本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されない。本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解されるからである。したがって、本発明は以下に示す実施の形態及び実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて本発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、同一表面上に微小構造体及び半導体素子を形成する方法について、図面を用いて説明する。図面には、上面図及びO−P又はQ−Rにおける断面図を示す。
本発明の微小構造体及び半導体素子は、同一表面上であって、絶縁性基板上に形成することができる。絶縁性基板としては、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等が挙げられる。例えば、プラスチック基板に微小構造体および半導体素子を形成することにより、柔軟性が高く、軽量な微小電気機械式装置を作製することができる。また、ガラス基板を研磨等により薄くすることにより、薄型の微小電気機械式装置を作製することもできる。さらには、金属等の導電性基板やシリコン等の半導体基板上に、絶縁性を有する膜(絶縁層)を形成した基板を、絶縁性基板として用いることも可能である。
まず、絶縁性基板101上に下地層102を形成する(図1(A−1)(A−2)参照)。下地層102には、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸化窒化シリコン若しくは窒化酸化シリコンなどの絶縁性材料を単層構造または積層構造で形成することができる。本実施の形態では下地層102は積層構造で形成する。下地層102の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、N2O及びH2を反応ガスとして成膜される酸化窒化シリコンを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)の膜厚となるように形成することができる。本実施の形態では、下地層102の一層目として、膜厚50nmの酸化窒化シリコンを形成する。下地層102のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4及びN2Oを反応ガスとして、酸化窒化シリコンを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さとなるように積層して形成することができる。本実施の形態では、下地層102の二層目として、膜厚100nmの酸化窒化シリコンを形成する。
次に、下地層102の上に第1の犠牲層103を成膜し、所定の形状にエッチングする(図1(A−1)(A−2)参照)。第1の犠牲層103には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。また、ベンゾシクロブテン、パリレン、フッ化アリーレンエーテル、透光性を有するポリイミドなどの有機材料、シロキサン系ポリマー等の重合によってできた化合物材料、水溶性ホモポリマーと水溶性共重合体を含む組成物材料等を用いてもよい。なお、シロキサンとは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当し、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成されている樹脂である。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられ、また、置換基としてフルオロ基を用いてもよい。また、さらには置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
第1の犠牲層103には、感光剤を含むレジスト材料を用いてもよく、例えば、代表的なポジ型レジストであるノボラック樹脂と感光剤であるナフトキノンジアジド化合物、ネガ型レジストであるベース樹脂、ジフェニルシランジオール及び酸発生剤などを有する感光性樹脂を用いてもよい。
いずれの材料を用いる場合であっても、その表面張力と粘度は、材料が混入された溶媒の濃度を調整したり、界面活性剤等を加えたりすることで決定する。例えば、界面活性剤を加えることにより溶媒の表面張力を低下させることができる。
以上のような材料を用いて成膜した後、所定の形状となるようにエッチングして、第1の犠牲層103を形成することができる。エッチングには、フォトリソグラフィ法を用いることができる。また、インクジェットのような液滴吐出装置を用いてマスクを描画し、当該マスクを用いて第1の犠牲層103のエッチングを行ってもよい。このような液滴吐出装置を用いてマスクを描画することにより、フォトリソグラフィ法では必要な露光や現像の工程、マスク材料の無駄を省くことができる。
第1の犠牲層103の膜厚は、第1の犠牲層103の材料や、構造体の構造及び動作方法、犠牲層エッチングの方法等を考慮して決定する。例えば、第1の犠牲層103が過度に薄いとエッチング剤が拡散しないので、エッチングされない、またはエッチング後に構造層が座屈するといった現象が生じる。
また、構造体を静電引力(以下、静電力という。)で動作させる場合、第1の犠牲層が厚すぎると駆動できなくなる。例えば、構造体が下部の導電層と構造層との間に生じる静電力による駆動を行う場合、第1の犠牲層103は0.5μm以上3μm以下の厚さとし、好ましくは1μm〜2.5μmにするとよい。
次に、下地層102及び第1の犠牲層103上に、半導体層104を形成する。半導体層104は、半導体素子を構成する活性層及び微小構造体を構成する構造層となる。なお、活性層は、チャネル形成領域、ソース領域及びドレイン領域を有する。半導体層104は、シリコンを主成分とする材料、又はゲルマニウムを0.01〜4.5atomic%程度含むシリコンゲルマ材料等の、シリコンを有する材料により形成することができる。半導体層104には、結晶構造を有するもの又は非晶質構造を有するものを用いる。
そして、半導体層104上の所定の領域にマスク105を形成する(図1(B−1)(B−2)参照)。マスク105は、例えばレジスト剤を塗布した後に活性層及び構造層の形状となるように露光や現像をすることによって、所定の形状にする。
本発明において、マスク105には、第1の犠牲層103と同一の材料、又は後のマスク除去工程において、同時に処理できる材料を用いる。
マスク105を用いて半導体層104をエッチングし、活性層107及び構造層108が形成される(図1(C−1)(C−2)参照)。このとき、第1の犠牲層103の一部は、露出される。
そして、第1の犠牲層103とマスク105を同時に除去する(図2(A−1)(A−2)参照)。本発明では、第1の犠牲層103とマスク105は同一の材料又は同一工程にて処理できる材料により形成している。第1の犠牲層103とマスク105を同一工程にて除去できるよう、処理時間を適宜調整する。そのため、同一工程において第1の犠牲層103とマスク105を除去することができる。第1の犠牲層103が除去されることで空間が形成される。この空間の存在により、微小構造体の一部は可動部となる。
なお、犠牲層とは、微小構造体に必要な空間を形成するために除去される層をいい、導電層であっても、絶縁層であってもよい。
このように、本発明は、マスク105の除去と第1の犠牲層103の除去を同一の工程にて行うことを特徴とする。これにより、犠牲層の除去のみを目的とした工程を省略することができ、構造層108と活性層107へのダメージを低減することができる。
構造層108の材料と膜厚は、第1の犠牲層103の厚さと材料、構造体の構造、又は犠牲層エッチングの方法等の様々な要因を考慮して決定することができる。例えば、構造層108に内部応力の分布差が大きい材料を用いると構造層108に反りが生じる恐れがある。逆に、この構造層108の反りを利用して構造体を形成することも可能である。また、構造層108を厚く成膜すると内部応力に分布が生じ、反りや座屈の原因となる。以上を鑑み、構造層108を形成する場合、膜厚は0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。
