しかしながら、トップエミッション型の有機ELディスプレイの表示特性を高めるためには、複数の有機EL素子に共通に形成された陰極を透明材料で形成すると共に、この陰極の電気抵抗を抑制し、且つ陰極の光透過率を高めることが重要になる。電気抵抗を下げるためには、有機EL素子の陰極側に補助配線を併用することが有効な手段の一つであるが、例えば白色に発光する有機EL材料を画像表示領域の全面に蒸着した場合、駆動回路基板側に補助配線を作っておいても、補助配線を陰極側に接続できない製造プロセス及び構造上の問題点がある。このような問題点を認識した技術は、特許文献1には記載されていない。また、特許文献2は、透明導電材料からなる主電極の下側に補助電極が設けられており、陰極を画像表示領域の全面に一括で形成することができる工程プロセス上の利点を生かすことが難しいうえ、工程プロセス上の制約を受ける問題点がある。加えて、これらの問題点があるため、白色光を発光する有機EL層を備えた有機ELディスプレイは、陰極の電気抵抗が高くても実使用上画像表示領域内で輝度勾配が生じていないように見える小型サイズのディスプレイ、又は表示可能な色が少ない低諧調のディスプレイに限定されており、大型サイズ或いは高諧調を有するディスプレイを求める要望に十分対応できていないのが実情である。
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、輝度勾配が殆ど生じない発光装置及びその製造方法、並びにそのような発光装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の第1の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に形成された複数の第1電極と、該複数の第1電極上に形成されており、白色光を発光する複数の発光部と、前記複数のサブ画素領域及び前記複数のサブ画素領域間の非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって前記複数の発光部に共通に形成されており、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極と、該第2電極のうち前記非サブ画素領域に延びる部分の表面に形成された導電部と、前記第2電極上に前記複数のサブ画素領域に応じて形成されており、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタとを備える。
本発明の第1の発明に係る発光装置において、「サブ画素領域」とは、画素領域に含まれる領域である。より具体的には、複数のサブ画素領域の夫々は、例えば赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の何れか一色の光を出射し、これら各色の光を組み合わせることによって視覚的に画素領域を所望の色に発光させ、これにより画像表示領域において画像がカラー表示される。第1電極は、例えば後述する発光部に電源を供給する陽極である。したがって、第1電極が陽極である場合には、後述する第2電極は陰極である。また、第1電極が陰極である場合には、第2電極は陽極である。第1電極は、例えスパッタリング法等の薄膜形成法を用いて基板面に導電性薄膜を形成した後、この導電性薄膜をリソグラフィ技術を用いて所定の形状にパターニングすることによって形成される。
複数の発光部は、例えば白色に発光する有機EL材料を第1電極上に成膜することによって形成されている。複数の発光部は、蒸着法及び塗布法等の膜形成方法のうち何れの方法を用いて形成されていてもよい。特に、蒸着法を用いて複数の発光部を形成した場合には、これら発光部を一括で形成できるため、製造プロセスが簡便になる。
第2電極は、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる。したがって、本発明の発光装置における光の出射方式は、トップエミッション方式である。第2電極は、例えばITO等の透明電極材料を前記複数のサブ画素領域及び前記複数のサブ画素領域間の非サブ画素領域に蒸着させることにより、複数の発光部上に共通に形成されている。第2電極は、サブ画素領域に合わせてパターニングされることなく、簡便な工程で複数のサブ画素領域に形成されている。したがって、本発明の発光装置は、蒸着法を用いた製造プロセス上の利点を享受することができ、簡便な工程を経て形成される。
複数種のカラーフィルタは、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる。したがって、各サブ画素領域から互いに異なる波長の光を出射され、これら光を組み合わせることによって視覚的に画素領域から所定の色の光を出射することが可能である。複数種のカラーフィルタが、例えばR、G及びBの各色の光を夫々透過させるカラーフィルタである場合には、これら光の3原色を用いて画像表示領域においてフルカラー表示が可能である。尚、「複数種」とは、3色に限定されず、2色、或いは4色以上であってもよい。
導電部は、第2電極のみが設けられている場合に比べて発光部の第2電極側の電気抵抗を低減する。より具体的には、導電部が第2電極の前記非サブ画素領域に延びる部分の表面に形成された分、例えば発光部に供給される電流が流れる電流経路の面積が広がり、第2電極のみが設けられている場合に比べて電気抵抗を低減できる。より具体的は、例えば画像表示領域の端に設けられた画素領域であって、画像表示領域の外側から供給される電源に近い位置に設けられた画素領域と、画像表示領域の中央付近に設けられた画素領域であって、画像表示領域の外側から供給される電源から遠い位置に設けられた画素領域との間に生じる輝度勾配を低減でき、画像表示領域全体で均一な輝度で画像を表示できる。
導電部は、第2電極を形成した後に形成されるため、発光装置の構造を大きく変更することなく、発光部からみて第2電極側の電気抵抗を低減できる。加えて、導電部は非サブ画素領域に形成されているため、第2電極を介して発光部上に出射される光を遮ることがない。したがって、発光部上に光が出射される開口領域の大きさを狭めることなく、トップエミッション方式を採用した利点を十分に生かして表示特性を高めることが可能である。
このように本発明の第1の発明に係る発光装置によれば、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。本発明の第1の発明に係る発光装置によれば、画像表示領域の異なる画素領域で輝度勾配が生じることを低減でき、例えば2インチ以上の中〜大型サイズの有機ELディスプレイ或いは256色〜4096色以上の表示が可能である高諧調のディスプレイの画質を高めることが可能である。
本発明の第1の発明に係る発光装置の一の態様においては、前記導電部は、前記非サブ画素領域が延びる方向に沿って延びるように形成されていてもよい。
