JP4964328B2

JP4964328B2 - タイヤ空気圧低下検出装置、方法およびプログラム

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Publication number: JP4964328B2
Application number: JP2010107324A
Authority: JP
Inventors: 祐司尾白
Original assignee: Sumitomo Rubber Industries Ltd
Current assignee: Sumitomo Rubber Industries Ltd
Priority date: 2010-05-07
Filing date: 2010-05-07
Publication date: 2012-06-27
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Description

本発明はタイヤ空気圧低下検出装置、方法およびプログラムに関する。

ランフラットタイヤは、パンクして空気が抜けた状態でもそのまま１００ｋｍ程度の距離を走行することができるため、交通量の激しい道路などの危険な場所で車両を停車させてのタイヤ交換やパンク修理を回避して、最寄りのサービスステーションで安全に車両の整備をすることができる。また、スペアタイヤの搭載が不要になり、トランクスペースの拡大、車両の軽量化による燃費の向上などの利点がある。

一方、ランフラットタイヤのように、空気圧がゼロになった状態でも走行可能なタイヤは、タイヤの回転半径の変化に着目する従来の方法（例えば、特許文献１参照）では空気圧の低下を判別するのが難しく、空気圧が低下した状態で高速走行を続けた場合、タイヤがバーストする惧れがある。

そこで、タイヤの空気圧が完全にゼロになった場合において当該タイヤの空気圧異常を検出するために、各タイヤの加速度のバラツキを比較する方法が提案されている（例えば、特許文献２参照）。

この特許文献２記載の方法では、各タイヤの加速度のバラツキを算出し、この各タイヤの加速度バラツキを比較し、比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該タイヤの空気圧が異常であると判定している。

しかしながら特許文献２記載の方法では、４輪とも正常圧であっても、１輪のタイヤにスノーチェーンを装着した場合、当該スノーチェーンを装着したタイヤの回転速度から求められた加速度のバラツキが他のタイヤの回転速度から求められた加速度のバラツキと異なってしまい、正常内圧であるにも拘わらずスノーチェーンを装着したタイヤの空気圧が異常であると誤って判定されてしまう。

そこで本発明者は、さきに、このような誤報を発することなく、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになったことを高精度に検出することができる装置および方法を提案している（特願２００８−３０６１２５。以下、「先願発明」という）。

この先願発明は、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになった場合、当該タイヤの回転速度が他のタイヤの回転速度よりも速くなるケースと、逆に遅くなるケースとがあること、および、この遅くなる程度は、１輪タイヤにスノーチェーンを装着した場合よりも甚だしいという知見に基づいてなされたものであり、車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出手段と、この回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段と、この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段と、この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段と、この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段と、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段と、前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段とを備えたことを特徴としている。

先願発明に係る検出装置では、比較手段によって各タイヤの加速度バラツキを比較し、その結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、さらに、各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求めている。そして、加速度バラツキの比較により特定されたあるタイヤと、前記回転速度の比較により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定しているので、加速度バラツキだけを比較する場合における誤報の発生を回避することができる。その結果、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになった状態を高精度に判定することができる。

タイヤの加速度バラツキだけに基づいてタイヤの空気圧低下を判定すると、前述したように、例えば１輪のタイヤにスノーチェーンを装着した場合、正常内圧であるにも拘わらず当該スノーチェーンを装着したタイヤの空気圧が異常であると誤って判定してしまう。しかしながら、本発明者は、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになった場合、当該タイヤの回転速度は他のタイヤの回転速度よりも速くなるか、または逆に遅くなり、この遅くなる程度は、１輪タイヤにスノーチェーンを装着した場合よりも甚だしいことを見出した。そこで、タイヤの加速度バラツキにより特定されたタイヤと、タイヤの回転速度に基づいて特定されたタイヤ（他のタイヤよりも速いか、または、他のタイヤよりも甚だしく遅いタイヤ。この「遅さ」は、タイヤにスノーチェーンを装着したときの遅さよりも非常に遅い）とが一致したばあいに当該あるタイヤの空気圧が低下していると判定することにより、タイヤにスノーチェーンを装着しているが故にタイヤの加速度バラツキが大きくなっている場合を「空気圧低下」と誤って判定するのを回避することができる。

