以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
図1は、本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図である。
複合機1は、プリンタ部2を下部に備え、スキャナ部3を上部に備えて構成された多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機1のプリンタ部2は、インクジェット方式によって画像を記録するインクジェット記録装置であり、本発明の画像記録装置に相当する。したがって、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタにも本発明は適用可能である。
複合機1は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙その他の被記録媒体(以下、単に「記録用紙」と称される。)に画像や文書を記録する。なお、複合機1は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1に示されるように、複合機1は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体形状を呈する。プリンタ部2は、正面に開口6が形成されている。給紙トレイ10及び排紙トレイ11は、開口6の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ10には、被記録媒体である記録用紙が収容され、例えば、A4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が収容される。
プリンタ部2の正面の右下部には、扉7が開閉自在に設けられている。扉7の内側にはカートリッジ装着部9(図3参照)が設けられている。扉7が開かれると、カートリッジ装着部9が正面側に露出されて、インクカートリッジ38(図3参照)が装抜可能になる。インクカートリッジ38は、カートリッジ装着部9に装填されることにより、装置本体8に設けられる。このインクカートリッジ38は、サブタンク37(図14参照)と連結可能に設けられており、サブタンク37へ供給されるインクを貯留している。すなわち、インクカートリッジ38は、本発明におけるメインタンクに相当する。なお、インクカートリッジ38とサブタンク37との連結方法については、後に詳述される。
カートリッジ装着部9は、使用されるインク色に対応した収容室が設けられている。本プリンタ部2では、5色のカラーインク、すなわち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)と、顔料インクであるブラック(Bk)とが使用される。したがって、上記カートリッジ装着部9には、5つの収容室が区画されており、各収容室に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色インクを貯留するインクカートリッジ38(38A〜38E)が収容される。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1に示されるように、複合機1の上面には、該複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30が設けられている。原稿カバー30の下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。なお、スキャナ部3は本発明には関係しないため、詳細な説明は省略する。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶ディスプレイから構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶ディスプレイに表示される。ユーザは、この表示に基づいて任意に選択した画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
図2は、プリンタ部2の模式断面図である。
以下、複合機1の内部構成、特に、プリンタ部2の構成について詳細に説明する。図2に示されるように、複合機1の底側には給紙トレイ10が設けられている。給紙トレイ10の底面の奥方向端部には分離傾斜板22が立設されている。この分離傾斜板22は、装置奥側へ傾倒されている。分離傾斜板22は、給紙トレイ10に載置された記録用紙の奥側の先端位置を規制するとともに、給紙トレイ10から重送された複数の記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙を上方へ案内する役割を果たす。分離傾斜板22の上方には用紙搬送路23が設けられている。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
用紙搬送路23は、湾曲パス17及びストレートパス18を有する。湾曲パス17は、搬送元の給紙トレイ10から分離傾斜板22を経て上方へ向かった後、複合機1の正面側へ曲げられるように設けられている。ストレートパス18は、湾曲パス17の終端から上記正面側へと直線的に延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ11へ至るように直線的に設けられている。給紙トレイ10に収容された記録用紙は、湾曲パス17において、下方から上方へUターンするように案内されてストレートパス18に搬送され、該ストレートパス18において、画像記録ユニット24により画像記録が行われて排紙トレイ11に排出される。湾曲パス17には、図示しない回転コロがそのローラ面を用紙搬送路23に露出するようにして、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。この回転コロによって、湾曲パス17において、記録用紙は円滑に搬送される。
給紙トレイ10の上側には、該給紙トレイ10に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、回動可能に支持されたアーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構を介してLFモータ(搬送モータ)71(図3等参照)の駆動力が伝達されることにより回転する。
アーム26は、基軸27を回動軸として配設されており、給紙トレイ10のトレイ面に接離可能に上下動する。アーム26は、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ10に接触するように下側へ回動されており、給紙トレイ10の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ10上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されることにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力によって、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。送り出された記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接する。その後、記録用紙は上方へ案内されて用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その下側の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって分離されて、それ以上の送給が制止される。
湾曲パス17の終端から搬送方向下流側のストレートパス18に、画像記録ユニット24が配設されている。画像記録ユニット24は、インクジェット方式に基づいてインク滴を吐出することにより記録用紙に画像を記録するものである。画像記録ユニット24は、大別して、記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)35と、サブタンク37(37A〜37E)と、ヘッド制御基板36と、これらを搭載するキャリッジ34とを有して構成されている。サブタンク37(本発明のインクタンクに相当する)は、装置本体8に設けられたインクカートリッジ38と連結可能に構成されており、インクカートリッジ38から供給されたインクを貯留する。サブタンク37に貯留されたインクは、記録ヘッド35へ供給されて画像記録に使用される。本実施形態においては、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の5色のインクを貯留する5つのサブタンク37(37A〜37E)が画像記録ユニット24に設けられている(図4等参照)。各サブタンク37A〜37Eに貯留されている5色のインクは、それぞれ独立して記録ヘッド35に供給される。なお、上記画像記録ユニット24については、後段において詳細に説明する。
画像記録ユニット24の下側には、該画像記録ユニット24に対向するように配置されたプラテン28が設けられている。プラテン28は、上記キャリッジ34の往復移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分にわたって配設されている。プラテン28の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものである。したがって、記録用紙の両端がプラテン28からはみ出すことはない。
