次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における画像処理装置の一例である撮像装置の構成例を示す図である。この撮像装置は、レンズ110と、撮像素子120と、A/D(アナログ/デジタル)変換器130と、カメラ信号処理部140とを備えている。
レンズ110は、被写体からの光を撮像素子120に合焦させるものである。撮像素子120は、レンズ110から受光した光を電気信号に変換する光電変換回路である。この撮像素子120には、各画素の受光素子毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の色フィルタが設けられ、各色成分の光のみが色フィルタを通過して受光素子に入射するようになっている。受光素子に入射した光は、フォトダイオードにより光電変換され、アナログ信号として読み出される。撮像素子120は、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)に代表される電荷転送型固体撮像素子や、MOS(Metal Oxide Semiconductor:金属酸化型半導体)に代表されるX−Yアドレス型固体撮像素子などにより実現される。A/D変換器130は、撮像素子120によって光電変換された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するものである。このデジタル信号は、カメラ信号処理部140に入力される。
カメラ信号処理部140は、光学系補正回路141と、WB(ホワイトバランス)回路142と、補間処理回路200と、ガンマ補正回路144と、Y信号処理回路145と、C信号処理回路146と、LPF(ローパスフィルタ)147と、間引き処理回路148とを備える。
光学系補正回路141は、カメラ信号処理部140に入力されるデジタル信号(画像信号)に対して黒レベルを合わせるデジタルクランプ、撮像素子120の欠陥を補正する欠陥補正、レンズ110の周辺光量落ちを補正するシェーディング補正など、撮像素子120や光学系の補正を行うものである。
ホワイトバランス回路142は、光学系補正回路141を経た画像信号に対して、白い被写体に対してRGBの各色が同じレベルになるようにホワイトバランス処理を行うものである。
補間処理回路200は、それぞれ空間的に位相がずれたRGB信号から3枚のプレーン(同じ空間位置のRGB信号)を生成する補間処理を行うものである。この補間処理は、デモザイク処理とも呼ばれる。この補間処理回路200における補間処理は、本発明の特徴部分であり、その詳細については後述する。
ガンマ補正回路144は、同じ空間位置のRGB信号に対してガンマ補正を施すものである。このガンマ補正は、被写体の色の階調を正しく表現するために、撮像素子120および後段の映像再生を行うシステム全体の光電変換特性を1とするように、ホワイトバランス回路142から出力されるRGBの各色信号に対してそれぞれ所定のゲインを掛ける処理である。このガンマ補正の施された画像信号は、Y信号処理回路145およびC信号処理回路146に供給される。
Y信号処理回路145は、RGB信号から輝度信号(Y)を生成するものである。C信号処理回路146は、RGB信号から色差信号(CrおよびCb)を生成するものである。Y信号処理回路145およびC信号処理回路146は、例えばSD(Standard Definition)の場合、次式より輝度信号(Y)および色差信号(CrおよびCb)を生成する。但し、この式の係数はおおまかな数値を示すものであり、厳密なものではない。
Y = 0.3R+0.6G+0.1B
Cr=R−Y= 0.7R−0.6G−0.1B
Cb=B−Y=−0.3R−0.6G+0.9B
ローパスフィルタ147は、C信号処理回路146によって生成された色差信号について、その通過帯域を制限するフィルタである。このローパスフィルタ147は、例えば色差信号(CrおよびCb)の通過帯域をサンプリング周波数fsの1/4まで落として、Y:Cr:Cb=4:2:2とする。間引き処理回路148は、色差信号(CrおよびCb)のサンプリングの間引きを行うものである。
ここで、本発明の特徴部分である補間処理回路200におけるデモザイク処理について説明する。
図2は、本発明の実施の形態のデモザイク処理の対象となる色フィルタ配列の一例を示す図である。この配列は、各画素を市松状に配置しており、水平および垂直方向の各画素ピッチを√2dとした場合、各画素が1行毎および1列毎に画素ピッチ√2dの1/2ずつずれた、いわゆる斜め画素配列であり、G信号とR信号が交互に配列されたRGラインと、G信号のみが配列されたGラインと、B信号とG信号が交互に配列されたGBラインと、G信号のみが配列されたGラインの4行を単位として繰り返し配列されている。これらの画素のサンプリング周波数をfsとすると画素ピッチは「1/fs」となる。
