以下、本発明に係る表示装置の製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。
(表示パネル)
まず、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネル(有機ELパネル)及び表示画素について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネルの画素配列状態の一例を示す概略平面図であり、図2は、本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(表示素子及び画素駆動回路)の回路構成の一例を示す等価回路図である。なお、図1に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネル(絶縁性基板)を視野側から見た、各表示画素(色画素)に設けられる画素電極の配置と各配線層の配設構造との関係のみを示し、各表示画素の有機EL素子(発光素子)を発光駆動するために、各表示画素に設けられる図2に示す画素駆動回路内のトランジスタ等の表示を省略した。また、図1においては、画素電極及び各配線層の配置を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
図1に示すように、本発明に係る表示装置(表示パネル10)は、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側に、列方向(図面上下方向)に配設された複数の供給電圧ライン(例えばアノードライン)Laと、行方向(図面左右方向)に配設された複数の共通電圧ライン(例えばカソードライン)Lcとを備え、供給電圧ラインLaと共通電圧ラインLcの各交点を含む領域に各表示画素PIX(サブ画素PXr、PXg、PXb)が配置されている。
ここで、上記表示パネル10を備えた表示装置がカラー表示に対応している場合には、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色それぞれのサブ画素(以下、便宜的に「色画素」と記す)PXr、PXg、PXbが行方向(図面左右方向)に繰り返し配列されるとともに、列方向(図面上下方向)に同一色の色画素PXr、PXg、PXbが複数配列される。この場合には、行方向(図面左右方向)に隣接するRGB3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組として1つの表示画素PIXとなる。単一色発光のみの表示パネル(モノカラー表示パネル)を備えた表示装置の場合には、1つの色画素が1つの表示画素PIXとなる。
また、表示画素PIXの各色画素PXr、PXg、PXbの形成領域には、画素電極(例えばアノード電極)15が形成されているとともに、上記供給電圧ラインLaに並行して列方向(図面上下方向)にデータラインLdが配設され、また、上記共通電圧ラインLcに並行して行方向(図面左右方向)に選択ラインLsが配設されている。
表示画素PIXの各色画素PXr、PXg、PXbの具体的な回路構成は、例えば図2に示すように、絶縁性基板11上に複数のトランジスタ(例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等)からなる画素駆動回路(又は画素回路)DCと、当該画素駆動回路DCにより生成される発光駆動電流が、上記画素電極15に供給されることにより発光動作する有機EL素子(発光素子)OELと、を備えている。
画素駆動回路DCは、例えば図2に示すように、ゲート端子が選択ラインLsに、ドレイン端子がデータラインLdに、ソース端子が接点N11に各々接続されたトランジスタ(選択トランジスタ)Tr11と、ゲート端子が接点N11に、ドレイン端子が供給電圧ラインLaに、ソース端子が接点N12に各々接続されたトランジスタ(駆動トランジスタ)Tr12と、トランジスタTr12のゲート端子及びソース端子間に接続されたキャパシタCsと、を備えている。
ここでは、トランジスタTr11、Tr12はいずれもnチャネル型の電界効果型トランジスタ(薄膜トランジスタ)が適用されている。なお、トランジスタTr11、Tr12がpチャネル型であれば、ソース端子及びドレイン端子が互いに逆になる。また、キャパシタCsは、トランジスタTr12のゲート−ソース間に形成される寄生容量、又は、該ゲート−ソース間に付加的に設けられた補助容量、もしくは、これらの寄生容量と補助容量からなる容量成分である。よって、トランジスタTr12がpチャネル型であれば、キャパシタCsの一方は、有機EL素子OLED側ではなく、電源電圧ラインLv側に接続される。
有機EL素子OLEDは、アノード端子(アノード電極となる画素電極15)が上記画素駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード端子(カソード電極となる対向電極17)が共通電圧ラインLcに接続されている。ここで、カソード電極となる対向電極17は、絶縁性基板11上に2次元配列された複数の表示画素PIXの各画素電極15に対して共通に対向するように、単一の電極層(べた電極)により形成されている。詳しくは後述する。
なお、図1、図2に示した選択ラインLsは、図示を省略した選択ドライバに接続され、所定のタイミングで表示パネル10の行方向に配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)を選択状態に設定するための選択信号Sselが印加され、また、データラインLdは、図示を省略したデータドライバに接続され、上記表示画素PIXの選択状態に同期するタイミングで表示データに応じた階調信号Vpixが印加される。ここで、階調信号Vpixは、有機EL素子OLEDの発光輝度階調を設定する電圧信号である。
また、供給電圧ラインLaは、例えば所定の高電位電源に直接又は間接的に接続され、各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる有機EL素子OLEDの画素電極15に表示データに応じた発光駆動電流を流すために、有機EL素子OLEDの対向電極17に印加される共通電圧Vcomより電位の高い、所定の高電圧(供給電圧Vdd)が印加され、また、共通電圧ラインLcは、例えば所定の低電位電源に直接又は間接的に接続され、複数の有機EL素子OLEDに所定の低電圧(共通電圧Vcom;例えば接地電位Vgnd)が共通に印加される。
すなわち、図2に示した画素駆動回路DCにおいては、各表示画素PIXにおいて直列に接続されたトランジスタTr12と有機EL素子OLEDの組の両端(トランジスタTr12のドレイン端子と有機EL素子OLEDのカソード端子)にそれぞれ高電圧の供給電圧Vddと定電圧の共通電圧Vcomを印加して、有機EL素子OLEDに順バイアスを付与し、有機EL素子OLEDが発光可能な状態とし、さらに、階調信号Vpixに応じて有機EL素子OLEDに流れる発光駆動電流の電流値を制御している。