この態様においては、導電部は非サブ画素領域が延びる一方向に沿って延びるように形成されていてもよいし、非サブ画素領域が格子状に延びている場合には画像表示領域内に格子状に延びていてもよい。このような導電部によれば、発光部からみて第2電極側の電気抵抗を低減でき、画像表示領域の全体に渡って効果的に輝度勾配を低減できる。特に、画像表示領域のサイズが大きくなるほど画像表示領域の各画素領域の位置に起因する輝度勾配をより効果的に低減することが可能である。
本発明の第2の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に形成された複数の第1電極と、該複数の第1電極上に形成されており、白色光を発光する複数の発光部と、前記複数のサブ画素領域及び前記複数のサブ画素領域間の非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって前記複数の発光部に共通に形成されており、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極と、該第2電極のうち前記非サブ画素領域に延びる部分の表面に前記基板の上側に向かって突出するように形成された導電部と、前記基板に対向するように前記第2電極上に配置された透明基板と、該透明基板に前記複数のサブ画素領域に応じて形成されており、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタと、前記透明基板及び前記基板を貼り合わせる際に前記導電部と接するように前記透明基板における前記第2電極に臨む側の面に形成された補助配線とを備える。
本発明の第2の発明に係る発光装置によれば、上述した本発明の第1の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス上の利点を享受しつつ、画像をカラー表示することが可能である。
導電部は、透明基板及び基板を貼り合わせる際に、透明基板の前記第2電極に臨む側の面に形成された補助配線と接する。これにより、透明基板に形成された補助配線が導電部を介して第2電極に導通し、例えば補助配線を介して発光部に供給される駆動電流の一部を流すことができる。したがって、第2電極のみに駆動電流を流す場合に比べて、発光部からみて第2電極側における電気抵抗を低減でき、画像表示領域内における輝度勾配を低減することが可能である。
このように、本発明の第2の発明に係る発光装置によれば、上述した本発明の第1の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本発明の発光装置を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは256色表示が可能な多諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供することが可能である。
本発明の第2の発明に係る発光装置の一の態様においては、前記導電部の形状は、点状であってもよい。
この態様によれば、第2電極及び補助配線を導通させることができ、第2電極及び補助配線が部分的に点状に接していることにより、画像表示領域の輝度勾配は相応に低減される。
本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置の一の他の態様においては、前記複数の第1電極の夫々の縁を覆うように形成された複数の電極保護部を更に備えていてもよい。
この態様によれば、例えば第1電極上に蒸着法を用いて発光部を形成した場合に、第1電極の側面に発光材料が蒸着されず、そのまま続けて第2電極を蒸着法を用いて形成することによって、第1電極の側面に第2電極が回りこむことを低減できる。これにより、第1電極及び第2電極が導通することを低減でき、第1電極及び第2電極が導通することによって発光部が発光しなくなる不具合を低減できる。
この態様においては、前記導電部は、前記複数の電極保護部のうち前記非サブ画素領域において向かい合う一方の電極保護部及び他方の電極保護部によって規定される凹部上にインクジェット法を用いて形成されていてもよい。
この態様によれば、導電部を構成するインクをインクジェット方式を用いて凹部に塗布した場合、凹部内にインクが定着し、例えば光透過性を有しないインクがサブ画素領域に流れ込むことを低減できる。これにより、インクジェット方式を用いて凹部に正確に導電部を形成すると共に、サブ画素領域から出射される光が導電部によって遮られることを低減できる。
本発明の第3の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に形成された複数の第1電極と、前記基板の基板面における複数の非サブ画素領域に前記基板の上側に向かって突出するように形成された突部と、前記複数の第1電極上に形成されており、白色光を発光する複数の発光部と、前記複数のサブ画素領域及び前記非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって前記複数の発光部に共通に形成されており、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極と、前記基板に対向するように前記第2電極上に配置された透明基板と、前記透明基板及び前記基板を貼り合わせる際に、前記第2電極のうち前記突部に延びる部分と接するように前記透明基板における前記第2電極に臨む側の面に形成された補助配線と、前記透明基板に前記複数のサブ画素領域に応じて形成されており、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタとを備える。
本発明の第3の発明に係る発光装置によれば、上述した本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス上の利点を享受しつつ、画像をカラー表示することが可能である。
突部は、前記基板の基板面における複数の非サブ画素領域に前記基板の上側に向かって突出するように形成されているため、サブ画素領域から出射される光を遮ることがない。加えて、前記透明基板及び前記基板を貼り合わせる際に、前記第2電極のうち前記突部に延びる部分が前記透明基板における前記第2電極に臨む側の面に形成された補助配線と接することから、前記第2電極のうち前記突部に延びる部分を介して第2電極及び補助配線が導通する。これにより、例えば発光部に供給される駆動電流の一部を補助配線を介して流すことができる。したがって、第2電極のみに駆動電流を流す場合に比べて、発光部からみて第2電極側における電気抵抗を低減でき、画像表示領域内における輝度勾配を低減することが可能である。
本発明の第3の発明に係る発光装置によれば、上述した本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本発明の発光装置を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは多諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供できる。