各色信号の構成比は、G:R:B=6:1:1である。このコーディングでは、輝度依存性が高いG信号の比率が高いため、高い解像度を得ることができる一方、低い周波数画像でも色偽が発生するおそれがある。
図3は、本発明の実施の形態の補間処理回路200の一構成例を示す図である。この補間処理回路200は、例えば図2のように配列された画素からなるロー(RAW)データを入力とし、G信号の補間処理とR信号およびB信号の補間処理との2種類の処理フローにより補間処理を行う。すなわち、G信号は、輝度信号の主成分であるため、解像度を重視した処理で補間される。一方、R信号およびB信号は輝度への影響度が低いとともに、G信号とのレベル差により色味を作る成分であるため、色偽の抑制を重視して補間される。G信号の補間処理はG補間部201により行われ、R信号およびB信号の補間処理は色差生成部202、色差補間部204および加算部206により行われる。
G補間部201は、ローデータのR信号およびB信号の位置のG信号を補間処理するものである。また、図2の市松状の斜め画素配列から水平垂直方向の配列に変換するためには、倍密化処理により、ローデータの画素数に対して2倍の密度のG信号が生成される。この倍密化処理の際、各画素間の相関処理が行われることにより、高い解像度特性を有するG信号が出力される。
色差生成部202は、ローデータのR信号およびB信号の画素位置に色差信号(R−GおよびB−G)を生成するものである。カメラ信号処理において出力画の色はR信号、G信号およびB信号のバランスで決まるため、この色差信号をどのように作るかが、色味を左右し、色偽を防止する上で非常に重要である。
色差補間部204は、色差信号(R−GおよびB−G)を補間処理するものである。また、図2の市松状の斜め画素配列から水平垂直方向の配列に変換するためには、倍密化処理により、G補間部201の処理後のGデータレートと同じだけの色差信号(R−GおよびB−G)が生成される。
加算部206は、色差補間部204から出力された色差信号(R−GおよびB−G)に対して、G補間部201から出力されたG信号を加算することによりR信号およびB信号を生成するものである。
R信号およびB信号の補間処理を行う際、R信号およびB信号を色差信号(R−GおよびB−G)として処理するのは、R信号およびB信号はサンプリングレートが低いことから、低い周波数画像しか表現できないため、高い周波数成分を持つG信号の成分を使って、R信号およびB信号の高周波信号を作るためである。一般に、単板センサーにおいて、RGBの分光特性はある程度ブロードで、広い周波数帯域にまたがっているため、似たような周波数特性を持っていることが多く、R信号およびB信号の高周波成分をG信号で補う手法は非常に有効である。例えば、白黒のエッジなどではR信号およびB信号だけで補間した場合、エッジ部に色偽が出るおそれがある。しかし、色差補間によりG信号の高周波成分をR信号およびB信号に加えることでエッジ部の色偽を防止することができる。
なお、本発明の実施の形態においては、R信号およびB信号の補間処理を行う際、G信号に対する差を示す色差信号(R−GおよびB−G)を用いているが、これに代えてG信号に対する比を示す色比信号(R/GおよびB/G)を用いてもよい。色比信号を用いて補間処理を行った場合、加算部206に代えて色比信号に対してG信号を乗算する乗算部が必要になる。本発明では、これら色差信号および色比信号を色相対値と総称する。
図4は、色偽の発生原理を示す図である。上述のように、色偽はRGBのサンプリングレートの違いに起因して発生する。図2の斜め画素配列では、水平方向および垂直方向のそれぞれに対するRGBのサンプリングレート比はR:G:B=1:4:1である。図4に示すように、1画素のサンプリングレートを1/fsとしたとき、サンプリング定理より、G信号は(1/2)・fsまで表現可能であり、R信号およびB信号は(1/8)・fsまで表現可能である。つまり、入力画像の周波数が(1/8)・fsまでの場合はRGB共に再現可能だが、(1/8)・fs以上の信号に対してはR信号およびB信号が折り返し信号(エイリアス)となるため、本来のR信号およびB信号を再現できない。このように、R信号およびB信号について本来の信号を再現できないことが色偽の発生原因である。
