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JP5130791B2 - 木材用水性塗料組成物、及びこれを用いた防汚処理木材 - Google Patents

木材用水性塗料組成物、及びこれを用いた防汚処理木材 Download PDF

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Description

本発明は、有機成分と無機成分とを含有する木材用水性塗料組成物、及びこれを用いて得られる木材の質感を保持した防汚性等に優れる防汚処理木材に関する。
内装用途の木質建材は塗装品と未塗装品に大別される。塗装品は、着色により色調を揃え、塗装塗膜による保護層によって耐磨耗性や耐汚染性・耐薬品性などを付与することができる。特にフローリング用途では、基材が平面であり塗工が容易であることと、塗装膜によって表面を保護することができるため、素材の表面材を0.3mm程度まで薄くする事で大幅なコストダウンを図り、塗装複合フローリングとして大量に供給されてきた。このような塗装品用の木工用塗料としては、例えば、フッ素樹脂水分散体に顔料を配合したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、木目を残すためには、顔料の配合割合の調整が必要であり、木材特有の凹凸感を損なわずに意匠性が高いものを簡便な方法で得ることは難しい。
木質材料は細孔構造を持ち汚染物質を吸収し材料内に拡散させる性質がある。従って、未塗装品の場合には、施工後、無垢(未塗装)建材用のワックスなどで保護層を設け、また定期的に該保護層を塗り直す等のメンテナンスが必要である。メンテナンスを行っていても、一度汚染物質が保護層を破って基材内部に浸透・拡散してしまうとその除去が困難である点から、未塗装品は汚染しにくい素材を厳選する必要があり、結果としてトータルコストが高くなる点から、高級住宅向けにして供給されてきた。
しかしながら、趣向の多様化に伴い、一般住宅向けにも木質材料の視覚・触覚的な素材感を残した内装材の提供が要求されている。従って、使用可能な材料の種類を増やし、より安価な製品を供給可能にすることと、メンテナンスの簡素化を図ることのためには、木材の視覚・触覚的な素材感を残しながら、特に内部への汚染物質の吸収・拡散を抑えて除去不可能な汚染痕を残さない加工技術が要求されている。
一方、コーティング材料などの分野では、柔軟性・成形加工性などの取扱い性と、硬さ・耐熱性・耐候性等の耐用性とを同時に実現する必要性が高まっており、有機ポリマーと無機ポリマーとの有機無機複合塗膜が種々提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2で提案された水性塗料組成物は、水酸基を有する有機化合物の水混和物とポリアルコキシシランと触媒とを含む組成物であり、透明均一で硬質かつ耐水性を有する有機無機複合塗膜を得ることができるため、木材に塗布することができれば、木目を残しながら耐水性を付与することが可能と考えられる。しかし、該組成物は保存中にもポリアルコキシシランの加水分解と縮合反応が進行し続けるために保存安定性が悪く、また、得られる塗膜は鉛筆硬度(2H〜6H程度)を満たすレベルでの硬さでしかなく、十分な耐摩耗性を発現するものではない。更に、アミノプラスト樹脂等の硬化剤を併用する硬化反応である点から、薄膜での塗装が困難であり、且つ100℃以上の高温を必要とし、これを木材に塗布し乾燥しようとすると、木材自体の変形を引き起こす可能性があるため、木材用途に展開することが不可能である。
特開2004−137445号公報 特開平8−319457号公報
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、木材特有の凹凸感や木目を損なわずに、特に内部への汚染物質の吸収・拡散を抑えて除去不可能な汚染痕を残さない木材用水性塗料組成物及びこれを用いて得られる防汚処理木材を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、特定の構造単位を有するカチオン性の樹脂の存在下で、金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を行うことによって、ナノスケールで有機成分と無機成分との複合化を達成することができ、これを木材上に形成することにより上記性能を有する木材が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される構造単位を有するカチオン性樹脂(A)の水性分散体と、金属アルコキシド又はその縮合物(B)と、酸触媒(C)とを含有することを特徴とする木材用水性塗料組成物を提供するものである。更に、本発明は、カチオン性樹脂の水性分散体と、金属アルコキシド又はその縮合物と、酸触媒とを含有する木材用水性塗料組成物を木材上に塗布し、乾燥して得られることを特徴とする防汚処理木材を提供するものである。
Figure 0005130791
(式(I)中、R は脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖であり、R 及びR は、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基であり、R は水素原子又は四級化反応により導入された四級化剤の残基であり、X−はアニオン性の対イオンである。)
本発明によれば、保存安定性が良好な有機成分と無機成分とを含有する木材用水性塗料組成物を提供することができる。該木材用水性塗料組成物を用いて得られる処理木材は、高い耐磨耗性、耐水性、防汚性をバランス良く有しながらも、木材特有の凹凸感や木目を損なうことがないため、高級志向が求められる用途等に好適に用いることができる。
本発明の木材用水性塗料組成物は、特定の構造単位を有するカチオン性樹脂(A)の水性分散体と、金属アルコキシド又はその縮合物(B)と、酸触媒(C)とを含有することを特徴とする。
自然界での珪藻類、スポンジ類生き物(いわゆる、バイオシリカ)の多くは、シリカと有機物質との複合膜で自分たちの細胞を保護していることが最近の研究から知られている。特に、バイオシリカの複合膜では、シリカがカチオン性ポリマーまたはカチオン性タンパク質と複合されることにより、その膜の機能が発現されることが示唆された(W.E.G.Muller Ed.,Silicon Biomineralizattion:Biology−Biotechnology−Molecular Biology−Biotechnology,2003,Springer)。カチオン性ポリマー又はカチオン性タンパク質の働きについて未だに完全解明されてないが、基本的に、シリカ縮合化における触媒効果、シリカゾル形成とゾル融合における空間次元の誘導(即ち、一定形状のハイブリッド膜を形成すること)、ナノレベルハイブリッド構造形成におけるポリマーとシリカとの接着効果などを有すると考えられている。
