以下、添付の図面に基づいて、本発明によるインク・ジェット・プリンタおよび印刷方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
図4には、本発明によるインク・ジェット・プリンタの実施の形態の一例の概略構成説明図が示されており、図5には、図4の要部を拡大的に示した説明図が示されている。
なお、図4乃至図5において、図1乃至図2と同一あるいは相当する構成に関しては、図1乃至図2において用いた符号を用いて示すことにより、その詳細な構成および作用の説明は省略する。
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおいても、媒体としては、記録紙を用いるものとし、当該記録紙は、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともに、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙の長手方向に搬送されるようになされている。なお、主走査方向と直交する方向(即ち、記録紙の搬送方向かつ記録紙の長手方向)を、以下、「副走査方向」と称する。
ここで、従来のインク・ジェット・プリンタ110と本発明によるインク・ジェット・プリンタ10とを比較すると、従来のインク・ジェット・プリンタ110においてはインク・ヘッド・ホルダー130に紫外線ランプ34が配設されていたのに対して、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においてはインク・ヘッド・ホルダー30に第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が移動自在に配設されている点において、両者は異なっている。
即ち、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においては、第1紫外線ランプ36が、インク・ヘッド・ホルダー30の内部30aに配設された6つのインク・ヘッド32−1〜32−6のうち主走査方向における最も左方側に配設されたインク・ヘッド32−1の左方側に隣接して移動自在に配設され、第2紫外線ランプ38が、6つのインク・ヘッド32−1〜32−6のうち主走査方向における最も右方側に配設されたインク・ヘッド32−6の右方側に隣接して移動自在に配設されている。
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においては、本発明の実施に関連する操作子群として操作子群40が配設されている。
なお、こうしたインク・ジェット・プリンタ10の全体の動作は、マイクロ・コンピューター200によって制御されている。
より詳細に説明すると、インク・ジェット・プリンタ10のインク・ヘッド・ホルダー30は、内部30aが中空の略箱状体に形成されており、内部30aを形成するいずれも略矩形形状の底面部30b、左側面部30c、右側面部30d、正面部30e、背面部30fならびに上面部30gを備えている。なお、図5においては、説明を容易にするために、インク・ヘッド・ホルダー30の正面部30eならびに上面部30gを省略した状態で現されている。
背面部30fは主走査方向と一致する方向に延長しているとともに、当該背面部30fと直交して位置する左側面部30cならびに右側面部30dは、主走査方向と直交する副走査方向に延長している。また、背面部30fには、主走査方向に移動自在に配設されたワイヤー24が固定的に配設されている。
このインク・ヘッド・ホルダー30の内部30aには、6つのインク・ヘッド32−1〜32−6が左側面部30c側から主走査方向と一致する方向に一列に並んで順次配置されている。
これら6つのインク・ヘッド32−1〜32−6はそれぞれ同様な構成を備えており、インク・ヘッド32−1〜32−6の下面32a−1〜32a−6には、供給されたインクを記録紙100に対して射出する射出口として複数個のインク・ジェット・ノズル42が配設されている(図6(b)参照)。これら複数個のインク・ジェット・ノズル42は副走査方向に一列に並んで配置され、副走査方向における全長がLであるインク・ジェット・ノズル列44を形成しており、インク・ヘッド・ホルダー30の底面部30bに穿設された孔からインク・ヘッド・ホルダー30の外部に位置するように配設されている。
一方、第1紫外線ランプ36と第2紫外線ランプ38とはいずれも、同一の構成を備えており、全体が略中空直方体形状のケース33,35と、ケース33,35内に配置されるとともに所定の長さを有するフィラメント37a,39aを備えたランプ本体37,39とを有して構成されている。また、ケース33,35は、後述するガイド・レール62,68が係合可能なように側面33a,35aに形成された係合部33b,35bと、上面に形成された取り付け部33c,35cとを備えている。
これら第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクの飛滴が落下する記録紙100上にランプ本体37,39から出射された紫外線を照射して、記録紙100上においてUVインクを硬化させる。なお、第1紫外線ランプ36と第2紫外線ランプ38との点灯ならびに消灯は、マイクロ・コンピューター200によってそれぞれ制御される。
また、インク・ヘッド・ホルダー30の左側面部30cには、モーター50が内部30a内に位置するようにして配設されている。このモーター50の回転軸50aは、左側面部30cを貫通してインク・ヘッド・ホルダー30の外部へ突出し、その先端部にプーリー52が固定されている。
さらに、インク・ヘッド・ホルダー30には、回転軸54がその両端部を左側面部30cならびに右側面部30dにそれぞれ貫通させて、軸線方向を主走査方向に一致させた状態で回転自在に配設されている。この回転軸54の左側面部30cを貫通してインク・ヘッド・ホルダー30の外部に突出した一方の端部にはプーリー56が固定され、回転軸54の右側面部30dを貫通してインク・ヘッド・ホルダー30の外部に突出した他方の端部にはプーリー58が固定されている。
そして、インク・ヘッド・ホルダー30の左側面部30cにおいては、プーリー52とプーリー56との間に駆動ベルト60が無端状に張設されており、駆動ベルト60の下方側の左側面部30cには副走査方向に延長されたガイド・レール62が配設されている。一方、インク・ヘッド・ホルダー30の右側面部30dにおいては、インク・ヘッド・ホルダー30の外部に位置するようにして配設された回転軸64の先端部に固定されたプーリー66とプーリー58との間に駆動ベルト70が無端状に張設され、駆動ベルト70の下方側の右側面部30dには副走査方向に延長されたガイド・レール68が配設されている。
次に、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38のインク・ヘッド・ホルダー30への取り付け状態について説明すると、第1紫外線ランプ36は、ケース33の側面33aの係合部33bを左側面部30cのガイド・レール62に係合させるとともに取り付け部33cを駆動ベルト60に固定させ、フィラメント37aの延長方向が副走査方向と一致するようにしてインク・ヘッド・ホルダー30の左側面部30cに配設されている。また、第2紫外線ランプ38は、ケース35の側面35aの係合部35bをガイド・レール68に係合させるとともに取り付け部35cを駆動ベルト70に固定させ、フィラメント39aの延長方向が副走査方向と一致するようにしてインク・ヘッド・ホルダー30の右側面部30dに配設されている。