図2の斜め画素配列において、色偽は入力画像の周波数が(1/8)・fs以上の場合に発生し、特に、R信号およびB信号が直流信号と区別がつかない(1/4)・fsおよび(1/2)・fsにおいて強く発生する。例えば、入力画像の周波数が(3/16)・fsの場合、R信号およびB信号はサンプリング後、R信号およびB信号のナイキスト周波数(1/8)・fsを軸に折り返り、(1/16)・fsの周波数と区別がつかなくなる。つまり、(3/16)・fsの画像を入力して、R信号およびB信号がサンプリングされた後のデータを観察すると(1/16)・fsの周波数に見えてしまう。したがって、(3/16)・fsの入力周波数に対してG信号が(3/16)・fs、R信号およびB信号が(1/16)・fsとして捕らえられてしまい、RGBの捕らえられる周波数が異なるため、R信号およびB信号が偽信号を発生し、それが色として見えてしまう。また、(1/4)・fsの入力信号ではG信号が(1/4)・fs、R信号およびB信号が0・fsとなり、捕らえる周波数の比率が最大になるため、色偽がより強く発生する。同様に(1/2)・fsの入力信号でもG信号が(1/2)・fs、R信号およびB信号が0・fsとなり、(1/4)・fsと同様に色偽が強く発生する。
このような色偽を軽減するために、上述の色差補間が用いられる。この色差補間では、G信号の高周波成分をR信号およびB信号に転写することにより、R信号およびB信号の高周波信号を生成することができる。したがって、無彩色の被写体のようにR信号およびB信号がG信号と相関がある場合、非常に有効である。但し、R信号およびB信号とG信号の相関がない色の高周波信号では色が正しく再現されないという特徴がある。しかし、人間の視覚特性として、色の高周波には鈍感であって色物に色偽が出ても気づき難く、一方、無彩色部に色偽が出ると敏感に分かるという特性を有することから、特に無彩色被写体で色偽を出し難い色差補間は有用である。
色差補間は、人工的に作り出された理想的な被写体については非常に優れた効果を発揮する。しかし、実際のカメラシステムでは図1のようにレンズ110を通過した光を撮像素子120でサンプリングしている。このときレンズ110では、レンズ特性が光の波長によって異なるため、RGBの信号は必ずしも同じ画素に集光しない。例えば、点光源を撮影した場合、理想的にはRGBは位相0のところにインパルス状に集光するはずであるが、実際にはRGBで異なる広がりを持ってしまう。この現象は一般的に色収差と呼ばれる。この色収差には、RGB毎に焦点距離が異なることに起因する軸上色収差と、画面の位置に応じてRGB結合位置がずれることに起因する倍率色収差とがあり、これらの分離は非常に困難である。
図5は、白黒の縦線部分を撮像した際の画像データの例を示す図である。同図(a)において、位置Aに着目すると、G信号の画素値は「24」や「35」など「30」付近の値を示している。一方、R信号の画素値は「54」や「68」というように、G信号と同じレベルとはいえない値を示している。これにより、位置A'のデータが左に1画素シフトしているように見えてしまう。
同様に、同図(b)において、位置Bに着目すると、G信号の画素値は「132」や「137」など「130」付近の値を示している。一方、R信号の画素値は「161」や「171」というように、G信号と同じレベルとはいえない値を示している。この場合、位置B'のデータが右に1画素シフトしているように見えてしまう。
このように、白黒縦線の被写体を撮影しているにもかかわらず、縦方向にデータを見ると、G信号とR信号とで同じ値を出力していない。つまり、実際の撮影データでは色収差の影響により、正しく白黒を表現できていないことが分かる。RGBの各信号を全て同じ位相に有する3CCDカメラに比べ、RGBのサンプリングレートが異なるセンサーでは補間により色収差の影響を拡大させてしまうという問題がある。この色収差はズーム、絞り、フォーカス、被写体の距離および画面の位置に応じて変化するため、デモザイク処理により色収差の影響が拡大した後では、信号処理により色収差を低減させることは困難である。
そこで、本発明の実施の形態では、デモザイク処理において、色収差の影響を極力間セルしながら色差を生成し、色差補間を行うことにより、色収差と色偽を同時に低減させる。
図6は、本発明の実施の形態における色差生成部202の一構成例を示す図である。この色差生成部202は、色差候補生成部210と、周囲色差生成部220と、周囲色差補正部230と、変化量最小色差生成部240と、通常色差算出部250と、色差選択部260とを備える。
色差候補生成部210は、色差を生成しようとする注目画素の周辺領域における画素値の複数の方向に対する色差を色差候補として生成するものである。この色差候補生成部210により生成された色差候補は、信号線219を介して、周囲色差生成部220、周囲色差補正部230および変化量最小色差生成部240に供給される。
