は、室内機1の間隙20付近の要部縦断面図であって、(a)は角領域Rにおける間隙20の付近を、(b)は直線領域Qの最近距離箇所における間隙20付近を示している。図10は、室内機1に用いられるベルマウス70の斜視図で、図11は、ベルマウス70の変形例である。また、図12は、間隙20の大きさを周方向に変化させる変形例を、横断面図をベースとして説明する図である。
実施の形態1における空気調和機の室内機1は、室内機本体の筐体30(図2参照)が天井裏に設置される天井埋め込み形であり、筐体30の下端開口面を平面視で略矩形状の意匠パネル31が覆っており、図1に示すように、この意匠パネル31が天井9から室内に臨んでいる。意匠パネル31の中央には、室内機1本体(筐体30)内へ室内空気を吸い込む吸い込み口32が設けられ、この吸い込み口32には複数の桟から成る吸い込みグリル33が取り付けられている。そして、吸い込み口32内で吸い込みグリル33の下流側には、吸い込んだ室内空気に含まれる塵埃を捕捉するエアフィルター34(図2参照)が設置されている。
エアフィルター34は、吸い込みグリル33の内側に(図2において上側に)着脱自在に固定されていて、平面視で矩形な吸い込みグリル33は、特定の一辺を支点に回動して吸い込み口32に対して開閉可能に構成されているので、吸い込みグリル33を下方に回動させて開くことで、エアフィルター34の着脱が可能となって、エアフィルター34の清掃や交換などのメンテナンス作業が実施できる。なお、エアフィルター34を内側に着脱自在に固定する吸い込みグリル33が、水平方向の姿勢を維持したまま電動で上下に移動して吸い込み口32を開閉することで、エアフィルター34のメンテナンスを実施できるように構成してもよい。
意匠パネル31の吸い込みグリル33(吸い込み口32)の周辺には、略矩形な意匠パネル31の四辺の各辺に沿って、複数の細長い四角形状の吹き出し口35が形成されている。各々の吹き出し口35には、吹き出される空気流の方向を調整する風向ベーン36が設置されている。図1においては、各辺に1つずつで計4つの吹き出し口35が形成されているが、1つの辺に沿う吹き出し口35を複数、例えば2つに分けて形成してもよい。なお、図1において、白抜き矢印は、空気流を表している。
室内機1の筐体30は、図2に示すように下方が開口した箱状体であり、上方を閉ざす天板37と、周囲を取り囲む複数枚の側板38から構成される。筐体30は、平面視で略矩形であるが、四角形の4つの角部のうち3つに傾斜面を設けている(図3参照)ので、詳細には略八角形となる。筐体30の内部には筐体30の内面に沿って、同じく下方が開口した箱状の断熱体39が固定配置される。天板37と側板38は金属板から成り、断熱体39は発泡スチロールにて成形されたものである。
筐体30は、部屋や事務所の天井9の裏側に埋め込まれる。筐体30に取り付け固定される意匠パネル31が天井9より室内に突出し室内に露出される。天井9と天板37、意匠パネル31は、それぞれ平行である。筐体30内には、空気流を生成するターボファン10や吸い込んだ室内空気と冷凍サイクルを循環する冷媒とを熱交換させる熱交換器60が収納される。ターボファン10は吸い込み口32から室内空気を吸い込んで吸い込み口32から吹き出し口35へ至る空気流を生成する送風手段であり、平面視で筐体30の略中央に配置され、熱交換器60は、そのターボファン10の外周を取り囲むように配置される(図3参照)。ターボファン10の背面側(図2においては上方)には、ターボファン10を回転駆動するファンモータ7が設置される。
図2において熱交換器60の下方には、冷房や除湿運転時に熱交換器60の表面に付着し、重力によって熱交換器60から滴下される結露水を受け、屋外へ排出させるように導くドレンパン8が配置されている。ドレンパン8は、筐体30の側板38にねじ止めで固定される。そして、吸い込みグリル33(吸い込み口32)の下流側で、ターボファン10の上流側には、吸い込まれた室内空気をターボファン10へと滑らかに導くベルマウス70が設置されている。ベルマウス70は、吸い込み口32とターボファン10の間に位置し、ドレンパン8にねじ止めによって固定される。また、熱交換器60の外側には、断熱体39との間に、意匠パネル31の吹き出し口35に通じる吹き出し風路3が形成される。
ターボファン10は、図4に示すように、全体で略円筒形状を成し、主板11と、この主板11と所定の間隔を空けて対向するように配設されるドーナツ状のシュラウド12と、主板11とシュラウド12との間に挟まれて、主板11とシュラウド12のそれぞれに連結固定される複数枚の翼13から構成されている。このターボファン10は7枚の翼13を有している。翼13は、主板11の内周寄り位置する前縁13aから径方向に広がりつつ回転方向Fに対して後退して(反回転方向に進んで)後縁13bが配置される。翼13の内部は軽量化のため中空構造になっている。なお、図4は、説明のために、シュラウド12の一部と翼13の一部を切り欠いた状態となっている。
シュラウド12の中央部分には、ファン吸い込み口となる円筒部14が形成されている。円筒部14は、その端面が意匠パネル31の吸い込み口32を向いて、吸い込み口32の方向に伸びている。主板11の中央は、シュラウド12側へと球面状に盛り上がる隆起部11aとなっていて、図2に示すように、隆起部11aの背面に形成されるお椀状の空間にファンモータ7が収納される。すなわち、主板11中央の隆起部11aの背面がモータ収納空間15となっている。ファンモータ7は、筐体30を構成する天板37にねじ止めで固定(ボルト固定)されている。また、図2に示すように、シュラウド12は、中央の円筒部14の下流端から主板11の方向へ円弧状に内径が拡大している。
ファンモータ7は、その中央にモータ回転軸6を有している。モータ回転軸6は、ファンモータ7からターボファン10側へと突出しており、ファンモータ7が通電されることにより回転する。室内機1が天井9に設置された状態では、モータ回転軸6は突端が下方を向くように突出している。そして主板11の隆起部11aの頂上には、モータ回転軸6と連結する円筒状のボス部16が固定されており、モータ回転軸6の回転力がボス部16に伝達され、ターボファン10が回転する。ターボファン10の回転中心は、モータ回転軸6の中心であり、円筒状のボス部16の中心である。ボス部16もターボファン10の構成要素の1つである。
図4における回転軸線方向Hは、モータ回転軸6の中心線方向である。なお、モータ回転軸6の中心線の延長線をターボファン10の回転軸線5とする。主板11とシュラウド12も回転軸線5に同心であり、複数の翼13も、回転軸線5に対して同心円状に配置される。ここで、ターボファン10の外周10aは、ターボファン10の機能上、送風出口である翼13の後縁13bが回転したときの軌跡によって描かれる円とするのが一般的であるが、ここでは、熱交換器60との距離に用いるものであるから、シュラウド12の外径、もしくは主板11の外径であってもよい。なお、翼13の後縁13bの軌跡によって描かれる円は、後縁13bが傾斜していたり凹凸が形成されていたりする場合には、後縁13bの軌跡によって描かれる最大径の円とする。図4に示すターボファン10では、主板11の外径と、シュラウド12の外径と、翼13が回転したときの後縁13bの軌跡によって描かれる円の直径とが略同一であり、この直径の円をターボファン外周10aとしている。
