以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の制御装置を含む車両のパワートレーンについて図1を参照して説明する。
この例の車両のパワートレーンは、エンジン1と、トルクコンバータ2と、自動変速機3と、ECU100とから構成されており、そのECU100により実行されるプログラムによって車両の制御装置が実現されている。
次に、エンジン1、トルクコンバータ2、自動変速機3、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
−エンジン−
エンジン1は、外部から吸入する空気とインジェクタ14(図4参照)から噴射される燃料とを適宜の比率で混合した混合気を燃焼させることにより、駆動力を発生するものである。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2の入力軸に接続される。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ201によって検出される。
エンジン1に吸入される空気量は、電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ202によって検出される。
スロットルバルブ12のスロットル開度はエンジンECU101によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ201にて検出されるエンジン回転数、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ202を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
−トルクコンバータ・自動変速機−
トルクコンバータ2は、図1に示すように、入力軸側のポンプ羽根車21と、出力軸側のタービン羽根車22と、トルク増幅機能を発現するステータ23と、ワンウェイクラッチ24とを備え、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22との間で流体を介して動力伝達を行う。
トルクコンバータ2には、入力側と出力側とを直結状態にするロックアップクラッチ25が設けられており、このロックアップクラッチ25を完全係合させることにより、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ25を所定のスリップ状態で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービン羽根車22がポンプ羽根車21に追随して回転する。トルクコンバータ2と自動変速機3とは回転軸によって接続される。トルクコンバータ2のタービン回転数Ntは、タービン回転数センサ203によって検出される。
トルクコンバータ2のロックアップクラッチ25の係合・解放は、油圧制御回路300及びECT_ECU(Electronic Controlled automatic Transmission_ECU)102によって制御される。
自動変速機3は、図1に示すように、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置33を備えた遊星歯車式の変速機である。
第1遊星歯車装置31のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS1は、ワンウェイクラッチF2及びブレーキB3を介してハウジングに選択的に連結され、逆方向(入力軸30の回転と反対方向)の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジングに選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられたワンウェイクラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジングに選択的に連結される。
第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置33のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS2は、ワンウェイクラッチF0及びクラッチC1を介して入力軸30に選択的に連結され、その入力軸30に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止される。
第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置33のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸30に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジングに選択的に連結される。また、キャリアCA2は、ブレーキB4と並列に設けられたワンウェイクラッチF3によって、常に逆方向の回転が阻止される。そして、第3遊星歯車装置33のキャリアCA3は出力軸34に一体的に連結されている。出力軸34の回転数は、出力軸回転数センサ204によって検出される。