周囲色差生成部220は、色差候補生成部210から供給された色差候補に基づいて、注目画素の周囲色差を生成するものである。この周囲色差生成部220は、色差候補生成部210から供給された色差候補を複数の方向ごとに加算して、その加算結果が複数の方向のうち最小となる方向を選択し、その選択された方向の色差候補を注目画素の周囲色差とする。この周囲色差生成部220により生成された周囲色差は、信号線229を介して、周囲色差補正部230に供給される。
周囲色差補正部230は、周囲色差生成部220により生成された周囲色差を補正するものである。この周囲色差補正部230は、周辺領域における直流彩度を周囲色差の周辺領域における合計値により除算したものを周囲色差の補正ゲインとして算出する。そして、周囲色差補正部230は、この補正ゲインを周囲色差に乗算したものを新たな周囲色差とすることにより、周囲色差を補正する。なお、周辺領域における直流彩度とは、周辺領域における色差の総和を複数の方向ごとに求めたものを、さらに複数の方向に対して平均化したものである。この周囲色差補正部230により補正された周囲色差は、信号線239を介して、変化量最小色差生成部240に供給される。なお、ここでは、周囲色差補正部230により周囲色差を補正することを想定しているが、補正をすることなく周囲色差を用いるようにしてもよい。
変化量最小色差生成部240は、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差のうち、周囲色差との変化量が最小になる色差を変化量最小色差として生成するものである。この変化量最小色差生成部240により生成された変化量最小色差は、信号線249を介して、色差選択部260に供給される。
通常色差算出部250は、注目画素の近傍の画素の補間値に基づいて色差を通常色差として算出するものである。この通常色差算出部250には、図2の斜め画素配列におけるR信号およびB信号の位置に対して補間されたG信号がG補間部201から供給される。通常色差算出部250は、この補間されたG信号を利用して、R信号の位置についてはR信号の色差信号(R−G)を、B信号の位置についてはB信号の色差信号(B−G)を、それぞれ算出する。これらの色差信号は、通常色差として色差選択部260に供給される。
色差選択部260は、通常色差算出部250から供給された通常色差、および、変化量最小色差生成部240から供給された変化量最小色差のうち、絶対値が小さい方を注目画素の色差として選択するものである。すなわち、通常色差の絶対値が変化量最小色差の絶対値よりも小さい場合には、色収差の影響が小さいと考えられるため、解像度を重視した通常色差が選択される。一方、変化量最小色差の絶対値が通常色差の絶対値よりも小さい場合には、色収差の影響が大きいと考えられるため、変化量最小色差が選択される。なお、両者の絶対値が等しい場合には、例えば、変化量最小色差を選択することができる。この色差選択部260により選択された注目画素の色差は、色差補間部204に供給される。なお、ここでは色収差の影響が小さい場合には通常色差を選択することを想定したが、常に変化量最小色差を注目画素の色差として利用してもよい。
図7は、本発明の実施の形態における色差候補の例を示す図である。ここでは、注目画素をR信号として、その注目画素を含めた周囲9画素分のR信号について色差候補を生成することを想定する。このような局所領域であれば同じ被写体である可能性も高く、画面位置によって異なる倍率色収差の影響もほぼ同様であると考えられる。なお、ここでは、一例としてR信号を扱った例について説明するが、B信号についても同様の処理が行われる。
無彩色な被写体において色収差がある場合には、偽色の原因となってしまうため、同じ方向のG信号からそれぞれ色差が生成される。9画素分のR信号に対して生成された9つの色差の合計値(色差合計値)が最小になる方向の色差候補が周囲色差生成部220において周囲色差として選択される。このとき、図7(a)乃至(l)の楕円形により示される12方向が想定され、これらの中から1つの方向が選択される。なお、以下では12方向について9画素の色差候補を生成する例について説明するが、これらの方向および画素数については他の組合せを用いることができる。
図7(a)乃至(h)の8方向については、各R信号に隣接する1つのG信号の画素値を各R信号の画素値から減じたものが色差となり、9画素分の合計値が色差合計値となる。図7(i)乃至(h)の4方向については、各R信号に隣接する2つのG信号の画素値の平均値を各R信号の画素値から減じたものが色差となり、9画素分の合計値が色差合計値となる。なお、9画素分の色差合計値を算出する際には、色差の絶対値の総和を採用してもよく、また、色差の符号を考慮した通常の総和を採用してもよい。