本実施の形態では第1の犠牲層103の上に活性層107および構造層108となる半導体層を形成しているが、第1の犠牲層103の上に絶縁層を形成し、その後に半導体層を形成してもよい。このような工程を用いることで、第1の犠牲層103を除去する際に絶縁層によって構造層108を保護し、構造層108へのダメージを低減することができる。
次に、活性層107、および構造層108の上に、構造層108の上面を覆う絶縁層109を形成する(図2(A−1)(A−2)参照)。絶縁層109は、半導体素子のゲート絶縁層として機能する。絶縁層109は下地層102と同様、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコンを含む材料を用いて、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。単層構造又は積層構造のどちらでもよい。本実施の形態では、絶縁層109として、プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成する。
また、絶縁層109の材料として、高誘電率を有する金属酸化物、例えば、ハフニウム(Hf)酸化物を用いることもできる。このような高誘電率材料を用いてゲート絶縁層を構成することで、低電圧で半導体素子を駆動することができ、低消費電力の微小電気機械式装置を提供することができる。
また、絶縁層109は高密度プラズマ処理によって形成する。高密度プラズマ処理とは、プラズマ密度が1×1011cm−3以上、好ましくは1×1011cm−3以上9×1015cm−3以下であり、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)のような高周波を用いたプラズマ処理である。このような条件でプラズマを発生させると、低電子温度が0.2eVから2eVとなる。このように低電子温度である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低いため、プラズマダメージが少なく、欠陥の少ない膜を形成することができる。
プラズマ処理を行うことのできる成膜室に、活性層107と構造層108が形成された基板を配置し、プラズマ発生用の電極、所謂アンテナと被形成体との距離を20mmから80mm、好ましくは20mmから60mmとして処理を行う。このような高密度プラズマ処理を用いることで、基板温度400℃以下の低温プロセスが可能となる。そのため、耐熱性の低いガラスやプラスチックを絶縁性基板101として利用することができる。
このような高密度プラズマを用いた成膜の雰囲気は窒素雰囲気、又は酸素雰囲気とすることができる。窒素雰囲気とは、代表的には、窒素と希ガスとの混合雰囲気、又は窒素と水素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスには、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうち、少なくとも1種を用いる。酸素雰囲気とは、代表的には、酸素と希ガスの混合雰囲気、酸素と水素と希ガスの混合雰囲気、又は一酸化二窒素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスには、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうち、少なくとも1種を用いる。
このような高密度プラズマ処理により形成された絶縁層は、膜の形成時に他の被膜に与えるダメージが少なく、緻密になる。また、当該絶縁層と接触する界面状態を改善することができる。例えば高密度プラズマ処理によりゲート絶縁層を形成すると、半導体層との界面状態を改善することができる。その結果、半導体素子の電気的特性を向上させることができる。さらに、このように絶縁層を構造層上に成膜することによって、形成時に構造層に与えるダメージを少なくすることができ、構造層108の機械的強度の劣化を防止することができる。
ここでは、絶縁層109の形成に高密度プラズマ処理を用いる場合を説明したが、半導体層に高密度プラズマ処理を施してもよい。高密度プラズマ処理によって、半導体層表面の改質を行うことができる。その結果、界面状態を改善でき、半導体素子の電気的特性を向上させることができる。
さらに、絶縁層109の形成のみではなく、下地層102や他の絶縁層を形成する場合にも、高密度プラズマ処理を用いることができる。
次に、絶縁層109上に半導体素子のゲート電極として機能する、第1の導電層110、および微小構造体の第2の犠牲層111を形成する(図2(B−1)(B−2)参照)。第1の導電層110は、CVD法やスパッタリング法などを用いて形成することができ、所定の形状となるようにエッチングを行う。また導電性材料を含む組成物を用いて、液滴吐出法により形成することもできる。導電性材料としては、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Zr、Ba等の金属、Si、Ge等の半導体、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化ケイ素を組成物として有するITSO、インジウム亜鉛酸化物であるIZO、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛(ZnO)、窒化チタン(TiN)、等を用いることができる。なお、インジウム亜鉛酸化物(IZO)とは、インジウム錫酸化物(ITO)に2〜20重量%の酸化亜鉛(ZnO)を混合させたターゲットを用いてスパッタリングにより形成される透明導電性材料である。また液滴吐出法により形成する場合、これら金属が混入された溶媒、若しくは分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒子等を用いることができる。液滴吐出法を用いることにより、フォトリソグラフィ法で必要な現像や露光工程を省くことができるため、プロセスが簡略になる。
第1の導電層110や第2の犠牲層111の端面はテーパー状にエッチングしてもよい。端面をテーパー状にすることで、その後の工程で形成される膜が良好に被覆しうる。また、第1の導電層110や第2の犠牲層111は単層構造又は積層構造を用いることが可能である。
次に、半導体素子を構成する活性層107に不純物元素を添加してN型不純物領域113およびP型不純物領域112を形成する(図2(C−1)(C−2)参照)。このような不純物領域は、フォトリソグラフィ法によりマスクを形成し、不純物元素を添加することで選択的に形成することができる。不純物元素を添加する方法は、熱拡散による方法またはイオン注入法で行うことができる。N型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用い、P型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)を用いることができる。N型不純物領域113、および、P型不純物領域112には、1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲で不純物元素が添加されることが望ましい。
次に、プラズマCVD法等によって窒化シリコン等の窒素化合物や酸化シリコン等の酸化物からなる絶縁層を形成し、当該絶縁層を垂直方向に異方性エッチングすることで、第1の導電層110の側面に接して、絶縁層として機能するサイドウォール114を形成する(図2(C−1)(C−2)参照)。このとき、第2の犠牲層111の側面にもサイドウォール114が形成される。サイドウォール114を形成したくない場合、サイドウォール114を形成する前に予め、第2の犠牲層111を覆うマスクを形成しておく。
次に、N型不純物領域113を有する活性層107に不純物元素を添加し、サイドウォール114の下方に設けられたN型不純物領域113よりも高い不純物濃度を有する高濃度N型不純物領域117を形成する。
このように濃度の異なる二つの不純物領域を形成するのは、短チャネル効果を防止するためである。短チャネル効果とは、ゲート長が短くなることで、ゲートに電圧をかけなくともソースとドレインの間にリーク電流が流れる現象のことである。また、ここでN型の半導体素子にのみ、濃度の異なる二つの領域を形成したが、これは、N型の半導体素子が短チャネル効果の影響を受けやすいからである。勿論、P型の半導体素子にサイドウォールを形成し、高濃度P型不純物領域を形成してもよい。
また、第1の導電層110が異なる導電性材料の積層構造を有し、テーパー形状である場合、サイドウォールを設けなくとも、一度の不純物元素の添加でN型不純物領域113および高濃度N型不純物領域117を形成することもできる。
