以下、本発明の実施の形態による保圧弁を流体圧縮機としてのスクロール式空気圧縮機に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図7は本発明による第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、固定スクロールの一部を弁ケースとして保圧弁を一体的に設ける構成としている。
図1において、1は第1の実施の形態によるスクロール式流体圧縮機としてのスクロール式空気圧縮機を示している。このスクロール式空気圧縮機1は、空気を吸込んで圧縮し、この圧縮空気を後述の貯留タンク18に供給するものである。そして、スクロール式空気圧縮機1は、図2に示す如く、後述のケーシング2、固定スクロール3、旋回スクロール5、電動モータ7、回転軸8、偏心ブッシュ11、自転防止機構14等により構成されている。
2はスクロール式空気圧縮機1の外殻を構成するケーシングで、該ケーシング2は、軸方向の一側に電動モータ7が取付けられ、軸方向の他側が開口した有底筒状体として形成されている。そして、ケーシング2は、軸方向の他側(固定スクロール3側)が開口した筒部2Aと、該筒部2Aの軸方向一側に一体形成され径方向内向きに延びた環状の底部2Bと、該底部2Bの内周側から軸方向の他側に向けて突出した筒状の軸受取付部2Cとから大略構成されている。
また、ケーシング2の筒部2A内には、後述の旋回スクロール5、偏心ブッシュ11、自転防止機構14等が収容されている。また、ケーシング2の底部2B側には、旋回スクロール5に付加されるスラスト荷重を自転防止機構14を介して受承する複数の台座部2D(図2中に1個のみ図示)が設けられ、これらの台座部2Dは、ケーシング2の周方向に所定の間隔をもって配設されている。
3はケーシング2(筒部2A)の開口端側に固定して設けられた固定スクロールである。この固定スクロール3は、円板状に形成された鏡板と呼ばれる板体3Aと、該板体3Aの表面に立設された渦巻状のラップ部3Bと、該ラップ部3Bを径方向外側から取囲むように板体3Aの外周側に設けられ、複数本のボルト4(1本のみ図示)によりケーシング2(筒部2A)の開口端側に締結された筒状の支持部3Cとにより大略構成されている。
また、固定スクロール3には、板体3Aの裏面側中央に位置して後述する保圧弁21の外形をなす弁ケース3Dが設けられている。この弁ケース3Dは、内部が後述の収容凹部22となる有底筒状に形成され、例えば後述の供給口16と同軸に配置されている。
5は固定スクロール3と軸方向で対向してケーシング2内に旋回可能に設けられた旋回スクロールを示している。この旋回スクロール5は、鏡板と呼ばれる円板状の板体5Aと、該板体5Aの表面に立設された渦巻状のラップ部5Bと、板体5Aの背面(ラップ部5Bと反対側の面)側に突設され、後述の偏心ブッシュ11に旋回軸受13を介して取付けられる筒状のボス部5Cとにより大略構成されている。
また、旋回スクロール5の背面部の外径側には、後述する自転防止機構14のスラスト受け14Bが嵌合して取付けられる複数の取付部5D(図2中に1個のみ図示)が、旋回スクロール5の周方向に間隔をもって設けられ、これらの取付部5Dは、ケーシング2の各台座部2Dと対応する位置に配置されている。
一方、旋回スクロール5のボス部5Cは、その中心が固定スクロール3の中心に対して予め決められた所定の寸法(旋回半径)分だけ径方向に偏心して配置されている。この状態で、旋回スクロール5のラップ部5Bは、固定スクロール3のラップ部3Bと重なり合うように配置され、これらのラップ部3B,5Bの間には、圧縮室6,6,…が複数形成されている。
そして、旋回スクロール5は、後述の電動モータ7により回転軸8、偏心ブッシュ11を介して駆動され、自転防止機構14によって自転が規制された状態で固定スクロール3に対し旋回動作を行う。これにより、複数形成された圧縮室6のうち外径側の圧縮室6は、後述の吸込口15から空気を吸込み、この空気を各圧縮室6内で連続的に圧縮する。そして、中央側の圧縮室6は、後述の供給口16から圧縮空気を外部に向けて吐出するものである。