本発明の第3の発明に係る発光装置の一の態様においては、前記複数の第1電極の夫々の縁を覆うように形成された複数の電極保護部を更に備え、前記突部は、前記複数の電極保護部のうち前記非サブ画素領域において向かい合う一方の電極保護部及び他方の電極保護部によって規定される凹部に形成されていてもよい。
この態様において、例えば第2電極を蒸着法を用いて形成する際に、電極保護部は第1電極の側面に第2電極が回りこむように形成されることを低減する。したがって、第1電極及び第2電極が導通することによって発光部が発光しない不具合を低減できる。
本発明の第1、第2及び第3の発明に係る発光装置の他の態様においては、前記複数の発光部は、前記サブ画素領域及び前記非サブ画素領域に渡って発光材料を蒸着させることによって形成されていてもよい。
この態様によれば、各サブ画素領域に一括で発光部を形成できるため、簡便に本発明の発光装置を製造できる。尚、発光部のうち発光装置の駆動時に発光する部分は、第1電極及び第2電極に挟まれた部分であるため、非サブ画素領域に蒸着された発光材料は発光部として機能しない。したがって、簡便な工程で発光部を形成しつつ、サブ画素領域のみから光を出射することが可能である。
本発明の第4の発明に係る発光装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に複数の第1電極を形成する工程と、該複数の第1電極上に、白色光を発光する複数の発光部を形成する工程と、前記複数のサブ画素領域及び前記複数のサブ画素領域間の非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極を前記複数の発光部に共通に形成する工程と、前記第2電極のうち前記非サブ画素領域に延びる部分の表面に導電部を形成する工程と、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタを前記第2電極上に前記複数のサブ画素領域に応じて形成する工程とを備える。
本発明の第4の発明に係る発光装置の製造方法によれば、上述した本発明の第1の発光装置と同様に、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本発明の発光装置を例えば2インチ以上の中〜大型サイズのディスプレイ或いは256色〜4096色以上の表示が可能な高諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供することが可能である。
本発明の第5の発明に係る発光装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に複数の第1電極を形成する工程と、前記複数の第1電極上に、白色光を発光する複数の発光部を形成する工程と、前記複数のサブ画素領域及び前記複数のサブ画素領域間の非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極を前記複数の発光部に共通に形成する工程と、前記第2電極のうち前記非サブ画素領域に延びる部分の表面に前記基板の上側に向かって突出するように導電部を形成する工程と、前記基板に対向するように前記第2電極上に配置された透明基板に、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタを前記複数のサブ画素領域に応じて形成する工程と、前記透明基板及び前記基板を貼り合わせる際に前記導電部と接するように前記透明基板の前記第2電極に臨む側の面に補助配線を形成する工程とを備える。
本発明の第5の発明に係る発光装置の製造方法によれば、上述した本発明の第2の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本発明の発光装置を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは256色表示可能な高諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供できる。
本発明の第4及び第5の発明に係る発光装置の製造方法の一の態様においては、前記複数の発光部を形成する工程に先立ち、前記複数の第1電極の夫々の縁を覆うように複数の電極保護部を形成する工程を更に備えていてもよい。
この態様によれば、例えば第2電極上に蒸着法を用いて発光部を形成した場合に、第1電極の側面に発光材料が蒸着されず、そのまま続けて第2電極を蒸着法を用いて形成することによって、第1電極の側面に第2電極が回りこむように形成されることを低減できる。これにより、第1電極及び第2電極が導通することを低減でき、第1電極及び第2電極が導通することによって発光部が発光しない不具合を低減できる。したがって、発光装置を製造する際の歩留まりを向上させることが可能である。
本発明の第6の発明に係る発光装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の夫々に含まれる複数のサブ画素領域に複数の第1電極を形成する工程と、前記基板の基板面における複数の非サブ画素領域に前記基板の上側に向かって突出するように突部を形成する工程と、前記複数の第1電極上に、白色光を発光する複数の発光部を形成する工程と、前記複数のサブ画素領域及び前記非サブ画素領域に電極材料を蒸着することによって、前記白色光を前記基板の上側に向かって透過させる第2電極を前記複数の発光部に共通に形成する工程と、前記基板に対向するように前記第2電極上に配置された透明基板及び前記基板を貼り合わせる際に、前記第2電極のうち前記突部に延びる部分と接するように前記透明基板における前記第2電極に臨む側の面に補助配線を形成する工程と、前記白色光に含まれる光のうち互いに異なる波長を有する光を夫々透過させる複数種のカラーフィルタを前記透明基板に前記複数のサブ画素領域に応じて形成する工程とを備える。
本発明の第6の発明に係る発光装置の製造方法によれば、上述した本発明の第3の発明に係る発光装置と同様に、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本発明の発光装置を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは高諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた中〜大型サイズのディスプレイを提供できる。
本発明の第6の発明に係る発光装置の製造方法の一の態様においては、前記白色光を発光する複数の発光部を前記複数のサブ画素領域の夫々に形成する工程に先立ち、前記複数の第1電極の夫々の縁を覆うように複数の電極保護部を形成する工程を更に備え、前記突部を形成する工程において、前記複数の電極保護部のうち前記非サブ画素領域において向かい合う一方の電極保護部及び他方の電極保護部によって規定される凹部に前記突部を形成してもよい。