有機無機複合塗膜創製において、バイオシリカの仕組みを理解した上での設計思想は極めて重要であると考えられる。特に、バイオシリカに複合される多くのカチオン性タンパク質は、親水表面を持っていても、実は水中不溶である特徴を有する。本発明者らは、この点に着目し、それをカチオン性の表面を持つ樹脂粒子と同類化することを考案した。即ち、本発明では、カチオン性ポリマーとしてカチオン性樹脂(A)の水性分散体を用いることにより、該カチオン性樹脂の存在下で金属アルコキシド又はその縮合物(B)の酸触媒(C)によるゾル−ゲル反応を行うことで、有機成分であるカチオン性樹脂からなる微粒子と、無機成分である金属アルコキシド又はその縮合物から得られる金属酸化物のマトリックスとを、高度に複合化させ得ることを見出したことに基づくものである。
本発明の木材用水性塗料組成物において、金属アルコキシド又はその縮合物(B)の初期加水分解は酸触媒(C)によって促進されるが、その後の縮合反応はカチオン性樹脂(A)により抑制され、系全体は、金属ゾル表面のヒドロキシ基と、カチオン性樹脂(A)水性分散体の樹脂微粒子表面のカチオンとのイオン的な相互作用に支配される。その結果、ゾルの成長は一定の大きさで止まり、カチオン性樹脂(A)水性分散体の微粒子表面にアニオンゾルが濃縮され、安定性が良好な水性分散液を得ることができる。この水性分散液を塗装することにより、金属酸化物を連続相とするゲル化膜が形成され、その連続相中に、カチオン性樹脂(A)からなる樹脂微粒子が凝集されずに粒子一個一個が均一に分散し複合化された、ナノオーダーの繰り返し構造を有する塗膜を得ることができる。このようにして得られた塗膜では、有機成分と無機成分の複合効果が最大限に発現され、耐摩耗性・耐水性・耐汚染性などの塗膜物性が大きく向上する。このような構造およびその構造由来の効果は、アニオン性樹脂水性分散体やノニオン性樹脂水性分散体を用いることでは得られないものである。
以下、本発明で用いる材料について詳述する。
〔カチオン性樹脂(A)〕
本発明で用いるカチオン性樹脂(A)とは、カチオン性の官能基を有する有機化合物であって、水性媒体中で安定に分散した水性分散体を形成するものである。前記水性媒体としては、水を主成分とする均一溶媒系であれば特に限定はされない。このような溶媒系としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールといったアルコール系の水溶性有機溶媒と水とを混和させた溶媒系や、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブといったエーテル系の水溶性有機溶媒と水とを混和させた溶媒系が挙げられる。この中で最も好適な水性媒体としては、イソプロパノール/水の混合溶媒系である。また、このような水溶性の有機溶媒を添加する量としては、木材用水性塗料組成物全体中に含まれる水の量に対して、50質量%以下にすることが好ましく、特に20質量%以下にすることが好ましい。
前記カチオン性樹脂(A)は水性媒体中で分散するものであり、その分散した樹脂粒子の平均粒子径としては、得られる複合塗膜の耐汚染性、耐磨耗性、および透明性を兼備する点から、0.005μm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4μmである。
前記カチオン性の官能基としては、例えば、第一級から第三級のアミノ基や、ホスフィノ基の塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、プロピオン酸、酪酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸との反応物、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基などが挙げられる。
前記カチオン性の官能基の含有量としては、カチオン性樹脂(A)が水性媒体中で溶解することがなく、安定な分散体を形成できる範囲であれば、特に限定されるものではない。従って、カチオン性樹脂(A)の分子量・分岐度等のカチオン性の官能基以外の構造等によって、好ましいカチオン性官能基の含有量が異なるものであるが、通常、該カチオン性樹脂(A)固形分中に、カチオン当量として0.01〜1当量/kg含有していれば水性分散体とすることができ、特にカチオン性樹脂(A)の水性媒体中への分散性と得られる塗膜の耐水性とのバランスに優れる点から、0.02〜0.8当量/kg含有していることが好ましく、0.03〜0.6当量/kg含有していることが特に好ましい。
カチオン性樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値で求められる数平均分子量(Mn)としては、カチオン性樹脂(A)が水性媒体中で溶解せずに安定な分散体を形成できる範囲であれば特に限定されるものではなく、通常1,000〜5,000,000の範囲であり、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲である。
カチオン性樹脂(A)としては、ウレタン樹脂を使用することができる。
前記ウレタン樹脂は、製造の容易さ、後述する金属酸化物(B’)との親和性の良さという観点から好適である。このウレタン樹脂を、カチオン性ウレタン樹脂(A−1)と以下、呼称する。
カチオン性ウレタン樹脂(A−1)は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び必要に応じて併用される鎖伸長剤からなる、カチオン性の官能基を有するウレタン樹脂である。
カチオン性ウレタン樹脂(A−1)の原料として用いることができるポリイソシアネートとしては、有機ポリイソシアネートとして、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネート等の各種のものを例示できる。
鎖状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えたダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
環状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネートの具体例としては、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