ここで、旋回スクロール5は、固定スクロール3と相対的に旋回動作するもので、固定スクロール3と自転防止機構14の転動部分により狭持される構成となっている。よって、固定スクロール3と旋回スクロール5との摺接部分には例えば小さな隙間(クリアランス)を設けている。この場合、スクロール式空気圧縮機1は、圧縮運転を開始して各スクロール3,5間に形成される各圧縮室6内の圧力が規定の圧力になり、この規定の圧力で旋回スクロール5を一側に押圧したときに、旋回スクロール5と自転防止機構14の転動部分の隙間が0になり、前述した固定スクロール3と旋回スクロール5との隙間が最大となって旋回スクロール5の挙動が安定するように設計されている。そして、旋回スクロール5の挙動が安定した運転状態が、空気圧縮機1の定常運転状態となる。
7は旋回スクロール5を旋回駆動する駆動源としての電動モータで、該電動モータ7は、その軸方向に伸長した駆動軸7Aを回転駆動する。ここで、電動モータ7の駆動軸7Aは、その先端側(軸方向の他側)がケーシング2の底部2B側に向けて突出し、後述の回転軸8に一体的に連結されている。
8はケーシング2の軸受取付部2C内に軸受9等を介して回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸8は、基端側(軸方向の一側)が電動モータ7の駆動軸7Aに連結され、電動モータ7によって回転駆動されるものである。また、回転軸8の先端側(軸方向の他側)には、旋回スクロール5のボス部5Cが後述の偏心ブッシュ11と旋回軸受13とを介して旋回可能に連結されている。
また、回転軸8の基端側には、径方向外向きに延びるサブウェイト10が一体形成され、このサブウェイト10は、後述のバランスウェイト12と旋回スクロール5とが回転するときにそれぞれ生じる遠心力が回転軸8等を傾ける方向の外力(モーメント力)となって作用するのを打消す機能を有している。
11は回転軸8の先端側に設けられた段付筒状の偏心ブッシュで、該偏心ブッシュ11は、旋回スクロール5のボス部5C側を回転軸8に後述の旋回軸受13を介して偏心状態で連結している。そして、偏心ブッシュ11は、回転軸8と一体に回転し、その回転を旋回スクロール5の旋回動作に変換するものである。また、偏心ブッシュ11の外周側には、旋回スクロール5の旋回動作を安定させるためにバランスウェイト12が一体に形成されている。
13は旋回スクロール5のボス部5Cと偏心ブッシュ11との間に配設された旋回軸受を示し、該旋回軸受13は、旋回スクロール5のボス部5Cを偏心ブッシュ11に対して旋回可能に支持し、旋回スクロール5が回転軸8の軸線に対し所定の旋回半径をもって旋回動作するのを補償するものである。
14はケーシング2の底部2Bと旋回スクロール5の背面側との間に設けられた複数の自転防止機構で、該各自転防止機構14は、所謂ボールカップリング機構により構成されている。そして、自転防止機構14は、後述のスラスト受け14A,14Bとボール14C等とを介して旋回スクロール5の自転を防止し、かつスラスト荷重を受承するものである。そして、これらの自転防止機構14は、ケーシング2の各台座部2Dと旋回スクロール5の各取付部5Dとの間にそれぞれ配設されている。
即ち、ボールカップリングからなる自転防止機構14は、ケーシング2の台座部2D側に固定して設けられた第1のスラスト受け14Aと、該第1のスラスト受け14Aと軸方向で対向して旋回スクロール5の取付部5D側に設けられた第2のスラスト受け14Bと、第1,第2のスラスト受け14A,14B間に転動可能に設けられた球状のボール14Cとを含んで構成されている。
また、自転防止機構14のボール14Cは、例えば鋼球等の高い剛性をもった材料により球体として形成され、旋回スクロール5の板体5A等に付加されるスラスト荷重を、スラスト受け14A,14Bと共にケーシング2の台座部2D側で受承するものである。
15は固定スクロール3の外周側に設けられた吸込口である。また、吸込口15は、例えば吸気フィルタ(図示せず)等を介して外部から空気を吸込むもので、この吸込んだ空気は、各圧縮室6内で旋回スクロール5の旋回動作に伴って連続的に圧縮される。
16は固定スクロール3の中心側に設けられた供給口で、該供給口16は、保圧弁21への圧縮流体供給側開口部を構成している。また、供給口16は、複数の圧縮室6のうち最内径側の圧縮室6からの圧縮空気を、後述の保圧弁21を介して貯留タンク18側に向けて吐出するもので、スクロール式空気圧縮機1から見れば吐出口でもある。