特開昭６３−３０５０１１号公報特開２００７−１８２２１１号公報

前述した先願発明では、スノーチェーンが装着される可能性がない従動輪でも、１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度（遅いことは遅いが、前記所定の基準より遅いということはない）によっては、当該１輪のタイヤにはスノーチェーンが装着されている結果回転速度が遅くなっていると判断し、減圧を判定しない。

しかし、従動輪の場合、遅くなる程度が、内圧ゼロのときとスノーチェーンを装着したときとで区別がつかないことがあり、実際には内圧がゼロであるにも拘わらず、減圧判定されない場合がある。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになったことを確実に検出することができるタイヤ空気圧低下検出装置、方法およびプログラムを提供することを目的としている。

（１）本発明のタイヤ空気圧低下検出装置（以下、単に「検出装置」ともいう）は、車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出する装置であって、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出手段と、
この回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段と、
この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段と、
この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段と、
この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段と、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段と、
前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段と
を備えており、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定手段は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求めるように構成されており、
前記判定手段は、前記推定手段により特定されたあるタイヤと前記検定手段により特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されていることを特徴としている。

本発明の検出装置では、検定手段によって、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求められ、この最も遅いタイヤと前記推定手段により特定されたあるタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されている。したがって、完全に内圧がゼロになっている従動輪のタイヤを確実に検出することができる。

（２）前記（１）の検出装置において、車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得手段を備えており、
前記判定手段は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得手段により取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断することが好ましい。

（３）本発明のタイヤ空気圧低下検出方法（以下、単に「検出方法」ともいう）は、車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出する方法であって、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出工程と、
この回転速度検出工程において得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出工程と、
この加速度算出工程において算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出工程と、
この加速度バラツキ算出工程において算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較工程と、
この比較工程における比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定工程と、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定工程と、
前記推定工程において特定されたあるタイヤと、前記検定工程において特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定工程と
を備えており、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定工程は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求め、
前記判定工程は、前記推定工程において特定されたあるタイヤと前記検定工程において特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定することを特徴としている。

（４）前記（３）の検出方法において、車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得工程を備えており、
前記判定工程は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得工程において取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断することが好ましい。

（５）本発明のタイヤ空気圧低下検出プログラムは、車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出するためにコンピュータを、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段、
この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段、
この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段、
この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段、および、
前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段
として機能させ、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定手段は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求めるように構成されており、
前記判定手段は、前記推定手段により特定されたあるタイヤと前記検定手段により特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されていることを特徴としている。

（６）前記（５）のプログラムにおいて、前記コンピュータを、さらに車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得手段として機能させ、
前記判定手段は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得手段により取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断することが好ましい。

本発明の検出装置、方法およびプログラムによれば、１輪タイヤの空気圧が完全にゼロになったことを確実に検出することができる。

本発明の検出装置の一実施の形態を示すブロック図である。図１に示される検出装置の電気的構成を示すブロック図である。ＤＥＬと時間との関係を示す図である。ＤＥＬと時間との関係を示す図である。ＤＥＬと時間との関係を示す図である。

以下、添付図面を参照しつつ、本発明の検出装置、方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
図１に示されるように、本発明の一実施の形態に係る検出装置は、４輪車両に備えられた４つのタイヤの左前輪（ＦＬ）、右前輪（ＦＲ）、左後輪（ＲＬ）および右後輪（ＲＲ）の回転速度を検出するため、各タイヤに関連して設けられた通常の車輪速度検出手段（回転速度検出手段）１を備えている。