カチオン性ウレタン樹脂(A−1)の原料として用いることができるポリオールとしては、一分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する各種化合物を挙げることができ、得られる有機無機複合塗膜の可とう性に優れる点から、高分子ポリオールを使用するのが好ましい。高分子ポリオールとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化イソブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などを脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリクロロプレンジオール、ポリブタジエングリコールの水素化物、ポリイソプレングリコールの水素化物等のポリオレフィンジオール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られたグリコール類、2つ以上のヒドロキシ基およびメルカプト基等の連鎖移動基を1つ有する連鎖移動剤の存在下にアルキル(メタ)アクリレート等の各種のラジカル重合性不飽和単量体を重合させて得られるアクリルポリマー等のマクロモノマー、ポリジメチルシロキサン等のポリアルコキシシラン類、ヒマシ油ポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオール等が挙げられる。
前述のポリイソシアネートとポリオールとを用いて、本発明で用いることができるカチオン性ウレタン樹脂(A−1)の水性分散体を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、カチオン性の官能基を該ウレタン樹脂(A−1)の主鎖に導入する方法としては、例えば、特開2002−307811号公報に記載のように、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールと、分子中に三級アミノ基を有する鎖伸長剤を用いてウレタン樹脂を合成し、該樹脂中の三級アミノ基を酸で中和もしくは四級塩化した後に水性媒体中に分散させる方法や、特開2001−64346号公報に記載のように、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールと、一級と二級のアミノ基を有するポリアミン化合物とを反応させてウレタン樹脂を合成し、該樹脂中の二級アミンを中和して水性媒体中に分散させる方法等を挙げることができる。
また、カチオン性ウレタン樹脂(A−1)に含まれるカチオン性を有する官能基を該樹脂の最も長い結合長に対して分岐した部分(側鎖)に有する樹脂は、該カチオン性の官能基の自由度が大きいため、水性分散体とするために必要な水性媒体との会合構造を容易に形成することが可能であり、より安定な水性分散体が得られる点、更には、金属アルコキシド又はその縮合物(B)のゾル−ゲル反応によって生じるアニオンゾルの樹脂粒子表面への効率的な濃縮が可能で、より保存安定性に優れる木材用水性塗料組成物が得られる点から、本発明で好適に用いることができる。
本発明に用いるカチオン樹脂(A)としては、前記側鎖にカチオン性の官能基を有するカチオン性ウレタン樹脂である下記一般式(I)で表される構造単位を含有するカチオン性ウレタン樹脂(a)を用いる
Figure 0005130791
(式(I)中、R は脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖であり、R 及びR は、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基であり、R は水素原子又は四級化反応により導入された四級化剤の残基であり、X−はアニオン性の対イオンである。)
前記構造単位を有するカチオン性ウレタン樹脂(a)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、工業的に入手容易でかつ安価な原料を用いる製造方法としては、下記一般式[IV]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と二級アミン(a−2)とを反応させて得られる三級アミノ基含有ポリオールと、前述のポリイソシアネートとを反応させる方法が最も有用である。
Figure 0005130791
(式[IV]中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖を表す。)
前記1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)としては、例えば、下記の化合物を、単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
前記一般式[IV]中のRが、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖であるものとしては、例えば、エタンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,3−ジグリシジルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、3−メチル−ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジグリシジルエーテル、ポリブタジエングリコール−ジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオール−1,4−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタン異性体混合物(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
また、前記一般式[IV]中のRが、2価フェノール類の残基であるものとしては、例えば、レゾルシノール−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−3−3’−ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)−2,2−プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
また、前記一般式[IV]中のRがポリオキシアルキレン鎖であるものとしては、例えば、ジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、更にオキシアルキレンの繰り返し単位数が3〜60のポリオキシアルキレングリコール−ジグリシジルエーテル、例えば、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコール−ジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
これらの中でも、得られるカチオン性ウレタン樹脂(a)の水分散性をより向上させることができることから、上記一般式[IV]のRが、ポリオキシアルキレン鎖であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、特に、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテルが好適である。