また、17は固定スクロール3を半径方向に延びて設けられた圧縮空気排出側開口部となる排出口である。この排出口17は、固定スクロール3の中心側に位置する上流側が収容凹部22の底部22A寄りに接続されている。一方、排出口17は、径方向の外側に位置する下流側が後述の貯留タンク18に接続されている。これにより、排出口17からは、保圧弁21が開弁状態のときに、空気圧縮機1から吐出された圧縮空気が後述の貯留タンク18に向けて吐出される。
18は圧縮流体としての圧縮空気を貯留する外部の貯留タンク(図1参照)で、該貯留タンク18は、後述する保圧弁21の排出口17に導管19等を介して接続されている。そして、貯留タンク18は、スクロール式空気圧縮機1の圧縮室6から供給口16、保圧弁21を介して吐出される圧縮空気を一時的に貯留し、これを空圧機器(図示せず)等に動力源として供給するものである。
次に、スクロール式空気圧縮機1と貯留タンク18との間に設けられた第1の実施の形態による保圧弁21について説明する。この保圧弁21は、圧縮運転を開始した直後(起動直後)に圧縮した空気が外部の貯留タンク18に逃げるのを防止する機能と、運転停止時に貯留タンク18、導管19内の圧縮空気が圧縮室6側に逆流するのを阻止する機能とを有している。また、本実施の形態の保圧弁21は、固定スクロール3に一体的に設けられている。
即ち、21は第1の実施の形態による保圧弁で、該保圧弁21は、固定スクロール3の弁ケース3Dに配設されている。そして、保圧弁21は、図3に示す如く、後述の収容凹部22、連通路23、第1の弁体25、第1のばね部材27、第2の弁体28、第2のばね部材29等により構成されている。
22は固定スクロール3の弁ケース3D内に設けられた保圧弁21の収容凹部である。この収容凹部22は、軸方向の他側に向けて開口した有底穴として形成されている。また、収容凹部22には、底部22Aの中央に供給口16が連通し、内周面22Bの底部22A寄りに排出口17が連通している。さらに、底部22Aには、外周側を縮径して第1の弁座22Cが形成され、供給口16の周囲に位置して第2の弁座22Dが形成されている。
23は供給口16と排出口17との間を連通する連通路(図3ないし図6参照)である。この連通路23は、後述する第1の弁体25によって画成された底部22Aから収容凹部22を介して排出口17に至る空間として形成され、第1の弁体25が開弁したときに供給口16から流入する空気を排出口17側に流通させるものである。
24は収容凹部22の開口側を閉塞するように取付けられた蓋状のばね受けで、該ばね受け24は、第1のばね部材27の付勢力を受承するものである。また、ばね受け24の中央には、後述のばね室26を大気に開放する大気通路24Aが形成されている。
25は収容凹部22内に設けられた第1の弁体である。この第1の弁体25は、底部22Aとばね受け24との間に軸方向に変位可能に挿嵌されている。また、第1の弁体25は、底部22Aと対面する底面部25Aと、該底面部25Aの外周から内周面22Bに沿って延びた筒部25Bとにより有底筒状に形成されている。また、底面部25Aの中心位置には、第2の弁体28の軸部28Aと第2のばね部材29とを取付けるための弁体取付凹部25Cが形成され、外周側には、収容凹部22の第1の弁座22Cに離着座する環状の弁部25Dが形成されている。さらに、筒部25Bの外周側には、内周面22Bとの間を気密に保持するためのシール部材25Eが装着されている。また、第1の弁体25とばね受け24との間には、大気に開放されたばね室26が形成され、該ばね室26には後述する第1のばね部材27が配設されている。
そして、第1の弁体25は、常時は、底面部25Aの外周側に設けた弁部25Dを収容凹部22の第1の弁座22Cに着座させて閉弁し、連通路23を遮断している。一方、連通路23の圧力が設定した圧力よりも高くなったとき、即ち、連通路23の圧力とばね室26の圧力(大気圧)との差圧による押圧力が後述する第1のばね部材27の付勢力よりも大きくなったときに開弁し、連通路23で圧縮空気を流通させる。このように、第1の弁体25は、起動時に圧縮室6の圧力が設定圧力に達するまで逃げないように保持する保圧機能を有している。
27はばね室26内に位置して第1の弁体25とばね受け24との間に設けられた第1のばね部材である。このばね部材27は、第1の弁体25を閉弁方向に付勢するものである。