この周囲色差の選択処理は、高周波な被写体に対する局所領域において無彩色に近い色差を選択するような働きがあり、色収差などの影響でエッジ部に色がつく場合も、その色をキャンセルする方向に動作する。また、一様な有彩色の被写体(いわゆるDC画)においては、局所領域でのG成分がすべて同じ値であるため、無彩色にはならずに正しい周囲色差を選択することが可能である。
図8は、本発明の実施の形態における周囲色差生成部220の一構成例を示す図である。この周囲色差生成部220は、色差合計値算出部221と、最小方向選択部222と、周囲色差選択部223とを備えている。
色差合計値算出部221は、図7に示した12方向のそれぞれについて9画素分の色差合計値を算出するものである。これら色差合計値算出部221によって算出された色差合計値は、最小方向選択部222に供給される。
最小方向選択部222は、色差合計値算出部221によって算出された12方向の色差合計値のうちで色差合計値が最小となる方向を選択するものである。この最小方向選択部222により選択された方向は周囲色差選択部223に供給される。
周囲色差選択部223は、最小方向選択部222から供給された方向に従って、その方向の9画素分の色差を周囲色差として選択する。この周囲色差選択部223により選択された周囲色差は、信号線229を介して、周囲色差補正部230に供給される。
図9は、本発明の実施の形態における周囲色差補正部230の一構成例を示す図である。上述の周囲色差生成部220では、色差合計値が最小になるという基準によって12方向の色差から1つが選択されるが、この基準によれば必然的に色が薄いものが選択されることになる。一様な色物の被写体(色物のDC画)を撮影した場合、ノイズが含まれていると、本来の色味から薄くなる色差が周囲色差として選択されてしまう。すなわち、ノイズがない一様な色物であれば12方向の色差の値は全て同一になるが、ノイズが含まれている場合にはG信号の値が異なるため、色が薄い周囲色差が選択されてしまう。周囲色差は色収差を極力キャンセルする必要もあるが、元の画像信号をきちんと再現する必要もある。このように、一様な被写体にノイズがある場合、周囲色差の色が薄くなってしまうのを防止する処理が色味補正である。そもそも周囲色差を求める際に色が薄くなってしまうのは、周囲色差生成部220において色差合計値が最小になる色差を選択しているためである。この周囲色差を本来の値まで戻す処理が色味補正であり、これを実現するのが周囲色差補正部230である。この周囲色差補正部230は、色差加算部231と、平均値算出部232と、周囲色差加算部233と、補正ゲイン算出部234と、乗算部235とを備える。
色差加算部231は、図7(i)乃至(l)に示した4方向のそれぞれについて9画素分の色差を加算して局所的領域の色を算出するものである。この様子を示したものが図10である。R信号を中心として両側の2つのG信号の平均値をR信号から減じたものがそれぞれの色差になる。図10(a)では右斜め方向、同図(b)では上下方向、同図(c)では左斜め方向、同図(d)では左右方向の近隣の2つのG信号が用いられる。これら色差加算部231によって算出された局所的領域の色は、平均値算出部232に供給される。
平均値算出部232は、色差加算部231から供給された局所的領域の色の平均値を算出するものである。すなわち、この平均値算出部232は、図10に示した4つの局所的領域の色の総和を「4」で除算した値を直流彩度として出力する。色差加算部231および平均値算出部232による処理は、色差最小というような非線形な処理を行っていないため、ノイズがあったとしても平均的な色差を選択することになり色を薄くする作用を持たないことになる。この平均値算出部232により出力された直流彩度は、補正ゲイン算出部234に供給される。
周囲色差加算部233は、周囲色差選択部223により選択された周囲色差の9画素分の色差を加算するものである。この周囲色差加算部233により加算された色差は、周囲色差の合計色差として補正ゲイン算出部234に供給される。
補正ゲイン算出部234は、平均値算出部232から供給された直流彩度を周囲色差加算部233から供給された周囲色差の合計色差で除算した値を補正ゲインとして算出するものである。この補正ゲイン算出部234により算出された補正ゲインは、乗算部235に供給される。なお、補正ゲインは除算により算出されるため、分母の値が小さいときには誤差が大きくなる可能性がある。したがって、補正ゲインには「1.0」乃至「2.0」倍程度の範囲で上下限を設定することが望ましい。