図2に示されるように、記録ヘッド35よりも記録用紙の搬送方向上流側(以下、単に「搬送方向上流側」と略称する。)には、搬送ローラ73及びピンチローラ74からなる一対の搬送ローラ対75が設けられている。ピンチローラ74は、搬送ローラ73の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ73及びピンチローラ74は、用紙搬送路23を搬送される記録用紙を狭持してプラテン28上へ搬送する。一方、記録ヘッド35よりも記録用紙の搬送方向下流側(以下、単に「搬送方向下流側」と略称する。)には、排紙ローラ76及びピンチローラ77からなる一対の排紙ローラ対78が設けられている。排紙ローラ76及びピンチローラ77は、記録ヘッド35により画像記録が行われた記録用紙を狭持して排紙トレイ11へ搬送する。搬送ローラ73及び排紙ローラ76には、ギヤなどの駆動伝達機構を介してLFモータ71(図3等参照)の駆動力が伝達される。
本実施形態では、搬送ローラ対75は記録ヘッド35の直上流側に配置され、排紙ローラ対78は記録ヘッド35の直下流側に配置されている。換言すれば、記録ヘッド35を挟んで直上流側に搬送ローラ対75が配置され、直下流側に排紙ローラ対78が配置されている。したがって、搬送ローラ対75と排紙ローラ対78との離間距離は、記録ヘッド35の搬送方向における長さよりも若干長いものの、概ね同じ長さに設定されている。このように、搬送ローラ対75及び排紙ローラ対78を記録ヘッド35に近接させて配置することで、搬送ローラ対75と排紙ローラ対78との離間距離を可能な限り短くして、プラテン28上を搬送される記録用紙のホールド性を高めている。これにより、プラテン28上における記録用紙の撓みが軽減され、その結果、記録用紙に記録される画像の品質が向上する。
LFモータ71(図3参照)は、複合機1を統括的に制御する制御部によって間欠駆動するよう制御されている。したがって、搬送ローラ73及び排紙ローラ76は、LFモータ71からの駆動力が伝達されることにより間欠駆動される。これにより、記録用紙が所定の改行幅ずつ間欠的に搬送される。搬送ローラ73及び排紙ローラ76の回転は、搬送ローラ73の回転軸に連結されたロータリーエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて、上記制御部によって制御される。なお、制御部としては、プリント基板にCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ドライバICなどの各電子デバイスが実装された回路基板が一般に採用される。
ピンチローラ77は、そのローラ面に拍車状の凹凸が形成されている。そのため、記録済みの記録用紙にピンチローラ77が圧接しても、記録用紙に記録された画像の品質が劣化することはない。ピンチローラ77は、排紙ローラ76と接離する方向にスライド移動可能に設けられ、コイルバネにより排紙ローラ76に圧接するように付勢されている。排紙ローラ76とピンチローラ77との間に記録用紙が進入すると、ピンチローラ77は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に抗して退避し、該記録用紙を排紙ローラ76に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ76の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。ピンチローラ74も搬送ローラ73に対して同じように設けられたものであり、記録用紙を搬送ローラ73に圧接するように狭持して、搬送ローラ73の回転力を確実に記録用紙へ伝達させる。
図3及び図4は、プリンタ部2の主要構成を示す斜視図である。図5及び図6は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。図7は、図5における矢視VIIから見た画像記録ユニット24近傍の側面図である。図8は、図5における切断線VIII−VIIIの断面図である。
図3及び図5は、画像記録ユニット24がインク供給位置に移動した状態を示している。図4及び図6は、画像記録ユニット24がメンテナンス位置に移動した状態を示している。なお、説明の便宜上、上記各図においては、キャリッジ34の上面を覆うヘッドカバーが取り外された状態が示されており、該ヘッドカバーは図示されていない。
各図に示されるように、用紙搬送路23のストレートパス18(図2参照)の上方に、平板状の一対のガイドレール43,44が配置されている。これらガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図5の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて、上記搬送方向と直交する方向(図5の左右方向)に延設されている。なお、記録用紙の搬送方向の上流側にガイドレール43が配置され、下流側にガイドレール44が配置されている。ガイドレール43及びガイドレール44は、僅かに上下方向に段差があるものの、ほぼ同一面上に配設されており、その上面は、搬送される記録用紙とそれぞれ平行となるように設定されている。本実施形態では、記録用紙はプラテン28上を水平に搬送されるため、ガイドレール43,44も上面が水平となるように設定されている。
ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられて、プリンタ部2を構成する各構成要素を支持するフレームの一部をなしている。ガイドレール43,44には、画像記録ユニット24を構成するキャリッジ34が、記録用紙の搬送方向と略直交する方向、すなわち、ガイドレール43,44の延設方向へ往復移動可能に支持される。なお、キャリッジ34は、POM(ポリアセタール樹脂)などの摺動部材を介して、搬送方向上流側の端部がガイドレール43に支持される。また、キャリッジ34の中央部よりも搬送方向下流側の部分が上記摺動部材を介してガイドレール44に支持されている。このように支持されることにより、キャリッジ34は、ガイドレール43とガイドレール44との間を跨ぐようにしてガイドレール43,44上に載置される。
図3〜図6に示されるように、ガイドレール43,44は、その延設方向(図5の左右方向)の長さがキャリッジ34の往復移動範囲より長い平板状のものである。ガイドレール43,44それぞれには、キャリッジ34の摺動面に、摺動テープ或いはグリースが付されている。これにより、キャリッジ34との接触部における摺動摩擦が低減する。
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に載置されたキャリッジ34は、縁部45を狭持部58(図8及び図10参照)により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ34は、ガイドレール44に対して位置決めされるため、記録用紙の搬送方向と直交する方向へ正確に摺動することが可能となる。換言すれば、キャリッジ34は、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復移動する。
図7に示されるように、キャリッジ34には、縁部45の垂直面に対する当該キャリッジ34の垂直姿勢を調整する調整機構59が設けられている。この調整機構59は、キャリッジ34の一側面に設けられており、ブロック体60とダイヤル式の移動機構61とを備えてなる。ブロック体60は、縁部45を狭持しつつ、記録用紙の搬送方向(図7の左右方向)に移動可能に構成されている。このブロック体60は、上記移動機構61が操作されることによって、記録用紙の搬送方向に移動される。例えば、移動機構61のダイヤル62が操作されることにより、該ダイヤル62の回動軸に連結された図示しない偏心カムが駆動されて、上記ブロック体60が記録用紙の搬送方向へ移動するようになっている。このような調整機構59が設けられているため、縁部45の垂直面に対するキャリッジ34の垂直姿勢を任意に調整することが可能となる。
図3〜図6に示されるように、ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ(キャリッジモータ)72が連結されており、該CRモータ72から駆動力が入力されることで駆動プーリ47が回転される。この回転を受けて、タイミングベルト49が駆動プーリ47と従動プーリ48との間で周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ34に固着するものを用いてもよい。
キャリッジ34は、その底面側においてタイミングベルト49に固着されている。したがって、キャリッジ34は、タイミングベルト49の周運動に基づいて縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復移動する。このキャリッジ34は、サブタンク37及び記録ヘッド35を搭載しており、用紙搬送路23の幅方向、つまり、用紙搬送路23を搬送される記録用紙の搬送方向と略直交する方向を主走査方向として往復移動する。これにより、記録ヘッド35が記録用紙の搬送方向と略直交する方向へ往復移動される。