前記車輪速度検出手段１としては、電磁ピックアップなどを用いて回転パルスを発生させてパルスの数から回転角速度および車輪速度を測定するための車輪速センサまたはダイナモのように回転を利用して発電を行い、この電圧から回転角速度及び車輪速度を測定するためのものを含む角速度センサなどを用いることができる。前記車輪速度検出手段１の出力は、ＡＢＳなどのコンピュータである制御ユニット２に与えられる。この制御ユニット２には、例えばタイヤが減圧していることを表示するための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはＣＲＴなどで構成された表示器３、ドライバーによって操作することができる初期化ボタン４、およびタイヤの減圧をドライバーに知らせる警報器５が接続されている。

制御ユニット２は、図２に示されるように、外部装置との信号の受け渡しに必要なＩ／Ｏインターフェース２ａと、演算処理の中枢として機能するＣＰＵ２ｂと、このＣＰＵ２ｂの制御動作プログラムが格納されたＲＯＭ２ｃと、前記ＣＰＵ２ｂが制御動作を行う際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータが読み出されたりするＲＡＭ２ｄとから構成されている。

前記車輪速度検出手段１では、タイヤの回転数に対応したパルス信号（以下、「車輪速パルス」ともいう）が出力される。また、ＣＰＵ２ｂでは、車輪速度検出手段１から出力された車輪速パルスに基づいて、所定のサンプリング周期ΔＴ（ｓｅｃ）、例えばΔＴ＝０．０５秒毎に各タイヤの回転角速度Ｆ_ｉ（Ｆ_１〜Ｆ_４）が算出される。なお、Ｆ_１〜Ｆ_４はそれぞれ、左前輪（ＦＬ）タイヤ、右前輪（ＦＲ）タイヤ、左後輪（ＲＬ）タイヤおよび右後輪（ＲＲ）タイヤの回転角速度である。

ここでタイヤは、規格内でのばらつき（初期差異）が含まれて製造されるため、各タイヤの有効転がり半径（一回転により進んだ距離を２πで割った値）は、すべてのタイヤが正常内圧であっても同一とは限らない。そのため、各タイヤの回転角速度Ｆ_ｉはばらつくことになる。そこで、初期差異によるばらつきを打ち消すために補正した回転角速度Ｆ１_ｉを算出する。具体的には、
Ｆ１_１＝Ｆ_１
Ｆ１_２＝ｍＦ_２
Ｆ１_３＝Ｆ_３
Ｆ１_４＝ｎＦ_４
と補正される。前記補正係数ｍ、ｎは、例えば車両が直線走行していることを条件として回転角速度Ｆ_ｉを算出し、この算出された回転角速度Ｆｉに基づいて、ｍ＝Ｆ_１／Ｆ_２、ｎ＝Ｆ_３／Ｆ_４として取得される。

そして、このＦ_ｉに基づいてタイヤの回転速度が算出される。また、この回転速度に基づいてタイヤの加速度が算出される。

本実施の形態に係る検出装置は、車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する車輪速度検出手段（回転速度検出手段）１と、この回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段と、この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段と、この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段と、この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段と、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段と、前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段とから構成されている。また、前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、前記検定手段は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求めるように構成されており、前記判定手段は、前記推定手段により特定されたあるタイヤと前記検定手段により特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されている。

そして、本発明のプログラムは、前記制御ユニット２を、加速度算出手段、加速度バラツキ算出手段、比較手段、推定手段、検定手段および判定手段として機能させる。

本発明では、各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出している。この加速度バラツキとは、所定時間毎、例えば４０ｍ秒毎に求められた加速度の絶対値の２５個分（１秒分）の積算値のことをいい、各タイヤについて算出された積算値を比較して、あるタイヤの積算値が他のタイヤの積算値と差異がある場合に、当該あるタイヤの空気圧が異常（特に、空気圧ゼロ）である可能性があると判定する、すなわち空気圧が低下したタイヤを推定する。算出された各タイヤの加速度バラツキは、各加速度バラツキの比をとるか、または差を取ることにより比較される。そして、この比または差が、所定の閾値よりも大きい場合に空気圧異常の判定を行う。なお、この閾値は、４輪の内の１輪の空気圧をゼロにした車両の走行実験などにより予め求めておくことができる。