乗算部235は、周囲色差選択部223により選択された周囲色差の9画素分の色差のそれぞれに対して、補正ゲイン算出部234により算出された補正ゲインを乗算するものである。これにより、周囲色差において色収差の影響を極力キャンセルするとともに、ノイズがあるDC画を撮影しても色を薄くさせないものとなる。この乗算部235による乗算結果は、それぞれの周囲色差の新たな値として、信号線239を介して、変化量最小色差生成部240に供給される。
図11は、本発明の実施の形態における変化量最小色差生成部240の一構成例を示す図である。この変化量最小色差生成部240は、色差変化量算出部241と、最小変化方向選択部242と、注目画素色差選択部243とを備えている。
色差変化量算出部241は、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差と周囲色差との変化量を色差変化量として算出するものである。ここで、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差は、色差候補生成部210によって生成された色差候補のうち注目画素とその近傍の画素との間で生成される色差を用いることができる。例えば、図12(a)乃至(l)の楕円形により示される12方向のR信号およびG信号から色差が算出される。また、周囲色差は、周囲色差補正部230によって補正された周囲色差を用いることができる。ここでは、人間の視覚特性は画像上の色の変化に対して鈍感である、という性質を利用している。これにより、正しい色差でなくても人間の目には気付き難く、注目画素だけ突出して色を出すようなことをしないため、色偽を出さない自然な色味を出すことが可能になる。この色差変化量算出部241によって算出された色差変化量は、最小変化方向選択部242に供給される。なお、色差変化量の具体的な算出式については図13を用いて後述する。
最小変化方向選択部242は、色差変化量算出部241から供給された12方向の色差変化量の中で最小になる方向を選択するものである。この選択された方向は注目画素色差選択部243に供給される。
注目画素色差選択部243は、最小変化方向選択部242から供給された方向に従って、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差を選択するものである。ここで、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差は、色差変化量算出部241において用いられた色差と同様に、色差候補生成部210によって生成された色差候補のうち注目画素とその近傍の画素との間で生成される色差を用いることができる。
すなわち、変化量最小色差生成部240では、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差のうちで、周囲色差との変化量が最小になる色差が注目画素の色差として生成されることになる。
図13は、本発明の実施の形態における色差変化量の算出法の一例を示す図である。図13(a)の中心の画素を注目画素とすると、周辺領域には注目画素を含む9画素の位置に色差信号(R−G)が生成される。この色差信号の位置に符号を付したものが図13(b)である。すなわち、位置eが注目画素の位置であり、例えば、図12(a)乃至(l)の楕円形により示される12方向のR信号およびG信号から算出された色差が用いられる。また、位置a、b、c、d、f、g、hおよびiは、注目画素を除く8画素の周囲色差の位置である。この8画素の周囲色差は、周囲色差補正部230によって補正された周囲色差が用いられる。
図13(b)の符号a乃至iを用いると、色差変化量は次式により求められる。
色差変化量 = |−a+2×e−i|+|−b+2×e−h|
+|−c+2×e−g|+|−d+2×e−f|
このようにして求められた色差変化量のうち、色差変化量が最小となる色差が注目画素の色差として生成される
次に本発明の実施の形態における画像処理装置の動作について図面を参照して説明する。
図14は、本発明の実施の形態における画像処理方法の処理手順例を示す流れ図である。
まず、色差候補生成部210によって色差候補が生成される(ステップS910)。この生成された色差候補に基づいて、周囲色差生成部220によって注目画素の周囲色差が生成される(ステップS920)。そして、この周囲色差が周囲色差補正部230によって補正される(ステップS930)。また、変化量最小色差生成部240において、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差のうち、周囲色差との変化量が最小になる色差が変化量最小色差として生成される(ステップS940)。
一方、通常色差算出部250において、注目画素の近傍の画素の補間値に基づいて通常色差が算出される(ステップS950)。そして、色差選択部260において、通常色差、および、変化量最小色差のうち、絶対値が小さい方が注目画素の色差として選択される(ステップS960)。