そして、このような回路構成を有する表示画素PIXにおける駆動制御動作は、まず、図示を省略した選択ドライバから選択ラインLsに対して、選択レベル(オンレベル;例えばハイレベル)の選択信号Sselを印加することにより、トランジスタTr11がオン動作して選択状態に設定される。このタイミングに同期して、図示を省略したデータドライバから表示データに応じた電圧値を有する階調信号VpixをデータラインLdに印加するように制御する。これにより、トランジスタTr11を介して、階調信号Vpixに応じた電位が接点N11(すなわち、トランジスタTr12のゲート端子)に印加される。
図2に示した回路構成を有する画素駆動回路DCにおいては、トランジスタTr12のドレイン−ソース間電流(すなわち、有機EL素子OLEDに流れる発光駆動電流)の電流値は、ドレイン−ソース間の電位差及びゲート−ソース間の電位差によって決定される。ここで、トランジスタTr12のドレイン端子(ドレイン電極)に印加される供給電圧Vddと、有機EL素子OLEDのカソード端子(カソード電極)に印加される共通電圧Vcomは固定値であるので、トランジスタTr12のドレイン−ソース間の電位差は、供給電圧Vddと共通電圧Vcomによって予め固定されている。そして、トランジスタTr12のゲート−ソース間の電位差は、階調信号Vpixの電位によって一義的に決定されるので、トランジスタTr12のドレイン−ソース間に流れる電流の電流値は、階調信号Vpixによって制御することができる。
これにより、トランジスタTr12が接点N11の電位に応じた導通状態(すなわち、階調信号Vpixに応じた導通状態)でオン動作して、高電位側の供給電圧VddからトランジスタTr12及び有機EL素子OLEDを介して低電位側の共通電圧Vcom(接地電位Vgnd)に、所定の電流値を有する発光駆動電流が流れるので、有機EL素子OLEDが階調信号Vpix(すなわち表示データ)に応じた輝度階調で発光動作する。また、このとき、接点N11に印加された階調信号Vpixに基づいて、トランジスタTr12のゲート−ソース間のキャパシタCsに電荷が蓄積(充電)される。
次いで、選択ラインLsに非選択レベル(オフレベル;例えばローレベル)の選択信号Sselを印加することにより、表示画素PIXのトランジスタTr11がオフ動作して非選択状態に設定され、データラインLdと画素駆動回路DC(具体的には接点N11)とが電気的に遮断される。このとき、上記キャパシタCsに蓄積された電荷が保持されることにより、トランジスタTr12のゲート端子に階調信号Vpixに相当する電圧が保持された(すなわち、ゲート−ソース間の電位差が保持された)状態となる。
したがって、上記選択状態における発光動作と同様に、供給電圧VddからトランジスタTr12を介して、有機EL素子OLEDに所定の発光駆動電流が流れて、発光動作状態が継続される。この発光動作状態は、次の階調信号Vpixが印加される(書き込まれる)まで、例えば、1フレーム期間継続するように制御される。そして、このような駆動制御動作を、表示パネル10に2次元配列された全ての表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)について、例えば各行ごとに順次実行することにより、所望の画像情報を表示する画像表示動作を実行することができる。
なお、図2においては、表示画素PIXに設けられる画素駆動回路DCとして、表示データに応じてに書き込む階調信号Vpixの電圧値を調整(指定)することにより、有機EL素子OLEDに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所定の輝度階調で発光動作させる電圧指定型の階調制御方式に対応した回路構成を示したが、表示データに応じて供給する(書き込む)電流の電流値を調整(指定)することにより、有機EL素子OLEDに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所定の輝度階調で発光動作させる電流指定型の階調制御方式の回路構成を有するものであってもよい。
また、図2に示した画素駆動回路DCにおいては、2個のnチャネル型のトランジスタTr11、Tr12を適用した回路構成を示したが、本発明に係る表示パネルはこれに限定されるものではなく、3個以上のトランジスタを適用した他の回路構成を有するものであってもよいし、回路構成としてpチャネル型のトランジスタのみを適用したもの、あるいは、nチャネル型及びpチャネル型の双方のチャネル極性を有するトランジスタが混在するものであってもよい。
ここで、図2に示したように、画素駆動回路DCとしてnチャネル型のトランジスタのみを適用した場合には、既に製造技術が確立されたアモルファスシリコン半導体製造技術を用いて、動作特性が安定したトランジスタを簡易に製造することができ、上記表示画素の発光特性のバラツキを抑制した画素駆動回路を実現することができる。
(表示画素のデバイス構造)
次に、上述したような回路構成を有する表示画素(発光駆動回路及び有機EL素子)の具体的なデバイス構造(平面レイアウト及び断面構造)について説明する。
図3は、本発明に係る表示パネルに適用可能な表示画素の一例を示す平面レイアウト図である。ここでは、図1に示した表示画素PIXの赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素PXr、PXg、PXbのうちの、特定の一の色画素の平面レイアウトの一例を示す。なお、図3においては、画素駆動回路DCの各トランジスタ及び配線層等が形成された層を中心に示し、各配線層及び各電極の配置や平面形状を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。また、図4、図5は、各々、図3に示した平面レイアウトを有する表示画素PIXにおけるIVA−IVA線(本明細書においては図3中に示したローマ数字の「4」に対応する記号として便宜的に「IV」を用いる)、及び、VB−VB線(本明細書においては図3中に示したローマ数字の「5」に対応する記号として便宜的に「V」を用いる)に沿った断面を示す概略断面図である。
図2に示した表示画素PIX(色画素PXr、PXg、又は、PXb)は、具体的には、絶縁性基板11の一面側に設定された画素形成領域(各色画素PXr、PXg、PXbにおける有機EL素子の形成領域)Rpxにおいて、例えば図3に示した平面レイアウトの上方及び下方の縁辺領域に行方向(図面左右方向)に延在するように選択ラインLs及び共通電圧ラインLcが各々配設されるとともに、これらのラインLs、Lcに直交し、上記平面レイアウトの左方及び右方の縁辺領域に列方向(図面上下方向)に延在するようにデータラインLd及び供給電圧ラインLaが配設されている。また、上記平面レイアウトの右方の縁辺領域には、列方向(図面上下方向)に延在し、かつ、上述したトランジスタTr11、Tr12及び供給電圧ラインLaに対して略平面的に重なるように、右側に隣接する表示画素PIXとの境界となるバンクBKyが配設されている。なお、バンクBKy、及び、上記共通電圧ラインLcと一体的に形成されるバンクBKxについては詳しく後述する。