従って、モーター50が駆動されて回転軸50aとともにプーリー52が回転にすると、プーリー52の回転に伴い駆動ベルト60も回転し、駆動ベルト60に固定された第1紫外線ランプ36がガイド・レール62に沿って副走査方向に移動される。また、駆動ベルト60の回転は、プーリー56および回転軸54を介してプーリー58へ伝達され、プーリー58の回転に伴い駆動ベルト70も回転し、駆動ベルト70に固定された第2紫外線ランプ38がガイド・レール68に沿って副走査方向に移動される。
具体的には、モーター50の回転軸50aが矢印A方向に回転した場合には、プーリー56は矢印B方向に回転して、駆動ベルト60に固定された第1紫外線ランプ36が、副走査方向の後方側から前方側に向かって矢印C方向で移動するとともに、プーリー58が矢印D方向に回転して、駆動ベルト70に固定された第2紫外線ランプ38が副走査方向の後方側から前方側に向かって矢印E方向で移動する(図5参照)。
反対に、モーター50の回転軸50aが矢印F方向に回転した場合には、プーリー56は矢印G方向に回転して、駆動ベルト60に固定された第1紫外線ランプ36が、副走査方向の前方側から後方側に向かって矢印H方向で移動するとともに、プーリー58が矢印I方向に回転して、駆動ベルト70に固定された第2紫外線ランプ38が副走査方向の前方側から後方側に向かって矢印J方向に移動する(図6(a)参照)。
また、当然のことながら、インク・ヘッド・ホルダー30の移動に伴って、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は、所定の走査位置において記録紙100上を、側方部材16R側の主走査方向の一方の端部から、インク・ジェット・プリンタ10の中央を経て側方部材16L側の主走査方向の他方の端部へと、主走査方向における行き方向で往路において移動するとともに、側方部材16L側の主走査方向の他方の端部から、インク・ジェット・プリンタ10の中央を経て側方部材16R側の主走査方向の一方の端部へと、主走査方向における帰り方向で復路において移動する。
つまり、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は一体的に、主走査方向の一方の端部と他方の端部との間を往復移動し、行き方向に移動して主走査方向の他方の端部に到達したならば、その移動方向を帰り方向に変更して一方の端部まで移動し、到達した一方の端部において移動方向を再び行き方向に変更して移動するというように、往路・復路・往路・復路・・・の移動を所定の走査位置において繰り返すものである。なお、走査位置は、媒体たる記録紙100が副走査方向の後方側から前方側に向かって搬送されることにより、所定の間隔で順次変化するものである。
なお、図面より明らかであるが、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に往路において行き方向で移動するときには、インク・ヘッド32−1〜32−6の前段に第1紫外線ランプ36が位置し、インク・ヘッド32−1〜32−6の後段に第2紫外線ランプ38が位置する。これに対して、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に復路において帰り方向で移動するときには、インク・ヘッド32−1〜32−6の前段に第2紫外線ランプ38が位置し、インク・ヘッド32−1〜32−6の後段に第1紫外線ランプ36が位置する。
次に、操作子群40について説明すると、操作子群40は側方部材16Rに配設されており、ユーザーは画面上に所定のメニューを表示する表示装置(図示せず。)を参照しながら操作子群40を操作して、インク・ジェット・プリンタ10を使用するユーザーの所望の指示を入力することになる。操作子群40の操作により行われた各種設定の内容は、マイクロ・コンピューター200によって処理されて、本発明による印刷処理に用いられる情報としての所定のエリアに記憶される。
この実施の形態においては、ユーザーが操作子群40を操作することにより、単一パス印刷または複数パス印刷のいずれかを選択することができるとともに、単一パス印刷と複数パス印刷とのいずれにおいても光沢有り印刷と光沢無し印刷とのいずれも選択して設定可能とされている。つまり、インク・ジェット・プリンタ10においては、操作子群40の操作によって、
(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モード
(ii)単一パス印刷で光沢無し印刷モード
(iii)複数パス印刷で光沢有り印刷モード
(iv)複数パス印刷で光沢無し印刷モード
という4つのモードが設定可能になっている。
ここで、インク・ジェット・プリンタ10において設定可能な単一パス印刷と複数パス印刷について詳細に説明することとする。
インク・ジェット・プリンタ10において、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に、所定の走査位置において主走査方向の一方の端部と他方の端部との間を行き方向あるいは帰り方向で1回移動したときに、当該移動に伴い記録紙100上に印刷される最大の範囲は、インク・ヘッド32−1〜32−6が主走査方向に移動した距離を長さとするとともに、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長L(図6(b)参照)を幅とする1本のラインに一致する。
この1本のラインを印刷単位としての「バンド」と称することとし、また、1バンドが印刷されるべき記録紙100上の範囲を単位印刷領域Pと称することとする。そして、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に、主走査方向の一方の端部と他方の端部との間を行き方向あるいは帰り方向で移動することを「パス」と称する。
上記したような1バンド分の印刷を、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に主走査方向の一方の端部と他方の端部との間を行き方向あるいは帰り方向で1回移動して完了する、即ち、1パスで行うのが単一パス印刷である。
一方、1バンド分の印刷を、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に主走査方向の一方の端部と他方の端部との間を行き方向ならびに帰り方向で2回以上移動して完了する、即ち、複数のパスで行うのが複数パス印刷である。
なお、インク・ジェット・プリンタ10においては、単一パス印刷の場合には、1パスで1バンド分の印刷が行われるので、1パス毎に単位印刷領域P分だけ、記録紙100を副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出すように設定されている。従って、単一パス印刷の場合、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上のインク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長Lを有する印刷領域Sと単位印刷領域Pとは常に一致する。
