本発明に係る冷蔵庫の実施形態を、図1から図13を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の冷蔵庫1の正面外形図であり、図2は、冷蔵庫1の庫内の構成を表す図1におけるX−X縦断面図であり、図3は、冷蔵庫1の庫内の構成を表す正面図であり、冷気ダクトや吹き出し口の配置などを示す図であり、図4は図2の要部拡大説明図である。図5は図3の要部拡大説明図である。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、食品収納室として、上方から、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6を備えている。なお、以下本明細書中では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍室60,冷蔵室2と野菜室6の総称として冷蔵室61と呼ぶことがある。
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
また、冷蔵庫1は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサと、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラーム,冷蔵室2や野菜室6の温度設定や冷凍室60の温度設定をする図示しない温度設定器等を備えている。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10は真空断熱材25を実装している。
庫内は、断熱仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
扉2a,2b(図1参照)の庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉4a,5a,6aと一体に引き出される、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2中(3b)で表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。なお上段冷凍室4は、急速冷凍室として使用できる。急速冷凍性能の向上のために、上段冷凍室4の収納容器4bには図示しないアルミトレーが備えられており、冷凍速度が向上するようになっている。
図2に示すように(適宜図3〜図5参照)、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内ファン9により冷却器7と熱交換して冷やされた空気(冷気、以下、冷却器7で冷やされてできた低温空気を冷気と称する)が冷蔵室送風ダクト11,上段冷凍室送風ダクト12を介して、冷蔵室2,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ50の開閉により制御される。
ちなみに、冷蔵室送風ダクト11,上段冷凍室送風ダクト12は、図3に破線で示すように冷蔵庫1の各室の背面側に設けられている。
具体的には、冷蔵室ダンパ20が開状態、冷凍室ダンパ50が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。冷気は、冷蔵室2の冷却を終えた後に、冷蔵室2の背面右側下部に備えられた冷蔵室戻り口2dから流入し、冷蔵室−野菜室連通ダクト16を介して、野菜室6背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口6cから野菜室6に流入して野菜室6を冷却する。野菜室6を冷却した冷気は、断熱仕切壁29の下部前方に設けられた、野菜室戻り口6dから、野菜室戻りダクト18を介して、冷却器7の幅とほぼ等しい幅の野菜室戻り吹き出し口18aから流入する(図3または図5参照)。
図3では冷凍室ダンパ50が省略されているが、冷凍室ダンパ50が開状態のとき、冷却器7で熱交換された冷気が庫内ファン9により昇圧され、上段冷凍室送風ダクト12を経て吹き出し口3c,4c,5cからそれぞれ製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5へ送風される。なお、図3に示すとおり、本実施形態の冷蔵庫1では、冷凍室60の吹き出し口3c〜5cは、計7個備えられており、吹き出し口3c〜5cの周長の合計は1200mmである。
図4に示すように本実施形態の冷蔵庫1では、冷却器7の上方に庫内ファン9を設け、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を設けている。さらに、冷凍室ダンパ50の上方に冷凍室60の上段に位置する上段冷凍室4に冷気を送り出す上段冷凍室吹き出し口4cと製氷室吹き出し口3c(図3参照)が備えられている。なお、上段冷凍室吹き出し口4cは、冷凍室の吹き出し口の中で最も開口面積が大きくなっている。
図5に示すように、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷却器収納室8の側方に備えられた冷蔵室−野菜室連通ダクト16を通って、野菜室6に流入する。野菜室6からの戻り冷気は、野菜室戻り口6d(図2参照)から流入し、図4に示すように、断熱仕切壁29の中に設けられた野菜室戻りダクト18を通って、冷却器収納室8の下部前方に設けられた、冷却器7の幅とほぼ等しい幅寸法の野菜室戻り吹き出し口18a(図5参照)から、冷却器収納室8に流入する。一方、冷凍室60を冷却した冷気は、図4に示すように、冷却器収納室8と冷凍室60を仕切る仕切板54の下部に備えられた、冷却器7の幅とほぼ等しい幅寸法の冷凍室戻り口17を介して冷却器収納室8に流入する。なお、冷却器収納室8の下方には、除霜ヒータ22が備えられている。除霜ヒータ22は、ガラス管ヒータであり、ガラス管の外周にはアルミニウム製の放熱フィン22aが備えられている。
除霜ヒータ22の上方には、除霜水が除霜ヒータ22に滴下することを防止するために、上部カバー53が設けられている。また、図5に示すとおり、冷却器収納室8の下部前方には、冷却器7の除霜中の上昇気流が流入する空間である、暖気収納スペース26が設けられている。この暖気収納スペース26によって、除霜ヒータ22に通電することによって実施される除霜運転中に生じる暖気(上昇気流)が、冷凍室60に流入することを抑えることができる。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜は、除霜運転時に解かされ、その際に生じた除霜水は冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して後記する機械室19に配された蒸発皿21に達し、圧縮機24及び、機械室19内に配設される図示しない凝縮器及び圧縮機24の発熱により蒸発させられる。