前記一般式[IV]のRがポリオキシアルキレン鎖であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルのエポキシ当量は、カチオン性ウレタン樹脂(a)中のカチオン濃度の設計を広範囲に行える点で、好ましくは1000g/当量以下、より好ましくは500g/当量以下、特に好ましくは300g/当量以下である。
前記二級アミン(a−2)としては、種々の化合物を使用できるが、反応制御の容易さの点で、分岐状又は直鎖状の脂肪族二級アミンが好ましい。
前記二級アミン(a−2)としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ペプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミンなどが挙げられる。
これらの中で、三級アミノ基含有ポリオールを製造する際に揮発し難いこと、あるいは、含有する三級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は四級化剤で四級化する際に立体障害を軽減できること、などの理由から、炭素数2〜18の範囲の脂肪族二級アミンが好ましく、炭素数3〜8の範囲の脂肪族二級アミンがより好ましい。
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と二級アミン(a−2)との反応は、エポキシ基とNH基の当量比[NH基/エポキシ基]で、好ましくは0.5/1〜1.1/1の範囲、より好ましくは0.9/1〜1/1の範囲となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で容易に行うことができる。このとき必要に応じて、有機溶剤を用いても良い。
また、反応温度は、好ましくは室温〜160℃の範囲であり、より好ましくは60〜120℃の範囲である。反応時間は、特に限定しないが、通常30分〜14時間の範囲である。反応の終点は、赤外分光法(IR法)にて、エポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークの消失によって確認できる。
前記の反応で得られた三級アミノ基含有ポリオールは、予め含有する三級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は四級化剤で四級化してから、前記ポリイソシアネートと反応させてもよく、また、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン樹脂としてから、三級アミノ基の中和又は四級化により、カチオン性ウレタン樹脂(a)としても良い。更に、水性分散体とする工程が、ウレタン樹脂の合成途中、又は合成後のいずれでもよく、必要に応じて用いられるポリアミン等の活性水素含有化合物である鎖伸長剤の種類・使用量等によって選択することができる。
上記の三級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記三級アミノ基の一部又は全てを四級化する際に使用することができる四級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などを使用することができ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
三級アミノ基の中和又は四級化に使用する酸や四級化剤の量は、特に制限はないが、得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)の優れた分散安定性を発現させるために、三級アミノ基1当量に対して、0.1〜3当量の範囲であることが好ましく、0.3〜2.0当量の範囲であることがより好ましい。
更に、得られる塗膜の耐水性をより向上させる目的で、シラノール基を含有する構造単位をカチオン性ウレタン樹脂(a)に導入することが好ましい。シラノール基を含有する構造単位を導入すると、有機成分であるカチオン性ウレタン樹脂(a)からなる粒子と、金属アルコキシド又はその縮合物(B)により形成される無機の金属酸化物(B’)からなるマトリクスとの間に架橋構造が形成されるため、より強固な塗膜を得ることができ、塗装後の処理木材表面の耐磨耗性に優れる。
シラノール基を含有する構造単位としては、下記一般式[II]で表される構造単位を例示できる。
Figure 0005130791
(式[II]中、R5は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、R6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、nは0、1又は2である。)
前記一般式[II]で表される構造単位をカチオン性ウレタン樹脂(a)に導入するためには、下記一般式[III]で示されるシラノール基含有化合物を用いることが好ましい。
Figure 0005130791
(式[III]中、R5は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、R6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、nは0、1又は2であり、Yは活性水素基を少なくとも1個以上含有する有機残基である。)
前記一般式[III]で示される化合物としては、該一般式中のYがアミノ基又はメルカプト基であるものが入手が容易で好ましく、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N,N−ジ−2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのシラノール基含有化合物の使用量としては、後述する金属酸化物(B’)と、カチオン性ウレタン樹脂(a)とがより強固に複合化された塗膜が得られ、耐水性に優れる木材が得られる点から、最終的に得られるカチオン性ウレタン樹脂(a)に対して、前記一般式[II]で表される構造単位を、0.1〜20質量%の範囲で含有させることができるように併用することが好ましく、0.5〜10質量%の範囲で含有させるように用いることがより好ましい。
これらのシラノール基含有化合物を、前述の三級アミノ基含有ポリオールとポリイソシアネートとの反応時に併用することによって、得られるカチオン性ウレタン樹脂(a)中にシラノール基を導入することができる。
前記カチオン性ウレタン樹脂(a)は、前述の三級アミノ基含有ポリオールと、ポリイソシアネートと、必要に応じて併用する前記シラノール基含有化合物とを反応させることによって合成可能であるが、このとき、前述のその他のポリオールを併用することもできる。
前記反応は無触媒下で製造することも可能であるが、種々の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、三級アミン類、四級アンモニウム塩等を使用してもよい。
