本発明は、各種施設の出入り口に装備することができる扉装置に関する。
従来の扉装置は、回動自在または側方へスライド自在に扉を支持する扉装置であって、通行者が押したり引いたりする力を扉に作用させることによって通路を開放するように構成された手動式の扉装置がある。また、扉を移動または回転させる駆動機構を備えた扉装置であって、駆動機構を制御することで通路の開放を自動で行う自動式の扉装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−316249号公報
しかし、手動式の扉装置では、通行者が扉装置を通過するときにも、通路を閉塞するために扉を押し引きしなければならず手間がかかる。この動作は、特に車椅子で移動する通行者にとっては不便である。また、自動式の扉装置では扉を駆動するための電動モータ等の動力源を備えるため、コスト高や設置スペースの増大等を招く。さらに、手動式や自動式に関わらず、扉をスライド移動させる扉装置にあっては戸袋を設ける必要があるため設置場所が限定させる。
本発明はこのような実情に着目してなされたものであって、設置スペースを抑制し、かつ、動力源を備えることなく、簡易に通路を開閉することができる扉装置を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、通路を開閉する扉と、前記扉の側端部側を中心にして回転可能、かつ、通路方向に前後移動可能に前記扉を支持して、前記扉を通路方向前方へ開放揺動する開放移動、前記扉を通路方向後方へ移動させる後方への移動、および、前記扉を通路方向前方へ閉じ揺動させる閉塞移動を一連に行わせ、開放移動した扉を通行物の背後に回り込ませつつ閉塞位置に案内する案内支持機構と、前記扉の開放移動に応じてエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーによって扉を閉塞位置に移動させるエネルギー蓄積手段と、を備えたことを特徴とする扉装置である。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、扉の開放移動、後方への移動、および、通行物の背部へ回り込んでの閉塞移動を一連に行わせ、単一の通行物のみの通過を許容する。また、扉は通行物の背部へ回り込んで閉塞揺動するので、通行物の通過が容易である。さらに、エネルギー蓄積手段を備えることで、別途動力源を備えることなく、通行物が扉を閉める手間を省くことができる。
この発明において、前記扉を、その扉面が通路の壁に沿った姿勢で前後移動可能に構成してあることが好ましい(請求項2)。これによれば、開放した扉が通行物の背部に移動するために要する平面スペースが通路壁に沿った薄いものとなり、通路の有効幅を大きく確保することができる。
この発明において、前記エネルギー蓄積手段は、前記扉の開放移動に応じて変形し、その復原力によって前記扉をその閉塞位置方向に付勢する弾性体であることが好ましい(請求項3)。弾性体によれば、簡易かつ適切にエネルギー蓄積手段を構成することができる。
この発明において、前記弾性体は、前記扉の平面視における長手方向の略中央に付設されていることが好ましい(請求項4)。適切に扉をその閉塞位置方向に付勢することができる。
この発明において、前記扉における上下端の少なくとも一方に、前記扉の平面視における長手方向に扁平な環状に形成された、一定厚さの案内レールを備えるとともに、前記案内支持機構は、一定間隔をもって対向して設けられるガイド部材を備え、前記ガイド部材で前記案内レールを内外からスリップ不能に接触支持し、前記案内レールと前記扉とを一体に開閉揺動可能および前後移動可能に構成してあることが好ましい(請求項5)。これによれば、ガイド部材と案内レールとの接触点が決まると、その接触点における案内レールの最小厚さ方向が一対のガイド部材とを結ぶ中心線に一致するように案内レールの姿勢、つまり、扉の姿勢が一義的に決められることになる。このため、ガイド部材が案内レールの端部付近に接触して回転する状態では扉は大きく揺動されることになり、また、ガイド部材が案内レールの長手方向に沿った略直線状の部位に接触して回転する状態では扉はその長手方向に移動されることになる。したがって、この構成によると、本発明を好適に実施することができる。