そして、自動変速機3の出力する動力は差動歯車装置(終減速機)5及び一対の車軸等を介して一対の駆動輪6L,6Rへ伝達される。
以上の自動変速機3のクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3の係合・解放状態を図2の作動表に示す。図2の作動表において「○」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。また、「◎」は「エンジンブレーキ時の係合」を表し、「△」は「動力伝達に関係しない係合」を表している。
図2に示すように、この例の自動変速機3において、前進ギヤ段の1速(1st)では、クラッチC1が係合され、ワンウェイクラッチF0,F3が作動する。前進ギヤ段の2速(2nd)では、クラッチC1及び第3ブレーキB3が係合され、ワンウェイクラッチF0,F1,F2が作動する。
前進ギヤ段の3速(3rd)では、クラッチC1,C3が係合されるとともに、ブレーキB3が係合され、ワンウェイクラッチF0,F1が作動する。前進ギヤ段の4速(4th)では、クラッチC1,C2,C3が係合されるとともに、ブレーキB3が係合され、ワンウェイクラッチF0が作動する。
前進ギヤ段の5速(5th)では、クラッチC1,C2,C3が係合されるとともに、ブレーキB1,B3が係合される。前進ギヤ段の6速(6th)では、クラッチC1,C2が係合されるとともに、ブレーキB1,B2,B3が係合される。
一方、後進ギヤ段(R)では、クラッチC3が係合されるとともに、ブレーキB4が係合され、ワンウェイクラッチF1が作動する。
以上のように、この例の自動変速機3では、摩擦係合要素であるクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3などが、所定の状態に係合または解放されることによってギヤ段(変速段)が設定される。クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4の係合・解放は油圧制御回路300及びECT_ECU102によって制御される。
一方、車両の運転席の近傍には図3に示すようなシフト装置4が配置されている。シフト装置4にはシフトレバー41が変位可能に設けられている。また、シフト装置4には、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、及び、シーケンシャルレンジ(Sレンジ)が設定されており、運転者が所望の変速レンジへシフトレバー41を変位させることが可能となっている。これらRレンジ、Nレンジ、Dレンジ、Sレンジ(下記の「+」レンジ及び「−」レンジも含む)の各変速レンジは、シフトポジションセンサ206(図4参照)によって検出される。
以下、それら変速レンジが選択される状況と、そのときの自動変速機3の動作態様について各変速レンジ(「Nレンジ」、「Rレンジ」、「Dレンジ」「Sレンジ」)ごとに説明する。
「Nレンジ」は、自動変速機3の入力軸30と出力軸34との連結を切断する際に選択されるレンジであり、シフトレバー41が「Nレンジ」に操作されると、自動変速機3のクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3の全てが解放される(図2参照)。
「Rレンジ」は、車両を後退させる際に選択されるレンジであり、シフトレバー41がRレンジに操作されると、自動変速機3は後進ギヤ段に切り替えられる。
「Dレンジ」は、車両を前進させる際に選択されるレンジであり、シフトレバー41がDレンジに操作されると、車両の運転状態などに応じて、自動変速機3の複数の前進ギヤ段(前進6速)が自動的に変速制御される。
「Sレンジ」は、複数の前進ギヤ段(前進6速)の変速動作を運転者が手動によって行う際に選択されるレンジ(マニュアルレンジ)であって、このSレンジの前後に「−」レンジ及び「+」レンジが設けられている。「+」レンジは、マニュアルアップシフトのときにシフトレバー41が操作されるレンジであり、「−」レンジは、マニュアルダウンシフトのときにシフトレバー41が操作されるレンジである。そして、シフトレバー41がSレンジにあるときに、シフトレバー41がSレンジを中立レンジとして「+」レンジまたは「−」レンジに操作されると、自動変速機3の前進ギヤ段がアップまたはダウンされる。具体的には、「+」レンジへの1回操作ごとにギヤ段が1段ずつアップ(例えば1st→2nd→・・→6th)される。一方、「−」レンジへの1回操作ごとにギヤ段が1段ずつダウン(例えば6th→5th→・・→1st)される。
−ECU−
以上のパワートレーンを制御するECU100は、エンジン1を制御するエンジンECU101と、トルクコンバータ2及び自動変速機3を制御するECT_ECU102とを含む。
エンジンECU101は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニットであって、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。ROMには、エンジンの運転に関する制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