上記のようにして得られるカチオン性ウレタン樹脂(a)の水性分散体中に含まれる有機溶剤は、必要により、反応の途中又は反応終了後に、例えば減圧蒸留などの方法により除去することが好ましい。
本発明で用いるカチオン性ウレタン樹脂(A−1)は、樹脂の分散安定性を阻害しない範囲で、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基といった反応性官能基を有していても良い。また、カチオン性ウレタン樹脂(A−1)は分散安定性を高めるために、ノニオン性の親水性基、例えば、ポリエチレンオキサイド鎖や、ポリアミド鎖などを分子中に有していても良い。更に、安定な水性分散体とするために、乳化剤を併用したものであっても良い。
〔金属アルコキシド(B)〕
本発明で用いる金属アルコキシド又はその縮合物(B)中の金属としては、珪素、チタン、アルミニウムを好ましい例として挙げることができる。
珪素アルコキシド又はその縮合物としては、一般的にゾル−ゲル反応で用いられるアルコキシシランであれば、特に限定されるものではない。例示するならば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランまたはこれらの部分縮合物等が挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、チタンイソプロポキシド、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどが挙げられ、アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、工業的入手のしやすさから、珪素アルコキシド又はその縮合物を用いるのが好適である。その中でも最も好適なのは、テトラメトキシシラン及びその縮合物である。また、カチオン性樹脂(A)中のカチオン性官能基と反応する官能基を有するアルコキシシランを併用することにより、塗膜の架橋をさらに緻密にすることができ、耐水性等の塗膜物性をより向上させることもできる。この場合に最も好適なのは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
前記テトラメトキシシラン及びその縮合物と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを併用する場合には、それぞれの完全加水分解縮合後の質量比(テトラメトキシシラン及びその縮合物の完全加水分解後の質量)/(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの完全加水分解後の質量)が60/40〜90/10の範囲であることが好ましく、特に70/30〜80/20の範囲であることが特に好ましい。
また、前記カチオン性樹脂(A)の質量と金属アルコキシド又はその縮合物(B)の加水分解縮合後の質量(B1)との比が、(A)/(B1)で表される質量比で10/90〜70/30の範囲であることが好ましく、20/80〜70/30であることがより好ましく、30/70〜70/30であるのがさらに好ましい。金属アルコキシドの加水分解反応式は以下の通りである。
Figure 0005130791
〔式中、Rは有機基であり、Rはアルキル基であり、Xは(m+n)価の金属原子である。〕
従って、完全加水分解縮合後の金属アルコキシドの質量(B1)は、(仕込み量)/(加水分解反応前の金属アルコキシドの式量)×(加水分解反応後の金属アルコキシドの式量)で計算することができる。
〔酸触媒(C)〕
本発明で用いる酸触媒(C)としては、各種の酸触媒を用いることができる。例示するならば、塩酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸、リン酸といった無機酸や、酢酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、パラトルエンスルホン酸、などといった有機酸を用いることができる。また、これらの酸は単独、もしくは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、目的とするpHの範囲への調整が容易であり、得られる木材用水性塗料組成物の保存安定性が良好で、且つ得られる防汚処理木材の耐水性に優れる点から、マレイン酸を用いることが好ましい。
また、カチオン性樹脂(A)の水性分散体に酸触媒(C)を加えた後の液のpHとしては、酸による機械の腐食等の問題が起こりにくく、且つ、得られる木材用水性塗料組成物の保存安定性が良好である点から、通常1.0〜4.0の範囲で、好ましくは1.0〜3.0の範囲で、さらに好ましくは2.0〜3.0の範囲である。この範囲にpHを調整することが耐汚染性に優れる防汚処理木材を得るために重要であり、特にカチオン性樹脂(A)として市販の製品を用いる場合には、酸触媒(C)を徐々に滴下しながら、pHの調整を行うことが好ましい。
〔木材用水性塗料組成物〕
本発明の木材用水性塗料組成物の調整方法としては、カチオン性樹脂(A)の水性分散体と、酸触媒(C)とを混合し均一化した後、金属アルコキシド又はその縮合物(B)を混合するのが最も好適である。また、金属アルコキシド又はその縮合物(B)の加水分解により生成するアルコールは、残存したまま本発明の木材用水性塗料組成物としても良く、また、種々の方法、例えば減圧下で放置又は加温することにより、該アルコールを除去したのち、木材用水性塗料組成物としても良い。
本発明の木材用水性塗料組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、各種の増粘剤、濡れ剤、チキソ剤などの添加剤、あるいはフィラー等を加えても良い。更に、前記カチオン性樹脂(A)中の官能基と反応するような架橋剤、例えば、ポリエポキシ化合物や、ジアルデヒド化合物、ジカルボン酸化合物といった架橋剤を併用しても良い。
また、本発明の木材用水性塗料組成物は、クリアー塗料組成物として好適に用いることができるが、各種顔料分散体、染料などを混入して、従来使用されてきた塗装処理木材にも、特に耐摩耗性や耐汚染性に優れる点から応用することができる。
本発明の木材用水性塗料組成物の不揮発分としては特に限定されるものではなく、塗工方法に適した粘度を勘案した不揮発分であればよいが、通常、10質量%以上、50質量%以下であることが、保存安定性が良好である点から好ましい。
本発明の木材用水性塗料組成物の木材への塗工方法に関しては、特に限定されるものではなく、例えば、刷毛塗り法、刷毛塗りワイピング法、ロールコーター法、フローコーター法、スプレー法・ディッピング(浸漬)法などの各種の塗工方法で塗装することができる。この中で塗布量の制御が容易であることからロールコーター法、フローコーター法が特に好ましい。
本発明の木材用水性塗料組成物の塗装対象は、木材であれば良く、特に限定されるものではない。例えば、桐、ナラ、ブナ、カエデ等の国産広葉樹、松、桧、杉等の国産針葉樹、黒檀、チーク、ゴム等の南洋材、ウォルナット、オーク、チェリー等の北米材、マコレ、ブビンガ、カヤ等のアフリカ材に用いることができる。
