以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。図3は、駆動伝達機構90を示す模式図である。図4は、制御部100の構成を例示するブロック図である。図5は、記録開始が指示された場合にプリンタ部11で行われる記録用紙50の搬送処理手順の一例を示すフローチャートである。図6は、記録開始が指示された場合にプリンタ部11で行われる記録用紙50の搬送処理手順の変形例を示すフローチャートである。なお、図2においては、給紙トレイ20の一部及び排紙トレイ21の一部が省略されている。
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、高さ方向121よりも幅方向122及び奥行き方向123に長い幅広薄型の概ね直方体形状に構成されている。複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。スキャナ部12は、原稿台19に対して原稿カバー15が背面側の蝶番(不図示)を介して開閉可能に構成されている。原稿台19は、いわゆるフラットベッドスキャナとして機能するものである。図には示されていないが、原稿台19の上面にコンタクトガラスが設けられている。コンタクトガラスは、原稿が載置される透明な板状部材である。原稿台19の内部には、奥行き方向123へ延出されたラインセンサ(不図示)が配置されている。このラインセンサは、幅方向122へ往復移動が可能に構成されている。コンタクトガラスに載置された原稿は、このラインセンサによって画像を読み取られる。
原稿カバー15は、複合機10の天板として機能するものである。原稿カバー15にはADF29が設けられている。ADF29は、原稿トレイ30に載置された原稿を搬送パス(不図示)を経て原稿排出トレイ31へ搬送するものである。ADF29による原稿の搬送過程において、原稿がコンタクトガラス(不図示)上を通過する。その際、コンタクトガラスの下方に配置されたラインセンサによって原稿の画像が読み取られる。画像が読み取られた原稿は、原稿排出トレイ31にその両側が担持され、原稿トレイ30上の原稿と分離した状態で保持される。
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続されている。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した記録データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙50(本発明のシートの一例、図2参照)に画像を記録するものである。
プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11には、この開口13を通じて給紙カセット33が装着される。給紙カセット33は、給紙トレイ20(本発明の載置部の一例)及び排紙トレイ21(本発明の排出部の一例)を備えている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、排紙トレイ21を給紙トレイ20の上側として上下二段に配置されている。給紙トレイ20は、記録用紙50(以下、単に「記録用紙」という。)を積載状態で収容可能な容器形状のものである。排紙トレイ21は、給紙トレイ20に比べて奥行き方向123に短い板状のものであり、複合機10の正面側(図2における左側)に設けられている。このため、給紙トレイ20は、複合機10の背面側(図2における右側)の一部が開口されている。給紙トレイ20の内部空間には、定形サイズの矩形の記録用紙が載置される。給紙トレイ20には、例えばA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。なお、記録用紙の種類としては、普通紙、光沢紙、インクジェット紙などが挙げられる。プリンタ部11では、給紙トレイ20に収容されている記録用紙がプリンタ部11の内部へ供給される。この記録用紙は、プリンタ部11に設けられた記録部24(本発明の記録手段の一例、図2参照)によって画像が記録された後に排紙トレイ21上に排出される。
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付けるボタンが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報に基づいて動作する。なお、複合機10が外部情報機器と接続されている場合には、複合機10は、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいても動作する。
[プリンタ部11]
以下、プリンタ部11の構成について説明する。
プリンタ部11は、大別して、給紙トレイ20、供給部32(本発明の供給手段の一例)、搬送路23、搬送路27(本発明の搬送路の一例)、搬送ローラ対59(本発明の第1ローラ対の一例)、排出ローラ対64(本発明の第2ローラ対の一例)、記録部24、及び排紙トレイ21を備えている。プリンタ部11において、供給部32、搬送路23,27、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、排紙トレイ21、及び後述する制御部100(図4参照)によって本発明のシート搬送装置が構成されている。
プリンタ部11には、搬送路23及び搬送路27が設けられている。搬送路23及び搬送路27は、給紙トレイ20から供給された記録用紙が搬送される経路である。搬送路23は、傾斜板22から上方へ向かった後、複合機10の正面側(図2における左側)へ曲げられている。搬送路27は、搬送路23と連続しており、記録部24を経て排紙トレイ21まで直線的にまっすぐ延設されている。
給紙トレイ20の奥側(図2における右側)に傾斜板22が設けられている。傾斜板22は、装置背面側(図2における右側)へ倒れるように傾斜している。給紙トレイ20がプリンタ部11に装着されると、傾斜板22が搬送路23の下方に配置される。給紙トレイ20に収容されている記録用紙は、傾斜板22に沿って搬送路23へ案内される。
