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JP5019421B2 - 糖の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糖の製造方法に関する。
更に詳しくは、リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含む木質系バイオマスから糖を製造する糖の製造方法に関する。
セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる木質系バイオマスを酵素分解することにより、セルロース及びヘミセルロースを糖化できることが知られている。
こうして得られる糖類は、燃料や化成品原料の出発物質等として有用である。
ところが、木質系バイオマスは、リグニンを含有しているため、このリグニンとセルロース及びヘミセルロースとが交絡し、セルロース及びヘミセルロースの酵素分解を阻害する傾向にある。
これに対し、近年、木質系バイオマスを酵素分解する前に、何らかの処理を行い、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を解く方法が研究されている。
例えば、木材を微粉砕してから、それを酵素分解する方法(例えば、特許文献1又は2参照)、リグノセルロース含有植物体を加水分解して、それを酵素分解する方法(例えば、特許文献3参照〕、セルロース含有物質を窒素酸化物を含むジメチルホルムアミド溶液で処理した後、酵素分解する方法(例えば、特許文献4参照)、リグノセルロース系バイオマスを加圧熱水で処理し、機械的粉砕してから酵素分解する方法(例えば、特許文献5参照)等が開示されている。
特開昭55―9758号公報 特開昭63―137690号公報 特開昭59―146594号公報 特開昭61―242591号公報 特開2006−136263号公報
しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載の方法では、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を十分に解くことは困難である。
特許文献3及び5に記載の方法では、比熱の高い水を高温で用いているので、セルロース及びヘミセルロースが過分解してしまう虞がある。
特許文献4記載の方法では、環境基準が定められている大気汚染物質である二酸化窒素等の窒素酸化物の使用が不可欠であるという点で問題がある。
したがって、上記特許文献1〜5記載の方法では、これらの欠点があるために、低コスト且つ低環境負荷型のプロセスで高い糖化率を得ることが困難である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、木質系バイオマスを原料とし、比較的温和な条件であっても、十分高い糖化率で糖を製造することが可能な糖の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、木質系バイオマスを比較的温和な条件で、薬液で処理し、引き続いて粉砕工程及び糖化工程を施すことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(1)リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含む木質系バイオマスから糖を製造する方法であって、木質系バイオマスを、水、アルコール類である水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、木質系バイオマスを軟化させる軟化工程と、薬液に溶解した木質系バイオマス中の可溶成分と、薬液に不溶な木質系バイオマス中の不溶成分とを分離する分離工程と、可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程と、不溶成分を、粉砕機械を用いて粉砕し、バイオマス粉末とする粉砕工程と、バイオマス粉末を酵素に接触させることにより糖化させる糖化工程と、を備え、軟化工程が不活性ガス雰囲気下、温度160〜220℃、圧力1〜5MPaの条件で行われ、粉砕工程において、不溶成分が薬液を含んだ状態で粉砕される糖の製造方法に存する。
本発明は、(2)軟化工程において、薬液全量中の有機酸の含有割合が、0.1質量%以上である上記(1)記載の糖の製造方法に存する。
本発明は、(3)軟化工程において、前記水と前記水溶性有機溶剤と前記有機酸との配合比率が、2〜30質量%:65〜97.8質量%:0.2〜5質量%であり、木質系バイオマスと、薬剤との配合割合は質量比で、1:1〜10である上記(1)又は(2)に記載の糖の製造方法に存する。
本発明は、(4)粉砕工程において、バイオマス粉末の直径が10μm以下、結晶化度が10%以下、重合度が250以下である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の糖の製造方法に存する。