エンジンECU101には、図4に示すように、エンジン回転数センサ201及びスロットル開度センサ202などのエンジン1の運転状態を検出するセンサが接続されており、その各センサの出力信号が入力される。エンジンECU101は、各センサの出力信号などに基づいて、スロットルバルブ12のスロットルモータ13、及び、インジェクタ14などのエンジン1の各部を制御する。
エンジンECU101とECT_ECU102とはデータ通信可能な状態で接続されており、エンジンECU101からECT_ECU102に、スロットル開度及びエンジン回転数などのデータが送信される。また、ECT_ECU102からエンジンECU101に、エンジン1の運転制御に関するデータが送信される。
ECT_ECU102は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニットであって、CPU、ROM、RAM、及び、バックアップRAMなどを備えている。ROMには、車両の基本的な運転に関する制御の他、車両の走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段を設定する変速制御、及び、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ25の係合制御(ロックアップ制御)を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御及びロックアップ制御の具体的な内容については後述する。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果やセンサ等から入力されたデータなどを一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは不揮発性のメモリである。
ECT_ECU102には、図4に示すように、タービン回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ205、シフトポジションセンサ206、ブレーキペダルセンサ207、車速センサ208、及び、車両の前後加速度を検出する加速度センサ209などが接続されており、これらの各センサからの信号が入力される。
そして、ECT_ECU102は、自動変速機3のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を油圧制御回路300に出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブの励磁・非励磁などが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜6速)を構成するように、自動変速機3のクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3などが、所定の状態に係合または解放される。
また、ECT_ECU102は、油圧制御回路300にロックアップクラッチ制御信号(油圧指令信号)を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいて、油圧制御回路300のロックアップソレノイドバルブの励磁・非励磁などが制御されてトルクコンバータ2のロックアップクラッチ25が係合または解放される。
以上の「変速制御」及び「ロックアップ制御」、並びに、ECT_ECU102が実行する「減速時ロックアップ解除制御」について以下に説明する。
−変速制御−
この例の変速制御に用いる変速マップについて図5を参照して説明する。
図5に示す変速マップは、車速及びスロットル開度をパラメータとし、それら車速及びスロットル開度に応じて、適正なギヤ段(最適な燃費となるギヤ段)を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ECT_ECU102のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り替えライン)によって区画されている。
なお、図5に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り替え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
次に、変速制御の基本動作について説明する。
ECT_ECU102は、車速センサ208の出力信号(もしくは出力軸回転数センサ204の出力信号)から車速を算出するとともに、スロットル開度センサ202の出力信号からスロットル開度を算出し、それら車速及びスロットル開度に基づいて、図5の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段と現状ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現状ギヤ段とが同じで、ギヤ段が適切に設定されている場合)には、現状ギヤ段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力する。