この発明において、前記案内支持機構は、前記扉の側端部側近くの縦軸心周りに回転可能に設けられる回転体と、前記扉にスリップ不能に巻回されるとともに、前記回転体に巻掛けられる無端帯と、前記回転体と前記扉との間の一定位置において前記無端帯を案内する一対のガイドローラと、を備え、前記無端帯を回動自在として、前記扉を開閉揺動可能および前後移動可能に構成してあることが好ましい(請求項6)。これによれば、無端帯は回動自在に構成されているので、扉は開閉揺動可能および前後移動可能である。このとき、扉の動きは一対のガイドローラによって規制される。すなわち、一対のガイドローラの中心付近における、扉の平面視したときの外接線が、一対のガイドローラを結ぶラインと常に略平行となるように規制される。このため、扉は前方に開放揺動されながら後方に移動して通路壁に沿った開放姿勢になり、更に、扉が後方に移動しながら前方に閉塞揺動され、扉の左右端が逆転した閉塞姿勢となる。
この発明において、さらに、前記扉の平面視における長手方向の両側端を結ぶ軸上にスライド可能に設けられる第1軸受け部と、閉塞位置にあるときの前記扉の平面視における長手方向と平行にスライド可能に設けられる第2軸受け部と、を備え、前記第1軸受け部と前記第2軸受け部とを遊転自在に連結して、前記扉を開閉揺動および前後移動可能に保持する保持機構を構成したことが好ましい(請求項7)。これによれば、扉が倒れることを防止することができる。
この発明において、前記扉の上下端の少なくとも一方に、前記扉の平面視における長手方向の両側端部に凸部が形成されているとともに、前記案内支持機構は、通路の一側方を通る垂直な1軸周りに回転可能に設けられ、かつ、扉の中央部と遊転自在に連結される腕部材と、閉塞位置における前記扉の前記1軸近傍の凸部を前記1軸と同心周りに遊転自在に係り止めし、前記扉を回動自在とするとともに、前記扉が開放位置に至ると前記1軸近傍の凸部の係り止めを解除する切欠きが形成されている係り止め部と、開放位置における前記扉の前記1軸から遠い方の凸部と係合し、この係合した凸部を前記係り止め部まで摺動案内可能な溝部と、を備え、前記扉を通路方向に移動させつつ、閉じ揺動可能に構成してあることが好ましい(請求項8)。これによれば、開放位置における扉は、通路方向にスライドしつつ、閉じ揺動するので、扉の可動範囲を小さくすることができる。
なお、本明細書は、次のような扉装置に係る発明も開示している。
(1)前記エネルギー蓄積手段は、一端に重りが吊り下げられたワイヤを滑車に掛けまわし、前記ワイヤの他端を前記扉に取り付けた滑車機構であり、前記重りに働く重力によって前記扉をその閉塞位置方向に付勢することを特徴とする扉装置。
前記(1)に記載の発明によれば、滑車機構によって簡易かつ適切にエネルギー蓄積手段を構成することができる。
この発明に係る扉装置によれば、扉の開放移動、後方への移動、および、通行物の背部へ回り込んでの閉塞移動を一連に行わせ、単一の通行物のみの通過を許容する。また、扉は通行物の背部へ回り込んで閉塞揺動するので、通行物の通過が容易である。さらに、エネルギー蓄積手段を備えることで、別途動力源を備えることなく、通行物が扉の閉める手間を省くことができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1、図2、図3は、それぞれ実施例1に係る自動扉の側面図、平面図、正面図である。
実施例1に係る扉装置Gは、公共施設や商業施設、または病院等の各種施設の通路の開閉に利用されるものを示している。この扉装置Gは、通路Tを開閉する左右一対の扉1によって構成されている。扉1の上方には、通路Tを横切るように上枠2が設けられており、この上枠2内には、上支持機構3が配備されている。また、扉1の下方位置には、通路Tに埋設されるように下支持機構5が配備されている。これら上支持機構3と下支持機構5は、各扉1の側端部側を中心として回転可能、かつ、通路方向に前後移動可能に扉1を支持している。これにより、扉1は開閉揺動自在および前後移動自在に構成される。上支持機構3と下支持機構5はともに、この発明における案内支持機構に相当する。
図4は、扉1の開閉構造を示す斜視図である。扉1の上端には扉長手方向に沿う扁平な環状楕円形状に形成された一定厚さの案内レール4が上向きに備えられている。また、上支持機構3は、通路側箇所に一定間隔をもって平行に対向配備された1対のローラ状のガイド部材6、7を遊転自在に備えている。そして、前記案内レール4は、その外側がガイド部材6に当接され、その内側がガイド部材7に当接されて、回動自在に挟持されている。
また、扉1の下端面にも同仕様の案内レール8が下向きに備えられている。下支持機構5は、通路床面上に上記したガイド部材6、7とそれぞれ同芯である1対のローラ状のガイド部材9,10を遊転自在に備えている。そして、案内レール8がこれらガイド部材9,10で内外から挟持されている。