本発明は、(5)粉砕工程において、前記不溶成分が含む薬液の量は、不溶成分の全質量に対し、1〜100質量%である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の糖の製造方法に存する。
本発明は、(6)糖化工程が、超音波を当てながら行われる上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の糖の製造方法に存する。
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(6)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
本発明の糖の製造方法においては、木質系バイオマスを、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させることにより、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡が解け、繊維状となる。
これにより、木質系バイオマスが十分に軟化される。
そして、軟化した木質系バイオマスを粉砕することにより、木質系バイオマスの表面積がより大きくなるので、その後酵素に接触させることにより、十分に高い糖化率で木質系バイオマスを糖化させることができる。
また、上記糖の製造方法においては、水溶性有機溶剤及び有機酸を用いるため、水のみ、又は、希硫酸や希塩酸等の鉱酸と水溶性有機溶剤とを用いた場合と比較して温和な条件で木質系バイオマスが処理される。
これにより、低コスト且つ低環境負荷型のプロセスで高い糖化率を得ることができる。
よって、本発明の糖の製造方法によれば、木質系バイオマスを原料とし、比較的温和な条件であっても、十分高い糖化率で糖を製造することが可能となる。
ここで、本発明の糖の製造方法において、「糖化率」とは、原料(木質系バイオマス)に対する糖化した成分の割合を意味する。
上記糖の製造方法においては、可溶成分にも僅かな量の糖が含まれるため、可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程を更に備えると、より得られる糖の量を増加させることができる。
また、かかる工程によれば、リグニンを抽出することも可能である。
上記糖の製造方法において、軟化工程が不活性ガス雰囲気下、温度160〜220℃、圧力1〜5MPaの条件で行われると、木質系バイオマスがより十分に繊維状となり、軟化される。
この場合、より高い糖化率で糖を製造することができる。
上記粉砕工程においては、不溶成分が薬液を含んだ状態で粉砕されると、薬液が木質系バイオマスを更に軟化すると共に、薬液が粉砕されたバイオマス粉末の凝集を抑制するという利点がある。
よって、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡をより解くことができる。
上記糖の製造方法においては、水溶性有機溶剤がアルコール類であると、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡をより一層解くことができる。
なお、アルコール類は人体にも無害であるため、安全性に優れる。
上記糖の製造方法においては、薬液全量中の有機酸の含有割合が、0.1質量%以上であると、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を確実に解くことができる。
本発明の糖の製造方法は、木質系バイオマスを、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、木質系バイオマスを軟化させる軟化工程と、薬液に溶解した木質系バイオマス中の可溶成分と、薬液に不溶な木質系バイオマス中の不溶成分とを分離する分離工程と、可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程と、不溶成分を粉砕し、バイオマス粉末とする粉砕工程と、バイオマス粉末を酵素に接触させることにより糖化させる糖化工程と、を備える。
以下、軟化工程、分離工程、糖抽出工程、粉砕工程、及び糖化工程をさらに詳細に説明する。
[軟化工程]
軟化工程は、一般に、リグニン、セルロース及びヘミセルロースが含まれる木質系バイオマスを原料とし、これを水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、木質系バイオマスを軟化させる工程である。
このように、軟化工程においては、木質系バイオマスを水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させることにより、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡が解れ、繊維状となる。
これにより、木質系バイオマスが十分に軟化される。
また、例えば、木質系バイオマスがセンチオーダーのサイズであれば、かかる軟化工程により、ミリオーダーのサイズに繊維化することができる。
