1、キャリアの製造方法
図1は、キャリアの製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。キャリアの製造方法は、キャリア母粒子準備工程S1と、樹脂微粒子調製工程S2と、コート材調製工程S3と、キャリア母粒子にコート材を被覆する被覆工程S4とを含む。
キャリアの製造方法は、回転撹拌装置を用いる。回転撹拌装置は、循環手段と、温度調整手段と、噴霧手段とを少なくとも備える。循環手段は、攪拌羽根を周設した回転盤と回転軸を含む回転撹拌手段と、回転撹拌室および循環管を含む粉体流路とから構成され、キャリア母粒子およびコート材を、回転撹拌手段により粉体流路内において循環させる。温度調整手段は、粉体流路の少なくとも一部に設けられ、粉体流路内および回転攪拌手段の温度を所定の温度に調整する。噴霧手段は二流体ノズルからなり、液体および気体を噴霧する。二流体ノズルは、液管と空気管とを含み、2つの管の軸が一致するよう空気管の内部に液管が挿入され、中心がずれないようそれらの管の少なくとも一部が固定されている。
(1)キャリア母粒子準備工程S1
キャリア母粒子準備工程S1では、樹脂層によって被覆されるべきキャリア母粒子を準備する。
キャリア母粒子としては、この分野で常用されるものが使用でき、例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア母粒子が上記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。キャリア母粒子は、平均粒子径が25〜100μmのものが好ましい。
(2)樹脂微粒子調製工程S2
樹脂微粒子調製工程S2では、乾燥した樹脂微粒子を調製する。乾燥にはどのような方法を用いてもよく、たとえば熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などの方法で乾燥樹脂微粒子を得られる。樹脂微粒子は、後の被覆工程S4において、キャリア母粒子表面に膜を形成する材料として用いられる。
樹脂微粒子は、たとえば、樹脂微粒子原料である樹脂をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができる。また樹脂のモノマー成分の重合によって得ることもできる。
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂としては、熱および機械的衝撃力で変形し、付着する樹脂が好ましい。具体的には、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが用いられる。これらをキャリア母粒子に対して、20重量%以下、好ましくは10重量%以下で混合する。樹脂微粒子原料の樹脂としては、上記例示した樹脂の中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体を含むことが好ましい。アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体は、軽量で高い強度を有し、安価で、粒子径の揃った材料を得やすいなど多くの利点を有する。
また樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度は、キャリアが製造される際の条件にもよるが、50℃以上250℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の樹脂を用いることにより、樹脂粒子が延展し変形して被膜を形成し、樹脂層で被覆されたキャリアが得られる。
樹脂微粒子の体積平均粒径は、磁性母粒子の平均粒径よりも充分に小さい必要があり、50nm以上0.2μm以下であることにより、解砕と変形が適度に進行し、ムラの少ない樹脂被膜を形成することが可能となる。
樹脂微粒子には必要に応じて、導電性微粒子、帯電制御剤などを添加してもよい。
導電性微粒子としては、例えば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が用いられる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラック等が好適であるが、カラートナーと共に用いる場合は、カーボンブラックがキャリアの被覆層から脱離する懸念がある。このような場合には、アンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどが用いられる。
帯電制御剤としては、公知のものが使用できる。例えば、トナー材料に用いられる帯電制御剤を用いることができる。
負帯電性を付与する帯電制御剤としては、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルフォン酸塩等が挙げられる。
正帯電性を付与する帯電制御剤としては、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等が挙げられる。
これらの帯電制御剤の含有量は、樹脂微粒子100重量部に対して0重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
ほとんどの帯電制御剤は極性を持っており、アルコールなどの極性溶媒と相性が良いことから、これらを併用することで更なる効果が得られる場合もある。
(3)コート材調製工程S3
コート材調製工程S3では、上記樹脂微粒子に、導電材、帯電制御剤など各種添加剤を加えて混合し、コート材を調製する。樹脂微粒子と添加剤とは別個にキャリアの製造装置に投入してもよいが、均一性をより向上させたい場合には、予め十分に混合しておくことが望ましい。混合機として、一般に使用されるヘンシェルミキサー等を用いることができる。また、一部の極性物質は、エタノール等の極性溶媒に予め溶解させて加えてもよい。添加剤を溶解する極性溶媒としては、樹脂微粒子がほとんど溶解しないものを用いることで、キャリアの凝集を防止できる。
(4)被覆工程S4
<キャリアの製造装置>
図2は、樹脂層被覆キャリアの製造方法で用いるキャリアの製造装置201の構成を示す正面図である。図3は、図2に示すキャリアの製造装置201を切断面線A200―A200からみた概略断面図である。被覆工程S4では、たとえばキャリアの製造装置201を用い、キャリア母粒子準備工程S1で作製したキャリア母粒子にコート材調製工程S3で調製したコート材を付着させ、前記装置内での循環と撹拌の相乗効果による衝撃力でキャリア母粒子に樹脂膜を形成させる。
キャリアの製造装置201は回転撹拌装置であり、粉体流路202と、噴霧手段203と、回転撹拌手段204と、図示しない温度調整用ジャケットと、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成される。回転撹拌手段204と、粉体流路202とは循環手段を構成する。
(粉体流路)
粉体流路202は、撹拌部208と、粉体流過部209とから構成される。撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材である。回転撹拌室である撹拌部208には、開口部210、211が形成される。開口部210は、撹拌部208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、撹拌部208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、撹拌部208の前記軸線方向一方側の面208aに垂直な側面208bにおいて、撹拌部208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。循環管である粉体流過部209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって撹拌部208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。この粉体流路202を、キャリア母粒子、コート材および気体が流過する。粉体流路202は、キャリア母粒子およびコート材が流動する方向である粉体流動方向が一定の方向となるように設けられる。
