図1は本発明を適用したヒートポンプ式給湯暖房装置の一実施例の全体構成図を示している。ヒートポンプ式給湯暖房装置Hは、ヒートポンプユニット10と、貯湯タンクユニット30とから構成されている。
ヒートポンプユニット10は、圧縮機11、放熱器12、分流器13、補助絞り手段としての第2の膨張弁14、中間熱交換器15、主絞り手段としての膨張弁17及び蒸発器18とを備えて、これらを配管接続することによりヒートポンプ冷媒回路が構成されている。
本実施例の圧縮機11は、密閉容器(圧縮機11のケース)内16に電動要素と(密閉容器及び電動要素は図示しない)、この電動要素にて駆動される低段側の圧縮手段としての第1の圧縮要素11Aと高段側の圧縮手段としての第2の圧縮要素11Bとを備えて、第1の圧縮要素11Aで圧縮された冷媒を密閉容器内16に吐出した後、第2の圧縮要素11Bに吸い込んで圧縮する内部中間圧型のコンプレッサである。この場合、圧縮機11の低圧部は、第1の圧縮要素11Aの吸込側に相当し、中間圧部は、第1の圧縮要素11Aの吐出側から第2の圧縮要素11Bの吸込側に相当する。即ち、密閉容器内16も中間圧部に相当する。即ち、本実施例の圧縮機11は、第1の圧縮要素11Aに低圧の冷媒を吸い込んで圧縮して中間圧とし、密閉容器内16に吐出した後、当該密閉容器内16から第2の圧縮要素11Bに吸い込んで高圧まで圧縮するよう構成されている。
上記第2の圧縮要素11Bの冷媒吐出側には、冷媒吐出管42の一端が接続されており、この冷媒吐出管42から第2の圧縮要素11Bにて圧縮された高温高圧の冷媒ガスが圧縮機11の外部に吐出される。そして、冷媒吐出管42の他端は後述する放熱器12の一端(加熱部12Aの冷媒入口側)に接続されている。また、放熱器12の他端(即ち、加熱部12Aの冷媒出口側)には分流器13に至る配管44が接続されている。
分流器13は、放熱器12の加熱部12Aから出た冷媒を2つの流れに分岐するための分流手段である。本実施例の分流器13は、放熱器12から出た冷媒を第1の冷媒流と第2の冷媒流の2つの流れに分流し、第1の冷媒流を膨張弁14を経て中間熱交換器15の第1の流路15Aに至る第2冷媒流路に流し、第2の冷媒流を中間熱交換器15の第2の流路15Bに流した後、膨張弁17を経て蒸発器18に至る主冷媒流路に流すように構成されている。
即ち、分流器13の一方の出口には第2冷媒流路の膨張弁14に至る配管45が接続されており、他方の出口には主冷媒流路の中間熱交換器15の第2の流路15Bに至る配管47が接続されている。この主冷媒流路とは、圧縮機11の第1の圧縮要素11A、密閉容器内16、第2の圧縮要素11B、放熱器12、分流器13、中間熱交換器15の第2の流路15B、膨張弁17、蒸発器18からなる環状の冷媒流路である。また、第2冷媒流路とは、分流器13から膨張弁14、中間熱交換器15の第1の流路15Aを経て密閉容器内16に至る冷媒流路を指す。
一方、本実施例では、第2冷媒流路からの第1の冷媒流と、圧縮機11の第1の圧縮要素11Aで圧縮された冷媒とが圧縮機11の密閉容器内16にて合流するよう構成されている。従って、本実施例では、圧縮機11の密閉容器内16が2つの冷媒流を合流させるための合流手段として機能することとなる。即ち、密閉容器内16にて第2冷媒流路からの第1の冷媒流と圧縮機11の第1の圧縮要素11Aで圧縮された冷媒とが合流し、この合流した冷媒が第2の圧縮要素11Bに吸い込まれるよう構成されている。
他方、前記膨張弁14は、分流器13で分流された第1の冷媒流を減圧するための補助絞り手段であると共に、第1の冷媒流を第2冷媒流路に流すか流さないかを制御する弁装置として機能する。この膨張弁14は、後述するコントローラCに接続されて、開閉動作が当該コントローラCにより制御されている。
前記中間熱交換器15は、前記第2冷媒流路を流れる膨張弁14で減圧された後の第1の冷媒流と主冷媒流路を流れる第2の冷媒流とを熱交換させるための熱交換器である。この中間熱交換器15には、第1の冷媒流が流れる第1の流路15Aと第2の冷媒流が流れる第2の流路15Bとが交熱的に配置されている。更に、本実施例の中間熱交換器15は、当該中間熱交換器15において第1の冷媒流と第2の冷媒流とが対向流となるように各流路15A、15Bが設けられている。このように中間熱交換器15を設けることで、膨張弁14にて減圧され、第1の流路15Aに流入した第1の冷媒流は、第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流から熱を奪う。他方、第2の冷媒流は第1の冷媒流により冷却される。これにより、蒸発器18に入る冷媒の比エンタルピーを小さくすることができる。