さらに、基材への密着性向上、基材の着色、基材の保護などを目的として、日やけ防止剤、着色ステイン、ウッドシーラー等を前記各種木材に塗装したのち、本発明の木材用水性塗料組成物を塗装することもできる。
また、塗装後の乾燥条件としては特に限定されるものではないが、木材自身の変形をおこさずに塗膜が得られる点から、20℃〜120℃の間で、10秒〜24時間乾燥させることが好ましく、60℃〜100℃の間で、10秒〜30分で乾燥させることがさらに好ましい。
本発明で得られる処理木材の表面は、金属酸化物(B’)からなるマトリクス中に、カチオン性樹脂(A)の粒子が分散している。
前記金属酸化物(B’)は、前述の金属アルコキシド又はその縮合物(B)の加水分解・縮合反応によって得られるものであり、塗膜中では、マトリクスを形成している。これは、前述のようにカチオン性樹脂(A)が水性分散体中で形成する微粒子の表面を取り囲むように金属ゲルが濃縮されているため、水性媒体が揮発した後は、近接する微粒子の該表面の金属ゲルが架橋することによって形成されるものである。したがって、カチオン性樹脂(A)の微粒子同士は凝縮することがなく塗膜中で分散していることになる。このような構造であることが、薄膜でも耐汚染性、耐磨耗性や耐水性が高く、木材特有の凹凸感や木目を損なわず、意匠性が高い防汚処理木材が得られることになる。
本発明の防汚処理木材は、カチオン性樹脂(A)の水分散体に酸触媒(C)を添加した後、金属アルコキシド又はその縮合物(B)を加えて得られる木材用水性塗料組成物を基板上に塗布し、乾燥することで、カチオン性樹脂(A)からなる粒子が、金属酸化物(B’)からなるマトリクス中に分散している複合塗膜を木材表面に作製することにより得られることを特徴とする。該製造方法は、特別な装置を必要とせず、また、空気中の水分等を利用しない点から、環境依存性がなく、したがって応用範囲に制限されることがないため、工業的に簡便で有用なものである。
木材用水性塗料用組成物の塗布量(乾燥後)としては、特に限定されるものではないが、十分な性能バランスを有し、かつ木材表面の凹凸・木目などの質感を損なわない点から、1g/m〜50g/mの範囲で塗布することが好ましく、より好ましくは1g/m〜20g/mの範囲である。
本発明で得られる防汚処理済木材の用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、床材、巾木・階段・手すり等の造作材、ドア及びその部材、柱、壁材、テーブル、イス、整理箪笥等の家具に好適に用いることができる。このような処理を施した木材は、施工後のメンテナンスをほとんど必要とせず、無垢材が使用できなかった調味料・化粧品・洗剤・漂白剤などの汚染物質の曝露の可能性の高いキッチンや洗面所などの水回り用の部材等にも用いることが可能であり、メンテナンスを軽減するとともに耐久性を向上させることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表す。
(合成例1)カチオン性ウレタン樹脂(A−1−1)の水分散体の調製
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)590部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ−n−ブチルアミン378部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量)を得た。
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコ内で、ニッポラン980R〔日本ポリウレタン工業株式会社製ポリカーボネートポリオール、分子量2000〕500部と、ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオール/テレフタル酸/アジピン酸からなるポリエステルポリオール(分子量2000)500部とを、酢酸エチル558部に溶解した。次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート236部とオクチル酸第一錫0.2部を加え、75℃で2時間反応させた後、前記3級アミノ基含有ポリオール66.2部を添加し、4時間反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液に酢酸エチル478部とイソプロピルアルコール918部とを加えて均一混合した後、80%水和ヒドラジン17部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで氷酢酸11.7部を添加して中和した後、イオン交換水3610部を滴下することにより水分散化を行い、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%で、pH4.2、粒子径0.2μm(大塚電子株式会社製粒径アナライザーFPAR−1000により測定。)、カチオン当量0.15当量/kgのカチオン性ポリウレタン樹脂(A−1−1)の水分散体を得た。
(合成例2)カチオン性ポリウレタン樹脂(A−1−2)の水分散体の調製
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコ内で、ニッポラン980R 1000部を、酢酸エチル600部に溶解した。次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート262部とオクチル酸第一錫0.2部を加え、75℃で2時間反応させた後、前記3級アミノ基含有ポリオール95部を添加し4時間反応させた後、60℃に冷却し、Z−6011〔東レダウコーニング社製γ―アミノプロピルトリエトキシシラン〕44部を添加して、更に1時間反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液に酢酸エチル515部とイソプロピルアルコール986部とを加えて均一混合した後、80%水和ヒドラジン15部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで氷酢酸16.8部を添加して中和した後、イオン交換水3800部を滴下することにより水分散化を行い、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%で、pH4.1、粒子径0.15μm、カチオン当量0.2当量/kgのカチオン性ウレタン樹脂(A−1−2)の水分散体を得た。
(合成例3)カチオン性ポリウレタン樹脂(A−1−3)の水分散体の調製