この態様によれば、突部によってサブ画素領域から出射される光が遮られることを低減できる。また、凹部内のスペースを有効に利用して突部を形成し、第2電極のうち突部に延びる部分を介して第2電極及び補助配線を導通させることが可能である。
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の発光装置を具備してなる。
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明の第1、第2又は第3の発明に係る発光装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下図面を参照しながら、本発明の発光装置及びその製造方法、並びに電子機器の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
<1−1:有機EL装置の構成>
先ず、本発明の第1の発明に係る発光装置及びその製造方法の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の有機EL装置10の全体構成を示すブロック図である。有機EL装置10は、駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式で駆動される表示装置であり、有機EL装置10が有する各画素部70はサブ画素部70R、70G及び70Bを含んで構成されている。
有機EL装置10の画像表示領域110には、縦横に配線されたデータ線114及び走査線112が設けられており、それらの交点に対応する各サブ画素部70R、70G、及び70Bはマトリクス状に配列され、これら3つのサブ画素部を一組として一つの画素部70が構成されている。サブ画素部70R、70G及び70Bは、白色に発光する有機EL素子72R、72G及び72Bを夫々有している。後述するように、サブ画素部70R、70G及び70Bの夫々は、カラーフィルタを介して赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色の波長を有する光を出射する。これにより、有機EL装置70は、白色に発光する単色の光源を用いて画像をフルカラー表示できる。画像表示領域110には各データ線114に対して配列されたサブ画素部70R、70G及び70Bに対応する電源供給線117が設けられている。
画像表示領域110の周辺に位置する周辺領域には、走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150が設けられている。走査線駆動回路130は複数の走査線112に走査信号を順次供給する。データ線駆動回路150は、画像表示領域110に配線されたデータ線114に画像信号を供給する。尚、走査線駆動回路130の動作とデータ線駆動回路150の動作とは、同期信号線160を介して相互に同期が図られる。電源供給線117には、外部回路から画素部70を駆動するための画素駆動用電源が供給される。図1中、一つの画素部70に着目すれば、画素部70には、有機EL素子72R、72G及び72Bが設けられると共に、例えばTFTを用いて構成されるスイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74、並びに保持容量78がサブ画素部毎に設けられている。スイッチング用トランジスタ76のゲート電極には走査線112が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ76のソース電極にはデータ線114が電気的に接続され、スイッチング用トランジスタ76のドレイン電極には駆動用トランジスタ74のゲート電極が電気的に接続されている。駆動用トランジスタ74のドレイン電極には、電源供給線117が電気的に接続されており、駆動用トランジスタ74のソース電極には有機EL素子72の陽極が電気的に接続されている。尚、図1に例示した画素回路の構成の他にも、電流プログラム方式の画素回路、電圧プログラム方式の画素回路、電圧比較方式の画素回路、サブフレーム方式の画素回路等の各種方式の画素回路を採用することが可能である。
次に、図2乃至図4を参照しながら有機EL装置10の具体的な構成を説明する。図2は、有機EL装置10の概略構成を示す平面図であり、図3は図2のIII−III´線断面図である。図4は、有有機EL層及び陰極を形成する工程の一例であって、有機EL素子に不具合が生じる工程を示す工程断面図である。
図2において、有機EL装置10は、画素部70、本発明の「電極保護部」の一例であるエッジカバー47、有機EL素子72、及び導電部48を備えている。
画素部70は、基板1上における画像表示領域110にマトリクス状に配設されている。画素部70は、図中横方向に沿って配列された3つのサブ画素部70R、70G及び70Bを一組として構成されており、画像表示領域110の図中縦方向及び横方向の夫々に沿って配列されている。
エッジカバー47は、有機EL素子72を囲むように各サブ画素部70に設けられている。有機EL素子72は、有機EL層50、及び有機EL層50上に形成された不図示の陰極を備えている。これら有機EL層及び陰極は画像表示領域110の全面に蒸着法を用いて成膜されるため、各画素部70に渡って延在している。
導電部48は、図中縦方向及び横方向に沿ってサブ画素部70の間に格子状に延びる非サブ画素領域73に形成されている。導電部48は、非サブ画素領域73が延びる方向に沿って格子状に延在しているが、非サブ画素領域73に沿って一方向にのみ延在するように形成されていてもよい。導電部48は、非サブ画素領域73に延びる不図示の陰極の表面に形成されている。後述するように、導電部48によれば、有機EL素子72の陰極側の電気抵抗を画像表示領域110全体に渡って低減でき、画像表示領域110内における各画素部70の位置の違いに起因して有機EL素子72に輝度勾配が生じることを低減することが可能である。特に、画像表示領域110のサイズが大きくなるほど画像表示領域における画素部70の位置の違いに起因する輝度勾配をより効果的に低減することが可能である。
図3において、有機EL装置10は、基板1、有機EL素子72R、72G及び72B、駆動用トランジスタ74、エッジカバー47、導電部48、封止部20、カラーフィルタ22、及び遮光膜21を備えている。
基板1は、例えば、ガラス基板等で形成されている。図1に示す駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76は、基板1における有機EL素子72の下側の領域を避けるように形成されている。尚、有機EL素子72は、図中上側に光を出射するトップエミッション型の発光素子であるため、駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76は、有機EL素子72の下側に形成されていてもよい。図1に示す走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150の各種回路は、基板1における画像表示領域110の周辺領域に設けられる。