ここで、ガイド部材6、7と案内レール4との間、および、ガイド部材9、10と案内レール8との間は、それぞれ相対スリップなく接触されていることが必要である。その手段の一例として、図5に案内レール4およびガイド部材6、7についての要部を例示する。図5に示すように、案内レール4の外側に当接するガイド部材6の外周面にギヤ部11を形成するとともに、このギヤ部11に噛み合うギヤ部12を案内レール4の外周全長に形成する構造が有効である。
上記構成によると、ガイド部材6と案内レール4との接触点が決まると、その接触点におけるレール最小厚さ方向がガイド部材6、7とを結ぶ中心線Lに一致するように案内レール4の姿勢、つまり、扉1の姿勢が一義的に決められることになる。
なお、ガイド部材9、10と案内レール8との当接部は、図示を省略するが、図4に示すように構成することが好ましい。
また、扉1の扉長手方向の略中央には、伸張ばね13が付設されている。扉1の上端には、その扉長手方向の略中央にばね支持片14が回動自在に立設されている。また、上枠2の略中央には、止め具15が設けられている。伸張ばね13は、一端がばね支持片14に係止され、他端が止め具15に取り付けられている。なお、止め具15は、左右の扉1に付設されている2本の伸張ばね13を支持している。伸張ばね13は、この発明における弾性体に相当する。
次に、この扉装置Gの動作を、図6〜図12の行程図に基づいて説明する。
扉装置Gが閉じられた状態(図6または図12に示される状態)では、各扉1は閉塞位置にある。このとき、各扉1における案内レール4における一端の頂部がガイド部材6、7とで挟持された状態にあり、案内レール8における一端の小曲率の頂部(端部)がガイド部材9、10とで挟持された状態にある。また、図6から図12において、通行者などの通行物Mが扉装置Gを左から右に通過するものとする。
図7において、通行者などの通行物Mが1対の扉1を進行方向に押圧する。なお、図7等において、通行物Mによって扉1に作用する力Fを模式的に示す。これにより、ガイド部材6、7およびガイド部材9、10に狭持されている案内レール4、8の頂部を中心点として扉1は、案内レール4、8と一体に通路Tの進行方向へ開放揺動する。このとき、1対のガイド部材6、7も、扉1の開放揺動に応じて転動することで扉1の回転を許容している。また、この扉1の開放揺動により、ばね支持片14と止め具15との距離が長くなり、伸張ばね13が伸張変形する。これにより伸張ばね13に蓄積される復原力によって、各扉1は止め具15の方向に付勢される。
図8に示すように、さらに、通行物Mが力Fを扉1に作用させることによって、扉1の扉面が通路壁に沿う姿勢(扉1の長手方向の面が通路壁と略平行となる状態)に至る。
図9において、通行物Mは、進行方向と反対側の向きの力Fを扉1に作用させる。これにより、扉1は開放姿勢のまま通行物Mの邪魔になることなく通路壁に沿って後方へ移動する。この進行方向と反対側の向きの力Fは少なくとも、ガイド部材6、7と案内レール4との接触点に対して扉長手方向の中心が進行方向と反対側となるまで作用し続ける。
図10において、ガイド部材6、7と案内レール4との接触点に対して扉長手方向の中心が進行方向と反対側となると、通行物Mは扉1から離れて、扉1に何も力を作用させない状態にする。このとき、扉1に作用する力は、伸張ばね13の復原力のみであり、この復原力は止め具15の方向に働く。このような復原力にしたがって、ガイド部材6、7と案内レール4との接触点が案内レール4の他方の頂部付近に至るとともに、ガイド部材9、10と案内レール8との接触点が案内レール8の他方の頂部付近に至る。
図11において、伸張ばね13の復原力にしたがって、扉1はさらに、ガイド部材6、7(9、10)と案内レール4(8)との接触部位を中心にして急速に前方へ閉じ揺動され、すばやく通行物Mの背後に回り込んで通路Tを閉じる閉塞位置に移動する(図12)。
以上のように、この例の扉装置Gでは、通行物Mが扉1を開放させる際、扉1の開放移動に応じて伸張ばね13を伸張変形させ、扉1を閉塞位置方向に付勢する復原力を伸張ばね13に蓄積させる。そして、伸張ばね13の復原力によって扉1を閉じ移動させるように構成したので、通行物Mが扉1を閉じ移動させる手間を省くことができる。また、伸張ばね13を備えることで、モータ等の動力源を別途備えることなく、簡易な構成とすることができる。さらに、上支持機構3と下支持機構5とは、開放移動した扉1を通行物Mの背後に回り込ませつつ閉塞位置に案内するので、通行物Mの通過を妨げることがない。