図3〜図6の各図に示されるように、ガイドレール44には、エンコーダストリップ42が配設されている。エンコーダストリップ42は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ42は、その両端部がガイドレール44の幅方向(キャリッジ34の往復移動方向)の両端で所定の支柱に支持される。なお、上記支柱は省略されており、図3〜図6には示されていない。
エンコーダストリップ42には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、所定ピッチで長手方向に交互に配置されたパターン(目盛り)が記されている。キャリッジ34のエンコーダストリップ42に対応する位置には、透過型の光学センサ41(図8参照)が設けられている。この光学センサ41は、キャリッジ34とともにエンコーダストリップ42の長手方向に沿って往復移動し、その往復移動の際にエンコーダストリップ42のパターンを検知する。キャリッジ34には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板36が設けられている。ヘッド制御基板36は、上記光学センサ41の検知信号に応じたパルス信号を出力する。このパルス信号を受けて、複合機1の制御部がキャリッジ34の位置や速度を判断し、キャリッジ34の往復移動を制御する。
図9は、画像記録ユニット24の拡大斜視図である。図10は、図9における切断線X−Xの断面図であり、画像記録ユニット24の断面構造が示されている。なお、図9の切断線X−Xは、サブタンク37Dの中心を通っている。
上述したように、画像記録ユニット24は、キャリッジ34に、記録ヘッド35と、サブタンク37と、ヘッド制御基板36とが搭載されて概ね構成されている。以下、画像記録ユニット24及びその構成について詳細に説明する。
図10に示されるように、キャリッジ34は、当該複合機1の前後方向に長い概ね長方形のトレイ状に形成されている。キャリッジ34の中央部よりも搬送方向下流側(図10の左側)には、サブタンク37を収容するためのタンク収容室50が区画されている。サブタンク37は、側面視において横長のものであり、横幅の短い略直方体形状を呈している(図10、図19、及び図20参照)。サブタンク37は、該サブタンク37の長手方向を記録用紙の搬送方向としてキャリッジ34に搭載されている(図3〜図6、図9参照)。本実施形態では、プリンタ部2で使用される5色のインクに対応して、5つのサブタンク37(37A〜37E)が上記タンク収容室50に収容されている。これらのサブタンク37A〜37Eは、キャリッジ34の往復移動方向(図5においては左右方向)に並設されている。換言すれば、タンク収容室50において、キャリッジ34の幅方向(ガイドレール43,44の延設方向)に5つのサブタンク37A〜37Eが横並びに配列されている(図9参照)。
サブタンク37は、図10に示されるように、ガイドレール44の上方に配置されている。そのため、サブタンク37の荷重が、サブタンク37の底面部53及びキャリッジ34の支持部を経て、サブタンク37の直下のガイドレール44で受け止められる。したがって、サブタンク37の重みによるキャリッジ34の位置ズレが防止され、キャリッジ34の円滑な移動及び良好な画像記録を実現することができる。
サブタンク37は、装置本体8に設けられたインクカートリッジ38(図3参照)から供給されたインクを一時的に貯留するものである。このサブタンク37は、記録ヘッド35よりもインク供給経路の上流側に配置されており、後述するインク供給路51(図2参照)を通じてサブタンク37内のインクを記録ヘッド35へ供給する。インクカートリッジ38からサブタンク37へのインクの供給は、後述するインク供給機構80によってなされる。該インク供給機構80によるインク供給時に、インクカートリッジ38からサブタンク37の流路間で気泡が発生した場合は、該気泡は一端サブタンク37で捕捉される。そのため、図12に示されるキャビティ115及びマニホールド116に気泡が進入することが防止される。
サブタンク37は、図10に示されるように、平板状の上面部52及び底面部53を有し、さらに、側面の全周がベローズ形状に形成された側面部54(胴部)を有する。このサブタンク37は、合成樹脂で構成されており、例えば、ブロー成形により上記各部が形成され得る。上述したように、側面部54がベローズ形状に形成されることにより、サブタンク37は、上下一方向に弾性変形可能に構成されている。したがって、サブタンク37に対して上下方向に外力が作用されると、側面部54は元の形状から変形されて収縮或いは伸張する。そして、上記外力が解除されると元の形状に復元する。換言すれば、サブタンク37は、作用された外力に応じて弾性的に変形する。このような特質を有するため、サブタンク37に上方から押圧力が加えられると、側面部54が容易に収縮される。そして、その押圧力が解除されると、収縮した状態から伸縮して元の形状に復元する。なお、サブタンク37の上面部52の上側には、該上面部52を覆うプレート55が設けられている。このプレート55は、金属板或いは肉厚のある樹脂板などで構成されている。このプレート55によってサブタンク37の上面部52が保護されている。本実施形態では、サブタンク37の弾性変形を実現する手段として、側面部54をベローズ形状にすることを採用したが、例えば、側面部54をゴムなどの弾性部材で構成してもかまわない。ただし、側面部54をベローズ形状に形成することにより、上下一方向に伸縮自在なサブタンク37を容易に構成することができる。また、側面部54をゴム等で構成する場合に比べてサブタンク37を安定して伸縮させることができる。したがって、側面部54は、ベローズ形状に形成されることが好ましい。
サブタンク37は、一度のプリント処理(画像記録)で消費される平均的なインク量を貯留し得る容積が確保されていれば足りる。本実施形態では、一つのサブタンク37の容積は、0.5ミリリットル〜1.0ミリリットルのインクを貯留し得る程度に設定されている。そのため、キャリッジ34の積載荷重が抑えられ、キャリッジ34を往復移動させるCRモータ72の負荷を軽減することができる。なお、サブタンク37の容積は必要に応じて適宜変更することができ、上述した容量以上或いは該容量以下のインクを貯留するものであってもよい。
図10に示されるように、サブタンク37には、インクが流通される2つの流通孔56,57が設けられている。具体的には、サブタンク37の上面部52の前端部(図10では左端部)に流通孔56が設けられており、底面部53の後端部(図10では右端部)に流通孔57が設けられている。また、タンク収容室50の前端部には、インクカートリッジ38(図3参照)と連結される雌ジョイント63が設けられている。この雌ジョイント63は、サブタンク37に対応して5つ設けられている。雌ジョイント63には継手64が設けられており、該継手64と流通孔56は、可撓性を有するチューブ65で接続されている。これにより、雌ジョイント63とサブタンク37との間でインクの流路が形成される。
一方、流通孔57は、記録ヘッド35へインクを供給するインク供給路51の一端に連結されている。インク供給路51は、流通孔57から後方(図10では右側)へ水平に延出された後、下方に曲げられた屈曲形状を呈しており、その先端は、後述するヘッド収容室110の底面まで延出されて、記録ヘッド35に連結されている。インク供給路51としては、例えば、合成樹脂の板部材に形成された溝を薄膜フィルムで被覆することで構成されたものが採用され得る。もちろん、可撓性のあるチューブをインク供給路51として用いることも可能である。
図10に示されるように、タンク収容室50の上方には、外力を受けて上記プレート55を下方へ押圧するアーム100(本発明の押圧部材に相当する)が設けられている。このアーム100の略中央部には軸孔102が形成されており、外壁66間に架け渡された軸101が該軸孔102に揺動可能に挿通されている。すなわち、アーム100は、軸101を中心にして揺動可能に支持されている。アーム100は、5つのサブタンク37(37A〜37E)それぞれに対応して設けられており、サブタンク37の数と同じく、5つのアーム100(100A〜100E)が設けられている(図9参照)。
アーム100は、後方アーム103及び前方アーム104を有する。後方アーム103は、軸孔102から後方、すなわち、搬送方向上流方向(図10の右方向)へ水平に延出されている。前方アーム104は、軸孔102から前方、すなわち、搬送方向下流方向(図10の左方向)へ延出されてキャリッジ34の搬送方向下流側の端部から外方向へ突出されている。後方アーム103の先端には、上記プレート55に当接してアーム100からの駆動力をプレート55に伝達する押圧部105が設けられている。押圧部105の当接面は、プレート55に対して常に垂直な方向に力を作用させるべく、球面に加工されている。この押圧部105は、アーム100からの駆動力をプレート55に伝達することにより、サブタンク37の上面部52(上面)を下方へ押圧する。また、前方アーム104の先端には、外部(後述するプッシュロッド83:図4参照)からの駆動力を受ける入力部106が設けられている。この入力部106の当接面も球面に加工されている。このようにアーム100が構成されることで、入力部106に対して下方からの外力が付与されると、軸101を回動支点として、アーム100がシーソー運動する。このシーソー運動によってアーム100が揺動されて、後方アーム103が下方に押し下げられ、押圧部105がプレート55に当接する。これにより、該プレート55に押圧力が作用して、サブタンク37は、ベローズ形状に構成された側面部54が弾性力に抗して押しつぶされるように収縮される。