給紙トレイ20の上側には、供給部32が設けられている。供給部32は、給紙トレイ20から搬送路23,27へ記録用紙を供給するものであり、給紙ローラ25、アーム26、及び軸28を備えている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に当接して、少なくとも最上位置の記録用紙を搬送路23,27に向けて供給するものである。アーム26は、プリンタ部11のフレーム(不図示)に支持された軸28に回動可能に設けられている。給紙ローラ25は、このアーム26の先端に回転可能に支持されている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙トレイ20側へ回動付勢されている。軸28、及びアーム26に設けられた動力伝達機構(不図示)を介してモータ84(図4参照)の駆動力が給紙ローラ25に伝達される。これにより、給紙ローラ25が回転し、その回転力を受けた記録用紙が傾斜板22に沿って給紙トレイ20から送り出されて搬送路23へ供給される。この傾斜板22には、給紙ローラ25と協働して記録用紙を1枚ずつ分離する図示しない金属分離片が配設されている。この金属分離片は、本発明の趣旨とあまり関係がないので、ここでは詳述しない。
搬送路27の下側にプラテン42が設けられている。プラテン42は、搬送路27に沿って搬送される記録用紙を下から支持するものである。プラテン42の上側に記録部24が設けられている。記録部24は、プラテン42と所定間隔を隔てて対向配置されている。搬送路27に沿ってプラテン42上を搬送される記録用紙は、この記録部24によって画像が記録される。記録部24については後述される。
[搬送ローラ対59]
搬送路27における記録部24よりも搬送方向17の上流側(本発明の中途位置)に、搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送路27に沿って記録用紙を搬送するものである。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路27の上側に配置されている。搬送ローラ60は、駆動伝達機構90(図3参照)を介してモータ85(図4参照)から駆動伝達されて回転する。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。すなわち、ピンチローラ61は搬送ローラ60に圧接している。搬送ローラ60とピンチローラ61との間に記録用紙が進入すると、ピンチローラ61が搬送ローラ60から離れる方向へ移動する。ピンチローラ61がバネによって搬送ローラ60側へ付勢されているので、搬送ローラ60の回転力が記録用紙へ確実に伝達される。記録用紙は、搬送ローラ60とピンチローラ61とに挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けてプラテン42上へ送られる。
[排出ローラ対64]
搬送路27における搬送ローラ対59よりも搬送方向17の下流側(排紙トレイ21側)に排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、搬送路27に沿って記録用紙を搬送するものであり、排紙トレイ21と近接する位置に設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路27の下側に配置されている。すなわち、排紙ローラ62は、搬送路27を挟んで搬送ローラ60とは反対側に配置されている。なお、搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間に後述する記録部24を配置するために、搬送ローラ対59と排出ローラ対64は、搬送方向17に離間距離Lを隔てて設けられている。また、本実施形態では、排紙ローラ62の円周の長さは、搬送ローラ60の円周の長さと等しく設定されている。排紙ローラ62は、駆動伝達機構90(図3参照)を介してモータ85(図4参照)から駆動伝達されて回転する。拍車63は、排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。すなわち、拍車63は排紙ローラ62に圧接している。排紙ローラ62と拍車63との間に記録用紙が進入すると、拍車63が排紙ローラ62から離れる方向へ移動する。拍車63がバネによって排紙ローラ62側へ付勢されているので、排紙ローラ62の回転力が記録用紙へ確実に伝達される。
駆動伝達機構90(図3参照)は、モータ85(図4参照)の駆動力を搬送ローラ60及び排紙ローラ62へ伝達するものである。図3に示されるように、駆動伝達機構90は、モータギヤ91、ギヤ92、連結ギヤ95、プーリ94、ベルト98、及びプーリ93を有して構成されている。なお、図3においては、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が省略され、モータギヤ91、ギヤ92、連結ギヤ95、プーリ94、ベルト98、及びプーリ93に形成されている歯が省略されている。
モータギヤ91は、モータ85に連結されている。ギヤ92は、搬送ローラ60の軸76(図2参照)に固定されており、搬送ローラ60とともに軸76周りに回転する。ギヤ92は、モータギヤ91と噛合されている。ギヤ92と近接する位置には、連結ギヤ95が設けられている。連結ギヤ95は、軸77周りに回転可能である。ギヤ92は、この連結ギヤ95とも噛合されている。排紙ローラ62の軸78(図2参照)には、プーリ93が固定されている。プーリ93は、排紙ローラ62とともに軸78周りに回転する。このプーリ93と、連結ギヤ95の軸77に固定されたプーリ94との間には、ベルト98が張り渡されている。ベルト98は、内側に歯が設けられた無端環状のものである。
モータ85からモータギヤ91へ所定の駆動力が伝達されると、その駆動力はギヤ92へ伝達される。これにより、搬送ローラ60(図2参照)が回転する。また、ギヤ92へ伝達された駆動力は、連結ギヤ95、プーリ94、ベルト98を介してプーリ93へ伝達される。これにより、排紙ローラ62(図2参照)が回転する。すなわち、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、モータ85から伝達される駆動力により同時に回転する。このように、本実施形態では、搬送ローラ60の回転と排紙ローラ62の回転とが同期されているので、排紙ローラ62及び拍車63は、搬送ローラ60及びピンチローラ61と同時に回転する。搬送路27に供給された記録用紙は、搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されてプラテン43上へ送り出される。この記録用紙は、排紙ローラ62及び拍車63の間に到達すると、排紙ローラ62及び拍車63に挟持されて排紙トレイ21の上方へ送り出される。このように搬送路27から排出された記録用紙は、排紙トレイ21に載置される。