図13、図14は、実施例2に係る扉装置の平面図、正面図であり、図15は扉装置の保持機構を示す拡大図、図16は、実施例2の扉の開閉構造を示す斜視図であり、図17(a)、(b)は、実施例5の扉の開閉構造を示す平面図である。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
この例における扉1の上端および下端には、扉長手方向に扁平な楕円形状に形成された案内部21が備えられ、各案内部21に無端帯22が巻回されている。また、扉1の側方であって扉1の側端部近くの所定位置には、回転体23が縦軸心周りに回転可能に設けられている。この回転体23には、各案内部21に巻回された無端帯22が巻き掛けられている。さらに、回転体23と扉1との間の一定位置において、回転体23に対する無端帯22の巻き掛けを案内する前後一対のガイドローラ24が備えられている。ガイドローラ24は、互いに近接する向きにスライド可能に設けられ、かつ、図示省略のバネ部材によってそれぞれ近接する向きに付勢されており、無端帯22を適度な力で押圧している。このように、無端帯22を回動自在に構成することで、扉1の開放揺動および前後移動を許容している。これら、無端帯22と回転体23とガイドローラ24が扉1を支持する案内支持機構を形成している。
ここで、案内部21と無端帯22は相対スリップなく接触されていることが必要である。その手段の一例として、図17に例示する。図示するように、無端帯22を内周に歯部25を備えた歯付きベルト(タイミングベルト)で構成するとともに、この歯部25に噛み合う歯部26を案内部21の外周全長に形成する構造が有効である。また、回転体23も無端帯22に噛み合う歯部27を備えることが望ましい。
また、一対のガイドローラ24は、通路Tと同じ方向に並ぶように配置されることが望ましい。そして、これらガイドローラ24間の中心点と回転体23とを結ぶラインが、通路Tと直角になるように、回転体23との関係でガイドローラ24が配置されることが望ましい。また、両ガイドローラ24間の離隔は、扉1の厚さ(扉1の短軸方向の長さ)より小さいことが望ましい。これにより、扉1の動き(姿勢)を一対のガイドローラ24によって好適に規制することができる。すなわち、一対のガイドローラ24の中心付近における、扉1の平面視したときの外接線が、一対のガイドローラ24を結ぶライン(すなわち、通路方向)と常に略平行となるように規制される。
扉1の下端には通路床面を転動移動するボールあるいはキャスタ輪などの案内回転部材29が備えられて扉1の重量が支えられている。
さらに、各扉1の上端および下端には、扉1を保持する保持機構31が配備されている。図16に示すように、保持機構31は、上軸受け部32と下軸受け部33が互いに回転可能に上下に連結した軸受け部材34と、第1レール35と第2レール36とを備えている。第1レール35は、扉1の上端に、扉1の長手方向の両側端を結ぶように延びている。下軸受け部33は、この第1レール35に沿って摺動(スライド移動)可能に設けられて、下軸受け部33の軸部のみが扉1の上面から突き出ている。上枠2内には、第2レール36が通路Tを横切る方向に固定的に敷設されている。すなわち、第2レール36は、扉1が閉塞位置にあるときの第1レール35と平行に設けられている。この第2レール36の一端は、閉塞位置にある扉1の通路側の頂部と略同じ位置に位置決めされており、この一端から通路Tの中央へ延びている。ただし、第2レール36の長さは第1レール35に比べて短く、例えば、扉1の厚さ(短軸側の長さ)ほどである。上軸受け部32は、このような第2レール36に沿って摺動(スライド移動)可能に設けられている。そして、軸受け部材34が第2レール36上を摺動して通路壁に対して接離することで、扉1の開閉揺動および前後移動に伴って扉1が回転体23および一対のガイドローラ24に近づいたり、遠ざかったりすることを許容しつつ保持している。なお、扉1が閉塞位置にあるとき、軸受け部材34は最も通路壁に近接した位置となる。下軸受け部33は、この発明における第1軸受け部に相当し、上軸受け部32は、この発明における第2軸受け部に相当する。
さらに、扉1の長手方向の略中央には、圧縮ばね37が付設されている。本実施例2では、圧縮ばね37は第2レール36に沿って設けられ、圧縮ばね37の一端が上軸受け部32(軸受け部材34)に当接するとともに、圧縮ばね37の他端は第2レール36の軸上で固定されている。そして、図17(a)、(b)に明示するように、軸受け部材34が通路壁から離れるほど圧縮ばね37は圧縮変形し、この圧縮ばね37に生じた復原力によって軸受け部材34は通路壁に近接する方向に付勢される。すなわち、扉1が通路Tを閉塞しているときに比べて、開放しているときの方が大きな復原力が軸受け部材34に働くように設けられている。圧縮ばね37は、この発明における弾性体に相当する。