図10に示されるように、サブタンク37よりも搬送方向上流側(図10の右側)、より詳しくは、キャリッジ34の中央部よりも搬送方向上流側には、ヘッド制御基板36及び記録ヘッド35を収容するためのヘッド収容室110が区画されている。したがって、サブタンク37とヘッド収容室110とは、搬送方向に沿って平面視で重ならないようにずらされている。ヘッド収容室110は、タンク収容室50の底面と同じ面から下方に凹設された凹陥部111を有する。同図に示されるように、当該凹陥部111の底部に記録ヘッド35が配設され、その上部にヘッド制御基板36が配設される。したがって、サブタンク37は記録ヘッド35よりも高位置に配置されている。このように、サブタンク37と記録ヘッド35とが上述のような位置関係に配設されているため、サブタンク37に貯留されるインクの液面は、記録ヘッド35のノズル面よりも常に高い位置となる。
上記記録ヘッド35は、サブタンク37から供給されたインクを所定方向(複合機1の背面側から正面側)に搬送される記録用紙に吐出して該記録用紙に画像を記録するものである。詳しくは、記録ヘッド35は、用紙搬送路23のストレートパス18(図2参照)を搬送される記録用紙に向けて選択的にインクの微細粒子を吐出する。この記録ヘッド35のインクの吐出量や吐出タイミングはヘッド制御基板36によって制御される。なお、本実施形態では、圧電素子114(図12参照)の変形によってインクを吐出する方式の記録ヘッド35を用いるが、例えば、インクに熱を加えて生じる気泡(バブル)によってインクを吐出する方式のものにも適用可能である。
図11は、記録ヘッド35のノズル形成面を示す底面図である。
記録ヘッド35は、図11に示されるように、その下面にノズル39が、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色インク毎に、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、同図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ34の往復移動方向である。各色インクのノズル39は、それぞれ記録用紙の搬送方向に列をなしており、各色インクのノズル39の列が、キャリッジ34の往復移動方向に並んでいる。各ノズル39の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類や数に応じてノズル39の列数を増減することも可能である。
図12は、記録ヘッド35の内部構成を示す概略的な部分拡大断面図である。
図12に示されるように、記録ヘッド35の下面に形成されたノズル39の上流側には、圧電素子114を備えたキャビティ115が形成されている。圧電素子114は、ヘッド制御基板36によって所定の電圧が印加されることにより変形される。これにより、キャビティ115の容積が縮小される。このキャビティ115の容量の変化によって、キャビティ115内のインクがノズル39からインク滴として吐出される。
キャビティ115は、ノズル39毎に設けられており、複数のキャビティ115に渡ってマニホールド116が形成されている。マニホールド116は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色のインク毎に設けられている。マニホールド116の上流側にはインク供給口117が設けられている。このインク供給口117に上記インク供給路51(図10参照)が接続されている。したがって、インク供給路51から送り込まれたインクはインク供給口117から記録ヘッド35の内部に供給される。インク供給口117からマニホールド116へ供給されたインクは、マニホールド116により各キャビティ115に分配される。マニホールド116を介してキャビティ115に流れ込んだインクは、圧電素子114の変形によって、ノズル39からインク滴として記録用紙に吐出される。
上述のように、キャリッジ34には、記録ヘッド35及びサブタンク34が搭載されている。このキャリッジ34は、記録用紙の搬送方向と略直交する方向(複合機1の幅方向)へ往復移動される。サブタンク34から記録ヘッド35へインクが供給され、キャリッジ34が往復移動される過程において、複合機1の背面側から前面側へ搬送される記録用紙に対して記録ヘッド35からインクが吐出される。これにより、記録用紙に所望の画像が記録される。
図3〜図6に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち、記録ヘッド35による画像記録範囲の外側には、インク供給機構80、キャッピング機構120(図4及び図6参照)及びメンテナンス機構140が配設されている。キャッピング機構120は、複合機1を正面側から見て、記録ヘッド35の往復移動範囲の右側端部付近に設けられている。
図13は、キャッピング機構120の拡大詳細図であり、(a)はノズル39がキャップ121で被覆されていない非被覆状態を示し、(b)はノズル39がキャップ121で被覆された被覆状態を示す。
図13に示されるように、このキャッピング機構120は、記録ヘッド35のノズル39を覆うキャップ121と、該キャップ121を支持するキャップ支持部194と、該キャップ支持部194を移動させてキャップ121を記録ヘッド35のノズル面に接離させるための移動機構122とからなる。
移動機構122は、図13に示されるように、キャップ121の下方に配設されたスライドカム123と、このスライドカム123を複合機1の前後方向にスライド移動させるラックギヤ124と、該ラックギヤ124と噛合するピニオンギヤ125と、LFモータ71の駆動力をピニオンギヤ125に伝達する駆動伝達機構126とを有する。ピニオンギヤ125は、図13の紙面に垂直な方向に出没可能に設けられており、図示しないソレノイドなどが制御されることによって、ピニオンギヤ125が突出姿勢と没入姿勢とに切り換えられる。なお、ピニオンギヤ125は、上記突出姿勢においてラックギヤ124と噛合し、上記没入姿勢においてラックギヤ124との噛合が解除するように位置決めされている。ピニオンギヤ125がラックギヤ124に噛合した状態において、LFモータ71の駆動力がピニオンギヤ125を介してラックギヤ124に伝達される。この伝達された駆動力を受けて、ラックギヤ124が複合機1の前後方向に移動する。なお、遊星ギヤなどを用いて駆動伝達機構126のギヤ配列を切り換えることにより、ピニオンギヤ125の回転方向を切り換えて、ラックギヤ124の移動方向を前方向(図13の左方向)と後方向(図13の右方向)とに切り換えることができる。ラックギヤ124にはスライドカム123が連結されており、ラックギヤ124の移動に伴ってスライドカム123も移動する。スライドカム123には前方から後方へ下る傾斜面127を有する溝131が形成されている。この溝131において、上記傾斜面127の上方端部に上側平坦部130が設けられ、下方端部に下側平坦部129が設けられている。
キャップ支持部194は、バネ受け台196と、コイルバネ197と、キャップ保持台195とを備える。バネ受け台196は、プリンタ部2のフレームなどによって、図13の上下方向、すなわち、記録ヘッド35のノズル39に対して接離する方向にスライド可能に支持されている。バネ受け台196には、該バネ受け台196を厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔198が形成されている。この貫通孔198に、キャップ保持台195の軸199が挿入される。バネ受け台196の底部には該底部から下方に延びるリンクバー128が設けられている。このリンクバー128の下端には、上記溝131に遊びをもって嵌め入れられるピン部材132が設けられている。このピン部材132が上記溝131に嵌め入れられることにより、バネ受け台196は、スライドカム123によって、溝131の下側平坦部129から傾斜面127を経て上側平坦部130の間でスライドされる。なお、図13では、貫通孔198とリンクバー128とが重なって表されているが、これらは平面視において、図13の紙面に垂直な方向にずらして設けられている。
キャップ保持台195は、キャップ121を保持するものであり、その上面にキャップ121が取り付けられている。キャップ121は、例えば、可撓性を有する合成樹脂からなり、断面略U字状のトレイ形状を呈している。キャップ121は、その底面がキャップ保持台195の上面に接着されることによってキャップ保持台195に取り付けられる。キャップ保持台195には、該キャップ保持台195の底面の略中央付近から下方に延びる軸199が設けられている。この軸199はバネ受け台196の貫通孔198に上方から挿入される。これにより、キャップ保持台195は、バネ受け台196の上方において、図13の上下方向、すなわち、記録ヘッド35のノズル39に対して接離する方向にスライド可能に支持されている。
バネ受け台196とキャップ保持台195との間には、コイルバネ197が介在されている。このコイルバネ197は、その圧縮伸張方向を図13の上下方向、すなわち、記録ヘッド35のノズル39に対して接離する方向に一致させるように設けられている。これにより、キャップ保持台195は、コイルバネ197によって上下方向へ弾性的に支持される。図13では、2つのコイルバネ197が示されているが、図13の紙面に垂直な方向にさらに2つのコイルバネ197が設けられており、本実施形態では、合計4つのコイルバネがバネ受け台196とキャップ保持台195と間に設けられている。このため、キャップ保持台195の支持が安定する。なお、言うまでもないが、上記コイルバネ197の配置や数は適宜変更可能である。