なお、排紙トレイ21の上面と、排紙ローラ62及び拍車63の圧接位置との高低差は、排紙トレイ21に積載可能とする記録用紙の枚数に応じて設定される。本実施形態では、複合機10を薄型とするために、排紙トレイ21に数十枚程度の記録用紙を載置できる程度に、排紙トレイ21の上面と、排紙ローラ62及び拍車63の圧接位置との高低差が小さく設定されている。
また、図3には、記録用紙を搬送方向17へ搬送する場合のモータギヤ91、軸76〜78の回転方向が矢印で示されている。図3から明らかなように、モータ85の駆動力が駆動伝達機構90を介して軸76,78へ伝達されることにより、搬送ローラ60の軸76と排紙ローラ62の軸78とが逆方向に回転する。上述したとおり、排紙ローラ62は、搬送路27を挟んで搬送ローラ60とは反対側に配置されているので、搬送ローラ対59によって記録用紙が送り出される方向と、排出ローラ対64によって記録用紙が送り出される方向とが一致する。また、モータ85へ供給される電力の極性が反転されることにより、モータギヤ91、軸76〜78は、図3に示されている矢印とは反対の方向へ回転する。
図2に示されるように、搬送路27における搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間に記録部24が配置されている。記録部24は、インクジェット記録方式の記録ヘッド39と、この記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、複合機10の幅方向122(図1参照)へ往復移動が可能に構成されている。記録ヘッド39は、そのノズルがキャリッジ38の底面から下方へ露出されている。プリンタ部11の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)から記録ヘッド39に対してインクが供給される。キャリッジ38が移動される間に、記録ヘッド39のノズルから微小なインク滴がプラテン42へ向けて選択的に噴出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。
図2に示されるように、搬送ローラ60の軸76には、エンコーダディスク35が設けられ、更にエンコーダディスク35の周縁を挟むように光センサ73が設けられている。エンコーダディスク35は、搬送ローラ60と共に回転する透明な円盤状のものであり、放射状のマークが所定ピッチで記されている。エンコーダディスク35は、搬送ローラ60の軸76に固定されており、搬送ローラ60と共に回転する。光センサ73は、搬送ローラ60と近接する位置に配置されている。光センサ73は、発光素子と受光素子とを有し、両素子の間の空間にエンコーダディスク35の周縁が位置するように配置されている。受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルのセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、LOWレベルのセンサ信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置する状態では、HIレベルのセンサ信号が生成される。光センサ73で生成されたセンサ信号は、制御部100(図4参照)へ出力される。
搬送ローラ対59よりも搬送路23,27の上流側(給紙トレイ20側)の位置P2(本発明の第1位置に相当)にレジストセンサ71が設けられている。レジストセンサ71は、搬送路23,27の位置P2において、給紙トレイ20から搬送路23,27へ供給された記録用紙の有無を検知するためのものである。本実施形態では、レジストセンサ71は、所謂メカニカルセンサとして構成されている。具体的には、レジストセンサ71は、フォトインタラプタと回動可能に軸支されたフィーラ(検出子)とにより構成されている。フォトインタラプタは、受光部へ向けて光を出射する発光部、及び発光部から出射された光を受光する受光部を有する。受光部で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルのセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。給紙トレイ20から搬送路23,27へ供給された記録用紙が位置P2に到達すると、記録用紙がフィーラに当接して、フィーラが回動される。これにより、レジストセンサ71で生成されるセンサ信号のレベルが変化する。レジストセンサ71で生成されたセンサ信号は、制御部100(図4参照)へ出力される。制御部100は、このレジストセンサ71から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P2における記録用紙の有無を検知する。すなわち、レジストセンサ71及び制御部100が本発明の第1検知手段として機能する。
図2に示されるように、キャリッジ38に光センサ47が搭載されている。光センサ47は、搬送路27における搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間の位置P1(本発明の第2位置に相当)における記録用紙の有無を検知するためのものである。このため、光センサ47は、搬送方向17における位置P1と対応する位置で記録用紙を検知できるようにキャリッジ38に搭載されている。図示しないが、光センサ47は、発光ダイオードからなる発光部と、受光部とを備えたフォトリフレクタ(反射型フォトセンサ)として構成されている。発光部は、略鉛直下方へ向けて光を照射する。受光部は、プラテン42或いは記録用紙で反射した光を受光する。受光部で反射光が受光されると、受光した光の輝度に応じたセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。プラテン42の上面の色は、記録用紙よりも反射率が低い暗色となっている。そのため、光センサ47の略直下に記録用紙が存在する場合は、記録用紙において画像が記録されていない白色領域(例えば記録用紙の端部)で反射した輝度の高い反射光が受光部で受光され、それに応じたセンサ信号が生成される。一方、光センサ47の直下に記録用紙が存在しない場合は、プラテン42で反射した輝度の低い反射光が受光部で受光され、それに応じたセンサ信号が生成される。このセンサ信号は、制御部100(図4参照)へ出力される。制御部100は、光センサ47から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P1における記録用紙の有無を検知する。すなわち、光センサ47及び制御部100が本発明の第2検知手段として機能する。