次に図5により熱交換器60を説明する。熱交換器60は、所定の間隔をあけて並列する複数の薄板状のフィン67と、それらのフィン67を貫通しながら複数段を成して挿入される金属製の配管(ここでは銅管)68とにより構成され、冷凍サイクルを循環する冷媒が配管68内を流れる。なお、配管68が段を成す方向は回転軸線方向Hである。図5に示すように、熱交換器60は、細長く平坦に製作されたものを略矩形状に折り曲げて形成され、両端部61が、一点鎖線で囲まれたエリアAにて、互いに所定の角度と距離をあけて位置する。なお、両端部61は、フィン67が並列する方向のそれぞれの端(2ヶ所)であり、端に位置するフィン67の外側に端板が取り付けられていればその端板の位置であり、端板がなければ端のフィン67の位置である。空気流がこの熱交換器60を通過することによって、室内空気と配管68を流れる冷媒と熱交換するものである。図3に示すように、両端部61の間は連結板62で径方向に塞がれる。連結板62は、両端部61間の最短距離を結ぶ線上に配置される。連結板62の径方向外側に、室内機1の外部に位置する冷凍サイクル(例えば室外機へとつながる延長配管)に接続する配管接続部66が配置される。
図5に示すように、熱交換器60は略矩形状に形成されているので、両端部61がそれぞれ所定の間隔を空けて位置するエリアAを除いて、3つの角部が存在する。それぞれの角部は円弧状に折り曲げられた折り曲げ部63となっている。3つの角部のうち1つの角部では、図3に示すように、その角部の径方向外側に、ドレンパン8に溜まった結露水を屋外に吐き出すためのドレンポンプ4を設置するために、図5にてエリアBで示すように、直線状をなす傾斜部69を構成しその傾斜部69の両側を円弧状に折り曲げて、外側に略三角形状の設置スペースを確保するようにしている。しかし、このエリアBで示す角部についても、他の2つの角部と同様に、1つの折り曲げ部63として取り扱うものとする。なお、ドレンポンプ4の設置スペースを確保するために、エリアBの角部において傾斜部69を設けずに、折り曲げ半径を他の2つの折り曲げ部63よりも大きくした折り曲げ部で構成してもよい。
熱交換器60は、隣り合う折り曲げ部63の間、および両端部61と折り曲げ部63の間が直線状に構成されており、この部分を直線部64とする。熱交換器60は、略矩形状であるので、各辺に沿った4つの直線部64が存在する。図5に示すように、フィン67が並列する方向に約90°の角度差を有してそれぞれ隣り合う4つの直線部64の間に、3つの折り曲げ部63と、両端部61が位置する箇所(エリアA)が存在する。両端部61を除いて、直線部64と折り曲げ部63との交点、すなわち直線部64の長手方向の端点であり、かつ折り曲げ部63の曲げ開始点を、直線端65とする。両端部61も直線部64の長手方向の端点であり、直線部64の端点は、直線端65か両端部61のどちらかとなっている。なお、熱交換器60の直線部64の長手方向は、室内機1において、吹き出し口35の長手方向とほぼ一致する。ここで、直線部64の長手方向は熱交換器60のフィン67が並列する方向でもあり、室内機1においては、回転軸線方向Hと直交する。
ファンモータ7の回転によってモータ回転軸6を介して回転力が伝達されたターボファン10は、図4に示す矢印Fの方向に、回転軸線5を中心に回転し、シュラウド12の中央の円筒部(ファン吸い込み口)14から回転軸線方向Hに空気(室内空気)を吸い込む。そして、その空気流の向きを径方向(遠心方向)に変え、翼13と翼13の間を通過させる。吸い込まれた空気は、翼13間を通過する際に圧力上昇してターボファン10の外周10aから周囲に(360度の方向に)排出される。排出された空気流は、熱交換器60を通過し、その通過する過程で空気と冷媒とが熱交換する。
図3で示すように、室内機1は、筐体30の内部で、円形のターボファン10の径方向に外側の周囲を略矩形の熱交換器60が取り囲む構成であるため、ターボファン外周10aと熱交換器60との径方向の距離が、熱交換器60の位置によって異なる。熱交換器60の直線部64では近距離となり、折り曲げ部63では遠距離となる。すなわち、ターボファン外周10aと熱交換器60の直線部64との径方向距離の方が、ターボファン外周10aと熱交換器60の折り曲げ部63との径方向距離よりも小さい。なお、熱交換器60を円形とせず略矩形状としているのは、室内機1にてターボファン10の周りを取り囲むにあたって、円形とするよりも、空気流が通過できる熱交換器の有効長さを大きくでき、熱交換面積をより多く確保できるからである。
ここで、図3に示すように、室内機1の筐体30内を、仮想的な複数の領域に区画する。ターボファン10の回転中心O(回転軸線5)と熱交換器60のそれぞれの両端部61とを結ぶ2つの直線で連結板62を挟む領域を連結板領域Pとする。そして、回転中心Oと両端部61とを結ぶ直線と、回転中心Oと直線端65とを結ぶ直線とで直線部64を挟む2つの領域をそれぞれ直線領域Q1、Q2とし、回転中心Oと直線端65とを結ぶ直線間で直線部64を挟む2つの領域をそれぞれ直線領域Q3、Q4とする。直線端65も両端部61も、ともに直線部64の長手方向の端点であるから、回転中心Oと直線部64の端点とを結ぶ直線間で直線部64を挟む領域が直線領域Q(Q1〜Q4)である。また、回転中心Oと直線端65とを結ぶ直線間で折り曲げ部63を挟む3つの領域をそれぞれ角領域R1、R2、R3とする。このように4つの直線領域Qと、3つの角部領域Rと、1つの連結板領域Pを定義する。配管部63は連結板領域Pに位置し、ドレンポンプ4は角領域R3に位置する。
図4にて熱交換器60のエリアBで示す角部の折り曲げ部63は、図3にて角領域R3に位置するが、先に述べたように角領域R3に位置する折り曲げ部63は、直線部64に比べれば(フィン並列方向の長さが)短いながらも直線状をなしている傾斜部69を有しているが、筐体30の隅で、直線部64に比べてターボファン外周10aから遠距離に位置しているので、角領域R3についても、他の2つの角領域R1、R2と同様に取り扱うものとする。
ターボファン外周10aと熱交換器60の径方向距離は、直線領域Qでは、その領域の周方向全域に亘って、ターボファン外周10aと直線部64との距離が一定となるわけではない。例えば直線領域Q3では、領域Q3の周方向中央(図3にてY3−O3線で示す)で、両者間の径方向距離が最も小さく、その最も小さい位置から直線端65に向かうほど両者間の径方向距離は大きくなる。ここで周方向とは、ターボファン10の回転方向もしくは反回転方向と同じ方向である。
どの直線領域Qにおいても、ターボファン外周10aと直線部64が最も近距離となる位置があって、その位置が両者間の径方向距離が最も小さく、その位置から直線端65もしくは両端部61に向かうほど、両者間の径方向距離が大きくなっていく。ただし、両端部61や直線端65の位置がすべて回転中心Oに対して周方向に90度の位相差で対称に位置しているわけではないので、すべての直線領域Qで、ターボファン外周10aと直線部64が最も近距離となる位置が、直線領域Q3のように直線領域Qの周方向中央となるわけではない。
図3に示すように、各直線領域Q1〜Q4におけるターボファン外周10aと直線部64が最も近距離となる位置は、順に90°の角度差をなしている。図3において、直線領域Q1では、距離L1で示す位置が最も近距離となる位置であり、同様に、直線領域Q2では距離L2で示す位置、直線領域Q3では距離L3で示す位置、直線領域Q4では距離L4で示す位置が、最も近距離となる位置となる。ここでは、ターボファン10と熱交換器60の中心が同心であるので、L1=L2=L3=L4となっている。直線領域Q3だけ、最も近距離となる位置が直線領域Qの周方向中央となっている。