また、上記中間熱交換器15の第1の流路15Aの出口には、圧縮機11の密閉容器に接続され、当該圧縮機11の密閉容器内16にて一端が開口する配管46が接続されており、第1の流路15Aから出た冷媒が配管46から圧縮機11の中間圧部である密閉容器内16に吐出されるよう構成されている。
以上の如く分流器13で分流された第1の冷媒流は、膨張弁14で減圧された後、中間熱交換器15の第1の流路15Aを通過する過程で第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流と熱交換して蒸発する。蒸発して冷媒ガスとなった第1の冷媒流は、第1の流路15Aから出て圧縮機11の密閉容器内16に入り、そこで第1の圧縮要素11Aからの冷媒と合流した後、第2の圧縮要素11Bに吸い込まれることとなる。尚、本実施例では圧縮機11の密閉容器内16にて2つの冷媒流を合流させるものとしたが、合流器を別に設けて、当該合流器にて第2冷媒流路からの第1の冷媒流と、圧縮機11の第1の圧縮要素11Aで圧縮された冷媒とを合流させるように構成しても差し支えない。
他方、中間熱交換器15の第2の流路15Bの出口に接続された配管48は膨張弁17の入口に接続され、膨張弁17を出た配管50は蒸発器18の入口に接続されている。この膨張弁17は、分流器13で分流された後の主冷媒流路を流れる第2の冷媒流を減圧するための主絞り手段である。この膨張弁17は、前記コントローラCに接続されて、このコントローラCにより弁開度が制御されている。また、蒸発器18はファン18Fから通風される空気から熱を奪って冷媒を蒸発させる空冷方式の熱交換器である。この蒸発器18の出口は圧縮機11の低圧部である第1の圧縮要素11Aの吸込側に至る冷媒導入管40が接続されている。
以上のように、分流器13で分流された後の主冷媒回路を流れる第2の冷媒流は、中間熱交換器15の第2の流路15B、膨張弁17を経て蒸発器18に流れた後、圧縮機11の第1の圧縮要素11A、密閉容器内16、第2の圧縮要素11B、放熱器12の加熱部12Aを経て再び分流器13にて分流されるサイクルを繰り返すこととなる。
このヒートポンプ冷媒回路には、二酸化炭素が冷媒として用いられる。二酸化炭素冷媒は、圧縮機11の第2の圧縮要素11Bにて超臨界圧力まで圧縮されて、放熱器12の加熱部12Aに送られることとなる。この超臨界状態で加熱部12Aに流入した冷媒により放熱器12の被加熱部12Bを流れる水を+90℃以上の高温に加熱することができる。尚、ヒートポンプ冷媒回路の圧縮機11の第2の圧縮要素11Bの吐出側に接続された冷媒吐出管42には、第2の圧縮要素11Bで圧縮され高温高圧の冷媒ガスとなった後、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出するための吐出冷媒温度検出手段としての温度センサTS1が設けられている。
また、中間熱交換器15の第1の流路15Aに至る配管45上には中間熱交換器15の入口における第1の冷媒流の温度を検出するための中間熱交換器入口冷媒温度検出手段としての温度センサTS2が介設され、第1の流路15Aから出た配管46上には中間熱交換器15の出口における第1の冷媒流の温度を検出するための中間熱交換器出口冷媒温度検出手段としての温度センサTS3が介設されている。これら各温度センサTS1、TS2、TS3はそれぞれコントローラCに接続されている。
前述した放熱器12は、ヒートポンプユニット10のヒートポンプ冷媒回路を流れる圧縮機11の第2の圧縮要素11Bから出た高温高圧の冷媒と貯湯タンクユニット30の湯水生成回路を流れる水とを熱交換させるための冷媒対水熱交換器である。具体的に、実施例の放熱器12は、冷媒が流れる加熱部12Aと貯湯タンクユニット30の水が流れる被加熱部12Bとが熱交換関係に一体化されたものであって、加熱部12Aを流れる冷媒と被加熱部12Bを流れる水の流れが対向流となるよう構成されている。
