従来から、熱型の赤外線センサとして、温度検知部がベース基板の一表面から離間して配置され、温度検知部が当該温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部を介してベース基板に支持された赤外線センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1に開示された赤外線センサは、図9に示すように、ベース基板1と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部である抵抗ボロメータ3’と、抵抗ボロメータ3’がベース基板1の一表面から離間して配置されるように抵抗ボロメータ3’を支持して抵抗ボロメータ3’とベース基板1とを熱絶縁する断熱部4’とを備え、断熱部4’が、ベース基板1の上記一表面から離間して配置されベース基板1側とは反対側に抵抗ボロメータ3’が形成される支持部41’と、支持部41’とベース基板1とを連結し抵抗ボロメータ3’に電気的に接続された配線8’,8’が形成された2つの脚部42’,42’とで構成されている。ここにおいて、各配線8’,8’は、一端部が抵抗ボロメータ3’に接続され、他端部がベース基板1の上記一表面上に形成されている金属膜(例えば、Al−Si膜)からなる導体パターン10,10と接続されている。また、図9に示した構成の赤外線センサは、ベース基板1の上記一表面上に、抵抗ボロメータ3’および支持部41’を透過した赤外線を反射する金属膜(例えば、Al−Si膜)からなる赤外線反射膜6が形成されている。
ところで、図9に示した構成の赤外線センサでは、支持部41’が、多孔質シリカ膜41a’と、多孔質シリカ膜41a’におけるベース基板1側に形成されたシリコン酸化膜141bと、多孔質シリカ膜41a’におけるベース基板1側とは反対側に形成されたシリコン窒化膜141cとで構成され、抵抗ボロメータ3’が、シリコン窒化膜141c上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiN膜とで構成されている。また、この赤外線センサでは、各脚部42’,42’が、多孔質シリカ膜41a’のみにより構成されており、各配線8’,8’が、脚部42’,42’に積層されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiN膜とで構成されている。
上述の断熱部4’における脚部42’,42’は、ベース基板1の上記一表面側において導体パターン10,10上に立設された2つの円筒状の支持ポスト部42a’,42a’と、各支持ポスト部42a’,42a’それぞれの上端部と支持部41’とを連結した梁部42b’,42b’とで構成されており、支持部41’とベース基板1との間に間隙7が形成されている。
以下、上述の赤外線センサの製造方法について図10〜図12に基づいて簡単に説明する。
まず、ベース基板1の基礎となる単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)1aの一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜1bを例えば熱酸化法により形成することによって、図10(a)に示す構造を得る。
その後、シリコン基板1aと絶縁膜1bとからなるベース基板1の一表面側(図10(a)における上面側)の全面に導体パターン10,10および赤外線反射膜6の材料からなる金属膜(例えば、Al−Si膜など)をスパッタ法などにより成膜した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記金属膜をパターニングすることでそれぞれ上記金属膜の一部からなる導体パターン10,10および赤外線反射膜6を形成することによって、図10(b)に示す構造を得る。
次に、ベース基板1の上記一表面側の全面にレジストを回転塗布してレジスト層からなる犠牲層21を成膜することによって、図10(c)に示す構造を得る。
その後、犠牲層21上にシリコン酸化膜141bを例えばプラズマCVD法などによって成膜してから、当該シリコン酸化膜141bをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることによって、図10(d)に示す構造を得る。
その後、犠牲層21のうち各支持ポスト部42a’,42a’それぞれの形成予定領域に対応する部位をエッチングして導体パターン10,10の一部の表面を露出させる円形状の開孔部23,23を形成することによって、図11(a)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の全面に多孔質シリカ膜41a’を成膜することによって、図11(b)に示す構造を得る。ここにおいて、多孔質シリカ膜41a’の形成にあたっては、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、熱処理で乾燥させるプロセスを採用することで容易に形成することができる。
上述の多孔質シリカ膜41a’を成膜した後、多孔質シリカ膜41a’上にシリコン窒化膜141cを例えばプラズマCVD法などによって成膜してから、当該シリコン窒化膜141cをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることによって、図11(c)に示す構造を得る。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して多孔質シリカ膜41a’をパターニングすることで支持部41’および脚部42’,42’を形成することによって、図11(d)に示す構造を得る。
