JP5065120B2 - 往復動圧縮機 - Google Patents

Description

本発明は往復動圧縮機に関するものである。

シリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダボアに挿入されたピストンと、シリンダブロックの一方の端面に対峙しシリンダブロックと協働してピストン駆動機構を収容するクランク室を形成するフロントハウジングと、シリンダボアに連通する吸入穴と吐出穴とが形成されシリンダブロックの他方の端面に対峙する弁板と、吸入室と吐出室とが形成され弁板を間に挟んでシリンダブロックの他方の端面に対峙するリアハウジングと、弁板のシリンダブロックに対峙する端面に装着されて弁板に当接し先端部が吸入穴を開閉するリード弁構造の吸入弁と、弁板のリアハウジングに対峙する端面面に装着され吐出穴を開閉する吐出弁と、フロントハウジングに挿通されてクランク室を通り更にシリンダブロックと弁板とリアハウジングとに挿通されてこれらの部材を一体に組み付ける通しボルトとを備える往復動圧縮機であって、吸入弁が当接する弁板の吸入穴周囲部を目荒らしし、吸入弁と弁板との間に介在する潤滑油膜の貼着力を低減させて吸入弁の弁板への貼り付きを抑制し、吸入弁の開弁遅れを抑制して、圧縮機能力の向上と吸入弁自励振動の抑制とを図った圧縮機が特許文献１に開示されている。
特開２００７−０６４１９６

特許文献１は、吸入弁と弁板との間に介在する潤滑油膜の貼着力を低減させるものであり、吸入弁の開弁に対する抵抗力を低減させるものである。
本発明は、吸入弁の開弁に対する抵抗力を低減させて吸入弁の開弁遅れの抑制を図った従来技術とは視点を変えて、吸入弁の開弁を促進する力を増加させて、吸入弁の開弁遅れの抑制を図る技術を提供することを目的とする。

上記課題を解決するために、本発明においては、シリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダボアに挿入されたピストンと、シリンダブロックの一方の端面に対峙しシリンダブロックと協働してピストン駆動機構を収容するクランク室を形成するフロントハウジングと、シリンダボアに連通する吸入穴と吐出穴とが形成されシリンダブロックの他方の端面に対峙する弁板と、吸入室と吐出室とが形成され弁板を間に挟んでシリンダブロックの他方の端面に対峙するリアハウジングと、弁板のシリンダブロックに対峙する端面に装着されて弁板に当接し先端部が吸入穴を開閉するリード弁構造の吸入弁と、弁板のリアハウジングに対峙する端面に装着され吐出穴を開閉する吐出弁と、フロントハウジングに挿通されてクランク室を通り更にシリンダブロックと弁板とリアハウジングとに挿通されてこれらの部材を一体に組み付ける通しボルトとを備え、通しボルト挿通穴から吸入弁との当接部に至る溝が弁板のシリンダブロックに対峙する端面に形成されており、前記溝は、ピストン駆動機構の一部を構成する回転軸が挿通されるシリンダブロックの中心軸穴に連通せずに、通しボルト挿通穴と吸入弁との当接部とを直結することを特徴とする往復動圧縮機を提供する。
本発明に係る往復動圧縮機においては、通しボルト挿通穴と弁板の溝とを介して、吸入弁の弁板に当接する面にクランク室圧が印加される。当該圧は吸入弁を開弁方向へ付勢する。この結果、吸入弁の開弁を促進する力が増加し、吸入弁の開弁遅れが抑制され、圧縮機能力が向上し吸入弁自励振動が抑制される。

本発明の好ましい態様においては、溝は吸入弁の基部に対峙する部位から吸入穴の近傍まで延びている。
溝を吸入弁の基部に対峙する部位から吸入穴の近傍まで延在させることにより、吸入弁のクランク室圧受圧面積が増加し、吸入弁の開弁を促進する力が増加する。