[制御部100]
制御部100(図4参照)は、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。図4に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部100が本発明の判断手段、第1計測手段、及び第2計測手段として機能する。制御部100により、モータ84,85、プリンタ部11、及びスキャナ部12の各駆動機器などが制御される。
ROM102には、CPU101がモータ84,85や複合機10を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。後述するが、プリンタ部11による記録処理が開始されると、制御部100は、給紙トレイ20から搬送路23,27への記録用紙の供給動作が開始されてからの経過時間tをカウントする。RAM103には、このようにカウントされた経過時間tが一時的に格納される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。後述する設定時間T1(本発明の第1時間に相当)、及び設定時間T2(本発明の第2時間に相当)は、このEEPROM104に格納される。
ASIC109には、駆動回路80、駆動回路81、レジストセンサ71、光センサ47、及びロータリーエンコーダ83が接続されている。なお、図4には図示されていないが、ASIC109には、記録ヘッド39を制御するヘッド制御回路、操作パネル14、スキャナ部12なども接続されている。これら他の機器の制御は、本実施形態においては本発明と直接関係しないため、ここではその説明を省略する。
制御部100は、レジストセンサ71(図2参照)から出力されるセンサ信号の変化に基づいて、記録用紙の有無だけに限らず、搬送路23,27へ供給された記録用紙の先端が位置P2に到達したか否か、或いは記録用紙の後端が位置P2を通り抜けたか否かを判断する。
制御部100は、光センサ47(図2参照)から出力されるセンサ信号の変化に基づいて、位置P1における記録用紙の有無だけに限らず、記録用紙の先端(搬送方向17の下流側の端部)又は後端(搬送方向17の上流側の端部)が位置P2を通過したか否かをを判断する。また、光センサ47は、キャリッジ38が往復移動される過程において、記録用紙の幅方向の長さや両端位置をも検知することが可能である。
ロータリーエンコーダ83は、エンコーダディスク35(図2参照)のマークを光センサ73(図2及び図4参照)の検出結果に基づいてカウントすることにより、エンコーダディスク35の回転量を検出する。光センサ73によってエンコーダディスク35のマークが検出される毎に、光センサ73から出力されるセンサ信号がLOWレベルからHIレベルへ変化する。搬送ローラ60がエンコーダディスク35と共に回転されるので、このエンコーダディスク35の回転量を検出することにより、搬送ローラ60の回転量を検出することができる。ロータリーエンコーダ83によって検出された搬送ローラ60の回転量は、制御部100へ出力される。このため、制御部100は、単位時間にロータリーエンコーダ83から出力される回転量に基づいて、搬送ローラ60(排紙ローラ62)の回転速度を求めることができる。
駆動回路80は、モータ84を駆動させるものである。モータ84には、軸28、及びアーム26の動力伝達機構を介して給紙ローラ25が連結されている。駆動回路80は、ASIC109からの出力信号を受けてモータ84を駆動させる。モータ84の駆動力は、軸28、及びアーム26の動力伝達機構を介して給紙ローラ25へ伝達される。これにより、給紙トレイ20上の記録用紙が搬送路23,27へ供給される。以下、この動作を「供給動作」ともいう。
駆動回路81は、モータ85を駆動させるものである。モータ85には、駆動伝達機構90(図3参照)を介して搬送ローラ60の軸76及び排紙ローラ62の軸78が連結されている。駆動回路81は、ASIC109からの出力信号を受けてモータ85を駆動させる。モータ85の駆動力は、駆動伝達機構90を介して軸76,78へ伝達される。これにより、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが同時に回転する。
本実施形態では、給紙トレイ20から搬送路23,27へ供給された記録用紙を逆転レジスト処理するために、記録用紙を搬送方向17へ搬送する場合とは反対方向へ搬送ローラ対59及び排出ローラ対64が同時に回転される。すなわち、制御部100は、駆動回路81によりモータ85の回転を制御して、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第1方向111,112(本発明の第1方向の一例、図2参照)又は第2方向113,114(本発明の第2方向の一例、図2参照)へ同時に回転させる。本実施形態では、制御部100、駆動回路81、モータ85、及び駆動伝達機構90が本発明の制御手段として機能する。
制御部100は、給紙トレイ20から搬送路23,27へ供給された記録用紙の斜行を矯正していわゆる正確な頭出しをするために、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を逆転動作させる。具体的には、給紙ローラ25による供給動作が行われる間、制御部100は、搬送ローラ60を第2方向113へ回転させると同時に、排紙ローラ62を第2方向114へ回転させる。これにより、給紙トレイ20から供給された記録用紙の先端側が搬送ローラ対59から押し戻されるように力を受けて記録用紙の先端が制止される。すなわち、記録用紙が逆転レジスト処理される。