粉体流路202内の温度は、40℃以上に設定され、さらに好ましくは樹脂のガラス転移温度付近であり、キャリア母粒子の流動により、どの部分においてもほぼ均一となる。流路内の温度がガラス転移温度を大きく超えると、装置内で局所的な樹脂の付着が発生し易くなり、均一な被膜面の形成が阻害される。また流路内の温度がガラス転移温度より著しく低いと、膜面の形成が阻害され、コート材が剥がれる原因となる。したがって、粉体流路202および後述の回転撹拌手段204の温度を40℃〜150℃程度に維持する必要があり、そのため、内径が粉体流路管の外径よりも大きい、後述の温度調整用ジャケットを、粉体流路202および回転撹拌手段204の外側の少なくとも一部に配設する。
(回転撹拌手段)
回転撹拌手段204は、回転軸部材218と、円盤状の回転盤219と、複数の撹拌羽根220とを含む。回転軸部材218は、撹拌部208の軸線に一致する軸線を有しかつ撹拌部208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤219は、その軸線が回転軸部材218の軸線に一致するように回転軸部材218に支持され、回転軸部材218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根220は、回転盤219の周縁部分によって支持され、回転盤219の回転に伴って回転する。
被覆工程S4において、回転撹拌手段204の最外周の周速度は、10m/sec以上に設定するのが好ましく、20m/sec以上に設定するのがさらに好ましい。回転撹拌手段204の最外周とは、回転撹拌手段204の回転軸部材218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材218の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段204の部分204aである。回転撹拌手段204の最外周における周速を20m/sec以上に設定することにより、キャリア母粒子を孤立流動させることができる。最外周における周速度が10m/sec未満であると、キャリア母粒子およびコート材を孤立流動させることができないため、キャリア母粒子を樹脂膜で均一に被覆できなくなる。
キャリア母粒子およびコート材は、回転盤219表面に対して直行する方向に衝突することが好ましい。これにより、キャリア母粒子およびコート材が充分に撹拌され、キャリア母粒子がコート材でより均一に被覆されるので、被覆層が均一なキャリアの収率を向上させることができる。
(噴霧手段)
噴霧手段203は、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられ、粉体流過部209において、キャリア母粒子およびコート材の流動方向における開口部211に最も近い側の粉体流過部に設けられる。噴霧手段203は、液体を貯留する液体貯留部と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、液体とキャリアガスとを混合し得られる混合物を粉体流路202内に存在するトナー母粒子に向けて噴射し、液体の液滴をキャリア母粒子に噴霧する二流体ノズルとを備える。二流体ノズルは、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられる。液体は送液ポンプによって一定流量で噴霧手段203に送液され、噴霧手段203によって噴霧されガス化し、ガス化した液体がキャリア母粒子および樹脂微粒子表面に展延する。これによってコート材が可塑化する。
(温度調整用ジャケット)
温度調整手段である図示しない温度調整用ジャケットは、粉体流路202の外側の少なくとも一部に設けられ、ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通して粉体流路202内と回転撹拌手段204を所定の温度に調整する。これにより、後述の温度調整工程S4aにおいて、粉体流路内および回転撹拌手段の外側の温度をコート材が軟化変形しない温度以下に制御することができる。また噴霧工程S4cおよび膜化工程S4dにおいて、キャリア母粒子、コート材および液体にかかる温度のばらつきを少なくし、キャリア母粒子およびコート材の安定な流動状態を保つことが可能となる。
通常キャリア母粒子およびコート材は、粉体流路内の内壁に何度も衝突するが、その際衝突エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、キャリア母粒子およびコート材に蓄積される。衝突回数の増加とともに、それらの粒子に蓄積される熱エネルギーが増加し、やがてコート材は軟化して粉体流路の内壁に付着する。温度調整用ジャケットを粉体流路202の外側全体に設けることにより、装置内の温度が急上昇することを防ぎ、コート材の軟化を抑制し、粉体流路202内壁へのキャリア母粒子およびコート材の付着を確実に防ぎ、粉体流路内が狭くなることを回避できる。その結果、キャリア母粒子がコート材で均一に被覆され、特性劣化のないキャリア粒子を高い収率で製造できる。
また、噴霧手段203より下流の粉体流過部209内部では、噴霧された液体が乾燥せず残存しており、温度が適正でないと乾燥速度が遅くなるため液体が滞留しやすい。これにキャリア母粒子が接触すると、粉体流路202内壁にキャリア母粒子が付着しやすくなり、キャリアの凝集が発生する原因となる。開口部210付近の内壁では、粉体流過部209から撹拌部208に流入するキャリア母粒子と、回転撹拌手段204により撹拌部208内を流動するキャリア母粒子とが衝突し、キャリア母粒子が開口部210付近に付着しやすい。このようなキャリア母粒子が付着しやすい部分に温度調整用ジャケットを設けることにより、粉体流路202内壁へのキャリア母粒子の付着をより確実に防ぐことができる。
(粉体投入部および粉体回収部)
粉体流路202の粉体流過部209には、粉体投入部206と、粉体回収部207とが接続される。図4は、粉体投入部206および粉体回収部207まわりの構成を示す正面図である。
粉体投入部206は、キャリア母粒子およびコート材を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備える。ホッパから供給されるキャリア母粒子およびコート材は、電磁弁213により供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して粉体流路202に供給される。粉体流路202に供給されるキャリア母粒子およびコート材は、回転撹拌手段204により、一定の方向に流動する。また電磁弁213により供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、キャリア母粒子およびコート材は粉体流路202に供給されない。
粉体回収部207は、回収タンク215と、回収タンク215と粉体流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備える。電磁弁217により回収管216内の流路が開放されている状態において、粉体流路202を流過するキャリア粒子は回収管216を介して回収タンク215に回収される。また電磁弁217により回収管216内の流路が閉鎖されている状態においては、粉体流路202を流過するキャリア粒子は回収されない。