また、複数パス印刷の場合には、複数パスで1バンド分の印刷が行われるので、1パス毎に「単位印刷領域P/1バンド分の印刷を完了するパスの総数」分だけ、記録紙100を副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出すように設定されている。例えば、4パスで1バンド分の印刷を行う場合には、1パス毎に「単位印刷領域P/4」分だけ記録紙100が搬送され、4パスで記録紙100が4回送られたときに単位印刷領域P分の記録紙100が搬送されるようになる。従って、複数パス印刷の場合、印刷領域Sと単位印刷領域Pとは常に一致するものではない。
以上の構成において、インク・ジェット・プリンタ10を用いて上記した(i)〜(iv)の4つのモードで記録紙100上に印刷を行う場合を説明する。
まず、全体に共通な動作を説明すると、ワイヤー24の巻き取りによるワイヤー24の移動に伴って、インク・ヘッド・ホルダー30に配設されたインク・ヘッド32−1〜32−6と第1紫外線ランプ36と第2紫外線ランプ38とが一体的に、給紙装置(図示せず)によってベース部材14上に供給された記録紙100上を、所定の走査位置において主走査方向における行き方向および帰り方向に往復移動する。
この際に、各モードに応じたマイクロ・コンピューター200の処理によって、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズルからのインクの射出や、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置が制御されて所定の印刷が行われる。
なお、この実施の形態においては、マイクロ・コンピューター200の処理によって、印刷中は第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が常時点灯するように設定されている。
また、この実施の形態においては、マイクロ・コンピューター200の処理によって、所定の印刷を双方向印刷により行うように設定されている。つまり、インク・ヘッド・ホルダー30とともにインク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36、第2紫外線ランプ38が一体的に、主走査方向の一方の端部たる側方部材16R側から側方部材16L側へと往路において行き方向で移動するとき、ならびに、側方部材16L側から側方部材16R側へと復路において帰り方向で移動するときのいずれにおいても、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42からインク・チューブによって搬送されたUVインクが射出される。
次に、上記した4つのモードについて詳細に説明するが、以下の説明においては、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の副走査方向における位置が、副走査方向における最も後方側の位置となっている図5に示す状態である場合を、インク・ジェット・プリンタ10の初期状態として説明することとする。
(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モードの場合
このモードの場合には、記録紙100は1パス毎に単位印刷領域P分だけ副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出されるように搬送され、また、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42からのUVインクの射出により1パスで1バンド分の印刷が行われる。
そして、記録紙100への印刷開始前に、上記したインク・ジェット・プリンタ10の初期状態において、モーター50の駆動を制御して回転軸50aを矢印A方向に回転し、プーリー56を矢印B方向に回転するとともにプーリー58を矢印D方向に回転する。すると、駆動ベルト60に配設された第1紫外線ランプ36が副走査方向において矢印C方向に移動するとともに、駆動ベルト70に配設された第2紫外線ランプ38が副走査方向において矢印E方向に移動する(図5参照)。
こうして第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38を副走査方向における後方側から前方側に向かって移動させ、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置を、図5に示す初期状態から副走査方向における最も前方側の位置(図6(a)ならびに図7(a)参照)に変化する。
第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が副走査方向における最も前方側に位置した場合には、ランプ本体37,39から紫外線が照射される記録紙100上における有効照射領域Eが、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上における1バンド分の単位印刷領域P1と一致する印刷領域Sと重なり合うことはなく、副走査方向において印刷領域Sより前方側に位置している(図7(b)ならびに図8(a)(b)(c)参照)。
こうして第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が副走査方向における最も前方側に位置した状態で印刷を開始すると、印刷開始位置となる主走査方向の一方の端部たる側方部材16R側から側方部材16L側へ向かう往路における行き方向でインク・ヘッド・ホルダー30とともにインク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36、第2紫外線ランプ38が一体的に移動し、このときにインク・ジェット・ノズル42からインク・チューブによって搬送されたUVインクが射出される。すると、射出されたUVインクの飛滴は、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下する(図8(a)参照)。
ここで、往路においてUVインクが射出されるときに、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は点灯しているものの、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eと往路において印刷が行われる単位印刷領域P1と一致する印刷領域Sとが記録紙100上において重なり合っていないので、往路において主走査方向の行き方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上に、即ち、単位印刷領域P1に、当該往路においては第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38からの紫外線は照射されない。
その結果、往路において射出されたUVインクの飛滴は、記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下したままで、記録紙100上において硬化することはない(図9(a)参照)。