逆転レジスト処理が完了すると、制御部100は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を正転動作させる。具体的には、制御部100は、搬送ローラ60を第2方向113とは反対の第1方向111へ回転させると同時に、排紙ローラ62を第2方向114とは反対の第1方向112へ回転させる。これにより、搬送ローラ対59及び排出ローラ対64に挟持された記録用紙が搬送方向17へ搬送される。
[記録用紙の搬送処理]
以下、記録開始が指示された場合にプリンタ部11において行われる記録用紙の搬送処理の手順について、図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、図5のフローチャートに基づいて説明する各処理は、ROM102に記憶されているプログラムに基づいて制御部100が発行する指令に従って行われる。
制御部100は、記録開始命令が入力されたか否かを判断する(S1)。具体的には、制御部100は、操作パネル14から記録開始を指示する操作入力が行われたか否か、或いは、外部装置から記録開始を指示するコマンド及び記録データを受信したか否かを判断する。記録開始命令が入力されていないと制御部100が判断した場合(S1:NO)、待機状態となる。制御部100は、記録開始命令が入力されたと判断した場合(S1:YES)、RAM103に格納されている経過時間tをリセットする(S2)。具体的には、制御部100は、RAM103に格納されている経過時間tを消去する。
次に、制御部100は、供給動作及び逆転動作を開始する(S3)。具体的には、制御部100は、給紙ローラ25に給紙カセット20から搬送路23,27へ記録用紙を供給させる動作と、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第2方向113,114へ同時に回転させる動作とを同時に開始させる。そして、制御部100は、記録用紙の供給動作が開始されてからの経過時間tのカウントを開始する(S4)。すなわち、制御部100は、ステップS3の処理が行われてからの経過時間のカウントを開始する。なお、本実施形態では、ステップS3の処理によって記録用紙の供給動作及び逆転動作が同時に開始される。このため、逆転動作が開始されてからの経過時間は、経過時間tと等しい。すなわち、ステップS4の処理によって、給紙ローラ25による記録用紙の供給が開始されてからの経過時間tと、第2方向113,114への搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が開始されてからの経過時間とが併せて計測される。なお、供給動作と逆転動作とが同時に開始されない場合には、供給動作が開始されてからの経過時間tとは別に、第2方向113,114への搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が開始されてからの経過時間が制御部100によって計測される。
ところで、排紙トレイ21に前述した数十枚近くまで記録用紙が積載されると、排紙トレイ21における最上位置の記録用紙と、排出ローラ対64の圧接位置との高低差が小さくなる。このような状態で搬送路27から排紙トレイ21へ記録用紙が排出されると、搬送方向17における記録用紙の先端が排紙トレイ21における最上位置の記録用紙に接触して比較的大きな摺動抵抗を受ける。特に、記録用紙として光沢紙などが使用された場合には、この摺動抵抗は、記録用紙が普通紙である場合に比べてより大きなものとなる。このため、記録用紙は、搬送方向17における後端が排紙ローラ62と近接した状態で排紙トレイ21に排出されることとなる。その記録用紙の後端が排紙ローラ62付近に位置した状態で排紙動作が終わる。このような状態で次の記録用紙が供給されると、排紙トレイ21上の記録用紙が排出ローラ対64に巻き込まれて搬送路27へ逆搬送され、搬送ローラ対59に到達するおそれがある。本実施形態では、以下のステップS5の処理によって、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が戻されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があるか否かが監視される。
制御部100は、ステップS4の処理に続いて、経過時間tが設定時間T1以上になったか否かを判断する(S5)。具体的には、制御部100は、EEPROM104に格納されている設定時間T1を読み出し、経過時間tが設定時間T1以上になったか否かを判断する。ここで、設定時間T1は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が設定時間T1だけ第2方向113,114へ同時に回転されたことによる記録用紙の搬送量が、搬送ローラ60と排紙ローラ62との離間距離L(図2参照)を超えないように設定されている。設定時間T1は、離間距離Lと、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて得られる搬送ローラ60(排紙ローラ62)の回転速度に基づいて決定される。
仮に、経過時間tが設定時間T1以上になった場合には、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙の搬送距離が離間距離Lを超えるおそれがある。したがって、制御部100は、逆転動作が開始されてからの経過時間である経過時間tが設定時間T1以上になった場合には、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が逆搬送されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると判断する。逆に、経過時間tが設定時間T1未満である場合、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙の搬送距離は離間距離Lを超えていない。したがって、制御部100は、経過時間tが設定時間T1以上になっていない場合には、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が逆搬送されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性はないと判断する。このように、本実施形態では、経過時間tが設定時間T1以上になったか否かに基づいて、一度排紙トレイ21に排出された記録用紙が排出ローラ対64によって排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性の有無を判断する。