上述のようなキャリアの製造装置201を用いる被覆工程S4は、温度調整工程S4aと、コート材付着工程S4bと、噴霧工程S4cと、膜化工程S4dと、回収工程S4eとを含む。
(4)−1、温度調整工程S4a
温度調整工程S4aでは、回転撹拌手段204を回転させながら、粉体流路202内および回転撹拌手段204を、これらの外側に配設した温度調整用ジャケットに媒体を通じて所定の温度に調整する。これにより粉体流路202内の温度を、後述するコート材S4bで投入されるコート材が配管および装置に融着しない温度以下に制御できる。
本工程では、粉体流路202内の一部だけでなく、粉体流路202内全体および回転撹拌手段204の温度が調整されることが好ましい。これにより、粉体流路の一部の温度だけが調整された場合と比べ、キャリア母粒子へのコート材の付着および膜化が円滑に進む。また、これらの粒子の粉体流路内壁面への付着を抑制できるので、粉体流路内が狭くなることを抑制できる。その結果、キャリア母粒子がコート材で均一に被覆され、膜状態や粒度分布が均一なキャリアを長時間にわたってより安定に製造することができる。
(4)−2、樹脂微粒子付着工程S4b
樹脂微粒子付着工程S4bでは、回転撹拌手段が回転している状態で、粉体投入部206からキャリア母粒子およびコート材を粉体流路202に供給する。
粉体流路202に供給されたキャリア母粒子およびコート材は、回転撹拌手段204によって撹拌され、粉体流路202の粉体流過部209を矢符214方向に流動する。これにより、コート材がキャリア母粒子表面に付着する。
(4)−3、噴霧工程S4c
噴霧工程S4cでは、流動状態にあるコート材に、コート材を溶解せず、可塑化させる効果のある液体を、前述の噴霧手段203からキャリアガスによって噴霧する。
噴霧された液体は、粉体流路202内のガス濃度が一定となるようにガス化され、ガス化した液体は貫通孔221を通って粉体流路外へ排出されることが好ましい。ガス化した液体の濃度を一定に保つことにより、濃度が一定に保たれていない場合と比べ液体の乾燥速度を上げることができる。よって未乾燥の液体の残存するキャリア粒子が互いに付着することを防ぎ、キャリア粒子の凝集を抑制できる。その結果、被覆層が均一なキャリアの収率をより向上できる。
ガス排出部222において濃度センサにより測定されるガス化された液体の濃度は、3%以下程度であることが好ましい。濃度が3%以下程度であると、液体の乾燥速度を充分に大きくでき、未乾燥の液体の残存するキャリア母粒子が互いに付着することを防ぎ、キャリア母粒子の凝集を抑制できる。またガス化された液体の濃度は、0.1%以上3.0%以下であることがさらに好ましい。液体濃度がこのような範囲内であると、生産性を低下させることなく、キャリア母粒子の凝集を防止できる。液体の濃度は、キャリア母粒子およびコート材の原料の種類および量によって調整する。また、キャリアの製造装置201のスケールにより液体の噴霧速度を変更することによっても調整できる。
粉体流路202におけるキャリア母粒子およびコート材の流動速度が安定してから、噴霧を開始することが好ましい。これにより、キャリア母粒子およびコート材に液体を均一に噴霧でき、被覆層が均一なキャリアの収率を向上させることができる。
(キャリアガス)
キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。キャリアガスの流量は、液体の噴霧速度に合わせて適宜調整する。キャリアガスの好ましい流量は、液体の噴霧速度に依存し、キャリアの製造装置201のスケールとキャリア母粒子およびコート材の量とによって異なる。
噴霧手段203の二流体ノズルの軸線方向である液体噴霧方向と、粉体流路202においてキャリア母粒子およびコート材が流動する方向である粉体流動方向との成す角度θは、0°以上45°以下であることが好ましい。θがこのような範囲内であると、液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳することが防止され、樹脂膜で被覆されたキャリア母粒子の収率を一層向上させることができる。θが45°を超えると、液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳し、液体が滞留しやすくなり、キャリア粒子の凝集が発生して収率が悪化する。
噴霧手段203により噴霧した液体の拡がり角度φは、20°以上90°以下であることが好ましい。拡がり角度φがこの範囲から外れると、キャリア母粒子に対する液体の均一な噴霧が困難となるおそれがある。
本工程において、前述した構造の二流体ノズルを用いることで、循環風、ならびに循環しているキャリア母粒子およびコート材が二流体ノズルに衝突しても、液管および空気管の中心がずれることを防止できる。これにより、空気管先端の断面において、噴霧されるキャリアガスの単位面積当たりの量が一定となり、噴霧される液体の方向および噴霧量を一定に保ち、噴霧状態を安定に維持することができる。したがって、粉体流路内の液体濃度を一定に保ち、膜状態や粒度分布が均一なキャリアを長時間にわたり安定に製造することができる。
(4)−4、膜化工程S4d
膜化工程S4dでは、コート材が軟化し膜化するまで、所定の温度で回転撹拌手段204の回転を続けキャリア母粒子およびコート材を流動させ、キャリア母粒子をコート材で被覆する。
(4)−5、回収工程S4e
回収工程S4eでは、噴霧手段からの液体噴霧と回転撹拌手段204の回転を停止し、粉体回収部207から樹脂層被覆キャリアを装置外に排出し、回収する。
このようなキャリアの製造装置201としては、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、温度調整用ジャケットは粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に設けられてもよく、粉体流過部208または撹拌部208の外側の一部に設けられてもよい。粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に温度調整用ジャケットが設けた場合、キャリア母粒子の粉体流路202内壁への付着をより確実に防ぐことができる。
また、キャリアの製造装置は、市販の撹拌装置と噴霧手段とを組合せて構成することもできる。粉体流路および回転撹拌手段を備える市販の撹拌装置としては、たとえば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この撹拌装置を本発明のキャリアの製造に用いるキャリアの製造装置として用いることができる。
2、キャリア
本発明の実施形態であるキャリアは、上記のキャリアの製造方法で製造される。上記のキャリアの製造方法によって得られるキャリアは、被覆材料の被覆量が均一であるので、個々のキャリア粒子間における帯電特性などのキャリア特性が均一となる。したがってこのようなキャリアを含むトナーを画像形成に用いると、高精細で、濃度むらのない画質の良好な画像を得られる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。キャリアの粒径は特に制限されないが、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
キャリアの体積抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。体積抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値から得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアが帯電し、感光体にキャリア粒子が付着し易く、またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。一般的な現像ローラの磁束密度条件下では、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、非接触現像ではキャリアの穂立ちが高くなり過ぎ、像担持体とトナーの非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