本発明では、さらに、各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、
（Ａ）回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いタイヤ、
（Ｂ）回転速度が所定の基準よりもさらに遅いタイヤ
（Ｃ）回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤ
を求めている。換言すれば、他の３つのタイヤよりも回転速度が速いタイヤ、所定の基準よりもさらに遅いタイヤ、または、最も回転速度が遅いタイヤを特定する。そして、この特定の結果および後述する推定手段による推定の結果に基づいて、タイヤの減圧判定を行っている。前記（Ａ）および（Ｂ）の特定は、例えば次のようにして行うことができる。

すなわち、各輪の回転速度をそれぞれＦＬｓ（左前輪）、ＦＲｓ（右前輪）、ＲＬｓ（左後輪）、ＲＲｓ（右後輪）とし、以下の（１）〜（３）式で表わされるＤＥＬ１＿Ｒ、ＤＥＬ２＿ＲおよびＤＥＬ３＿Ｒを求め、これらと所定の閾値とを比較することにより（表１参照）、他の３輪よりも回転速度が速いタイヤ、または非常に遅いタイヤを特定することができる。
ＤＥＬ１＿Ｒ＝〔{(ＦＬｓ＋ＲＲｓ）／（ＦＲｓ＋ＲＬｓ）}−１〕×１００（％）・・・（１）
ＤＥＬ２＿Ｒ＝〔{(ＦＬｓ＋ＦＲｓ）／（ＲＬｓ＋ＲＲｓ）}−１〕×１００（％）・・・（２）
ＤＥＬ３＿Ｒ＝〔{(ＦＬｓ＋ＲＬｓ）／（ＦＲｓ＋ＲＲｓ）}−１〕×１００（％）・・・（３）

前記所定の閾値は、実験により求めることができるが、１輪の空気圧がゼロであるために他のタイヤよりも回転速度が遅いタイヤを判定するための閾値（＃ＴｈＳｌｏｗｅｒＤＥＬ１、＃ＴｈＳｌｏｗｅｒＤＥＬ２、＃ＴｈＳｌｏｗｅｒＤＥＬ３）は、例えば、３〜１０の範囲内の値である。また、１輪の空気圧がゼロであるために他のタイヤよりも回転速度が速いタイヤを判定するための閾値（＃ＴｈＦａｓｔｅｒＤＥＬ１、＃ＴｈＦａｓｔｅｒＤＥＬ２、＃ＴｈＦａｓｔｅｒＤＥＬ３）は、例えば、０〜０．３の範囲内の値である。

なお、正常内圧時に４輪のうちの１輪にスノーチェーンを装着すると、当該スノーチェーンを装着したタイヤの回転速度は他のタイヤよりも遅くなるが、この遅いタイヤを特定するための閾値は、例えば、約０．０５〜１の範囲内の値である。このように、同じ回転速度が遅くなる場合でも、１輪内圧がゼロのときと、１輪にスノーチェーンを装着したときとでは、その遅くなる程度が大きく異なるので、閾値を変えることで両者を明確に区別することができる。１輪内圧がゼロの場合、タイヤの動荷重半径が小さくなることから、通常、タイヤの回転速度は通常速くなるが、本発明者は、この回転速度が逆に遅くなる場合があり、この遅くなる程度は１輪タイヤのスノーチェーンを装着した場合よりも甚だしいことを見出した。１輪内圧がゼロのときにタイヤの回転速度が非常に遅くなる理由としては、内圧がゼロになったことによりタイヤのトレッドがリムと接触し、その摩擦によって回転速度が遅くなることが考えられる。