不純物領域を形成した後、不純物元素を活性化するために加熱処理、赤外光の照射、又はレーザ光の照射を行うとよい。また、活性化と同時に絶縁層109へのプラズマによるダメージや絶縁層109と活性層107との界面へのプラズマによるダメージを回復することができる。特に、室温〜300℃の雰囲気中において、表面又は裏面からエキシマレーザを用いて不純物元素を活性化させると、効果的に活性化を行うことができる。またYAGレーザの第2高調波のような高調波を照射して活性化させてもよい。YAGレーザはメンテナンスの頻度が少ないため、活性化手段として好ましい。
また、酸化窒化シリコン、酸化シリコンなどの絶縁物からなるパッシベーション膜を第1の導電層110や半導体層を覆うように形成した後に、加熱処理、赤外光の照射、又はレーザ光の照射を行い、水素化を行うことも可能である。例えば、パッシベーション膜として、プラズマCVD法を用いて酸化窒化シリコン膜を形成し、その後、クリーンオーブンを用いて、300〜550℃で1〜12時間加熱し、半導体層の水素化を行うことができる。この工程を行うことで、パッシベーション膜に含まれる水素により、不純物元素の添加で生じた半導体層のダングリングボンドを終端することもできる。また同時に、上述の不純物領域の活性化処理を行うこともできる。
上述の工程により、N型半導体素子115とP型半導体素子116が形成される(図2(C−1)(C−2)参照)。このとき、微小構造体を構成する構造層108には第2の犠牲層111で覆われていない領域に不純物領域が形成されている。
続いて、全体を覆うように層間絶縁層118を形成する(図3(A−1)(A−2)参照)。層間絶縁層118は、絶縁性を有する材料により形成することができる。無機材料でも有機材料でもよい。無機材料には、酸化シリコン、窒化シリコン等を用いることができる。有機材料には、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。ポリシラザンは、シリコン(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を原料として形成される。
次に、層間絶縁層118および絶縁層109を順次エッチングして開口し、コンタクトホール119を形成する(図3(A−1)(A−2)参照)。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。本実施の形態では、ドライエッチング法によりコンタクトホール119を形成する。
次に、層間絶縁層118上及びコンタクトホール119にソース電極、ドレイン電極として機能する第2の導電層120を形成する(図3(A−1)(A−2)参照)。このときに、電気回路を構成する配線を形成することができる。
導電層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)若しくはシリコン(Si)の膜又はこれらの元素を用いた合金からなる導電性材料の膜により形成することができる。これら導電性材料が混入された組成物を液滴吐出法によって吐出して、第2の導電層120を形成することができる。また、スパッタリング法やCVD法によって上記のような導電性材料により成膜した後に所定の形状にエッチングすることで第2の導電層120を形成することができる。
また、第2の導電層120が上面からみて角を有するパターンの場合、その角が丸みを帯びるようにエッチングすることが好ましい。これにより、ゴミの発生と堆積を抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。これは、第1の導電層110等の導電層をエッチングするときについても同様である。
次に、層間絶縁層118をエッチングし、開口部121を形成する。その結果、第2の犠牲層111が露出する(図3(B−1)(B−2)参照)。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。なお図3(B−1)(B−2)には、微小構造体のみを示している。
本実施の形態では、ドライエッチング法により開口部121を形成する。開口部121は、第2の犠牲層111をエッチング除去するために開口する。したがって、エッチング剤が流入するように、開口部121の径を適切に決定する必要がある。例えば、開口部121の直径を2μm以上とすることが好ましい。
また、開口部121は、第2の犠牲層111をエッチングしやすいように、大きく開口することも可能である。つまり、上述のように小さく開口する必要はなく、層間絶縁層118が必要な部分(例えば半導体素子上など)を残して、第2の犠牲層111全体が露出するように開口部121を形成すればよい。また開口部121を複数形成することにより、第2の犠牲層111の除去を短時間で行うことができる。
次に、第2の犠牲層111をエッチングにより除去する(図4(A)(B)参照)。なお図4(A)(B)では微小構造体のみを示し、それぞれO−P断面の微小構造体及びQ−R断面の微小構造体を示す。エッチングは、第2の犠牲層111の材料によってウエットエッチング法又はドライエッチング法を適用することができる。開口部121にエッチング液又はエッチングガスを導入することにより、第2の犠牲層111をエッチング除去することができる。
例えば、第2の犠牲層111がタングステン(W)である場合、28重量%のアンモニアと31重量%の過酸化水素水を1:2で混合した溶液に漬けることで除去することができる。処理時間は膜厚等により適宜調整すればよい。第2の犠牲層111が二酸化珪素の場合は、フッ酸49重量%水溶液1に対してフッ化アンモニウムを7の割合で混合したバッファードフッ酸を用いて、除去することができる。第2の犠牲層111がシリコンの場合は、リン酸、KOH、NaOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、NH4OH、ヒドラジン、EPD(エチレンジアミン、ピロカテコール、水の混合物)、TMAH、IPA、NMD3溶液等を用いて除去することができる。ウエットエッチング後の乾燥に際しては、毛管現象による構造体の座屈を防ぐため、粘性の低い有機溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いてリンスを行うか、若しくは低温低圧の条件で乾燥させるか、又はこの両者の組み合わせにより行うことができる。
また、第2の犠牲層111は、大気圧など高圧の条件において、F2やXeF2を用いてドライエッチングを行うことによっても除去することができる。毛管現象による構造体の座屈を防ぐため、構造体表面に撥水性を持たせるプラズマ処理を行ってもよい。
このような工程により第2の犠牲層111をエッチング除去することで、空間が生じ、微小構造体122を形成する。そして、同一表面上に微小構造体122と、N型半導体素子115、P型半導体素子116を形成することができる(図4(C)参照)。同一基板の同一表面上に微小構造体と半導体素子を形成することで、組み立てやパッケージが不要となり、従来よりも低コストで微小電気機械式装置を作製することができる。
以上説明した、微小構造体122を形成する方法においては、構造層108の材料、第1の犠牲層103、第2の犠牲層111の材料、及び犠牲層を除去するエッチング剤の適当な組み合わせを選択する必要がある。例えば、エッチング剤を特定のものに決めた場合、構造層108の材料よりもエッチングレートが大きい材料を用いて第1の犠牲層103及び第2の犠牲層111を構成すればよい。
(実施の形態2)
本発明では、構造層に適用する半導体層には、結晶構造を有するもの、非晶質構造を有するものを用いることができる。そこで本実施の形態では、構造層が結晶性シリコン層である場合を説明する。
まず、構造層の被形成面に、非晶質シリコン層を形成する。そして、加熱処理することにより非晶質シリコン層が結晶化され、結晶性シリコン層を得ることができる。加熱処理には、加熱炉、レーザ照射、若しくはレーザ光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと記す)、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