3、現像剤
本発明の樹脂層被覆キャリアは、トナーと混合して2成分現像剤として使用される。本発明のキャリアは、個々のキャリア粒子間における帯電特性などのキャリア特性が均一であるので、トナー特性が均一な現像剤となり、高精細で、濃度むらのない良好な画質の画像を安定して形成することができる。
<トナー>
トナーは、特に限定されず、公知のトナーを使用できる。トナーは、着色樹脂粒子と、必要に応じて着色樹脂粒子の表面に付着する外添剤とを含み、たとえば、これらをヘンシェルミキサのような気流混合機を用いて混合する、すなわち外添処理することによって作製できる。
(着色樹脂粒子)
着色樹脂粒子は、混練粉砕法や重合法等、公知の方法によって作製できる。
混練粉砕法による着色樹脂粒子の作製では、バインダー樹脂、着色剤、帯電制御剤、離型剤、ならびにその他の添加剤を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサ等の混合機により混合する。この原料混合物を、2軸混練機、1軸混練機等の混練機により、温度100〜180℃で溶融混練し、得られた混練物を冷却固化し、固化物をジェットミルのようなエア式粉砕機により粉砕する。このようにして得られた粉砕物を、必要に応じて分級等、粒度調整し、着色樹脂粒子を得る。
バインダー樹脂としては、公知のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。この中でも線形又は非線形のポリエステル樹脂が特に好ましい。ポリエステル樹脂は、トナーの機械的強度(微粉が発生しにくい)、定着性(定着後に紙から剥離しにくい)、および耐ホットオフセット性を同時に向上させる点で優れている。
ポリエステル樹脂は、2価以上の多価アルコールと多塩基酸とからなる単量体組成物を重合することにより得られる。
2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。
2価の多塩基酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物や低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類を挙げることができる。
また、必要に応じて、単量体組成物中に3価以上の多価アルコールあるいは多塩基酸を添加してもよい。
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
3価以上の多塩基酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの無水物等を挙げることができる。
着色剤としては、トナーに一般に用いられている公知の顔料や染料を使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラックやマグネタイト等を使用できる。
黄色の着色剤としては、C.I.ピグメント・イエロー1、C.I.ピグメント・イエロー3、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー13、C.I.ピグメント・イエロー14、C.I.ピグメント・イエロー17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー93、C.I.ピグメント・イエロー155等の縮合モノアゾ系黄色顔料;C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー185等のその他黄色顔料、C.I.ソルベント・イエロー19、C.I.ソルベント・イエロー77、C.I.ソルベント・イエロー79、C.I.ディスパース・イエロー164等の黄色染料等を使用できる。
赤色の着色剤としては、C.I.ピグメント・レッド48、C.I.ピグメント・レッド49:1、C.I.ピグメント・レッド53:1、C.I.ピグメント・レッド57、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド81、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド5、C.I.ピグメント・レッド146、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・レッド238;C.I.ピグメント・バイオレット19等の赤色もしくは紅色顔料;C.I.ソルベント・レッド49、C.I.ソルベント・レッド52、C.I.ソルベント・レッド58、C.I.ソルベント・レッド8等の赤色系染料等を使用できる。
青色の着色剤としては、C.I.ピグメント・ブルー15:3、C.I.ピグメント・ブルー15:4等の銅フタロシアニンおよびその誘導体の青色系染顔料;C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36(フタロシアニン・グリーン)等の緑色顔料等を使用できる。
着色剤の含有量としては、バインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部程度であることが好ましく、より好適には2〜10重量部の範囲である。
帯電制御剤としては、公知のものが使用できる。
負帯電性を付与する帯電制御剤としては、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルフォン酸塩等が挙げられる。
正帯電性を付与する帯電制御剤としては、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等が挙げられる。
これらの帯電制御剤の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成ワックスやパラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体等の石油系ワックスおよびその変成ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス等が挙げられる。これらの離型剤をトナー中に含有させることにより、定着ローラあるいは定着ベルトに対するトナーの離型性を高めることができ、トナー定着時の高温・低温オフセットを防止できる。離型剤の添加量は特に制限されないが、一般的には、バインダー樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下である。
着色樹脂粒子の体積平均粒径は、5〜7μmの範囲内が好ましい。この範囲内であれば、ドット再現性に優れ、カブリやトナー飛散の少ない、高画質の画像が得られる。
(外添剤)
外添剤は、トナーの凝集を防ぎ、感光体ドラムから記録媒体へのトナーの転写効率の低下を防ぐために、トナーに含まれていることが好ましい。
外添剤としては、平均粒径が7〜100nmの、シリカ、酸化チタン、アルミナ等からなる無機粒子が使用できる。また、これらの無機粒子に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコンオイルで表面処理することによって疎水性を付与してもよい。疎水性を付与された無機粒子は、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下が少なくなる。特に、シランカップリング剤としてヘキサメチルジシラザンを用いて、表面にトリメチルシリル基を導入したシリカ粒子は、疎水性や絶縁性に優れる。このようなシリカ粒子を外添したトナーは、高湿環境下においても、優れた帯電性を維持できる。