ベルマウス70は、図2に示すように、空気流の下流側(図2においては上方)に位置し、端面がターボファン10を向いてターボファン10の方向に伸びるダクト部71と、このダクト部71の上流端から空気流の上流側に向かって内径が拡大する曲面部72と、この曲面部72と滑らかにつながり室内機1において意匠パネル31と略平行に、曲面部72の外周へと広がる風路壁73とを有している。風路壁73をドレンパン8にねじ止めすることで、ベルマウス70はドレンパン8を介して筐体31に固定される。風路壁73は、吸い込みグリル33とベルマウス70との間に形成されるファン吸い込み空間40と、ターボファン外周10aと熱交換器60との間に形成されるファン吹き出し空間41とを仕切る機能を有している。
ベルマウス70のダクト部71の下流側端部(先端を含む)は、シュラウド12の円筒部14の内周側に位置し、ダクト部71の下流側端部と円筒部14の上流側端部は、回転軸線方向Hに所定の距離Gh(図9参照)だけ径方向に重なり合っている。両者の重なり合い部分には、径方向に間隙20が介在している。間隙20は、シュラウド円筒部14とベルマウスダクト部71との間に設けられるもので、円筒部14の内径φDsが、ダクト部71の外周寸法よりも大きいことによる径方向すきまである。ターボファン10の回転の心ぶれやベルマウス70の組み付け時の位置ずれなどを考慮して、ターボファン10の回転中に、ターボファン10とベルマウス70との接触が生じないようにするために、この間隙20は必要不可欠なものである。なお、ダクト部71と円筒部14とが径方向に間隙20を介して径方向に重なり合う部分の回転軸線方向Hの距離Gh(間隙20の回転軸線方向Hの長さ)は、この室内機1では、約10mmに設定されている。
室内機1にて、ファンモータ7が通電されると、ターボファン10が回転し、ターボファン10の吸い込み作用により、室内空気が吸い込みグリル33とエアフィルター34を通過してファン吸い込み空間40へと到達し、ベルマウス70のダクト部71の下流側がファン吸い込み口であるシュラウド12の円筒部14の内側に入り込んでいるので、ファン吸い込み空間40の室内空気はベルマウス70を通過して確実にターボファン10へと吸い込まれていく。なお、ベルマウス70のダクト部71の下流端部を先端(下流端)に向けて先細り形状することで、ダクト部71の先端付近における空気流の渦発生を防止することができる。
室内空気は、ターボファン10の内部で回転軸線方向Hから径方向外側(遠心方向)へと流れの向きを変え、翼13間で昇圧されて、ターボファン外周10aからファン吹き出し空間41へ360°方向に排出される。ファン吹き出し空間41に排出された室内空気は、熱交換器60を通過し、その通過の際に熱交換器60の配管68を流れる冷媒と熱交換して冷やされる、もしくは温められて、吹き出し風路3を通って、吹き出し口35から風向ベーン36に方向を案内されながら、室内へと吹き出される。
ターボファン外周10aからファン吹き出し空間41に排出された空気の流れは、図6にて実線矢印で示すように、ターボファン10の回転により、ターボファン10の回転方向F(図6においては時計回り)へと進む成分を有しているので、排出された空気はファン吹き出し空間41から熱交換器60に斜めに衝突する。そのため、ターボファン外周10aから排出された空気の全量が熱交換器60を通過するわけではなく、一部の空気は熱交換器60を通過しないで、ファン吹き出し空間41内を旋回し、ここでファン吹き出し空間41の静圧の方がファン吸い込み口であるシュラウド12の円筒部14内側の静圧よりも高いこと、すなわち両空間に圧力差があることによって、シュラウド12の円筒部14とベルマウス70のダクト部71との間に形成される間隙20から再びターボファン10内部へと流れ込む。
このような一部の空気の流れを循環流れJと称する。なお、循環流れではない、ターボファン外周10aからファン吹き出し空間41を経て熱交換器60を通過する空気の流れを主流Kと称することとする。図6にて、点線矢印で示す流れが循環流れJであり、実線矢印で示す流れが主流Kである。また、図7で符号Sが付された実線矢印が、ターボファン10内部へファン吸い込み空間40からベルマウス70の内周側を通過して流れ込む有効吸い込み流れSである。ターボファン外周10aから排出される空気には、この有効吸い込み流れSの空気と、循環流れJによって間隙20を通過して再度ターボファン10へ流れ込む空気とが含まれることになる。なお、図7に示す循環流れJや主流Kは、説明を容易にするために回転方向Fに進む成分を除外して描いている。
ここで、ファン吹き出し空間41の静圧はターボファン10の周方向に亘って均一ではない。ターボファン外周10aと熱交換器60との距離によって静圧が異なる。両者間の距離が小さい、すなわちファン吹き出し空間41の幅が狭い箇所の方が、空気流の排出口となるターボファン外周10aに対して通風抵抗となる熱交換器60の位置が近く、そのために流速が速くなるので、静圧が高くなる。直線部64に臨む、例えば直線領域Q3内に位置するファン吹き出し口41では、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離が最も小さい周方向の中央(図3にてY3−O線で示す)付近で最も静圧が高く、そこから直線端65に向かって両者間の距離が大きくなるにつれ、静圧は中央付近の静圧よりも低くなっていく。
また、ターボファン外周10aに対する熱交換器60の距離(径方向距離)は、角領域Rの方が直線領域Qよりも相対的に大きい。角領域Rでの両者間の周方向に亘る平均的な距離の方が、直線領域Qでの両者間の周方向に亘る平均的な距離よりも大きい。ここで平均的な距離とは、それぞれの領域内で同数の周方向に等間隔な複数箇所、例えばそれぞれの領域内で等間隔な10箇所、における距離の平均値である。それぞれの領域の周方向角度範囲は同じではないので、同数とするために等間隔の角度幅は領域によって異なる。そのため、直線領域Qと角領域Rという区画で相対的に比較すると、ファン吹き出し空間41の静圧は、直線領域Qの方が角領域Rよりも高い。前述したとおり、直線領域Qのファン吹き出し空間41にも周方向の静圧分布が存在しているが、各領域内におけるファン吹き出し空間41の静圧の平均は、ターボファン外周10aに対する熱交換器60の距離が遠距離な角領域Rよりも、距離L1〜L4となる位置をそれぞれ含んでいて近距離である直線領域Qの方が高いということである。
循環流れJは、ファン吹き出し空間41の静圧の方がファン吸い込み口であるシュラウド12の円筒部14内側の静圧よりも高いことによる両空間の圧力差によって生じるものであるから、循環流れJの風路となる間隙20が周方向全域で一定量であるとしたならば、ある1つの直線領域Qを取ってみれば、その直線領域Qにおけるターボファン外周10aに対する熱交換器60の距離が最も近距離となる位置(図3にて距離L1〜L4で示す位置で、以降、最近距離箇所と称することにする)での圧力差が最も大きくなって、この付近での循環流れJの流量が他の部分よりも大きくなる。間隙20が一定量であれば圧力差が大きい箇所の方が循環流れJが間隙20に流入し易くなる。
また、直線領域Qと角領域Rにおける旋回流れJの流量とを比較してみれば、ファン吹き出し空間41の静圧の平均が高い直線領域Qの方が、角領域Rよりも流量の平均値が大きい。ここで流量の平均値とは、各領域における周方向単位角度あたりの平均流量を指し、領域内の流量をその領域の周方向角度幅で除した値とする。例えば、直線領域Q3では、Y3−O線を含む単位角度範囲の流量が、その範囲以外での単位角度あたりの流量よりも大きいが、そのような領域内の単位角度あたりの流量分布を平均化したものである。