レーザ照射には、連続発振型のレーザビーム(以下、CWレーザビームと記す)やパルス発振型のレーザビーム(以下、パルスレーザビームと記す)を用いることができる。レーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザ又は金蒸気レーザのうちの一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザビームの基本波、及び当該基本波の第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このときレーザのエネルギー密度には0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度は10〜2000cm/sec程度に制御する。なお、本明細書中においてレーザビームとは、レーザ光を含むものとする。
なお連続発振型の基本波のレーザビームと連続発振型の高調波のレーザビームを照射するようにしてもよいし、連続発振型の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
またパルス発振型のレーザであって、シリコン層がレーザビームによって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザビームを照射できるような発振周波数で発振させるレーザを用いることもできる。このような周波数でレーザを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。具体的なレーザビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
その他の加熱処理として加熱炉を用いる場合には、非晶質シリコン層を400〜550℃で2〜20時間かけて加熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を400〜550℃の範囲で段階的に設定するとよい。最初の400℃程度の低温加熱工程により、非晶質シリコン層の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減することができる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばニッケル(Ni)を非晶質シリコン層上に形成すると、加熱温度を低減することができるため、好ましい。金属元素には、Fe、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Au等を用いることもできる。
さらに加熱処理に加えて、上記のようなレーザビームを照射し、結晶性シリコン層を形成してもよい。
このような金属を用いて結晶化された多結晶シリコンは、結晶構造が単結晶を用いた場合とほぼ同じであり、金属を用いない結晶化によって形成される多結晶シリコンに比べて靭性を高くすることができる。これは、金属を用いた結晶化により多結晶シリコンの結晶粒界が連続しているからである。結晶粒界が連続している多結晶シリコンは、金属を用いない結晶化によって得られる多結晶シリコンと異なり、結晶粒界で共有結合が途切れることが無い。そのため、金属を用いない結晶化によって得られる多結晶シリコンで起こる、結晶粒界が欠陥となる応力集中が起こらず、結果として、金属を用いずに形成された多結晶シリコンに比べて破壊応力が高くなる。
結晶粒界が連続している多結晶シリコンでは電子の移動度が大きいため、微小構造体を静電力で制御する場合の材料として適している。さらに、構造層は、結晶化を助長させる金属元素を含み、導電性を有するため、構造体を静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。もちろん、微小構造体を電磁力により制御する場合の構造層に金属を用いずに形成した多結晶シリコン層を適用してもよい。
また、金属にニッケルを用いる場合、シリコン層では、ニッケルシリサイドが形成されうる。ニッケルシリサイドのようなシリコン合金は一般に機械的強度が高いことが知られている。そのため、加熱処理時に用いる金属をシリコン層中の全体または一部に選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、さらに硬く、導電性の高い微小構造体を形成することができる。
上記のような結晶化に用いた金属を残したニッケルシリサイドを有する層(ニッケルシリサイド層)と多結晶シリコン層を積層させることで、導電性に優れ、しなやかな構造層を得ることができる。また、非晶質シリコン層とニッケルシリサイド層とを積層することで導電性に優れた硬い層にすることができる。
このようなシリサイド層は、ニッケル以外にタングステン、チタン、モリブデン、タンタル、コバルト、白金によっても形成することができる。それぞれ、タングステンシリサイド層、チタンシリサイド層、モリブデンシリサイド層、タンタルシリサイド層、コバルトシリサイド層、白金シリサイド層となる。このうち、コバルトや白金は、加熱温度を低下させるための金属として用いることもできる。
このような工程によって形成された構造層108は、金属を有する状態で用いることができる。
しかし、結晶化を助長させるために用いる金属は微小電気機械式装置の汚染源となるため、結晶化した後に除去した方がよい。この場合、加熱処理又はレーザ照射による結晶化の後、シリコン層上にゲッタリングシンクとなる層を形成し、加熱することにより、金属元素をゲッタリングシンクへ移動させることができる。ゲッタリングシンクには、多結晶半導体層や不純物が添加された半導体層を用いることができる。例えば、半導体層上にアルゴン等の不活性元素が添加された多結晶半導体層を形成し、これをゲッタリングシンクとして適用することができる。不活性元素を添加することによって、多結晶半導体層にひずみを生じさせることができ、ひずみにより効率的に金属元素を捕獲することができる。またリン(P)等の元素を添加した半導体層を形成することによって、金属を捕獲することもできる。
構造層に導電性が必要な場合は、金属を除去した後、リン(P)や砒素(As)、ボロン(B)等の不純物元素を添加することも可能である。導電性を持たせた構造体は、静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。
構造層は、必要な厚さを得るために、積層構造にしてもよい。たとえば、非晶質シリコン層の形成と、加熱処理による結晶化を繰り返すことによって多結晶シリコン層を積層で形成することができる。この加熱処理によって、先に形成された多結晶シリコン層内の応力を緩和し、膜剥がれや基板の変形を防ぐことができる。また、さらに膜内の応力を緩和するために、工程にシリコン層のエッチングも含めて、繰り返すこともできる。このような、工程にエッチングを含めた形成方法は、内部応力の大きい材料を構造層に用いる場合に好適である。
上記のように、金属を用いて結晶化を行う場合、金属を用いずに行う結晶化に比べて低温で結晶化することができるため、微小構造体を形成する基板の選択の幅が広がる。例えば、半導体層を加熱のみで結晶化させる場合、1000℃前後の温度で1時間程度の加熱を行う必要があり、この場合、ガラス基板を用いることができない。しかしながら、本実施の形態のように上記金属を用いて結晶化することによって、歪み点が593℃であるガラス基板を用いることが可能になる。
(実施の形態3)
微小構造体122を静電力で可動させる場合、下地層の下に共通電極や制御電極等として使用することができる下部電極を形成するとよい。そこで本実施の形態では、下部電極を有する微小電気機械式装置について説明する。
微小構造体122を静電力で可動させる場合、下地層102の下に共通電極や制御電極等として使用することができる導電層123を形成するとよい(図9参照)。また、下地層102を積層構造にしている場合、当該下地層102の層間に導電層123を形成することも可能である。導電層123は、タングステン等の金属や導電性を有する物質を材料として、CVD法等により形成する。また、導電層123を必要に応じて所定の形状にエッチングして、パターン形成しても良い。
本実施の形態は、実施の形態1及び実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本発明において、微小構造体には様々な性質のシリコンやシリコンの化合物を積層させることができる。様々な性質のシリコン層は、その結晶構造が非晶質、微結晶、多結晶等のいずれかを選択することによって、強度等の性質が異なる。さらには多結晶であっても、結晶方向による性質の違いを有するシリコン層となる。そこで本実施の形態では、構造層に用いられる半導体層の構成例について説明する。