上記貯湯タンクユニット30は、湯を貯留する貯湯タンク31を備える。この貯湯タンク31は、放熱器12にて冷媒と熱交換して加熱された湯を貯留可能とした縦長円筒状を呈するタンクである。当該貯湯タンク31の下端には、湯水生成回路の配管32が接続されている。この配管32は、貯湯タンク31内の下部にて一端が開口すると共に、他端が放熱器12の他側(即ち、被加熱部12Bの水入口側)に接続されており、当該配管32から貯湯タンク31内の水が取り出し可能に構成されている。また、放熱器12の一側(即ち、被加熱部12Bの水出口側)には、配管33の一端が接続され、当該配管33は放熱器12の被加熱部12Bに接続される一端から貯湯タンク31の高さ方向の中心付近の壁面に接続されて、他端は当該貯湯タンク31内にて開口している。
上記配管32には、温水生成回路に貯湯タンク31内の水を循環させるためのポンプ32Pと、放熱器12に入る水の温度(入水温度)を検出するための入水温度検出手段としての温度センサTS4とが設けられている。即ち、温水生成回路は、ポンプ32Pの動作により貯湯タンク31内の下部の水を貯湯タンク31内から取り出して、放熱器12に供給した後、貯湯タンク31内の高さ方向の略中心部に戻すよう構成されている。尚、ポンプ32P及び温度センサTS4は前記コントローラCに接続されている。
また、貯湯タンク31の上端には、温水搬送回路の配管60が接続されており、この配管60から貯湯タンク31の上部に蓄えられた高温の湯が取り出し可能に構成されている。当該温水搬送回路は、貯湯タンク31内の湯を利用側熱交換器65に搬送するためのものである。本実施例の利用側熱交換器65は、温水搬送回路の配管を介して搬送される貯湯タンク31内の湯の熱を室内の暖房に利用するためのものである。この暖房形態としては種々のものに適応可能である。例えば、空気調和機(エアコン)として用いる場合には、利用側熱交換器65はエアコンのファンコイルを構成し、床暖房に適用される場合には床暖房パネル、パネルヒータとして利用される場合には、ヒータのパネルを利用側熱交換器65が構成することとなる。また、利用側熱交換器65は上記に限らず、その他の種々の暖房装置にも適用可能である。
本実施例では配管60から並列に接続された2台の利用側熱交換器65、65を備えており、各利用側熱交換器65、65にそれぞれ貯湯タンク31からの湯の熱を搬送可能に構成されている。即ち、配管60は、一端が前述したように貯湯タンク31の上端に接続されて、当該貯湯タンク31内の上部に貯留された水(湯)中にて開口すると共に、他端は二股に分岐し、その一方の配管60Aが一方の利用側熱交換器65の入口に接続され、分岐した他方の配管60Bが他方の利用側熱交換器65の入口に接続されている。上記配管60には、貯湯タンク31の湯を各利用側熱交換器65、65に搬送するためのポンプ60Pが介設されている。
また、一方の利用側熱交換器65の出口には配管62Aが接続され、他方の利用側熱交換器65の出口には配管62Bが接続されており。これら配管62A、62Bは合流した後、貯湯タンク31の下方に接続され、当該配管62の一端が貯湯タンク31内の下部の水中にて開口している。
更に、本実施例のヒートポンプ式給湯暖房装置Hは、貯湯タンク31内に貯留された湯により給湯用の湯を生成可能に構成されている。具体的に、貯湯タンク31内において、高温の湯が貯留された上部に給湯回路を構成する配管の交熱部70が当該貯湯タンク31内の上部の湯と熱交換可能に配設されている。即ち、給湯回路は、水道水などの給水源に一端が接続された配管71からなり、その配管の途中部(交熱部)70が貯湯タンク31内の上部の湯と熱交換可能に配設されている。そして、配管71は交熱部70を経て貯湯タンク31の外部に延出して、他端は風呂やシャワー等の蛇口に接続されて家庭用水として使用可能に構成されている。これにより、給水源からの水が貯湯タンク31内の交熱部70を通過する過程で、当該貯湯タンク31内の上部に貯留された高温の温水により加熱され、この加熱された配管71内の湯が風呂やシャワー等に使用されることとなる。
更にまた、本実施例の貯湯タンク31には、当該貯湯タンク31内に貯留された水を加熱するための電気ヒータ80が設けられている。実施例の電気ヒータ80は、前述した温水生成回路における放熱器12での冷媒との熱交換による加熱に加えて、補助的に貯湯タンク31内の水を加熱して湯を生成するためのものである。特に、本実施例の電気ヒータ80は、その加熱部が温水搬送回路の配管61の一端開口の近傍であって、且つ、給湯回路の交熱部70の近傍となる位置、即ち、貯湯タンク31内の上方の水中に浸漬されている。このため、電気ヒータ80の通電により、当該貯湯タンク31内上方の水を更に高温に加熱することができるので、利用側熱交換器65に搬送する湯の温度を高温とすることができ、且つ、給湯回路を流れる水をより高温に加熱することができる。尚、電気ヒータ80は前記コントローラCに接続され、通電が制御されている。