ここで、第1のばね部材27の付勢力は、スクロール式空気圧縮機1の供給口16から連通路23に流入する圧縮空気の圧力が設定圧力に達するまでは第1の弁体25を収容凹部22の第1の弁座22Cに着座させ、設定圧力を超えたときには第1の弁体25を第1の弁座22Cから離座させるように設定されている。また、このときの設定圧力とは、圧縮室6の圧力によって旋回スクロール5が押圧され、該旋回スクロール5が安定状態で旋回動作できる圧力となっている。
28は第1の弁体25の弁体取付凹部25Cに取付けられた第2の弁体である。この第2の弁体28は、弁体取付凹部25Cに進退可能に挿嵌された軸部28Aと、該軸部28Aの先端部に設けられた円板状の弁部28Bとにより構成されている。
そして、第2の弁体28は、常時は、後述する第2のばね部材29の付勢力で弁部28Bを収容凹部22の第2の弁座22Dに着座させて閉弁し、供給口16と連通路23との間を遮断している。一方、供給口16から圧縮空気が吐出されたときには、直ちに開弁して供給口16から連通路23に圧縮空気を流通させる。さらに、供給口16からの圧縮空気の供給が停止したときには、第2のばね部材29の付勢力で直ちに弁部28Bを第2の弁座22Dに着座させて閉弁し、貯留タンク18、導管19内の圧縮空気が圧縮室6側に逆流するのを阻止する。このように、第2の弁体28は、圧縮空気の逆流防止機能を有している。
29は第1の弁体25の弁体取付凹部25C内に収容された第2のばね部材である。このばね部材29は、第2の弁体28を閉弁方向に付勢するもので、弁体取付凹部25Cと第2の弁体28の弁部28Bとの間に設けられている。また、第2のばね部材29の付勢力は、圧縮室6からの吐出圧力が弱い場合でも第2の弁体28が容易に開弁する値、例えば第1のばね部材27よりも弱いばね力に設定されている。
第1の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機1は、上述したような構成を有するもので、次に、このスクロール式空気圧縮機1の動作について説明する。
まず、スクロール式空気圧縮機1は、電動モータ7によって回転軸8と偏心ブッシュ11を軸線を中心として回転駆動すると、旋回スクロール5は、自転防止機構14により自転を規制された状態で、所定の旋回半径をもって旋回動作を行う。
これにより、固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール5のラップ部5Bとの間に画成された各圧縮室6は、外径側から内径側に向けて連続的に縮小される。そして、これらの圧縮室6のうち外径側の圧縮室6は、吸込口15から流体としての空気を吸込み、この空気を各圧縮室6内で連続的に圧縮しつつ、内径側の圧縮室6から供給口16を介して保圧弁21に向け圧縮空気を供給する。
次に、第1の実施の形態による保圧弁21の働きと旋回スクロール5の旋回動作との関係について述べる。
まず、電動モータ7によって旋回スクロール5を起動(旋回動作を開始)したときには、各圧縮室6はほぼ大気圧となっているため、該各圧縮室6の圧力によって旋回スクロール5を押圧することができない。このため、起動してから圧縮室6の圧力が高くなるまで旋回スクロール5の挙動が不安定になることがある。
このときに、保圧弁21は、図4に示す如く、圧縮空気の供給と共に第2の弁体28が開弁するが、第1の弁体25の弁部25Dが収容凹部22の第1の弁座22Cに着座して閉弁した状態を維持し、連通路23を遮断している。従って、各圧縮室6で圧縮された空気は外部に排出されないため、各圧縮室6内の圧力は設定した圧力まで速やかに昇圧させることができる。これにより、スクロール式空気圧縮機1を起動してから短時間で旋回スクロール5の挙動を安定させることができる。
また、圧縮室6(連通路23)の圧力が設定した値を超えると、図5に示すように、第1のばね部材27に抗して第1の弁体25が第2の弁体28を伴って開弁し、排出口17、導管19を介して貯留タンク18に向け圧縮空気を排出させる。このときには、第1の弁体25は、全開とならず小さく開くだけであるから、圧縮室6の圧力低下を防止することができる。
次に、圧縮室6の圧力が設定値を超えて定常運転状態まで達すると、第1の弁体25は、図6に示すように、ばね受け24に当接して全開となるから、連通路23を通じて大量の圧縮空気を貯留タンク18に供給することができる。