外添剤としては、たとえば、日本アエロジル株式会社製アエロジル50(個数平均粒径約30nm)、アエロジル90(個数平均粒径約30nm)、アエロジル130(個数平均粒径約16nm)、アエロジル200(個数平均粒径約12nm)、アエロジル300(個数平均粒径約7nm)、アエロジル380(個数平均粒径約7nm)、西独デグサ社製アルミナムオキサイドC(個数平均粒径約13nm)、チタニウムオキサイドP−25(個数平均粒径約21nm)、MOX170(個数平均粒径約15nm)、石原産業株式会社製TTO−51(個数平均粒径約20nm)、TTO−55(個数平均粒径約40nm)、キャボット社製シリカ(個数平均粒径約115nm)、(個数平均粒径約85nm)、信越化学工業株式会社製シリカX−24(個数平均粒径約110nm)などが挙げられる。
外添剤の添加量は、0.2〜3重量%が好ましい。0.2重量%未満では、トナーに十分な流動性を付与できないことがあり、また、3重量%を超えると、トナーの定着性が低下することがある。
2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるが、樹脂層被覆キャリア(密度5〜8g/cm2)の場合は、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
4、画像形成装置
図5は、画像形成装置100の構成を示す。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100は、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体またはメモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じ、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。
画像形成装置100は、像担持体である感光体ドラム11と、画像形成部2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。画像形成部2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
感光体ドラム11は、図示しない回転駆動手段によって、軸線回りに回転可能となるよう設けられ、その表面に静電潜像が形成されるローラ状部材である。感光体ドラム11の回転駆動手段は、中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)による制御手段で
制御される。感光体ドラム11は、図示しない導電性基体と、導電性基体の表面に形成される図示しない感光層とを含む。
導電性基体は種々の形状をとることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。
導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルムまたは紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金および酸化インジウムなどの1種または2種以上から成る導電性層を形成させた導電性フィルム、ならびに導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、導電性基体の表面に電荷発生層に電荷輸送層を積層して形成する。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間に下引き層を設けるのが好ましい。下引き層は導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆し、感光層表面を平滑化する。これにより、反復使用時における感光層の帯電性の劣化が防止でき、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性が向上する。また感光層は、最上層に感光体表面保護層を設け、耐久性の大きい三層構造をとっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格などを有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でもフタロシアニン系顔料、アゾ顔料が好ましく、フタロシアニン系顔料の中でも無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料が好ましく、アゾ顔料の中でもフローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などが好ましい。これらは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
電荷発生物質の含有量は特に制限はないが、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対し、好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下である。電荷発生層用の結着樹脂としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
電荷発生層は、前述した成分(電荷発生物質、結着樹脂、必要に応じて可塑剤、増感剤など)を含む電荷発生層塗液を調製し、これを導電性基体表面に塗布し、乾燥させることで形成できる。電荷発生層塗液を調製する際、各成分は適切な有機溶媒に溶解または分散する。このようにして形成される電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を主成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有するもので、この分野で常用されるものを使用できる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。
電荷輸送物質は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないが、好ましくは電荷輸送層中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下である。
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、およびこれらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物が好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびその誘導体、有機硫黄化合物、ならびに有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないが、電荷輸送層全成分の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下である。
電荷輸送層は、前述した成分(電荷輸送物質、結着樹脂、必要に応じて酸化剤、可塑剤、増感剤など)を含む電荷輸送層塗液を調製し、これを電荷発生層表面に塗布し、乾燥させることで形成できる。電荷輸送層塗液を調製する際、各成分は適切な有機溶媒に溶解または分散する。このようにして形成される電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上40μm以下である。
また、1つの層に電荷発生物質と電荷輸送物質とが共存する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