また、本発明のヒートポンプ式給湯暖房装置Hは、外気温度センサTS5を備えている。この外気温度センサTS5は、外気温度を検出するための外気温度検出手段であり、前記コントローラCに接続されている。
ここで、前述したコントローラCは、ヒートポンプ式給湯暖房装置Hの制御を司る制御装置である。コントローラCは、ヒートポンプユニット10の圧縮機11の運転、膨張弁14、17の動作を制御すると共に、貯湯タンクユニット30の電気ヒータ80の通電、温水搬送回路のポンプ60Pの運転等を制御している。
以上の構成で、次に、ヒートポンプ式給湯暖房装置Hの動作を図2を用いて説明する。尚、図2はヒートポンプ冷媒回路Hを流れる冷媒のp−h線図(モリエル線図)である。先ず、コントローラCにより圧縮機11及びポンプ32Pが始動される。
上記の如く圧縮機11が起動されると、冷媒導入管40から圧縮機11の低圧部である第1の圧縮要素11Aの吸込側に低温低圧の冷媒ガスが吸い込まれる。このとき、冷媒は図2に示す点1の状態である。この第1の圧縮要素11Aにて冷媒は圧縮されて中間圧の冷媒ガスとなる。この場合の冷媒は図2に示す点2の状態である。中間圧となった冷媒ガスは第1の圧縮要素11Aから出て密閉容器内16に吐出される。この密閉容器内16にて冷媒は配管46からの第1の冷媒流と合流して、図2の点9の状態となる。即ち、第1の圧縮要素11Aで圧縮された冷媒は、当該冷媒より温度の低い中間熱交換器15からの第1の冷媒流の合流によって、その温度が低下し、図2の点2の状態から点9の状態となる。
その後、合流した冷媒は圧縮機11の中間圧部である第2の圧縮要素11Bの吸込側に吸い込まれて、圧縮される。第2の圧縮要素11Bにおける圧縮動作により二酸化炭素冷媒は図2の点3の如く超臨界状態まで圧縮される。そして、冷媒はこの状態で圧縮機11から吐出され、冷媒吐出管42を経て放熱器12の加熱部12Aに流入する。
一方、前記貯湯タンクユニット30の温水生成回路のポンプ32Pの始動により、貯湯タンク31内の下部に貯留された低温の水が貯湯タンク31から取り出される。そして、貯湯タンク31から出た水は、配管32上のポンプ32Pに吸い込まれた後、放熱器12側に吐出され、放熱器12の被加熱部12Bに流入する。
他方、前記放熱器12の加熱部12Aに流入した超臨界状態の冷媒は、当該加熱部12Aと交熱的に設けられた被加熱部12Bを流れる水と熱交換して放熱し、図2に示す点4の状態となる。このとき、放熱器12に流入した冷媒は温度が略+100℃まで上昇しており、当該放熱器12において被加熱部12Bを流れる水を高温に加熱することができる。冷媒により加熱された水(湯)は放熱器12を出た後、配管33を経て貯湯タンク31内に戻るサイクルを繰り返す。
このように、ポンプ32Pを運転して、貯湯タンク31内の水を温水生成回路に流し、放熱器12にて冷媒と熱交換させる動作を継続して行うことで、貯湯タンク31内は高温の湯の層が上部から下部へと移り、最終的に貯湯タンク31内全体を高温の湯で満たすことができる。
一方、放熱器12において冷媒自体は冷却されて放熱器12から流出し、配管44を介して分流器13に流入する。そこで冷媒は第1の冷媒流と第2の冷媒流に分流される。この分流器13にて分流された一方の冷媒流(第1の冷媒流)は、第2冷媒流路に流れる。即ち、第1の冷媒流は、配管45を介して膨張弁14を通過する過程で減圧されて図2に示す点7の状態となる。次に、膨張弁14から出た冷媒は中間熱交換器15の第1の流路15Aに流入する。
他方、分流器13にて分流された他方の冷媒流(第2の冷媒流)は、配管47を経て中間熱交換器15の第2の流路15Bを通過する。当該中間熱交換器15にて第1の流路15Aを流れる第1の冷媒流と第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流とが熱交換する。即ち、第1の流路15Aを流れる第1の冷媒流は、第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流により加熱され、図2の点7に示す状態から図2の点8に示す状態となる。一方、中間熱交換器15の第2の流路15Aを流れる第2の冷媒流は、第1の流路15Aを流れる第1の冷媒流と熱交換して放熱し、図2の点4に示す状態から図2の点5に示す状態となる。