同様に、扉1の下端にも保持機構31およびこの保持機構31に付設される圧縮ばね37が設けられている。下端側の保持機構31は、上軸受け部32および第2レール36が通路Tを掘り下げた位置に収容されている。なお、上軸受け部32と第2レール36は平面視で通路壁側であり、かつ、扉1の下側に配置されるので、通路Tを通行する通行物Mにとって障害とはならない。
図18から図21は、このような構成による扉1の開閉作動を示す行程図である。
通路閉塞状態では、図18に示すように、扉1は通路を横断する閉塞位置にある。
図19に示すように、通行物Mは扉1を進行方向に向かって押し、扉1を開放揺動させる。軸受け部材34は扉1の開放移動に応じて通路壁から遠ざかる方向にスライドし、圧縮ばね37は軸受け部材34のスライドに応じて圧縮変形する。圧縮変形した圧縮ばね37に生じた復原力によって、軸受け部材34は通路壁に近づく方向に付勢される。なお、図19において、通行物Mが扉1に作用させる力Fを模式的に示している。
図20に示すように、通行物Mは、さらに扉1を通路側壁に沿って進行方向と反対側に移動させる。このとき、少なくとも、ガイドローラ24間の中心点と回転体23とを結ぶラインに対して、扉長手方向の中心が進行方向と反対側となるまで移動させる。なお、図20においても、通行物Mが扉1に作用させる力Fを模式的に示している。
図21に示すように、ガイドローラ24間の中心点と回転体23とを結ぶラインに対して、扉長手方向の中心が進行方向と反対側となると、通行物Mは扉1から離れて、扉1に何も力を作用させない状態にする。このとき、扉1に作用する力は、軸受け部材34を介して伝達される圧縮ばね37の復原力のみであり、この復原力は軸受け部材34を通路壁に近づく方向に働いている。軸受け部材34は、この圧縮ばね37による付勢にしたがって、通路壁に近づく方向にスライドし、この軸受け部材34のスライド移動に応じて扉1はさらに通路側壁に沿って進行方向と反対側に移動する。そして、扉1の他方の頂部が回転体23の位置付近に至ると、その頂部を中心にして急速に前方へ閉じ揺動され、すばやく通行物Mの背後に回り込んで通路Tを閉じる閉塞位置に移動する(図21)。
以上のように、この例の扉装置Gでは、扉1の開放移動に応じて圧縮ばね37を収縮変形させ、圧縮ばね37に蓄えられた復原力のみによって扉1を閉塞揺動させる。よって、通行物Mが扉1を閉じ移動させる手間を省くことができる。また、圧縮ばね37を備えることで、モータ等の動力源を別途備えることなく、簡易な構成とすることができる。さらに、無端帯22と回転体23とガイドローラ24とは、開放移動した扉1を通行物Mの背後に回り込ませつつ閉塞位置に案内するので、通行物Mの通過を妨げることがない。
図22は実施例3に係る扉装置の斜視図である。本実施例3の扉1は平面視矩形形状を呈している。扉1の上端には、扉長手方向の両側端部にそれぞれ凸部41が形成されている。また、扉長手方向の略中央部に支持軸43が形成されている。各凸部41は、同等の大きさを有する円柱形状を呈する。また、支持軸43は、凸部41に比べて高い位置まで突出している。
通路の側壁側には扉1の上端と略等しい高さにレール状物45が設置されている。レール状物45の内部には、前記凸部41が摺動可能な溝部46が形成されている。また、レール状物45の一端には、凸部41をレール状物45内の溝部46へ係合させるための切欠き47が形成されている。また、レール状物45の他端側には、溝部46と連通する係り止め部48が形成され、溝部46を摺動した凸部41を係り止め部48に案内可能に構成されている。係り止め部48は、凸部41を回転自在に係り止めするとともに、凸部41が通路中央方向に移動することを許容して、係り止め部48による保持を解除する切欠きが形成されている。
レール状物45の上端には腕部材51が設けられている。腕部材51は、係り止め部48によって保持された凸部41の中心と同心な1軸P周りに回動自在に支持されている。この腕部材51の他端側は、扉1の支持軸43を遊転自在に保持している。これにより、扉1は腕部材51によって回動自在に軸支されている。