一方、スクロール式空気圧縮機1の運転を停止させると、貯留タンク18や導管19内の圧縮空気が圧縮室6に逆流して旋回スクロール5を逆回転させる虞がある。しかし、保圧弁21は、図7に示す如く、圧縮空気が連通路23を排出側から供給側に逆流するときに、連通路23の圧力に関係なく、第2のばね部材29の付勢力によって第2の弁体28を直ちに閉弁するから、連通路23(供給口16)を遮断することができ、圧縮空気の逆流を防止することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、保圧弁21は、供給口16と排出口17とを連通する連通路23と、該連通路23に供給される圧縮空気の圧力が設定圧力に達するまでは連通路23を遮断し、設定圧力を超えたときに連通路23を開放する第1の弁体25と、空気圧縮機1からの圧縮空気の供給が停止したときに連通路23を遮断して排出側から供給側に圧縮空気が逆流するのを阻止する第2の弁体28とにより構成している。
これにより、スクロール式空気圧縮機1を起動したときには、圧縮室6内の圧力が上昇するまで該圧縮室6内に圧力を保持することにより、この起動から短時間で旋回スクロール5の旋回動作を安定させることができ、がたつきによる摩耗や損傷を防止することができる。また、スクロール式空気圧縮機1を停止させたときには、逆流しようとする圧縮空気を直ちに遮断して旋回スクロール5の逆回転を防止することができる。そして、これら圧力の保持機能と圧縮空気の逆流防止機能とを1つの保圧弁21によって得ることができる。
この結果、スクロール式空気圧縮機1には、保圧弁21を1つだけ取付ければよいから、既存の圧縮機にも容易に対応することができ、組立作業性の向上、コストの低減等を図ることができる。
また、保圧弁21は、圧縮室6の圧力が設定圧力を超えた定常運転状態では、連通路23を全開にすることができるから、該連通路23を通じて大量の圧縮空気を貯留タンク18に供給することができ、貯留タンク18に圧縮空気を効率よく貯えることができる。
次に、図8ないし図11は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、保圧弁を、圧縮流体の通路となる連通孔が形成された弁ポートを有し、この弁ポートを挟んで圧縮流体供給側に位置して連通孔を開閉する第1の弁体を設け、圧縮流体排出側に位置して連通孔を開閉する第2の弁体を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図8において、31は第1の実施の形態による保圧弁21に代えて用いられた第2の実施の形態による保圧弁を示している。この保圧弁31は、固定スクロール3′の弁ケース3D′に一体的に取付けられている。そして、保圧弁31は、図9に示す如く、後述の収容凹部32、連通路33、弁ポート35、第1の弁体36、第1のばね部材38、第2の弁体39、第2のばね部材40等により構成されている。
32は固定スクロール3′の弁ケース3D′に設けられた収容凹部で、該収容凹部32は、軸方向の他側に向けて開口した有底穴として形成されている。この収容凹部32には、底部32A側の内周面32Bに供給口16′が連通し、開口側の内周面32Bに排出口17′が連通している。また、底部32Aには、第2の弁体39を変位可能に取付ける取付筒部32Cが軸方向に突設され、内周面32Bの軸方向の中間位置には、弁ポート35を取付けるための取付段部32Dが縮径して形成されている。なお、第2の弁体39は、取付筒部32Cに隙間を形成して変移可能に取付けられているため、取付筒部32の内部と外部とは同じ圧力となっている。
33は供給口16′と排出口17′との間を連通する連通路で、該連通路33は、収容凹部32の軸方向の中間部から底部32Aに亘って設けられている。この連通路33は、第1の弁体36と第2の弁体39とが開弁したときに、後述する弁ポート35の連通孔35Aを通して供給口16′から排出口17′に圧縮空気を流通させるものである。
34は収容凹部32の開口側を閉塞するように取付けられた蓋状のばね受けで、該ばね受け34は、第1のばね部材38の付勢力を受承するものである。また、ばね受け34の中央には、後述のばね室37を大気に開放する大気通路34Aが形成されている。