このように、略矩形状の熱交換器60が円形のターボファン10の周囲を取り囲むことにより生じるターボファン外周10aと熱交換器60の距離の不均一によって、間隙20が周方向全域で一定量であれば、間隙20を通過してターボファン10に流れ込む循環流れJの流量も周方向で不均一となる。周方向における循環流れJの流量が不均一であれば、ターボファン外周10aから排出される空気の流量も周方向で不均一となり、ファン外周10aにおける排出空気圧が不均一となって送風音が生じる。ターボファン10が1回転する間に、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の違いによって、ファン外周10aにおける排出空気圧が変化し、その排出空気圧の変動に誘発される送風音が生じるのである。
従来の遠心送風機では、例えば特許文献2に記載されるように、循環流れJが通過する間隙20は、周方向全域に一定量であった。空気調和機の室内機に搭載される場合でも同様で、間隙20の大きさは周方向に亘って一定であった。その間隙20の大きさは、空気調和機の室内機の大きさ(家庭用の小形サイズからビル用の大形サイズまで)に応じて、一般的に3〜7mmのいずれかの寸法で全周一定に設定されていた。そのため前述したような、ファン外周10aにおける排出空気圧が不均一となって送風音が生じていた。
間隙20が周方向全域に一定量である場合に、ターボファン外周10aと熱交換器60の距離の不均一に起因して循環流れJの流量が周方向に不均一となるが、有効吸い込み流れSの流量は周方向にほぼ均一であるので、有効吸い込み流れSの流量と循環流れJの流量との合計となるターボファン外周10aから排出される空気の流量は、主にその循環流れJの流量の不均一によって周方向に不均一となる。循環流れJの流量は、一般的にターボファン外周10aから排出される空気の流量の10%未満であるから、ターボファン外周10aから排出される空気の流量の360°方向における変動幅はさほど大きくはない。しかし、排出流量としての変動は大きくなくても、これがターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一となって、その周方向における排出空気圧の変動(1回転中の変動)に起因して送風音が生じるとなれば、その騒音は無視できず、低減対策が必要となってくるのである。
図8は、この実施の形態1における空気調和機の室内機1のシュラウド円筒部14とベルマウスダクト部71とが径方向に重なり合う部分における両者間の径方向のすきまである間隙20を説明するための図であり、この室内機1では、前述のターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一に起因して生じる送風音を低減するために、間隙20の大きさを周方向に一定量とせず、角領域Rにおける間隙20の大きさが、最近距離箇所、すなわち直線領域Qにおいてターボファン外周10aと熱交換器60との距離が最も近距離となる位置(図3にて距離L1〜L4で示す位置)における間隙20の大きさよりも大きくなるように設定している。角領域Rにおける間隙20の大きさは、その領域内のいずれの周方向位置においても、直線領域Qの最近距離箇所における間隙20の大きさよりも大きくなっている。
また、角領域Rにおける間隙20の平均的な大きさが、直線領域Qにおける間隙20の平均的な大きさよりも大きくなっている。ここで平均的な大きさとは、それぞれの領域内で同数の周方向に等間隔な複数箇所、例えばそれぞれの領域内で等間隔な10箇所、における間隙20の大きさの平均値である。それぞれの領域の周方向角度範囲は同じではないので、同数とするために等間隔の角度幅は領域によって異なる。
さらには、直線領域Qにおいては、最近距離箇所での間隙20の大きさが最も小さく、その領域の周方向の端となる回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上の間隙20の大きさが最も大きくなっている。すなわち、直線領域Qにおいては、最近距離箇所の間隙20の大きさよりも、その直線領域Q内の周方向外側部分(角領域Rに近接する部分)の間隙20の大きさの方が大きくなっている。図8に示すδq1〜δq4が、それぞれ直線領域Q1〜Q4における最近距離箇所での間隙20の大きさで、それぞれの直線領域Qで最も小さな間隙20の大きさである。そして、その最近距離箇所から、回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上の箇所へ、すなわち角領域Rへと周方向に向かうにしたがって、間隙20の大きさがそれぞれδq1〜δq4よりも大きくなっていくのがよい。
直線領域Qの最近距離箇所での間隙20の大きさ(図8に示すδq1〜δq4)、すなわち周方向で最小となる間隙20の大きさが、ターボファン10の回転の心ぶれやベルマウス70の組み付け時の位置ずれなどを考慮して、ターボファン10の回転中に、シュラウドターボファン10とベルマウス70との接触が生じないようにするために必要な大きさであって、従来の周方向全域に一定量であったときの間隙の大きさである。このような間隙20の大きさを以降、標準間隙量と呼ぶこととする。図8に示すδq1〜δq4はいずれも等しい大きさ(設計的に等しいという意味であって、寸法公差や組み立て公差による差異は等しい大きさに含まれるものとする)であり、この大きさが標準間隙量である。
、
図9は、間隙20付近の要部縦断面図であり(a)は角領域R1における間隙20周辺を表し、(b)は直線領域Q3の最近距離箇所における間隙20周辺を表している。図9(b)に示す間隙20の大ききδq3は標準間隙量である。この標準間隙量を形成する箇所におけるベルマウス70のダクト部71の外径(直径)をφDbとする。横断面が円形であるシュラウド12の円筒部の内径(直径)をφDsとすれば、標準間隙量であるδq3は、(φDs−φDb)/2なる大きさである。δq1、δq2、δq4についても同様である。標準間隙量は、この実施の形態1において間隙20の大きさの最小値であり、直線領域Qの最近距離箇所における間隙20の大きさである。
そして、図8にてδr1〜δr3で示す角領域R1〜R3の間隙20の大きさが、領域内のいずれの周方向位置においても、この標準間隙量(δq1〜δq4)よりも大きくなるように構成されている。また、直線領域Q1〜Q4はそれぞれ、間隙20の大きさが標準間隙量の部分とそれよりも大きい部分から構成されている。なお、連結板領域Pでは、間隙20の大きさδpを標準間隙量で一定としている。これについての詳細は後述する。
このような周方向に大きさが一定量でない間隙20を実現するために、図3や図8に示すように、この実施の形態1で用いるベルマウス70は、ダクト部71を円筒状、すなわち横断面形状(図2におけるX3−X4で切断される断面形状)を円形とはせずに、角領域R部分が、4つ直線領域Qの最近距離箇所の位置を結ぶ円(図9(b)にてφDbで表される円)よりも内側に(回転軸線5寄りに)位置するように形成する。すなわち、ダクト部71は、標準間隙量δq1〜δq4を形成する部分よりも角領域R部分の方が径方向に回転軸線5に近くづいているように形成されている。この実施の形態1のベルマウス70は樹脂製で一体成形されており、横断面形状が非円形のダクト部71も容易に形成できる。