そして、往路における1パスで1バンド分の単位印刷領域P1における印刷がなされると、記録紙100が単位印刷領域P分だけ副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出される。これにより、往路においてインク・ヘッド32−1〜32−6が対向して印刷を行った記録紙100上の単位印刷領域P1と隣接する次の単位印刷領域P2上に、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向するようになる(図8(b)参照)。
ここで、有効照射領域Eは、復路においてこれから印刷が行われる記録紙100上の印刷領域Sたる単位印刷領域P2とは重なり合わず、副走査方向において単位印刷領域P2より前方側に位置している。このため、有効照射領域Eは、往路においてインク・ヘッド32−1〜32−6が対向して既に印刷が行われた記録紙100上の単位印刷領域P1と重なり合うようになる(図8(b)に示す状態参照)。
次に、側方部材16L側から側方部材16R側へ向かう復路における帰り方向でインク・ヘッド・ホルダー30とともにインク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36、第2紫外線ランプ38が一体的に移動するときにも、行き方向と同様に、インク・ジェット・ノズル42からインク・チューブによって搬送されたUVインクが射出される。こうして射出されたUVインクの飛滴は、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上の単位印刷領域P2内の所定の位置に落下する(図8(b)参照)。
ここで、復路においてUVインクが射出されるときに、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は点灯しているものの、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eと復路において印刷が行われる単位印刷領域P2と一致する印刷領域Sとが記録紙100上において重なり合っていないので、復路において主走査方向の帰り方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上に、即ち、単位印刷領域P2に、当該復路においては第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38からの紫外線は照射されない。
その結果、復路において射出されたUVインクの飛滴は、記録紙100上の単位印刷領域P2内の所定の位置に落下したままで、記録紙100上において硬化することはない(図9(a)参照)。
一方、復路においてUVインクが射出されるときに、点灯している第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、副走査方向において単位印刷領域P2より前方側に位置し先の往路においてインク・ヘッド32−1〜32−6が対向して印刷を行った記録紙100上の単位印刷領域P1と重なり合っている。
その結果、往路において主走査方向の行き方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のそれぞれから射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上の単位印刷領域P1に、復路において帰り方向で移動する第1紫外線ランプ36ならび第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されて、往路において射出されたUVインクの飛滴が記録紙100上の単位印刷領域P1において硬化する。
こうして、一体的に移動するインク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が、印刷開始位置たる主走査方向の一方の端部から行き方向に移動して他方の端部に到達し、行き方向とは反対の帰り方向に移動して印刷開始位置に復帰するときに、インク・ジェット・ノズルからUVインクを射出した往路(図8(a)参照)の直後の復路(図8(b)参照)において、当該往路において射出されたUVインクが落下した記録紙100上に第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38によって紫外線が照射される。
ここで、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が一体的に、主走査方向の一方の端部から行き方向で移動して側方部材16L側に到達し、その移動方向を変えて帰り方向で移動する往復移動の際には、行き方向に移動するインク・ヘッド32−1〜32−6から往路においてUVインクを射出したときから、そのインクの飛滴が落下した記録紙100上に復路において紫外線が照射されるまでの間に、所定の時間tが経過している。
例えば、インク・ジェット・プリンタ10の主走査方向における全長(即ち、主走査方向の一方の端部と他方の端部との間の距離)がおよそ1mで、インク・ヘッド・ホルダー30がおよそ500mm/secで主走査方向に移動する場合には、この所定の時間tはおよそ2秒となる。
このため、この所定の時間tの間に、UVインクが記録紙100上の所定の位置に落下したときの形状(図9(a)参照)、即ち、記録紙100の表面100aに表面張力で丸く半球様に載ったままの形状のUVインクが次第に拡散してしまう(図9(b)参照)。
その結果、復路において第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38から照射された紫外線によって記録紙100上において硬化したUVインクは、図9(c)に示すように、記録紙100上の所定の位置に落下したインクの飛滴が広がって互いに繋がった形状で硬化している。このため、表面100aにおいて互いに繋がり平たい形状で硬化したUVインクによって、記録紙100の表面100aにおける凹凸は小さくなるので、記録紙100の表面100aは平滑な状態となり、粒子感が無くなり光沢のある印刷結果となる。
なお、復路における1パスで1バンド分の単位印刷領域P2における印刷がなされたならば、記録紙100が単位印刷領域P分だけ送り出されて、次の往路においては、上記と同様にして、1パスで1バンド分の単位印刷領域P3における印刷を行うとともに、先の復路において単位印刷領域P2に射出されたUVインクの飛滴を第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38から照射された紫外線によって記録紙100上に硬化させる(図8(c)参照)。
このように、記録紙100の副走査方向への搬送と、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の主走査方向における往復移動による印刷とを繰り返し行うことにより、記録紙100上の所望の範囲に所望の印刷が光沢のある仕上がりで行われることになる。
(ii)単一パス印刷で光沢無し印刷モードの場合
操作子群40により単一パス印刷で光沢無し印刷モードが設定された場合には、記録紙100の搬送量やインク・ジェット・ノズル42からのUVインクの射出は、上記した(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モードの場合と同様になる。