有機EL素子72は、本発明の「発光部」の一例である有機EL層50、本発明の「第2電極」の一例である陰極49、及び本発明の「第1電極」の一例である陽極34を備えて構成されている。
陽極34は、基板1上に順次形成されたゲート絶縁層2、層間絶縁膜41、及び保護層45のうち保護層45の表面に沿って図1に示すサブ画素領域71内に延在するように形成されている。
エッジカバー47は、陽極34の縁を被うように形成されている。エッジカバー47は、有機EL層50を形成する際に陽極34の側面に有機EL層50を構成する材料が蒸着されないように陽極34の縁を保護する。より具体的には、図4(a)に示すように、陽極34´上から有機EL層50´を構成する有機EL材料を蒸着させた場合、陽極34´の側面に有機EL材料が蒸着されない部分が形成される。このまま陽極34´の上側から陰極49´を構成する電極材料を蒸着させた場合、図4(b)に示すように、陽極34´の側面に陰極49´が回り込み、陰極49´及び陽極34´が短絡する不具合が生じる。このような不具合を低減するために、陽極34の縁を被うようにエッジカバー47が形成されている。エッジカバー47は、アクリル樹脂、又はポリイミド樹脂等の有機材料で構成される有機材料層である。エッジカバー47を有機材料で構成する場合には、画像表示領域110に有機材料層を形成した後、フォトリソグラフィ技術等を用いてパターニングすることによって陽極34の縁を被うようにこの有機材料層を形成することが可能である。尚、エッジカバー47は、SiO、SiO2又はTiO2等の無機材料で構成される無機材料層であってもよく、例えば、陽極34の縁を被うように保護層45上にCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法、コート法、スパッタ法等の膜形成法を用いてエッジカバー47を形成することができる。
再び図3において、有機EL層50は、低分子有機EL材料から構成された発光層を含んでおり、この発光層は白色に発光する。したがって、有機EL素子72R、72G及び72Bは白色の光を出射する光源である。
有機EL層50は、陽極34の縁にエッジカバー47が形成された後、低分子有機EL材料を図1及び図2に示した画像表示領域110全体に蒸着させることによって形成されている。より具体的には、有機EL層50は、図1に示すサブ画素領域71に形成された陽極34の表面だけでなく、エッジカバー47の表面及び非サブ画素領域73に臨む保護膜45の表面にも形成される。有機EL層50のうち実質的に発光する部分は、エッジカバー47に囲まれた領域に臨む陽極34及び陰極49に挟まれた部分である。尚、有機EL層50は発光層だけでなく、電子注入層或いは電子輸送層等の各種層を含んでいてもよい。
陰極49は、エッジカバー47の表面及び有機EL層50の表面を被うように形成され、異なるサブ画素領域71の夫々に形成された有機EL素子72R、72G及び72Bに共通とされる共通電極である。陰極49は、例えばITO等の透明な導電材料を用いて形成されており、有機EL層50で発生した白色光は、陰極49を透過して図中上側に向かって出射される。したがって、有機EL素子72R、72G及び72Bは、有機EL素子72R、72G及び72Bからみて基板1と反対側に光を出射するトップエミッション型の有機EL素子である。尚、陰極49は、Al等の金属薄膜或いは複数の金属薄膜が積層された積層膜であってもよい。但し、このような金属薄膜及び積層膜は、有機EL層50で発生した光を透過するように薄く成膜されている。
有機EL装置10は、蒸着法を用いて形成された有機EL層50及び陰極49を含む有機EL素子72を有しているため、簡便な工程で有機EL層50及び陰極49を一括で形成できるという製造プロセス上の利点を享受することが可能である。
駆動用トランジスタ74のソース電極74sは、図1に示す電源供給線117に電気的に接続されており、ドレイン電極74dは陽極34に電気的に接続されている。駆動用トランジスタ74は、図1に示すデータ線114を介してゲート電極3aに供給されるデータ信号に応じてオンオフされ、駆動電流を有機EL素子72に供給する。半導体層3は、例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成された多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層である。半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び図1に示す走査線112は、ゲート絶縁層2上に形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。
走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には図2に示す層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層2は例えばシリコン酸化膜から構成されている。層間絶縁層41上には、例えばアルミニウム(Al)又はITO(Indium Tin Oxide)を含む導電材料から夫々構成される、データ線114及び電源供給線117、更には駆動用トランジスタ74のソース電極74sが形成されている。層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。電源供給線117及びドレイン電極74dを構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されている。層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極74dを埋め込んで、保護層45として例えばシリコン窒化膜(SiNx)ないしシリコン酸化膜(SiOx)が形成されている。
尚、本実施形態では詳細な説明を省略するが、駆動用トランジスタ74と同様に図1に示すスイッチング用トランジスタ76も基板1上に形成されており、走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)、クロム(Cr)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。保持容量78の下部容量電極は、走査線112と同一の層に、例えば同様の材料を用いて形成され、電源供給線117の一部が保持容量78の上部容量電極として形成されている。層間絶縁層41は誘電体膜として形成されており、層間絶縁層41の一部分が下部容量電極及び上部容量電極の間に挟持される。
有機EL装置10の駆動時、走査線112を介して走査信号が供給されることにより、スイッチング用トランジスタ76がオン状態になる。スイッチング用トランジスタ76がオン状態となると、データ線114より画像信号が保持容量78に供給される。この保持容量78に供給された画像信号の電圧に応じて、駆動用トランジスタ74の電気的な導通状態が決まる。保持容量78に供給された画像信号に応じた電流が、駆動用トランジスタ74のチャネルを介して電源供給線117より有機EL素子72に供給されると、供給された電流に応じて有機EL層50が発光する。
