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JP5158436B2 - 抗菌剤およびその製造方法、化粧料ならびに医薬品 - Google Patents

抗菌剤およびその製造方法、化粧料ならびに医薬品 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌剤に関する。さらに詳しくは、化粧料(医薬部外品を含む)や医薬品などの分野において、抗菌活性を発現させるのに好適な抗菌剤およびその製造方法ならびに該抗菌剤を含有する化粧料および医薬品に関する。
皮膚などにおける感染症および炎症や、腋臭などを抑制するための化粧料および医薬品として、その原因菌をはじめとする種々の菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤を含有する化粧料および医薬品が知られている。また、前記抗菌剤は、化粧料および医薬品の防腐剤としても利用されている。かかる抗菌剤として、リゾチームおよびトリクロサンが知られている。
前記化粧料および医薬品として、リゾチームまたはトリクロサンを含む化粧料および医薬品が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、前記化粧料および医薬品は、抗菌スペクトルが狭く、適用箇所や適用症例によっては、十分な抗菌効果を得ることができないという欠点を有する。また、前記リゾチームまたはトリクロサンは、抗菌スペクトルが狭いことから、かかるリゾチームまたはトリクロサンを含む化粧料および医薬品は、十分な防腐性を得ることができないという欠点を有する。
そこで、より高い抗菌効果を得る試みとして、リゾチームおよびトリクロサンの両方を含む抗菌剤を含有する化粧料および医薬品が提案されている(例えば、特許文献6〜8参照)。しかしながら、リゾチームは、水溶性のタンパク質であるのに対し、トリクロサンは、疎水性の化合物であることから、前記化粧料または医薬品は、当該化粧料または医薬品を水性製剤として製剤化した場合、トリクロサンが製剤中に溶解しないか、あるいは経時的にトリクロサンが析出するという欠点を有する。
特開2003−226652号公報 特開2008−156268号公報 特開2007−145749号公報 特開2008−110992号公報 特開2008−138027号公報 特開2004−189633号公報(段落番号〔0025〕、〔0027〕) 特開2007−145750号公報(段落番号〔0037〕) 特開2007−145771号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、リゾチームおよびトリクロサンと比べて、相乗的に増強された抗菌活性を発現するとともに、より広い抗菌スペクトルを示し、水に対する高い溶解性を有する抗菌剤を提供することを目的とする。また、本発明は、前記抗菌剤を簡便に製造することができる抗菌剤の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、感染症、炎症、腋臭などの原因となる種々の細菌に対して高い抗菌活性を発現し、前記感染症、炎症、腋臭などを抑制することができ、高い防腐性をも有する化粧料および医薬品を提供することを目的とする。
本発明は、
(1)リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥させた乾燥物を含有する抗菌剤、
(2)リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥させることを特徴とする抗菌剤の製造方法、
(3)溶液の乾燥を、凍結乾燥、噴霧乾燥または減圧乾燥によって行なう前記(2)に記載の製造方法、ならびに
(4)前記(1)に記載の抗菌剤を含有する化粧料または医薬品
に関する。
本発明の抗菌剤は、リゾチームおよびトリクロサンと比べて、相乗的に増強された抗菌活性を発現するとともに、より広い抗菌スペクトルを示し、水に対する高い溶解性を有するという優れた効果を奏する。また、本発明の抗菌剤の製造方法は、前記抗菌剤を簡便に製造することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の化粧料および医薬品は、感染症、炎症、腋臭などの原因となる種々の細菌に対して高い抗菌活性を発現し、前記感染症、炎症、腋臭などを抑制することができ、高い防腐性をも有するという優れた効果を奏する。
本発明の抗菌剤は、リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥させた乾燥物を含有する。前記乾燥物では、リゾチームおよびトリクロサンをただ単に含む混合物と異なり、後述の実施例に示すように、リゾチームとトリクロサンとの複合体が形成されている。本発明者らは、このようなリゾチームとトリクロサンとの複合体の形成に関する報告例を現在のところ発見していない。
リゾチームは、細菌細胞膜の構成成分である多糖類の加水分解酵素である。リゾチームは、溶菌作用、抗炎症作用、止血作用、組織修復作用などを有している。リゾチームとしては、例えば、ヒトリゾチーム、卵白リゾチーム、魚類体表粘液のリゾチーム、微生物のリゾチーム、バクテリオファージリゾチームなどが挙げられる。これらのなかでは、安価に調製することができることから、卵白リゾチームが好ましい。卵白リゾチームのなかでは、安価に調製することができることから、鶏卵の卵白リゾチームが好ましい。リゾチームは、薬学的に許容される塩であってもよい。リゾチームの塩としては、例えば、リゾチーム塩酸塩などが挙げられる。
トリクロサンは、2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルなる化学名の殺菌剤である。トリクロサンは、例えば、チバ・スペシャル・ケミカルズ社から商品名:イルガサンDP−300などとして、容易に入手することができる。