経過時間tが設定時間T1未満であると制御部100が判断した場合(S5:NO)、処理がステップS7へ進められる。制御部100は、経過時間tが設定時間T1以上になったと判断した場合(S5:YES)、第2方向113,114へ回転させている搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる(S6)。具体的には、制御部100は、駆動回路81を制御してモータ85への給電を中止してモータ85を停止させる。すなわち、制御部100は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第2方向113,114へ同時に回転させている間に排紙トレイ21から記録用紙が逆搬送されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると判断したことを条件として、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる。
制御部100は、ステップS5で「NO」と判断した場合、又はステップS6の処理を実行した場合、給紙ローラ25によって搬送路23へ供給された記録用紙の先端が位置P2で検知されたか否かを判断する(S7)。このステップS7の処理は、レジストセンサ71(図2参照)から出力されるセンサ信号に基づいて行うことができる。制御部100は、位置P2で記録用紙の先端が検知されたと判断した場合(S7:YES)、ステップS5の処理と同様に、経過時間tが設定時間T1以上になったか否かを判断する(S8)。制御部100は、経過時間tが設定時間T1以上になったと判断した場合(S8:YES)、ステップS6の処理と同様に、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる(S9)。これにより、搬送ローラ対59が停止した状態となる。
制御部100は、経過時間tが設定時間T1未満であると判断した場合(S8:NO)、又はステップS9の処理を行った場合、記録用紙が位置P2で検知されてからさらに所定量搬送されたか否かを判断する(S10)。ここで、所定量は、位置P2で検知された記録用紙の先端が搬送ローラ対59の搬送ローラ60とピンチローラ61との間に到達した後、さらに給紙ローラ25によって記録用紙が送り出されるように設定されている。換言すれば、所定量は、位置P2から搬送ローラ60とピンチローラ61との間までの記録用紙の搬送経路の長さよりも長く設定されている。このため、記録用紙は、給紙ローラ25によって所定量搬送されるまでに搬送ローラ対59に到達する。ステップS10における判断処理は、例えばステップS7で「YES」と判断してから記録用紙が給紙ローラ25によって所定量搬送されるだけの時間が経過したか否かを判断することにより行うことができる。
記録用紙が所定量搬送されていないと制御部100が判断した場合(S10:NO)、処理がステップS8へ戻される。制御部100は、記録用紙が所定量搬送されたと判断した場合(S10:YES)、供給動作を終了する(S11)。具体的には、制御部100は、駆動回路80を制御してモータ84を停止させる。
ステップS9の処理が行われることなくステップS10で「YES」と判断された場合、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が第2方向113,114、すなわち記録用紙を押し戻す方向へ回転している状態で記録用紙の供給動作が行われる。このため、記録用紙は、レジストセンサ71によって検知されてから所定量搬送されるまでの間にレジストレーションが施される。すなわち、記録用紙は、逆転レジスト処理されて先端が揃えられる。逆転レジスト処理では、記録用紙の先端が搬送ローラ対59から搬送方向17の上流側へ押し戻されるように力を受ける。このため、記録用紙が普通紙に比べてコシの強い光沢紙等であったとしても、その斜行が効果的に矯正される。
ステップS9の処理が行われた後にステップS10で「YES」と判断された場合、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が停止している状態で記録用紙の供給動作が行われる。このため、記録用紙は、レジストセンサ71によって検知されてから所定量搬送されるまでの間に停止している搬送ローラ対59によって先端側が制止されて先端が揃えられる。この処理では、記録用紙の先端が搬送ローラ対59によって制止されるものの、上述の逆転レジスト処理のように搬送方向17の上流側へ押し戻されるような力を受けることはない。すなわち、逆転レジスト処理に比べて記録用紙の先端が搬送ローラ対59から受ける力が小さい。このため、記録用紙がコシの強い光沢紙等である場合には斜行が十分に矯正されないこともあるが、ある程度の斜行は矯正される。
このように、記録用紙の斜行が矯正された後、制御部100は正転動作を実行する(S12)。具体的には、制御部100は、駆動回路81を制御して搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第1方向111,112へ回転させる。これにより、記録用紙は、搬送ローラ対59と排出ローラ対64とに挟持されて、搬送方向17へ搬送される。この記録用紙は、プラテン42上を通過する際に、記録部24によって画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
制御部100は、ステップS12の処理を行った後、次ページの記録データがあるか否かを判断する(S13)。すなわち、制御部100は、次ページの記録データがRAM103に格納されているか否かを判断する。次ページの記録データがあると制御部100が判断した場合(S13:YES)、処理がステップS2へ戻される。次ページの記録データがないと制御部100が判断した場合(S13:NO)、一連の処理が完了する。