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に抵抗ボロメータ3’および配線8’,8’の基礎となるTi膜とTiN膜との積層膜からなるセンサ材料層30’をスパッタ法などにより成膜することによって、図12(a)に示す構造を得る。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してセンサ材料層30’をパターニングすることでそれぞれセンサ材料層30’の一部からなる抵抗ボロメータ3’および配線8’,8’を形成することによって、図12(b)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の犠牲層21を選択的にエッチング除去することによって、図12(c)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。
なお、上記特許文献1には、抵抗ボロメータ3’を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各抵抗ボロメータ3’が画素を構成するようにした赤外線センサ(赤外線画像センサ)も開示されている。
特開2007−263769号公報
ところで、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、多孔質シリカ膜41a’にシリコン酸化膜141bおよびシリコン窒化膜141cが積層された構成とすることで、応力に起因した支持部41’の反りを防止しようとしている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、多孔質シリカ膜41a’を形成するにあたって、多孔質シリカの成分元素を含むゾルゲル溶液をレジスト層(ポリイミド層)からなる犠牲層21上に回転塗布してから熱処理(アニール)を行う必要があり、犠牲層21に対する密着性が低く製造歩留まりが低かった。また、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、熱処理に起因して多孔質シリカ膜41a’が反ってしまい、構造安定性が低くなるとともに感度が低下してしまう。
また、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、抵抗ボロメータ3’がTi膜とTiN膜との積層膜により構成されているが、TiN膜は赤外線に感度がないので、TiN膜が感度低下の要因となっていた。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、構造安定性および製造歩留まりの向上を図れ、且つ、高感度化を図れる赤外線センサを提供することにある。
請求項1の発明は、ベース基板と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部である抵抗ボロメータと、抵抗ボロメータがベース基板の一表面から離間して配置されるように抵抗ボロメータを支持して抵抗ボロメータとベース基板とを熱絶縁する断熱部とを備え、断熱部は、ベース基板の前記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に抵抗ボロメータが形成される支持部と、支持部とベース基板とを連結し抵抗ボロメータに電気的に接続された配線が形成された2つの脚部とを有し、断熱部は、多孔質シリカ膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側に形成された第1のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜と、第1のシリコン酸化膜におけるベース基板側に形成された金属薄膜とで構成され、抵抗ボロメータおよび各配線は、第2のシリコン酸化膜上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、断熱部が、多孔質シリカ膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側に形成された第1のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜と、第1のシリコン酸化膜におけるベース基板側に形成された金属薄膜とで構成されているので、製造時における断熱部と断熱部下の犠牲層との密着性、断熱部における膜間の密着性を向上できるとともに、支持部が反るのを防止することができて、構造安定性の向上による高感度化および製造歩留まりの向上を図れ、また、抵抗ボロメータおよび各配線が、第2のシリコン酸化膜上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されているので、抵抗ボロメータおよび各配線を同時に形成することができるとともに、高感度化を図れる。
請求項2の発明は、ベース基板と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部である抵抗ボロメータと、抵抗ボロメータがベース基板の一表面から離間して配置されるように抵抗ボロメータを支持して抵抗ボロメータとベース基板とを熱絶縁する断熱部とを備え、断熱部は、ベース基板の前記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に抵抗ボロメータが形成される支持部と、支持部とベース基板とを連結し抵抗ボロメータに電気的に接続された配線が形成された2つの脚部とを有し、断熱部は、多孔質シリカ膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側に形成された第1のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜と第2のシリコン