また、前記（Ｃ）の特定は、各輪の回転速度であるＦＬｓ（左前輪）、ＦＲｓ（右前輪）、ＲＬｓ（左後輪）、およびＲＲｓ（右後輪）を相対比較することにより行うことができる。この場合、測定誤差を考慮して、他の３輪の平均回転速度よりも例えば０．２％以上回転速度が遅い輪を「最も回転速度が遅い輪」とすることができる。

図３〜５は、前記ＤＥＬ１＿Ｒ〜ＤＥＬ３＿Ｒの実験例を示す図である。図３は、４輪正常内圧であり、いずれのタイヤにもスノーチェーンを装着していない場合の値であり、図４は、４輪正常内圧であり、左後輪（ＲＬ輪）にスノーチェーンを装着した場合の値であり、図５は、右前輪（ＦＲ輪）の内圧がゼロであり、いずれのタイヤにもスノーチェーンを装着していない場合の値である。また、表２は、図３〜５の結果をまとめたものである。実験は冬タイヤ（２２５／５５Ｒ１６）を装着したＦＲ車を用いて行った。

図３〜５および表２より、４輪正常内圧であり、いずれのタイヤにもスノーチェーンを装着していない場合、ＤＥＬ１＿Ｒ、ＤＥＬ２＿ＲおよびＤＥＬ３＿Ｒはいずれも略ゼロであるが、４輪正常内圧であり、左後輪（ＲＬ輪）にスノーチェーンを装着した場合、ＤＥＬ１＿ＲおよびＤＥＬ２＿Ｒが、０．３〜０．５の範囲で推移し、一方、ＤＥＬ３＿Ｒが−０．３３〜−０．５の範囲で推移していることが分かる。また、右前輪（ＦＲ輪）の内圧がゼロであり、いずれのタイヤにもスノーチェーンを装着していない場合、ＤＥＬ１＿ＲおよびＤＥＬ３＿Ｒが５．１〜６．９の範囲で推移し、一方、ＤＥＬ２＿Ｒが−５．１〜−６．９の範囲で推移していることが分かる。以上より、１輪内圧ゼロの場合と、１輪スノーチェーン装着の場合とでは、ＤＥＬ１＿Ｒ〜ＤＥＬ３＿Ｒの値が大きく異なっており、したがって、閾値を適切に設定することにより、同じ回転速度が遅くなる場合であっても、１輪内圧ゼロに起因する場合と、１輪スノーチェーン装着に起因する場合とを明確に区別できることが分かる。

ついで本発明では、回転速度に基づいて前記（Ａ）または（Ｂ）であると特定（検定）したタイヤと、加速度バラツキの比較により特定（推定）したタイヤとが一致した場合に、当該タイヤの空気圧が低下していると判定する。このように、加速度バラツキによる判定結果だけでなく、回転速度による判定結果（この判定では、１輪スノーチェーン装着により回転速度が遅くなるケースが排除される）の両者に基づいて１輪タイヤの空気圧低下を判定するので、高精度に減圧判定を行うことができる。

さらに、本発明では、回転速度に基づいて前記（Ｃ）であると特定（検定）したタイヤと、加速度バラツキの比較により特定（推定）したタイヤとが一致し、且つ、当該タイヤの位置が従動輪である場合にも、当該タイヤの空気圧が低下していると判定する。前述したように、スノーチェーンが装着される可能性がない従動輪でも、１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度（遅いことは遅いが、前記所定の基準より遅いということはない）によっては、当該１輪のタイヤにはスノーチェーンが装着されている結果回転速度が遅くなっていると判断し、減圧を判定しないが、従動輪の場合、遅くなる程度が、内圧ゼロのときとスノーチェーンを装着したときとで区別がつかないことがあり、実際には内圧がゼロであるにも拘わらず、減圧判定されないことがある。これに対し、本発明では、加速度バラツキの比較により特定（推定）したタイヤが最も遅いタイヤであり且つ従動輪に装着されるタイヤである場合には、当該タイヤは減圧していると判定する。その結果、タイヤ空気圧がゼロであるにも拘わらず減圧判定が行われないという不都合を解消することができる。