また、冷却器7の正面から見て左上部には冷却器7に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、冷却器温度と称する),冷蔵室2の温度(以下、冷蔵室温度と称する),下段冷凍室5の温度(以下、冷凍室温度と称する)を検知できるようになっている。更に、冷蔵庫1は、庫外の温度を検知する図示しない外気温度センサを備えている。なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置してある。
ちなみに、本実施形態では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約80gと少量にしている。
冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されており(図2参照)、制御基板31は、前記した外気温度センサ,冷却器温度センサ35,冷蔵室温度センサ33,野菜室温度センサ33a,冷凍室温度センサ34,扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する前記した扉センサ,冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続し、前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON,OFF等の制御,冷蔵室ダンパ20及び冷凍室ダンパ50を個別に駆動する図示省略のそれぞれのアクチュエータの制御,庫内ファン9のON/OFF制御や回転速度制御,前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
次に、本実施形態の冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の詳細構造について図8〜図10及び図13を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態の冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の構造を正面から見た図、図9は、本実施形態の冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の構造を側方から見た縦断面図である。また、図10は本実施形態の冷蔵庫1の冷凍室ダンパ50の斜視図、図13は庫内ファン9周辺構造を背面側から見た分解斜視図である。
本実施形態の冷蔵庫1で使用する冷凍室ダンパ50は、図10に示すとおり、開口102を一面に備えた、例えば樹脂製の一体成形された横長のフレーム103と、フレーム103の一端(長方形状の短手部)にモータや減速歯車などの駆動系を内蔵した駆動手段100を備えるものである。開閉板104の一面には、例えば発泡ウレタンや発泡ポリエチレンといった柔軟な材料で成形された緩衝部材104aを備えている。冷凍室ダンパ50は、フレーム103の開口102近傍の内側の面(開閉板と対向する側の面)103aに、緩衝部材104aが押し付けられることにより閉状態となる。したがって、そのシール性能は、開口102の周長102aに依存する。ここで、開口102にはフレーム103の上辺と下辺が連結する連結部103bが備えられているが、これは、変形抑制のために備えられるものであり、シール性能に直接寄与するものではない。したがって、冷凍室ダンパ50のシール性能を考える際の、開口102の周長102aには、シール性能に直接寄与しない連結部103bの長さは含まない。なお、本実施形態の冷蔵庫1で使用する冷凍室ダンパ50の開口102の大きさは、180mm×35mmであり、シール性能に寄与する周長102aは430mmである。また、開口102の外周には、冷凍室ダンパ50取り付け時の位置合せと、開口102の補強を兼ねたリブ103cが備えられている。
図8中に示すように、本実施形態の冷蔵庫1の庫内ファン9は、ケーシング9aの形状が略方形であり、ボス部にモータを備えたモータ一体型のファンである。庫内ファン9の吐出側は、冷気を集約する冷気集約ダクト13を形成すべくファンカバー70が備えられている。ファンカバー70は、庫内ファン9の前方を覆うように設けられている。冷気集約ダクト13の外周部13aは、庫内ファン9の回転中心から外周部13aまでの距離が、最小となる位置(図8中に示した最小寸法位置)から、庫内ファン回転方向に上流から下流に向けて次第に拡大するように拡大風路13bとなっている。また、本実施形態の冷蔵庫1では、冷気集約ダクト13の拡大風路13bは、庫内ファン回転中心から風路外周壁までの距離が、最小となる位置から、庫内ファン回転方向に180度以上有している。
すなわち、拡大風路13bは、始端(上流)から終端(下流)まで180度又は180度よりも大きい角度を有する。また、出口開口13cは、横長であって該出口開口13cの長手方向が拡大風路13bの終端(下流)に位置する。また、ファンカバー70は、庫内ファン9に対向する位置に窪みを有し、当該窪みの周囲に拡大風路13bが設けられている。すなわち、拡大風路13bを冷気が流れて整流されることで、出口開口13bをスムーズに通過して、上段冷凍室4及び下段冷凍室5に流入する。これにより、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の冷却効率を向上することができる。
また、図4に示すように、ファンカバー70の前方を覆うように、上段冷凍室送風ダクト12が設けられている。すなわち、冷却器収納室8と上段冷凍室4及び下段冷凍室5との間に、冷気集約ダクト13及び上段冷凍室送風ダクト12が配置される。これにより、空気断熱層が貯蔵空間の後方に形成されるため、上段冷凍室4及び下段冷凍室5が冷却器収納室8から受ける熱影響(例えば、冷却器7の除霜運転時の温度上昇等による影響)は抑制され、貯蔵空間の温度変化を抑制できる。
また、図8中に示すとおり、庫内ファン9は水平面から角度β1(本実施形態の冷蔵庫1ではβ1は10度)だけ傾斜させて配設している。