35は収容凹部32内の取付段部32Dに取付けられた円板状の弁ポートで、該弁ポート35の中心位置には、連通路33の一部をなし圧縮空気の通路となる連通孔35Aが形成されている。また、弁ポート35には、前記連通孔35Aの他側に位置して第1の弁座35Bが形成され、該第1の弁座35Bは第1の弁体36の弁部36Bが離着座するものである。一方、連通孔35Aの反対側には、第2の弁体39が離着座する第2の弁座35Cが形成されている。
36は収容凹部32内に設けられた第1の弁体で、該第1の弁体36は、弁ポート35とばね受け34との間に軸方向に変位可能に挿嵌されている。また、第1の弁体36は、円柱状のピストン部36Aと、該ピストン部36Aから軸方向に突出し弁ポート35の第1の弁座35Bに離着座する弁部36Bとからなり、前記ピストン部36Aの外周側には、内周面32Bとの間を気密に保持するためのシール部材36Cが装着されている。また、第1の弁体36のピストン部36Aは、ばね受け34との間に連通路33と隔絶されたばね室37を形成し、該ばね室37は、ばね受け34の大気通路34Aを介して大気に開放されている。
そして、第1の弁体36は、常時は、弁部36Bを弁ポート35の第1の弁座35Bに着座させて閉弁し、連通路33を遮断している。一方、連通路33の圧力が設定した圧力よりも高くなったとき、即ち、連通路33の圧力とばね室37の圧力(大気圧)との差圧による押圧力が後述する第1のばね部材38の付勢力よりも大きくなったときに開弁し、連通路33で圧縮空気を流通させる。このように、第1の弁体36は、起動時に圧縮室6の圧力が設定圧力に達するまで逃げないように保持する保圧機能を有している。
38はばね室37内に位置して第1の弁体36とばね受け34との間に設けられた第1のばね部材である。このばね部材38は、第1の弁体36を閉弁方向に付勢するものである。
ここで、第1のばね部材38の付勢力は、スクロール式空気圧縮機1の供給口16′から連通路33に流入する圧縮空気の圧力が設定圧力に達するまでは第1の弁体36を弁ポート35の第1の弁座35Bに着座させ、設定圧力を超えたときには第1の弁体36を第1の弁座35Bから離座させるように設定されている。また、このときの設定圧力とは、圧縮室6の圧力によって旋回スクロール5が押圧され、該旋回スクロール5が安定状態で旋回動作できる圧力となっている。
39は弁ポート35を挟んで第1の弁体36に対向して配設された第2の弁体である。この第2の弁体39は、常時は、後述する第2のばね部材40の付勢力で弁ポート35の第2の弁座35Cに着座させて閉弁し、連通路33を遮断している。一方、第1の弁体36が開弁したときには、この開弁に伴ってほぼ同時に開弁して連通路33で圧縮空気を流通させる。さらに、供給口16′からの圧縮空気の供給が停止したときには、第2のばね部材40の付勢力で弁ポート35の第2の弁座35Cに直ちに着座して閉弁し、貯留タンク18、導管19内の圧縮空気が圧縮室6側に逆流するのを阻止する。このように、第2の弁体39は、圧縮空気の逆流防止機能を有している。
40は収容凹部32の取付筒部32C内に収容された第2のばね部材で、該ばね部材40は、第2の弁体39を閉弁方向に付勢するものである。また、第2のばね部材40の付勢力は、圧縮室6からの吐出圧力が弱い場合でも第2の弁体39が容易に開弁する値、例えば第1のばね部材38よりも弱いばね力に設定されている。
次に、第2の実施の形態による保圧弁31の動作について、図9ないし図11に従って述べる。
まず、スクロール式空気圧縮機1を起動したときには、図9に示すように、第1の弁体36の弁部36Bが弁ポート35の第1の弁座35Bに着座して閉弁し、連通路33を遮断している。従って、各圧縮室6で圧縮された空気は外部に排出されないため、各圧縮室6内の圧力は設定した圧力まで速やかに高めることができる。これにより、スクロール式空気圧縮機1を起動してから短時間で旋回スクロール5の挙動を安定させることができる。
また、圧縮室6(連通路33)の圧力が設定した値を超えると、図10に示すように、第1のばね部材38に抗して第1の弁体36が開弁すると共に、この第1の弁体36の開弁に伴ってほぼ同時に第2の弁体39が開弁するから、連通路33、排出口17、導管19を介して貯留タンク18に圧縮空気を供給することができる。このときには、第1の弁体36は、全開とならず小さく開くだけであるから、圧縮室6の圧力低下を防止することができる。