酸化膜との間に形成された金属薄膜とで構成され、抵抗ボロメータおよび各配線は、第2のシリコン酸化膜上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、断熱部が、多孔質シリカ膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側に形成された第1のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜におけるベース基板側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜と、多孔質シリカ膜と第2のシリコン酸化膜との間に形成された金属薄膜とで構成されているので、製造時における断熱部と断熱部下の犠牲層との密着性、断熱部における膜間の密着性を向上できるとともに、支持部が反るのを防止することができて、構造安定性の向上による高感度化および製造歩留まりの向上を図れ、また、抵抗ボロメータおよび各配線が、第2のシリコン酸化膜上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されているので、抵抗ボロメータおよび各配線を同時に形成することができるとともに、高感度化を図れる。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記金属薄膜は、前記断熱部における前記支持部と前記脚部とのうち前記支持部のみに形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記脚部にも前記金属薄膜が形成されている場合に比べて、前記脚部の熱絶縁性が向上し、感度が向上する。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記配線は、平面視において前記脚部よりも細幅であって前記脚部の幅方向の中央部に形成され、前記抵抗ボロメータは、平面視形状がつづら折れ状であり、平行配置された直線状のライン部分の幅と当該ライン部分の両側のスペース部分の幅との比が、平面視における前記配線の幅と前記脚部の前記配線が形成されていない両側部の幅との比と同じ値に設定されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記断熱部と前記抵抗ボロメータと前記各配線とで構成される部位の平面視における形状が均一化され、構造安定性が向上する。
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記配線は、平面視において前記脚部よりも細幅であって前記脚部の幅方向の中央部に形成され、前記脚部は、平面視において前記配線が形成されていない両側部の幅が前記脚部の厚みよりも大きく、前記配線の長さ方向に直交する断面形状が湾曲していることを特徴とする。
この発明によれば、前記脚部は前記配線の長さ方向に直交する断面形状が湾曲しているので、前記脚部の曲げ剛性が高くなり、構造安定性が向上する。
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記配線は、前記脚部よりも細幅であって平面視において前記脚部の幅方向の中央部に形成され、前記脚部は、平面視において前記配線が形成されていない両側部それぞれに、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が前記配線の長さ方向に沿って形成され、前記配線の長さ方向に直交する断面形状が湾曲していることを特徴とする。
この発明によれば、前記脚部は前記配線の長さ方向に直交する断面形状が湾曲しているので、前記脚部の曲げ剛性が高くなり、構造安定性が向上する。
請求項1,2の発明は、構造安定性および製造歩留まりの向上を図れ、且つ、高感度化を図れるという効果がある。
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線センサについて図1を参照しながら説明する。
本実施形態の赤外線センサは、シリコン基板1aと当該シリコン基板1aの一表面側に形成されたシリコン酸化膜からなる絶縁膜1bとで構成される矩形板状のベース基板1と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部である抵抗ボロメータ3と、抵抗ボロメータ3がベース基板1の一表面(図1(b)における上面)から離間して配置されるように抵抗ボロメータ3を支持して抵抗ボロメータ3とベース基板1とを熱絶縁する断熱部4とを備えている。
断熱部4は、ベース基板1の上記一表面から離間して配置されベース基板1側とは反対側に抵抗ボロメータ3が形成される支持部41と、支持部41とベース基板1とを連結した2つの脚部42,42とを有している。
抵抗ボロメータ3は、温度に応じて電気抵抗値が変化するボロメータ形のセンシングエレメントであり、支持部41側のTi膜と当該Ti膜上のTiO2膜との積層膜により構成されている。
抵抗ボロメータ3は、平面形状(平面視形状)が蛇行した形状(ここでは、つづら折れ状の形状)に形成されており、両端部が断熱部4の脚部42,42に沿って延長された配線8,8を介してベース基板1の上記一表面上の金属膜(例えば、Au膜、Al−Si膜など)からなる導体パターン10,10と電気的に接続されている。ここにおいて、本実施形態では、配線8,8を、抵抗ボロメータ3と同様に、Ti膜と当該Ti膜上のTiO2膜との積層膜で構成してあり、配線8,8と抵抗ボロメータ3とを同時に形成している。また、本実施形態では、各導体パターン10,10の材料としてAuを採用しており、各導体パターン10,10それぞれの一部がパッドを構成しているので、一対のパッドを通して抵抗ボロメータ3の出力を外部へ取り出すことができる。