上述のステップS7において、制御部100は、位置P2で記録用紙の先端が検知されていないと判断した場合(S7:NO)、経過時間tが設定時間T2以上になったか否かを判断する(S14)。具体的には、制御部100は、EEPROM104から設定時間T2を読み出し、経過時間tが読み出された設定時間T2以上になったか否かを判断する。ここで、設定時間T2は、給紙ローラ25によって記録用紙が正常に供給された場合に供給動作が開始されてから記録用紙がレジストセンサ71に検知されるまでの時間よりも長く、且つ、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達するまでにかかる時間よりも短い時間に設定されている。記録用紙の先端がレジストセンサ71によって検知されておらず、また、経過時間tが設定時間T2未満である場合には、給紙ローラ25による記録用紙の供給エラーは生じていないと判断することができる。したがって、経過時間tが設定時間T2未満であると制御部100が判断した場合(S14:NO)、処理がステップS5へ戻され、ステップS5以降の処理が再度行われる。すなわち、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が戻されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性がないと判断している間(ステップS5で「NO」と判断されている間)は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の第2方向113,114への回転が継続される。
給紙ローラ25による記録用紙の供給が開始されてから設定時間T2を経過しても記録用紙がレジストセンサ71によって検知されない場合には、給紙ローラ25による記録用紙の供給エラーが生じていると判断することができる。供給動作が開始されてから設定時間T2が経過するまでに、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が第2方向113,114へ回転されている。このため、記録用紙の供給エラーが発生したと判断された時点で、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙が搬送路27に存在しているおそれがある。この状態で給紙ローラ25による記録用紙の供給動作が再開された場合、その記録用紙に対する逆転レジスト処理が開始されるよりも前に、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性がある。したがって、制御部100は、経過時間tが設定時間T2以上になったと判断した場合(S14:YES)、給紙ローラ25、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる(S15)。具体的には、制御部100は、駆動回路80,81を制御してモータ84,85を停止させる。そして、制御部100は、正転動作を実行する(S16)。すなわち、制御部100は、モータ85を制御して搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第1方向111,112へ回転させる。
このように、制御部100は、レジストセンサ71によって記録用紙が検知されることなく経過時間tが設定時間T2以上になった場合には、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を第1方向111,112へ回転させる。これにより、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙が搬送路27内に存在している場合には、その記録用紙は、搬送路27から排紙トレイ21に排出される。したがって、給紙ローラ25による記録用紙の供給動作が改めて行われた場合に、給紙トレイ20から供給される記録用紙と排紙トレイ21から逆搬送された記録用紙とが重送されるといった問題が生じることを未然に防止することができる。
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が戻されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると制御部100が判断した場合には、第2方向113,114へ回転している搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が停止される。このため、万一排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が逆搬送されていたとしても、その記録用紙が搬送ローラ対59に到達することを未然に防止することができる。
また、本実施形態では、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の第2方向113,114への回転が開始されてから設定時間T1を経過した場合には、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると判断される。このため、設定時間T1を適切な時間に設定しておくことにより、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙をセンサ等を用いて検知することなく、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達することを未然に防止することができる。
[変形例]
上述の実施形態では、経過時間tが設定時間T1以上になったことを条件として、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると判断する形態について説明したが、逆搬送された記録用紙を光センサ47(図2参照)で検知するようにしてもよい。以下、記録処理が指示された場合にプリンタ部11において行われる搬送処理の変形例について図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、図6のフローチャートでは、記録用紙が搬送路27へ逆搬送されて搬送ローラ対59に到達するおそれがあるか否かを判断する処理(ステップS21及びステップS22の処理)以外は上述の実施形態と同様の処理が行われる。このため、図6においては、図5のフローチャートにおける処理と共通する処理については、同じ処理ステップ符号を付して表すことにより、詳細な説明を省略する。