この場合、後述する粉砕工程がしやすくなるという利点がある。
なお、同時に木質系バイオマスの一部が薬液に溶解する。
また、かかる木質系バイオマスの一部には、リグニン、微量のセルロース及びヘミセルロースの分解物が含まれる。
このように、上記軟化工程においては、水溶性有機溶剤及び有機酸を用いるため、水のみ、又は、希硫酸や希塩酸等の鉱酸と水溶性有機溶剤とを用いた場合と比較して温和な条件で木質系バイオマスを軟化させることができる。
よって、セルロースやヘミセルロースの分解を抑制でき、エネルギーコストも少なくすることができる。
本実施形態において、上記木質系バイオマスとは、木質由来の有機資源をいい、具体的には、木材、稲わら、麦わら、バガス、竹、パルプ等やこれらから生じる古紙等が挙げられる。
木質系バイオマスの大きさは、5cm角以下であることが好ましい。
この場合、確実に木質系バイオマスを軟化させることができる。
なお、木質系バイオマスは乾燥物であっても、湿潤物であってもよい。
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等の水よりも比熱の低い水溶性有機溶剤が挙げられる。
これらの中でも、水溶性有機溶剤がアルコール類であることが好ましい。
この場合、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡をより一層解くことができる。
また、アルコール類は人体にも無害であるため、安全性にも優れる。
有機酸としては、酢酸、シュウ酸、蟻酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸、シュウ酸、ギ酸等であることが好ましい。
これらの有機酸は沸点が低いため、煮沸により容易に除去できる。
なお、有機酸は後述する粉砕工程、又は糖化工程の際に残存していても問題がない。
本実施形態に係る薬液は、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を混合して製造される。
このとき、薬液全量中の有機酸の含有割合が、0.1質量%以上であることが好ましい。
また、上記含有割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
含有割合が20質量%を超えると、ヘミセルロース成分の過分解が起こる虞がある。
すなわち、水と水溶性有機溶剤と有機酸との配合比率が、2〜30質量%:65〜97.8質量%:0.2〜5質量%であることが好ましい。
これらの場合、確実にリグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を解くことができる。
木質系バイオマスと、薬剤との配合割合は質量比で、1:1〜10であることが好ましい。
この場合、より確実にリグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を解くことができる。
木質系バイオマスを薬液に浸漬させるときの温度は、160〜220℃であることが好ましい。
温度が160℃未満であると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、木質系バイオマスの軟化が不十分であるため、高い糖化率で糖が得られない傾向にあり、温度が220℃を超えると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、一部の糖が分解してしまうため、高い糖化率で糖が得られなくなる傾向にある。
軟化工程は、耐圧容器内で行うことが好ましい。
このときの耐圧容器内は、蒸気で飽和させることが好ましく、圧力が飽和蒸気圧の1〜5倍であることがより好ましい。
具体的には、耐圧容器内の圧力が、1〜5MPaであることが好ましい。
圧力が、1MPa未満であると、圧力が上記範囲内にある場合と比較して、木質系バイオマスを軟化させるのに時間がかかる傾向にある。
また、上記耐圧容器内は予め、不活性ガス雰囲気下としておくことが好ましい。
かかる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
この場合、酸化等による木質系バイオマスの分解が抑制される。
[分離工程]
分離工程は、上述した軟化工程において、薬液に浸漬させた木質系バイオマスを、薬液に溶解した木質系バイオマス中の可溶成分と、薬液に不溶な木質系バイオマス中の不溶成分とに分離する工程である。
ここで、可溶成分は、薬液と木質系バイオマスの溶解したものとからなり、不溶成分は、木質系バイオマスの薬液に不溶のものからなる。
なお、不溶成分には、後述する粉砕工程を妨げない範囲の量であれば、薬液が含まれていてもよい。
これにより、木質系バイオマスの一部が薬液に溶解するため、リグニンの一部を除去できる。
上記分離工程において、上記可溶成分と、上記不溶成分との分離方法は、特に限定されないが、例えば、ろ過やデカンテーション等で行われる。
[糖抽出工程]
糖抽出工程は、分離工程で得られた可溶成分から糖を抽出する工程である。