図9に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、開口102が略前方に向くように配設しているが、その配設位置は、冷凍室ダンパ50のリブ103cを、図8に示す冷気集約ダクト13の出口開口13c(出口開口13cは冷凍室ダンパ50の開口102より大きい)に一致させることで容易に定まるようになっている。また、図9に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、回転軸101が、上側になるように配設してある。さらに、冷凍室ダンパ50の開閉板104は、背面側に開き、その開角度θは、運転状態によって異なり、0度(全閉),60度,90度(全開)の状態で使用される(運転状態と開角度の関係の詳細は後述)。
図8に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、水平面から角度β2(本実施形態の冷蔵庫1ではβ2は6度)だけ傾斜させて設置するようにしている。また、図9に示すとおり、庫内ファン9は、角度α1(本実施形態の冷蔵庫1ではα1は13度)だけ後方に傾斜、冷凍室ダンパ50は角度α2(本実施形態の冷蔵庫1ではα2は6度)だけ後方に傾斜して設置するようにしている。
なお、冷気集約ダクト13の出口開口13cの大きさは、188.5mm×43mmであり、その周長13dは、463mmである。
ファンホールド71には、冷気集約ダクト13と、冷却器収納室8とが連通する連通孔75が設けられている。なお、連通孔75は、冷気集約ダクト13内の下端に位置するように設けている。
また、冷気集約ダクト13内(ファンカバー内面70a)の庫内ファン9の下部の領域には、ファンカバーヒータ76が配設されている。
なお、ファンカバーヒータ76は、図9に示すとおり、冷気集約ダクト13内から、連通孔75を経て、冷却器収納室8内に延伸させた部分76aを有している。
なお、図13に示すとおり、ファンカバー70は仕切板54と一体成型品となっている。また、庫内ファン9を保持する部材(ファンホールド71)は、ファンカバー70とは別体となっており、図13に示すようにファンカバーの背面側に組みつけられる。
ファンカバーヒータ76は、図8及び図9で示すように、ファンカバー内面70aに設けられる。また、庫内ファン9が取り付けられたファンホールド71の連通孔75に、ファンカバーヒータ76の延伸部76aを通して、ファンホールド71はファンカバー70にねじ等で固定される。最後に、ファンカバーヒータ76の延伸部76aを下側に曲げて、仕切板54に貼り付ける。以上のようにして、ファンカバーヒータ76が設けられている。
次に、本実施形態の冷蔵庫1の冷却運転の制御について図6を参照しながら説明する。
図6は本実施形態の冷蔵庫1の基本的な制御を表す制御フローチャートである。制御は、制御基板31(図2参照)のCPUがROMに格納されたプログラムを実行することによって行われる。
本実施形態の冷蔵庫1の冷却運転は、冷凍室運転,冷蔵室運転,冷蔵冷凍運転,霜冷却運転及びOFFからなる。冷凍室運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ閉,冷凍室ダンパ開(開角度θ=90度(開角度の定義は図9参照)),圧縮機ON(高回転)」の状態で、冷凍室60を冷却する運転であり、冷蔵室運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ閉(開角度θ=0度),圧縮機ON(低回転)」の状態で、冷蔵室61の冷却を実施する運転、冷蔵冷凍運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ開(開角度θ=60度),圧縮機ON(高回転)」の状態で、冷蔵室61と冷凍室60の両方を冷却する運転である。また、霜冷却運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ閉,圧縮機OFF」の状態で、冷蔵室61の冷却を実施する運転であり、OFFは、送風機も圧縮機も停止させ、冷却を行わない状態である。
図6に示すように、冷蔵庫1は電源投入により運転が開始され(スタート)、冷蔵庫1の庫内各室が冷却され、基本的な熱負荷が、庫外からの熱侵入のみとなった時点から、それ以降は、ユーザーが扉の開閉を行い熱負荷が増加する、あるいは、庫外温湿度環境が変化して熱侵入量が変化するといったことがなければ、一定の運転パターンを繰り返す(安定冷却運転)。図6では、この安定冷却運転状態に至るまでの制御過程は省略している。
なお、本実施形態の冷蔵庫1の安定した冷却運転時には、野菜室6の温度に基づく制御は行わないので、野菜室6に関する説明は省略する(以下の制御の説明では冷蔵室2の中に野菜室6も含む)。
安定冷却運転時は、一定の運転パターン(運転サイクル)を繰り返すが、ここでは冷凍室運転が実施されている状態から説明をする(ステップS101)。冷凍室運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ閉,冷凍室ダンパ開,圧縮機ON(高回転)」の状態で、冷凍室60の冷却を実施する運転である。
冷凍室運転が実施されている状態で、冷蔵室扉2a、あるいは、2bの開閉を検知する冷蔵室扉センサによって冷蔵室扉2a、あるいは、2bの開閉が検知されると(ステップS102)、ステップS201に進む(ステップS201については後述)。冷蔵室扉2a、あるいは、2bの開閉がなければ、続いて、冷蔵室温度センサ33によって検知される冷蔵室温度があらかじめ設定されている冷蔵室上限温度TR_2(本実施形態の冷蔵庫1ではTR_2=6℃)より高いか否かが判定される(ステップS103)。
冷蔵室温度>冷蔵室上限温度TR_2となっていない場合(No)(冷蔵室温度>冷蔵室上限温度TR_2となっている場合(Yes)の制御は後述)、冷凍室温度センサ34によって検知される冷凍室温度が、あらかじめ設定されている冷凍室下限温度TF_1(本実施形態の冷蔵庫1ではTF_1=−21℃)より低いかどうかが判定される(ステップS104)。なお、冷凍室温度<冷凍室下限温度TF_1となっていない場合(No)は、再びステップS101に戻る。
ステップS104で、冷凍室温度<冷凍室下限温度TF_1となった場合(Yes)は、続いて、冷蔵室温度と、あらかじめ設定されている判定基準温度TR_a(本実施形態の冷蔵庫1ではTR_a=5℃),TR_b(本実施形態の冷蔵庫1ではTR_b=4℃)との比較を行い、その比較結果に基づいて、冷却器温度センサ35の検知温度に関する基準温度Tevpの値を選択する。具体的には、冷蔵室温度>TR_aであればTevp=Tevp_1(本実施形態の冷蔵庫1ではTevp_1=3℃)とし、TR_a≧冷蔵室温度>TR_bであれば、Tevp=Tevp_2(本実施形態の冷蔵庫1ではTevp_2=−10℃)とし、TR_b≧冷蔵室温度であれば、Tevp=Tevp_3(本実施形態の冷蔵庫1ではTevp_2=−18℃)とする(ステップS105)。
