JP4864188B2 - 低発塵性潤滑グリースおよび転がり軸受並びに直動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば半導体製造設備や液晶製造設備などのように、クリーンルーム内で使用される軸受装置やボールねじなどの直動装置等の潤滑剤として適用される低発塵性潤滑グリースおよび低発塵性転がり軸受、並びに直動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や液晶の製造工程においては、製品やその部品に触れる空気中の浮遊粒状物質量が一定の規定されたレベル以下となるように製造施設内の空調管理がなされ、清浄な雰囲気に管理された室内はクリーンルームと呼ばれている。製造施設内で空調管理がなされる理由は、微細な塵埃が製品などに付着してそれらの動作信頼性が損なわれないようにし、製造効率を高め、さらには製品の歩留まりを高めるためである。
【0003】
このようなクリーンルーム内で使用される転がり軸受やボールねじ、リニアガイドなどの直動装置には、これらの装置や部品が円滑かつ正確に動作するように潤滑グリースが封入されており、特にその微細な飛沫が発生しないように低飛散性の潤滑グリースが封入されている。
【0004】
また、電子計算機のハードディスク等の情報記録装置においても、記録媒体の表面に微細な塵埃が付着しただけでも誤作動が起きる可能性があるので、情報記録装置またはその付近で使用する軸受には、潤滑グリースの飛沫(ミスト状の微細な飛沫)が発生しないようなグリースを採用した低発塵性転がり軸受を採用している。
【0005】
従来のクリーンルーム用転がり軸受や直動装置に封入される低発塵性グリースとしては、比重の大きなフッ素系グリースが知られており、その代表例としてパーフルオロポリエーテル(PFPE)を基油とし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を増ちょう剤としたものがある。
【0006】
しかし、フッ素系グリースは、潤滑性が充分でなく、転がり軸受のトルクを所要の程度にまで充分に低下させることができない場合があった。
【0007】
また、鉱油を基油としナトリウムコンプレックス石けん(複合ナトリウム石けん)を増ちょう剤とするアンドックC(商品名)その他のナトリウム石けん系グリースを電子計算機用グリースとして用いた例もある。
【0008】
しかし、このグリースは、吸水性が高いのでグリースの性状が経時的に変化して潤滑不良を起こしやすく、また音響性能が良くないので、特に低騒音・低振動性を重視する用途には不適当であった。
【0009】
また、特開平5−9489号公報には、電子計算機の軸受用のグリース組成物として、鉱油、合成炭化水素油およびポリフェニルエーテル油の群の中から選ばれた少なくとも1種の基油と水酸基を含まない炭素数12〜24の高級脂肪酸のリチウム塩を20〜30重量%含有する組成物が記載されている。
【0010】
また、特開平6−330070号公報には、電子計算機の軸受用グリース組成物として、鉱油および合成炭化水素油から選ばれた少なくとも1種の基油と、炭素数12〜24の高級脂肪酸のリチウム塩と高級ヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩からなる増ちょう剤を20〜30重量%含有するグリース組成物が記載され、特開平8−270747号公報には、ボールねじ装置やリニアガイド装置に上記グリース組成物を封入した低発塵性の直動装置が記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の低発塵性潤滑グリースは、低発塵性を向上させるために増ちょう剤の種類を選択的に採用したものにすぎず、増ちょう剤の特定の物性と低発塵性との関係について何も明らかにされていない。
【0012】
このように本願の各請求項に係る発明は、増ちょう剤の繊維形状の長さと発塵性との関係について、本願の発明者らが所定の対応関係を見いだしたことに基づいている。
【0013】
また、従来の低発塵性転がり軸受のグリースの混和稠度は、低発塵性を確実にするために調整されておらず、軟質のものは剪断力を受けた時に過度に軟化して微粒子が形成され飛散し易いという問題点もあった。
【0014】