本実施形態に係る糖の製造方法においては、可溶成分にも僅かな量の糖が含まれるため、可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程を更に備えることが好ましい。
この場合、得られる糖の量を増加させることができる。
糖の抽出方法は、特に限定されないが、例えば、可溶成分を乾固させ、乾固した成分を水で抽出することにより得られる。
こうして得られる糖には、ヘミセルロースの加水分解により得られる五単糖からなるオリゴ糖が含まれる。
なお、このオリゴ糖は精製後、機能性食品素材として利用可能である。
また、上記糖抽出工程によれば、リグニンを抽出することも可能となる。
すなわち、かかる工程では、木質系バイオマス中でセルロース又はヘミセルロースと強固な結合を伴っていないリグニンを分離回収することができる。
かかるリグニンは、例えば、ろ過や遠心分離により、分離され、水洗により精製することができる。
こうして得られるリグニンは、例えば、繊維や合成高分子との複合化により、フィルムや繊維板として利用できる。
なお、上記糖抽出工程で得られる糖は微量であるため、本発明において、糖抽出工程は、必ずしも必須の工程ではない。
[粉砕工程]
粉砕工程は、分離工程で得られた不溶成分を粉砕し、バイオマス粉末とする工程である。
このように、粉砕工程において、軟化した木質系バイオマスを粉砕することにより、結晶化度や重合度を低下させると共に、木質系バイオマスの表面積を大きくする。
そうすると、後述する糖化工程において、バイオマス粉末が酵素に接触しやすくなる。
上記粉砕工程は、粉砕機械を用いて行われる(機械的粉砕)。
かかる粉砕機械としては、例えば、振動ボールミル、回転ボールミル、遊星型ボールミル、ロールミル、ディスクミル、高速回転羽根型ミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。
このとき、得られるバイオマス粉末の直径は10μm以下、好ましくは5μm以下であることが好ましい。
また、上記バイオマス粉末の結晶化度は10%以下であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
更に、上記バイオマス粉末の重合度が250以下であることが好ましく、220以下であることがより好ましい。
すなわち、粉砕工程においては、バイオマス粉末の直径、結晶化度又は重合度が上記範囲内になるように粉砕することが好ましい。
なお、粉砕工程を例えば15分以上行うことにより、直径、結晶化度、重合度が上記範囲内のバイオマス粉末が得られる。
これらの場合、後述する糖化工程において、バイオマス粉末が酵素に更に接触しやすくなる。
上記粉砕工程において、不溶成分が薬液を含んだ状態で粉砕されることが好ましい。
この場合、薬液が木質系バイオマスを更に軟化すると共に、薬液が粉砕されたバイオマス粉末の凝集を抑制するという利点がある。
よって、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡をより解くことが可能となり、結果として、糖化率が2倍以上となる。
なお、不溶成分が薬液を含む場合、残存する薬剤の量は、不溶成分の全質量に対し、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
[糖化工程]
糖化工程は、粉砕工程により得られるバイオマス粉末を酵素に接触させることにより糖化させる工程である。
上記酵素としては、セルラーゼが挙げられる。
酵素としてセルラーゼを用いることにより、セルロースが分解され、グルコースとなる。
上記糖化工程は、緩衝剤でpH3.5〜5.5に調整した緩衝液にバイオマス粉末とセルラーゼを加えた反応液を、温度45〜55℃で1〜50時間処理することによって行われる。
かかる糖化工程は、回分式で行ってもよいし、また固定化酵素を含むバイオリアクターを用いる連続式で行ってもよい。
このとき、反応液に超音波を当てながら糖化工程を行うことが好ましい。
この場合、セルロースに吸着する酵素が引きはがされるので、効率よくセルロースが糖化する。
また、異なった微生物由来のセルラーゼを混合して用いることが好ましい。
この場合、それらの相乗効果により、セルロースの糖化を促進させることができる。
ところで、リグニンは通常製紙業におけるパルプ化工程で副生物(黒液)として得られる場合が多く、化学的な変性と低分子化を伴った状態で得られる。
木材中のリグニン(プロトリグニン)構造を反映した学術用試料としてのリグニンを調製するBjorkman法(中野準三編 「リグニンの化学―基礎と応用―」、37頁(1979年、ユニ広報株式会社・出版部))が提案されているが、その方法で得られるリグニンは木材中のリグニンの数%に過ぎず、化学的変質がもたらされていないのは事実であろうが、木材中の全てのリグニンの平均構造を代表するものであるとは言い難い。
一方、本発明の糖化工程後に得られるリグニンは、木材中の多糖成分を完全に単糖並びに水溶性多糖として回収した後に固体として得られるので、木材中に存在するリグニンがほぼそのままの状態で得られ、学術用試料としての提供のみならず、低分子化していない分、フィルムや繊維板などの強度を必要とする材料としての応用に適している。