次に、圧縮室6の圧力が設定値を超えて定常運転状態まで達すると、第1の弁体36は、図11に示すように、ばね受け34に当接して全開となるから、連通路33を通じて大量の圧縮空気を貯留タンク18に供給することができる。
一方、スクロール式空気圧縮機1の運転を停止させると、貯留タンク18や導管19内の圧縮空気が圧縮室6に逆流して旋回スクロール5を逆回転させる虞がある。しかし、保圧弁31は、図9に示す如く、圧縮空気が連通路33を排出側から供給側に逆流するときに、連通路33の圧力に関係なく、第2のばね部材40の付勢力によって第2の弁体39を閉弁することができ、連通路33を遮断して圧縮空気の逆流を防止することができる。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図12および図13は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、保圧弁を、流体圧縮機と独立して設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図12において、41は第1の実施の形態による保圧弁21に代えて用いられた第3の実施の形態による保圧弁を示している。この保圧弁41は、スクロール式空気圧縮機1と独立して該圧縮機1と貯留タンク18との間に設けられている。そして、スクロール式空気圧縮機1と別個に設けられた第3の実施の形態による保圧弁41は、図13に示す如く、後述の弁ケース42、連通路43、第1の弁体45、第1のばね部材47、第2の弁体48、第2のばね部材49等により構成されている。そして、保圧弁41は、スクロール式空気圧縮機1の吐出口50と別個の導管51を介して接続されている。
42は保圧弁31の外形をなす弁ケースで、該弁ケース42は、底部42Aと筒部42Bとにより有底筒状に形成され、底部42Aには圧縮流体供給側開口部となる供給口42Cが設けられ、筒部42Bには圧縮流体排出側開口部となる排出口42Dが設けられている。また、底部42Aの内側端面は後述する第1の弁体45が離着座する平坦な第1の弁座42Eとなり、その内周端となる供給口42Cの端部は、第2の弁体48が離着座する第2の弁座42Fとなっている。さらに、筒部42Bの内周側には、第1の弁体45との間を気密に保持するためのシール部材42Gが装着されている。
43は供給口42Cと排出口42Dとの間を連通する連通路(遮断した状態でのみ図示)である。この連通路43は、第1の弁体45と第2の弁体48とが開弁したときに、供給口42Cから排出口42Dに圧縮空気を流通させるものである。
44は弁ケース42の開口側を閉塞するように取付けられた蓋状のばね受けで、該ばね受け44は、第1のばね部材47の付勢力を受承するものである。また、ばね受け44の中央には、後述のばね室46を大気に開放する大気通路44Aが形成されている。
45は弁ケース42の筒部42B内に設けられた第1の弁体で、該第1の弁体45は、底部42Aとばね受け44との間に位置して軸方向に変位可能に挿嵌されている。また、第1の弁体45は、筒部42Bに摺接するピストン部45Aと、該ピストン部45Aの一端から縮径して軸方向に突出し第1の弁座42Eに離着座する弁部45Bと、該弁部45Bからピストン部45Aに亘って形成された段付状の弁収容穴45Cとからなり、前記ピストン部45Aの外周面は、弁ケース42に設けたシール部材42Gに気密に摺接する。また、第1の弁体45のピストン部45Aは、ばね受け44との間に連通路43と隔絶されたばね室46を形成し、該ばね室46は、ばね受け44の大気通路44Aを介して大気に開放されている。
そして、第1の弁体45は、常時は、弁部45Bを弁ケース42の第1の弁座42Eに着座させて閉弁し、連通路43を遮断している。一方、連通路43の圧力が設定した圧力よりも高くなったとき、即ち、連通路43の圧力とばね室46の圧力(大気圧)との差圧による押圧力が後述する第1のばね部材47の付勢力よりも大きくなったときに開弁し、連通路43で圧縮空気を流通させる。このように、第1の弁体45は、起動時に圧縮室6の圧力が設定圧力に達するまで逃げないように保持する保圧機能を有している。
47はばね室46内に位置して第1の弁体45とばね受け44との間に設けられた第1のばね部材である。このばね部材47は、第1の弁体45を閉弁方向に付勢するものである。