前記乾燥物は、トリクロサンおよびリゾチームを含む溶液を乾燥させることによって得られる。したがって、本発明の抗菌剤は、前記乾燥物を含有するものであるので、簡便に製造することができる。
リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液は、例えば、リゾチームの生理学的活性を維持するのに適した溶媒にリゾチームを溶解させたリゾチーム溶液と、トリクロサンを溶解させるのに適した溶媒にトリクロサンを溶解させたトリクロサン溶液とを混合することにより、得ることができる。
リゾチームの生理学的活性を維持するのに適した溶媒としては、例えば、水、エタノールなどが挙げられ、これらは、それぞれ、単独でまたは併用することができる。これらのなかでは、リゾチームを良好な状態で維持する観点から、水が好ましい。前記溶媒が水である場合、水は、リゾチームとトリクロサンとの複合体の形成を良好に行なう観点から、弱アルカリ性を有することが好ましい。前記水のpHは、リゾチームとトリクロサンとの複合体の形成を良好に行なうとともに、リゾチームの生理学的活性を十分に発現させる観点から、好ましくは7.5以上、より好ましくは8以上であり、リゾチームとトリクロサンとの複合体の形成を良好に行なうとともに、リゾチームの立体構造の安定性を維持する観点から、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。
リゾチーム溶液中におけるリゾチームの含有量は、乾燥物による抗菌活性を発現させるのに十分な量であればよく、一概には決定することができないが、通常、抗菌剤の生産性を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、溶媒への溶解性を高める観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
トリクロサンを溶解させるのに適した溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜3の低級アルコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの炭素数2〜4の多価アルコールなどが挙げられる。これらのなかでは、トリクロサンを十分に溶解させ、かつリゾチーム溶液とトリクロサン溶液とを混合した際に、リゾチームを良好な状態で維持する観点およびリゾチームとトリクロサンとを含む溶液の乾燥を容易に行なう観点から、エタノールが好ましい。
トリクロサン溶液中におけるトリクロサンの含有量は、乾燥物による抗菌活性を発現させるのに十分な量であればよく、一概に決定することができないが、通常、抗菌剤の生産性を高める観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、溶媒への溶解性を高める観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
トリクロサン溶液とリゾチーム溶液との混合に際し、トリクロサンとリゾチームとのモル比(トリクロサン/リゾチーム)は、高い抗菌活性を発現させる観点から、好ましくは5/1以上、より好ましくは10/1以上であり、トリクロサン溶液とリゾチーム溶液との相溶性を高める観点から、好ましくは50/1以下、より好ましくは30/1以下である。
トリクロサン溶液とリゾチーム溶液とを混合する際の温度は、トリクロサンおよびリゾチームを溶液中に十分に溶解させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上であり、リゾチームを良好な状態で維持する観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
なお、トリクロサン溶液とリゾチーム溶液との混合は、撹拌下で行なうことが好ましい。トリクロサン溶液とリゾチーム溶液とを混合撹拌するのに要する時間は、トリクロサンとリゾチームとを複合体化させるのに十分な時間であればよく、一概には決定することができないが、通常、好ましくは1〜48時間、より好ましくは5〜30時間程度である。
リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥させる方法は、リゾチームの生理学的活性を維持することができる方法であれば特に限定されない。前記溶液の乾燥は、リゾチームの生理学的活性を維持することができる温度で前記溶液を乾燥させる観点から、凍結乾燥(フリーズドライ)、噴霧乾燥(スプレードライ)または減圧乾燥により行なうことが好ましい。
前記溶液の乾燥は、例えば、乾燥物中の残存溶媒量が1質量%程度以下となるまで行なうことが好ましい。前記溶液の乾燥により、例えば、粉末の形態で、乾燥物を得ることができる。
前記溶液の凍結乾燥は、例えば、前記溶液を凍結させた後、前記溶液の凍結物を減圧下に乾燥させることなどにより行なうことができる。前記溶液の凍結乾燥は、例えば、真空凍結乾燥機を用いて行なうことができる。
前記凍結乾燥において、溶液を凍結させる際の温度は、トリクロサン溶液に用いられている溶媒とリゾチーム溶液に用いられている溶媒との混合物の凝固点以下の温度であればよく、用いられる溶媒の種類に応じて適宜決定される。例えば、トリクロサン溶液に用いられる溶媒がエタノールであり、リゾチーム溶液に用いられる溶媒が水である場合、前記溶液を凍結させる際の温度は、前記溶液におけるエタノールの濃度により異なるが、エタノールの凝固点まで冷却すれば、エタノールと水との混合物を十分に凍結することができることから、最も低温でも−115℃程度まで冷却すれば十分である。
前記溶液の凍結物を乾燥させる際の減圧度は、前記溶液の乾燥を迅速に行なう観点から、好ましくは10000Pa以下、より好ましくは5000Pa以下であればよく、減圧度の下限は、用いる装置の性能に委ねられるので、特に限定されるものではない。