図5に示すように、結晶構造の異なるシリコンやシリコンの化合物を積層させることができる。図5(A)には、絶縁性基板101上に、非晶質シリコン層150、多結晶シリコン層151及びニッケルシリサイドを有する層152を積層させた場合を示す。本発明は、構造体を構成する層を選択し、積層させることができる。また、積層構造の形成は容易に行うことができるため、所望の性質を有する構造層108を形成することも容易である。
ニッケルシリサイドのようなシリコン合金は一般に機械的強度が高いことが知られている。半導体層の結晶化に用いる金属を半導体層中の全体または一部に選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、機械的強度が高く、導電性の高い構造体を形成することができる。
上記のように金属を用いた結晶化は、金属を選択的に塗布することで、部分的に行うこともできる。たとえば、構造層108の、下に第1の犠牲層103がある部分のみ金属を塗布し、結晶化することができる。
上記のような結晶化は、レーザビームを選択的に照射することで、部分的に行うこともできる。たとえば、構造層108の、下に第1の犠牲層103がある部分154のみ結晶化することができる。さらには、図5(B)に示すように、レーザビームの照射条件を変化させることにより、梁構造の柱部分155のみに非晶質シリコンを残し、梁部分を結晶化させることも可能である。
上記のように部分的に結晶化することで、様々な材料を組み合わせることができる。たとえば、駆動する部分のみ結晶化して、靭性を高めることができる。
その他の構造層は、実施の形態2で説明したような多結晶シリコンを有する層と、非晶質シリコンを有する層とを積層することができる。
また、多結晶シリコンに金属を残した層と、多結晶シリコンを有する層とを積層させることで、導電性に優れ、且つ、しなやかな材料を得ることができる。
また、非晶質シリコンを有する層ととシリサイドを有する層を積層してもよい。その結果、導電性に優れ、硬くすることができる。
なお、積層させる層のそれぞれの厚さの比率によって、しなやかさと硬さのバランスを決めることができる。これは、非晶質シリコン層の結晶欠陥から破壊がおきても、結晶性の高い多結晶シリコン層には破壊が伝播しにくいため、そこで破壊が止まると考えられるためである。
また、金属を用いてレーザ結晶化した場合、シリコンの結晶成長方向が基板に対して垂直方向に進み、金属を用いないでレーザ結晶化した場合、結晶成長方向が基板に対して平行方向に進む。この両者を2層以上積層することで、さらに靭性に優れた材料を得ることができる。結晶方向が異なる膜が積層しているため、一方の層に亀裂等を生じたとしても、他方の結晶方向の違う層には亀裂が伝播しにくく、結果として、強度の高い構造層108を形成することができる。
上記のような非晶質シリコン層、多結晶シリコン層、またはニッケルシリサイドを有する層は、必要な厚さを得るために、膜の形成を繰り返して積層させることも可能である。たとえば、非晶質シリコンを有する層の形成と、加熱を繰り返してもよい。また、さらに膜内の応力を緩和するために、エッチングも含めて繰り返してもよい。膜の形成と結晶化の組み合わせは、上記の例の中から自由に選んで組み合わせることができる。
このように半導体層を積層させることで、しなやかさと硬さを併せ持つ構造層を得ることができる。
本実施の形態は、実施の形態1〜3と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、同一表面上に微小構造体および半導体素子を形成する方法について、実施の形態1とは異なる方法を、図面を用いて説明する。図面において、上側には上面図を示し、下側には上面図O−P、もしくはQ−Rにおける断面図を示す。
まず、実施の形態1と同様に、絶縁性基板201上に下地層202を形成する(図6(A−1)(A−2)参照)。
次に、微小構造体を構成する半導体層203と半導体素子を構成する活性層204を形成し、所定の形状にエッチングする(図6(A−1)(A−2)参照)。半導体層203、活性層204は、実施の形態1と同様に形成することができる。また半導体層203、活性層204には、非晶質シリコン又は結晶性シリコンを用いることができる。
次に、実施の形態1と同様に半導体層203、活性層204上に絶縁層205を形成する(図6(A−1)(A−2)参照)。絶縁層205は、半導体素子のゲート絶縁層として機能する。また、実施の形態1と同様に、絶縁層等は、高密度プラズマにより形成することができる。
次に、微小構造体を構成する半導体層203の上に第1の犠牲層206を成膜し、所定の形状にエッチングする(図6(B−1)(B−2)参照)。第1の犠牲層206は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いることができる。また、ベンゾシクロブテン、パリレン、フッ化アリーレンエーテル、透過性を有するポリイミドなどの有機材料、シロキサン系ポリマー等の重合によってできた化合物材料、水溶性ホモポリマーと水溶性共重合体を含む組成物材料を用いて形成してもよい。
第1の犠牲層206は、感光剤を含む市販のレジスト材料を用いてもよく、例えば、代表的なポジ型レジストであるノボラック樹脂と感光剤であるナフトキノンジアジド化合物、ネガ型レジストであるベース樹脂、ジフェニルシランジオール及び酸発生剤などを用いてもよい。
いずれの材料を用いる場合であっても、その表面張力と粘度は、材料が混入された溶媒の濃度を調整したり、界面活性剤等を加えたりして調整する。例えば、界面活性剤を加えることにより溶媒の表面張力を低くすることができる。
以上のような材料を形成した後、所定の形状となるようにエッチングして、第1の犠牲層206を形成することができる。エッチングには、フォトリソグラフィ法を用いることができる。また、インクジェットなどの液滴吐出装置を用いてマスクを描画し、マスクを用いて第1の犠牲層206のエッチングを行ってもよい。このような液滴吐出装置を用いてマスクを描画することにより、フォトリソグラフィ法において必要な露光や現像の工程、マスク材料の無駄を省くことができる。
第1の犠牲層206の膜厚は、第1の犠牲層206の材料や、構造体の構造および動作方法、犠牲層エッチングの方法等を考慮して決定する。例えば、第1の犠牲層206が過度に薄いと、エッチング剤が拡散せずにエッチングされない、又はエッチング後に構造層が座屈するといった現象が生じる。
構造体を静電力で動作させる場合、第1の犠牲層206が厚すぎると駆動できなくなる。例えば、構造体が下部の導電層と構造層との間に生じる静電力による駆動を行う場合、第1の犠牲層206の膜厚は0.5μm以上3μm以下とし、好ましくは1μm以上2.5μm以下にするとよい。
次に、第1の犠牲層206及び絶縁層205上に、第1の導電層207を形成し、さらにその上に、第2の導電層208を形成する(図6(C−1)(C−2)参照)。当該導電層は、スパッタリング法やCVD法等を用いて順次形成することができる。
第1の導電層207及び第2の導電層208は、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた金属元素又は前記金属元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を用い、厚さが50nm〜2μm程度になるように形成すればよい。また、導電層としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン層に代表される半導体層や、AgPdCu合金を用いてもよい。
次に、所定の形状にマスク209を形成する(図6(C−1)(C−2)参照)。マスク209は、第1の犠牲層206と同じ材料又は同一の工程にて処理できる材料とする。
マスク209を用いて、第1の導電層207及び第2の導電層208をエッチングする。具体的には、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いて、第2の犠牲層211及び第2の導電層208を形成する。このとき、異方性エッチングにより断面が垂直となるように加工しても良いし、テーパー形状となるように加工してもよい。エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を決定することにより、構造層210及び第1の導電層207を所望のテーパー形状にエッチングすることができる(図7(A−1)(A−2)参照)。なお、エッチング用ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4もしくはCCl4などを代表とする塩素系ガス、CF4、SF6もしくはNF3などを代表とするフッ素系ガスを用いることができる。又はO2を用いてアッシングを行ってもよい。また、希ガスを混入してもよい。