このように、中間熱交換器15において第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流を第1の流路15Aを流れる第1の冷媒流と熱交換させて、当該第1の冷媒流により冷却することができる。即ち、中間熱交換器15にて第1の冷媒流と第2の冷媒流とを熱交換させることで、蒸発器18に入る第2の冷媒流の比エンタルピーを小さくすることができる。これにより、蒸発器18におけるエンタルピー差が拡大するので、冷凍効果を高めることができるようになる。また、中間熱交換器15の第1の流路15Aを出た第1の冷媒流を圧縮機11の中間圧部に吸い込ませることで、圧縮機11の低圧部である第1の圧縮要素11Aに吸い込まれる第2の冷媒流の量が減少し、低圧から中間圧まで圧縮するための圧縮仕事量が減少する。その結果、圧縮機11における圧縮動力が低下して成績係数が向上する。
その後、中間熱交換器15の第1の流路15Aを出た第1の冷媒流は、配管46を経て密閉容器内16に流入する。この密閉容器内16にて第1の冷媒流は、第1の圧縮要素11Aで圧縮され密閉容器内16に吐出された冷媒と合流して、図2の点9の状態となる。即ち、中間熱交換器15からの第1の冷媒流は、この第1の冷媒流より高温の第1の圧縮要素11Aからの冷媒の合流によって、その温度が上昇し、図2の点8の状態から点9の状態となる。
そして、合流した冷媒は第2の圧縮要素11Bの吸込側に吸い込まれ、圧縮されて超臨界状態となる(図2の点3の状態)。そして、当該超臨界状態の冷媒は、圧縮機11から吐出され、冷媒吐出管42を経て放熱器12の加熱部12Aに入る。そして当該加熱部12Aを通過する過程で被加熱部12Bを流れる水と熱交換して放熱した後(図2の点4の状態)、配管44を経て分流器13に戻るサイクルを繰り返す。
他方、中間熱交換器15の第2の流路15Bにて放熱した後、当該第2の流路15Bから出たて第2の冷媒流は、配管48を経て膨張弁17を通過する。この膨張弁17を通過する過程で冷媒の圧力が圧力低下し、図2に示す点6の状態となる。その後、冷媒は蒸発器18に流入し、ファン18Fにて送風される空気(外気)と熱交換する。即ち、冷媒は蒸発器18に送風される空気(外気)から吸熱することにより蒸発して、図2に示す点1の状態となる。
このとき、前述したように蒸発器18に入る冷媒(第2の冷媒流)は、中間熱交換器15において第1の冷媒流により冷却された冷媒である。即ち、中間熱交換器15にて第1の冷媒流と第2の冷媒流とを熱交換させることで、冷媒が図2の点4で示す状態から点5に示す状態となり、蒸発器18に入る第2の冷媒流の比エンタルピーを小さくすることができる。これにより、蒸発器18入口の冷媒の状態を図2の点6とすることができるので、蒸発器18におけるエンタルピー差が拡大し、冷凍効果を高めることができるようになる。
そして、蒸発器18にて蒸発した冷媒は、その後、蒸発器18から出て、冷媒導入管40から圧縮機11の低圧部である第1の圧縮要素11Aの吸込側に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
このような冷媒を二つの流れに分流する、スプリットサイクル(二段圧縮一段膨張中間冷却サイクル)では、主冷媒流路を流れる第2の冷媒流を第2冷媒流路を流れる膨張弁14にて減圧された後の第1の冷媒流より低温とすることは勿論できない。また、第2冷媒流路の第1の冷媒流を分岐前の冷媒温度より高く加熱することも不可能である。
ここで、従来のサイクル(即ち、主冷媒流路のみからなるサイクル)において、膨張弁17は、圧縮機11から吐出される冷媒温度に基づき、弁開度が制御されていた。具体的に、膨張弁17の弁開度を縮小すると圧縮機11から吐出される冷媒温度が上昇し、弁開度を拡大すると吐出冷媒温度が低下する。このため、予め圧縮機11から吐出される吐出冷媒温度が所定の値となるような吐出温度目標値を設定して、その目標値に近づくようにコントローラCが膨張弁17の弁開度を制御していた。
ところで、スプリットサイクルでは、中間熱交換器において第1の冷媒流により第2の冷媒流を冷却する効果は、中間熱交換器を流れる第1の冷媒流と第2の冷媒流の量に依存することとなる。このため、膨張弁17の制御に加えて、膨張弁14の制御を行う必要がある。