また、炭素数12〜24の高級脂肪酸のリチウム塩と高級ヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩からなる金属石けんは、耐熱性の優れた増ちょう剤であるが、転がり軸受に充填するとグリースの飛沫が発生しやすいという問題点もあった。
【0015】
そこで、本願の各請求項に係る発明の課題は、上記した問題点を解決して、低発塵性転がり軸受を提供するに当たり、増ちょう剤の繊維形態を最良の状態に特定することによる新規な低発塵性潤滑グリースを提供することである。
【0016】
また、本願の各請求項に係る発明においてその他の解決すべき課題としては、耐熱性に優れた潤滑グリースであり、しかも長時間連続して使用した場合でも基油などの飛沫が発生し難い低発塵性潤滑グリース、さらにこれを封入しクリーンルームなどで使用される低発塵性転がり軸受または低発塵性直動装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本願の低発塵性潤滑グリースに係る発明は、基油に長さ2μm以下の繊維状増ちょう剤を分散させてなる低発塵性潤滑グリースとしたのである。
【0018】
上記したように構成されるこの発明の低発塵性潤滑グリースは、微細な短繊維構造の増ちょう剤が基油中に均一分散して均質で低発塵性の優れた潤滑グリースになる。
【0019】
このような長さ2μm以下の繊維状増ちょう剤は、化学構造式中に水酸基を含まない脂肪酸リチウム塩を採用することができる。
【0020】
化学構造式中に水酸基を有するリチウム石けんは、捩じれて長く延びた長繊維状構造になり、均一分散させることは困難である。しかし、この発明に用いる水酸基を含まない脂肪酸リチウム塩からなるリチウム石けん系増稠剤は、高温でのグリースちょう度を安定させるものであると共に、ミセルを形成する繊維構造が紡錘型の短い棒状であるため、化学構造式中に水酸基を含む高級ヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩などの長繊維型の増ちょう剤に比べて細かく分散する。
【0021】
混和ちょう度を所定の範囲に調整した低発塵性潤滑グリースは、転がり軸受内で攪拌されてせん断を受けた際にも所定のちょう度を維持するため、軸受外に飛散し難い。そのため、上記の低発塵性潤滑グリースは、低発塵性を確実に得るものである。
【0022】
また、潤滑グリースの主成分である基油は、25℃における表面張力25mN/m以上の基油であることが、調製された潤滑グリースの低発塵性を確実にするために好ましい。
【0023】
このようにして緻密なミセルを分散した潤滑グリース組成物は、封入された軸受が長時間回転した時にも離油度が低く安定し、基油が過剰に分離して飛散せず、高温で長時間回転させた場合も封入した装置からの発塵量は少なくなる。
【0024】
上述したような潤滑グリースを封入して低発塵性を発揮させる適当な対象となる装置としては、転がり軸受または、ボールねじもしくはリニアガイドなどの直動装置が適当である。
【0025】
【発明の実施の形態】
各請求項に係る発明に用いるグリースの基油は、その種類を限定することなく採油したものであるが、好ましくは25℃における表面張力25mN/m以上の基油である。
【0026】
表面張力25mN/m以上の基油の例として、鉱油、合成炭化水素油およびエーテル油から選ばれる一種以上の潤滑油または任意配合比率の混合油を使用したものが挙げられる。
【0027】
このような基油は、40℃での動粘度が10〜200mm2 /sであるものが好ましい。動粘度(40℃)が10mm2 /s未満の基油を用いた潤滑グリースは、蒸発量が多くなり、その寿命は短くなるからである。また、動粘度(40℃)が200mm2 /sを越える基油を用いた潤滑グリースは、せん断力を受けた場合に抵抗が大きく、転がり軸受に封入された状態で回転トルクが大きくなって好ましくない。このような理由から、より好ましい基油の動粘度(40℃)は、20〜100mm2 /sである。
【0028】
基油として用いる鉱油は、石油からの高度精製油であることが潤滑性能を安定させるために好ましく、またパラフィン系の鉱油よりもナフテン系の鉱油がより好ましい。
【0029】
基油として用いる合成炭化水素油の具体例としては、ポリαオレフィン油、ポリα−オレフィンとエチレンのコオリゴマー合成油、液状ポリブテンなどのオレフィン重合油またはアルキル芳香族油などが挙げられる。このうち、1−デセン(CH3 (CH2 )7 CH=CH2 )のオリゴマーやポリα−オレフィンとエチレンの共重合体からなる合成油などを用いることが好ましい。