また、レール状物45の上端には、ねじりばね53が腕部材51に当接するように設けられている。そして、ねじりばね53は、扉1の開放揺動に応じて回転する腕部材51によって変形し、閉塞位置の扉1に応じた腕部材51の位置に移動させるように腕部材51に対して付勢する。本実施例3では、ねじりばね53は、腕部材51と通路Tの側壁とのなす角を略直角となるように腕部材51の基端部を付勢している。ここで、ねじりばね53は、この発明における弾性体に相当する。また、レール状物45と腕部材51とは、この発明における案内支持機構に相当する。
次に、この扉装置Gの動作を、図23〜図26の行程図に基づいて説明する。
図23は扉装置Gが閉じられた状態であり、扉1は閉塞位置にある。このとき、1軸Pに近い方の凸部41(以下、適宜、1軸P近傍の凸部41という)は係り止め部48に係り止めされている。
図24において、通行物Mが1対の扉1を進行方向に押し圧する。これにより、係り止め部48に保持された凸部41はその中心(1軸Pと同心)周りに回転し、扉1は通路Tの進行方向へ開放揺動する。このとき、腕部材51はねじりばね53を変形させつつ、扉1の開放揺動と一体に回転する。このとき、腕部材51には、ねじりばね53の復原力が付勢される。そして、支持軸43がレール状物45に当接すると、扉1の1軸Pを中心とした開放揺動が規制される。
図25において、さらに通行物Mが1対の扉1を進行方向に押し圧すると、扉1には支持軸43を中心とした回転力として作用する。このとき、係り止め部48に保持されていた凸部41は、係り止め部48に形成された切欠きを通じて通路中央方向に移動し、係り止め部48による保持が解除される。これとともに、扉1は支持軸43を中心として回動する。このような開放位置にある扉1において、他端側に形成された凸部41(1軸Pから遠い方の凸部41)は切欠き47を通じてレール状物45内に形成された溝部46に係合される。
図26において、通行物Mは扉1から離れて、扉1に何も力を作用させない状態にする。扉1に作用する力は、腕部材51を介して伝達されるねじりばね53の復原力のみであり、この復原力は閉塞位置の扉1に応じた腕部材51の位置に移動させる方向に付勢している。腕部材51は、ねじりばね53による付勢にしたがって、1軸P周りに回転する。この回転に従い、支持軸43が軸P周りの円軌道上を移動するように扉1は閉じ揺動する。このとき、溝部46に案内された凸部41は、扉1の閉じ揺動に応じて溝部46を摺動する。このため、溝部46を摺動する凸部41と支持軸43の位置関係によって、扉1自体は支持軸43周りに回転する。この結果、扉1は、通行物Mの背後に回り込むようにスライドしつつ、通路Tを閉じる閉塞位置に移動する(図26)。
以上のように、この例の扉装置Gでは、通行物Mが扉1を開放揺動させる際に扉1を押す力Fによってねじりばね53を圧迫させて、ねじりばね53に蓄えられた復原力のみによって扉1を通路方向に前後移動させつつ、閉じ揺動させる。よって、通行物Mが扉1を閉じ移動させる手間(扉1を前後移動させる手間を含む)を省くことができる。また、ねじりばね53を備えることで、モータ等の動力源を別途備えることなく、簡易な構成とすることができる。さらに、レール状物45と腕部材51とは、開放移動した扉1を通行物Mの背後に回り込ませつつ閉塞位置に案内するので、通行物Mの通過を妨げることがない。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上記した各実施例において、弾性体として伸張ばね13、圧縮ばね37、ねじりばね53を例示したこれに限られない。すなわち、その他の種類の弾性体を適宜に適用してもよい。また、ドアクローザのような公知の機構を適用するように変更してもよい。
また、実施例1における扉装置Gは、左右の扉1ごとに伸張ばね13を付設していたが、これに限られない。図27は、変形実施例に係る扉装置の一部正面図である。図27に図示するように、止め具15を省略して、左右の扉1に設けられた各ばね支持片14に両端が係止された単一の伸張ばね13を備えるように構成してもよい。
また、弾性体に変えて、滑車機構を適用するように構成してもよい。図28は、変形実施例に係る扉装置Gの正面図である。図示するように、一端に重り61が吊り下げられたワイヤ63を滑車65に掛け回しして、扉1の扉長手方向の略中央部に取り付けている。滑車65の位置としては、閉塞位置における扉1の扉長手方向の先端側方が好ましい。このように構成することで、常に、重り61に働く重力によって、閉塞位置方向に扉1を付勢することができる。これにより、通行物Mが扉1を閉じ移動させる手間を省くことができる。なお、重り61とワイヤ63と滑車65とは、この発明における滑車機構に相当する。