前記溶液の噴霧乾燥は、例えば、前記溶液を、リゾチームの生理学的活性を維持することができる温度に保たれた空間に噴霧し、乾燥させることなどにより行なうことができる。前記溶液の噴霧乾燥は、例えば、噴霧乾燥機を用いて行なうことができる。
前記噴霧乾燥において、溶液を噴霧する際の雰囲気の温度は、リゾチームの熱に対する安定性の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下であり、噴霧乾燥を短時間で行なう観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上である。
また、前記噴霧乾燥において、溶液の噴霧速度は、得られる乾燥物の粒径に応じて、適宜設定することができる。
前記溶液の減圧乾燥は、例えば、前記溶液を、リゾチームの生理学的活性を維持することができる温度で、かつ減圧下で乾燥させることなどにより行なうことができる。前記溶液の減圧乾燥は、例えば、減圧乾燥機を用いて行なうことができる。
前記減圧乾燥において、前記溶液を乾燥させる際の温度は、前記噴霧乾燥での溶液を噴霧する際の雰囲気の温度と同様であればよい。
前記減圧乾燥において、前記溶液を乾燥させる際の減圧度は、前記凍結乾燥における減圧度と同様であればよい。
本発明の抗菌剤は、このようにして得られた乾燥物、すなわちリゾチームとトリクロサンとの複合体を含有するものである。
本発明の抗菌剤中における乾燥物の含有量は、抗菌剤としての機能を発現させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。本発明の抗菌剤は、乾燥物のみからなるものであってもよい。また、本発明の抗菌剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、例えば、水、エタノール、1,3−ブチレングリコールなどの溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤などの助剤を含有していてもよい。
本発明の抗菌剤は、リゾチームおよびトリクロサンと比べて、相乗的に増強された抗菌活性を発現するとともに、より広い抗菌スペクトルを示し、水に対する高い溶解性を有する。したがって、本発明の抗菌剤は、水性の化粧料などの種々の剤型の化粧料や、水性の医薬品などの種々の剤型の医薬品に配合して使用することができる。
化粧料の具体例としては、デオドラント剤、化粧水、香水、洗顔クリーム、洗顔フォーム、殺菌洗浄剤、マッサージクリーム、保湿クリーム、日焼け止めクリーム、養毛剤、ヘアクリーム、ヘアトニック、セットローション、シャンプー、リンス、パーマネントウェーブ液、ハンドクリーム、口紅、ファンデーション、洗口液などが挙げられる。
本発明の化粧料中における前記抗菌剤の含有量は、抗菌活性を十分に発現させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、皮膚刺激などを抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
本発明の化粧料は、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、例えば、安定化剤、増粘剤、保湿剤、界面活性剤、粉体、ビタミン類などの薬剤、動物エキス、植物エキス、pH調整剤、着色剤、その他の殺菌成分、制汗成分、消臭成分、油脂、低級アルコール、多価アルコール、水などを適宜含有していてもよい。
医薬品としては、例えば、にきび治療薬、うがい薬、外用クリームなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の医薬品中における前記抗菌剤の含有量は、抗菌活性を十分に発現させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、適用箇所への刺激などを抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
本発明の医薬品は、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、薬学的に許容されうる助剤、賦形剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、等張剤などを適宜含有していてもよい。
つぎに、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜3
鶏卵の卵白リゾチーム〔インノバテック・ラボラトリーズ・インコーポレティッド(Innovatech Labs, Inc)製〕をpH9.0の蒸留水に溶解させ、1質量%リゾチーム水溶液を得た。得られたリゾチーム水溶液に、リゾチーム1モルあたりのトリクロサン量が10モル(実施例1)、15モル(実施例2)または30モル(実施例3)となるように、20質量%トリクロサンのエタノール溶液(以下、「トリクロサンエタノール溶液」という)を添加し、リゾチームとトリクロサンとを含む溶液を得た。
得られた各溶液を29℃で24時間攪拌した後、それぞれ、凍結乾燥機〔東京理化機器(株)製、商品名:FDU−540〕に供して、凍結乾燥させ、凍結乾燥物を得た。得られた凍結乾燥物を実施例1〜3の抗菌剤とした。
実施例4〜6
実施例1〜3で得られた各抗菌剤0.1gを、それぞれ、蒸留水100mLに溶解させた。得られた各水溶液を4℃で72時間、水1Lに対して透析した後、再び凍結乾燥させ、凍結乾燥物を得た。得られた凍結乾燥物をそれぞれ順に実施例4〜6の抗菌剤とした。
実施例7
鶏卵の卵白リゾチーム〔インノバテック・ラボラトリーズ・インコーポレティッド(Innovatech Labs, Inc)製〕をpH9.0の蒸留水に溶解させ、1質量%リゾチーム水溶液を得た。得られたリゾチーム水溶液に、リゾチーム1モルあたりのトリクロサン量が10モルとなるように、前記トリクロサンエタノール溶液を添加し、リゾチームとトリクロサンとを含む溶液を得た。