ここで、例えば図3〜図5に示すように、選択ラインLsは、絶縁性基板11上に形成され、トランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gを形成するためのゲートメタル層をパターニングすることによって、当該ゲート電極Tr11g、Tr12gと同じ工程で、かつ、トランジスタTr11のゲート電極Tr11gと一体的に形成される。
データラインLd及びデータラインLdから行方向に突出して形成された信号配線層Ldxは、選択ラインLsやゲート電極Tr11g、Tr12gよりも上層側に設けられ、トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成するためのソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって当該ソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dと同じ工程で、かつ、トランジスタTr11のソース電極Tr11sと一体的に形成される。また、このとき、トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dは、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH11を介して、トランジスタTr12のゲート電極Tr12gに接続されている。
また、供給電圧ラインLaは、データラインLd(信号配線層Ldxを含む)やソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dよりも上層側に設けられるとともに、保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成された配線溝に埋め込まれて、ドレイン電極Tr12dの上面に電気的に接続されている。さらに、共通電圧ラインLcは、供給電圧ラインLaよりも上層側であって、平坦化膜14上に形成された層間絶縁膜18b上に絶縁性基板11表面から連続的に突出するように設けられている。
このように、表示画素PIXは、図4、図5に示すように、絶縁性基板11上に表示画素PIX内に設けられる画素駆動回路DC(図2参照)の複数のトランジスタTr11、Tr12やキャパシタCs、選択ラインLs及びデータラインLdを含む各種配線層が設けられ、当該トランジスタTr11、Tr12や配線層を被覆するように順次形成された保護絶縁膜13及び平坦化膜14を介して、その上層に、画素駆動回路DCに接続されて所定の発光駆動電流が供給される画素電極(例えばアノード電極;下部電極)15、少なくとも正孔輸送層(担体輸送層)と発光層と電子輸送層(担体輸送層)からなる有機EL層16、及び、共通電圧Vcomが印加される対向電極(例えばカソード電極)17からなる有機EL素子OLEDが形成されている。
そして、本実施形態においては、特に、上記表示画素PIXを含む絶縁性基板11の全域を被覆するように透明な絶縁性のパッシベーション膜19が形成され、かつ、当該パッシベーション膜19が少なくとも成膜後に所定の条件の雰囲気ガス中で加熱処理されて残留応力が緩和された膜特性を有している。本実施形態に適用されるパッシベーション膜19の具体的な製造方法については詳しく後述する。
なお、図4、図5においては、トランジスタTr11、Tr12及び配線層と、上層の有機EL素子OLED(画素電極15)との間に、保護絶縁膜13及び平坦化膜14の2層の絶縁膜を設けたパネル構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば保護絶縁膜としての機能をも兼ね備えた平坦化膜一層のみからなるものであってもよいし、3層以上の絶縁膜からなる多層構造を有しているものであってもよい。
画素駆動回路DCは、より具体的には、例えば図3に示すように、図2に示したトランジスタTr11が行方向に配設された選択ラインLs(又はデータラインLdから行方向に突出して形成された信号配線層Ldx)に沿ってチャネル幅方向が延在するように配置され、トランジスタTr12が列方向に配設された供給電圧ラインLaに沿ってチャネル幅方向が延在するように配置されている。
ここで、各トランジスタTr11、Tr12は、周知の電界効果型の薄膜トランジスタ構造を有し、各々、絶縁性基板11上に形成されたゲート電極Tr11g、Tr12gと、ゲート絶縁膜12を介して各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCのチャネルの両端部に延在するように形成されたソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dと、を有する逆スタガ構造を有している。
なお、各トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12sとドレイン電極Tr11d、Tr12dが対向して配置された半導体層SMCのチャネル上には、製造プロセスにおいて当該半導体層SMCへのエッチングダメージを防止するための酸化シリコン又は窒化シリコン等のチャネル保護層(ブロック層)BLが形成され、また、ソース電極Tr11s、Tr12sとドレイン電極Tr11d、Tr12dが接触する半導体層SMCのチャネルの両側部上には、当該半導体層SMCとソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dとのオーミック接続を実現するための不純物層OHMが形成されている。不純物層OHMは、n型不純物イオンを含んでいるアモルファスシリコン層である。
そして、図2に示した画素駆動回路DCの回路構成に対応するように、トランジスタTr11は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr11gが選択ラインLsと一体的に形成され、同ソース電極Tr11sが信号配線層Ldxを介してデータラインLdと一体的に形成されている。
また、トランジスタTr12は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr12gがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH11を介して上記トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dに接続され、同ドレイン電極Tr12sが供給電圧ラインLaに接続され、同ソース電極Tr12dが保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成されたコンタクトホールCH12に埋め込まれたコンタクトメタルMTLを介して有機EL素子OLEDの画素電極15に接続されている。