【0030】
基油として用いるエーテル油の具体例としては、市販されている芳香環数が2〜5環のものを挙げられるが、エーテル油の化学構造における環数が増えるとそれだけ低温域での性能が低下し、また高価にもなる。そのため、芳香環数が2〜4環であってアルキル置換基によって低温性能を向上させたジフェニル、トリフェニル、テトラフェニルのC12〜C20の(ジ)アルキル基が導入されたフェニルエーテル油が好ましく、より好ましくはアルキルジフェニルエーテル油である。
【0031】
この発明に用いる増ちょう剤は、長さ2μm以下の繊維状増ちょう剤であればよく、周知の短繊維状増ちょう剤を使用できるが、そのうち耐熱性の良いリチウム石けん、特に化学構造式中に水酸基を含まないリチウム石けんが、より適当なものである。
【0032】
リチウム石けんの具体例としては、ラウリン酸(C12)リチウム、ミリスチン酸(C14)リチウム、パルミチン酸(C16)リチウム、マルガリン酸(C17)リチウム、ステアリン酸(C18)リチウム、アラキジン酸(C20)リチウム、ベヘン酸(C22)リチウム、リグノセリン酸(C24)リチウム、牛脂脂肪酸リチウム、リシノール酸リチウム、リシノエライジン酸リチウムなどが挙げられる。このうち、特に好ましいリチウム石けんは、ステアリン酸リチウム(CH3 (CH2 )16COOLi)であることが、後述する実施例からも明らかで、これらはミセルを形成する繊維構造が紡錘型で長さ2μm以下の短い棒状形態である。
【0033】
このような短繊維状増ちょう剤は、潤滑グリースの混和ちょう度(JIS K2220)(40℃)が180〜260に調整できるものであればよく、配合割合との関係もあって繊維長の下限値を明瞭に限定することは困難である。
【0034】
なお、9−ヒドロキシステアリン酸リチウム、10−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、9,10−ヒドロキシステアリン酸リチウムなどの水酸基を含有するリチウム石けんは、捩れて2μmを越える長さに延びた長繊維状構造であり、所期した均一分散性がないので、この発明には使用できないものである。
【0035】
この発明の潤滑グリースの混和ちょう度(JIS K2220)は、前述したように発塵を抑制するために180〜260にすることが好ましい。混和ちょう度が180未満では、転がり軸受の軸受トルクが大きくなり、小径の軸受への封入が困難になる。また、前記混和ちょう度が260を越えると、飛散による発塵量が多くなり、高速回転すると転がり軸受に潤滑不足が起こり、転がり軸受に騒音が発生する場合も起こりうる。
【0036】
増ちょう剤の配合割合は、潤滑グリースを所定の混和ちょう度に調整されるよう15重量%以上配合する。配合割合が、15重量%未満の少量では、ちょう度が不充分になり、グリースが軟質になって飛散し易くなる。グリース中の所定のリチウム石けん系増稠剤の配合割合の上限は、実用的な限界に合わせて調製すればよいので、特に限定する必要性は少ないが、例えば30重量%を越えて配合すると、ちょう度が小さくなりすぎて軸受などの潤滑装置への封入作業が容易でなくなる。
【0037】
また、潤滑グリースには、所期の目的を阻害しないように周知の防錆剤や酸化防止剤、極圧添加剤、摩耗抑制剤、油性剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、構造安定剤、増粘剤、帯電防止剤、乳化剤、着色剤などを添加してもよい。
【0038】
本願の発明における転がり軸受の種類は、保持器付きの転がり軸受であってもよく、また内輪および外輪からなる対の軌道輪の間に複数のボールを軌道の周方向の間隔を規制せずに組み込んだ総ボール転がり軸受であってもよい。転がり軸受のボール列は、単列または複列のいずれであってもよく、深溝型の転がり軸受やアンギュラ型のラジアル玉軸受に適用できる。また、スラスト玉軸受にも適用でき、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受であってもよい。
【0039】