そして、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置は、図5に示す初期状態とする(図10(a)参照)。
副走査方向における最も後方側に位置している初期状態の第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上の1バンドが印刷されるべき単位印刷領域P1と一致する印刷領域Sと互いに重なり合っており、副走査方向における印刷領域Sの全長(即ち、インク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長L)をカバーするように位置している(図10(b)ならびに図11(a)(b)参照)。
こうして第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が副走査方向における最も後方側に位置した状態で印刷を開始すると、印刷開始位置となる主走査方向の一方の端部たる側方部材16R側から、インク・ジェット・プリンタ10の中央を経て側方部材16L側へと往路において行き方向で、インク・ヘッド・ホルダー30とともにインク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36、第2紫外線ランプ38が一体的に移動し、このときにインク・ジェット・ノズル42からインク・チューブによって搬送されたUVインクが射出される。すると、射出されたUVインクの飛滴は、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下する(図11(a)参照)。
ここで、往路においてUVインクが射出されるときに、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38は点灯しており、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eと往路において印刷される単位印刷領域P1と一致する印刷領域Sとが記録紙100上において重なり合っているので、往路において主走査方向の行き方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上に、即ち、単位印刷領域P1に、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38からの紫外線が照射される。
その結果、往路において主走査方向の行き方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のそれぞれから射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上に、往路において行き方向で移動する第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されて、往路において射出されたUVインクの飛滴が記録紙100上の単位印刷領域P1内において硬化する。
ここで、往路において主走査方向の行き方向において移動するインク・ヘッド32−1〜32−6のそれぞれから射出されたUVインクの飛滴が落下した記録紙100上の単位印刷領域P1には、その後直ちに、行き方向のときにインク・ヘッド32−1〜32−6の後段に位置する第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されることになる。
即ち、上記した(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モードの場合において、往路においてUVインクを射出したときから復路において紫外線が照射されるまでの間や、復路においてUVインクを射出したときから往路において紫外線が照射されるまでの間に経過する所定の時間tに比べて、非常に短い時間しか経過していないうちに、光沢無し印刷モードの場合には、往路においてUVインクが射出したならば、その同一の往路において紫外線が照射される。
その結果、往路において第2紫外線ランプ38から照射された紫外線によって記録紙100上において硬化したUVインクは、図9(d)に示すように、インク・ヘッド32−1〜32−6から射出され記録紙100の表面100aに表面張力で丸く半球様に載ったままの形状で硬化している。このため、表面100aにおいて丸く略半球状の形状で硬化したUVインクによって、記録紙100の表面100aの凹凸は大きく、記録紙100の表面100aは物理的にざらついた状態となるので、粒子感があって光沢感のない印刷結果となる。
そして、往路における1パスで1バンド分の単位印刷領域P1における印刷がなされたならば、記録紙100が単位印刷領域P分だけ送り出されて、次の復路においては、1パスで1バンド分の単位印刷領域P2における印刷を行うとともに、当該復路において射出されたUVインクの飛滴を記録紙100上に単位印刷領域P2おいて硬化させる(図11(b)参照)。
このように、記録紙100の副走査方向への搬送と、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の主走査方向における往復移動による印刷とを繰り返し行うことにより、記録紙100上の所望の範囲に所望の印刷が光沢のない仕上がりで行われることになる。
(iii)複数パス印刷で光沢有り印刷モードの場合
この実施の形態においては、4パスで1バンド分の印刷を行う場合を例にして、説明することとする。なお、1バンド分の印刷を完了するパスの総数は、4パスに限られるものではないことは勿論であり、8パスや16パスなど任意に設定可能なものである。
従って、操作子群40により複数パス印刷で光沢有り印刷モードが設定された場合には、記録紙100は1パス毎に単位印刷領域P/4分だけ副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出されるように搬送され、また、インク・ヘッド32−1〜32−6のインク・ジェット・ノズル42からのUVインクの射出により4パスで1バンド分の印刷が行われる。
また、複数パス印刷で光沢有り印刷モードの場合には、操作子群40により、光沢有り印刷結果の光沢の程度を設定可能なものであり、以下、操作子群40によって設定可能な3つのタイプ(iii−A)高光沢タイプ、(iii−B)中光沢タイプ、(iii−C)低光沢タイプのそれぞれについて詳細に説明することとする。
(iii−A)高光沢タイプ
この高光沢タイプが選択された場合には、光沢度の高い印刷結果が得られるものである。
まず、記録紙100への印刷開始前に、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置を、上記した(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モードの場合と同様に、図5に示す初期状態から副走査方向における最も前方側の位置(図6(a)ならびに図7(a)参照)に変化する。