以上より、本実施形態に係る糖の製造方法によれば、木質系バイオマスを原料とし、比較的温和な条件であっても、十分高い糖化率で糖を製造することが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[軟化工程]
耐圧容器として、ステンレス(SUS316)製の内容積57mlのオートクレーブ(日東高圧製)を用い、この中に2〜5cm角の製紙用ユーカリチップ(木質系バイオマス、含水率9重量%)2.19g(乾燥重量2g)と、エタノール(水溶性有機溶剤)7.5g、水2.31g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる薬液とを混合した混合物を入れ、蓋をして密封した。
次いで、耐圧容器内にアルゴンを注入して耐圧容器内の圧力を5MPaに調整し、混合物を攪拌しながら20分かけて200℃まで昇温した。
そして、耐圧容器内の温度を200℃に維持した状態で更に混合物を1時間攪拌した。
[分離工程]
その後、蓋を開け、混合物をろ過して固形物(不溶成分)とろ液(可溶成分)とに分離した。
得られた固形物は80mlのエタノールを用いて洗浄した。
得られた固形物は太さ1mm、長さ10mm程度の繊維状であった。
また、固形物の乾燥重量は1.84gで、30%のリグニン(72%硫酸に不溶性の成分として求められるKlasonリグニン)が含まれていた。
得られたろ液を乾固させた乾固物の乾燥重量は0.16gであった。
[糖抽出工程]
次いで、上記乾固物を水で糖(ヘミセルロース由来)を抽出することにより、リグニンと糖とを分離した。
得られたリグニンは、0.13gであり、ヘミセルロース由来の糖は0.03gであった。
なお、ヘミセルロース由来の糖は水溶性オリゴ糖であった。
また、ヘミセルロースの過分解物であるフルフラール及び5−ヒドロキシメチルフルフラールの生成量は、出発物質であるユーカリチップの乾燥重量に対して0.1%以下であった。
[粉砕工程]
上記固形物は、遊星型ボールミル粉砕機(フリッチュ製、P−7)により機械的粉砕を行なった。
機械的粉砕は内容積45mlのジルコニア製容器及びジルコニア製ボール(15mmφ)を用い、1容器当たり1.2g(乾燥重量にして1g)の固形物を投入し、公転回転数400rpmにて、10分間粉砕―10分間休止のサイクルで、1時間粉砕した。
得られた固形物の粉末(バイオマス粉末)は、X線回折測定から非晶状態(結晶化度0%)のセルロースが主成分であった。
[糖化工程]
得られた固形物の粉末60mg(乾燥重量にして50mg)を20ml容量のサンプル瓶に秤りとり、50mM酢酸―酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)17mlとセルラーゼ(明治製菓製メイセラーゼ)2mgとを加えた。
このような反応液組成を標準組成として、反応温度45℃で18時間糖化反応を行った。
糖化反応後に得られた糖含有溶液について遠心分離(2,500rpm、10分間)により固液分離した。
そして、フェノール硫酸法を用いて測定した液中に含まれる全還元糖量は36mgであった。
これは、出発原料のユーカリに含まれる多糖類がほぼ完全に単糖あるいは水溶性の糖類に変換されたことを意味する。
また、グルコースCIIテストワコー(和光純薬工業(株)製)により糖化液中のグルコース量を測定したところ、ユーカリに含まれるセルロースのグルコースへの糖化率は100%であった。
(実施例2)
軟化工程における薬液において、エタノールの量を3.6gとし、水の量を0.21gとし、酢酸の代わりにシュウ酸0.12gとし、糖化工程において糖化反応を48時間行ったこと以外は、実施例1と同様にして、軟化工程、分離工程、糖抽出工程、粉砕工程、糖化工程を行なった。
分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.91gで、30%のリグニンが含まれていた。
得られたろ液を乾固させた乾個物の乾燥重量は0.09gであった。
糖抽出工程において、得られたリグニンは、0.07gであり、ヘミセルロース由来の糖は0.02gであった。
なお、ヘミセルロース由来の糖は水溶性オリゴ糖であった。
また、ヘミセルロースの過分解物であるフルフラール及び5−ヒドロキシメチルフルフラールの生成量は、出発物質であるユーカリチップの乾燥重量に対して0.1%以下であった。
糖化工程において、得られた全還元糖量は28mgであった。
また、グルコースCIIテストワコーを用いて糖化液中のグルコース量を測定したところ、ユーカリに含まれるセルロースのグルコースへの糖化率は71%であった。
(比較例1)
軟化工程における薬液において、エタノールを用いず、水の量を8.81gとし、酢酸の量を0.5gとし、糖抽出工程、粉砕工程、糖化工程は行わないこと以外は実施例1と同様にして、軟化工程、分離工程を行なった。