一方、目標ギヤ段と現状ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図5に示す点aから点bに変化した場合、シフトダウン変速線[5→4]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その4速のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を油圧制御回路300に出力して、5速のギヤ段から4速のギヤ段への変速(5→4ダウン変速)を行う。
なお、Sレンジ(マニュアルレンジ)が選択されたときには、上述したように、「+」レンジへの1回操作ごとにギヤ段が1段ずつアップされ、「−」レンジへの1回操作ごとにギヤ段が1段ずつダウンされる。
−ロックアップ制御−
この例のロックアップ制御に用いる係合マップについて図6を参照して説明する。
図6に示す係合マップは、車速及びスロットル開度をパラメータとし、それら車速及びスロットル開度に応じて、ロックアップクラッチ25の係合・解放を判定するための領域(ON領域、OFF領域)が設定されたマップであって、ECT_ECU102のROM内に記憶されている。
図6に示す係合マップにおいて、ロックアップクラッチ25の解放(OFF)から係合(ON)への係合切替線を実線で示し、ロックアップクラッチ25の係合(ON)から解放(OFF)への解放切替線を破線で示している。これら係合切替線(実線)と解放切替線(破線)とは所定のヒステリシスを有して設定されている。このようにヒステリシスを設ける理由はハンチングを防止するためである。また、図6に示すマップにおいて、係合切替線(OFF→ON)及び解放切替線(ON→OFF)は、車速及びスロットル開度に応じて燃費が最適となるように設定されている。
そして、ECT_ECU102は、車速センサ208(または出力軸回転数センサ204)及びスロットル開度センサ202の各センサの出力信号から得られる実際の車速及びスロットル開度に基づいて、図6の係合マップを参照してロックアップクラッチ25の係合・解放を切り替える。
具体的には、ロックアップクラッチ25が解放(OFF)状態にあるときから、車速が高車速側に変化したり、スロットル開度が低スロットル開度側に変化して係合切替線(実線)を横切った場合(OFF→ON)には、ロックアップクラッチ25を係合するロックアップクラッチ制御信号を油圧制御回路300に出力してロックアップクラッチ25を係合(ON)状態に切り替える。
一方、ロックアップクラッチ25が係合(ON)状態にあるときから、車速が低車速側に変化したり、スロットル開度が高スロットル開度側に変化して解放切替線(破線)を横切った場合(ON→OFF)には、ロックアップクラッチ25を解放するロックアップクラッチ制御信号を油圧制御回路300に出力してロックアップクラッチ25を解放(OFF)状態に切り替える。
−減速時ロックアップ解除制御−
この例の減速時ロックアップ解除制御では、車両がスポーツ走行であるか否かを判定し、スポーツ走行と判定した場合には、スポーツ走行でないとき(通常走行時)に比べて大きな減速判定閾値(車両減速度の閾値)を設定してロックアップ解除の判定を行う点に特徴がある。その具体的な制御について図7を参照して説明する。
図7は減速時ロックアップ解除制御の一例を示すフローチャートである。この図7の制御ルーチンはECT_ECU102において所定時間毎に繰り返して実行される。
まず、ステップST1において、上記したロックアップクラッチ制御信号(係合/解放信号)から、ロックアップ制御(ロックアップクラッチ25の係合)が実行中であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合はリターンする。
ステップST1の判定結果が肯定判定である場合(つまりロックアップ制御が実行中である場合)はステップST2に進む。ステップST2では、加速度センサ209の出力信号に基づいて車両の減速度(単位:G)を検出する。
次に、ステップST3においてスポーツ走行中であるか否かを判定する。具体的には、シフトポジションセンサ206によって検出されるシフトレバー41の位置がSレンジ(マニュアルレンジ)である場合は「スポーツ走行中」であると判定(肯定判定)し、それ以外の位置(Dレンジ)である場合は「通常走行(スポーツ走行以外)」であると判定(否定判定)する。ステップST3の判定結果が肯定判定である場合はステップST4に進み、否定判定である場合はステップST7に進む。
ステップST4では、図8に示す減速判定閾値算出マップを参照して、スポーツ走行時(マニュアルレンジ)の減速判定閾値(0.5G)を算出する。
次に、ステップST5において、上記ステップST2で検出した車両減速度が上記ステップST4で算出した減速判定閾値(0.5G)よりも大きいか否かを判定する。