したがって、Tevpの値は、外気温度が高く、冷蔵室温度が上昇しやすい場合には、Tevp_1が選択され、外気温度が低く、冷蔵室温度が上昇し難い場合には、Tevp_3が選択され、その間程度の外気温度であればTevp_2が選択される。また、例えば、食品かすなどを挟みこみ、冷蔵室扉2a、あるいは、2bにわずかな隙間が生じ、そのために定常的に熱負荷は増えるが、冷蔵室扉センサは隙間が小さいために扉は閉状態と認識して扉開放状態を知らせるアラームが鳴動しない状態となることがある。この場合には、外気温が比較的低くても、冷蔵室の温度が上昇しやすくなることがあり、Tevpの値は、Tevp_2やTevp_1が選択されることもある。
続いて霜冷却運転が実施される(ステップS106)。霜冷却運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ閉,圧縮機OFF」の状態で冷蔵室61が冷却される運転である。霜冷却運転が実施されている状態では、冷蔵室温度があらかじめ設定されている冷蔵室下限温度TR_1(本実施形態の冷蔵庫1ではTR_1=1.5℃)より低いか否か(ステップS107)、冷却器温度がステップS105で設定された基準温度Tevpより高いか否か(ステップS108)が判定され、冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR_1を満足せず(No)、また、冷却器温度>基準温度Tevpを満足しない場合(No)には、冷凍室温度が、あらかじめ設定されている圧縮機ON温度TF_2(本実施形態の冷蔵庫1ではTF_2=−19℃)より高いか否かが判定され(ステップS109)、冷凍室温度>圧縮機ON温度TF_2が満足されない場合(No)には、再びステップS107に戻る。
ステップS109において、冷凍室温度>圧縮機ON温度TF_2となっている(Yes)と判定された場合は、続いて圧縮機がONされて、低回転(本実施形態の冷蔵庫1ではこのときの圧縮機回転数は1200min-1)で運転される冷蔵室運転となる(ステップS110)。すなわち、冷蔵室運転とは、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ閉,圧縮機ON(低回転)」の状態で、冷蔵室61の冷却を実施する運転である。
冷蔵室運転が実施されている状態では、冷凍室温度があらかじめ設定されている冷凍室上限温度TF_3(本実施形態の冷蔵庫1ではTF_3=−16℃)より高いか否かが判定され(ステップS111)、冷凍室温度>冷凍室上限温度TF_3が満足されない(No)と判定された場合には(冷凍室温度>冷凍室上限温度TF_3が満足される場合(Yes)の制御は後述)、冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR_1の判定に移る(ステップS112)。冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR_1が満足されない場合(No)には、再びステップS111に戻る。
ステップS112において、冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR_1が満足された場合(Yes)、「冷凍室ダンパ開,冷蔵室ダンパ閉」となり(ステップS113)、続いて、圧縮機24が高回転(本実施形態の冷蔵庫1ではこのときの圧縮機回転数は1900min-1)になるとともに、庫内ファン9が停止される(ステップS114)。所定時間(本実施形態の冷蔵庫1では30秒)経過後(ステップS115)、庫内ファン9が稼動され、冷凍室運転が開始される(ステップS116)。ステップS116の冷凍室運転は、ステップS101で説明した冷凍室運転の状態であるので、以上が本実施形態の冷蔵庫1の安定冷却運転時の運転サイクルとなる。
なお、一般に冷蔵庫では、扉開閉や、比較的温度が高い食品を収納するといったことがあると、熱負荷が一時的に増すことになる。以下では、本実施形態の冷蔵庫1の熱負荷が一時的に増した場合の制御について説明する。
本実施形態の冷蔵庫1では、ステップS102において、冷蔵室扉2a、あるいは、2bの開閉の有無を判定しており、冷蔵室扉2a、あるいは、2bの扉開閉があった場合、ステップS201に進むようになっている。ステップS201では、冷蔵室上限温度TR_2がTR_2′に置き換わる(本実施形態の冷蔵庫1ではTR_2=6℃がTR_2′=8℃になる)。冷蔵室上限温度TR_2を、TR_2′と上書きしたらステップS101に戻る。ステップS101に戻ると、扉が既に閉じられていれば(ステップS102がNoと判定されれば)、続いてステップS103において、冷蔵室温度>冷蔵室上限温度TR_2の判定が行われる。ここでは、ステップS201において、冷蔵室上限温度TR_2がTR_2′で上書きされているため、冷蔵室上限温度が高くなっている。したがって、冷蔵室2の扉開閉がない場合よりも、ステップS103における冷蔵室温度>冷蔵室上限温度TR_2は満足され難くなる。ステップS103における冷蔵室温度>冷蔵室上限温度TR_2が満足された場合(Yes)は、冷蔵室2の冷却が必須な状態とみなし、冷蔵室ダンパ20を開状態として、冷蔵冷凍運転、すなわち、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ開,圧縮機ON(高回転)」の運転として、冷蔵室61と冷凍室60の両方が冷却される(ステップS301)。ステップS301により冷蔵冷凍運転が開始された後には、ステップS112に移る。なお、冷蔵室上限温度TR_2は、所定時間(本実施形態の冷蔵庫1では30分)経過後にTR_2′(=8℃)から再び元の値のTR_2(=6℃)に戻るようになっている。
また、ステップS112によって冷蔵室運転中に冷凍室温度>冷凍室上限温度TF_3の判定が行われる。冷凍室温度>冷凍室上限温度TF_3が満足された場合(Yes)、冷凍室60の冷却が必須な状態とみなし、圧縮機24を高回転とし、冷凍室ダンパ50を開状態として、冷蔵冷凍運転、すなわち、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ開,圧縮機ON(高回転)」の運転として、冷蔵室61と冷凍室60の両方が冷却される(ステップS301)。ステップS501により冷蔵冷凍運転が開始された後には、ステップS112に移る。