本発明により、吸入弁の開弁を促進する力を増加させて、入弁の開弁遅れを抑制した往復動圧縮機が提供される。

本発明の実施例に係る往復動圧縮機を説明する。

図１に示すように、可変容量斜板式圧縮機１は、シリンダボア２ａが形成された円柱状のシリンダブロック２と、シリンダブロック２の一方の端面に対峙しシリンダブロック２と協働してクランク室３を形成する有底円筒状のフロントハウジング４と、クランク室３内に配設されシリンダブロック２とフロントハウジング４とにより回転可能に支持されると共に一端がフロントハウジング４を貫通してクランク室３外へ延びる回転軸５と、クランク室３内に配設され回転軸５に固定されたロータ６と、クランク室３内に配設されリンク部材７を介してロータ６に連結されると共に傾角可変に回転軸５に係合し回転軸５により回転駆動される斜板８と、クランク室３内に配設され斜板８の外周部に摺動可能に係合する一対のシュー９と、シリンダボア２ａに挿入されると共にシュー９を介して斜板８の外周部に摺動可能に係合し斜板６の回転に伴って往復動するピストンと１０と、シリンダボア２ａに連通する吸入穴１１ａと吐出穴１１ｂとが形成されシリンダブロック２の他方の端面に対峙する円板状の弁板１１と、径方向中央部に吸入室１２ａが形成され、吸入室１２ａを取り巻いて径方向外方部に吐出室１２ｂが形成され、弁板１１を間に挟んでシリンダブロック２の他方の端面に対峙する有底円筒状のリアハウジング１２と、弁板１１のシリンダブロック２に対峙する端面に装着されて弁板１１に当接し先端部が吸入穴１１ａを開閉するリード弁構造の吸入弁１３と、弁板１１のリアハウジング１２に対峙する端面に装着され吐出穴１１ｂを開閉する吐出弁１４と、フロントハウジング４に挿通されてクランク室３を通り更にシリンダブロック２と弁板１１とリアハウジング１２とに挿通されてこれらの部材を一体に組み付ける複数の通しボルト１５とを備えている。

回転軸５、ロータ６、リンク部材７、斜板８、シュー９はピストン駆動機構を形成している。
複数のシリンダボア２ａ、ピストン１０、吸入孔１１ａ、吐出孔１１ｂ、吸入弁１３、吐出弁１４及び複数対のシュー９が周方向に互いに間隔を隔てて配設されている。
吸入室１２ａは吸入ポート１６を介して図示しない車両空調装置の蒸発器に連通し、吐出室１２ｂは図示しない吐出ポートを介して図示しない車両空調装置の凝縮器に連通している。
回転軸５のクランク室３外へ延びた一端は動力伝達機構１７を介して図示しない車両エンジンに直結している。

図２、３に示すように、吸入弁１３は、Ｕ形状穴１８ａを薄肉円板１８に切り開けることにより形成されている。薄肉円板１８には、複数のＵ形状穴１８ａに加えて複数の通しボルト挿通穴１８ｂが形成されている。薄肉円板１８が弁板１１とシリンダブロック２とにより挟持されて弁板１に当接することにより、吸入弁１３は弁板１１に装着される。Ｕ形状穴１８ａは、薄肉円板１８が弁板１１とシリンダブロック２とにより挟持されて弁板１に当接した時、弁板１１に形成された吐出穴１１ｂに対峙する。
図２、３に示すように、弁板１１には、複数の吸入穴１１ａ、吐出穴１１ｂに加えて複数の通しボルト挿通穴１１ｃが形成されている。弁板１１の薄肉円板１８を介してシリンダブロック２に対峙する端面に、各通しボルト挿通穴１１ｃから、隣接する吐出穴１１ｂに干渉することなく且つ当接する薄肉円板１８のＵ形状穴１８ａに対峙することなく吸入弁１３との当接部に至る溝１１ｄが、形成されている。溝１１ｄは吸入弁１３の基部に対峙する部位から吸入穴１１ａの近傍まで延びている。溝１１ｄは、弁板１１に形成された通しボルト挿通穴１１ｃと、薄肉円板１８に形成された通しボルト挿通穴１８ｂと、シリンダブロック２に形成された通しボルト挿通穴２ｂとを介して、クランク室３に連通している。溝１１ｄは、ピストン駆動機構の一部を構成する回転軸５が挿通されるシリンダブロック２の中心軸穴に連通せずに、通しボルト挿通穴１１ｃと吸入弁との当接部とを直結している。

可変容量斜板式圧縮機１においては、車両エンジンにより回転軸５が回転駆動され、回転軸５の回転に伴って斜板８が回転し、ピストン１０が往復動する。ピストン１０の往復動に伴って、空調装置の蒸発器から戻った冷媒ガスが吸入ポート１６と吸入室１２ａと吸入孔１１ａと吸入弁１３とを通ってシリンダボア２ａに流入し、シリンダボア２ａ内で圧縮され、吐出孔１１ｂと吐出弁１４と吐出室１２ｂと吐出ポートとを通って、空調装置の凝縮器へ流出する。