このステップST4の判定結果が肯定判定である場合(車両減速度>減速判定閾値)、スポーツ走行時のエンストを防止するために、油圧制御回路300にロックアップクラッチ制御信号(解放信号)を出力して、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ25を解放(ロックアップ解除)を行う(ステップST6)。ステップST5の判定結果が否定判定である場合(車両減速度≦減速判定閾値)は、リターンしてロックアップ制御(ロックアップクラッチ25の係合)を継続する。
なお、図8の減速判定閾値算出マップにおいて、通常走行時の減速判定閾値は、例えば通常走行(スポーツ走行以外)のときにエンストが発生する減速度(急制動時の減速度)に対し、所定のマージン(エンストに対する安全性)を考慮して設定されており、スポーツ走行時の減速判定閾値は、通常走行時の減速判定閾値よりも大きく設定されている([スポーツ走行時:0.5G]>[通常走行時:0.3G]。また、スポーツ走行時の減速判定閾値は、スポーツ走行時のエンストの危険性及びダイレクト感(ロックアップ制御の継続)を考慮して設定されている。
一方、ステップST3の判定結果が否定判定である場合つまり「通常走行(スポーツ走行以外)」である場合、図8に示す減速判定閾値算出マップを参照して、通常走行時(Dレンジ)の減速判定閾値(0.3G)を算出する(ステップST7)。
次に、ステップST5において、上記ステップST2で検出した車両減速度が上記ステップST7で算出した減速判定閾値(0.3G)よりも大きいか否かを判定する。
このステップST5の判定結果が肯定判定である場合(車両減速度>減速判定閾値)、通常走行時のエンストを防止するために、油圧制御回路300にロックアップクラッチ制御信号(解放信号)を出力して、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ25を解放(ロックアップ解除)する(ステップST6)。ステップST5の判定結果が否定判定である場合(車両減速度≦減速判定閾値)は、リターンしてロックアップ制御(ロックアップクラッチ25の係合)を継続する。
以上のように、この例の減速時ロックアップ解除制御によれば、車両がスポーツ走行中であると判定した場合の減速判定閾値を、通常走行時(スポーツ走行以外)の減速判定閾値(0.3G)よりも大きく設定(0.5G)して、ロックアップ解除の判定をしにくくしているので、スポーツ走行時において急制動を行っても、ロックアップが解除されてコンバータ状態となることを抑制することができる。これによってロックアップクラッチ25を係合を継続することができ、スポーツ走行時のダイレクト感(アクセルによる駆動力コントロール性)が向上する。
しかも、通常走行時(スポーツ走行以外)には、エンストの危険性を考慮した小さな減速判定閾値(例えば0.3G)を設定して、ロックアップ解除を判定しやすくしているので、通常走行時において急制動を行った場合には確実にロックアップを解除することができる。これによって通常走行時における耐エンスト性を確保することができる。
以上のように、この例の減速時ロックアップ解除制御では、スポーツ走行時のダイレクト感(アクセルによる駆動力コントロール性)と、通常走行時の耐エンスト性とを両立することができる。
−他の実施形態−
以上の例では、シフトレンジ位置の検出情報に基づいて図8の減速判定閾値算出マップを参照して減速判定閾値を算出しているが、シフトレンジ位置情報に、他のパラメータを加えて減速判定閾値を算出するようにしてもよい。
例えば、トルクコンバータ2のタービン回転数Nt(自動変速機3の入力回転数)が小さい場合、大きい場合と比較してエンストの危険性が高くなる点を考慮し、図9に示すように、シフトレンジ位置とタービン回転数Ntとをパラメータとする減速判定閾値算出マップを作成しておき、シフトポジションセンサ206によって検出されるシフトレバー41の位置(マニュアルレンジまたはDレンジ)、及び、タービン回転数センサ203によって検出されるタービン回転数Nt(rpm)に基づいて、図9に示す減速判定閾値マップを参照して減速判定閾値を算出するようにしてもよい。なお、この図9の減速判定閾値マップでは、タービン回転数Ntが2000rpmよりも小さい場合は、大きい場合(Nt≧2000rpm)よりも減速判定閾値を小さく設定している。
また、アクセルONの場合、アクセルOFFの場合と比べてエンストの危険性が少なくなる点を考慮し、図10に示すように、シフトレンジ位置、タービン回転数Nt、及び、アクセルON/OFFをパラメータとする減速判定閾値算出マップ(アクセルON時の減速判定閾値>アクセルOFF時の減速判定閾値)を作成しておき、シフトポジションセンサ206によって検出されるシフトレバー41の位置(マニュアルレンジまたはDレンジ)、タービン回転数センサ203によって検出されるタービン回転数Nt(rpm)、及び、アクセル開度センサ205から得られるアクセルON/OFF情報に基づいて、図10に示す減速判定閾値マップを参照して減速判定閾値を算出するようにしてもよい。
なお、シフトレンジ位置情報に、アクセルON/OFF条件のみを加えた減速判定閾値算出マップを用いて減速判定閾値を算出するようにしてもよい。