また、ステップS107(冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR_1)、または、ステップS108(冷却器温度>Tevp(ステップS105で設定された基準温度))の何れかが満足される(Yes)と、霜冷却運転中に庫内ファンが停止され(ステップS401)、ステップS109に移る。
図7は、本実施形態の冷蔵庫1を、外気温度が30℃、相対湿度70%の環境に設置し、安定冷却運転の状態になった際の庫内の温度変化と、庫内ファン9,冷蔵室ダンパ20,冷凍室ダンパ50及び圧縮機24の制御状態を表すタイムチャートである。なお、詳細な測定条件はJISC9801:2006に則っている。
図7に示すように、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ閉,冷凍室ダンパ開,圧縮機ON(高回転)」の状態で実施される冷凍室運転は、経過時間taにおいて、冷凍室温度が冷凍室下限温度TF_1に達したため(図6におけるステップS104)、続いて、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ閉,冷凍室ダンパ開,圧縮機OFF」の状態で実施される霜冷却運転となっている(図6におけるステップS106)。なお、図6におけるステップS105によって、冷蔵室温度>TR_a(TR_a=5℃)となったため、Tevpは、Tevp=Tevp_1(Tevp_1=3℃)となっている。霜冷却運転の実施中は、冷凍室60の冷却は行われていないので、冷凍室温度は上昇し、経過時間tbで圧縮機ON温度TF_2に達している(図6におけるステップS109)ので、続いて、圧縮機24が低回転で稼動し、「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ開,冷凍室ダンパ閉,圧縮機ON(低回転)」の冷蔵室運転となる(図6のステップS110)。経過時間tbまでは、圧縮機24が稼動しない霜冷却であったのに対して、経過時間tbからは圧縮機24が稼動する冷蔵室運転となったことで、冷蔵室61の冷却が加速され、経過時間tcで、冷蔵室下限温度TR_1に達している(図6におけるステップS112)。したがって、次に、冷凍室運転(「庫内ファンON,冷蔵室ダンパ閉,冷凍室ダンパ開,圧縮機ON(高回転)」)に移るが、冷凍室運転開始時には、所定時間Δt(Δt=30秒間)の間、庫内ファン9が停止され(図6におけるステップS113〜ステップS115)、所定時間Δt経過後に、庫内ファン9が稼動され冷却が開始される(図6におけるステップS116)。
以上、本実施形態の冷蔵庫の構造及び基本的な制御方式を説明したが、以下では本実施形態の冷蔵庫の奏する効果を説明する。
本実施形態の冷蔵庫は、庫内ファン9と、その前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室(冷凍室60)との間に、庫内ファン9の前方に備えられた室へ向かう全風量を集約すべく冷気集約ダクト13を備え、冷気集約ダクト13の出口部に単一のダンパを備えている。
これにより、スペース効率がよく、且つ、低コストで、庫内ファンの前方に備えられた室の送風を制御することが可能となる。以下で図11及び図12を参照しながら理由を説明する。
図11は、庫内ファン9と、その前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室80との位置関係を表す模式図である。また、図11は、庫内ファン9と、その下方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室81との位置関係を表す模式図である。図12に示す、庫内ファン9の下方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室81への送風を遮断すべくダンパの設置を考えた場合、図12中に示すように、庫内ファン9から、吹き出し口81a,81bに冷気を導く風路は、複数の吹き出し口を供えた室81に送られる冷気のすべてが通る風路(単一風路)81cとなる部分があるので、単一風路81c中にダンパ91を設置することで、ダンパ設置のためのスペースを最小限に抑えられ、スペース効率よくダンパを設置できる。一方で、図11に示す、庫内ファン9の前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室80への送風を遮断すべくダンパの設置を考えた場合、庫内ファン9から、前方に備えられた室80の複数の吹き出し口80a,80bに至る風路には、単一風路となる部分がないので、室80への送風の全てを遮断するには、図11中に示すように、各吹き出し口の手前にそれぞれダンパ90a,90bを設置する、あるいは、庫内ファン吐出空間全体を閉塞するような大型のダンパ90を設置する必要がある。したがって、スペース効率が悪く、また、コスト増加を伴ってしまう。
一方で、本実施形態の冷蔵庫では、庫内ファン9の前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室(冷凍室60)に至る風路中に、冷気を集約する冷気集約ダクト13を備え、冷気集約ダクト13の出口に単一のダンパ(冷凍室ダンパ50)を備えている。このように冷気集約ダクト13を形成することで、庫内ファン9の前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室への送風を、単一のダンパを設置することで制御可能となる。これにより、スペース効率がよく、また、コスト増加を抑えて、庫内ファンの前方に備えられた複数の吹き出し口を供えた室への送風を制御可能となる。
本実施形態の冷蔵庫は、庫内ファン9の前方に備えられた室は冷凍室60であり、冷凍室60への送風を単一のダンパによって開閉制御可能としている。これにより、省エネルギー性の悪化、及び、信頼性の低下を抑えることができる。理由を以下で説明する。
本実施形態の冷蔵庫は、既述のとおり、冷蔵室運転,霜冷却運転を実施する。この運転モードでは、送風されるのは冷蔵室61のみであるため、比較的温度が高い冷気が循環する。したがって、これらの運転モードにおいて、比較的温度の高い冷気が冷凍室60に漏れ出すと、冷凍室60を暖めてしまうことになり、冷凍食品が解けるといった問題が発生することがある。また、冷凍室60を暖めてしまうことは、冷凍室60を冷却する際の熱負荷が増えることになる。冷凍室60を冷却するためには、冷凍室温度以下の例えば−25℃といった低い冷却器温度とする必要がある。一般に、冷却器温度を低温とする冷凍室運転は効率が低く(成績係数が低く)、冷凍室運転時の負荷を増やしてしまうと省エネルギー性が低下する。以上のように、冷蔵室運転や霜冷却運転の際に、冷凍室60への冷気漏れがあると、冷凍食品が解けるといった信頼性の問題や、省エネルギー性が低下するといった問題が発生する。