ここで、供給電圧ラインLa(アノードライン)は、図3、図4に示すように、保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成された配線溝に埋め込まれた厚膜配線構造を有し、例えば上記コンタクトホールCH12に埋め込まれるコンタクトメタルMTLと同じ工程で形成される。
そして、各画素形成領域Rpxの平坦化膜14上には、図4、図5に示すように、例えばアノード電極となる画素電極15、少なくとも正孔輸送層と発光層と電子輸送層からなる有機EL層16、及び、べた電極からなり、例えばカソード電極となる対向電極17を順次積層した有機EL素子が設けられている。ここで、本実施形態においては、画素電極15が少なくとも光反射特性を有するとともに、対向電極17が光透過性を有するトップエミッション型の発光構造を有している。
また、各画素形成領域Rpx間(各表示画素PIXの有機EL素子OLEDの形成領域相互の境界領域)には、有機EL素子OLEDの形成領域(厳密には、有機EL層16の形成領域)を画定するためのバンク(隔壁)BKx、BKyが平坦化膜14の上面から連続的に突出するように設けられている。
バンクBKyは、例えば図3、図4に示すように、表示パネル10(絶縁性基板11)の列方向に形成され、各表示画素PIXの画素形成領域Rpxに形成される画素電極15相互を絶縁する層間絶縁膜18aと、該層間絶縁膜18a上に表示パネル10の列方向に形成された絶縁性バンク部18cからなる積層構造を有している。また、バンクBKxは、例えば図3、図5に示すように、表示パネル10(絶縁性基板11)の行方向に形成され、各表示画素PIXの画素形成領域Rpxに形成される画素電極15相互を絶縁する層間絶縁膜18bと、該層間絶縁膜18b上に表示パネル10の行方向に形成された導電性バンク部18dからなる積層構造を有している。ここで、導電性バンク部18dは、上述した共通電圧ラインLcに相当する。
バンクBKx、BKyは、より具体的には、相互に隣接する表示画素PIX(画素電極15)間の境界領域付近に露出する平坦化膜14の上面から、有機EL素子OLEDの画素電極15上に一部が延在するようにシリコン窒化膜(SiN)やシリコン酸化膜(SiO2)等からなる層間絶縁膜18a及び18bが各々設けられ、当該層間絶縁膜18a及び18b上に、例えば感光性の樹脂材料等からなる絶縁性バンク部18c、及び、例えば少なくとも表面が金属材料等からなる導電性バンク部18dが、各々厚さ方向に突出するように積層形成されている。
また、図4、図5に示すように、各表示画素PIXに共通に設けられる対向電極17は、各画素形成領域Rpxだけでなく、上記バンクBKx、BKy上にも延在するように設けられ、さらに、金属材料等からなる導電性バンク部18dに対して電気的に接続するように接合されている。これにより、バンクBKxを形成する導電性バンク部18dを共通電圧ライン(例えばカソードライン)Lcとして兼用することができる。
そして、図1に示した表示パネル10において、図3〜図5に示すように、上記積層構造を有するバンクBKx、BKyを柵状又は格子状の平面パターンを有するように配設することにより、各表示画素PIXの画素形成領域Rpx(すなわち、各画素形成領域Rpxにおいて有機EL素子OLEDの有機EL層16を形成する領域)が画定される。
なお、本実施形態に係る表示装置のパネル構造においては、図4、図5に示したように、画素駆動回路DC、有機EL素子OLED及びバンクBKx、BKyが形成された絶縁性基板11上に、透明なパッシベーション膜19のみを被覆形成したパネル構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記パッシベーション膜19を介して、絶縁性基板11に対向するようにガラス基板等からなる封止基板がさらに接合されているものであってもよい。
そして、このような表示パネル10においては、表示パネル10の下層(有機EL素子OLEDの絶縁性基板11側の層)に設けられたトランジスタTr11、Tr12等の各回路素子、選択ラインLsやデータラインLd、供給電圧ライン(アノードライン)La等の配線層からなる画素駆動回路DCにおいて、データラインLdを介して供給された表示データに応じた階調信号Vpixに基づいて、所定の電流値を有する発光駆動電流がトランジスタTr12のソース−ドレイン間に流れ、当該トランジスタTr12(ソース電極Tr12s)からコンタクトホールCH12(コンタクトメタルMTL)を介して、有機EL素子OLEDの画素電極15に供給されることにより、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL素子OLEDが上記表示データに応じた所望の輝度階調で発光動作する。
このとき、本実施形態に示した表示パネル10において、画素電極15が光反射特性(可視光に対して高い反射率)を有し、かつ、対向電極17が光透過性(可視光に対して高い透過率)を有することにより、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光は、光透過性を有する対向電極17を介して視野側(図4、図5の上方)に直接放出されるとともに、光反射特性を有する画素電極15で反射し、対向電極17を介して視野側に放出される。
このように、本実施形態に係る表示パネル10においては、トップエミッション型の発光構造を有しているので、絶縁性基板11上に形成された画素駆動回路DCの各回路素子や配線層を、保護絶縁膜13及び平坦化膜14上に形成された有機EL素子OLEDと平面的に重なるように配置することができる。したがって、画素開口率を高くして、消費電力の低減やパネル寿命の長期化を図ることができるとともに、画素駆動回路のレイアウト設計の自由度を高めることができる。
(表示装置の製造方法)
次に、上述した表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
図6乃至図9は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図である。ここでは、図4に示したIVA−IVA断面及び図5に示したVB−VB断面のパネル構造のうち、一部を抜き出してその製造工程について説明する。また、表示画素に設けられる発光素子として、高分子系或いは低分子系の有機材料を含む溶液(有機化合物含有液)を塗布して形成された有機EL層を有する有機EL素子を適用した場合について説明する。また、図10は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に形成される有機EL素子OLEDの素子構造の一例を示す模式図である。
上述した表示装置(表示パネル)の製造方法は、まず、図6(a)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側(図面上面側)に設定された表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の形成領域(画素形成領域)Rpxに、上述した画素駆動回路(図2、図3参照)DCのトランジスタTr11、Tr12やキャパシタCs、選択ラインLsやデータラインLd(信号配線層Ldxを含む)等の配線層を形成する(画素駆動回路形成工程)。