また、本願の発明における低発塵性直動装置は、回転運動と直線運動の相互変換用伝動装置であるボールねじ、もしくは精密位置決めユニットのXYテーブルに用いられるようなリニアガイドなどの、いわゆる直動装置である。
【0040】
因みに、ボールねじは、ねじ軸とナットの間に多数のボールを介在させ、前記ボールはねじ溝およびナットの内部または外部に設けた循環路を転動しながら循環してねじ軸の回転運動をねじ軸方向の直線運動に相互変換する周知の伝動装置である。
【0041】
そして、このような低発塵性転がり軸受または低発塵性直動装置は、例えば半導体製造装置や液晶製造装置などのように、微小な塵埃の浮遊も許容できないクリーンルーム内の装置等に適用されるものである。
【0042】
【実施例および比較例】
〔実施例1、参考例1〜6、比較例1〜6〕
表1または2に示す配合割合で、基油、増ちょう剤を配合して潤滑グリースを調製した。なお、表中に示す各配合割合は、重量%で示した。
【0043】
グリースの調製は、基油、増ちょう剤およびその他の添加剤を容器内で加熱しながら混合し、混合物が完全に溶解した状態のものを、氷水で底面を冷却したステンレスパッドに注ぎ入れて急激に冷却し、グリース状の組成物を得るようにした。
【0044】
得られたグリース状組成物を試験軸受〔内径8mm、外径22mm、幅7mmの深溝型玉軸受(ナイロン製の保持器付き、ボール個数7個)〕または試験ボールねじ〔軸径φ14mm、リード4mm、BCD14.3mm、ボール径φ2.381mm、リード角5°50′、循環方式:ガイドプレート方式、巻数:3.7巻1列、材質:SUS440C)にそれぞれ0.1gずつ充填し、以下に示す発塵量測定試験を行ない、この結果を表1または表2中に併記した。
【0045】
[軸受の発塵量測定試験(1) ]
図1に試験装置の概略説明図を示すように、試験台1を貫通する回転軸2の上部に2個の試験用軸受3を軸方向に並べて取付け、クランプ型治具4にコイルばね5を介して2つの試験用軸受にスラスト荷重を負荷し、試験台1上に固定された係止具6でクランプ型治具4を回転しないように固定した。
【0046】
そして、試験台1の上面には、箱型の気密性カバー7をクランプ型治具4を覆うように設け、この気密性カバー7には、クリーンエア(塵埃を含まない清浄空気)の導入ダクト8および排気ダクト9を接続し、排気ダクト9は吸気ポンプを内蔵するダストカウンタ10(パーティクルカウンタとも呼ばれる。)に接続した。なお、回転軸2は電動モータ11で回転させ、試験台1と回転軸2は磁性流体シール12で密封した。
【0047】
試験条件は、試験軸受に対するスラスト荷重を10Nとし、回転軸の回転速度は1500回転/分、試験は室温環境で1000時間連続して行ない、試験終了時にダストカウンタ10で粒子径(直径)0.1μm以上の浮遊粒子の採集個数(個/cf)を測定した。
【0048】
[ボールねじの発塵量測定試験(2) ]
図2に示すように、試験装置は、台付き枠13の上部に基板14を固定し、この基板14を貫通する回転軸15を設け、回転軸15の上部は台付き枠13の最上部に固定した電動モータ16で回転させ、回転軸15の下部は、外周面に螺旋状のボールねじ溝のあるボールねじ軸17に対して継手を介して接続し、ボールねじ軸17にはボールナット18を取り付けてボールねじ19を支持する構造のものである。
【0049】
そして、基板14の下面には、回転軸15の下部およびボールねじ19を覆うように気密性のカバー20を取り付け、カバー20には、図外のエアクリーンユニットから導入される空気(φ0.1μm以上の塵埃を95%以上除去した清浄空気)をエアフィルタ(φ0.05μm以上の塵埃を100%除去できるもの)21に通過させた状態で導入するようにした清浄空気の導入ダクト22を接続し、排気ダクト23はダストカウンタ10に接続している。
【0050】
なお、基板14と回転軸15は、磁性流体シール24によって密封し、ボールナット18は、上下方向に配置した図外のガイドレールによって回り止めされた状態で上下方向に移動自在である。
【0051】