このように構成されたキャッピング機構120においては、上記ピン部材132が溝131の下側平坦部129に位置する場合は、図13(a)に示されるように、キャップ121が記録ヘッド35のノズル面から離脱した状態、すなわち、ノズル39がキャップ121で被覆されていない非被覆状態が維持される。そして、この非被覆状態からラックギヤ124が複合機1の後方(図13の右方向)へ移動されると、ピン部材132が下側平坦部129から上側平坦部130へ移動する。これにより、リンクバー128とともにバネ受け台196がスライドカム123の傾斜面127によって押し上げられる。このようにバネ受け台196が押し上げられる過程において、キャップ121も押し上げられて、該キャップ121が記録ヘッド35のノズル面に当接する。そして、キャップ121が記録ヘッド35のノズル面に当接してからバネ受け台196がさらに押し上げられることで、コイルバネ197が圧縮される。これにより、図13(b)に示されるように、記録ヘッド35のノズル面を強く押圧する付勢力がキャップ121に付与されて、キャップ121と上記ノズル面とが隙間なく密着される。換言すれば、ノズル39がキャップ121によって被覆された状態(被覆状態)が維持される。このとき、上記付勢力によるキャップ121の撓みによって該キャップ121内の空間が正圧状態となるため、ノズル39からのインク漏れが防止される。また、図13(b)に示す被覆状態からラックギヤ124が前方へ移動されると、スライドカム123によるリンクバー128の押し上げが解除される。これにより、まず、バネ受け台196が下降し、これと同時にコイルバネ197が徐々に伸張される。そして、バネ受け台196がさらに下降すると、キャップ121が記録ヘッド35のノズル面から離脱され、バネ受け台196の下降が完了すると、図13(a)に示される非被覆状態が維持される。
上記インク供給機構80は、図4及び図6に示されるように、キャリッジ34の往復移動範囲の右側端部付近に設けられている。インク供給機構80は、キャリッジ34がガイドレール43,44の右端、すなわちインク供給位置に移動され、キャッピング機構120によってノズル39がキャップ121で被覆された際に、サブタンク37とインクカートリッジ38とのインク供給経路を形成すると共に、インクカートリッジ38からサブタンク37へインクを供給(補給)するものである。インク供給機構80は、プッシュロッド83と、雄ジョイント84と、プッシュロッド83及び雄ジョイント84を押し上げる駆動機構82(図14参照)とを備える。
図4及び図6に示されるように、雄ジョイント84は、キャリッジ34に設けられた5つの雌ジョイント63(図10参照)に連結されるものであり、雌ジョイント63に対応して5つ設けられている。この5つの雄ジョイント84は、インクカートリッジ38から引き出されたインクチューブに接続されており、これによりインクカートリッジ38と連結されている。5つの雄ジョイント84は、支持ブロック81で一体に支持されている。支持ブロック81は、雌ジョイント63と接離する方向(本実施形態では上下方向)に雄ジョイント84をスライド可能に支持する。このように、雄ジョイント84は、支持ブロック81によって上下動可能に支持されている。
プッシュロッド83は、アーム100の入力部106(図10参照)を押し上げるものであり、5つのアーム100(100A〜100E)のそれぞれの入力部106を同時に押し上げるべく、アーム100Aからアーム100Eに渡って幅広に形成されている。このプッシュロッド83は、上記雄ジョイント84よりも装置前方側において、上下可動に支持されており、入力部106に下方から当接可能である(図8参照)。プッシュロッド83は、アーム100の入力部106に当接して入力部106を押し上げる方向に駆動力を伝達することにより押圧部105を下方に駆動させる。
図14は、インク供給機構80の断面構造を示す模式断面図であり、駆動機構82が詳細に示されている。
図14に示されるように、駆動機構82は、ガイドレール44(図3参照)の下方に配設されたスライドカム85と、このスライドカム85を複合機1の前後方向(図14の左右方向)にスライドさせるピニオンギヤ86と、コイルバネ87とを備える。スライドカム85の底面には、ピニオンギヤ86と噛合可能なようにラックギヤ88が形成されている。ピニオンギヤ86は、スライドカム85の下方において、図示しないソレノイドなどにより、図14の紙面に垂直な方向に出没可能に設けられている。ピニオンギヤ86が突出した状態で該ピニオンギヤ86はラックギヤ88に噛合され、ピニオンギヤ86が没入した状態で該ピニオンギヤ86の噛合は解除される。ピニオンギヤ86がラックギヤ88に噛合した状態において、LFモータ71の駆動力がピニオンギヤ86に伝達されると、該駆動力がラックギヤ88を介してスライドカム85に伝達される。これにより、スライドカム85が複合機1の前方(図14の左方向)に移動する。スライドカム85にはコイルバネ87の一端が連結されている。このコイルバネ87の他端は複合機1のフレームなどに連結されている。コイルバネ87は、スライドカム85が前方へ移動したときに伸張されることで、スライドカム85を移動前の元の位置に戻す方向(図14の右方向)へ引き寄せるバネ力を蓄える。
スライドカム85には装置の後方から前方へ下る傾斜面90が設けられている。該傾斜面90の上方端部に上側平坦部92が設けられ、下方端部に下側平坦部91が設けられている。このスライドカム85は、支持ブロック81及びプッシュロッド83を下側平坦部91で支持する位置と上側平坦部92で支持する位置との間で移動可能に配設されている。上述したように、プッシュロッド83は、雄ジョイント84よりも装置前方側に配設されている。したがって、図14に示される状態から、スライドカム85が前方へ移動されると、まず、雄ジョイント84が傾斜面90に当接して押し上げられる。これにより、雄ジョイント84が雌ジョイント63に連結されて、インクカートリッジ38からサブタンク37へのインクの流路が形成される。すなわち、雄ジョイント84は、スライドカム85により上下動されて雌ジョイント63に下方から着脱可能である。その後、さらにスライドカム85が前方へ移動されると、次に、プッシュロッド83が傾斜面90に当接して押し上げられる。これにより、プッシュロッド83の上端が入力部106に当接して、該入力部106を上方へ押し上げる。このようにして、スライドカム85は、LFモータ71(駆動源)からの駆動力をプッシュロッド83に伝達する。
図15は、雌ジョイント63及び雄ジョイント84の構成を示すと共に、雌ジョイント63及び雄ジョイント84の連結方法を説明するための模式図である。なお、図15では、雌ジョイント63及び雄ジョイント84の一部を省略している。
雌ジョイント63は、図15に示されるように、筒状に形成されたジョイント本体150と、該ジョイント本体150の内部で軸方向に移動可能な栓部材151と、該栓部材151を付勢するコイルバネ152とを有する。この雌ジョイント63は、サブタンク37と連結されている。具体的には、ジョイント本体150の内部空間154がインクの流通経路であり、該内部空間154は、継手64(図8参照)、チューブ65、流通孔56を経てサブタンク37と連通している(図10参照)。ジョイント本体150には、雄ジョイント84のロッド161を挿通する孔153が形成されている。この孔153は、雄ジョイント84と連結される連結面155に形成されている。孔153は、ジョイント本体150の内部側から栓部材151で栓をするように閉塞される。上記栓部材151は、孔153に対して接離する方向に移動して、該孔153を閉じる閉塞状態と、該孔153を開放する開放状態とに姿勢変化される。コイルバネ152は、栓部材151を孔153側へ付勢するものであり、このコイルバネ152によって、孔153が栓部材151で閉塞された状態が保持される(図15の(a)参照)。
ジョイント本体150の連結面155には、シール部材156が設けられている。このシール部材156は、孔153の周りを囲むように設けられている。シール部材156は、雌ジョイント63と雄ジョイント84との連結時に、インクが外部に漏れることを防止するものである。このシール部材156は、例えば、ニトリルゴム(NBR)やシリコンゴム(VMQ)などで構成されており、連結時に雄ジョイント84からの押圧力によって撓む可撓性を有する。
コイルバネ152のバネ力は、サブタンク37内の圧力が大気圧未満の所定の負圧(背圧)よりも小さくなったときに、大気圧が栓部材151をジョイント本体150の内側へ押し込む力に負けて圧縮され、サブタンク37内の圧力が上記所定の負圧以上に回復したときに、大気圧が栓部材151をジョイント本体150の内側へ押し込む力に打ち勝って伸張するように設定されている。したがって、記録ヘッド34からインクが吐出されることによりサブタンク37内の圧力が徐々に低下して上記所定の負圧未満となると、孔153が開放されて、大気が該孔153からサブタンク37に流入する。そして、サブタンク37内の圧力が上記所定の負圧以上に回復すると、栓部材151がコイルバネ152で付勢されて、再び孔153が当該栓部材151によって閉塞される。このようにコイルバネ152のバネ力が上述の如く設定されているため、水頭差を利用しなくても、サブタンク37内の圧力を所定の負圧に維持することができる。これにより、記録ヘッド35のノズル39のメニスカスが好適な状態に維持される。