具体的には、絶縁性基板11上に、ゲート電極Tr11g、Tr12g、及び、当該ゲート電極Tr11gと一体的に形成される選択ラインLs(図5参照)を、同一のゲートメタル層をパターニングすることによって同時に形成し、その後、絶縁性基板11の全域にゲート絶縁膜12を被覆形成する。
次いで、ゲート絶縁膜12上の各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に、例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等からなる半導体層SMC、及び、酸化シリコンや窒化シリコン等からなるチャネル保護層(ブロック層)BLを形成し、当該半導体層SMCの両端部にオーミック接続のための不純物層OHMを介してソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成する。
このとき、同一のソース、ドレインメタル層をパターニングすることによってソース電極Tr11sと接続されたデータラインLd及び信号配線層Ldx(図3〜図5参照)を同時に形成する。また、トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dがゲート絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCH11を介してトランジスタTr12のゲート電極Tr12gに接続される。
なお、上述したトランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12d、選択ラインLs、データラインLd(信号配線層Ldxを含む)は、配線抵抗を低減し、かつ、マイグレーションを低減する目的で、例えばアルミニウム合金層と遷移金属層からなる積層配線構造を有しているものであってもよい。
次いで、図6(b)に示すように、上記トランジスタTr11、Tr12、選択ラインLs及びデータラインLdを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、窒化シリコン(SiN)等からなる保護絶縁膜13、及び、感光性の有機材料等からなる平坦化膜14を順次形成した後、平坦化膜14を露光現像してパターニングし、当該平坦化膜14をマスクとして用いて保護絶縁膜13をエッチングして、トランジスタTr12のソース電極Tr12sの上面が露出するコンタクトホールCH12、及び、トランジスタTr12のドレイン電極Tr12dの上面が露出し、かつ、供給電圧ラインLaの配線パターンに対応した配線溝CH13を同時に形成する。
次いで、図6(c)に示すように、上記コンタクトホールCH12及び配線溝CH13にメッキ法等を用いて金属材料を埋め込み、コンタクトホールCH12にコンタクトメタルMTLを形成するとともに、配線溝CH13に厚膜配線構造を有する供給電圧ラインLaを形成する。
ここで、図6(b)、(c)においては、絶縁性基板11上に積層形成された保護絶縁膜13及び平坦化膜14に開口されたコンタクトホールCH12及び配線溝CH13に金属材料を埋め込んでコンタクトメタルMTL及び供給電圧ラインLaを形成する場合について説明したが、このような製造方法を用いた場合に平坦化膜14の上面の平坦性が充分に確保することができない場合には他の製造方法を適用するものであってもよい。例えば、上記の保護絶縁膜13や平坦化膜14が形成されていない状態の絶縁性基板11の全面に、スパッタリング法等により金属層を形成し、上記コンタクトメタルMTL及び供給電圧ラインLaの配線パターンに対応するようにパターニングした後、スピンコート法やドライフィルムにより平坦化膜(保護絶縁膜13及び平坦化膜14に相当する)を形成する製造方法を適用するものであってもよい。
また、図6(b)、(c)に示した製造工程において、平坦化膜14として非感光性の絶縁材料を用いるものであってもよく、この場合にあっては、例えば平坦化膜14上にスパッタリング法等によりアルミニウム(Al)やクロム(Cr)等からなる金属膜を形成した後、当該金属膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングしてマスク(メタルマスク)を形成し、平坦化膜14及び保護絶縁膜13をドライエッチング法を用いてエッチングして、コンタクトホールCH12及び配線溝CH13を形成した後、ウェットエッチング法により当該マスクを除去するものであってもよい。
さらに、図6(b)、(c)に示した製造工程においては、絶縁性基板11上に保護絶縁膜13及び平坦化膜14からなる2層の絶縁層を積層する場合について説明したが、平坦化膜一層のみからなるものであってもよいし、3層以上の複数層を積層するものであってもよい。
次いで、平坦化膜14及び保護絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH12及び配線溝CH13への、コンタクトメタルMTL及び供給電圧ラインLaの埋め込み後、図7(a)に示すように、各画素形成領域Rpxごとに、コンタクトメタルMTLに電気的に接続された画素電極15を形成する(画素電極形成工程)。
ここで、画素電極15は、具体的には、スパッタリング法等によりアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、パラジウム銀(AgPd)系の合金等の光反射特性を有する反射金属膜を薄膜形成し、フォトリソグラフィ法を用いて所定の形状にパターニングしてコンタクトメタルMTLに電気的に接続された下層の反射金属層15aを形成する。
その後、当該反射金属層15aを被覆するように、スパッタリング法等により錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム(Indium
Zinc Oxide;IZO)等の透明電極材料からなる(光透過特性を有する)導電性の酸化金属膜を薄膜形成し、上記反射金属層15aの上面や端面が露出しないようにパターニングして上層の導電性の酸化金属層(正孔注入層)15bを形成する。
このように、上層の酸化金属膜をパターニングする際に、下層側の反射金属層15aが露出しないようにすることにより、酸化金属膜(ITO等)と反射金属層15aとの間で電池反応を引き起こさないようにすることができるとともに、下層側の反射金属層15aがオーバーエッチングされたり、エッチングダメージを受けたりすることを防止することができる。
ここで、画素電極15の下層の反射金属層15aは、本実施形態に示したように平坦化膜14上に形成したパネル構造に限定されるものではなく、平坦化膜14又は保護絶縁膜13の下層に形成するものであってもよい。なお、この場合には、平坦化膜14の膜厚や光学特性(屈折率等)に起因して、後述する有機EL層16で放射された光の経路(光軸)にずれが生じて、画像情報に視差が発生する可能性があるため、図7(a)に示したように、画素電極15の各層を平坦化膜14上に形成することが好ましい。