前述したような、電荷発生物質および電荷輸送物質を成分とする有機感光層から成る感光体ドラムを用いるが、シリコンなどを成分とする無機感光層から成る感光体ドラムも使用できる。
画像形成部2は、帯電装置12と、露光ユニット13と、現像部14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電装置12および露光ユニット13は、潜像形成手段として機能する。帯電装置12、現像部14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電装置12は、現像部14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
画像形成部2によって、帯電装置12により均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成し、これに現像部14からトナーを供給することでトナー像を形成させる。このトナー像を中間転写ベルト25に転写後、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
帯電装置12は、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる装置である。帯電装置12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電装置12は感光体ドラム11を臨み、ドラムの長手方向に沿ってドラム表面から間隙を有して配置されるが、それに限定されない。たとえば、帯電装置12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
露光ユニット13は、出射される各色の光が、帯電装置12と現像部14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、または液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図6は、図5に示す画像形成装置100に備わる現像部14を模式的に示す概略図である。現像部14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。
現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、ドラム表面に形成される静電潜像にトナーを供給する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容し、かつ現像ローラ50、供給ローラ51、撹拌ローラ52などのローラ部材を収容し回転自在に支持する。また、ローラ状部材の代わりにスクリュー部材を収容してもよい。本実施形態の現像部14は、トナーとして、前述の実施の一形態のトナーを現像槽20に収容する。
現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部53が形成され、この開口部53を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ50が設けられる。現像ローラ50は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナー供給の際、現像ローラ50表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下、単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、ローラ表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することにより、静電潜像に供給されるトナー量、すなわち静電潜像のトナー付着量を制御できる。
供給ローラ51は現像ローラ50を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ50周辺にトナーを供給する。撹拌ローラ52は供給ローラ51を臨んで回転可能となるよう設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ51周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口54と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口55とが連通するよう設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じトナーを補給する。また現像部14は、トナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成してもよい。
以上のように、現像部14では、本発明の現像剤を用いて潜像を現像するので、感光体ドラム11上に高精細なトナー像を安定して形成でき、これにより高画質の画像を安定して形成できる。
クリーニングユニット15は、現像部14により感光体ドラム11表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写後に、ドラム表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本実施形態の画像形成装置においては、感光体ドラム11として、有機感光体が用いられる。有機感光体ドラムの表面は樹脂成分が主体であるため、帯電装置のコロナ放電によって発生するオゾンが化学的に作用し、表面の劣化が進行しやすい。しかし、劣化した表面部分はクリーニングユニット15による擦過作用のため摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面劣化の問題が解消され、長期間にわたって、帯電電位を安定に維持できる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるが、クリーニングユニット15は特に設けなくてもよい。
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各色の画像情報にそれぞれ対応する4つの中間転写ローラ28(b,c,m,y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
転写手段3によって、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、転写ニップ部に搬送され、記録媒体に転写される。
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とに張架され、ループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転する。駆動ローラ26は図示しない駆動手段により、その軸線回りに回転可能となるよう設けられ、その回転によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転に従動回転可能となるよう設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転可能となるよう設けられる。また、中間転写ローラ28には、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する。