ここで、ダンパは例えば図10に示すような構造によって冷気を遮断するものであるが、一般に、その密閉度は完全ではなく、シール面からは、若干ではあるが冷気が漏れる。したがって、シール面の長さ、すなわち、ダンパの開口の周長が長いほど、冷気漏れ量は大きくなりやすい。したがって、ダンパの数を増やす、あるいは、極端に大きなダンパを用いることは、冷気漏れ量の増加を招き、冷凍食品が解けるといった信頼性の問題が発生したり、省エネルギー性が悪化しやすくなる。
なお、庫内ファンの前方に備えられた室が冷蔵室であった場合には、冷蔵室ダンパ閉の状態での冷却運転は、冷凍室運転となるので、この時に冷蔵室に冷気が漏れると、多量であれば、食品が凍結するといった不具合が生じる可能性もあるが、一般に想定される程度の漏れ量(0.01m3/min以下程度の漏れ量)であれば、基本的には、冷蔵室の温度がやや下がるといった程度になり、比較的影響が小さい。したがって、特に庫内ファンの前方に備えられた室が冷凍室の場合に、冷気漏れに対する配慮が必要となる。
以上説明したとおり、本実施形態の冷蔵庫では、庫内ファン9の前方に備えられた冷凍室60であり、冷凍室60への送風を単一のダンパによって開閉制御可能とすることで、省エネルギー性の悪化、及び、信頼性の低下を抑えることができる。
本実施形態の冷蔵庫は、冷却器7の上方に庫内ファン9を備え、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を備えている。これにより、省エネルギー性に優れた冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。
一般に、流路内を流れる流れを転向させると通風抵抗が増し、その度合いは、流れる流量が多いほど大きい。本実施形態の冷蔵庫は、冷凍室運転を実施するが、冷凍室運転時には、冷却器7を通過した後に庫内ファン9で昇圧された冷気は、冷気集約ダクト13によって分流することなく全て冷凍室ダンパ50に向かって流れる。したがって、多くの流れが冷凍室ダンパ50に向かうため、冷却器7を通り、庫内ファン9で昇圧された冷気を、冷凍室ダンパ50に向かわせるために転向させると通風抵抗が大きくなる。本実施形態の冷蔵庫では、上述のとおり、冷却器7の上方に庫内ファン9を備え、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を備える構造としているので、冷却器7を通った後に、庫内ファン9で昇圧された冷気が、冷凍室ダンパ50に向かう際の転向を抑えることで通風抵抗が大きくならないようにしている。これにより、所定風量を得るためのファン動力を抑えられるので省エネルギー性が高い冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫は、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を、冷凍室ダンパ50の上方に上段冷凍室吹き出し口4cを備えている。これにより、省エネルギー性が高い冷蔵庫となっている。理由を以下で説明する。
一般に、周囲温度に対して低温の冷気は上方から下方に向かう下降流を形成するので、冷気を室の上方により多く供給することで、室内を良好に冷却できる。したがって、上段冷凍室吹き出し口4cには多くの吐出風量が必要であり、そのために本実施形態の冷蔵庫では、上段冷凍室吹き出し口4cを、冷凍室60の吹き出し口の中で最も大きな開口面積としているが、多くの吐出風量を得るためには、開口面積の大小だけでなく、吹き出し口に至るまでの経路における通風抵抗も問題となる。本実施形態の冷蔵庫では、上述のとおり、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を、冷凍室ダンパ50の上方に上段冷凍室吹き出し口4cを備えているので、冷気は、多くの吐出風量を要する上段冷凍室吹き出し口4cに向かってスムーズに流れる。これにより、必要風量を送る際のファン動力を抑えられるので、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫は、庫内ファン9の前方に備えられた室は冷凍室60であり、また、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を備えるとともに、冷凍室60の上方に冷蔵室61(冷蔵室2)が備えられている。これにより、省エネルギー性に優れた冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。
冷蔵室と冷凍室を備える冷蔵庫は、冷凍室だけでなく、冷蔵室にも通風抵抗を極力抑えて所定の風量を送る必要がある。本実施形態の冷蔵庫は、下から冷却器7を、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を備えることで、下から上に向かう流れがスムーズにしている。したがって、冷蔵室2に至る風路(冷蔵室送風ダクト11)も下から上に冷気が流れるようにすることで、スムーズに冷蔵室2に冷気を送ることができるので、通風抵抗を抑えることが可能となる。これにより、冷蔵室に必要風量を送る際のファン動力を抑えられるので、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫は、庫内ファン9の前方に備えられた室は冷凍室60であり、また、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を備えるとともに、冷凍室60の上方に冷蔵室2を、冷凍室60の下方に野菜室6を備えている。これにより、冷蔵室2と野菜室6を適温に保ちやすくなっている。理由を以下で説明する。
一般に、冷蔵室と野菜室は、ともに冷蔵温度に保持される室であるが、野菜室は、ユーザーが低温に弱い食材(低温障害をおこす食材)を収納することもあるため、冷蔵室に対してやや高めの温度に保持することが望ましい(例えば、冷蔵室は3℃、野菜室は5℃など)。このために、野菜室には、冷蔵室よりも低い冷却能力とすることが必要となる。すなわち、野菜室には、冷蔵室に送る冷気よりも高めの温度の冷気を送る、あるいは、同じ温度なら冷蔵室よりも少量の冷気を送ることが有効となる。本実施形態の冷蔵庫では、冷凍室60の上方に冷蔵室2を、冷凍室60の下方に野菜室6を備えているが、これにより、本実施形態の冷蔵庫のように、冷蔵室2と野菜室6が直列に配される場合は、冷蔵室2を冷やすことで温度が上昇した冷気を野菜室6に送ることができるため、風量は同じでも、冷蔵室2に送る冷気よりも高めの温度の冷気を野菜室6に送ることができ、上記の適温に保ちやすくなる。