ただし、ダクト部71を角領域R部分だけ直線領域Q部分よりも内側に位置するように窪ませると、角領域Rと直線領域Qとの境界、すなわち、回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上のダクト部71に段差が形成されてしまうことになる。前述したが、循環流れJは、ターボファン10の回転方向Fに進む成分を有しており、これは間隙20内においても同様であるため、そのような段差が形成されてしまうと、循環流れJが間隙20内でその段差に衝突して、その衝突に伴う新たな騒音が発生することが危惧される。なお、ここで「窪ませる」とは、標準間隙量を形成する箇所におけるベルマウス70のダクト部71の外径φDbとする円形(図9参照)に対して、その円形よりも内側に位置させる、すなわち部分的に回転軸線5方向に凹ませることである。
そこで、このベルマウス70では、図3や図8に示すように、ダクト部71の角領域R部分を直線領域Q部分の標準間隙量δq1〜δq4を形成する位置よりも内側に位置させるために、ダクト部71を、その角領域R部分の両側に位置する直線領域Q部分の周方向途中から内側に窪ませるように形成している。このように、ダクト部71を直線領域Q部分の途中から内側に連続的に窪ませ、窪ませる周方向の角度範囲を角領域Rの角度範囲よりも大きくしてダクト部71の角領域R部分を形成することで、ダクト部71に周方向に凹凸する段差が生じず、循環流れJがダクト部71に周方向に(回転方向Fに)衝突して騒音が発生する危惧を払拭することができる。
そして、直線領域Qの途中から角領域Rに向かって間隙20の大きさが徐々に広がる(大きくなる)ように、すなわち、ダクト部71の内側への窪ませ量が直線領域Q部分の途中から角領域R部分に向かって徐々に大きくなるように連続的に窪ませて角領域R部分の間隙20が最も大きくなるようにダクト部71を形成することにより、直線領域Qにおいても、最近距離箇所における間隙20が最小値(標準間隙量)となって、周方向に外側となる部分の間隙20の大きさが、その標準間隙量よりも大きくなるように構成させることができる。
また、ダクト部71の直線領域Q部分において、最近距離箇所の位置を含んで、その周方向左右両側の内側への窪ませが開始する位置(例えば図8の直線領域Q4にて点Eで示す2つの位置)間の範囲では、間隙20の大きさは標準間隙量で一定(例えば図8の直線領域Q4ではδq4で一定)であり、内側への窪ませが開始する位置から隣接する角領域Rに向かって徐々に間隙20の大きさが大きくなって、回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上にて角領域Rの間隙20の大きさになるように構成している。すなわち、最近距離箇所の位置を含んだ周方向に所定の範囲で間隙20の大きさが標準間隙量となっている。
なお、直線領域Qにおいて、間隙20の大きさが標準間隙量となる範囲が極力狭く、そこから回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上に、すなわち角領域Rに向かって徐々に間隙20の大きさが大きくなっていくように構成するのが望ましい。また、直線領域Qで、徐々に間隙20の大きさが大きくなる場合には、連続的になめらかに大きなっていくのがよく、極力周方向に段差が形成されないようにするのが望ましい。
また、図3や図8では、角領域Rの間隙20の大きさ(δr1〜δr3)は、間隙20の周方向の最大値であり、角領域R内周方向にほぼ一定であるが、周方向の中央で最大値となって、その位置から回転中心Oと直線端65を結ぶ直線上に向かって、すなわち隣接する直線領域Qに向かって、徐々に小さくなっていくように構成してもよい。すなわち、角領域R内においても、間隙20の大きさを一定としなくてもよい。
図10は、この実施の形態におけるベルマウス70のターボファン10が位置する側から見た斜視図であり、図において点線で示す円が、標準間隙量を形成する箇所のダクト部71の外径φDbがなす円である。角領域Rに位置するダクト部71は図示されるように点線で示す円よりも内側に(中心側に)位置しており、そのためにダクト部71の一部を点線で示す円よりも内側へ窪ませるにあたって、ダクト部71の周方向に段差が生じないように、なめらかに内側に窪ませている。
ベルマウス70には、風路壁73の2ヶ所の角部が略三角形状に欠けた切欠き部74、75が形成されている。切欠き部74は連結板領域Pに位置し、その切欠き部74の外側に連結板62が配置される。また、切欠き部75は角領域R3に位置し、その切欠き部75の外側に熱交換器60の傾斜部69(図5参照)が配置される。なお、このベルマウス70は、ここでは樹脂にて成形しているが、板金により一体成形してもよい。
図9に示すように、この実施の形態1では、角領域R(図9では角領域R1)の間隙20の大きさ(図9ではδr1)を、標準間隙量(図9ではδq3)の約2倍の大きさとなるように構成している。この角領域Rの間隙20の大きさを、標準間隙量と比べてどれくらい大きくするかは、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の不均一具合によって適宜設定されるものである。
以上のように周方向に大きさが変化する間隙20が構成された室内機1では、ファン吹き出し空間41の静圧が直線領域Qに比べて低い角領域Rにおける間隙20の平均的な大きさが、直線領域Qにおける間隙20の平均的な大きさよりも大きいので、循環流れJが間隙20を通過する際の通風抵抗が直線領域Qよりも小さい。そのため、従来の角領域Rも直線領域Q同様に標準間隙量で一定であった場合に比べ、角領域Rにおける間隙20を通過する循環流れJの通風量が増加する。通風抵抗が相対的に小さいので、静圧が相対的に小さく、ファン吹き出し空間41とファン吸い込み口(シュラウド12の円筒部14内側)との圧力差が小さい角領域Rにおいても、循環流れJの間隙20への流入、間隙20の通過が容易になるのである。
角領域Rにおける循環流れJの通風量が増加したということは、直線領域Qにおける循環流れJの通風量が減少したことになるので、周方向における循環流れJの流量の不均一が是正される。
また、ファン吹き出し空間41の静圧が最も高い位置(最近距離箇所)での間隙20の大きさ(標準間隙量)よりも角領域Rにおける間隙20の大きさを大きくし、従来の周方向に間隙20の大きさが標準間隙量で一定であり、間隙20の通風抵抗が周方向に同等であった場合に比べて、角領域Rにおける間隙20の通風抵抗を最近距離箇所での間隙20の通風抵抗よりも小さくなるようにしたので、従来、圧力差が大であることによって循環流れJの通風量が周方向に相対的に多かった最近距離箇所の位置近傍における間隙20への循環流れJの通風量を減じて、相対的に少なかった角領域Rにおける循環流れJの通風量を増加させることができるので、周方向における循環流れJの流量の不均一が是正される。
また、直線領域Qにおいても、間隙20の大きさが最近距離箇所の位置よりも周方向に外側で角領域Rに近い側の方が大きいので、直線領域Q内でのファン吹き出し空間41の静圧分布(最近距離箇所で高く直線端65に向かうにつれ低くなる)により、従来の周方向に間隙20の大きさが標準間隙量で一定であった場合に生じていた直線領域Q内における循環流れJの流量の不均一(最近距離箇所の位置近傍の流量が多く、周方向に外側に位置する部分の流量が少ない)も是正され、角領域Rも含めた周方向全域における循環流れJの流量の不均一がより是正されることとなる。
さらに、直線領域Qにおける間隙20の大きさを、直線領域Qの途中から角領域Rに向かって徐々に大きくなるようにしているので、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離が大きくなるのに応じて間隙20の大きさが大きくなり、ファン吹き出し空間41の静圧が両者の距離に対応して低くなるにつれて、間隙20の通風抵抗も小さくなるので、直線領域Qから角領域Rへと周方向における循環流れJの流量が均一に近づくように是正される。