従って、副走査方向における最も前方側の位置に位置するようになった第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向する記録紙100上のインク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長Lを有する印刷領域Sと互いに重なり合う部分はなく、副走査方向において印刷可能領域Sより前方側に位置している(図7(b)ならびに図12(a)(b)(c)(d)(e)参照)。
なお、図12(a)に示すように、1パス目においては、印刷領域Sは単位印刷領域P1と一致している。
そして、1パス目の往路において射出されたUVインクの飛滴は、記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下するが、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eと単位印刷領域P1と一致している印刷領域Sとが記録紙100上において重なり合っていないので、記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下したままで、記録紙100上において硬化することはない(図9(a)参照)。
そして、往路における1パス目が終了したので、記録紙100が単位印刷領域P/4分だけ副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出される。これにより、2パス目においては印刷領域Sと単位印刷領域Pとは一致しなくなり、先の往路においてインク・ヘッド32−1〜32−6が対向して印刷を行った記録紙100上の単位印刷領域P1の副走査方向における後方側3/4の部分(図12(b)に示す符号P1−b,P1−c,P1−d参照)と、単位印刷領域P1に隣接する次の単位印刷領域P2の副走査方向における前方側1/4の部分(図12(b)に示す符号P2ーa参照)とに、インク・ヘッド32−1〜32−6が対向するようになる。
ここで、有効照射領域Eは、既に1パス目で印刷が行われた記録紙100上の単位印刷領域P1のうち、印刷領域S外に位置するようになった副走査方向における前方側1/4の部分(図12(b)に示す符号P1−a参照)と重なり合うようになる。
従って、復路における2パス目で、有効照射領域Eと重なり合っている記録紙100上の単位印刷領域P1の副走査方向における前方側1/4の部分においては、復路において帰り方向で移動する第1紫外線ランプ36ならび第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されて、往路の1パス目において射出されたUVインクの飛滴が記録紙100上において硬化する(図9(c)参照)。
一方、印刷領域S内の単位印刷領域P1の副走査方向における後方側3/4の部分と、次の単位印刷領域P2の副走査方向における前方側1/4の部分においては、紫外線は照射されず、復路において射出されたUVインクが所定の位置に落下したままで、記録紙100上において硬化することはない(図9(a)参照)。
そして、2パス目の印刷が終了したならば、記録紙100の副走査方向へ単位印刷領域P/4分だけ搬送し、3パス目の印刷を行って(図12(c)参照)、3パス目の印刷が終了したならば、記録紙100の副走査方向へ単位印刷領域P/4分だけ搬送し、4パス目の印刷(図12(d)参照)を行ってから、記録紙100の副走査方向へ単位印刷領域P/4分だけ搬送する(図12(e)参照)。
こうして1パス目においてインク・ヘッド32−1〜32−6の直下の印刷領域Sと一致していた単位印刷領域P1(図12(a)に示す状態参照)が、印刷領域S内から徐々に有効照射領域E内へと送り出され、印刷領域S内においてインクの飛滴が落下した記録紙100上には所定の時間が経過した後に紫外線が照射され、記録紙100の表面100aは平滑な状態となって(図9(c)参照)、粒子感が無くなり光沢のある印刷結果となる。
この際、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が副走査方向における最も前方側の位置に位置しているので、印刷領域Sと有効照射領域Eとは互いに重なり合う部分が全くない。このため、高光沢タイプの場合には、インク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクに当該UVインクが射出されたパスと同一のパスにおいて紫外線が照射されることはなく、射出された全てのUVインクは、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後、所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化するため(図9(c)に示す状態参照)、光沢度の高い印刷結果が得られる。
(iii−B)中光沢タイプ
この中光沢タイプが選択された場合には、光沢度が中程度の印刷結果が得られるものである。
まず、記録紙100への印刷開始前に、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置を、図5に示す初期状態から副走査方向における前方側に向かって移動して、副走査方向における最も前方側の位置から距離W1分だけ後方側の位置(図13(a)参照)に変化する。
従って、副走査方向における最も前方側の位置から距離W1分だけ後方側に位置するようになった第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、印刷領域Sの一部分と重なり合っており、印刷領域Sの全長(即ち、インク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長L)のうち距離W1分だけをカバーするように位置している(図13(b)ならびに図14(a)(b)(c)(d)(e)参照)。
なお、図14(a)に示すように、1パス目においては、印刷領域Sは単位印刷領域P1と一致している。
従って、記録紙100上の単位印刷領域P1の副走査方向における後方側(図14(a)に示す符号P1−bの一部,P1−c,P1−d参照)は有効照射領域Eと重なり合っていないものの、単位印刷領域P1の副走査方向における前方側(図14(a)に示す符号P1−a,P1−bの一部参照)は有効照射領域Eと重なり合っている。
そして、1パス目の往路において射出されたUVインクの飛滴は、一部分が有効照射領域E内に位置している記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下することになる。
その結果、1パス目の往路において、有効照射領域Eと重なり合っていない単位印刷領域P1の副走査方向における後方側に落下したUVインクは、紫外線が照射されずに記録紙100上の所定の位置に落下したままで、記録紙100上において硬化することはない(図9(a)参照)。一方、有効照射領域Eと重なり合っている単位印刷領域P1の副走査方向における前方側に落下したUVインクは、第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されて記録紙100上において硬化する(図9(d)参照)。
なお、上記した1パス目の往路において、有効照射領域Eと重なり合っていない単位印刷領域P1の副走査方向における後方側に落下したUVインクは、2パス目(図14(b)参照)、3パス目(図14(c)参照)と単位印刷領域P1が印刷領域S内から徐々に有効照射領域E内へと送り出されるのに伴って、所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて記録紙100上において硬化する(図9(c)参照)。