即ち、第2冷媒流路を流れる第1の冷媒流の流量を多くすると、主冷媒流路の中間熱交換器15の第2の流路15B出口の冷媒比エンタルピーは小さくなる。具体的に、中間熱交換器15における第1の冷媒流と第2の冷媒流の熱交換量を図2を用いて説明すると、中間熱交換器15の第2の流路15Bの入口における第2の冷媒流は点4の状態(このエンタルピーをh4とする)、第2の流路15Bの出口の第2の冷媒流は点5の状態(このエンタルピーをh5とする)であり、第1の流路15Aの入口の第1の冷媒流は点7の状態(このエタンルピーをh7とする)、出口では点8の状態(このエンタルピーをh8とする)であるので、第1の流路15Aを流れる第1の冷媒流の流量をR1、第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流の流量をR2とすると、熱交換量は、
(h4−h5)×R2=(h8−h7)×R1 ・・・(1)式
となる。
ここで、図3に示すように、第2冷媒流路を流れる第1の冷媒流の流量が多いと、中間熱交換器15にて第2の冷媒流を充分に冷却できるので、図3の点5の如く第2の流路15B出口の第2の冷媒流の温度が低くなり、比エンタルピーを小さくできる。この場合、第1の冷媒流の流量が多いため、第1の流路15A出口の第1の冷媒流の比エンタルピーも図3の点8のように低くなる。更に、第1の冷媒流の流量が過剰となると、中間熱交換器15にて第2の冷媒流により第1の冷媒流を充分に加熱することができず、中間熱交換器15出口の第1の冷媒流はガスと液とが混在した2相混合状態となってしまう。この場合、圧縮機から吐出される冷媒の圧力が異常上昇したり、圧縮機から吐出される冷媒の温度が異常に低下する不都合が生じることとなる。更に、圧縮機の中間圧部に湿り状態(ガスと液の混在した二相状態、或いは、液の状態)の冷媒が吸い込まれるため、圧縮機11が液圧縮して、破損する恐れがある。
一方、図4に示すように、第2冷媒流路を流れる第1の冷媒流の流量が少なくなると、中間熱交換器15出口の第1の冷媒流は図4の点8のように温度が高くなる。この場合、中間熱交換器15にて第2の流路15Bを流れる第2の冷媒流の放熱効果が少なくなるので、図4の点5のように第2の冷媒流の温度も高くなる。従って、スプリットサイクルによる性能改善効果も小さくなってしまう。
他方、このようなスプリットサイクルでは、膨張弁14の弁開度が大きく、第1の冷媒流が多い場合には、図11に示すように膨張弁17と吐出温度との関係が逆転する場合がある。図12はこの場合(図11の如く膨張弁17と吐出温度との関係が逆転する場合)のモリエル線図である。図12において、実線は膨張弁17の開度が大きい場合、破線は開度が小さい場合のモリエル線図である。即ち、通常、膨張弁17の弁開度を縮小すると、圧縮機11の吐出冷媒温度が上昇するが、上記のように第1の冷媒流の流量が多い場合には、膨張弁17の弁開度を縮小すると、圧縮機11の吐出冷媒温度が低下するといった逆転関係になる場合がある。これは、第2冷媒流路を流れる第1の冷媒流の流量が比較的多い状態で、膨張弁17の弁開度を小さくすると、第2冷媒流路を流れる第1の冷媒流の流量が更に増加し、その結果、第2冷媒流路から圧縮機11の中間圧部である第2の圧縮要素11Bに流れる第1の冷媒流の比エンタルピーが小さくなり、温度が低下し、或いは、湿り状態となるためである。
このように、主絞り手段である膨張弁17の弁開度と圧縮機11の吐出冷媒温度の関係が逆転すると、高圧圧力が異常上昇したり、圧縮機11から吐出される冷媒温度が異常に低下するといった問題が生じやすくなる。即ち、従来の膨張弁17の制御では、吐出温度が所定の値より低い場合には、膨張弁17の弁開度が縮小されるため、吐出冷媒温度は更に低くなり、高圧圧力は更に上昇してしまう。これにより、吐出温度と吐出温度の目標値と差が大きくなる、即ち、目標値より低い方向に温度の差が広がるため、膨張弁17の弁開度が更に小さくなるよう制御されることとなる。その結果、吐出冷媒温度は更に低くなると共に、高圧圧力の異常上昇を招く問題が生じていた。
更に、放熱器12に流れる水の入水温度が低い場合には、放熱器12の出口の冷媒温度が圧縮機11の中間圧部の圧力に相当する飽和温度に近くなる。この場合、図5に示すように分流器13での分岐前の冷媒温度と膨張弁14による減圧後の第1の冷媒流との温度差が小さくなる。このため、中間熱交換器15において第2の冷媒流を冷却する効果が小さく、第1の冷媒流がガスと液体の混在した2相混合状態、或いは、液の状態で圧縮機11に戻る恐れがある。
このような場合には、スプリットサイクルによる性能向上効果は小さく、異常高圧や液圧縮などの不都合が発生しやすいので、通常のサイクルによる運転を行うことが好ましい。