以上のように、この実施の形態の室内機1が有する間隙20の構成により、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正されることによって、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正され、排出空気圧の1回転中の変動が小さくなって、その変動に起因して発生していた送風音を低減することができる。このように、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の不均一性に起因して生じていた騒音(上記の送風音)を低減することが可能となる。このため、従来の間隙20の大きさが標準間隙量で周方向に一定であった場合に比べて、室内機1は低騒音とすることができる。
室内機1では、ファン吹き出し空間41の静圧が相対的に低い部分、すなわち、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離が遠距離の部分における間隙20の大きさを、ファン吹き出し空間41の静圧が相対的に高い部分、すなわち、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離が近距離の部分における間隙20の大きさよりも大きく設定することで、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の不均一性に起因するファン吹き出し空間41の静圧分布に対応して、間隙20の通風抵抗を周方向に変化させる(ファン吹き出し空間41の静圧が相対的に低い部分における間隙20の通風抵抗を小さくする)ので、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正され、それにより、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正されて、1回転中の排出空気圧の変動に起因して発生していた送風音を低減することができるのである。
この実施の形態の室内機1は、循環流れJの周方向における流量分布をなるべく均一化しようとしているものであって、全体的な循環流量Jの流量が、従来の間隙20が標準循環量で周方向に一定量であった場合に比べて増加するわけではないので、ターボファン10の送風性能が低下することはない。
また、この室内機1では、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正されることによって、ターボファン外周10aから排出される空気の流量も360°方向に変動が小さく安定するようになるため、ファン吹き出し空間41の静圧分布も均一化の方向へと是正される。すなわち、従来の間隙20が標準循環量で周方向に一定量であった場合に比べて、直線領域Qの最近距離箇所と角領域Rのファン吹き出し空間41の静圧の差(角領域Rの方が小さい)も小さくなる。これにより、ターボファン10の1回転中の負荷変動が
小さくなって、ファンモータ7の入力を低減することができ、ターボファン10の効率を高めることができる。これは、1回転中の平均的負荷が同じであっても、1回転中の負荷変動が小さい方がファンモータ7の入力を抑えることができるためである。この結果、室内機1は、低騒音で高効率な省エネ性に優れた空気調和機となる。
ここで、連結板領域Pについて説明する。連結板領域Pには、熱交換器60の両端部61を結ぶ連結板62が存在するが、連結板62は、所定の間隔を空けて位置している熱交換器60の両端部61間のフィン67が存在をしない部分を塞いで、熱交換器60で熱交換していない空気流(ターボファン10から排出された空気流)が吹き出し風路3へと流出してしまうことを防いでいる。そのため、連結板62を内側から外側へと通過する空気流は存在しない。このように連結板62は、ファン吹き出し空間41から吹き出し風路3への空気の流通を阻むものであるため、ここでの通風抵抗は大きく、ターボファン外周60aと連結板62との径方向の距離が直線領域Qの最近距離L1〜L4よりも長くても、直線領域Qの最近距離箇所と同様に、連結板領域Pにおけるファン吹き出し空間41の静圧は、角領域Rにおけるファン吹き出し空間41の静圧よりも高い。
よって、連結板領域Pにおけるファン吹き出し空間41は、周方向でみて相対的に静圧が高い部分となるので、角領域Rの間隙20の大きさは、連結板領域Pにおける間隙20の大きさよりも大きくなるように設定する必要がある。ここでは、連結板領域Pの間隙20の大きさδpは、標準間隙量よりも大きくすることなく、最近距離箇所における間隙20の大きさと同じく標準間隙量で一定とし、間隙20の通風抵抗が大きい状態を維持するようにしている。角領域Rの間隙20を標準間隙量よりも大きくしてこの部分の通風抵抗を小さくすることと相まって、従来、圧力差が大であることに基づいて循環流れJの通風量が相対的に多かった連結板領域Pにおける間隙20への循環流れJの通風量を減じて、角領域Rにおける循環流れJの通風量を増加させることができる。これにより、連結板領域Pを含めて周方向における循環流れJの流量の不均一が是正されることとなって、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正され、1回転中の排出空気圧の変動に起因して発生していた騒音を低減することができる。
図8に示すように、連結板領域Pに周方向に隣接する直線領域Q1の距離L1で示す最近距離箇所から、直線領域Q1とは逆側で連結板領域Pに隣接する直線領域Q2の距離L2で示す最近距離箇所まで、連結板領域Pを挟んで、少なくとも周方向に90°の範囲で、間隙20の大きさは標準間隙量δq1(=δq2=δp)で一定となっている。なお、連結板領域Pにおける間隙20の大きさは、必ずしも標準間隙量とする必要はなく、ターボファン外周10aと連結板62との距離に応じて、標準間隙量と同等以上で、かつ角領域Rにおける間隙20の大きさとよりも小さくすればよい。ただし、角領域Rの間隙20の大きさは、いずれの周方向位置においても、連結板領域Pのいずれの周方向位置における間隙20の大きさよりも大きく設定される。
ダクト部71の非円形な横断面形状は、ターボファン10と熱交換器60の相対的な位置関係や熱交換器60の構成や形態によって決定されるものである。そのためターボファン10が共通であったとしても、それらの要素が変化すればダクト部71の横断面形状もそれに対応して変化させる必要がある。例えば、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の不均一の度合がより大きければ、角領域Rの間隙20の大きさを標準間隙量の2倍を超える大きさまで広げる必要性が生じることもあり得る。
そこで、ベルマウス70を一体成形せず、図11に示すように、ダクト部71を別体として、この別体のダクト部71を曲面部72に固定するように構成すれば、ターボファン10と熱交換器60の相対的な位置関係や熱交換器60の構成や形態の変化に対応して、ベルマウス70全体を個別に製作することなく、ダクト部71のみを個々に製作して部品の共通化を図ることができる。
また、ここまでの説明では、間隙20の大きさを標準間隙量より大きくしたい部分のベルマウス70のダクト部71を、間隙20の大きさが標準間隙量となる外径φDbを有する円形よりも内側に位置させる、すなわち回転軸線5寄りに窪ますことで、周方向に間隙20の大きさを変化(最小が標準間隙量δq1〜δq4およびδpで、最大が角領域Rの間隙20のδr1〜δr3)させてきた。