ここで、第1のばね部材47の付勢力は、スクロール式空気圧縮機1から吐出されて連通路43に流入する圧縮空気の圧力が設定圧力に達するまでは第1の弁体45を弁ケース42の第1の弁座42Eに着座させ、設定圧力を超えたときには第1の弁体45を第1の弁座42Eから離座させるように設定されている。また、このときの設定圧力とは、圧縮室6の圧力によって旋回スクロール5が押圧され、該旋回スクロール5が安定状態で旋回動作できる圧力となっている。
48は第1の弁体45の弁収容穴45C内に設けられた第2の弁体で、該第2の弁体48はボール弁体として構成されている。また、第2の弁体48は、常時は、後述する第2のばね部材49の付勢力で弁ケース42の第2の弁座42Fに着座させて閉弁し、連通路43を遮断している。一方、供給口42Cから圧縮空気が供給されたときには、開弁して供給口42Cから連通路43で圧縮空気を流通させる。さらに、供給口42Cからの圧縮空気の供給が停止したときには、第2のばね部材49の付勢力で弁ケース42の第2の弁座42Fに直ちに着座して閉弁し、貯留タンク18、導管19内の圧縮空気が導管50を介して圧縮室6側に逆流するのを防止する。このように、第2の弁体48は、圧縮空気の逆流防止機能を有している。
49は収容凹部32の取付筒部32C内に収容された第2のばね部材で、該ばね部材49は、第2の弁体48を閉弁方向に付勢するものである。また、第2のばね部材49の付勢力は、圧縮室6からの吐出圧力が弱い場合でも第2の弁体48が容易に開弁する値、例えば第1のばね部材47よりも弱いばね力に設定されている。
なお、第3の実施の形態による保圧弁41の各弁体45,48等の動作は、前述した第1の実施の形態とほぼ同様であるので、その説明は省略するものとする。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、保圧弁41をスクロール式空気圧縮機1と別個に設けることができるから、既存の圧縮機に対しても特別な加工を施すことなく簡単に取付けることができる。
なお、各実施の形態では、スクロール式流体圧縮機として電動モータ7が一体的に設けられたスクロール式空気圧縮機1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電動モータが別体に設けられ、ベルト等を介して旋回スクロールを駆動する形式のスクロール式空気圧縮機に適用してもよく、また真空ポンプ等にも広く適用できるものである。
以上の各実施の形態で述べたように、保圧弁は、流体圧縮機を起動して圧縮流体が供給されたときに、圧縮流体の圧力が設定圧力に達するまでは、圧縮流体を外部に排出しないようにすることができる。
従って、保圧弁は、流体圧縮機を起動したときに、供給される圧縮流体の圧力を短時間で設定した圧力まで高めることができるから、例えば流体圧縮機がスクロール式流体圧縮機の場合、動作部分である旋回スクロールの挙動を安定させることができる。また、保圧弁は、設定圧力を超えたときに開弁することで多くの圧縮流体を効率よく外部に排出することができる。さらに、保圧弁は、圧縮流体の供給が停止したときには、圧縮流体排出側から圧縮流体が逆流するのを直ちに止めることができる。
この結果、保圧弁は、流体圧縮機に対して1つだけ取付けることで、起動時の圧力を保持する機能と、圧縮流体の逆流を防止する機能とを得ることができるから、既存の圧縮機にも容易に対応することができ、組立作業性の向上、コストの低減等を図ることができる。
請求項1の発明によれば、圧縮流体供給側から圧縮流体の供給が開始されたときには、第2の弁体が直ちに凹部内で変位して開弁する。また、圧縮流体供給側から供給される圧縮流体の圧力が設定圧力を超えたときには、第1の弁体が第2の弁体を伴って開弁する。さらに、圧縮流体供給側からの圧縮流体の供給が停止したときには、第2の弁体が直ちに閉弁することにより、圧縮流体の逆流を阻止する。
請求項2の発明によれば、圧縮流体供給側から供給される圧縮流体の圧力が設定圧力を超えたときには、第1の弁体が開弁すると共に、第2の弁体が第1の弁体の開弁に伴って直ちに開弁する。また、圧縮流体供給側からの圧縮流体の供給が停止したときには、第2の弁体が直ちに閉弁することにより、圧縮流体の逆流を阻止する。
請求項3の発明によれば、スクロール式流体圧縮機の吐出口に保圧弁の圧縮流体供給側を接続した場合には、運転起動から短時間で各スクロール間の圧縮室の圧力を上昇させることができ、スクロールの挙動を安定させることができる。