逆転動作が行われている間、すなわち搬送ローラ60及び排紙ローラ62が第2方向113,114へ回転している間は、搬送ローラ対59から排出ローラ対64へ向けて記録用紙が搬送されることはない。すなわち、搬送路23から搬送路27へ記録用紙が供給されることはない。このため、逆転動作が行われている間に光センサ47によって記録用紙が検知された場合には、排紙トレイ21から搬送路27へ記録用紙が逆搬送されてその記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があると判断することができる。
記録開始命令が入力されると、光センサ47が搬送路27の幅方向(図2における紙面に垂直な方向)の中央に配置されるようにキャリッジ38が移動される。このように配置された光センサ47によって、逆搬送された記録用紙の有無が検知される。すなわち、図6に示されるように、制御部100は、ステップS4の処理を行った後に、光センサ47から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P1で記録用紙が検知されたか否かを判断する(S21)。制御部100は、位置P1で記録用紙が検知されたと判断した場合(S21:YES)、逆搬送された記録用紙がさらに所定の距離(搬送方向17における搬送ローラ対59と光センサ47との離間距離)だけ逆搬送されると搬送ローラ対59に到達するおそれがあると判断して、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる(S6)。逆に、位置P1で記録用紙が検知されていないと制御部100が判断した場合には(S21:NO)、逆転動作を中止する必要はないと判断して、処理がステップS7へ進められる。
また、制御部100は、ステップS7で「YES」と判断した場合には、光センサ47から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P1で記録用紙が検知されたか否かを判断する(S22)。制御部100は、位置P1で記録用紙が検知されたと判断した場合(S22:YES)、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達するおそれがあると判断して、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を停止させる(S9)。逆に、位置P1で記録用紙が検知されていないと制御部100が判断した場合には(S22:NO)、逆転動作を中止する必要はないと判断して、処理がステップS10へ進められる。
このように、光センサ47による検知結果に基づいて搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転を制御することにより、排紙トレイ21から搬送路27へ逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達することが確実に防止される。
なお、本実施形態では、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が搬送路27の反対側に配置されている。このため、搬送ローラ60の第1方向111と、排紙ローラ62の第1方向112とは反対方向となっている。また、搬送ローラ60の第2方向113と、排紙ローラ62の第2方向114とは反対方向となっている。本実施形態とは異なり、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが搬送路27の同じ側に配置されている場合、搬送ローラ60の第1方向と排紙ローラ62の第1方向とは同じ方向となる。このことは、第2方向113,114についても同様である。
また、本実施形態では、経過時間tが設定時間T1以上になったか否かに基づいて、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達するおそれがあるか否かを判断する形態について説明した。これに代えて、逆転動作されている間の搬送ローラ60及び排紙ローラ62の総回転量を検出して、その回転量が所定の回転量を超えたか否かに基づいて、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達するおそれがあるか否かを判断してもよい。ここでの所定の回転量は、所定の回転量だけ搬送ローラ60及び排紙ローラ62が第2方向へ同時に回転された場合に、逆搬送された記録用紙の搬送距離が距離Lを超えないように設定される。
また、上述の変形例では、逆搬送された記録用紙を光センサ47を使用して検知する形態について説明した。これに代えて、例えば光センサ47とは異なるセンサを搬送路27における搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間に配置してもよい。この場合、そのセンサによって記録用紙が検知されたか否かに基づいて、逆搬送された記録用紙が搬送ローラ対59に到達する可能性があるか否かを判断すればよい。
また、本実施形態では、給紙ローラ25と、搬送ローラ60及び排紙ローラ62とが別々のモータ84,85で個別に駆動される形態について説明した。これに代えて、給紙ローラ25と、搬送ローラ60及び排紙ローラ62とが1つのモータで駆動されるように構成されていてもよい。この場合、例えばモータを正転させることにより給紙ローラ25による供給動作と搬送ローラ60及び排紙ローラ62の逆転動作が同時に行われ、モータを逆回転させることにより搬送ローラ60及び排紙ローラ62が正転動作するように構成すればよい。
また、本実施形態では、本発明のシート搬送装置がプリンタ部11に適用された場合について説明したが、シート搬送装置は、スキャナ部12のADF28に適用されてもよい。この場合、原稿がラインセンサによって画像読取される前に原稿の斜行を矯正することができ、画像読み取りが完了した原稿が逆搬送されて、次に画像読取される原稿と重送されることを防止することができる。