得られた溶液を29℃で24時間攪拌した後、噴霧乾燥装置に供して、60℃の雰囲気下の条件で噴霧乾燥させ、噴霧乾燥物を得た。得られた噴霧乾燥物を実施例7の抗菌剤とした。
実施例8
鶏卵の卵白リゾチーム〔インノバテック・ラボラトリーズ・インコーポレティッド(Innovatech Labs, Inc)製〕をpH9.0の蒸留水に溶解させ、1質量%リゾチーム水溶液を得た。得られたリゾチーム水溶液に、リゾチーム1モルあたりのトリクロサン量が10モルとなるように、前記トリクロサンエタノール溶液を添加し、溶液を得た。得られた溶液を29℃で24時間攪拌した後、減圧乾燥装置に供して、40℃の雰囲気下で減圧乾燥させ、減圧乾燥物を得た。得られた減圧乾燥物を実施例8の抗菌剤とした。
比較例1〜3
鶏卵の卵白リゾチーム〔インノバテック・ラボラトリーズ・インコーポレティッド(Innovatech Labs, Inc)製〕をpH9.0の蒸留水に溶解させ、1質量%リゾチーム水溶液を得た。得られたリゾチーム水溶液に、リゾチーム1モルあたりのトリクロサン量が10モル(比較例1)、15モル(比較例2)または30モル(比較例3)となるように前記トリクロサンエタノール溶液を添加し、溶液を得た。
得られた各溶液を4℃で72時間、蒸留水に対して透析し、比較例1〜3の透析産物を得た。
比較例4
鶏卵の卵白リゾチーム〔インノバテック・ラボラトリーズ・インコーポレティッド(Innovatech Labs, Inc)製〕をpH9.0の蒸留水に溶解させ、1質量%リゾチーム水溶液を得た。得られたリゾチーム水溶液に、リゾチーム1モルあたりのトリクロサン量が10モルとなるように前記トリクロサンエタノール溶液を添加し、溶液を得た。得られた溶液を比較例4の抗菌剤とした。
試験例1(吸光度および濁度の測定)
(1)評価用試料の調製
実施例1〜6で得られた各抗菌剤または比較例1〜3で得られた各透析産物を、タンパク質(リゾチーム)濃度が0.5mg/mLとなるように、超純水(ミリポア社製、超純水製造装置「ミリQ」でつくられた超純水)に溶解させ、評価用試料を得た。なお、タンパク質濃度は、ブラッドフォード(Bradford)タンパク質アッセイ〔バイオ・ラド(Bio-Rad)社製、タンパク質アッセイキット〕を用いて定量した。
また、実施例1〜6および比較例1〜3において、トリクロサンエタノール溶液の代わりにエタノールをリゾチーム水溶液に添加することを除き、各実施例および各比較例と同様の操作を行ない、対照リゾチーム試料〔トリクロサン/リゾチーム(モル比)が0/1〕を調製した。
実施例1〜3で得られた各抗菌剤の評価用試料におけるトリクロサン濃度(実施例1:0.35μmol/mL、実施例2:0.53μmol/mLまたは実施例3:1.05μmol/mL)と同濃度となるようにトリクロサンをエタノールに溶解させ、試料を調製した。得られた試料を、「TCS(EtOH)」と総称する。
実施例1〜3で得られた各抗菌剤の評価用試料におけるトリクロサン濃度(実施例1:0.35μmol/mL、実施例2:0.53μmol/mLまたは実施例3:1.05μmol/mL)と同濃度となるようにトリクロサンを水に添加し、試料を調製した。得られた試料を、「TCS(H2O)」と総称する。
(2)吸光度の測定
実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、波長280nmでの吸光度を測定し、トリクロサンが紫外線の波長領域の光を吸収することを利用して、トリクロサンとリゾチームとの間の相互作用を評価した。具体的には、以下のとおりである。
分光光度計〔バイオ−ラッド(Bio-Rad)社製、商品名:SmartSpec-3000〕を用いて、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、波長280nmでの吸光度を測定した。実施例1〜6で得られた各抗菌剤および比較例1〜3で得られた各透析産物それぞれにおけるトリクロサンの吸光度は、波長280nmでの実施例1〜6の各抗菌剤の評価用試料および比較例1〜3の各透析産物の評価用試料それぞれの吸光度の測定値から、前記対照リゾチーム試料の吸光度の測定値を減算することによって求めた。
実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、波長280nmでの吸光度を測定した結果を表1および図1(A)に示す。
表1中、TCS−LZは実施例1〜3で得られた抗菌剤の評価用試料の総称、TCS−LZ−cdは実施例4〜6で得られた抗菌剤の評価用試料の総称、TCS−LZ−dは比較例1〜3で得られた透析産物の評価用試料の総称を示す。
また、図1(A)中、矩形はTCS(EtOH)の吸光度、黒四角はTCS(H2O)の吸光度、黒丸はTCS−LZの吸光度、白四角はTCS−LZ−cdの吸光度、白三角はTCS−LZ−dの吸光度を示す。なお、表1および図1(A)中、トリクロサン/リゾチーム(モル比)が0/1のときの吸光度は、対照リゾチーム試料の吸光度を示している。
実施例1〜3で得られた各抗菌剤は、TCS(H2O)およびTCS(EtOH)と同量のトリクロサンを含んでいるため、通常、TCS−LZの吸光度は、TCS(H2O)およびTCS(EtOH)それぞれと同程度の吸光度となると考えられる。しかしながら、表1および図1(A)に示された結果から、TCS−LZの吸光度は、TCS(H2O)およびTCS(EtOH)それぞれの吸光度と比べて低下していることがわかる。したがって、実施例1〜3で得られた各抗菌剤である凍結乾燥物においては、トリクロサンとリゾチームとの複合体が形成されていることが示唆される。