中間転写ベルト25が、接触しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ローラ28から、ドラム表面のトナーの帯電極性とは逆極性の電位が転写バイアスとして印加され、トナー像が感光体ドラム11表面から中間転写ベルト25上へ転写される。転写されたトナー像は、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転可能となるよう設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持され、搬送されるトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を転写された記録媒体は、定着手段4に送給される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着手段4によって、転写手段3においてトナー像の転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とに挟持され定着ニップ部を通過する際、トナー像が加熱、押圧されることにより記録媒体に定着され、画像が形成される。
定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転可能となるよう設けられ、トナーを加熱し溶融することにより、記録媒体に担持される未定着トナー像を定着させる。
定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられており、ローラ表面が所定の温度(以後「加熱温度」ともいう)となるよう定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後述する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ31の表面近傍には図示しない温度検知センサが設けられ、ローラの表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後述する制御手段の記憶部に書き込まれる。
加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、定着ローラ31の回転に従動回転可能となるよう支持される。定着ローラ31からの熱によってトナーが溶融しトナー像が記録媒体に定着する際、加圧ローラ32はトナーと記録媒体とを押圧し、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38と、手差給紙トレイ39とを含む。記録媒体供給手段5によって、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体が、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給される。
自動給紙トレイ35は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、たとえば普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路a1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、転写ニップ部に送給する。
手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路a2内を通過し、レジストローラ38に送給される。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。
記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、および外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能で、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HD DVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。
制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイ
クロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
このような画像形成装置100で画像を形成することによって、高精細で濃度むらのない良好な高画質画像を安定して形成することができる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における樹脂微粒子のガラス転移温度、軟化温度、樹脂微粒子の体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
[樹脂微粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
[樹脂微粒子の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
[体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
(実施例1)
〔キャリア母粒子準備工程S1〕
キャリア母粒子にはMn−Mg系フェライト(同和鉄粉工業株式会社製、飽和磁化65emu/g、平均粒径φ40μm)を用いた。
〔樹脂微粒子調製工程S2〕
スチレンとアクリル酸ブチルとを重合したものを凍結乾燥し、樹脂微粒子として、体積平均粒径0.2μmのスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子(ガラス転移温度95℃、軟化温度183℃)を得た。
〔コート材調製工程S3〕
上記、樹脂微粒子2部および、カーボンブラック0.1部(キャボットジャパン株式会社製)、帯電制御剤(商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)0.02部を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて混合しコート材を調製した。
〔被覆工程S4〕
図2に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、二流体ノズルを取付けた装置によって、キャリア母粒子100部およびコート材2.12部を撹拌、流動させた状態で、液体としてエタノールを噴霧した。
液体噴霧ユニットとしては、市販品を用いることができ、液体をたとえば、送液ポンプ(商品名:SP11−12、株式会社フロム製)を通して二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続したものを使用することができる。液体の噴霧速度および液体ガス排出速度は市販のガス検知器(商品名:XP−3110、新コスモス電機株式会社製)でモニターすることができる。温度調整用ジャケットは、粉体流過部および撹拌部壁面の全面に設けた。粉体流路には温度センサを取り付けた。
キャリア母粒子表面へのコート材付着工程において、ハイブリダイゼーションシステムの回転撹拌手段の最外周における周速度は20m/secとし、粉体流過部および撹拌部の温度は40℃となるよう調整した。
噴霧工程および膜化工程においては、周速度を30m/secとし、粉体流過部および撹拌部の温度は80℃となるよう調整した。また液体噴霧方向と、粉体流動方向とのなす角度(以下「噴霧角度」という)が平行(0°)となるように、二流体ノズルの取付け角度を設定した。
このような装置によって、撹拌、流動させた粒子に、エタノールを、噴霧速度毎分1g、エア流量毎分5Lで20分間噴霧し、コート材をキャリア母粒子表面に膜化させた。その後、エタノール噴霧を停止して10分間撹拌し、実施例1のキャリアを得た。