次に、第1の犠牲層206とマスク209とを同時に剥離し、構造層210、第2の犠牲層211、及びゲート電極層212を形成する(図7(A−1)(A−2)参照)。ゲート電極層212は第1の導電層207と第2の導電層208からなる。
上記のように、マスク209の除去工程時に、第1の犠牲層206のエッチングを行う。これにより、犠牲層のエッチングのみを目的とした工程を省略することができ、プロセスの簡略化、構造層210と半導体素子へのダメージの低減が可能であることは、上述した実施の形態1と同様である。
また、積層構造の導電層は2層構造に限定されず、3層構造であっても良い。例えば、第1層にタングステン、窒化タングステン等を用い、第2層にアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)、アルミニウムとチタンの合金(Al−Ti)を用い、第3層に窒化チタン、チタン等を用い、順次積層した3層構造としてもよい。この場合、第1層と第2層を微小構造体の構造層とし、第3層を第2の犠牲層とすることができる。また第1層を構造層とし、第2層と第3層を犠牲層とすることもできる。もちろん導電層は単層構造であってもよい。
次に、実施の形態1と同様に半導体素子を構成する活性層204に不純物元素を添加してN型不純物領域、およびP型不純物領域を形成する。その後、不純物領域の活性化、水素出し等の加熱処理を行ってもよい。
また実施の形態1と同様に、ゲート電極層212を単層構造の導電層で形成した場合や、積層構造の導電層をテーパー形状にエッチングしなかった場合、ゲート電極層212上に絶縁層を形成し、当該絶縁層を異方性エッチングすることで、ゲート電極層212の側面に接するサイドウォールを形成することもできる。
以上の工程により、N型半導体素子213およびP型半導体素子214が形成される(図7(B−1)(B−2)参照)。このとき、微小構造体を構成する半導体層203には構造層210及び第2の犠牲層211で覆われていない領域に不純物領域が形成される。
続いて、全体を覆うように層間絶縁層215を形成する(図7(B−1)(B−2)参照)。層間絶縁層215は、絶縁性を有する無機材料や有機材料により形成することができる。無機材料又は有機材料については、実施の形態1と同様である。
次に、実施の形態1と同様に、層間絶縁層215及び絶縁層205を順次エッチングし、半導体層203、活性層204および構造層210に配線を接続するためのコンタクトホール216を形成し、当該コンタクトホール216に導電層を形成する材料を充填し、層間絶縁層215を覆うように第3の導電層217を形成し、所定の形状にエッチングすることで、ソース電極、ドレイン電極、及び電気回路を構成する配線等を形成する(図7(B−1)(B−2)参照)。
第3の導電層217が角を有するパターンを形成する場合、角の部分が丸みを帯びた形状にエッチングされることが好ましい。
次に、層間絶縁層215をエッチングし、開口部218を形成する。開口部218は第2の犠牲層211を露出させるために形成する(図8(A−1)(A−2)参照)。エッチング処理には、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いる。
本実施の形態では、ドライエッチング法により開口部218を形成する。開口部218は、第2の犠牲層211をエッチング除去するために開口する。したがって、エッチング剤が流入及び拡散するように、開口部218の径の大きさを決定する。
開口部218は、第2の犠牲層211をエッチングしやすいように、径を大きく形成することも可能である。つまり、上述のように小さな穴として形成する必要はなく、層間絶縁層215が必要な部分(例えば半導体層203、活性層204上)を残して、犠牲層全体が露出するように開口部218を形成することができる。
次に、第2の犠牲層211をエッチングにより除去する(図8(B−1)(B−2)参照)。なお図8(B−1)(B−2)では、微小構造体のみを示す。犠牲層の材料に適したエッチング液又はエッチングガスにより、開口部218を通して犠牲層をエッチングにより除去する。
例えば、第2の犠牲層211がタングステン(W)である場合、28重量%のアンモニアと31重量%の過酸化水素水を1:2で混合した溶液に20分程度漬ける。第2の犠牲層211が二酸化珪素の場合は、フッ酸49重量%水溶液1に対してフッ化アンモニウムを7の割合で混合したバッファードフッ酸を用いる。第2の犠牲層211がシリコンの場合は、リン酸、KOH、NaOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、NH4OH、ヒドラジン、EPD(エチレンジアミン、ピロカテコール、水の混合物)、TMAH、IPA、NMD3溶液等を用いる。ウエットエッチング後の乾燥に際しては、毛管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、粘性の低い有機溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いてリンスを行うか、又は低温低圧の条件で乾燥させるか、またはこの両者の組み合わせにより行う。
また、第2の犠牲層211は、大気圧などの高圧の条件において、F2やXeF2を用いてドライエッチングを行うことができる。毛管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、微小構造体の表面に撥水性を持たせるようプラズマ処理を行うこともできる。このような工程を用いて第2の犠牲層211を除去し、微小構造体219を形成することができる。
本実施の形態のように、ゲート電極を構成する導電層により微小構造体の構造層を形成することで、機械的強度が高く、しなやかな可動部分を有する微小構造体を形成することができる。
(実施の形態6)
本発明において、工程の一部を変更する、または別の工程を追加することにより、様々な構造を有する微小構造体及び半導体素子を形成することができる。
例えば、実施の形態5では、第2の犠牲層211をエッチング除去し、第1の導電層207を構成する導電層のみを構造層210としたが、第2の犠牲層211をエッチング除去せずに微小構造体を形成することも可能である。この場合、例えば実施の形態5において、第2の犠牲層211をエッチング除去するために形成した開口部218は不要である。
このように本発明は、多くのプロセスに適用することができる。すなわち本発明は、マスク除去の工程で、犠牲層を除去することができれば、その他の構成に限定されるものではない。
なお、本実施の形態は実施の形態1〜5と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、微小構造体219を保護するために、絶縁性基板101上に形成された微小電気機械式装置に対向基板221を貼り合わせる形態について説明する。
図10に示すように、対向基板221を貼り合わせる場合、第3の導電層217を形成した後、絶縁性基板101上に第2の絶縁層222を形成し、所定の形状にエッチングを行う。(本実施形態では層間絶縁層215を第1の絶縁層とする。)このとき、犠牲層及び微小構造体となる構造層が露出するように第2の絶縁層をエッチングする。その後、犠牲層を除去することで、微小構造体を形成する。
次に、貼り合わせるための対向基板221について説明する。対向基板221を貼り合わせる工程に際して、微小構造体の破壊を防止するため、絶縁性基板101上に形成された第2の絶縁層222と対向する部分に、第3の絶縁層223を形成する(図10(A)参照)。絶縁性基板101上に形成された微小構造体と対向する部分には、第3の絶縁層223が形成されておらず基板間に空間ができるので、絶縁性基板101と対向基板221を貼り合わせたときに微小構造体が破壊されない。
また、対向基板221には微小電気機械式装置の回路を構成する、所定の形状にエッチングされた第4の導電層224、またはアンテナ等を形成することができる(図10(B)参照)。この場合は、絶縁性基板101上に形成された第2の絶縁層222上に、第1の配線(第3の導電層217)と接続するための第2の配線(第5の導電層225)を形成する。そして、第5の導電層225と第4の導電層224とが電気的に接続するように、絶縁性基板101及び対向基板221を貼り合わせることができる。