一方、表1および図1(A)に示された結果から、TCS−LZ−dの吸光度は、ほぼ0であり、トリクロサンに基づく紫外線の波長領域の光の吸収が見られないため、透析を行なうことによって、トリクロサンとリゾチームとを含む溶液から、トリクロサンが除去されていることがわかる。これらの結果から、トリクロサンとリゾチームとの複合体化は、溶媒を除去する乾燥によって起こることが示唆される。
しかしながら、乾燥後、さらに透析した凍結乾燥物である実施例4〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料も、トリクロサン/リゾチーム(モル比)の増加に伴い、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の評価用試料と同様の吸光度の変化を示しているため、トリクロサンとリゾチームとの複合体を一旦形成すると、形成されたトリクロサンとリゾチームとの複合体は、高い安定性を示すことがわかる。
(3)濁度の測定
実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、波長500nmでの吸光度を測定することにより、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、水に対する溶解性を評価した。具体的には、以下のとおりである。
分光光度計〔バイオ−ラッド(Bio-Rad)社製、商品名:SmartSpec-3000〕を用いて、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれについて、波長500nmでの吸光度を測定した。実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれの濁度(波長500nmでの吸光度)を測定した結果を表2および図1(B)に示す。図1(B)中、矩形、黒四角、黒丸、白四角および白三角は、それぞれ、図1(A)と同様である。なお、表2および図1(B)中、トリクロサン/リゾチーム(モル比)が0/1のときの吸光度は、対照リゾチーム試料の吸光度を示している。
表2および図1(B)に示された結果から、TCS(H2O)の濁度は、トリクロサン濃度の増加に伴って上昇するが、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料の濁度は、トリクロサン/リゾチーム(モル比)が増加しても、TCS(EtOH)の濁度と同様に変化しないことがわかる。したがって、トリクロサンとリゾチームとを含む溶液を凍結乾燥させた凍結乾燥物は、水に対して高い溶解性を示すことがわかる。
試験例2(蛍光スペクトルの測定)
実施例1〜6で得られた各抗菌剤または比較例1〜3で得られた各透析産物を、タンパク質(リゾチーム)濃度が0.1mg/mLとなるように、それぞれ、25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶解させ、実施例1〜6で得られた各抗菌剤または比較例1〜3で得られた各透析産物の測定用試料を得た。また、タンパク質(リゾチーム)濃度が0.1mg/mLとなるように、リゾチームを25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶解させて、対照リゾチーム溶液を得た。さらに、トリクロサン濃度が、測定用試料中の実施例1〜3で得られた各抗菌剤におけるトリクロサン濃度と同濃度となるように、トリクロサンを25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に添加して、混合し、対照トリクロサン試料を得た。
得られた測定用試料を0.5cm角のキュベットに入れ、蛍光分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:JASCO FP-6600〕を用いて、25℃で200mm/minの速度で、トリプトファン残基の蛍光が励起する励起波長285nm(帯域幅5nm)での発光波長300〜400nmの測定用試料の蛍光スペクトルを測定した。
実施例1〜3で得られた各抗菌剤の測定用試料、対照リゾチーム溶液および対照トリクロサン試料それぞれの蛍光スペクトルを図2(A)に示す。実施例4〜6で得られた各抗菌剤の測定用試料および対照リゾチーム溶液それぞれの蛍光スペクトルを図2(B)に示す。比較例1〜3で得られた各透析産物の測定用試料および対照リゾチーム溶液それぞれの蛍光スペクトルを図2(C)に示す。図中、cLZは、対照リゾチーム溶液、cTCS10、cTCS15およびcTCS30は、それぞれ順に、トリクロサン濃度が0.07μmol/mL、0.11μmol/mLおよび0.21μmol/mLである対照トリクロサン試料を示す。
トリプトファン残基の蛍光は、トリプトファン残基が疎水性環境に埋もれると、通常、最大蛍光強度(FImax)が上昇し、吸収極大の波長(λmax)が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。図2(A)に示された結果から、対照リゾチーム溶液の測定用試料の蛍光発光スペクトルは、最大波長347nmの鋭いピークと、部分的に無極性環境に埋もれたトリプトファン残基に典型的な急勾配の波長端部とを示していることがわかる。ところが、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の測定用試料の蛍光スペクトルは、それぞれ、波長346.4nm、346nmおよび345nmにピーク(ブルーシフト)が見られ、トリクロサン/リゾチーム(モル比)の増加に伴って、吸収極大波長の蛍光強度が上昇することがわかる。
また、図2(B)に示された結果から、実施例4〜6で得られた各抗菌剤の測定用試料の蛍光スペクトルは、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の測定試料の蛍光スペクトルと同様の傾向を示していることがわかる。これらの結果から、トリクロサンとリゾチームとを含む溶液を乾燥させて溶媒を除去することにより、リゾチーム中のトリプトファン残基が、より一層無極性環境に埋もれた状態となることが示唆される。