このように、中光沢タイプの場合には、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38が副走査方向における最も前方側の位置から距離W1分だけ後方側に位置しているので、印刷領域Sの一部と有効照射領域Eとが互いに一部分だけ重なり合っている。このため、インク・ジェット・ノズル42から射出された全てのUVインクのうちの一部は、UVインクが射出されたパスと同一のパスにおいて紫外線が照射され、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後直ちに硬化してしまい、その残余の部分のUVインクは当該UVインクが射出されたパスと同一のパスにおいて紫外線が照射されずに、所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化する。
その結果、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後、直ちに紫外線が照射されて硬化したインク(図9(d)参照)と所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化したインク(図9(c)参照)とが、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置に応じた比率で混在するようになり、上記した(iii−A)高光沢タイプのように射出された全てのUVインクが所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化する場合に比べると光沢が少なく、光沢度が中程度の印刷結果が得られる。
(iii−C)低光沢タイプ
この低光沢タイプが選択された場合には、光沢度が低い印刷結果が得られるものである。
まず、記録紙100への印刷開始前に、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置は、図5に示す初期状態から副走査方向における前方側に向かって移動して、副走査方向における最も前方側の位置から距離W2分だけ後方側の位置(図15(a)参照)に変化する。
従って、副走査方向における最も前方側の位置から距離W2分だけ後方側に位置するようになった第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、印刷領域Sの一部分と重なり合っており、印刷領域Sの全長(即ち、インク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長L)のうち距離W2分だけをカバーするように位置している(図15(b)参照)。
ここで、距離W2は、上記した(iii−B)中光沢タイプの距離W1(図13(a)(b)参照)に比べて長く設定されている(距離W2>距離W1)。従って、有効照射領域Eと印刷領域Sとが重なりあっている部分は、中光沢タイプの場合に比べて低光沢タイプの場合の方が多くなる。
すると、低光沢タイプの場合には、上記した(iii−B)中光沢タイプと同様にして印刷が進行した場合、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後直ちに紫外線が照射されて硬化したインクが、所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化したインクに比べて多くなる。
その結果、インク・ジェット・ノズル42から射出された全てのUVインクのうちの多くが、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後直ちに紫外線が照射されて硬化したインク(図9(d)参照)となり、直ちに紫外線が照射されて硬化したインクと所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化したインクとの混在の比率が、上記した(iii−B)中光沢タイプとは異なるようになり、中光沢タイプより光沢が少なく、光沢度が低程度の印刷結果が得られる。
(iv)複数パス印刷で光沢無し印刷モードの場合
操作子群40により複数パス印刷で光沢無し印刷モードが設定された場合には、記録紙100の搬送量やインク・ジェット・ノズル42からのUVインクの射出は、上記した(iii)複数パス印刷で光沢有り印刷モードの場合における設定と同様になる。
そして、記録紙100への印刷開始前に、インク・ヘッド・ホルダー30に配設される第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置は、図5に示す初期状態とする(図10(a)参照)。これは、上記した(ii)単一パス印刷で光沢無し印刷モードの場合における設定位置と同様なものである。
初期状態のまま副走査方向における最も後方側の位置に位置している第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eは、印刷領域Sと互いに重なり合っており、印刷領域Sの全長(即ち、インク・ジェット・ノズル列44の副走査方向における全長L)をカバーするように位置している(図10(b)参照)。
そして、1パス目の往路において射出されたUVインクの飛滴は、記録紙100上の単位印刷領域P1内の所定の位置に落下し、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の有効照射領域Eと単位印刷領域P1と一致する印刷領域Sとが記録紙100上において重なり合っているので、行き方向のときにインク・ヘッド32−1〜32−6の後段に位置する第2紫外線ランプ38から紫外線が照射されて、記録紙100上の単位印刷領域P1内において硬化する(図9(d)参照)。
こうして1パス目においてインク・ヘッド32−1〜32−6の直下の印刷領域Sと一致していた単位印刷領域P1が、印刷領域Sと一致する有効照射領域Eから徐々に送り出され、インク・ジェット・ノズル42から射出されたUVインクに当該UVインクが射出されたパスと同一のパスにおいて紫外線が照射されて、射出された全てのUVインクは非常に短い時間しか経過していないうちに紫外線が照射されて硬化するため(図9(d)に示す状態参照)、粒子感があって光沢感のない印刷結果となる。
上記したようにして、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においては、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38をインク・ヘッド・ホルダー30に副走査方向沿って移動自在に配設するようにしたため、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38がインク・ヘッド・ホルダー30に配設される位置を変化させることにより、紫外線が照射される有効照射領域Eと印刷領域Sとの位置関係を変化させることができる。