(2)上記した実施例1において、案内レール4は上記形状に限られるものではなく、例えば、両端の円弧部を直線部でつないだ扁平長円状に形成することもできる。
(3)上記した実施例1における扉装置Gは、扉1の上下端に案内レール4、8を備えていたが、これに限られない。たとえば、上端のみに案内レール4を備えるように変更してもよいし、下端のみに案内レール8を備えるように変更してもよい。
(4)上記した実施例1における扉装置Gは、扉1の上端にのみ伸張ばね13を付設していたが、これに限られない。たとえば、扉1の下端のみに伸張ばね13を付設してもよいし、扉1の上下端にそれぞれ伸張ばね13を付設してもよい。
(5)上記した実施例2において、案内部21の外周全周に歯部26を形成する構造を示したが、これに限られない。例えば、図29に示すように、平面視で扉1の直線に近い緩やかな凸曲領域(言い換えれば、扉1の長軸方向に湾曲する曲率の大きな領域)のみに歯部26を形成してもよい。小曲率の頂部付近(端部付近)に歯部を設けても無端帯22の歯部25と十分噛合されず、滑りが生じやすい。そこで、上記変形例のように構成することで、無端帯22と案内部21との間で確実に伝達される範囲にのみ歯部26を形成することができる。
(6)上記した実施例2において、無端帯22として歯付きベルトを例示したが、これに限られない。公知の各種ベルト、各種チェーンを適宜に採用してもよい。
(7)上記した実施例2における扉装置Gは、扉1の上端および下端に案内部21が備えられ、各案内部21に、無端帯22と回転体23とガイドローラ24とが配備されていたが、これに限られない。たとえば、扉1の上端のみ、または、下端のみに案内部21を設けてもよい。
(8)上記した実施例1、2において、遊転自在に設けられるガイド部材6、7、9、10、または、回転体23の回転支点には、外力によって若干は開放方向に弾性的に後退回動可能、あるいは、適度のトルクを維持して後退回動可能な融通を備え、扉1に通行物が衝突した場合に緩衝機能が発揮されるように構成しておくこともできる。
(9)上記した実施例1において、ガイド部材6、7と案内レール4との接触点に対して扉長手方向の中心が進行方向と反対側となると、通行物Mは扉1から離れて、扉1に何も力を作用させない状態にしたが、これに限られない。伸張ばね13の復原力によって扉1を閉塞位置まで移動させることができれば、通行物Mが扉1から離れて扉1に何も力を作用させない状態にする位置は、適宜に選択変更することができる。同様に、上記した実施例2において、ガイドローラ24間の中心点と回転体23とを結ぶラインに対して、扉長手方向の中心が進行方向と反対側となると、通行物Mは扉1から離れて、扉1に何も力を作用させない状態にしたが、これに限られない。圧縮ばね37の復原力によって扉1を閉塞位置まで移動させることができれば、通行物Mが扉1から離れて扉1に何も力を作用させない状態にする位置は、適宜に選択変更することができる。
(10)上記した実施例3における扉装置Gは、腕部材51がレール状物45に支持されていたが、これに限られない。たとえば、腕部材51を通路壁等に支持したり、実施例1で説明した上枠2に相当するものに支持するように変更してもよい。また、ねじりばね53の固定位置も腕部材51の支持方法にしたがって、適宜に設計変更することができる。
(11)上記した実施例3における扉装置Gは、扉1が平面視矩形形状を呈しているが、これに限られない。たとえば、実施例1、2のように楕円形状を呈していてもよい。
(12)上記した実施例3における扉装置Gは、扉1の上端に凸部41および支持軸43が形成されるとともに、通路の側壁側にはレール状物45および腕部材51が配備されていたが、これに限られない。たとえば、扉1の上下端または下端側のみに上記凸部41および支持軸43を形成するように変更してもよい。また、これに対応して、レール状物45および腕部材51を通路側壁の上下に、または、下側のみに配備するように変更してもよい。
(13)上記した各実施例の扉装置Gは2枚の扉1を備えているが、この構成に限られない。例えば、扉装置Gが単一の扉1のみを備えている構成(図28を参照)や、3枚以上の扉1を横一列に備えている構成としてもよい。なお、扉装置Gが単一の扉1のみを備えている構成であっても、通路Tを開閉するように構成することができる。