可変容量斜板式圧縮機１においては、シリンダブロック２に形成された通しボルト挿通穴２ｂ、薄肉円板１８に形成された通しボルト挿通穴１８ｂ、弁板１１に形成された通しボルト挿通穴１１ｃと、弁板１１のシリンダブロック２に対峙する端面に形成された溝１１ｄと弁板１１に当接する薄肉円板１８とが形成する導圧路を介して、吸入弁１３の弁板１１に当接する面にクランク室圧が印加される。当該圧は吸入弁１３を開弁方向へ付勢する。従来の往復動圧縮機においては、吸入弁１３の吸入穴１１ａに対峙する部位に印加される吸入室圧とシリンダボア内圧との差圧による付勢力のみが開弁を促進する力として吸入弁１３に作用した。可変容量斜板式圧縮機１においては、前記差圧による付勢力に加えて、吸入弁１３の溝１１ｄに対峙する部位に印加されるクランク室圧とシリンダボア内圧との差圧による付勢力が開弁を促進する力として吸入弁１３に印加されるので、従来に比べて吸入弁１３の開弁を促進する力が増加し、吸入弁１３の開弁遅れが抑制され、圧縮機能力が向上し吸入弁自励振動が抑制される。
溝１１ｄを吸入弁１３の基部に対峙する部位から吸入穴１１ａの近傍まで延在させることにより、吸入弁１３のクランク室圧受圧面積が増加し、吸入弁１３の開弁を促進する力が増加する。

吐出室１２ｂが径方向中央部に形成され、吐出室１２ｂを取り巻いて径方向外方部に吸入室１２ａが形成される場合でも、図４、５に示すように、弁板１１の薄肉円板１８を介してシリンダブロック２に対峙する端面に、通しボルト挿通穴１１ｃから吐出穴１１ｂに干渉することなく吸入弁１３との当接部に至る溝１１ｄを形成し、溝１１ｄを吸入弁１３の基部に対峙する部位から吸入穴１１ａの近傍まで延在させることが可能であり、シリンダブロック２に形成された通しボルト挿通穴２ｂ、薄肉円板１８に形成された通しボルト挿通穴１８ｂ、弁板１１に形成された通しボルト挿通穴１１ｃ、弁板１１のシリンダブロック２に対峙する端面に形成された溝１１ｄを介して、吸入弁１３の弁板１１に当接する面にクランク室圧を印加することが可能である。当該圧は吸入弁１３を開弁方向へ付勢するので、従来に比べて吸入弁１３の開弁を促進する力が増加し、吸入弁１３の開弁遅れが抑制されて、圧縮機能力が向上し吸入弁自励振動が抑制される。

本発明は、斜板式圧縮機、揺動板式圧縮機を含む各種の往復動圧縮機に広く利用可能である。

本発明の実施例に係る可変容量斜板式圧縮機の断面図である。 本発明の実施例に係る可変容量斜板式圧縮機が備える吸入弁と弁板の斜視図である。 図２の吸入弁が図２の弁板に装着された状態を示す透視図である。 本発明の他の実施例に係る可変容量斜板式圧縮機が備える吸入弁と弁板の斜視図である。 図４の吸入弁が図４の弁板に装着された状態を示す透視図である。

符号の説明

１ 可変容量斜板式圧縮機
２ シリンダブロック
２ａ シリンダボア
２ｂ 通しボルト挿通穴
３ クランク室
４ フロントハウジング
５ 回転軸
８ 斜板
１０ ピストン
１１ 弁板
１１ａ 吸入孔
１１ｂ 吐出孔
１１ｃ 通しボルト挿通穴
１１ｄ 溝
１２ａ 吸入室
１２ｂ 吐出室
１３ 吸入弁
１５ 通しボルト

Claims (2)

1. シリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダボアに挿入されたピストンと、シリンダブロックの一方の端面に対峙しシリンダブロックと協働してピストン駆動機構を収容するクランク室を形成するフロントハウジングと、シリンダボアに連通する吸入穴と吐出穴とが形成されシリンダブロックの他方の端面に対峙する弁板と、吸入室と吐出室とが形成され弁板を間に挟んでシリンダブロックの他方の端面に対峙するリアハウジングと、弁板のシリンダブロックに対峙する端面に装着されて弁板に当接し先端部が吸入穴を開閉するリード弁構造の吸入弁と、弁板のリアハウジングに対峙する端面に装着され吐出穴を開閉する吐出弁と、フロントハウジングに挿通されてクランク室を通り更にシリンダブロックと弁板とリアハウジングとに挿通されてこれらの部材を一体に組み付ける通しボルトとを備え、通しボルト挿通穴から吸入弁との当接部に至る溝が弁板のシリンダブロックに対峙する端面に形成されており、前記溝は、ピストン駆動機構の一部を構成する回転軸が挿通されるシリンダブロックの中心軸穴に連通せずに、通しボルト挿通穴と吸入弁との当接部とを直結することを特徴とする往復動圧縮機。
2. 溝は吸入弁の基部に対峙する部位から吸入穴の近傍まで延びていることを特徴とする請求項１に記載の往復動圧縮機。

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