封止板20は、ガラス等の光透過性を有する材料を用いて形成されており、水分が有機EL装置10の外部から有機EL層50に浸入することを防止する。より具体的には、封止板20は、基板1上に接着剤によって接着されており、有機EL装置10の外気が有機EL素子72に触れないように有機EL素子72を封止する。封止板20は、封止板20の周縁部にディスペンサ等の塗布手段を用いて塗布された接着剤を介して基板1に接着される。封止板20における陰極49に臨む側の面において、封止板20の周縁部は中央部に対して凸状となっており、有機EL素子72が封止板20によって封止された状態で、封止板20の中央部及び有機EL素子72の間に一定の空間が介在する。封止板20及び有機EL素子72間の空間には、不活性ガス、樹脂或いはオイル等の充填材が充填され、この充填材により装置外部から侵入する水分が低減される。封止板20及び有機EL素子72間の空間は、封止板20及び基板1で封止された真空であってもよい。封止板20は光を透過する材料を形成されていればよく、例えば防湿処理を施したプラスチック板であってもよい。また、カラーフィルタ22が封止板20の背面に設けられている場合には、封止板20は有機EL素子72から出射された白色の光を透過する材料で形成される。封止板20としてガラス基板を用いた場合には、ガラス基板である基板1及び封止板20の熱膨張率が同等であることから、熱膨張率の違いに起因するこれら板間のひずみを低減することができ、装置全体の信頼性を高めることも可能である。
カラーフィルタ22は、封止板20の陰極49に臨む側の面にサブ画素領域73毎に形成されている。より具体的には、カラーフィルタ22R、22G及び22Bの3種類のカラーフィルタが各サブ画素領域70R、70G及び70Bに設けられている。カラーフィルタ22Rは、有機EL素子72Rから出射された白色光のうち赤色の波長を有する光を透過させる。同様に、カラーフィルタ22Gは、有機EL素子72Gから出射された白色光のうち緑色の波長を有する光を透過させ、カラーフィルタ22Bは、有機EL素子72Bから出射された白色光のうち青色の波長を有する光を透過させる。カラーフィルタ22R、22G及び22Bは、図2に示す非サブ画素領域73に設けられたブラックマトリク等の遮光膜21を挟むように各サブ画素領域71に配置されている。したがって、有機EL装置10は、画素部70を構成するサブ画素部70R、70G及び70Bの夫々から出射された赤色、緑色及び青色の光を組み合わせることによって画像をフルカラー表示できる。尚、カラーフィルタ22は、3色に限定されず、2色、或いは4色以上の光を透過するカラーフィルタを含んでいてもよく、これらのカラーフィルタを用いて表示可能な範囲で画像をカラー表示できることは言うまでもない。
導電部48は、陰極49のうち非サブ画素領域73に延びる部分の表面に形成されている。より具体的には、導電部48は、凹部59に沿って延びる陰極49の表面に導電材料を含むインクを塗布することによって形成されている。凹部59は、エッジカバー47のうち非サブ画素領域73において向かい合う一方のエッジカバー47a及び他方のエッジカバー47bによって規定されている。凹部59に沿って延びる陰極49の表面にインクを塗布した場合、凹部59の形状を反映した陰極49の表面にインクが定着し、光透過性を有しないインクがサブ画素領域71に流れ込むことを低減できる。特に、インクジェット法を用いて導電部48を形成した場合、凹部59上に正確にインクを塗布することが可能であり、サブ画素領域71から出射される光が導電部48によって遮られることを低減できる。導電部48によれば、導電部48が陰極49の非サブ画素領域73に延びる部分の表面に形成された分、有機EL素子72に供給される駆動電流が流れる電流経路の面積が広がり、有機EL素子72の陰極側の電気抵抗を低減できる。これにより、有機EL装置10の表示特性を高めることが可能である。より具体的は、画像表示領域110の端に設けられた画素領域であって画像表示領域110の外側から供給される電源に近い位置に設けられた画素領域と、画像表示領域110の中央付近に設けられた画素領域であって画像表示領域110の外側から供給される電源から遠い位置に設けられた画素領域との間に生じる輝度勾配を低減でき、画像表示領域110全体で均一な輝度で画像を表示できる。
ここで、本願発明者がシミュレーションした結果(表1)を参照しながら、本実施形態の有機EL装置が従来の有機EL装置より優れている点について更に具体的に説明する。表1は、導電部が形成されていない有機EL装置について各種電気特性をシミュレーションした測定結果を示す表であり、陰極が電源に電気的に接続された位置からの距離をパラメータとして各種電気特性を算出した結果である。
表1に示すように、測定位置が陰極及び電源のコンタクト部から離れるに伴い、電圧降下が大きくなり、それに伴い有機EL素子の輝度も低下することが分かる。特に、対角サイズが7インチの場合、陰極及び電源のコンタクト部から87、17mmの位置に配置された有機EL素子の輝度は、陰極における電圧降下がない場合の29、508%まで輝度が低下してしまう。この原因の一つとしては、有機EL装置の画像表示領域が大きくなるに伴い、陰極を流れる電流及び陰極の電気抵抗が格段に増大してしまうことが考えられる。したがって、本実施形態及び以下に述べる各実施形態の有機EL装置のように、有機EL装置の陰極側の電気抵抗を低減することによって、画像表示領域内における輝度勾配を低減でき、有機EL装置が大型化した場合でも高い画質で画像を表示できるのである。尚、陰極は透明電極材料であるITOを用いて形成し、膜厚は1000オングストローム、可視光透過率は75%である。また、陰極の電気抵抗である配線抵抗は、画像表示領域の片側で陰極及び電源を電気的に接続した場合を前提にして各種電気特性を算出した。
有機EL装置10においては陰極49を形成した後に導電部48を形成できるため、有機EL装置10の構造を大きく変更することなく、有機EL素子72の陰極側の電気抵抗を低減できる。したがって、蒸着法を用いて有機EL層50及び陰極49を形成する製造プロセス上の利点を生かしつつ、有機EL装置10の画質を高めることが可能である。加えて、導電部48は非サブ画素領域73に形成されているため、導電部48は陰極49を介して出射される光を遮ることがない。したがって、有機EL素子72上に光が出射される開口領域のサイズを狭めることなく、トップエミッション方式を採用した利点を十分に生かして表示特性を高めることが可能である。これにより、画像表示領域110内の異なる画素領域71間で輝度勾配が生じることを低減できる。