また、本実施形態の赤外線センサでは、ベース基板1の上記一表面上に、抵抗ボロメータ3および支持部41を透過した赤外線を抵抗ボロメータ3側へ反射する赤外線反射膜6が設けられている。ここにおいて、本実施形態の赤外線センサは、検出対象の赤外線として人体から放射される8μm〜13μmの波長帯の赤外線を想定しており、赤外線反射膜6の材料としては、導体パターン10と同じAuを採用しているが、導体パターン10がAl−Siの場合には、赤外線反射膜6の材料もAl−Siを採用することが製造プロセスの簡略化の観点から望ましい。
上述の断熱部4における脚部42,42は、ベース基板1の上記一表面側において導体パターン10,10上に立設された2つの円筒状の支持ポスト部42a,42aと、各支持ポスト部42a,42aそれぞれの上端部と支持部41とを連結した梁部42b,42bとで構成されており、支持部41とベース基板1との間に間隙7が形成されている。ここで、支持部41の外周形状が矩形状であって、各梁部42b,42bは、支持部41の一側縁の長手方向の一端部から当該一側縁に直交する方向に延長され更に当該一側縁の上記一端部から他端部に向う方向に沿って延長された平面形状に形成されており、支持部41の厚み方向に沿った中心軸に対して回転対称性を有するように配置されている。また、上述の配線8,8のうち脚部42,42の梁部42b,42b上に形成された部位の幅(線幅)は、当該配線8,8を通した熱伝達を抑制するために梁部42b,42bの幅寸法よりも小さく設定してある。また、配線8,8のうち支持ポスト部42a,42aに形成されている部位は、支持ポスト部42a,42aの内周面の全体と導体パターン10,10の表面とに跨って形成されており、支持ポスト部42a,42aが配線8,8により補強されている。
ところで、本実施形態の赤外線センサは、断熱部4が、多孔質シリカ膜41aと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側に形成された第1のシリコン酸化膜41bと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜41cと、第1のシリコン酸化膜41bにおけるベース基板1側に形成されたTiN薄膜からなる金属薄膜41dとで構成されている。要するに、断熱部41は、金属薄膜41dと、第1のシリコン酸化膜41bと、多孔質シリカ膜41aと、第2のシリコン酸化膜41cとの積層膜により構成されている。
また、本実施形態の赤外線センサでは、多孔質シリカ膜41aの材料として、多孔質の酸化シリコンの一種である多孔質シリカを採用しているが、多孔質の酸化シリコン系有機ポリマーの一種であるメチル含有ポリシロキサン、多孔質の酸化シリコン系無機ポリマーの一種であるSi−H含有ポリシロキサン、シリカエアロゲルなどを採用してもよい。
ここにおいて、本実施形態では、多孔質シリカ膜41aの多孔度を60%程度に設定してあり、多孔度が小さ過ぎると十分な断熱効果が得られず多孔度が大き過ぎると機械的強度が弱くなって構造形成が困難となるので、多孔質シリカ膜41aの多孔度は例えば40%〜80%程度の範囲内で適宜設定すればよい。なお、シリコンの熱伝導率は、148W/m・K程度であるのに対して、多孔度が60%の多孔質シリカの熱伝導率は、0.05W/m・K程度である。
また、本実施形態では、金属薄膜41dの材料としてTiNを採用しており、金属薄膜41dのシート抵抗が377Ω/□となっている。なお、金属薄膜41dの材料は、TiNに限らず、Ti、Al、Pt、Au、Crなどを採用してもよい。
また、検出対象の赤外線の中心波長をλ〔μm〕、金属薄膜41dと赤外線反射膜6との間隔をd〔μm〕とすれば、d=λ/4に設計されており、検出対象の赤外線が人体から放射される赤外線なので、λ=10μmとして、d=2.5μmに設計されている。したがって、本実施形態の赤外線センサでは、金属薄膜41dと赤外線反射膜6とで、検出対象の波長の赤外線を共振させる共振器を構成しており、検出対象の波長の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。
抵抗ボロメータ3および各配線8,8は、第2のシリコン酸化膜41c上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されている。なお、TiO2膜は、後述のように第2のシリコン酸化膜41c上にTi膜を形成した後、当該Ti膜の表面側の一部をO2プラズマにより酸化することで形成しているが、当該Ti膜の表面側に形成された自然酸化膜により構成してもよい。
なお、本実施形態では、上述のように、断熱部4が、金属薄膜41dと、第1のシリコン酸化膜41bと、多孔質シリカ膜41aと、第2のシリコン酸化膜41cとの積層膜により構成されているが、環境温度が−20℃〜80℃の温度範囲で変化しても当該積層膜と抵抗ボロメータ3とで構成される多層膜に反りが生じるのを防止する目的で、当該多層膜全体で残留応力がゼロあるいは若干の引張応力となるように、各膜41d,41b,41a,41cの成膜条件および膜厚を設定してある。一例を挙げれば、応力が引張応力の場合の符号を「+」、圧縮応力の場合の符号を「−」として、金属薄膜41dの膜厚を2〜20nmで応力を−3000〜+300MPa、第1のシリコン酸化膜41bの膜厚を50〜200nmで応力を+100〜+600MPa、多孔質シリカ膜41aの膜厚を100〜800nmで応力を+20〜+200MPa、第2のシリコン酸化膜41cの膜厚を50〜200nmで応力を+100〜+600MPa、Ti膜の膜厚を10〜200nmで応力を−2000〜+300MPaとして、これらの範囲で成膜条件および膜厚を適宜設定すればよい。