図15は、本発明の実施の形態における周囲色差生成処理(ステップS920)の処理手順例を示す流れ図である。
まず、色差合計値算出部221において、図7に示した12方向のそれぞれについて9画素分の色差合計値が算出される(ステップS921)。また、最小方向選択部222において、12方向の色差合計値のうちで色差合計値が最小となる方向が選択される(ステップS922)。この選択された方向に従って、周囲色差選択部223においてその方向の9画素分の色差が周囲色差として選択される(ステップS923)。
図16は、本発明の実施の形態における周囲色差補正処理(ステップS930)の処理手順例を示す流れ図である。
まず、色差加算部231によって、図7(i)乃至(l)に示した4方向のそれぞれについて9画素分の色差が加算される(ステップS931)。そして、この加算値(局所的領域の色)の4方向の平均値が平均値算出部232によって直流彩度として算出される(ステップS932)。
一方、周囲色差選択部223により選択された周囲色差の9画素分の色差が、周囲色差加算部233によって加算され、周囲色差の合計色差となる(ステップS933)。
ステップS932において算出された直流彩度を、ステップS933において算出された周囲色差の合計色差により除算した値が、補正ゲイン算出部234によって補正ゲインとして算出される(ステップS934)。そして、周囲色差選択部223により選択された周囲色差の9画素分の色差のそれぞれに対して、補正ゲインが乗算部235により乗算される(ステップS935)。これにより、色味補正が行われる。
図17は、本発明の実施の形態における変化量最小色差生成処理(ステップS940)の処理手順例を示す流れ図である。
まず、色差変化量算出部241において、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差と周囲色差との4方向(図13)による色差変化量が、12方向(図12)について算出される(ステップS941)。そして、最小変化方向選択部242において、12方向の色差変化量の中で色差変化量が最小になる方向が選択される(ステップS942)。この選択された方向に従って、注目画素の近傍の画素との間で生成される色差が注目画素色差選択部243により選択される(ステップS943)。
このように、本発明の実施の形態によれば、周囲色差生成部220において生成された周囲色差との変化量が最小になる色差を、変化量最小色差生成部240によって注目画素の色差として生成することにより、色収差と色偽を同時に抑制することができる。
これに対して、周囲色差を用いずに、注目画素の近傍のG信号の候補から複数方向の色差候補を作成して、色差が最小のものを選択した場合には、色消しのパワーが強くなり、色味そのものが失われるおそれがある。この点、本発明の形態によれば、周囲色差を考慮することにより、人間の視覚にとって自然な色を再現することができる。
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、以下に示すように特許請求の範囲における発明特定事項とそれぞれ対応関係を有するが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
すなわち、請求項1において、色相対値候補生成手段は例えば色差候補生成部210に対応する。また、周囲色相対値生成手段は例えば周囲色差生成部220に対応する。また、注目画素色相対値生成手段は例えば変化量最小色差生成部240に対応する。
また、請求項2において、周囲色相対値補正手段は例えば周囲色差補正部230に対応する。
また、請求項4において、通常色相対値算出手段は例えば通常色差算出部250に対応する。また、色相対値選択手段は例えば色差選択部260に対応する。
また、請求項7において、G信号補間手段は例えばG補間部201に対応する。色相対値候補生成手段は例えば色差候補生成部210に対応する。また、周囲色相対値生成手段は例えば周囲色差生成部220に対応する。また、注目画素色相対値生成手段は例えば変化量最小色差生成部240に対応する。また、色相対値補間手段は例えば色差補間部204に対応する。また、注目画素値生成手段は例えば加算部206に対応する。
また、請求項8および9において、色相対値候補生成手順は例えばステップS910に対応する。また、周囲色相対値生成手順は例えばステップS920に対応する。また、注目画素色相対値生成手順は例えばステップS940に対応する。
なお、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。