なお、図2(A)に示された結果から、対照トリクロサン試料の蛍光スペクトルには、タンパク質の波長領域に無視することができる程度のピークしか認められなかった。したがって、これらの結果から、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の測定用試料の蛍光スペクトルにおける吸収極大波長の蛍光強度の上昇は、基底状態の複合体の形成を示し、励起状態の寿命の間に、疎水性消光剤であるトリクロサンと蛍光を発生するトリプトファン残基とが接触することに起因することが示唆される。また、フェノール化合物がトリプトファン残基などのタンパク質中の芳香族残基とπ-π相互作用を生じるため、前記吸収極大波長の蛍光強度の上昇は、π-π結合による非共有結合を介したトリクロサンのフェノール基とリゾチーム中のトリプトファン残基との相互作用に起因することが示唆される。
また、図2(C)に示された結果から、リゾチームとトリクロサンとを単に混合しただけの溶液を透析した比較例1〜3で得られた各透析産物の測定用試料の蛍光スペクトルは、対照リゾチーム溶液の蛍光スペクトルと比べて、吸収極大波長の蛍光強度の上昇やピークのシフトが見られず、吸収極大波長における蛍光強度がわずかに消失しているものの、対照リゾチーム溶液の蛍光スペクトルと同様であることがわかる。これらの結果から、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の測定用試料の蛍光スペクトルにおける吸収極大波長の蛍光強度の上昇は、リゾチームとトリクロサンとの相互作用に加えて、リゾチームのトリプトファン残基のインドール側鎖が、より疎水性の環境、すなわちリゾチーム分子内に位置することに起因することが示唆される。
試験例3(電気泳動解析)
トリクロサンとの相互作用によるリゾチーム分子の立体構造への影響を評価するために、変性ゲルおよび非変性ゲルを用いて、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の電気泳動解析を行った。
実施例1〜3で得られた各抗菌剤を、ラエムリ(Laemmli)法に準じて、非還元状態または還元状態で、0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む4〜15質量%ポリアクリルアミドゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、非還元SDS−PAGEまたは還元SDS−PAGEという)を実施した。タンパク質バンドは、クーマシーブリリアントブルーR−250(CBB)で染色した。
還元SDS−PAGEの結果を図3(A)の図面代用写真に示す。また、非還元SDS−PAGEの結果を図3(B)の図面代用写真に示す。図中、「Mr」は分子量マーカー、「C」はリゾチーム単体、「10」は実施例1で得られた抗菌剤、「15」は実施例2で得られた抗菌剤、「30」は実施例3で得られた抗菌剤を示す。
また、実施例1〜3で得られた各抗菌剤を、ルイスらの方法に準じて、15質量%未変性ポリアクリルアミドゲル(pH4.5)上で、酸性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、酸性PAGEという)を行なった。タンパク質バンドはCBBで染色した。酸性PAGEの結果を図3(C)の図面代用写真に示す。図中、「N」は天然型リゾチーム、「C」はリゾチーム単体、「10」は実施例1で得られた抗菌剤、「15」は実施例2で得られた抗菌剤、「30」は実施例3で得られた抗菌剤を示す。
図3(A)および図3(B)に示された結果から、還元SDS−PAGEおよび非還元SDS−PAGEのいずれにおいても、電気泳動パターンや、リゾチームを含む画分に対応するバンドの移動度に違いがないことがわかる。また、図3(C)に示された結果から、トリクロサン/リゾチーム(モル比)の値が増加しても、タンパク質バンドの移動度に変化が見られないことがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1〜3で得られた各抗菌剤においては、トリクロサンによるリゾチーム分子の重合や断片化が生じておらず、トリクロサンは、リゾチーム分子の立体構造に影響を及ぼさないことが示唆される。
試験例4(抗菌活性試験1)
液体ブロス法によって、実施例1〜3で得られた各抗菌剤による細菌に対する抗菌活性試験を、以下のように行なった。供試細菌として、グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス オウレウス〔Staphylococcus aureus (NBRC 14462)〕、スタフィロコッカス エピデルミディス〔Staphylococcus epidermidis (ATCC 12228)〕、およびストレプトコッカス ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)の野生株ならびにグラム陰性細菌であるエシェリヒア コリ〔Escherichia coli (NBRC 3301)〕およびシュードモナス エルギノーサ〔Pseudomonas aeruginosa (ATCC 27853)〕を用いた。なお、スタフィロコッカス エピデルミディスおよびシュードモナス エルギノーサは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手した。スタフィロコッカス オウレウスおよびエシェリヒア コリは、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門から入手した。ストレプトコッカス ズーエピデミカスの野生株は、スイス・チューリッヒの動物病院細菌学研究所から入手した。