以上の例では、加速度センサの出力信号から車両の減速度を検出しているが、これに替えて、エンジン回転数または自動変速機3の出力軸回転数の単位時間あたりの変化率から車両の減速度を求めてもよい。
以上の例では、シフト位置がマニュアルレンジにある場合に「スポーツ走行である」と判定しているが、スポーツ走行であるか否かの判定は他の方法で行ってもよい。その具体的な例を以下に列記する。
(1)スポーツ走行時は、車速及び車速の変化率が通常走行時(スポーツ走行以外)よりも大きい点に着目し、車速を車速センサを用いて検出し、その車速センサに検出される車速、及び、車速の単位時間あたりの変化率が判定値以上である場合はスポーツ走行であると判定する。
この場合、車速及び車速の変化率に対して設定する判定値は、例えば、スポーツ走行時の車速及び車速の変化率と、通常走行時の車速及び車速の変化率とを実験・計算などによって求めておき、その結果に基づいてスポーツ走行と通常走行とを判別できる値を経験的に求めて設定すればよい。
(2)スポーツ走行時は、自動変速機の入力回転数及び入力回転数の変化率が通常走行時(スポーツ走行以外)よりも大きい点に着目し、自動変速機の入力回転数つまりトルクコンバータのタービン回転数をタービン回転数センサを用いて検出し、そのタービン回転数センサにて検出されるタービン回転数、及び、タービン回転数の単位時間あたりの変化率が判定値以上である場合はスポーツ走行であると判定する。
この場合、タービン回転数及びタービン回転数の変化率に対して設定する判定値は、例えば、スポーツ走行時のタービン回転数及びタービン回転数の変化率と、通常走行時のタービン回転数及びタービン回転数の変化率とを実験・計算などによって求めておき、その結果に基づいてスポーツ走行と通常走行とを判別できる値を経験的に求めて設定すればよい。
(3)スポーツ走行時は、エンジン回転数及びエンジン回転数の変化率が通常走行時(スポーツ走行以外)よりも大きい点に着目し、エンジンの回転数をエンジン回転数センサを用いて検出し、そのエンジン回転数センサにて検出されるエンジン回転数、及び、エンジン回転数の単位時間あたりの変化率が判定値以上である場合はスポーツ走行であると判定する。
この場合、エンジン回転数及びエンジン回転数の変化率に対して設定する判定値は、例えば、スポーツ走行時のエンジン回転数及びエンジン回転数の変化率と、通常走行時のエンジン回転数及びエンジン回転数の変化率とを実験・計算などによって求めておき、その結果に基づいてスポーツ走行と通常走行とを判別できる値を経験的に求めて設定すればよい。
(4)スポーツ走行時において変速操作を行う回数が通常走行時(スポーツ走行以外)よりも多い点に着目し、所定時間内の変速操作の回数を変速操作回数検出手段によって検出し、その変速操作回数検出手段にて検出される変速操作回数が判定値以上である場合にスポーツ走行であると判定する。
この場合、変速操作回数に対して設定する判定値は、例えば、スポーツ走行時において所定時間内に操作される変速操作回数と、通常走行時において所定時間内に操作される変速操作回数とを実験・計算などによって求めておき、その結果に基づいてスポーツ走行と通常走行とを判別できる値を経験的に求めて設定すればよい。
(5)スノーモード、パワー(スポーツ)モード、ノーマルモードなどの走行環境に合わせて運転者が車両の制御を任意に切り替えるスイッチを備えている場合、そのスイッチの操作によりスポーツ性を重視したモード(パワーモード)が選択された場合はスポーツ走行であると判定する。
(6)ナビゲーション装置を備えている場合、そのナビゲーション装置が出力するナビ情報からサーキット及びワインディング路の走行中と判断した場合はスポーツ走行である判定する。
(7)運転者の意図によりスポーツロックアップモード(スポーツ走行時のロックアップクラッチ係合制御)を選択することが可能なロックアップモード選択スイッチを備え、そのロックアップモード選択スイッチが操作(ON)された場合にスポーツ走行であると判定する方法。
以上の例では、前進6段変速の自動変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機が搭載された車両の制御にも適用可能である。
以上の例では、クラッチ及びブレーキと遊星歯車装置とを用いて変速比を設定する遊星歯車式変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを有するベルト式無段変速機(CVT)が搭載された車両の制御にも適用可能である。
以上の例では、流体伝動装置としてトルクコンバータを有する自動変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、フルードカップリング(ロックアップクラッチ付き)を有する自動変速機が搭載された車両の制御にも適用可能である。
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。
さらに、本発明は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に限れらることなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両や、4輪駆動車の制御にも適用できる。