分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.38gで、72%硫酸に不溶性の成分としてリグニン量を求めたところ、0.74g(69%)であった。
(比較例2)
軟化工程における薬液において、エタノール及び酢酸を用いず、水の量を8.81gとし、糖抽出工程、粉砕工程、糖化工程は行わないこと以外は実施例1と同様にして、軟化工程、分離工程を行なった。
分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.1gで、72%硫酸に不溶性の成分としてリグニン量を求めたところ、0.87g(79%)であった。
(比較例3)
軟化工程における薬液において、エタノールの量を3.6gとし、水の量を0.21gとし、酢酸を用いず、糖化工程において糖化反応を48時間行ったこと以外は、実施例1と同様にして、軟化工程、分離工程、糖抽出工程、粉砕工程、糖化工程を行なった。
分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.89gで、43%のリグニンが含まれていた。
得られたろ液を乾固させた乾個物の乾燥重量は0.11gであった。
糖抽出工程において、得られたリグニンは、0.08gであり、ヘミセルロース由来の糖は0.03gであった。
なお、ヘミセルロース由来の糖は水溶性オリゴ糖であった。
また、ヘミセルロースの過分解物であるフルフラール及び5−ヒドロキシメチルフルフラールの生成量は、出発物質であるユーカリチップの乾燥重量に対して0.1%以下であった。
糖化工程において、得られた全還元糖量は21mgであった。
また、グルコースCIIテストワコーを用いて糖化液中のグルコース量を測定したところ、ユーカリに含まれるセルロースのグルコースへの糖化率は28%であった。
以上の結果を表1にまとめた。
Figure 0005019421
表1に示した結果から明らかなように、実施例1,2の糖の製造方法によれば、比較例1,2の方法と比較して、水溶性有機溶剤及び有機酸を用いることにより、十分に高い糖化率で木質系バイオマスを糖化できることがわかった。
このことから、本発明によれば、木質系バイオマスを原料とし、比較的温和な条件であっても、十分高い糖化率で糖を製造できることが確認された。
なお、比較例1においては、水の割合が多いためにリグニン、セルロース、ヘミセルロース成分の過分解が進行した。また、この条件での薬剤処理による多糖成分の糖化率は極めて低かったので、機械的粉砕処理および酵素糖化処理工程は行わなかった。

Claims (6)

  1. リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含む木質系バイオマスから糖を製造する方法であって、
    前記木質系バイオマスを、水、アルコール類である水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、前記木質系バイオマスを軟化させる軟化工程と、
    前記薬液に溶解した前記木質系バイオマス中の可溶成分と、前記薬液に不溶な前記木質系バイオマス中の不溶成分とを分離する分離工程と、
    前記可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程と、
    前記不溶成分を、粉砕機械を用いて粉砕し、バイオマス粉末とする粉砕工程と、
    前記バイオマス粉末を酵素に接触させることにより糖化させる糖化工程と、
    を備え
    前記軟化工程が不活性ガス雰囲気下、温度160〜220℃、圧力1〜5MPaの条件で行われ、
    前記粉砕工程において、前記不溶成分が薬液を含んだ状態で粉砕されることを特徴とする糖の製造方法。
  2. 前記軟化工程において、前記薬液全量中の前記有機酸の含有割合が、0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の糖の製造方法。
  3. 前記軟化工程において、前記水と前記水溶性有機溶剤と前記有機酸との配合比率が、2〜30質量%:65〜97.8質量%:0.2〜5質量%であり、木質系バイオマスと、薬剤との配合割合は質量比で、1:1〜10である請求項1又は2に記載の糖の製造方法。
  4. 前記粉砕工程において、前記バイオマス粉末の直径が10μm以下、結晶化度が10%以下、重合度が250以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖の製造方法。
  5. 前記粉砕工程において、前記不溶成分が含む薬液の量は、不溶成分の全質量に対し、1〜100質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖の製造方法。
  6. 前記糖化工程が、超音波を当てながら行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖の製造方法。
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