このとき、上記で説明したように、絶縁性基板101上に形成された微小構造体219を保護するため、微小構造体と対向しない部分及び第2の導電層と第3の導電層との接続部分は第3の絶縁層223を形成し、対向基板221が微小構造体219に接触しないようにすることが望ましい。また、第4の導電層224は、第3の絶縁層223の上部にのみ形成されていても良いし、第3の絶縁層223の上部及び下部に形成され、それらが電気的に接続されていても良い(図10(B)参照)。
なお、本実施の形態は実施の形態1〜6と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、絶縁性基板101を剥離して、別の基板や物体に貼り付ける方法について説明する。
微小電気機械式装置を絶縁性基板101から剥離する場合、下地層102を形成する時に、剥離層226を形成する(図11(A)参照)。剥離層226は積層された下地層の下方、又は層間に形成することができる。そして、上記のように第3の導電層217を形成した後、犠牲層をエッチングするための開口部218を形成する前に、微小電気機械式装置を基板から剥離する。
剥離には様々な方法があるが、ここではその一例を示す。まず、剥離層226が露出するように開口部227を形成し、開口部227にエッチング剤を導入し、剥離層226を部分的に除去する(図11(A)参照)。次に、絶縁性基板101上面方向から剥離のための基板228を接着し、剥離層226を境に半導体素子及び微小構造体を絶縁性基板101から剥離し、剥離のための基板へ移し取る(図11(B)参照)。次に、半導体素子および微小構造体が絶縁性基板101と接していた側に可撓性基板229を接着する。そして上面方向から貼り付けた剥離のための基板228を剥がし取ることで、基板を移し替えることができる(図11(C)参照)。このように、微小電気機械式装置をガラス基板上に作製し、その後、ガラスよりも薄くて柔らかいプラスチック等の可撓性基板に貼り合わせることができる。
そして、第2の犠牲層211が露出するように開口部を形成し、第2の犠牲層211をエッチングにより除去することで微小構造体が形成される。また、剥離時に第3の導電層217等を保護するために、配線上に保護膜を形成しても良い。
さらに、微小構造体を保護する必要がある場合には、実施の形態7で説明した対向基板221を剥離のための基板として用いることも可能である。
本実施の形態においては、開口部227から剥離層226をエッチングした後に、半導体素子および微小構造体を可撓性基板229へ移し取る方法を述べたが、本発明はこれに限定されない。例えば、剥離層226をエッチング工程のみで除去した後、可撓性基板229へ移しかえる方法や、開口部227を設けず、絶縁性基板101上面から剥離のための基板228を貼り付けて半導体素子及び微小構造体を絶縁性基板101から剥がし取る方法がある。さらに、絶縁性基板101を裏面から研磨し、半導体素子及び微小構造体を得る方法などがあり、これらの方法を適宜組み合わせることも可能である。可撓性基板229へ移し替える工程を用いれば、絶縁性基板101が再利用できる。ただし、絶縁性基板101を裏面から研磨する場合を除く。
以上のように、絶縁性基板101上に形成した半導体素子および微小構造体を剥離し、可撓性基板229に貼り付けることで、薄くて柔らかく小型の微小電気機械式装置を作製することができる。
なお、本実施の形態は上述した他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の微小電気機械式装置の構成例について図面を用いて説明する。
図12に、本発明の微小電気機械式装置の概念図を示す。本発明の微小電気機械式装置11は、半導体素子を有する電気回路部12及び微小構造体によって構成されている構造体部13を有する。電気回路部12は、微小構造体を制御する制御回路14や、外部の制御装置10と通信を行うインターフェース15等を有する。また構造体部13は、微小構造体により、センサ16やアクチュエータ17、スイッチ等を有する。
アクチュエータとは、信号(主に電気信号)を物理量に変換する構成要素のことである。
また、電気回路部12は、構造体部13が得た情報を処理するための中央演算処理装置等を有することも可能である。
外部の制御装置10は、微小電気機械式装置11を制御する信号の送信、微小電気機械式装置11が得た情報の受信や微小電気機械式装置11への駆動電力の供給等を行う。
本発明は上記の構成に限定されない。つまり、本発明は微小電気機械式装置内部に、半導体素子を有し微小構造体を制御する電気回路及び前記電気回路によって制御される微小構造体を有することを特徴とする。
従来、ミリメートル単位以下といった微小なものを扱う場合、まず、微小な対象物の構造を拡大し、人間やコンピュータがその情報を得て情報処理及び動作の決定を行い、そして、その動作を縮小して微小な対象物に伝えるというプロセスを必要としていた。
しかし、上記で説明した本発明の微小電気機械式装置は、人間やコンピュータが上位概念的な命令を伝えるだけで、動作することが可能である。すなわち、人間やコンピュータが目的を決定して命令を伝えると、当該微小電気機械式装置はセンサ等を用いて対象物の情報を得て情報処理を行い、動作することができる。
上記の例では、対象物が微小なものであると仮定した。これは例えば、対象物自体はメートル単位の大きさを有するが、その対象物から発せられる信号が微小である場合(例えば、光や圧力の微小な変化)等を含む。
本発明の微小電気機械式装置は、マイクロマシンの分野に属するものであり、マイクロメートルからミリメートル単位の大きさを有する。また、ある機械装置の部品として組み込まれるために作製される場合は、組み立て時に扱いやすいよう、メートル単位の大きさを有する場合もある。
(実施の形態10)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の例を説明する。本発明の微小電気機械式装置は、微小構造体で検知素子を形成したセンサ装置を有することができる。
図13(A)に、本発明の微小電気機械式装置の一形態であるセンサ装置301の構成を示す。本実施の形態のセンサ装置301は、半導体素子を有する電気回路部302、および微小構造体によって構成されている構造体部303を有する。
構造体部303は、外界の圧力や物質の濃度、気体や液体の流量等を検知する、微小構造体によって構成される検知素子304を有する。
電気回路部302は、A/D変換回路305、制御回路306、インターフェース307、及び、メモリ308等を有する。
A/D変換回路305は、検知素子304から伝えられた情報をデジタル信号に変換する。制御回路306は、当該デジタル信号をメモリに記憶する等、A/D変換回路を制御する。インターフェース307は、外部の制御装置310からの駆動電力の受け取り、制御信号の受信、または、外部の制御装置310へのセンシング情報の送信等を行う。メモリ308は、センシング情報や、センサ装置固有の情報等を記憶する。
また、電気回路部302は、構造体部303から受信した信号を増幅する増幅回路や、構造体部303が得た情報を処理するための中央演算処理回路等を有していてもよい。
外部の制御装置310は、センサ装置301を制御する信号の送信、センサ装置301が得た情報の受信、またはセンサ装置301への駆動電力の供給等の動作を行う。
上記の構成を有するセンサ装置301によって、外界の圧力や物質の濃度、気体や液体の流量、温度等を検知することができる。また、このセンサ装置が中央処理演算回路を有することで、検知した情報をセンサ装置内で処理し、他の装置を制御する制御信号を生成して出力するようなセンサ装置を実現することも可能である。
図13(B)に、検知素子304の構造の例を、断面図によって示す。図13に示す検知素子304は、下地層の下に第2の導電層321を有し、構造層が第1の導電層320となる容量である。さらに、第1の導電層320は、静電力や圧力等を受けて可動するため、検知素子304は、第1の導電層と第2の導電層との間の距離が変化する可変容量である。
この構造を利用して、検知素子304は、圧力によって第1の導電層320が可動する圧力検知素子として利用することができる。
また、図13(B)に示す検知素子304において、第1の導電層320は熱膨張率の異なる2種類の物質を積層させて形成することができる。この場合、第1の導電層320は温度変化によって可動するので、検知素子304は、温度検知素子として利用することが可能である。