次いで、反射金属層15a及び酸化金属層15bからなる上記画素電極15を含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、化学気相成長法(CVD法)等を用いて、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の無機の絶縁性材料からなる絶縁層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、図4、図5、図7(b)に示すように、相互に隣接する各画素形成領域Rpxに形成された画素電極15間の境界領域であって、表示パネル10(絶縁性基板11)の行方向に延伸するバンクBKxの下層となる層間絶縁膜18bを形成するとともに、表示パネル10の列方向に延伸するバンクBKyの下層となる層間絶縁膜18aを形成する。これにより、上記層間絶縁膜18a、18bに囲まれた領域(すなわち、層間絶縁膜18a、18bにより形成される開口部)に、各表示画素PIXの画素電極15(酸化金属層15b)の上面が露出する。
次いで、図8(a)に示すように、層間絶縁膜18a上に例えば感光性のポリイミド樹脂やノボラック樹脂等からなる絶縁性バンク部18cを表示パネル10の列方向に形成して、積層構造を有するバンクBKyを形成し、一方、層間絶縁膜18b上に例えば少なくとも表面が銅(Cu)や銀(Au)又はこれらを主成分とした金属単体又は合金等の低抵抗の金属材料からなる導電性バンク部18dを表示パネル10の行方向に形成して、積層構造を有するバンクBKxを形成する(隔壁形成工程)。
絶縁性バンク部18cは、具体的には、上記層間絶縁膜18aを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように形成された感光性ポリイミド膜に対して、露光現像処理を施し、層間絶縁膜18a上に所定のパターンを有して残留させるようにパターニングすることにより形成する。また、導電性バンク部18dは、具体的には、上記層間絶縁膜18bを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するようにメッキ法等を用いて形成された銅等の金属膜を、フォトリソグラフィ法を用いて、層間絶縁膜18b上に所定のパターンを有して残留させるようにパターニングすることにより形成する。
ここで、絶縁性バンク部18c及び導電性バンク部18dは、いずれを先に形成するものであってもよい。また、上述したように、バンクBKxを形成する導電性バンク部18dは、表示パネル10に2次元配列された各表示画素PIXに共通電圧Vcomを印加するための共通電圧ラインLcとして兼用される。
これにより、表示パネル10に配列された各表示画素PIXの画素形成領域Rpx(厳密には、有機EL素子OLEDの有機EL層16の形成領域)がバンクBKx及びBKyにより囲まれて画定され、隣接する他の色の表示画素PIX(有機EL素子OLED)の画素形成領域Rpxと隔離されるので、後述する有機EL層16を形成する発光層(電子輸送性発光層16b)を形成する際に、当該発光材料の溶液又は分散液(有機化合物含有液)を塗布する場合であっても、隣接する表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)間で発光材料が混合することがなく、隣接する色画素間での混色を防止することができる。
なお、本実施形態においては、表示パネル10の行方向に配設されるバンクBKxとして、層間絶縁膜18b及び導電性バンク部18dからなる積層構造を適用し、また、表示パネル10の列方向に配設されるバンクBKyとして、層間絶縁膜18a及び絶縁性バンク部18cからなる積層構造を適用したパネル構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばバンクBKxとして層間絶縁膜及び絶縁性バンク部からなる積層構造を適用し、バンクBKyとして層間絶縁膜及び導電性バンク部からなる積層構造を適用するものであってもよいし、バンクBKx及びBKyの双方を層間絶縁膜及び導電性バンク部からなる積層構造により形成して、共通電圧ラインLcとなる導電性バンク部を絶縁性基板11上に格子状に配設し、表示パネル10の各表示画素PIXの画素形成領域Rpxを画定するようにしてもよい。
さらには、バンクBKx及びBKyの双方を層間絶縁膜及び絶縁性バンク部からなる積層構造により形成して、絶縁性基板11上に共通電圧ラインLcを配設することなく、絶縁性基板11の略全域に平面電極(べた電極)として形成された対向電極17に所定の共通電圧Vcomを直接印加するものであってもよい。このような共通電圧ラインLcを有しないパネル構造は、例えば複数の表示画素PIXが配列された表示パネルにおいて、各表示画素(発光素子)の発光駆動動作時に必要とされる電流量が小さい場合に良好に適用することができる。
次いで、上記バンクBKx及びBKyにより画定された各表示画素PIXの画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)に対して、例えば高分子系の有機材料を含む溶液(有機化合物含有液)を塗布し、加熱乾燥して、少なくとも正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる有機EL層16を形成する(担体輸送層形成工程)。なお、本実施形態においては、図8(b)に示すように、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bの2層からなる有機EL層16を積層形成する場合について説明する。
まず、有機高分子系の正孔輸送材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を、インクジェット法やノズルプリンティング法等を適用して、上記画素電極15(酸化金属層15b)上に塗布した後、加熱乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、当該画素電極15上に有機高分子系の正孔輸送材料を定着させて、担体輸送層である正孔輸送層16aを形成する。
次いで、有機高分子系の電子輸送性発光材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料を、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒或いは水に溶解した溶液を、上記と同様にインクジェット法やノズルプリンティング法等を適用して、上記正孔輸送層16a上に塗布した後、加熱乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、正孔輸送層16a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料を定着させて、担体輸送層であり発光層でもある電子輸送性発光層16bを形成する。