また、別の実施形態として、冷蔵室と野菜室が並列に配される場合も考えられる。この場合、既述のとおり、上方の冷蔵室に向かいやすくしてある庫内ファン9からの冷気を、強制的に下方に転向させて、野菜室に向かわせることになるため、特に配慮せずとも野菜室に向かう風路の通風抵抗は大きくなる。したがって、この場合、冷蔵室と野菜室に同程度の温度の冷気が到達するが、野菜室への風量は容易に低く抑えることができる。
以上の理由により、冷凍室の上方に冷蔵室を、冷凍室の下方に野菜室を配設することで冷蔵室と野菜室を適温に保ちやすくなる。
本実施形態の冷蔵庫は、冷却器7の上方に庫内ファン9を、庫内ファン9の上方に略前方に向けて開口する冷凍室ダンパ50を備えているが、冷凍室ダンパ50の回転軸101は、庫内ファン9から遠い位置(上側)になるように冷凍室ダンパを配設している。一般に、庫内ファン近傍領域では、庫内ファンに近いほど、高速な流れがあり、また、その流れが低温であることもあるため、凍結を避けるためにはファンから距離を離すことが有効である。本実施形態の冷蔵庫では、冷凍室ダンパ50に関して、その回転軸101を庫内ファン9から遠い位置にしているため、回転軸101が凍結し、回転不能となるといった不良事故が生じにくくなっている。
本実施形態の冷蔵庫では、冷凍室ダンパ50の開閉板104は、背面側に開くようにしてある。これにより、冷凍室送風ダクト12の奥行寸法を必要以上に大きくとらずにすむのでスペース効率がよくなる。
本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵冷凍運転時には、冷凍室ダンパ50の開角度θを60度としている。これは、冷蔵冷凍運転時に例えば、冷凍室ダンパ50の開角度θをより大きくする(例えば90度)と、冷蔵室送風ダクト11の流れの抵抗が大きくなりすぎるために、冷蔵室2への風量が不足し冷蔵室2の冷えが悪くなり、冷凍室ダンパ50の開角度θをより小さくする(例えば45度)とすると、冷蔵室送風ダクト11の流れの抵抗が小さくなりすぎるために、より冷蔵室2が冷える。本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵冷凍運転時の冷凍室ダンパ50の開角度θを60度とすることで、冷蔵室2への風量を調整し、適切に冷蔵室2が冷えるようにしている。
実施形態の冷蔵庫では、冷気集約ダクト13の外周部13aは、庫内ファン9の回転中心から外周部13aまでの距離が、最小となる位置(図8中に示した最小寸法位置)から、庫内ファン9の回転方向に順次拡大する拡大風路13bが設けられている。これにより、庫内ファン9の吐出流れのうちの旋回成分を効果的に圧力回復させることができ、庫内ファン9を効率よく使うことができ、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫では、冷気集約ダクト13は、庫内ファン9の回転中心から外周部13aまでの距離が、最小となる位置から、庫内ファン9の回転方向に180度以上の拡大風路13bが設けられている。これにより、庫内ファン9からの吐出流れのうちの旋回成分の圧力回復に利用できる距離を十分確保できるため、庫内ファン9を効率よく使うことができ、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫では、図8中に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、水平面から角度β2だけ傾斜させて配設している。除霜運転時などに、冷凍室ダンパ50に水が滴下した場合であっても、これにより、水は冷凍室ダンパ50から流下するため、冷凍室ダンパ50に水が滞留して、その後凍結するといった不良事故を防止でき、信頼性の高い冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫では、図9中に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、鉛直面から角度α2だけ背面側に傾斜させて配設している。これにより、冷凍室ダンパ50の下方に備えられた庫内ファン9からの送風を、多くの風量を吐出させる上段冷凍室吹き出し口4cにスムーズに送り出せるため、必要風量を送る際のファン動力を抑えられるので、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫では、図9中に示すとおり、庫内ファン9は、鉛直面から角度α1だけ背面側に傾斜させて配設している。これにより、冷却器7を通った流れをスムーズに冷凍室ダンパ50に向かわせることができるため、必要風量を送る際のファン動力を抑えられ、省エネルギー性が向上する。
本実施形態の冷蔵庫は、冷気集約ダクト13内と冷却器収納室8内とが連通する連通孔75が設けられている。これにより、冷気集約ダクト13内に水が滞留することが原因となって、氷(霜)が成長して、庫内ファンがロックするなどの不良事故に至ることが防止でき、信頼性が高い冷蔵庫となる。
また、冷気集約ダクト13内に水が滞留することを防止するためであれば、連通孔75は、冷凍室60と連通するように備えても、冷却器収納室8と連通するように備えても良いが、本実施形態の冷蔵庫は、連通孔75を、冷却器収納室8と連通するように設けている。これにより、省エネルギー性の悪化を抑え、かつ、信頼性が向上する。理由を以下で説明する。
既述のとおり、本実施形態の冷蔵庫は、冷凍室ダンパ50を備える冷蔵庫であって、冷蔵室運転,霜冷却運転を実施する。この運転モードでは、送風されるのは冷蔵室61のみであるため、比較的温度が高い冷気が循環する。したがって、たとえば、連通孔75を、冷凍室60と連通するように設けると、この運転モードの際に、連通孔75を介して比較的温度が高い冷気が、冷凍室60に流入して、冷凍室60を暖めてしまうことになり、冷凍食品が解けるといった問題が発生することがある。また、冷凍室60を暖めることは、冷凍室60を冷却する熱負荷が増えることになる。冷凍室60を冷却するためには、冷凍室温度以下の低い冷却器温度とする必要があり、一般に、冷却器温度を低温とする冷凍室運転は効率が低く(成績係数COPが低く)、冷凍室運転時の負荷を増やしてしまうと省エネルギー性が低下する。したがって、本実施形態の冷蔵庫では、連通孔75を、冷却器収納室8と連通するように設けることで、省エネルギー性の悪化を抑え、かつ、信頼性を向上させている。