このように、有機EL装置10によれば、蒸着法を用いた製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、高画質の画像を表示できる。有機EL装置10を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは256色表示が可能な多諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れたディスプレイを提供することが可能である。
<1−2:有機EL装置の製造方法>
次に、図5及び図6を参照しながら有機EL装置10の製造方法を説明する。図5は、有機EL装置10の製造方法を示すフローチャートであり、図6は、エッジカバー47を形成する工程を示した工程断平面図である。
図5において、基板1上に形成された保護膜45の表面に陽極3を形成する(S101)。次に、陽極34の縁を被うようにエッジカバー47を形成する(S102)。ここで、図6(a)に示すように、パターニングされる前のエッジカバー47´をサブ画素領域71及び非サブ画素領域73の全体に渡って形成する。続いて、図6(b)に示すように、サブ画素領域71に形成された陽極34の縁を被うようにエッジカバー47´をフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、陽極34の縁を被うように陽極34の縁に沿ってエッジカバー47を形成する。
再び図5において、有機EL材料を蒸着法を用いて画像表示領域110の全面に蒸着し、有機EL層50を形成する(S103)。続いて、有機EL層50と同様に蒸着法を用いて陰極49を画像表示領域110の全面に形成する(S104)。尚、有機EL層50及び陰極49を形成する際には、同じ蒸着装置内で蒸着源のみを変えればよいため、有機EL層50を塗布法を用いて形成する場合に比べて製造工程を簡便にすることができる。続いて、インクジェット法等の塗布法を用いて導電部48を形成する(S105)。続いて、カラーフィルタ22が設けられた封止板20及び基板1を貼り合わせ、有機EL装置10を形成する(S106)。
以上説明したように、本実施形態の有機EL装置及びその製造方法によれば、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、本実施形態の有機EL装置10を例えば2インチ以上の大型サイズのディスプレイ或いは高諧調のディスプレイに応用することにより、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを製造できる。
(第2実施形態)
次に、図7及び図8を参照しながら本発明の第2の発明に係る発光装置及びその製造方法の実施形態を説明する。尚、以下の実施形態では、第1実施形態で説明した有機EL装置10及びその製造方法と共通する部分について共通の参照符号を付し、詳細な説明は便宜省略する。
<2−1:有機EL装置の構成>
図7は、本実施形態の有機EL装置200の構成を示す断面図である。尚、図7は、図3に示した有機EL装置10のIII−III´線断面図に対応するものである。本実施形態の有機EL装置200は、陰極49の表面に形成された導電部248及び封止板20に設けられた補助配線225が接することによって、陰極49及び補助配線225が導通することに特徴を有する。
図7において、有機EL装置200は、基板1、有機EL素子72、エッジカバー47、導電部248、遮光膜22、補助配線225及び本発明の「透明基板」の一例である封止板20を備えている。
封止板20は、第1実施形態と同様にガラス或いは光透過性を有する合成樹脂材で構成されている。
導電部248は、陰極49のうち非サブ画素領域に延びる部分の表面に基板1の上側に向かって突出するように形成されている。導電部248は、非サブ画素領域において向かい合うエッジカバー47a及び47bによって規定される凹部59上に導電材料を含むインクを塗布することによって形成されている。
補助配線225は、非サブ画素領域に設けられた遮光膜21の下面に形成されている。補助配線225は、遮光膜21の下面に形成された導電膜をフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることによって遮光膜21の表面に沿って形成されている。より具体的には、補助配線225は、画像表示領域110において格子状に延びる非サブ画素領域に沿って延びるように遮光膜21の下面に形成されている。
導電部248の高さはエッジカバー47の高さより高いため、導電部248は、封止板20及び基板1を貼り合わせる際に封止板20における陰極49に臨む側の面に形成された補助配線225に接する。これにより、陰極49及び補助配線225が導通し、導電部248を設けない場合に比べて有機EL素子72の陰極側の電気抵抗が低減される。補助配線225及び導電部248が導通することにより、陰極49のみに駆動電流を流す場合に比べて、有機EL素子72の陰極側における電圧降下を低減でき、画像表示領域内における輝度勾配を低減することが可能である。陰極49及び補助配線225を導通させる際には、導電部248が陰極49に定着する前に導電部248及び補助配線225を接触させることが好ましい。より具体的には、導電部248を形成するためのインクに含まれる溶剤が気化する前に導電部248を任意の圧力で補助配線225に押し付けることによって、導電部248が一定の面積で補助配線25と接触し、確実に陰極49及び補助配線225を導通させることが可能である。導電部248の形状は、陰極49及び補助配線225が導通するように補助配線225に部分的に接触する形状であればよく、例えば平面的に見て点状であっても有機EL素子72の陰極側の電気抵抗を低減させるためには相応の効果が得られる。
このように、有機EL装置200によれば、上述した有機EL装置10と同様に画像表示領域内の輝度勾配を低減でき、製造プロセス上の利点を享受しつつ、画像をカラー表示することが可能である。
<2−2:有機EL装置の製造方法>
次に、図8を参照しながら本実施形態の有機EL装置の製造方法を説明する。図8は、本実施形態の有機EL装置の製造方法のフローチャートである。
図8において、基板1上に陽極34を形成する工程(S101)から陰極49を形成する工程(S104)までは、第1実施形態の有機EL装置の製造方法と同様の工程である。陰極49を形成した後、凹部59上に延びる陰極49の表面から突出するように導電部248を形成する(S205)。導電部248は、第1実施形態と同様にインクジェット法等の塗布法を用いて形成されている。次に、封止板20の一方の面に形成された遮光膜22の表面に補助配線225を形成する(S206)。次に、封止板20及び基板1を貼り合わせると共に補助配線及び導電部248を接触させる(S207)。これにより、有機EL装置200が形成されると共に補助配線225及び陰極49が導電部248を介して導通する。
本実施形態の有機EL装置の製造方法によれば、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、第1実施形態の有機EL装置の製造方法と同様に、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを製造できる。