雄ジョイント84は、図15に示されるように、筒状に形成されたジョイント本体160と、該ジョイント本体160の内部で軸方向に移動可能なロッド161と、該ロッド161を付勢するコイルバネ162とを有する。この雄ジョイント84は、インクカートリッジ38と連結されている。ジョイント本体160の内部空間164がインクの流通経路であり、該内部空間164は、図示しないチューブを経てインクカートリッジ38に連通している。ジョイント本体160には、孔163が形成されている。この孔163は、雌ジョイント63と連結される連結面166に形成されている。孔163にロッド161が挿通されて、該ロッド161が外部に突出されている。ロッド161の外径は、孔163の内径よりも小さく設定されており、孔163にロッド161が挿通された状態でも、孔163からインクが流通可能となっている。
ロッド161の一端、すなわち、外部に突出されない側の端部には、孔163を内側から閉塞する閉塞部材165が連結されている。ロッド161は、孔163を閉塞部材165で閉塞する閉塞状態と該孔163を開放する開放状態とに姿勢変化される。コイルバネ162は、閉塞部材165を孔163側へ押し付けるように付勢するものであり、このコイルバネ162によって、孔163が閉塞部材165で閉塞されつつ、ロッド161が孔163から外部へ突出した状態が保持される(図15(a)参照)。
コイルバネ162のバネ力は、以下のように設定されている。すなわち、雌ジョイント84のコイルバネ152よりも強く設定されており、図15(b)に示されるように、雄ジョイント84が押し上げられてロッド161が栓部材151に押し付けられた場合に、コイルバネ152は圧縮されるが、コイルバネ162は圧縮されない程度に設定されている。一方、雄ジョイント84の連結面166がシール部材156に当接したときを境にして、コイルバネ152のバネ力とコイルバネ162のバネ力との力関係が逆転するように、コイルバネ162のバネ力が設定されている。すなわち、雄ジョイント84の連結面166がシール部材156に当接した状態(図15(b)参照)から、さらに雄ジョイント84が押し上げられると、シール部材156の撓み幅だけコイルバネ162が圧縮される(図15(c)参照)。したがって、雄ジョイント84が雌ジョイント63に連結されると、まず、雌ジョイント63の孔153が開放される。そして、雄ジョイント84の連結面166がシール部材156に当接した後、すなわち、連結部がシールされた後に、雄ジョイント84の孔163が開放される。このように、雌ジョイント63に雄ジョイント84が連結されることによって、インクカートリッジ38とサブタンク37との間でインクの流通経路が形成されるようになっている。
図16は、インク供給機構80による一連のインク供給手順を説明する模式図である。なお、同図では、ピニオンギヤ86は省略している。
上述の如く構成されたインク供給機構80によるサブタンク37へのインクの供給は、次に示す手順で行われる。本実施形態では、サブタンク37内のインクの残量が所定量未満となったときにインクの供給が自動的に実行される。サブタンク37内のインクの残量の検出は、例えば、サブタンク37が透明な合成樹脂などで構成されている場合は、フォトインタラプタなどの光学センサをキャリッジ34に設け、該光学センサの出力に基づいて制御部が所定量未満かどうかを判断する。或いは、ドットカウンタによるカウント値に基づいてインクの残量を求めてもよい。インクの残量が所定量未満であると判断されると、制御部によりキャリッジ34が、図3及び図5に示される位置、すなわち、インク供給位置に移動される。このとき、記録ヘッド35のノズル39がキャップ121のほぼ真上に位置するようにキャリッジ34が移動される(図16(a)参照)。
次に、移動機構122(図13参照)によってキャップ121を上方へ移動させて、記録ヘッド35の下面にノズル39を密閉するようにキャップ121を密着させる(図16(b)参照)。これにより、ノズル39が塞がれるため、インク供給時にノズル39からインクが漏洩することはない。キャップ121の移動に並行して、駆動機構82によって、スライドカム85を装置の前方(図16の左方向)へ移動させる。かかる移動は、ピニオンギヤ86(図14参照)とスライドカム85のラックギヤ88とを噛合させて、LFモータ71の駆動力をスライドカム85に付与することで行われる。このとき、スライドカム85の傾斜面90によって、まず最初に、雄ジョイント84が上方へ押し上げられて、雌ジョイント63と連結する(図16(b)参照)。これにより、インクカートリッジ38とサブタンク37とが連結されて両タンク間でインクの流通経路が形成される。
さらにスライドカム85が装置の前方へ移動されると、続いて、プッシュロッド83が傾斜面90によって上方へ押し上げられる。このとき、アーム100の入力部106に前方アーム104を下方から上方へ押し上げる力が作用して、当該力によってアーム100がシーソー運動する。これにより、後方アーム103の押圧部105がサブタンク37の上面のプレート55を押し下げる。換言すれば、サブタンク37の上面部52を押し下げる。これにより、図16(c)に示されるように、サブタンク37が圧縮されて、該サブタンク37内のインクや空気などが流通孔56から排出されて、インクカートリッジ38へ押し流される。なお、インクカートリッジ38に通気口を設けておくことで、インクカートリッジ38に押し流されるインクの流通を円滑に行うことができる。
サブタンク37内のインクがほぼ完全に排出されると、続いて、スライドカム85が装置の後方(図16の右方向)へ移動される。かかる移動は、ピニオンギヤ86とラックギヤ88とのを噛合を解除して、コイルバネ87のバネ力をスライドカム85に付与することで行われる。このとき、スライドカム85の傾斜面90によって、まず、プッシュロッド83が下降される。これにより、プッシュロッド83が前方アーム104の入力部106から離反すると同時に、サブタンク37に作用していた押圧力が除去される。したがって、サブタンク37は弾性復元して、元の形状に復帰する。このとき、図16(d)に示されるように、インクカートリッジ38からインクが吸い込まれる。
さらにスライドカム85が装置の後方へ移動されると、続いて、雄ジョイント84が下降される。これにより、雄ジョイント84と雌ジョイント63との連結が解除される(図16(e)参照)。このとき、雌ジョイント63の孔153から少量の空気が内部に入り込み、サブタンク37が若干伸張して、雌ジョイント63から流通孔56までのインク経路に溜まったインクがサブタンク37内に流入する。
このような手順に従って、インクカートリッジ38内のインクがサブタンク37内に供給される。サブタンク37内のインク及び空気のほとんどがインクカートリッジ38に戻されてからサブタンク37が弾性復元されるので、常に定量のインクをサブタンク37に供給することができる。
上記メンテナンス機構140は、図3〜図6に示されるように、キャリッジ34の往復移動範囲の左側端部付近に設けられている。メンテナンス機構140は、図4及び図6に示されるように、キャリッジ34がガイドレール43,44の左端、すなわちメンテナンス位置に移動された際に、正圧パージ或いはフラッシングなどによるインクの空吐出を行うことによって、記録ヘッド35のノズル39、或いはサブタンク37からノズル39までのインクの流路に溜まったスラッジや気泡を除去(パージ)するものであって、ワイパー146(図3参照)と、廃インクトレイ141(図3参照)と、プッシュロッド142と、このプッシュロッド142を押し上げる駆動機構143とを備える。
廃インクトレイ141(本発明の廃インク受け部に相当する)は、プラテン28の上面と同一面上であって、キャリッジ34の往復移動範囲内且つ画像記録範囲外に設けられている。廃インクトレイ141は、アーム100によってサブタンク37が押圧されることにより記録ヘッド35から吐出されるインクを受けるものである。そのため、廃インクトレイ141内にはフェルト等の液体吸収体が敷設されており、吐出されたインクは、該液体吸収体に吸収されて保持される。廃インクトレイ141には、記録ヘッド35のノズル面を拭き取るワイパー146が設けられている。ワイパー146が記録ヘッド35に押し当てられた状態で、図示しない駆動機構によって装置の前後方向にスライドされることにより、ノズル面に付着した余剰インクが拭き取られる。
プッシュロッド142は、アーム100の入力部106を押し上げるものである。このプッシュロッド142は、5つのアーム100(100A〜100E)のうち、選択された一つのアーム100の入力部106を他のアーム100とは独立して押し上げるべく、入力部106の幅と略同じ幅に形成されている。このプッシュロッド142は、入力部106の鉛直下方において上下方向にスライド可能に支持されている。
図17は、メンテナンス機構140の断面構造を示す模式断面図であり、駆動機構143が詳細に示されている。