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコ内で、ニッポラン980R 640部を、メチルエチルケトン390部に溶解した。次いで、イソホロンジイソシアネート133部とオクチル酸第一錫0.2部を加え、75℃で2時間反応させた後、前記3級アミノ基含有ポリオールを122部を添加し4時間反応させた後、60℃に冷却し、Z−6011 22部を添加して、1時間反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にジメチル硫酸45部を加えて更に60℃で2時間反応させて4級化した後、イオン交換水2080部を滴下することにより水分散化を行い、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%で、pH6.5、粒子径0.05μm、カチオン当量0.39当量/kgのカチオン性ポリウレタン樹脂粒子(A−1−3)の水分散体を得た。
参考合成例)カチオン性アクリル樹脂の水分散体(A−2−1)の調製
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管および不活性ガスの送入管と排出管とを備えた反応容器に、窒素を導入しながら、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド12部、n−ドデシルメルカプタン0.4部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド 1部、イオン交換水540部を入れ、攪拌しながら内温を80℃に上げ、同温で1時間維持して反応させることによって反応生成物を得た。次に、該反応生成物の存在する反応容器に、別の容器中で予め混合した単量体混合物(ブチルアクリレート220部、メチルメタクリレート180部)と、重合開始剤水溶液(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドの5%水溶液)40部を、各々別の滴下漏斗から3時間かけて滴下し重合させた。滴下中は反応容器内温度を80℃に維持した。滴下終了後、さらに液温を80℃で1時間攪拌し、次いで25℃に冷却し、イオン交換水にて不揮発分が35%になるように調整し、PH3.5、粒子径0.3μm、カチオン当量0.14当量/kgのカチオン性アクリル樹脂(A−2−1)の水分散体を得た。
参考合成例)カチオン性アクリル樹脂の水分散体(A−2−2)の調製
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管および不活性ガスの送入管と排出管とを備えた反応容器にプロピレングリコール−n−プロピルエーテル425部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃に保ち、ジメチルアミノエチルメタクリレート35部、メチルメタクリレート300部、ブチルアクリレート165部からなる混合物500部を約3時間かけてゆっくりと滴下した。並行して、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名パーブチルO、日本油脂株式会社製)10部、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル65部からなる溶液を約3時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了から1時間後、パーブチルO 2.5部、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル10部からなる溶液を加え、さらに液温を100℃で3時間保ち重合反応を完結させた。次いで、氷酢酸13.5部を添加してよく撹拌混合して中和させた後、イオン交換水980部を滴下して、水分散化を行った後、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%、PH5.8、粒子径0.1μm、カチオン当量0.44当量/kgのカチオン性アクリル樹脂(A−2−2)の水分散体を得た。
(比較合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却管および不活性ガスの送入管と排出管とを備えた反応容器に116部のヘキサメチレンジアミンを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃に保ち、210部のプロピレンカーボネートを約一時間かけてゆっくりと滴下した。反応容器を90〜100℃に保ちながら20時間反応させたところ、白色ワックス状の軟固体である、ヘキサメチレンジアミンのビスヒドロキシカルバメート(以下、A’−1と称す)を得た。酸滴定の結果、アミン含量は0.1%以下であった。
(比較合成例2)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管および不活性ガスの送入管と排出管とを備えた反応容器にプロピレングリコール−n−プロピルエーテル425部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃に保ち、ジメチルアミノエチルメタクリレート100部、メチルメタクリレート260部、ブチルアクリレート140部からなる混合物500部を約3時間かけてゆっくりと滴下した。並行して、パーブチルO 10部、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル65部からなる溶液を約3時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後から更に1時間後、パーブチルO 2.5部、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル10部からなる溶液を加え、さらに液温を100℃で3時間保ち重合反応を完結させた。次いで、氷酢酸38.2部を添加してよく撹拌混合して中和させた後、イオン交換水980部を滴下して攪拌し、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%、PH6.0、カチオン当量1.27当量/kgのカチオン性アクリル樹脂(A’−2)の透明な水溶液を得た。
[塗料組成物]
(実施例1)
合成例1で得られたカチオン性ウレタン樹脂(A−1−1)の水分散体20部、イオン交換水5部、2−プロパノール(以下、IPAと称す)8部を撹拌混合した後、10%マレイン酸水溶液7部を徐々に滴下した。このときの混合液のPHは1.6であった。引き続き、撹拌しながらテトラメトキシシラン縮合物(メチルシリケート51:多摩化学工業株式会社製品。以下、MS−51と称す。)14.4部と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GPTMSと称す。)4.3部からなる混合液を徐々に加えて、一時間攪拌し、木材用水性塗料組成物(1)を得た。
(実施例2〜16及び参考例1〜7
実施例1と同様に、表1〜3の配合で木材用水性塗料組成物を調整し、木材用水性塗料組成物(2)〜(23)を得た。