(第3実施形態)
<3−1:有機EL装置の構成>
次に、図9を参照しながら本実施形態の有機EL装置を説明する。図9は、本実施形態の有機EL装置300の構成を示す断面図である。尚、図9に示す断面図は、図3に示した有機EL装置10のIII−III´線断面図に対応するものである。本実施形態の有機EL装置300は、陰極49のうち基板1上の非サブ画素領域に形成された突部326上に延びる部分を介して封止板20に形成された補助配線225及び陰極49を導通させる点に特徴を有する。
図9において、有機EL装置300は、基板1、エッジカバー47、有機EL素子72、突部326、遮光膜21、補助配線225及び本発明の「透明基板」の一例である封止板20を備えている。
突部326は、非サブ画素領域に露出する保護膜45上に形成されており、保護膜45の表面から図中上側に向かって突出するように形成されている。保護膜45の表面を基準にした場合、突部326の高さはエッジカバー47の高さより高い。
有機EL層50は、有機EL素子72の駆動時に白色に発光する有機EL材料をサブ画素領域及び非サブ画素領域に渡って延在するように蒸着法を用いて形成されている。突部326は、非サブ画素領域73において向かい合うエッジカバー47で規定される凹部59に形成されている。
陰極49は、有機EL層50、エッジカバー47及び突部326の表面に沿って延在するように電極材料を蒸着することによって複数の有機EL層50に共通に形成されており、有機EL層50から出射される白色光を基板1の上側に向かって透過させる。
補助配線225は、非サブ画素領域73に設けられた遮光膜21の下面に形成されている。補助配線225は、フォトリソグラフィ技術を用いて導電膜をパターニングすることによって遮光膜21の表面に沿って形成されている。
突部326の高さはエッジカバー47の高さより高いため、突部326の表面に延びる陰極49は、封止板20及び基板1を貼り合わせる際に封止板20における陰極49に臨む側の面に形成された補助配線225と接する。これにより、陰極49及び補助配線225が導通し、有機EL素子72の陰極側の電気抵抗が低減され、陰極49のみに駆動電流を流す場合に比べて、有機EL素子72の陰極側における電気抵抗を低減でき、画像表示領域内における輝度勾配を低減することが可能である。加えて、突部326は、凹部59に形成されているため、有機EL素子72から出射される光を遮ることがなく、トップエミッション方式を採用した利点が損なわれない。
このように、有機EL装置300によれば、上述した有機EL装置10と同様に画像表示領域内の輝度勾配を低減でき、製造プロセス上の利点を享受しつつ、画像をカラー表示することが可能である。したがって、有機EL装置300によれば、第1及び第2実施形態の有機EL装置と同様に、表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供できる。
<3−2:有機EL装置の製造方法>
次に、図10を参照しながら本実施形態の有機EL装置の製造方法を説明する。図10は、本実施形態の有機EL装置の製造方法のフローチャートである。
図10において、基板1上に陽極34を形成する(S101)から、エッジカバー47を形成する(S102)までは、第1実施形態及び第2実施形態と同様の工程である。次に、非サブ画素領域において向かい合うエッジカバー47で規定される凹部59に突部326を形成する(S303)。次に、有機EL材料を蒸着法を用いて画像表示領域110の全面に蒸着し、有機EL層50を形成する(S103)。続いて、有機EL層50と同様に蒸着法を用いて陰極49を画像表示領域110の全面に形成する(S104)。尚、有機EL層50及び陰極49を形成する際には、同じ蒸着装置内で蒸着源のみを変えればよいため、有機EL層50を塗布法を用いて形成する場合に比べて製造工程を簡便にすることができる。次に、封止板20の一方の面に形成された遮光膜21の下面に補助配線225を形成する(S206)。尚、補助配線225は、予め遮光膜21の下面に形成されていてもよい。次に、封止板20及び基板1を貼り合わせると共に補助配線225と、突部326の表面に延びる陰極49の一部とを接触させる(S304)。これにより、有機EL装置300が形成されると共に補助配線225及び陰極49が導通し、有機EL素子72の陰極側の電気抵抗を低減できる。
本実施形態の有機EL装置の製造方法によれば、製造プロセス及びトップエミッション方式の利点を生かしながら、画像表示領域における各画素領域の輝度勾配を低減できる。したがって、第1及び第2実施形態の有機EL装置の製造方法と同様に表示特性に優れた大型サイズのディスプレイを提供できる。
(電子機器)
次に、上述した有機EL装置を備えた各種電子機器について説明する。
<A:モバイル型コンピュータ>
図11を参照しながらモバイル型のコンピュータに上述した有機EL装置を適用した例について説明する。図11は、コンピュータ1200の構成を示す斜視図である。
図11において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、図示しない有機EL装置を用いて構成された表示部1005を有する表示ユニット1206とを備えている。表示部1005は、画像表示領域における輝度勾配が低減されており、画質が高められている。また、上述した有機EL素子を含んだ表示部1005は、蒸着法を用いて形成された有機EL装置を備えるため、画質を低下させることなく表示ユニット1206を大型化できる。また、表示部1005が備える複数の有機ELディスプレイ基板に赤、緑、青の光の三原色の光を発光する有機EL素子を形成しておくことによって、該表示部1005はフルカラー表示で画像表示を行うことができる。
<B:携帯型電話機>
更に、上述した有機EL装置を携帯型電話機に適用した例について、図12を参照して説明する。図12は、携帯型電話機1300の構成を示す斜視図である。
図12において、携帯型電話機1300は、複数の操作ボタン1302と共に、本発明の一実施形態である有機EL装置を有する表示部1305を備えるものである。
表示部1305は、上述の表示部1005と同様に高品質の画像を表示することができる。また、表示部1305が備える複数の有機EL素子が夫々赤、緑、青の光の三原色の光を発光することによって、該表示部1305はフルカラー表示で画像表示を行うこともできる。
尚、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う発光装置及びその製造方法、並びに電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10、200、300・・・有機EL装置、20・・・封止板、22・・・カラーフィルタ、34・・・陽極、49・・・陰極、50・・・有機EL層、72・・・有機EL素子