更にまた、圧縮機11の中間圧部の圧力は、蒸発器18における蒸発圧力(外気温度)、吐出圧力(外気温度、放熱器12にて冷媒と熱交換する水の温度や貯湯タンク31内に貯留する湯の目標温度等)、圧縮機11の容積比等によっても変化する。図6の破線は実線で示す運転から、外気温度のみを上昇させた場合、即ち、図6の波線は、図6の実線と同じ圧縮機(即ち、容積比が同じ圧縮機)を用いて、放熱器12に流れる入水温度も同じとした条件で、外気温度のみを上昇して運転した場合のモリエル線図である。このように、同じ圧縮機で放熱器12に流れる水の入水温度も同じ条件であれば、外気温度が高いほど中間圧力は高くなることがわかる。
このように、外気温度が高い場合にも、異常高圧を来たし易いので、スプリットサイクルによる運転は好ましくない。
従って、上述したように外気温度が高い場合と放熱器12に流れる水の入水温度が低い場合には、スプリットサイクルによる性能向上効果が小さく、安定した運転が困難であるため、スプリットサイクル運転は行わずに、通常のサイクルにより運転することが望ましい。
そこで、本発明では、コントローラCが前述した各温度センサTS1、TS2、TS3TS4、TS5の出力に基づき、ヒートポンプ冷媒回路の膨張弁14及び膨張弁17の弁開度を制御するものとする。先ず、本実施例のコントローラCは、膨張弁17の弁開度を縮小したときに、圧縮機11から吐出された冷媒の温度が上昇するように、膨張弁14の弁開度を制御する。具体的に、コントローラCは、温度センサTS1の出力に基づき、圧縮機11から吐出される冷媒温度が所定の吐出温度目標値となるように膨張弁17の開度を制御すると共に、温度センサTS2及び温度センサTS3の出力に基づき、中間熱交換器15の第1の流路15Aの出口と入口における第1の冷媒流の温度差が所定の温度差目標値となるように膨張弁14の弁開度を制御する。更に、コントローラCは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度が吐出温度目標値より低いときは膨張弁17の弁開度を縮小し、高いときには拡大すると共に、中間熱交換器15の出口と入口における第1の冷媒流の温度差が温度差目標値より小さいときは膨張弁14の開度を縮小し、大きいときには拡大する。尚、図10は本発明の如く膨張弁14及び膨張弁17を制御した場合におけるモリエル線図を示している。図10において実線は膨張弁17の開度が大きいとき、破線は膨張弁17の開度が小さい場合のモリエル線図である。
このように、本発明によれば、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出する温度センサTS1と、中間熱交換器15の入口における第1の冷媒流の温度を検出する温度センサTS2と、中間熱交換器15の出口における第1の冷媒流の温度を検出する温度センサST3とを備えて、上記各温度センサST1〜TS3の出力に基づき、コントローラCにより、圧縮機11から吐出された冷媒の温度が所定の吐出温度目標値となるよう膨張弁17の弁開度を制御すると共に、中間熱交換器の出口と入口における第1の冷媒流の温度差が所定の温度差目標値となるよう膨張弁17の弁開度を制御するので、具体的に、本実施例の如く圧縮機11から吐出された冷媒の温度が吐出温度目標値より低いときは膨張弁17の弁開度を縮小し、高いときには拡大すると共に、中間熱交換器15の出口と入口における第1の冷媒流の温度差が温度差目標値より小さいときは膨張弁14の開度を縮小し、大きいときには拡大するよう制御することで、第1の冷媒流と第2の冷媒流とを最適な流量とすることができる。これにより、スプリットサイクルによる効率改善効果を発揮させることができるようになる。
特に、膨張弁17の弁開度を縮小したときに、圧縮機11から吐出された冷媒の温度が上昇するように、膨張弁14の弁開度を制御することで、膨張弁17の弁開度を縮小した場合に、圧縮機11の吐出冷媒温度が低下するといった膨張弁17と吐出温度との関係が逆転する不都合を未然に回避することができる。
更に、コントローラCは、放熱器12の被加熱部12Bの入口側の配管32に設けられた温度センサTS4と外気温度センサTS5の出力に基づき、温度センサTS4にて検出される放熱器12への入水温度が高い場合、或いは、外気温度センサTS5にて検出される外気温度が高い場合、上述した温度差目標値を拡大する。具体的に、本実施例のコントローラCは図7に示すテーブルを有している。そして、温度センサTS5にて検出される外気温度と温度センサTS4にて検出される入水温度とから図7のテーブルに基づき、温度差目標値を決定し、中間熱交換器15の出口と入口における第1の冷媒流の温度差が当該温度差目標値となるように膨張弁14の弁開度を制御する。