ある輪が従動輪であるか駆動輪であるかは、当該輪のホイールトルクを取得することで判断することができる。そして、車両速度が０以外、すなわち車両が停止していない状態においてホイールトルクの値がゼロかそれ以外であるかによって、従動輪であるか駆動輪であるかを判断することができる。かかるホイールトルクは、例えばＡＢＳ（ＡｎｔｉｌｏｃｋＢｒａｋｅＳｙｓｔｅｍ）からの情報を回転車輪速と一緒に取得することができる。

１車輪速度検出手段（回転速度検出手段）
２制御ユニット
２ａインターフェース
２ｂＣＰＵ
２ｃＲＯＭ
２ｄＲＡＭ
３表示器
４初期化ボタン
５警報器

Claims

車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出する装置であって、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出手段と、
この回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段と、
この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段と、
この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段と、
この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段と、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段と、
前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段と
を備えており、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定手段は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求めるように構成されており、
前記判定手段は、前記推定手段により特定されたあるタイヤと前記検定手段により特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されていることを特徴とするタイヤ空気圧低下検出装置。
車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得手段を備えており、
前記判定手段は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得手段により取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断する請求項１に記載のタイヤ空気圧低下検出装置。
車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出する方法であって、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出工程と、
この回転速度検出工程において得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出工程と、
この加速度算出工程において算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出工程と、
この加速度バラツキ算出工程において算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較工程と、
この比較工程における比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定工程と、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定工程と、
前記推定工程において特定されたあるタイヤと、前記検定工程において特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定工程と
を備えており、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定工程は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求め、
前記判定工程は、前記推定工程において特定されたあるタイヤと前記検定工程において特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定することを特徴とするタイヤ空気圧低下検出方法。
車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得工程を備えており、
前記判定工程は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得工程において取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断する請求項３に記載のタイヤ空気圧低下検出方法。
車両に装着したタイヤの空気圧低下を検出するためにコンピュータを、
車両の各輪のタイヤの回転速度を定期的に検出する回転速度検出手段により得られる回転速度情報から、各タイヤの加速度を算出する加速度算出手段、
この加速度算出手段により算出された各タイヤの加速度から各タイヤの加速度バラツキを算出する加速度バラツキ算出手段、
この加速度バラツキ算出手段により算出された各タイヤの加速度バラツキを比較する比較手段、
この比較手段による比較の結果、あるタイヤの加速度バラツキが残りのタイヤの加速度バラツキよりも大きい場合に、当該あるタイヤの空気圧低下を推定する推定手段、
前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも速いか、または所定の基準よりもさらに遅いタイヤを求める検定手段、および、
前記推定手段により特定されたあるタイヤと、前記検定手段により特定されたタイヤとが一致した場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定する判定手段
として機能させ、
前記所定の基準は、４輪正常内圧時において１輪のタイヤにスノーチェーンを装着したときに、当該１輪のタイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅くなる程度であり、
前記検定手段は、さらに、前記各輪のタイヤの回転速度情報に基づいて、タイヤの回転速度が残りのタイヤの回転速度よりも遅いタイヤを求めるように構成されており、
前記判定手段は、前記推定手段により特定されたあるタイヤと前記検定手段により特定された最も遅いタイヤとが一致し、且つ、当該最も遅いタイヤの位置が従動輪である場合に前記あるタイヤの空気圧低下を判定するように構成されていることを特徴とするタイヤ空気圧低下検出プログラム。
前記コンピュータを、さらに車両の各輪のホイールトルクを取得するホイールトルク取得手段として機能させ、
前記判定手段は、前記車両が停止していないときに前記ホイールトルク取得手段により取得されたホイールトルクの値が０（Ｎｍ）である輪を従動輪と判断する請求項５に記載のタイヤ空気圧低下検出プログラム。