従って、(i)単一パス印刷で光沢有り印刷モードの場合や(iii)複数パス印刷で光沢有り印刷モードの場合のように、有効照射領域Eと印刷領域Sとが互いに重なり合わないようにすると、UVインクはインク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後、所定の時間が経過した後に紫外線が照射されるようになり、射出されたUVインクの飛滴が記録紙100上の所定の位置に落下しその後直ちに紫外線が照射されて硬化してしまうこととならずに、UVインクを用いて粒子感の無い光沢のある印刷結果を得ることができる。
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においては、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38を副走査方向沿って移動させて、有効照射領域Eと印刷領域Sとが互いに重なり合うようにすれば、粒子感があって光沢感のない印刷結果を得ることもでき、異なる質感の印刷結果を得ることができる。
さらに、本発明によるインク・ジェット・プリンタ10においては、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の副走査方向における位置を連続的に変更可能なので、(iii−B)中光沢タイプや(iii−C)低光沢タイプのように、有効照射領域Eと印刷領域Sとが互いに重なり合う量(図13のW1ならびに図15のW2参照)を調整することにより、インク・ジェット・ノズル42から射出されて記録紙100上に落下した後直ちに紫外線が照射されて硬化したインクと所定の時間が経過した後に紫外線が照射されて硬化したインクとの第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の位置に応じた混在の比率を変更して、光沢のある印刷結果であっても、さらにその光沢の度合いを任意に調整することができ、非常に多様な質感の印刷結果を得ることができる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に説明するように変形してもよい。
(1)上記した実施の形態においては、図5に示すような構成により、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38を副走査方向に沿って移動自在に配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、インク・ヘッド・ホルダーや紫外線ランプのケースの形状などを変更するなどして、その他構成により紫外線ランプが副走査方向に沿って移動自在な状態でインク・ヘッド・ホルダーに配設されるようにしてもよい。
この際、紫外線ランプの副走査方向における移動は、上記した実施の形態のようにマイクロ・コンピューター200の処理によって自動的に行うのに限られずに、手動で調整可能なように構成してもよい。
また、単一のインク・ヘッド・ホルダーに紫外線ランプとインク・ヘッドとが配設されるのに限られるものではなく、紫外線ランプが副走査方向に沿って移動自在に配設可能であって主走査方向に移動する移動手段を、インク・ヘッド・ホルダーとは別に配設するようにしてもよい。
(2)上記した実施の形態においては、(ii)単一パス印刷で光沢無し印刷モードの場合ならびに(iv)複数パス印刷で光沢無し印刷モードの場合に、有効照射領域Eは副走査方向における印刷領域Sの全長をカバーするように位置している(図10(b)参照)。より詳細には、副走査方向に沿って有効照射領域Eの中央部分と印刷領域Sの中央部分とが一致し、有効照射領域Eが印刷領域Sの副走査方向における前方側と後方側とのいずれにも余分にはみ出して、有効照射領域Eと印刷領域Sとが互いに重なりあっている。
このような位置関係の場合には、有効照射領域Eの中央部分は、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38の照射強度が強いフィラメント37a,39aの中心位置と対応しているので、印刷領域Sの中央部分に紫外線が有効に照射され、特に単一パス印刷などにおいて良好な印刷結果を得ることができる。
ここで、光沢無しの印刷結果を得る場合に、図16(a)(b)に示すようにして、有効照射領域Eが印刷領域Sの副走査方向における後方側にはみださず、前方側にだけ余分にはみ出すようにして、有効照射領域Eが副走査方向における印刷領域Sの全長をカバーするように位置させてもよい。
このような位置関係にすると、記録紙100は副走査方向における後方側から前方側に向かって送り出されるので、図10(a)(b)に示すような位置関係の場合に比べて、印刷された部分が有効照射領域E内に留まる時間が長くなり、UVインクの硬化に有効である。
(3)上記した実施の形態において、インク・ヘッド32−1〜32−6、第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38を一体的に、主走査方向における往復移動の途中において、主走査方向の一方の端部や他方の端部において停止させて待機させたり、その移動速度を変更するなどして、インク・ヘッド32−1〜32−6から往路(または復路)においてUVインクを射出したときから紫外線が照射されるまでの間の所定の時間tが所定の時間以上となるように調節するようにしてもよい。インクの射出から紫外線の照射までの時間がある程度長いほど、光沢感のある高い品質の画質を得ることができる。
(4)上記した実施の形態においては、6つのインク・ヘッド32−1〜32−6を有するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、印刷に必要な色彩などに応じてインク・ヘッドの総数を増減させるなど、各種変更を行うようにしてもよい。
また、上記した実施の形態においては、双方向印刷を行うにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、単方向印刷による印刷を行うようにしたり、単方向印刷ならびに双方向印刷が可能なように構成しても良く、それに応じて各種構成を変更してもよい。
例えば、単方向印刷のみ可能な装置とする場合には、第1紫外線ランプ36と第2紫外線ランプ38とのいずれか一方のみを配設するか、あるいは、第1紫外線ランプ36と第2紫外線ランプ38とのいずれか一方のみを印刷中に点灯させるようにしてもよい。
(5)上記した実施の形態においては、光沢有り印刷モードと光沢無し印刷モードのいずれも可能なようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、粒子感の無い光沢のある印刷結果のみが得られるように構成し、それに応じて各種構成を変更してもよい。
(6)上記した実施の形態においては、記録紙100上に紫外線を照射する第1紫外線ランプ36ならびに第2紫外線ランプ38とUVインクとを用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、紫外線とは異なる放射線の可視光や電子線あるいはその他の光を照射する手段を用い、媒体上に照射される光によって固化あるいは増粘する性質を有する各種インクを用いるようにしてもよい。
(7)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(6)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。