例えば、温度センサTS4にて検出される入水温度が+40℃で、外気温度センサTS5にて検出される外気温度が−7℃である場合、コントローラCは図7のテーブルより温度差目標値(図7に示す目標SP温度差に相当)を5℃に決定する。そして、コントローラCは、温度センサTS3にて検出される中間熱交換器15の出口における第1の冷媒流の温度(中間熱交換器15の出口温度)T8と温度センサTS2にて検出される中間熱交換器15の入口における第1の冷媒流の温度(中間熱交換器15の入口温度)T7との差(T8−T7)が+5℃に近づくように、膨張弁14の弁開度を制御する。一方、外気温度が−7℃で入水温度が+50℃に上昇すると、コントローラCは図7のテーブルより温度差目標値を8℃に決定する。そして、コントローラCは、上記出口温度T8と入口温度T7との差(T8−T7)が+8℃に近づくように膨張弁14を制御する。
他方、入水温度が+50℃で外気温度が+2℃に上昇すると、コントローラCは図7のテーブルにより温度差目標値を9℃に決定する。そして、コントローラCは温度センサTS3にて検出される上記中間熱交換器15の出口温度T8と温度センサTS2にて検出される上記中間熱交換器15の入口温度T7との差(T8−T7)が+9℃に近づくように、膨張弁14の弁開度を制御する。
このように、入水温度が高い場合、又は、外気温度が高い場合に、上述のように温度差目標値を拡大することで、第1の冷媒流と第2の冷媒流とを最適な流量とすることができる。これにより、膨張弁17の開度と吐出温度との関係が逆転する不都合を回避でき、また、サイクル性能を向上させることができる。
更に、スプリットサイクルによる性能向上効果が小さく、安定した運転が困難である場合には、スプリットサイクルによる運転を行わないものとする。具体的に、コントローラCはスプリットサイクルによる性能向上効果が小さく、安定した運転が困難となる条件下、即ち、温度センサTS4にて検出される放熱器12への入水温度が所定の値より低い場合、又は、外気温度センサTS5にて検出される外気温度が所定の値より高い場合には、膨張弁14を全閉として、第1の冷媒流を流さない。
本実施例では、図8に示すように温度センサTS4にて検出される入水温度が所定の値Winである+15℃より低い場合にはコントローラCは膨張弁14を全閉として、スプリットサイクルによる運転を行わないものとする。具体的に、入水温度が+15℃より低い14.9℃以下である場合、コントローラCは外気温度に拘わらず、膨張弁14を全閉とする。これにより、第2冷媒流路に冷媒が流れなくなる。即ち、冷媒は主冷媒流路のみに流れて、通常のサイクルでの運転が行われるようになる。
他方、入水温度が+15℃以上となると、コントローラCは外気温度センサTS5にて検出される外気温度に基づき、膨張弁14の開閉を決定する。本実施例では図8に示すように、所定の値Tgを+10℃として、この値Tg(+10℃)より高いか低いかによって膨張弁14の開閉がコントローラCにより制御されている。具体的に、コントローラCは温度センサST4にて検出される入水温度が+15℃以上であって、外気温度センサTS5にて検出される外気温度が+10℃より高い場合には、膨張弁14を全閉とする。これにより、第2冷媒流路に冷媒が流れないので、冷媒が主冷媒流路のみに流れる通常のサイクルでの運転が行われるようになる。
一方、前記入水温度が+15℃以上であって、且つ、外気温度が+10℃より低い場合には、コントローラCは膨張弁14の全閉状態を解除し、前述した各温度センサによる膨張弁14の開度制御を開始する。これにより、スプリットサイクルによる運転が行われるようになる。
このように、入水温度が所定の値(本実施例では+15℃)より低い場合、又は、外気温度が所定の値(本実施例では+10℃)より高い場合、コントローラCにより膨張弁14を全閉として、第2冷媒流路に第1の冷媒流を流さないので、主冷媒流路のみに冷媒が循環する通常のサイクルによる運転が行われるようになる。これにより、スプリットサイクルでは安定した運転が困難となる条件下に、通常のサイクルによる運転を行うことが可能となる。
総じて、本発明によりヒートポンプ式給湯暖房装置Hの安定した高効率の運転を実現することが可能となる。