しかし、ダクト部71を非円形にすることなく周方向に間隙20の大きさを変化させてもよい。その一例を図12に示す。この変形例では、ベルマウスダクト部71を横断面円形に構成する。ただしこの円形の外径φDcは、角領域Rの間隙20の大きさδr1〜δr3を確保できる寸法とする。すなわち、シュラウド円筒部14の内径φDsを用いて、φDc=φDs−(δr1*2)となる寸法とする。ここで、δr1は、δr2もしくはδr3に置き換えてもよい。
そして、間隙20の大きさを小さくしたい箇所のダクト部71(外径φDc)外周面に間隙調整部材76を取り付け、周方向に間隙20の大きさを変化させるのである。間隙調整部材76は、直線領域Qおよび連結板領域Pに取り付けられるもので、樹脂成形品である。間隙調整部材76はダクト部71と同等な高さ(回転軸線方向Hの長さ)を有し、回転軸線方向Hの両端面は平坦である。そしてその内側面は、ダクト部71の外周面形状に沿った曲面形状をなす。また外側面は、間隙20の大きさを標準間隙量とする部分を頂上とする山型で、外側面の周方向端部が角領域Rに向けてなめらかに下っていく形状である。このような山型形状にすることで、直線領域Qにおいても、間隙20の大きさを、最近距離箇所(標準間隙量である)から角領域Rに向かって周方向に徐々に大きくなるように変化させることができる。
間隙調整部材76は、図12に示すように、ダクト部71の外周面の必要箇所に個別に接着や溶着で取り付けてもよい(図12では3つの間隙調整部材76を設置している)が、各々の間隙調整部材76をリング部材で環状に連結して、そのリング部材をダクト部71の外周面に接着や溶着したり、リング部材をダクト部71外周面に嵌め合わせたりして取り付けてもよい。この場合は、ダクト部71は、外径φDcをリング部材の厚みの2倍分だけ小さくしなければならない。
なお、ここまで、略矩形状を成した熱交換器60が円形のターボファン10の外周を取り囲む形態で説明してきたが、熱交換器は、矩形状に限定されるものではなく、四角形以外の多角形状であっても、同様な効果が得られる。円形のターボファン10の周りを取り囲む熱交換器が、三角形や六角形に折り曲げられたものであってもよい。その場合には、折り曲げ部63を挟んで隣り合う直線部64の角度差は、実施の形態1の熱交換器60の約90°ではなく、三角形状であれば約60°に、六角形状であれば、約120°となる。
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、循環流れJが通過する間隙20の大きさを周方向に変化させて通風抵抗を周方向に変化させることで、ターボファン外周10aと熱交換器60との距離の不均一によってもたらされる循環流れJの周方向における流量の不均一をなるべく均一化するように是正するものであるが、循環流れJの流量そのものは少ない方が、有効吸い込み流れSの流量が増加することになるので、ターボファン10の送風効率が向上することは言うまでもない。循環流れJは、一度ターボファン10から排出された空気流を再度そのターボファン10で送風するものであるから、その流量をできる限り減少させ、その分有効吸い込み流れSの流量を増すようにするのが効率面で望ましいのである。
そこで、この実施の形態2では、前述のように循環流れJの周方向における流量の不均一を是正した実施の形態1の室内機1に、さらに循環流れJの流量を減少させる手段を具備させた室内機について説明する。
図13は、実施の形態2における室内機の間隙20周辺の要部断面図であり、(a)は、図3のY1−O線で切断した断面図に相当し、角領域Rの間隙20周辺を示しており、(b)は、図3のY3−O線で切断した断面図に相当し、直線領域Qの最近距離箇所における間隙20の周辺を示している。なお、この実施の形態2において、実施の形態1と同等もしくは相当するものについては、同一符号を付して説明は省略する。
実施の形態2の室内機は、実施の形態1の室内機1とは、ベルマウスの形状が異なっており、詳細には、ダクト部71の先端部分、すなわち空気流において下流側となる端部の形状が異なっている。図13に示すように、実施の形態2に示すベルマウス80は、ダクト部71の下流側端部(先端部分)に、ダクト先端拡径部77を有しており、このダクト先端拡径部77は、回転軸線方向Hに空気流(有効吸い込み流れS)の上流から下流に向かって徐々に薄肉となる先細り形状であるとともに、回転軸線方向Hに空気流(有効吸い込み流れS)の上流から下流に向かって径方向外側に(遠心方向に)徐々に径が拡大していくような湾曲形状となっている。先端に向かって細くなりながらシュラウド円筒部14に向かってなめらかに反っていくような形状である。ダクト先端拡径部77は、ダクト部71の直線状部分から連続して形成されている。
このとき、間隙20の大きさは、ダクト先端拡径部77の末端、すなわち空気流の下流端とシュラウド円筒部14の内周面との径方向距離を指すものとする。そのため、直線領域Qの最近距離箇所では、ダクト先端拡径部77の末端とシュラウド円筒部14の内周面との距離が、標準間隙量となる。図13(b)は、直線領域Q3の最近距離箇所における断面を示しているので、間隙20の大きさは、δq3であって標準間隙量である。同様に、図13(a)では、角領域R1の間隙20が図示されているのであるから、ダクト先端拡径部77の末端とシュラウド円筒部14の内周面との距離で表されるこの間隙20の大きさはδr1となる。周方向に間隙20の大きさが変化する態様は、実施の形態1と同様である。
ベルマウス80のダクト部71の下流側端部に、上記したような形状のダクト先端拡径部77を構成することにより、周方向における流量の不均一を是正されて間隙20を通過する循環流れJは、間隙20を通過する際に、間隙20内をターボファン回転方向Fに進みながらも、ダクト先端拡径部77によって、シュラウド12の内周面(円筒部14の内周面を含む)に向かう流れに変化する。すなわち、ダクト先端拡径部77が、循環流れJの回転軸線方向Hに進む成分を径方向へ変化させている。
このため、ファン吸い込み空間40(図7参照)からベルマウス80のダクト部71内周側を通ってターボファン10へ流入する有効吸い込み流れSが、循環流れJによって回転軸線方向Hに押し退けられなくなる。そうであれば、有効吸い込み流れSは、循環流れJに影響されず、スムーズにその流れを径方向へと変化することができる。これにより、径方向に向きを変えた有効吸い込み流れSが妨げとなって、循環流れJが間隙20へと流入し難くなるとともに、有効吸い込み流れSが、循環流れJにより妨げられなくなる(押し退けられなくなる)ので、相対的に有効吸い込み流れSの流量が増加して、循環流れJの流量を減少させることができる。
以上のように、この実施の形態2では、実施の形態1に加えて、ベルマウス80のダクト部71の下流側端部に、回転軸線方向Hに空気流の上流から下流に向かって、徐々に薄肉となる先細り形状でありつつ、径方向外側に徐々に径が拡大していくような湾曲形状となるダクト先端拡径部77を形成したので、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正されて、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正されるとともに、循環流れJの流量を減少させ、有効吸い込み流れSの流量を増加させることができる。これにより、ターボファン10の送風性能を高めることができる。この結果、実施の形態2の室内機は、低騒音化しつつ、実施の形態1の室内機1よりもさらに高効率で省エネ性に優れた空気調和機とすることができる。
実施の形態3.