図17に示されるように、駆動機構143は、ガイドレール44(図3参照)の下方に配設されたスライドカム144と、このスライドカム144を複合機1の前後方向(図22の左右方向)にスライドさせるピニオンギヤ145と、コイルバネ147とを備える。スライドカム144の底面には、ピニオンギヤ145と噛合可能なようにラックギヤ148が形成されている。ピニオンギヤ145は、スライドカム144の下方において、図示しないソレノイドなどにより、図17の紙面に垂直な方向に出没可能に設けられている。ピニオンギヤ145が突出した状態で該ピニオンギヤ145はラックギヤ148に噛合され、ピニオンギヤ145が没入した状態で該ピニオンギヤ145の噛合は解除される。ピニオンギヤ145がラックギヤ148に噛合した状態において、LFモータ71の駆動力がピニオンギヤ145に伝達されると、該駆動力がラックギヤ148を介してスライドカム144に伝達される。これにより、スライドカム144が複合機1の後方(図17の左方向)に移動する。スライドカム144にはコイルバネ147の一端が連結されている。このコイルバネ147の他端は複合機1のフレームなどに連結されている。コイルバネ147は、スライドカム144が前方へ移動したときに伸張されることで、スライドカム144を移動前の元の位置に戻す方向へ引き寄せるバネ力を蓄える。
スライドカム144には装置の後方から前方へ上がる傾斜面135が設けられている。該傾斜面135の上方端部に上側平坦部136が設けられ、下方端部に下側平坦部137が設けられている。このスライドカム144は、プッシュロッド142を下側平坦部137で支持する位置と上側平坦部136で支持する位置との間で移動可能に配設されている。上述したように、プッシュロッド142は、上下方向にスライド可能に支持されている。したがって、図17に示される状態から、スライドカム144が後方(図17の左方向)へ移動されると、プッシュロッド142が傾斜面135に当接して押し上げられる。これにより、プッシュロッド142の上端が上記入力部106に当接して、該入力部106を上方へ押し上げる。
図18は、メンテナンス機構140による一連のメンテナンスの手順を説明する模式図である。なお、同図では、ピニオンギヤ145は省略している。
上述の如く構成されたメンテナンス機構140による記録ヘッド35のメンテナンスは、次に示す手順で行われる。本実施形態では、サブタンク37内にメンテナンスに費やされる十分な量のインクが残存しているときにのみメンテナンスが行われる。したがって、インクの残量が少ないときにメンテナンス指示が入力された場合は、上述した手法でサブタンク37へインクが供給された後にメンテナンスが実行される。
まず、ドットカウンタのカウント値等に基づいてインクの残量が十分であると判断されると、制御部によりキャリッジ34が、図4及び図6に示される位置、すなわち、メンテナンス位置に移動される。このとき、メンテナンス指示の入力の際にメンテナンスを行うインク色が指定されている場合は、指定されたインク色に対応するアーム100とプッシュロッド142とが平面視で一致するようにキャリッジ34が移動される。また、記録ヘッド35のノズル39が廃インクトレイ141のほぼ真上に位置するようにキャリッジ34が移動される(図18(a)参照)
次に、駆動機構143によって、スライドカム144を装置の後方(図18の左方向)へ移動させる。かかる移動は、ピニオンギヤ145(図17参照)とスライドカム144のラックギヤ148とを噛合させて、LFモータ71の駆動力をスライドカム144に付与することで行われる。このとき、スライドカム144の傾斜面135によって、プッシュロッド142が上方へ押し上げられる。このとき、予め指定されたインク色に対応するアーム100の入力部106に前方アーム104を下方から上方へ押し上げる力が作用して、当該力によってアーム100がシーソー運動する。これにより、後方アーム103の押圧部105がサブタンク37の上面のプレート55を押し下げる。そのため、図18(b)に示されるように、サブタンク37が収縮されて、該サブタンク37内のインクや空気などが流通孔57から強制的に排出されて、インク供給路51を経て指定されたインク色に対応するノズル39からインクが噴出される。噴出されたインクは、廃インクトレイ141に排出される。これにより、サブタンク37からノズル39までのインクの流路に溜まったスラッジや気泡が除去(パージ)される。以下、かかる除去処理を正圧パージと称する。
上述の正圧パージが完了すると、スライドカム144が装置の前方(図18の右方向)へ移動される。かかる移動は、ピニオンギヤ145とラックギヤ148とのを噛合を解除して、コイルバネ147のバネ力をスライドカム144に付与することで行われる。このとき、スライドカム144の傾斜面135によって、プッシュロッド142が下降される。これにより、プッシュロッド142が前方アーム104の入力部106から離反すると同時に、サブタンク37に作用していた押圧力が解除される。したがって、サブタンク37は伸張して、元の形状に復帰する(図18(c)参照)。このとき、サブタンク37内の圧力が所定の負圧未満となることにより、雌ジョイント63のコイルバネ152が圧縮されて、孔153から空気が流入する。なお、ノズル39は微小孔であるため、孔153から空気が流入することはあっても、該ノズル39から空気が流入することはない。
また、正圧パージの完了後に、ワイパー146が駆動されることにより、インクの噴射によってノズル面に付着したインクが拭い取られる(図18(d)参照)。以下、かかる動作をワイピングと称する。このワイピングが行われることによって、ノズル面におけるインクの混色が防止される。
上記ワイピングがなされると、ノズル39に他のインクが入り込む。そのため、上記ワイピングがなされた後は、所謂フラッシングと称する微量インクの空吐出が行われる(図18(e)参照)。このフラッシングは、圧電素子114(図12参照)を制御することにより行われる。
このような手順に従って、記録ヘッド35がメンテナンスされるため、サブタンク37からノズル39までのインクの流路の洗浄、記録ヘッド35内の気泡やスラッジ、混色インクの除去、ノズル面の乾燥防止などのメンテナンスが行われる。また、指定されたインク色に対応する流路のみの正圧パージが可能であるため、従来のように全色パージを行う場合に比べてメンテナンス時のインクの消費量を低減させることができる。
図19は、タンク収容室50を示す概略平面図である。図20は、図19における切断線XX−XXの断面図である。なお、説明の便宜上、図19においては、アーム100が取り外された状態が示されている。
タンク収容室50の幅方向(図19においては左右方向)両側には、タンク収容室50の底面から立設された外壁66(図9、図19、及び図20参照)が設けられている。外壁66は、タンク収容室50の幅方向の両端に、タンク収容室50の奥行き方向(図19においては上下方向)を長手方向とするものである。この外壁66の高さは、サブタンク37が収縮されていない状態におけるプレート55の位置(高さ)よりも若干高くなるように設定されている(図20参照)。また、上記タンク収容室50の内部には、隣接する2つのサブタンク37の間に、内壁67(本発明の壁部材に相当する)が設けられている。本実施形態においては、タンク収容室50に5つのサブタンク37(37A〜37E)が設けられているので、内壁67は、キャリッジ34の往復移動方向(図19における左右方向)に4つ並設されている(図19及び図20参照)。内壁67は、幅方向(図19においては上下方向)の長さがサブタンク37の幅方向(図19においては上下方向)の長さよりも若干長い平板状のものである。この内壁67の高さは、サブタンク37が収縮されていない状態におけるプレート55の位置(高さ)と略同じ高さとなるように設定されている。外壁66とサブタンク37の側面部54との間、及び内壁67とサブタンク37の側面部54との間には、所定の間隔(例えば、2ミリメートル程度の間隔)が設けられている。この間隔が設けられていることにより、少なくともサブタンク37の側面部54が外壁66又は内壁67に接触しないようにタンク収容室50が構成されている。
このように、タンク収容室50にはその両側に外壁66が設けられているので、外壁66によってサブタンク37(37A及び37E)の側方への傾倒が防止される。また、サブタンク37間には内壁67が並設されているので、キャリッジ34の往復移動中にサブタンク37同士が接触して記録ヘッド35からの良好なインクの吐出が妨げられることが防止される。
サブタンク37は、平板状の上面部52及び底面部53を有し、さらに、側面の全周がベローズ形状(蛇腹形状)に形成された側面部54(胴部)を有する。この構成により、サブタンク37は、アーム100からの押圧力を受けて収縮する際に、ベローズ形状の側面部54が水平方向の外側へ膨らむように変形することがある(以下、このような変形を「膨張変形」ともいう。)。サブタンク37は、上記のように側面視において横長のものであり、横幅の短い略直方体形状を呈しているので、側面視における幅方向(図10においては左右方向、図19においては上下方向)の略中央の部分が最も変形しやすい。側面部54のうち、上記最も変形しやすい部分の変形を抑制するために、タンク収容室50には規制部材68が設けられている。
図21は、図19におけるI部の拡大平面図である。
図19〜図21に示されるように、規制部材68は、図20における上下方向(サブタンク34の伸縮方向)を長手方向とする平板状のものである。規制部材68は、側面部54における幅方向(図19においては上下方向)の略中央と対向するように、外壁66又は内壁67に固定されている(図20参照)。すなわち、本実施形態においては、規制部材68は、外壁66又は内壁67によって支持されている。なお、規制部材68は、必ずしも外壁66又は内壁67と別個の部材として構成される必要はなく、外壁66又は内壁67と一体成形されてもよい。また、規制部材68は、タンク収容部50の底面に固定されてもよい。この規制部材68は、外壁66又は内壁67と対向する面とは反対側に、平面69(本発明におけるガイド面)を有している(図20及び図21参照)。