(比較例1)
比較合成例1で合成した、水酸基含有ポリマーA’−1を15部、イオン交換水を15部、メタノール5部を混合した溶液に、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと称す。)20部、硬化剤として、メラミン樹脂サイメル303(サイテック株式会社製)0.5部を加えて均一溶液を作成した。この溶液に、触媒として0.3部の濃塩酸を加えて、約30℃で一時間加熱し、比較用の水性塗料組成物(1’)を得た。
(比較例2)
比較合成例2で得られたカチオン性アクリル樹脂(A−2’)の水溶液20部、イオン交換水8.5部、2−プロパノール(以下、IPAと称す)8部を撹拌混合した後、10%マレイン酸水溶液3.9部を徐々に滴下した。このときの混合液のpHは2.3であった。引き続き、撹拌しながらMS−51を14.4部とGPTMSを4.3部からなる混合液を徐々に加えて、一時間攪拌し、比較用の水性塗料組成物(2’)を得た。
(木材用水性塗料組成物の安定性評価方法)
実施例1〜16、参考例1〜7、及び比較例1〜2で得られた水性塗料組成物を23℃で保管したときの塗液状態を目視で観察し、ゲル化が起こるまでの日数を記載した。
Figure 0005130791
Figure 0005130791
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Figure 0005130791
表1〜4の脚注
(A)/(B1):カチオン性樹脂(A)の質量と金属アルコキシド又はその縮合物(B)の加水分解縮合後の質量(B1)との比
SF650:スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社製 カチオン性ウレタン樹脂の水性分散体、不揮発分25%、平均粒径0.01μm
UW550CS:アクリットUW550−CS、大成ファインケミカル株式会社製 カチオン性アクリル樹脂の水性分散体、不揮発分34%、平均粒径0.04μm
MTMS:メチルトリメトキシシラン
[塗膜]
(実施例1732、参考例8〜14
実施例1〜16及び参考例1〜7で得た木材用水性塗料組成物(1)〜(23)を、ブナ材(12mm厚)上にスポンジ状ゴムロールを具備したナチュラルコーター(図1参照)を用いて乾燥後の塗布量が約5g/m2になるように塗布した後、90℃に設定した温風乾燥機で90秒乾燥して防汚処理木材を得た。
塗装工程:
(i)スポンジナチュラル(スポンジ状ゴムロール)コーターで塗布・含浸
(ii)リバース(掻き取り)コーターで、塗料を基材に押し込みながら、表面の余剰塗料を掻き取る。
(iii)ナチュラル(ゴム)コーターで薄く押さえ塗布する。
(比較例3〜4)
比較例1〜2で得た水性塗料組成物(1’)〜(2’)を実施例と同様にしてブナ材上に塗布し比較用試験木材を得た。この時、比較例1で得られた水性塗料組成物を用いた比較例3では、乾燥後も木材表面にややタックが残っていた。耐汚染性試験、耐薬品性試験はそのままの表面にて行った。
(比較例5)
基材として用いたブナ材(未塗布品)を比較用試験木材とした。
(評価)
得られた防汚処理木材、比較用試験木材に対して下記の試験を行った。
耐汚染性試験:農林水産省告示第233号による「合板の日本農林規格」第8条 「特殊加工化粧板の規格」中の「表面性能の基準」の「耐汚染性」および「耐薬品性」に定められている試験項目に準じた試験方法で試験を行った。
耐汚染性試験の汚染物質として黒マジック・赤マジック・青マジック(JIS S6307 マーキングペンに定めるもの)・黒インキ・青インキ・赤クレヨンを用い、24時間試験を行った。耐薬品性試験の薬品として5%酢酸水溶液・1%炭酸ナトリウム・60%エタノール水溶液・JASラッカーシンナー(JIS K5538 ラッカー系シンナー)を用い24時間、試験を行った。結果を表5〜8にまとめた。
判定基準(目視)
耐汚染性試験
◎ :汚れ残りなし
○ :やや汚れ残りがあるが、実用上の問題がない
△ :少し汚れ残りがあるが、内部には浸透していない。
× :汚れ残りがある。
××:汚れが拡散しており、内部にまで浸透し除去不可能。
耐薬品性試験
◎:変色なし
○:やや変色があるが、実用上の問題がない。
△:少し変色があるが、内部には浸透していない。
×:変色あり
Figure 0005130791
Figure 0005130791
Figure 0005130791
Figure 0005130791
実施例で得られた防汚処理木材表面は、目視によって未塗装品(比較例5)との区別はつかないほど木目が残っており、ワックス等を塗布したときのテカリなどもなかった。さらに基材として用いたブナ材の凹凸が損なわれていない(図面参照。尚、SEM写真測定に用いた機器は株式会社キーエンス製リアルサーフェスビュー顕微鏡VE−7800である。)。
実施例で用いた塗装機である。 実施例24で得られた防汚処理木材の試験後の写真である。 参考で得られた防汚処理木材の試験後の写真である。 比較例5(未塗装品)の試験後の写真である。 実施例24で得られた防汚処理木材の表面のSEM写真である。 参考で得られた防汚処理木材の表面のSEM写真である。 比較例5(未塗装品)の表面のSEM写真である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表される構造単位を有するカチオン性樹脂(A)の水性分散体と、金属アルコキシド又はその縮合物(B)と、酸触媒(C)とを含有することを特徴とする木材用水性塗料組成物。
    Figure 0005130791
    (式(I)中、R は脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖であり、R 及びR は、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基であり、R は水素原子又は四級化反応により導入された四級化剤の残基であり、X−はアニオン性の対イオンである。)
  2. 前記金属アルコキシド又はその縮合物(B)が、珪素アルコキシド又はその縮合物である請求項1記載の木材用水性塗料組成物。
  3. 前記金属アルコキシド又はその縮合物がテトラアルコキシシラン又はその縮合物と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを併用するものである請求項1又は2記載の木材用水性塗料組成物。
  4. 前記カチオン性樹脂(A)の質量と金属アルコキシド又はその縮合物(B)の加水分解縮合後の質量(B1)との比が、(A)/(B1)で表される質量比で10/90〜70/30の範囲である請求項1〜の何れか1項記載の水性塗料組成物。
  5. 請求項1〜の何れか1項記載の木材用水性塗料組成物を木材上に塗布し、乾燥して得られることを特徴とする防汚処理木材。
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