この実施の形態3では、上記した実施の形態2とは異なる形態で、循環流れJの周方向における流量の不均一を是正した実施の形態1の室内機1に加えて、循環流れJの流量を減少させる手段を具備させた室内機について説明する。図14は、実施の形態3における室内機に使用されるベルマウス81の説明図であり、右半分は縦断面図、左半分は、側面図を示している。この実施の形態3において、実施の形態1および実施の形態2と同等もしくは相当するものについては、同一符号を付して説明は省略する。
実施の形態3の室内機は、実施の形態1の室内機1とは、ベルマウスの構成が異なっており、詳細には、ダクト部71を厚肉に形成し、その厚肉状のダクト部71の外周面79に、回転軸線方向Hに沿った複数の溝78aを周方向に並列するように設けて、外周面79に凹凸形状を形成している。溝78aは、厚肉のダクト部71の外周面79をそぐようにして設けられた凹状溝で、内周側に連通してはいない。溝78aは周方向に所定の間隔を空けて、外周面79の全面に形成されている。溝78aの深さは1.5mm程度であり、厚肉状のダクト部71の厚さに対して、最大でも2/3程度に留める。複数の溝78aは周方向に等間隔で、周方向の幅はすべて同じになっている。
このベルマウス81では、ダクト部71の下流側端部(先端部分)に、実施の形態2で示したダクト先端拡径部77が構成されているため、溝78aは、ダクト部71の先端(ダクト先端拡径部77の末端でもある)から曲面部72にかけて、回転軸線方向Hの断面形状が略弓形になっている。ここで、ダクト先端拡径部77は、必ずしも設けなくてはならないものではなく省いてもよい。すなわち、ダクト部71が曲面部72との接点から下流端(先端)まで直線状であってもよい。この場合には、溝78aは、ダクト部71の下流端側が開口した凹溝となる。このとき直線状の先端に向かって先細り形状であってもよい。
この実施の形態3に示すダクト部71の外周面79に周方向に並んで、回転軸線方向Hに沿った複数の溝78aが形成されたベルマウス81を用いた空気調和機の室内機においては、間隙20の大きさは、厚肉状のダクト部71の外周面79とシュラウド円筒部14の内周面との径方向距離で示される。実施の形態3の室内機においても、周方向に間隙20の大きさが変化する態様は、実施の形態1と同様である。
上記したような複数の溝78aをベルマウス81のダクト部71の外周面79に形成することにより、周方向における流量の不均一を是正されて間隙20を通過する循環流れJは、ターボファン回転方向Fに進む成分を有しながら間隙20を通過する際に、回転方向Fへ進みながらダクト部71の外周面79に沿う流れ、すなわち間隙20内でダクト部71の外周面79に近い側の流れが、複数の溝78aにより凹凸状となっている外周面79によって乱されて圧力変動が生じ、それがシュラウド円筒部14の内周面側に近い流れにも伝播するので、間隙20の通風抵抗が全体的に増加することになる。
このため、循環流れJが間隙20を流れ難くなって、相対的に循環流れJの流量が減少するので、有効吸い込み流れSの流量を増加させることができる。また、図14に示すように、ダクト部71の下流側端部にダクト先端拡径部77を形成しておけば、実施の形態2にて説明した効果も合わせて発揮されるので、有効吸い込み流れSの流量が増加して循環流れJの流量を減少させることができる効果がより顕著となる。
溝78aの深さが深いと、間隙20を流れる循環流れJの乱れがひどくなり圧力変動が大となって、それに伴う新たな騒音(空気調和機のユーザが不快感を感じる音)が発生したり、溝78aの回転方向Fに対して下流側に位置する側壁に循環流れJが衝突してそれに伴う新たな騒音が発生したりしてしまうことが危惧されるので、溝78aの深さは、標準間隙量の半分以下とするのが望ましい。この程度の深さで生じる圧力変動や流れの衝突であれば、空気調和機のユーザが不快感を感じてしまうレベルの騒音は生じない。
なお、溝78aは、外周面79付近の循環流れJのファン回転方向Fへの流れ成分を乱すために形成しているのであるから、回転方向Fに上流側では側壁を必ずしも要するものではない。溝78aの周方向断面形状が略矩形ではなく、周方向に対して回転方向Fに下流側となる位置にのみ側壁が形成されるような略直角三角形状であってもよい。また同様に、外周面79付近の循環流れJのファン回転方向Fへの流れ成分を乱すためには、複数の溝78aは周方向に等間隔でなくてもよいし、溝78aの周方向の幅がすべて同じである必要もない。
以上のように、この実施の形態3では、実施の形態1に加えて、ベルマウス81のダクト部71の外周面79に、周方向に並列する複数の回転軸線方向Hに沿った溝78aを設けて、ダクト部71の外周面79に凹凸形状を形成したので、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正されて、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正されるとともに、循環流れJの流量を減少させ、有効吸い込み流れSの流量を増加させることができる。これにより、ターボファン10の送風性能を高めることができる。この結果、実施の形態3の室内機は、低騒音化しつつ、実施の形態1の室内機1よりもさらに高効率で省エネ性に優れた空気調和機とすることができる。
実施の形態4.
この実施の形態4に示す室内機は、上記した実施の形態3とはベルマウスのダクト部外周面に形成される溝の形態が異なるものであり、実施の形態3と同様に循環流れJの周方向における流量の不均一を是正した実施の形態1の室内機1に加えて、循環流れJの流量を減少させる手段を具備させた室内機である。図15は、実施の形態4における室内機に使用されるベルマウス82の説明図であり、図14の左半分に示す側面図に対比させて、
左側面図のみを示している。この実施の形態4において、実施の形態1〜3と同等もしくは相当するものについては、同一符号を付して説明は省略する。また、実施の形態4に示すベルマウス82は、実施の形態3で説明したベルマウス81と以下に示すダクト部71の外周面79に形成される複数の溝の形態が異なるのみで、それ以外は実施の形態3と同じであり、ここでの説明は省略する。
この実施の形態4に示すベルマウス82のダクト部71の外周面79には、回転軸線方向Hに空気流の下流側となる部分が上流側の部分よりもターボファン回転方向Fとは反対方向に傾斜した複数の傾斜溝78bが、周方向に並列して形成されている。図15に示すように、傾斜溝78bは、回転軸線方向Hに対して周方向に回転方向Fとは反対の方向に下流側が角度θだけ傾斜している。実施の形態3で示した溝78aは、回転軸線方向Hに伸びるものであってθ=0°であるが、この傾斜溝78bではθが0°より大きい。実施の形態4の傾斜溝78bと実施の形態3の溝78aとは、この角度θが異なっている。傾斜溝78bも溝78aと同様に、ダクト部71の外周面79をそぐようにして設けられた凹状溝で、内周側に連通してはいない。
実施の形態4では、ベルマウス82のダクト部71の外周面79に複数の傾斜溝78bを形成することにより、ターボファン回転方向Fに下流側となる位置の溝側壁が、回転方向Fの上流側へと傾斜していることになるので、実施の形態3に示すθ=0°である溝78aと比べて、溝深さが同一であれば、外周面79の凹凸形状による循環流れJの乱れを大きくすることができ、間隙20の通風抵抗をより高められる。
換言すれば、外周面79の凹凸形状による循環流れJの乱れレベルを同等、すなわち、間隙20の通風抵抗の増加を同等レベルとすればよいのであれば、実施の形態3に示すθ=0°である溝78aと比べて、溝深さを小さくすることができる。すなわち、同等の効果を得るために、ベルマウス82の傾斜溝78bは、実施の形態3に示すベルマウス81の溝78aよりも溝深さを浅くすることができるのである。上記した実施の形態3にて述べたように、溝深さが深すぎると、新たな騒音が発生してしまう危惧があるが、傾斜溝78bとすることで、実施の形態3の溝78aよりも溝深さを浅くすることができるので、この危惧が払拭される。
溝深さを浅くすることができるとういことは、溝を形成するために厚肉状としていたダクト部71の厚さ(径方向の幅)を薄くすることもできることになり、このベルマウス82は、実施の形態3のベルマウス81よりも材料を削減でき省資源化される。
傾斜溝78bの角度θが大きすぎると、溝深さを深くした時と同様に、間隙20を流れる循環流れJの乱れがひどくなり圧力変動が大となって、それに伴う新たな騒音が顕著となるので、傾斜溝78bの角度θは60°以下がよく、また、実施の形態3に示すθ=0°である溝78aよりも溝深さを浅くして溝78aと同等の効果を得ようした場合には、θは30°以上がよく、30°≦θ≦45°が望ましい。図15に示す傾斜溝78bは、θ=30°である。なお、複数の傾斜溝78bがすべて同じ角度θでなくてもよい。
以上のように、この実施の形態4では、実施の形態1に加えて、ベルマウス82のダクト部71の外周面79に、回転軸線方向Hに対して周方向に回転方向Fとは反対の方向に下流側が角度θだけ傾斜した傾斜溝78bを複数設けて、ダクト部71の外周面79に凹凸形状を形成したので、循環流れJの流量の周方向における不均一が是正されて、ターボファン外周10aにおける周方向の排出空気圧の不均一が是正されるとともに、循環流れJの流量を減少させ、有効吸い込み流れSの流量を増加させることができる。これにより、ターボファン10の送風性能を高めることができる。この結果、実施の形態2の室内機は、低騒音化しつつ、実施の形態1の室内機1よりもさらに高効率で省エネ性に優れた空気調和機とすることができる。