本発明は上記の構成に限定されない。つまり、本実施の形態ではセンサ装置内部に、半導体素子を有し微小構造体を制御する電気回路、及び、前記電気回路によって制御される微小構造体で構成され、何らかの物理量を検知する検知素子を有することを特徴とする。さらに、このセンサ装置は、前記の実施の形態で説明した方法を用いて作製されていることを特徴とする。
なお、本実施の形態は上述の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態11)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の具体的な例を説明する。本発明の微小電気機械式装置は、記憶素子に微小構造体を有する記憶装置を構成することができる。本実施の形態では、デコーダ等の周辺回路は半導体素子等を用いて構成し、メモリセル内部を、微小構造体を用いて構成する記憶装置の例を示す。
図14に、本発明の微小電気機械式装置の一形態である記憶装置401の構成を示す。
記憶装置401は、メモリセルアレイ402、デコーダ403、セレクタ404、読み出し・書き込み回路405を有する。上記デコーダ403、セレクタ404の構成は、公知の技術を用いればよい。
メモリセル409は、例えば、記憶素子408を制御するスイッチ素子407及び記憶素子408を有する。本実施形態で説明する記憶装置401は、当該スイッチ素子407、および記憶素子408が微小構造体で構成されていることを特徴とする。
図15にメモリセル409の構成例を示す。図15(A)はメモリセル409の回路図、図15(B)は構造の断面図を示している。
図15(A)に示すように、メモリセル409は、トランジスタ410で構成されたスイッチ素子407、及び微小構造体で構成された記憶素子408で構成される。
図15(B)が示すように、記憶素子408は、前記実施の形態1または実施の形態2で説明した方法を用いて形成された微小構造体である。記憶素子408は、下地層の下に第1の導電層を有し、構造層が第2の導電層となるコンデンサである。そして、上記の第2の導電層は、トランジスタ410の二つの高濃度不純物領域の一方に接続されている。
また、上記の第1の導電層は、記憶装置401が有する全てのメモリセル409の記憶素子408に共通して接続されている。当該第1の導電層は、記憶装置の読み出し時、及び、書き込み時に、全ての記憶素子に共通の電位を与えるものであり、本明細書においては共通電極411と記載する場合がある。
図16は、微小構造体で形成されたスイッチ素子407および記憶素子408を有するメモリセル409の例を示す。図16はメモリセル409の構造を斜視図で示している。
スイッチ素子407および記憶素子408は、前記実施の形態1または実施の形態2で説明した方法を用いて形成する。スイッチ素子407は、片持ち梁を組み合わせた構造のスイッチとして機能する微小構造体であり、記憶素子408は、梁構造のコンデンサとして機能する微小構造体である。
ここで、スイッチ素子407の構造について説明する。スイッチ素子407は、基板上に犠牲層420および構造層421を積層しており、可動する片持ち梁422の下がエッチングされていれば良い。
スイッチ素子407は、制御電極423によって片持ち梁422および導電層424が導通するか否かを制御する。具体的な動作を説明する。制御電極423に常に正の電圧を帯電させておく。片持ち梁422に正の電圧を入力すると、静電力によって制御電極423と片持ち梁422が反発し、片持ち梁422が導電層424と接触することによりスイッチングを行う。
微小構造体を用いて形成するスイッチは、オフ時にスイッチを介した信号伝達経路(ここでは片持ち梁422および導電層424)が完全に絶縁する利点がある。さらには、スイッチのオン・オフを制御する制御系(ここでは制御電極423)と、信号伝達経路(ここでは片持ち梁422および導電層424)とを絶縁することができるという利点もある。
上記の構成を有する記憶装置は、揮発性のメモリ、代表的にはDRAM(Dynamic Random Access Memory)として使用することができる。周辺の回路構成および駆動方法等は、公知の技術を用いればよい。
メモリセルを構成する微小構造体は、微小な大きさ(例えばμm単位)に形成することによりスケーリング則が適用されるため、スイッチの応答速度が速い、駆動に大きな力が必要ないといった利点がある。また、スイッチ素子407を微小構造体で形成することによって、選択されていない記憶素子408を完全に絶縁することが可能となり、低消費電力の記憶装置401を実現することができる。
なお、本実施の形態は上述の他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態12)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の例を説明する。
本発明の微小電気機械式装置は、例えば、混合物から特定物を分別する分別装置として構成することができる。以下にその説明を行う。
図17に、本実施の形態の分別装置の基本的な構成例を示す。ここでは、分別装置の例として、2種類以上の物質の混合気体から特定物質の気体を分別する分別装置を説明する。
分別装置501は、電気回路部502及び構造体部503に大別され、構造体部503は検知素子504、および、複数の開閉手段505を有する。電気回路部502は信号処理手段506、開閉制御手段507、情報記憶手段508、及び、通信手段509を有する。
ここで、検知素子504および開閉手段505は、分別する気体分子程度の大きさを有する微小構造体によって構成される。検知素子504は、一つの開閉手段505に隣接して一つ設けられ、どのような物質が開閉手段505の近くに存在するかを検知する。開閉手段505は通過口を有し、開閉制御手段507からの制御信号を受け、特定の物質が近くに存在したときのみ通過口を開いてそれを通過させる。
信号処理手段506は、検知素子504から伝えられる信号を、増幅、A/D変換等で加工し、開閉制御手段507に伝達する。開閉制御手段507は、検知素子504から伝えられた信号をもとに開閉手段505を制御する。情報記憶手段508は、当該分別装置501を動作させるプログラムファイルや分別装置501固有の情報等を記憶している。通信手段509は、外部の制御装置510と通信を行う。
外部の制御装置510は、通信手段511、情報処理手段512、表示手段513、及び、入力手段514、等を有する。
通信手段511は、分別装置501を制御する信号の送信、分別装置501が得た情報の受信、または、分別装置501への駆動電力の供給等を行う。情報処理手段512は、分別装置501から受信した情報の処理、入力手段から入力された情報を分別装置501に伝えるための処理等を行う。表示手段513は、分別装置501から得られた情報や、分別装置501の動作状況等を表示する。入力手段514は、情報を入力する手段を提供する。
図17(B)に分別装置501を利用する形態の一例を示す。上記の構成を有する分別装置501は、混合物系520および特定物系521との間に設置される。分別装置501は外部の制御装置510から、どの物質を分別するか、等の情報を受信すると、検知素子504によって開閉手段505のすぐ近くにどのような物質が存在するかを検出する。次に、信号処理手段506によって検出信号を加工して開閉制御手段507に伝える。開閉制御手段507は、開閉手段505のすぐ近くに分別すべき物質が存在する時のみ通過口を開くように開閉手段505を制御する。そして、開閉手段505は開閉制御手段507からの制御により、分別する物質のみを通過口から通過させる。
上記の動作により、分別装置501は2種類以上の混合気体から特定物質の気体を分別することができる。また、分別装置501は、気体の分別のみに制限されない。上記の構成を用いることによって、例えば、特定の細胞を分別する装置として構成することも可能である。その例として、紫外線を照射すると蛍光する細胞のみを分別するように制御することができる。さらには、微小な粒界、例えば、放射性物質を含む粒子のみの分別、磁性を有する鉱石の粒子のみの分別等の機能を有する装置を実現することができる。
本発明は、分別装置501、混合物系520、特定物系521、及び、外部の制御装置510を有し、混合物から特定の物質を分別する分別システムを提供することができる。
なお、本実施の形態は上述の他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。