(14)上記した各実施例において、扉1を閉塞位置において保持する機構を備えるように構成してもよい。図30は、変形実施例に係る扉装置の一部切欠き正面図であり、図31(a)、(b)は扉1を閉塞位置において保持する機構の係合時と解除時の様子を示す平面図である。図示するように、扉1の中段付近の扉面は、押圧に応じて屈曲自在なプレート部71で構成している。このプレート部71で覆われた扉1の内部には、3本の棒状物が互いに屈曲自在に連結して構成される係合軸73が収容配備されている。この係合軸73の先端は、扉1の側端を貫通して外方向に突出している。また、扉1の側方に配備される縦枠75には、係合軸73の先端に対向する位置に係合溝77が形成されている。図31(a)に示すように、閉塞位置に扉1があるときは、1直線状に伸びた係合軸73の先端が係合溝77に嵌合している。ここで、扉1を開放移動させる際、通行物Mがまずプレート部71を押圧する。これにより、図31(b)に示すように、プレート部71が扉1の内部側に湾曲するように屈曲し、屈曲したプレート部71によって係合軸73が屈曲する。この結果、係合軸73の先端は係合溝77から外れる。これにより、閉塞位置における扉1の保持が解除される。引き続き、扉1を押圧することで扉1は一連の開放揺動する。このように構成することで、通行物Mが扉装置Gを通過しないときは扉1を閉塞位置に保持することができる。また、通行物Mが通る際は扉1を押圧するだけで上記保持を解除することができるので、通行物Mの手間もかからない。
(15)各実施例に係る扉装置Gは、公共施設や商業施設、または病院等の各種施設の通路の開閉に利用されるものを示したが、これに限られない。たとえば、扉装置Gを車椅子や電気自動車用の通路に利用してもよい。または、設置スペースが少なくて済むので、航空機や列車等における通路やトイレに扉装置Gを設けてもよい。
(16)各実施例に係る扉装置Gは、その扉1を通過する通行物Mが人間であっても、物であっても構わない。物の場合は、本発明に係る扉装置は、物の出入りの管理、制御等に利用される。
実施例1に係る扉装置の側面図である。
実施例1に係る扉装置の平面図である。
実施例1に係る扉装置の正面図である。
第1実施例の扉の開閉構造を示す斜視図である。
第1実施例の案内レールについての要部の一例を示す平面図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第1実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
実施例2に係る扉装置の平面図である。
実施例2に係る扉装置の正面図である。
第2実施例に係る扉装置の保持機構を示す拡大図である。
実施例2の扉の開閉構造を示す斜視図である。
(a)、(b)は、実施例5の扉の開閉構造を示す平面図である。
第2実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第2実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第2実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第2実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第3実施例に係る扉装置の斜視図である。
第3実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第3実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第3実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
第3実施例の扉の開閉作動を示す行程図である。
変形実施例に係る扉装置の正面図である。
変形実施例に係る扉装置の正面図である。
変形実施例に係る扉の開閉構造を示す平面図である。
変形実施例に係る扉装置の一部切欠き正面図である。
(a)、(b)は扉を閉塞位置において保持する機構の係合時と解除時の様子を示す平面図である。
符号の説明
1 …扉
3 …上支持機構
5 …下支持機構
4、8 …案内レール
6、7、9、10 …ガイド部材
13 …伸張ばね
21 …案内部
22 …無端帯
23 …回転体
24 …ガイドローラ
29 …案内回転部材
31 …保持機構
32 …上軸受け部
33 …下軸受け部
34 …軸受け部材
37 …圧縮ばね
41 …凸部
43 …支持軸
45 …レール状物
46 …溝部
47 …切欠き
48 …係り止め部
51 …腕部材
53 …ねじりばね
P …P軸
T … 通路
G … 扉装置
M … 通行物