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図2〜図4を参照しながら説明する。なお、図2〜図4では、図1(b)と同様に、図1(a)のA−A’断面に対応する部位の断面を示してある。
まず、ベース基板1の基礎となる単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)1aの一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜1bを例えば熱酸化法により形成する絶縁膜形成工程を行うことによって、図2(a)に示す構造を得る。
その後、シリコン基板1aと絶縁膜1bとからなるベース基板1の一表面側(図2(a)における上面側)の全面に導体パターン10,10および赤外線反射膜6の材料からなる金属膜(例えば、Au膜、Al−Si膜など)をスパッタ法、CVD法、蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行った後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記金属膜をパターニングすることでそれぞれ上記金属膜の一部からなる導体パターン10,10および赤外線反射膜6を形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。
次に、ベース基板1の上記一表面側の全面にレジスト(例えば、ポリイミド)を回転塗布してレジスト層からなる犠牲層21を形成する犠牲層形成工程を行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面(つまり、犠牲層21上)にTiN薄膜からなる金属薄膜41dをスパッタ法によって成膜する金属薄膜形成工程を行ってから、ベース基板1の上記一表面側の全面(つまり、金属薄膜41d上)に第1のシリコン酸化膜41bをスパッタ法により成膜する第1シリコン酸化膜形成工程を行うことによって、図2(d)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、金属薄膜41dおよび第1のシリコン酸化膜41bの成膜方法としてスパッタ法を採用しているので、下地との密着性を高めることができる。すなわち、断熱部4の一部となる金属薄膜41dと犠牲層21との密着性を高めることができるとともに、第1のシリコン酸化膜41bと金属薄膜41dとの密着性を高めることができる。
上述の第1シリコン酸化膜形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して犠牲層21と金属薄膜41dと第1のシリコン酸化膜41bとの積層膜のうち各支持ポスト部42a,42aそれぞれの形成予定領域に対応する部位をエッチングすることで導体パターン10,10の一部の表面を露出させる円形状の開孔部23,23を形成する開孔部形成工程を行うことによって、図3(a)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の全面に多孔質シリカ膜41aを成膜する多孔質シリカ膜形成工程を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。ここにおいて、多孔質シリカ膜41aの形成にあたっては、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、熱処理で乾燥させるプロセスを採用すればよい。
上述の多孔質シリカ膜形成工程の後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第2のシリコン酸化膜41cをスパッタ法により成膜する第2シリコン酸化膜形成工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、第2のシリコン酸化膜41cの成膜方法としてスパッタ法を採用しているので、下地である多孔質シリカ膜41aとの密着性を高めることができる。
上述の第2シリコン酸化膜形成工程の後、上述の金属薄膜41dと第1のシリコン酸化膜41bと多孔質シリカ膜41aと第2のシリコン酸化膜41cとの積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることで断熱部4(支持部41および脚部42,42)を形成する断熱部形成工程を行うことによって、図3(d)に示す構造を得る。
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に抵抗ボロメータ3および配線8,8の基礎となるTi膜をスパッタ法により成膜し、当該Ti膜の表面側の一部を酸素プラズマにより酸化してTiO2膜を形成することでTi膜とTiO2膜との積層膜からなるセンサ材料層30を形成するセンサ材料層形成工程を行うことによって、図4(a)に示す構造を得る。なお、TiO2膜は、酸素プラズマに限らず、Ti膜の表面側の一部を自然酸化させることにより形成してもよいし、オゾンを用いてTi膜の表面側の一部を酸化することにより形成してもよい。