規制部材68は、平面69と反対側の面が外壁66又は内壁67に当接するように固定されている。これにより、平面69は、側面部54における幅方向の略中央(図19においては上下方向)に近設されている。換言すれば、平面69は、側面部54における幅方向の略中央と近接するように所定の距離(例えば、0.5mm〜1mm程度)を隔てて対向配置されている。ここで、上記所定の距離は、以下のように設定されている。すなわち、上記所定の距離は、サブタンク37が外側へ膨張変形していない状態では平面69が該側面部54によって当接されず、サブタンク37が外側へ膨張変形した状態では平面69が該側面部54によって当接されるように設定されている。側面部54が外側へ膨張変形する度合い(距離)は、サブタンク37の大きさ、サブタンク37の形状(特に、サブタンク37の側面視における幅)、側面部54を構成する部材の材質等によって異なる。したがって、上記所定の距離は、これらの条件に応じて適宜変更される。上記所定の距離は、外壁66又は内壁67とサブタンク37との距離を変えるか、或いは規制部材68の厚さを変えることにより変更可能である。
規制部材68は、サブタンク37A〜37Eに対して、それぞれサブタンク37を挟んで一対が設けられている。本実施形態においては、サブタンク37を挟んでキャリッジ34の往復移動方向(図19においては左右方向)に一対の規制部材68が対向配置されている。換言すれば、規制部材68は、外壁66と側面部54との間、及び内壁67と側面部54との間に設けられている(図20参照)。なお、規制部材68は、少なくとも平面69が側面部54における幅方向(図19においては上下方向)の略中央に近設されていれば、さらに他の位置に設けられてもよい。例えば、図19に示されている規制部材68に加えて、該規制部材68の両側(図19においては上側と下側)に2つの規制部材が設けられていてもよい。ただし、タンク収容室50に設置される規制部材68の数が多くなるにしたがって、サブタンク37が膨張変形した際に平面69から受ける摺動負荷が大きくなるので、規制部材68は、このことを考慮して設けられることが好ましい。
図19及び図20に示されるように、規制部材68は、収縮されていない状態のサブタンク37(プレート55を除く)の位置(高さ)と略同じ高さを有している。すなわち、サブタンク37の側面部54の側方には、上記平面69が配置されている。また、規制部材68は、その幅方向(図19の上下方向)の長さがサブタンク37の高さよりも短くなるように構成されている。すなわち、規制部材68の平面69は、上下方向、換言すれば、サブタンク37の伸縮方向(図20においては上下方向)を長手方向とするものである。
サブタンク37は、側面部54がベローズ形状に構成されているので上下一方向に弾性変形可能である。そのため、サブタンク37は、アーム100によって上方(図20における上側)から押圧力が付与されることにより収縮し、押圧力が除去されることにより弾性復元される。サブタンク37は、このように構成されているので、インク供給、正圧パージ、フラッシングなどのためにアーム100からの押圧力を受けた際に、安定姿勢で収縮されず側面部54が膨張変形するおそれがある。具体的には、側面部54が上下方向に正しく収縮せずに、側面部54が外側へ膨らむように変形するおそれがある。特に、孔153(図15参照)が閉塞された状態で押圧力を受けた場合は、側面部54は膨張変形しやすい。この膨張変形が顕著な箇所は、サブタンク37の側面部54における幅方向(図19における上下方向)の略中央の部分である。この略中央の部分には、上記のように規制部材68の平面69が近接するように設けられている(図20参照)。そのため、サブタンク37が収縮されて側面部54が膨張変形すると、側面部54が規制部材68の平面69に当接する。これにより、収縮時の側面部54の膨張変形が規制部材68の平面69により抑制されるので、安定した姿勢でサブタンク37を収縮させることができ、サブタンク37を押圧した際のサブタンク37の収縮量のばらつきが低減される。したがって、インクカートリッジ38からサブタンク37にインクを定量供給したり、インクを無駄にすることなく記録ヘッド35のクリーニング(正圧パージ)を行うこと等が可能である。
また、規制部材68の平面69は、サブタンク37の側面部54における幅方向の略中央に近接する位置にのみ設けられている。これにより、平面69が他の位置にも設けられている場合に比べて側面部54と平面69との接触面積が減少するので、サブタンク37にかかる摺動負荷を低減させてサブタンク37を円滑に伸縮させることが可能である。
また、図19に示されるように、規制部材68は、サブタンク37の側面部54と対向する平面69が上下方向を長手方向として設けられている。したがって、規制部材68が水平方向を長手方向とするものである場合に比べて、サブタンク37が収縮されたときにの側面部54と規制部材68との当接面積が減少される。その結果、サブタンク37にかかる摺動負荷が減少され、サブタンク37を円滑に伸縮させることができる。また、平面69が側面部54に対向しているので、サブタンク37の横倒れが防止される。
規制部材68は、本実施形態においては、上記のようにサブタンク37を挟んでキャリッジ34の往復移動方向に対向されてキャリッジ34に設けられている。そのため、規制部材68が対向配置されていない場合に比べて、サブタンク37が収縮された際のサブタンク37の膨張変形がより効果的に防止される。加えて、キャリッジ34が往復移動される過程におけるサブタンク37の横揺れが規制部材68によって抑制され、キャリッジ34を安定して往復移動させることができる。
図22は、本発明におけるガイド面が側面部54に沿って曲面形状に構成された規制部材68を示す拡大平面図である。
図22に示されるように、規制部材68が有するガイド面は、曲面形状に構成されていてもよい。この規制部材68が有する曲面94(ガイド面の変形例)は、側面部54の幅方向(図19における上下方向)の略中央に対応する箇所が側面部54へ向けて最も突出するように、側面部54の幅方向に向けて曲面形状に構成されている。この構成により、側面部54のうちの最も膨張変形しやすい箇所にのみ曲面94が当接するので、ガイド面が平面である場合に比べて、サブタンク37にかかる摺動負荷をさらに低減させることができる。
図23は、本発明におけるガイド面が上下方向に曲面形状に構成された規制部材68を示す拡大断面図である。
図23に示されるように、この規制部材68が有する曲面96(ガイド面の変形例)は、側面部54の上下方向(図20においては上下方向)の略中央に対応する箇所が側面部54へ向けて最も突出するように、上下方向に向けて曲面形状に構成されている。この構成により、側面部54の幅方向の略中央の中でも最も膨張変形しやすい箇所(上下方向の中央)にのみ曲面96が当接するので、曲面94と同様に、サブタンク37にかかる摺動負荷を低減させることができる。
なお、図22及び図23に示される規制部材68は、ガイド面が曲面形状に構成されている点を除いて、平面69を有する規制部材68と同様に構成されている。ここでは、平面69の変形例として、規制部材68のガイド面が曲面形状に構成されている場合について説明したが、ガイド面の形状は平面や曲面に限定されるものではない。ガイド面は、例えば球面形状に形成されていてもよい。ただし、側面部54がベローズ形状に構成されている場合には、側面部54へ向けて凹凸のない形状であることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の形態であってもよい。すなわち、本実施形態においては、規制部材68の平面69が上下方向を長手方向とするものである場合について説明したが、規制部材68の平面69はこれに限定されるものではない。規制部材68の平面69は、例えば水平方向を長手方向とするものであってもよい。ただし、規制部材68の平面69を上下方向を長手方向とするものとした場合、サブタンク37の横倒れが防止され、またサブタンク37が規制部材68から受ける摺動負荷が小さくなる。そのため、規制部材68の平面69は上下方向を長手方向とするものであることが好ましい。
また、本実施形態においては、規制部材68がサブタンク37を挟んでキャリッジ34の往復移動方向に対向配置されている場合について説明したが、規制部材68は、必ずしもキャリッジ34を挟んでキャリッジ34の往復移動方向に対向配置されている必要はない。例えば、規制部材68は、キャリッジ34を挟んで記録用紙の搬送方向に対向配置されてもよい。また、1つのサブタンク37に対して設けられる規制部材68の数は一対(2つ)に限定されるものではなく、1つであってもよいし、或いは3つ以上であってもよい。
また、本実施形態においては、タンク収容室50に内壁67及び規制部材68が設けられているが、内壁67は必ずしも設けられる必要はなく、規制部材68のみが設けられる形態であってもよい。
また、本実施形態においては、サブタンク37がキャリッジ34に搭載されているので規制部材68がキャリッジ34に設けられているが、サブタンク37及びキャリッジ34は必ずしもキャリッジ34に搭載される必要はなく、装置本体8に設けられてもよい。