本実施形態の冷蔵庫では、図8または図9中に示すとおり、冷気集約ダクト13内と冷却器収納室8内とが連通する連通孔75は、冷気集約ダクト13内の空間の下端に位置するように設けている。これにより省エネルギー性の悪化を抑えることができる。以下で理由を説明する。
冷気集約ダクト13内に除霜時などに、水が流下した場合、連通孔75を、冷気集約ダクト13内の空間の下端に位置するように設けていなければ、流下した水の一部は、冷気集約ダクト内に留まることになる。この残留水は、冷却運転時には凍結し、除霜運転時には融解する。したがって、冷却運転時には、凍結させるエネルギーが余分に必要になり(具体的には圧縮機動力が増加する)、また、除霜時には融解させるエネルギーが必要となる(具体的には除霜ヒータ電力が増加する)。したがって、本実施形態の冷蔵庫では、庫内ファン吐出側のファンカバー内風路内とファンカバー外の空間とが連通する連通口を、ファンカバー内風路の下端に位置するように設けることで、省エネルギー性の悪化を抑えている。
本実施形態の冷蔵庫では、図4に示すとおり、冷却器収納室8の下部前方には、暖気収納スペース26が設けられている。また、冷気集約ダクト13の前方には、上段冷凍室送風ダクト12を配設している。これにより、省エネルギー性が高くなる。以下で理由を説明する。
既述のとおり、本実施形態の冷蔵庫は、冷凍室ダンパ50を備える冷蔵庫であって、冷蔵室運転を実施するが、冷蔵室運転は、冷蔵室61のみを冷却するため、比較的高い温度の冷気が循環し、冷却器温度は高くなる。冷却器温度が高いと、冷凍サイクルの効率(成績係数COP)は高く省エネルギー性が高くなる。しかし、本実施形態の冷蔵庫のように、冷却器収納室8の前方が冷凍室60である場合、冷凍室60と冷却器収納室8間の断熱がなされていないと、冷却器温度は、冷凍室60から冷やされることによって温度が上がらなくなり、効率の良い運転が実施できなくなる。また、同様に、冷蔵室運転時には、冷気集約ダクト13内も比較的温度が高い冷気が流れるため、冷気集約ダクト内の冷気が、冷凍室60から冷やされると、循環する冷気の温度が低下することになり、結果として冷却器温度は下がってしまう。
したがって、本実施形態の冷蔵庫では、冷却器収納室前方には、暖気収納スペースを設け、また、冷気集約ダクトの前方には冷気集約ダクト13を配設することで冷蔵室運転,霜冷却運転時にはそれらを空気断熱層として活用することで、省エネルギー性を高めている。
本実施形態の冷蔵庫は、ファンカバー70と仕切板54(冷凍室60と冷却器収納室8を仕切る板)は一体に成型されており、別体の庫内ファン9が備えられたファンホールド71を所定位置に固定するようにしている。これにより、低コストで、信頼性が高く、且つ、省エネルギー性の悪化を抑えた構造となる。以下で理由を説明する。
図9に示すように、庫内ファン9の周辺の構造は、ファンカバー70と、仕切板54,ファンホールド71からなっている。既述のとおり本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵室運転,霜冷却運転を実施する冷蔵庫であって、これらの運転モードの際には、冷気集約ダクト13内は比較的温度が高い冷気が循環する。その冷気が冷凍室60に漏れると、冷凍室60を暖めてしまい、冷凍食品が解けるといった問題が発生することがあると同時に、省エネルギー性も低下する。したがって、理想的には、このような冷気漏れが起こる箇所を極力減らすために、ファンカバー70と、仕切板54と、ファンホールド71はすべて一体に成型することが望ましい。
しかし、部品の低コスト化のためには、射出成型で部品を成型することが望ましく、これら全てを一体に成型することは不可能であり、ファンカバー70と仕切板54を一体として、ファンホールド71を別体とするか、仕切板54とファンホールド71を一体として、ファンカバー70を別体とするかの何れかを選択することになる。
このとき、後者を選択すると、ファンカバー70とファンホールド71間に隙間が生じた場合、冷気集約ダクト13内の空気は冷凍室60側に漏れることになる。一方、本実施形態の冷蔵庫のように、前者(ファンカバー70と仕切板54を一体、ファンホールド71を別体)とすれば、ファンカバー70とファンホールド71間に隙間が生じても、冷気集約ダクト13内の空気は冷却器収納室8に漏れることはあっても、冷凍室60に漏れることはない。したがって、冷凍室60の温度上昇のために、冷凍食品が解けるといった問題が発生しにくく、また、省エネルギー性の悪化を抑えた冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫は、送風機前方のカバー部材と冷却器室の壁面とを一体とする。すなわち、ファンカバー76と仕切板54を一体として、送風機支持部材であるファンホールド71を別体としており、ファンカバーヒータ76の延伸部76aをファンホールド71に設けた連通孔75を通して、冷却器収納室8内の仕切板54に貼り付けるようにしている。これにより信頼性が高い冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。
ファンカバーヒータ76の延伸部76aを、ファンホールド71に設けた連通孔75を介して、冷却器収納室8内の仕切板54に貼り付けるようにすることで、連通孔75近傍がファンカバーヒータ76に通電した際に良好に加熱され、連通孔近傍に生じた氷が溶け残り、次第に氷が冷気集約ダクト13内に成長し、庫内ファン9がロックすることを防止できる。したがって、信頼性の高い冷蔵庫とすることができる。しかしながら、ファンカバー70と仕切板54が別体であった場合、ファンカバーヒータ76の延伸部76aは、ファンカバー70と仕切板54の別部品間に貼り付けられるため、冷蔵庫に組み付ける際にかかる力で剥がれることがある。延伸部76aが剥がれてしまうと、ファンカバーヒータ76によって連通孔75近傍が良好に加熱されなくなるので、信頼性が低下する。したがって、本実施形態の冷蔵庫はファンカバー76と仕切板54を一体として、ファンカバーヒータ76の延伸部76aを、ファンホールド71に設けた連通孔75を通して、冷却器収納室8内の仕切板54に貼り付けるようにすることで信頼性の高い冷蔵庫としている。
なお、本実施形態の冷蔵庫では、ファンカバーヒータ76の一部(延伸部76a)を、連通孔75を経て、冷却器収納室8内に延伸させているが、例えば、ファンカバーヒータ76とは別体のアルミ箔などの高熱伝導部材をファンカバーヒータ76と熱的に接触させて、連通孔75を経て仕切板54に貼り付けるようにしてもよい。