試験条件は、ボールねじ軸17の回転速度を1500rpmとし、ボールナット18のボールねじ軸17上のストローク長を150mmとし、加減速時間を0.05秒とし、ボールねじ軸17のストローク長の両端部で停止時間が1秒となるように間欠往復移動させる動作条件とした。また、このとき流量:28.3リットル/分の清浄空気を1分間導入ながら、発塵粒子の個数を測定し、次いで20分間空気導入を停止するというサイクルを300時間繰り返して、ダストカウンタで粒子径(直径)0.1μm以上の浮遊粒子の総採集個数(個/cf)を測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および表2の結果からも明らかなように、増ちょう剤の繊維長が2μmを越える潤滑グリースを封入した比較例1〜6の転がり軸受およびボールねじは、発塵試験(1) 、(2) において、いずれも多数の発塵粒子個数が計数された。特に、増ちょう剤がPTFEからなり、繊維が2μmを越えてかなり長い比較例5の発塵粒子個数は著しく多かった。
【0055】
これに対して、増ちょう剤の繊維長が2μm以下で、混和ちょう度が180〜260、基油の表面張力が31.7〜48mN/mの実施例1〜7の潤滑グリースを封入している実施例1、参考例1〜6は、転がり軸受またはボールねじの発塵量が、前者580〜790(個/cf)、後者190〜340(個/cf)という少量であり、発塵量の極めて少ない低発塵性潤滑グリース、転がり軸受またはボールねじであった。
【0056】
なお、実施例1、参考例1〜6においては、増稠剤として水酸基を有しないステアリン酸リチウムを使用し、転がり軸受またはボールねじの発塵個数は少なかったが、増稠剤として水酸基を含有するものを使用した比較例3、4は、転がり軸受およびボールねじのいずれの発塵個数も多数であった。
【0057】
【発明の効果】
本願の各請求項に係る発明のうち、低発塵性潤滑グリースは、以上説明したように、基油に所定長さ以下の繊維状増ちょう剤を分散させたものであるから、増ちょう剤の繊維形状の改良によって、特に基油の種類を選ばずとも確実に発塵性が低く抑えられた低発塵性潤滑グリースを提供できる。
【0058】
また、混和ちょう度を所定範囲に調整した低発塵性潤滑グリースは、転がり軸受内で攪拌されてせん断を受けた際にも所定のちょう度を維持するため、低発塵性を確実に得る利点がある。
【0059】
化学構造式中に水酸基を有しない脂肪酸リチウム塩からなる繊維状増稠剤を分散させた潤滑グリースは、高温でのグリースちょう度が安定し、ミセルを形成する繊維構造が紡錘型の短い棒状であり、基油中に均一分散するため、低発塵性を確実に奏する利点がある。
【0060】
また、潤滑グリースからの発塵は、転動部で加わる力によって変形や分離が生じ、分離した粒子が発塵になると考えられるが、25℃における表面張力25mN/m以上の基油を用いた潤滑グリースは、潤滑剤の分離に対する抵抗が大きいので、低発塵性はより確実になる。
【0061】
低発塵性潤滑グリースを、クリーンルームなどで用いる低発塵性転がり軸受に採用すると、上記した利点に加えてクリーンルームなどの転がり軸受を使用する雰囲気内にグリース飛沫やミストなどの浮遊微粒子で雰囲気を汚染することがない。
【0062】
また、低発塵性潤滑グリースを、ボールねじ装置またはボールねじ支持用軸受などの低発塵性直動装置に封入して使用すれば、上記した利点に加えて直動装置外部環境の発塵量を極力低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり軸受に対する発塵試験装置の概略説明図
【図2】ボールねじに対する発塵試験装置の概略説明図
【符号の説明】
1 試験台
2、15 回転軸
3 試験用軸受
4 クランプ型治具
5 コイルばね
6 係止具
7 気密性カバー
8、22 導入ダクト
9、23 排気ダクト
10 ダクトカウンタ
11、16 電動モータ
12、24 磁性流体シール
13 台付き枠
14 基板
17 ボールねじ軸
18 ボールナット
19 ボールねじ
20 カバー
21 エアフィルタ
Claims (3)
- 潤滑グリースの増ちょう剤が、繊維長0.9μm以下で化学構造式中に水酸基を含まない脂肪酸リチウム塩からなり、混和ちょう度(JISK2220)が180〜260であるように前記増ちょう剤を動粘度(40℃)が10〜35mm 2 /sのアルキルジフェニルエーテル油からなる基油に分散させてなる低発塵性潤滑グリース。
- 請求項1に記載の低発塵性潤滑グリースを転がり軸受に封入した低発塵性転がり軸受。
- 請求項1に記載の低発塵性潤滑グリースを装置内に封入した低発塵性直動装置。
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