なお、本実施形態においては、有機EL層16として正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bの2層からなる素子構造を有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば正孔輸送兼電子輸送性発光層の一層のみからなるものであってもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層からなるものであってもよく、また、個別の正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなるものであってもよい。さらに、例えば図10に示すように、正孔輸送層103aと発光層(又は電子輸送性発光層)103cの間に電子ブロッキング性を有するインタレイヤ103bが介在しているものであってもよく、有機EL層16を形成する各層間にその他の介在層を有する積層構造を有しているものであってもよい。なお、図10に示した模式図おいて、101は平坦化膜14に相当し、102は画素電極15に相当し、103は有機EL層16に相当し、104は後述する電子注入層に相当し、105は後述する対向電極17に相当し、106はパッシベーション膜19に相当し、107は後述する封止剤に相当し、108はガラス基板等の封止基板に相当する。
また、上述した正孔輸送層16aの形成に先立って、各表示画素PIXの画素形成領域(有機EL素子OLEDの形成領域)Rpxに露出する画素電極15(酸化金属層15b)表面を、正孔輸送材料や電子輸送性発光材料の有機化合物含有液に対して親液性を有するように(十分馴染んで拡がりやすくするために)、例えば酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等により親液化処理を施すものであってもよいし、さらに、バンクBKx及びBKyの表面を、正孔輸送材料や電子輸送性発光材料等の有機化合物含有液に対して撥液性を有するように(はじくように)、フッ素系化合物の被膜を形成することにより撥液化処理を施すものであってもよい。
その後、図9(a)に示すように、少なくとも各画素形成領域Rpxを含む絶縁性基板11上に光透過性を有する導電層(透明電極層)を形成し、上記有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を介して各画素電極15に対向する共通の対向電極(例えばカソード電極)17を形成する(対向電極形成工程)。
具体的には、図10に示す模式図のように、例えば蒸着法やスパッタリング法等により電子注入層104となるバリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、フッ化リチウム(LiF)等の金属材料(アルカリ又はアルカリ土類金属)からなる薄膜を形成した後、その上層にITOやタングステン−亜鉛ドープ酸化インジウム(Indium Tungsten-Zinc Oxide;IWZO)等をターゲットとした対向ターゲットスパッタリング法において、スパッタリング時の雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用い、圧力を100mPaに設定して、50nm(500Å)の膜厚で成膜した透明電極層からなる対向電極105(17)を積層形成した、厚さ方向に透明な膜構造を適用することができる。
また、図9(a)に示すように、対向電極17は、上記画素電極15に対向する領域のみならず、各画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)を画定するバンクBKx及びBKy上にまで延在する単一の導電層(べた電極)として形成されるとともに、バンクBKxを形成する導電性バンク部18dに電気的に接続されるように接合される。これにより、導電性バンク部18dを各表示画素PIXに共通に接続された共通電圧ライン(カソードライン)Lcとして適用することができる。このように、各表示画素PIX(有機EL素子OLED)間に、対向電極17と等電位の導電性バンク部18dを配設することにより、カソード全体のシート抵抗を低減し、表示パネル10全体で均一な表示特性を実現することができる。
次いで、上記対向電極17を形成した後、図9(b)に示すように、CVD法等を用いて絶縁性基板11の一面側全域にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる透明なパッシベーション膜(保護膜)19を形成する(保護膜形成工程)。具体的には、CVD法等を用いてシリコン窒化膜からなるパッシベーション膜19を600nm(6000Å)の膜厚で形成する。
次いで、乾燥窒素雰囲気中で大気圧力(1atm)下、温度100℃、1時間の加熱処理(アニール)を行って上記パッシベーション膜19の応力緩和処理を施すことにより(応力緩和処理工程)、図4、図5に示したような断面構造を有する表示パネル10が完成する。なお、図10に示した模式図のように、図4、図5に示したようなパネル構造において、上記パッシベーション膜106(19)に加えて、UV硬化又は熱硬化接着剤(封止剤107)を用いて、絶縁性基板11に対向するようにメタルキャップ(封止蓋)やガラス等の封止基板108が接合されているものであってもよい。
このように、本実施形態に係る表示装置の製造方法は、パッシベーション膜19を成膜する際に生じる内部応力に起因して、上記電子輸送性発光層16b及び対向電極17に印加される応力を緩和又は打ち消すために、所定の条件の雰囲気ガス中で加熱処理して、上記パッシベーション膜19の内部応力を緩和させる(低減する)ことを特徴としている。
なお、上述した実施形態においては、表示パネル10(有機EL素子OLED)のパネル構造として、有機EL層16から放射された光が絶縁性基板11を介すことなく、視野側に放出されるトップエミッション型の発光構造を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有機EL素子OLEDを形成する担体輸送層及び電極層上にパッシベーション膜が形成された素子構造を有するものであれば、有機EL層16から放射された光が絶縁性基板11を介して視野側に放出されるボトムエミッション型の発光構造を有する場合であっても良好に適用することができる。
また、本実施形態においては、画素電極15をアノード電極とし、対向電極17をカソード電極とした場合について説明したが、これに限らず画素電極15をカソード電極とし、対向電極17をアノード電極とするものであってもよい。この場合、有機EL層16は、画素電極15に接する担体輸送層が電子輸送性の層であればよい。
(作用効果の検証)
次に、上述した特徴を有する表示装置の製造方法に特有の作用効果について詳しく説明する。