上述のセンサ材料層形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してセンサ材料層30をパターニングすることでそれぞれセンサ材料層30の一部からなる抵抗ボロメータ3および配線8,8を形成することによって、図4(b)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の犠牲層21を選択的にエッチング除去することによって、図4(c)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、断熱部4が、多孔質シリカ膜41aと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側に形成された第1のシリコン酸化膜41bと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜41cと、第1のシリコン酸化膜41bにおけるベース基板1側に形成された金属薄膜41dとで構成されているので、製造時における断熱部4と断熱部4下の犠牲層21との密着性、断熱部4における膜間の密着性を向上できるとともに、支持部41が反るのを防止することができて、構造安定性の向上による高感度化および製造歩留まりの向上を図れ、また、抵抗ボロメータ3および各配線8,8が、第2のシリコン酸化膜41c上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されているので、抵抗ボロメータ3および各配線8,8を同時に形成することができるとともに、高感度化を図れる。
また、本実施形態の赤外線センサは、図5に示すように、配線8が、平面視において脚部42よりも細幅であって脚部42の幅方向の中央部に形成され、抵抗ボロメータ3の平面視形状がつづら折れ状であり、抵抗ボロメータ3において平行配置された直線状のライン部分3aの幅H1と当該ライン部分3aの両側のスペース部分の幅H2との比が、平面視における配線8の幅H3と脚部42の配線8が形成されていない両側部の幅H4との比と同じ値に設定されているので、断熱部4と抵抗ボロメータ3と各配線8,8とで構成される部位の平面視における形状が均一化され、構造安定性が向上する。
ところで、上述の例では、H1=H2=H3=H4としてあるが、脚部42に関して、平面視において配線8が形成されていない両側部の幅H4を脚部42の厚みよりも大きくして、図6に示すように配線8の長さ方向に直交する断面形状が湾曲した形状となるようにすれば、脚部42の曲げ剛性が高くなり、構造安定性が向上する。
また、図7に示すように、脚部42に関して、平面視において配線8が形成されていない両側部それぞれに、厚み方向に貫通する複数の貫通孔43を配線8の長さ方向に沿って形成し、配線8の長さ方向に直交する断面形状が湾曲した形状となるようにしても、脚部42の曲げ剛性が高くなり、構造安定性が向上する。
なお、図6および図7に示した構成では、脚部42は、配線8が形成された中央部とベース基板1との間の距離が支持部41とベース基板1との間の距離と同じで、脚部42の両側部が中央部から離れるにつれてベース基板1との間の距離が徐々に大きくなるように湾曲している。
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであって、図8に示すように、断熱部4における金属薄膜41dの形成位置が相違している。ここにおいて、本実施形態における断熱部4は、多孔質シリカ膜41aと第2のシリコン酸化膜41cとの間に金属薄膜41dが形成されている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線センサの製造方法は、実施形態1で説明した製造方法と略同じであり、実施形態1ではベース基板1の上記一表面側に金属薄膜41dを形成する金属薄膜形成工程を犠牲層形成工程と第1シリコン酸化膜形成工程との間に行っていたのに対して、金属薄膜形成工程を多孔質シリカ膜形成工程と第2シリコン酸化膜形成工程との間に行う点、金属薄膜41dと配線8,8とが短絡しないように、金属配線形成工程と第2シリコン酸化膜形成工程との間にフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属薄膜41dをパターニングする金属薄膜パターニング工程が追加されている相違する。
しかして、本実施形態の赤外線センサによれば、断熱部4が、多孔質シリカ膜41aと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側に形成された第1のシリコン酸化膜41bと、多孔質シリカ膜41aにおけるベース基板1側とは反対側に形成された第2のシリコン酸化膜41cと、多孔質シリカ膜41aと第2のシリコン酸化膜41cとの間に形成された金属薄膜41dとで構成されているので、製造時における断熱部4と断熱部4下の犠牲層21(図3(d)参照)との密着性、断熱部4における膜間の密着性を向上できるとともに、支持部41が反るのを防止することができて、構造安定性の向上による高感度化および製造歩留まりの向上を図れ、また、抵抗ボロメータ3および各配線8,8が、第2のシリコン酸化膜41c上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたTiO2膜とで構成されているので、抵抗ボロメータ3および各配線8,8を同時に形成することができるとともに、高感度化を図れる。
なお、本実施形態においても、上述の図6や図7のように脚部42を断面形状が湾曲した形状としてもよい。
ところで、上記各実施形態1,2では、金属薄膜41dが断熱部4における支持部41と各脚部42,42とに形成されているが、断熱部4における支持部41のみに形成するようにすれば、脚部42,42にも金属薄膜41dが形成されている場合に比べて、脚部42,42の熱絶縁性が向上し、感度が向上する。なお、この場合、実施形態1では、製造時に金属薄膜41dをパターニングする金属薄膜パターニング工程を追加すればよく、実施形態2では上述の金属薄膜パターニング工程において用いるマスクパターンを変更すればよい。
また、上記各実施形態にて説明した赤外線センサは、抵抗ボロメータ3を1つだけ設けた赤外線検出素子であるが、抵抗ボロメータ3を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各抵抗ボロメータ3が画素を構成するようにした赤外線画像センサでもよい。