このとき貫通孔およびガス排出部を通じて排出されたエタノールの排出濃度は供給時間によって変化し、供給を停止することで減少した。また装置内へ流すエア流量は、回転軸部から装置内に流すエア流量を毎分5Lに調節し、二流体ノズルからのエア流量と合計して毎分10Lとした。
(実施例2)
コート材調製工程において、帯電制御剤を加えず、その代わりに、被覆工程において、噴霧するエタノール中に帯電制御剤を溶解させたものを用いる以外は、実施例1と同様にして実施例2のキャリアを得た。
(実施例3)
膜化工程において、粉体流過部および撹拌部の温度を調整しなかった以外は、実施例1と同様にして実施例3のキャリアを得た。
(比較例1)
膜化工程において、エタノールの噴霧を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のキャリアを得た。被覆工程終了後、装置中に黒〜灰色の粉末の付着が多くみられた。
実施例および比較例のキャリアについて、以下のようにして帯電安定性およびキャリア付着を評価した。
キャリア92部に対してトナー8部をポリエチレン製の撹拌容器に投入し、両軸駆動ポリ瓶回転架台にて速度200rpmで1時間撹拌し、トナー濃度8%の二成分現像剤を得た。
<エージング条件>
上述の条件にて作製した二成分現像剤を用いて、シャープ株式会社製デジタルフルカラー複合機MX−6200N(印刷速度:カラー41ppm、モノクロ62ppm)を使用し、印字率5%の画像を連続印刷した。また、現像剤担持体と現像剤規制部材とのギャップ、および現像領域における現像剤担持体と像担持体とのギャップは0.4mmに設定した。初めに3分間の空転を行い、上記の二成分現像剤を現像槽内にて調整した。
現像剤担持体に印加するバイアス電圧の直流バイアス値は、各現像剤中のトナーの帯電量により適宜変化させ、ベタ画像の画像濃度が規定値となるよう調整した。像担持体上の非画像部電位と現像剤担持体との電位差は、200Vとした。
可視像形成によるトナー消費量は、トナー濃度の変化としてトナー濃度センサにより検知される。消費された分のトナーは、規定トナー濃度に達するまでトナーホッパから補給されるため、現像ユニット内部の二成分現像剤中のトナー濃度は略一定に保たれる。
<帯電安定性>
上記の条件にてエージング試験を行い、印刷枚数0k枚および5k枚におけるトナー帯電量を測定した。
印刷枚数0k枚時と比べ、5k枚で帯電量がどの程度低下したかにより、帯電安定性を評価した。
評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良好。帯電量の低下が5μC/m以下である
○:良好。帯電量の低下が5μC/mより大きく10μC/m以下である
△:実用上問題なし。帯電量の低下が10μC/mより大きく15μC/m以下である
×:不良。帯電量の低下が15μC/mより大きい
<キャリア付着>
次に、上記帯電量を測定したキャリアについて、5k枚印刷終了時のキャリアの付着個数を測定した。200Vの電圧を印加し現像を行い、像担持体上の非画像部における一定面積(297mm×24mm)中のキャリアの付着個数を計測した結果を、上記表4に示す。キャリア付着数によって、以下の基準で評価した。
◎:非常に良好。キャリア付着数5個以下
○:良好。キャリア付着数6〜20個
△:実用上問題なし。キャリア付着数21〜40個
×:不良。キャリア付着数41個以上
〔総合評価〕
上記の帯電安定性およびキャリア付着の評価に基づき、総合評価を行った。総合評価は、帯電安定性またはキャリア付着の評価のいずれか悪い方を採用するものとする。△以上を使用可能と判定した。
実施例および比較例で得られたキャリアの評価結果および総合評価結果を表に示す。
実施例1,2のキャリアは、帯電安定性およびキャリア付着とも、良好な評価結果となった。実施例2においては、被覆膜表面近傍に帯電制御剤が多く存在することにより、さらに帯電性の向上が図られたものと考えられる。また、エタノール噴霧により帯電性の低下が防止されるが、これは帯電制御剤を被覆膜になじませ、膜中に導入する効果を有するためと考えられる。
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)攪拌羽根を周設した回転盤と回転軸とを含む回転撹拌手段と、回転撹拌室および循環管を含む粉体流路とを備える製造装置を用い、粉体流路内で磁性母粒子および樹脂微粒子を撹拌して樹脂層被覆キャリアを製造する樹脂層被覆キャリアの製造方法であって、回転撹拌手段が回転している粉体流路内に、磁性母粒子および樹脂微粒子を投入して、磁性母粒子表面に樹脂微粒子を付着させる樹脂微粒子付着工程と、磁性母粒子および樹脂微粒子が流動している粉体流路内に、少なくとも樹脂微粒子を可塑化させる液体を、噴霧手段から噴霧ガスによって噴霧する噴霧工程と、回転撹拌手段の回転によって磁性母粒子および樹脂微粒子を流動させ、磁性母粒子に付着した樹脂微粒子を軟化および膜化させる膜化工程とを含むことを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
始めに樹脂微粒子付着工程で樹脂微粒子を解砕し磁性母粒子に付着させ、その後噴霧工程でガス化した液体を噴霧することにより樹脂を可塑化させることで、膜化工程で均一な被覆を実現できる。また、液体を噴霧ガスとして取り扱うことにより乾燥の手間を省き、より短時間で被覆が可能になる。
(2)粉体流路の少なくとも一部に設けられた温度調整手段により、粉体流路および回転撹拌手段の温度を調整することによって、粉体流路内の温度を所定の温度に調整することを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
樹脂微粒子付着工程において、粉体流路内の温度上昇を抑え、樹脂微粒子を溶融させることなく流動させ、樹脂微粒子を均一に付着させることができる。また、膜化工程において、粉体流路内の温度を上昇させ、樹脂微粒子を溶解させることにより、磁性母粒子と被覆樹脂との接着性が増し、キャリアの耐久性を上げることができる。
(3)粉体流路内において、磁性母粒子および樹脂微粒子を循環させ回転撹拌室に戻す循環手段を備え、回転撹拌手段により磁性母粒子および樹脂微粒子を繰り返し循環させることを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
磁性母粒子および樹脂微粒子を循環させることで、局所的に温度が上がることを抑え、均質な被覆状態を実現し、被覆むらによるキャリア性能の低下を防止することができる。
(4)回転撹拌手段に含まれる回転盤は、回転軸の回転に伴って回転し、流動する磁性母粒子および樹脂微粒子を、回転している回転盤に衝突させることを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
回転盤によって樹脂微粒子の膜化に必要な衝突エネルギーを与えることにより、膜化を促進し、均一な被膜層を短時間で得ることができる。
(5)噴霧ガスは、粉体流路内でガス化した液体と共に、粉体流路外へ排出されることを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
粉体流路内に留まるガス化した液体の濃度を調整することで、粉体の流動性が低下することを防ぎ、膜化を好適に進めることができる。
(6)前記樹脂微粒子を可塑化させる液体は、少なくとも極性溶媒を含むことを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
(7)前記樹脂微粒子を可塑化させる液体は、被覆材添加剤成分を溶解していることを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
(8)前記添加剤成分は、極性成分を含む帯電制御剤であることを特徴とする、樹脂層被覆キャリアの製造方法。
帯電制御剤は極性溶媒に可溶であるので、噴霧工程中に被覆膜中に取り込まれ、被覆材添加剤として機能する。