図11は、本実施形態に係る製造方法における作用効果(応力緩和効果)を示す実験データである。
ここでは、本実施形態に係る製造方法として、パッシベーション膜19形成後の応力緩和処理工程において、乾燥した窒素(N2)雰囲気中で大気圧力(1atm)下、80℃の温度条件で1時間の加熱処理(アニール)を行った表示パネル(便宜的に「パネル1」と記す)、及び、同120℃の温度条件で1時間の加熱処理を行った表示パネル(便宜的に「パネル2」と記す)と、比較例として、パッシベーション膜19形成後の応力緩和処理工程において、真空条件下で、100℃の温度で1時間の加熱処理を行った表示パネル(便宜的に「比較例1」と記す)、及び、パッシベーション膜19を有しない(形成されていない)表示パネル(便宜的に「比較例2」と記す)における、発光輝度に対する電流効率(発光効率)の各測定データを示して比較検証を行う。
本実施形態に係る製造方法を適用したパネル1及びパネル2においては、図11中に特性線S1、S2として示すように、概ね50cd/m2程度の比較的低い輝度から概ね1800cd/m2程度の高い輝度まで略全範囲にわたり、概ね10cd/A以上、又は、10cd/A前後の高い電流効率が観測された。
これに対して、比較例1においては、図11中に特性線S3として示すように、概ね500cd/m2程度の低輝度から概ね1400cd/m2程度の高輝度に至る略全範囲で、概ね8cd/A前後の電流効率が観測され、また、概ね500cd/m2以下の輝度範囲では、上記8cd/Aに満たない電流効率が観測された。
すなわち、比較例1においては、低輝度から高輝度に至る略全範囲で電流効率(発光効率)が概ね8cd/A前後であり、本実施形態に係る製造方法を適用したパネル1、パネル2よりも2割程度低く、また、概ね500cd/m2以下の輝度範囲では、安定した電流効率(発光効率)が得られないことが判明した。
一方、パッシベーション膜を有しない表示パネル(比較例2)について、発光輝度に対する電流効率を測定すると、図11中に特性線S4として示すように、比較的低い輝度(概ね50cd/m2付近)で多少のばらつきはあるものの、概ね1800cd/m2程度の輝度までの略全範囲にわたり、概ね10cd/A前後の高い電流効率が観測された。
ここで、比較例2は、発光素子(有機EL素子)上にパッシベーション膜が形成されていない表示パネルであるので、換言すると、パッシベーション膜が形成された表示パネルにおいてパッシベーション膜の内部応力の影響が全くない状態、あるいは、当該影響が極めて小さく抑制された状態と同等であると考えることができる。
このことから、上述した本実施形態に係る製造方法を適用したパネル1、パネル2によれば、パッシベーション膜の内部応力の影響を抑制して、比較例2における場合と略同等の発光効率を得られることが判明した。特に、概ね1000cd/m2以下の輝度範囲では、比較例2における場合と略同等の電流効率(発光効率)が得られることに加え、概ね1000cd/m2以上の輝度範囲では、比較例2における場合よりも高い電流効率(発光効率)が得られ、さらに、低輝度から高輝度に至る略全範囲で比較例2における場合よりも発光輝度に対する電流効率(発光効率)の変動が小さく、安定した発光特性が得られることが判明した。なお、比較例2のようにパッシベーション膜がないと発光素子への水又は酸素等の侵入が促進されてしまい、発光素子の発光寿命が著しく短くなってしまうことはいうまでもない。
このような本実施形態に係る製造方法の作用効果(応力緩和効果)は、概ね以下のようなメカニズムによるものと推測される。
すなわち、上述したパッシベーション膜106(19)として適用されるシリコン窒化膜は、成膜条件や材料組成比等に起因して多孔質(ポーラスな膜質)となり、成膜直後に外気に晒すと空孔部に大気中の水分等が侵入して窒化シリコン分子の未反応基に水酸基が結合することにより体積変化が生じる。ここで、カソード電極等となる対向電極17として形成されるITO膜(電極層)は、上述したように50nm(500Å)と非常に薄く形成されているため、上記のような状態のパッシベーション膜に熱応力が印加されると、ITO膜(電極層)に引っ張り応力が印加されてITOからなる対向電極105(17)と電子注入層104間の密着性が低下し、層間剥離やクラックが発生して、上述したように電流効率(発光効率)が低下するものと考えられている。このような現象は、表示パネルのパッシベーション性を向上させるために、パッシベーション膜を厚く形成するほど顕著に発生する。
そこで、本発明においては、上述した実施形態に示したように、パッシベーション膜の成膜直後に、1atmの窒素ガス雰囲気中で1時間程度、80〜120℃で加熱処理することにより、上記パッシベーション膜の空孔部に窒素が侵入して、パッシベーション膜を形成する窒化シリコン分子の未反応基に窒素が結合して完全な形の窒化シリコン(Si3N4)を形成するアニール処理を行う。これにより外気に晒された場合であっても、パッシベーション膜への水分の侵入(すなわち、窒化シリコン分子の未反応基への水酸基の結合)を抑制してパッシベーション膜の内部応力の発生を抑制することができる。
したがって、本発明に係る表示装置の製造方法によれば、発光素子(有機EL素子)が2次元配列された表示パネル上に形成されたパッシベーション膜の内部応力を緩和又は低減することができるので、熱応力に起因する電極層と電子注入層間の層間剥離やクラックの発生を抑制することができ(換言すれば耐熱性を向上させることができ)、加えて、パッシベーション膜の膜厚を比較的厚く形成することができるので、充分なパッシベーション性を確保することができ、良好な発光特性及び信頼性を有する表示装置を実現することができる。
なお、上述した作用効果の検証においては、パッシベーション膜として、シリコン窒化膜を適用した場合について実験結果を示して説明したが、これに限定されるものではなく、シリコン酸化膜を適用したものであってもよいし、窒化シリコンと酸化シリコンの混合物(SiNO)からなる絶縁膜であってもよい。
また、上述した作用効果の検証においては、応力緩和処理工程の処理条件として、乾燥した窒素雰囲気中で大気圧力(1atm)下、80℃又は120℃の温度条件で1時間の加熱処理(アニール)を行った場合について実験結果を示したが、雰囲気ガスは窒素以外にアルゴン等の他の不活性ガスや水素でもよく、また、雰囲気ガスの圧力は概ね0.2atm以上であればよい。また、加熱温度は概ね60〜140℃の範囲であればよく、加熱時間は概ね10分以上であればよい。ここで、加熱温度は、60℃以下の低温ではアニールによる反応が促進されないため応力緩和効果が小さく、また、140℃以上では電極層(対向電極17)の下層に形成される有機EL層(電子輸送性発光層16b等)の融点(ポリマーの溶融温度Tg)に達して膜特性が変化するため応力緩和効果が小さくなる。本願発明者は各種実験の結果、このような数値範囲を有する処理条件によれば、上記図11に示した場合と略同等の作用効果(応力緩和効果)が得られることを確認した。