ブレインハートインフュージョン培地〔日水製薬(株)製〕で増殖させた対数増殖期の細胞を洗浄した後、10〜1014コロニー形成単位(CFU)/mLとなるように、1質量%トリプティケースソイブロス(TSB)〔日水製薬(株)製、pH7.3〕に再懸濁させ、各細菌の再懸濁ブロスを得た。
被験物質として、実施例1〜3で得られた各抗菌剤またはリゾチーム単体を、表3〜7に示されるタンパク質濃度の2倍の濃度となるように、前記1質量%TSBに添加し、混合溶液を得た。つぎに、得られた各混合溶液と、前記混合溶液と等量の前記再懸濁ブロスとを混合して、表3〜7に示される種々のタンパク質濃度の細菌混合物を得た。得られた各細菌混合物を30℃で2時間または24時間インキュベーションした。
また、被験物質として、トリクロサン単体を、実施例1〜3で得られた各抗菌剤を含む細菌混合物におけるトリクロサン濃度の2倍濃度となるように、前記1質量%TSBに添加し、混合溶液を得た。つぎに、得られた各混合溶液と等量の前記再懸濁ブロスとを混合して、細菌混合物を得た。得られた各細菌混合物を30℃で2時間または24時間インキュベーションした。実施例1で得られた抗菌剤を含む細菌混合物におけるトリクロサン濃度と同濃度の細菌混合物をTCS10、実施例2で得られた抗菌剤を含む細菌混合物におけるトリクロサン濃度と同濃度の細菌混合物をTCS15、および実施例3で得られた抗菌剤を含む細菌混合物におけるトリクロサン濃度と同濃度の細菌混合物をTCS30という。
また、被験物質を添加せずに前記と同様にしてインキュベーションして、タンパク質濃度「0」の対照細菌混合物を得た。インキュベーション後の各細菌混合物30μLまたは対照細菌混合物30μLを生理食塩水で10倍段階希釈して得られた希釈物を、それぞれ、普通寒天平板培地〔日水製薬(株)製、商品名:コンパクトドライ「ニッスイ」〕に塗抹した。普通寒天平板培地に塗抹した各細菌混合物または対照細菌混合物を37℃で18時間インキュベーションした後、コロニー形成単位(CFU)を測定し、各細菌混合物または対照細菌混合物の生菌数(logCFU/mL培地)を算出した。なお、抗菌活性試験は、それぞれ3回行なった。また、生菌数は、各試験の結果の平均値とした。
グラム陽性細菌を実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後の生菌数を表3〜5に示す。表3は実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後のスタフィロコッカス オウレウスの生菌数、表4は実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後のスタフィロコッカス エピデルミディスの生菌数、表5は実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後のストレプトコッカス ズーエピデミカスの生菌数をそれぞれ示す。また、グラム陰性細菌を実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後の生菌数を調べた結果を表6〜7に示す。表6は実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後のエシェリヒア コリの生菌数、表7は実施例1〜3で得られた各抗菌剤、リゾチーム単体またはトリクロサン単体とともにインキュベーションした後のシュードモナス エルギノーサの生菌数をそれぞれ示す。なお、表3〜7では、TCS10におけるトリクロサン濃度と実施例1で得られた抗菌剤を含む細菌混合物中のトリクロサン濃度、TCS15におけるトリクロサン濃度と実施例2で得られた抗菌剤を含む細菌混合物中のトリクロサン濃度、およびTCS30におけるトリクロサン濃度と実施例3で得られた抗菌剤を含む細菌混合物中のトリクロサン濃度が、それぞれ対応するように、TCS10、TCS15またはTCS30における生菌数を表示している。
表3〜5に示された結果から、実施例1〜3で得られた各抗菌剤は、リゾチーム単体およびトリクロサン単体と比べて、グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス オウレウスに対して、強い抗菌活性を示すことがわかる。特に、リゾチーム単体およびトリクロサン単体は、いずれも、スタフィロコッカス エピデルミディスおよびストレプトコッカス ズーエピデミカスに対する抗菌活性が低いが、実施例1〜3で得られた各抗菌剤は、強い抗菌活性を示すことがわかる。また、表6〜7に示された結果から、実施例1〜3で得られた各抗菌剤は、リゾチーム単体およびトリクロサン単体それぞれと比べて、グラム陰性細菌であるエシェリヒア コリおよびシュードモナス エルギノーサそれぞれに対して、強い抗菌活性を示すことがわかる。これらの結果から、実施例1〜3で得られた各抗菌剤は、リゾチーム単体およびトリクロサン単体それぞれでは得ることができない広い抗菌スペクトルを示し、かつ強い抗菌活性を有することがわかる。
試験例5(抗菌活性試験2)
実施例1〜3で得られた各抗菌剤またはリゾチーム単体に代えて、実施例1で得られた抗菌剤または比較例4で得られた抗菌剤を用いて、タンパク質濃度が60μg/mLである細菌混合物を得たことを除き、試験例4と同様にして、実施例1で得られた抗菌剤および比較例4で得られた抗菌剤それぞれによるグラム陽性細菌であるスタフィロコッカス エピデルミディスおよびグラム陰性細菌であるエシェリヒア コリそれぞれに対する抗菌活性試験を行なった。
スタフィロコッカス エピデルミディスおよびエシェリヒア コリそれぞれを、実施例1で得られた各抗菌剤または比較例4で得られた抗菌剤とともにインキュベーションした後の生菌数を調べた結果を表8に示す。
表8に示される結果から、実施例1で得られた抗菌剤は、リゾチームとトリクロサンとを単に混合しただけの抗菌剤(比較例4)と比べて、グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス エピデルミディスおよびグラム陰性細菌であるエシェリヒア コリのいずれに対しても、強い抗菌活性を示すことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた抗菌剤は、リゾチームとトリクロサンとを単に混合しただけでは得ることができない強い抗菌活性を有することがわかる。
処方例
以下、本発明の化粧料または医薬品の処方例を示す。
(処方例1:液体防臭剤)
成分 質量%
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2.0
エタノール 30.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
実施例1で得られた抗菌剤 0.4
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
(オキシエチレン基平均付加モル数50)
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
(処方例2:消臭スプレー)
成分 質量%
精製水 30.0
エタノール 20.0
実施例2で得られた抗菌剤 0.3
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ジメチルエーテル 49.6
合計 100.0
(処方例3:ロールオンデオドラント)
成分 質量%
エタノール 30.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
(オキシエチレン基平均付加モル数40)
クロロヒドロキシアルミニウム 10.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 41.4
実施例3で得られた抗菌剤 0.3
イソプロピルメチルフェノール 0.1
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
(処方例4:ニキビ用クリーム)
成分 質量%
ステアリルアルコール 8.0
ステアリン酸 3.0
精製ラノリン 6.0
実施例1で得られた抗菌剤 0.4
グリセリン 3.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
(処方例5:ニキビ用化粧水)
成分 質量%
1,3−ブチレングリコール 4.0
グリセリン 3.0
エタノール 10.0
ポリオキシエチレンオレイルエーテル 1.0
(オキシエチレン基平均付加モル数20)
実施例7で得られた抗菌剤 0.3
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
(処方例6:固形白粉)
成分 質量%
セリサイト 15.0
カオリン 10.0
二酸化チタン 5.0
ミリスチン酸亜鉛 5.0
炭酸マグネシウム 5.0
スクワラン 3.0
トリイソオクタン酸グリセリン 2.0
実施例3で得られた抗菌剤 0.3
着色顔料 適量
香料 適量
タルク 残部
合計 100.0
(処方例7:ヘアトニック)
成分 質量%
パントテニルエチルエーテル 0.2
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンテトラデシルエーテル 0.5
(オキシエチレン基平均付加モル数20,オキシプロピレン基平均付加モル数6)
実施例8で得られた抗菌剤 0.5
エタノール 40.0
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
(A)は、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれの波長280nmでの吸光度を調べた結果を示すグラフである。(B)は、実施例1〜6で得られた各抗菌剤の評価用試料、比較例1〜3で得られた各透析産物の評価用試料、TCS(EtOH)およびTCS(H2O)それぞれの濁度(波長500nmでの吸光度)を調べた結果を示すグラフである。 (A)は、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の測定用試料、対照リゾチーム溶液および対照トリクロサン試料それぞれの蛍光スペクトルを示す図である。(B)は、実施例4〜6で得られた各抗菌剤の測定用試料および対照リゾチーム溶液それぞれの蛍光スペクトルを示す図である。(C)は、比較例1〜3で得られた各透析産物の測定用試料および対照リゾチーム溶液それぞれの蛍光スペクトルを示す図である。 (A)は、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の還元SDS−PAGEの結果を示す図面代用写真である。(B)は、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の非還元SDS−PAGEの結果を示す図面代用写真である。(C)は、実施例1〜3で得られた各抗菌剤の酸性PAGEの結果を示す図面代用写真である。

Claims (4)

  1. リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥してなる乾燥物を含有する抗菌剤。
  2. リゾチームおよびトリクロサンを含む溶液を乾燥させることを特徴とする抗菌剤の製造方法。
  3. 溶液の乾燥を、凍結乾燥、噴霧乾燥または減圧乾燥によって行なう請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1に記載の抗菌剤を含有してなる化粧料または医薬品。
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