JP4837871B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゲッタリング技術を用いた半導体装置の作製方法に関する。特に本発明は、半導体膜の結晶化を助長する金属元素を添加して作製される結晶構造を有する半導体膜の作製方法および該半導体膜を用いた半導体装置の作製方法に関する。また、半導体基板やSOI技術を用いて作製する半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【0003】
【従来の技術】
結晶構造を有する半導体膜を用いた代表的な半導体素子として薄膜トランジスタ(以下、TFTと記す)が知られている。TFTはガラスなどの絶縁基板上に集積回路を形成する技術として注目され、駆動回路一体型液晶表示装置などが実用化されつつある。従来の技術において、結晶構造を有する半導体膜は、プラズマCVD法や減圧CVD法で堆積した非晶質半導体膜を、加熱処理やレーザーアニール法(レーザー光の照射により半導体膜を結晶化させる技術)により作製されている。
【0004】
こうして作製される結晶構造を有する半導体膜は多数の結晶粒の集合体であり、その結晶方位は任意な方向に配向して制御不能であるため、TFTの特性を制限する要因となっている。このような問題点に対し、特開平7−183540号公報で開示される技術は、ニッケルなど半導体膜の結晶化を助長する金属元素を添加し、結晶構造を有する半導体膜を作製するものであり、結晶化に必要とする加熱温度を低下させる効果ばかりでなく、結晶方位の配向性を単一方向に高めることが可能である。このような結晶構造を有する半導体膜でTFTを形成すると、電界効果移動度の向上のみでなく、サブスレッショルド係数(S値)が小さくなり、飛躍的に電気的特性を向上させることが可能となっている。
【0005】
結晶化を助長する金属元素を用いることによって、結晶化における核発生が制御可能となるため、核発生がランダムである他の結晶化方法に比べて得られる膜質は均一であり、理想的には、完全に金属元素を除去または許容範囲までに低減することが望ましい。しかし、結晶化を助長する金属元素を添加する故に、結晶構造を有する半導体膜の膜中或いは膜表面には、当該金属元素が残存し、得られる素子の特性をばらつかせるなどの問題がある。その一例は、TFTにおいてオフ電流が増加し、個々の素子間でばらつくなどの問題がある。即ち、結晶化を助長する金属元素は、一旦、結晶構造を有する半導体膜が形成されてしまえば、かえって不要な存在となってしまう。
【0006】
リンを用いたゲッタリングは、結晶構造を有する半導体膜のうち特定の領域から結晶化を助長する金属元素を除去するための手法として有効に活用されている。例えば、TFTのソース・ドレイン領域にリンを添加して450〜700℃の熱処理を行うことで、チャネル形成領域から当該金属元素を容易に除去することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
リンはイオンドープ法(PH3などをプラズマで解離して、イオンを電界で加速して半導体中に注入する方法であり、基本的にイオンの質量分離を行わない方法を指す)で結晶構造を有する半導体膜に注入するが、ゲッタリングのために必要なリン濃度は1×1020/cm3以上である。イオンドープ法によるリンの添加は、結晶構造を有する半導体膜の非晶質化をもたらすが、リン濃度の増加はその後のアニールによる再結晶化の妨げとなり問題となっている。また、高濃度のリンの添加は、ドーピングに必要な処理時間の増大をもたらし、ドーピング工程におけるスループットを低下させるので問題となっている。
【0008】
さらに、pチャネル型TFTのソース・ドレイン領域に添加したリンに対し、その導電型を反転させるために必要な硼素の濃度は1.5〜3倍が必要であり、再結晶化の困難さに伴って、ソース・ドレイン領域の高抵抗化をもたらし問題となっている。
【0009】
また、基板内でゲッタリングが十分にされず、ゲッタリングにバラツキが生じると、各々のTFT特性に若干の差、即ちバラツキが生じていた。透過型の液晶表示装置の場合、画素部に配置されるTFTに電気特性のバラツキがあれば、各画素電極に印加する電圧のバラツキが生じ、そのため透過光量のバラツキも生じ、これが表示むらとなって観察者の目に映ることになる。
【0010】
また、有機発光素子を用いた発光装置にとって、TFTはアクティブマトリクス駆動方式を実現する上で、必須の素子となっている。従って、有機発光素子を用いた発光装置は、少なくとも、スイッチング素子として機能するTFTと、有機発光素子に電流を供給するTFTとが、各画素に設けられることになる。画素の回路構成、及び駆動方法によらず、有機発光素子と電気的に接続され、且つ、有機発光素子に電流を供給するTFTのオン電流(Ion)で画素の輝度が決定されるため、例えば、全面白表示とした場合、オン電流が一定でなければ輝度にバラツキが生じてしまうという問題がある。
【0011】
本発明はこのような問題を解決するための手段であり、半導体膜の結晶化を助長する金属元素を用いて結晶構造を有する半導体膜を得た後、該膜中に残存する当該金属元素を効果的に除去する技術を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ゲッタリング技術は単結晶シリコンウエハーを用いる集積回路の製造技術において主要な技術として位置付けられている。ゲッタリングは半導体中に取り込まれた金属不純物が、何らかのエネルギーでゲッタリングサイトに偏析して、素子の能動領域の不純物濃度を低減させる技術として知られている。それは、エクストリンシックゲッタリング(Extrinsic Gettering)とイントリンシックゲッタリング(Intrinsic Gettering)の二つに大別されている。エクストリンシックゲッタリングは外部から歪場や化学作用を与えてゲッタリング効果をもたらすものである。高濃度のリンを単結晶シリコンウエハーの裏面から拡散させるリンゲッタはこれに当たり、前述のリンを用いたゲッタリングもエクストリンシックゲッタリングの一種と見なすことができる。
【0013】
一方、イントリンシックゲッタリングは単結晶シリコンウエハーの内部に生成された酸素が関与する格子欠陥の歪場を利用したものとして知られている。本発明は、このような格子欠陥、或いは格子歪みを利用したイントリンシックゲッタリングに着目したものであり、厚さ10〜200nm程度の結晶構造を有する半導体膜に適用するために以下の手段を採用するものである。
【0014】
本発明は、窒化珪素膜上に金属元素を用いて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する工程と、エッチングストッパーとなる膜(バリア層)を形成する工程と、希ガス元素を含む第2の半導体膜(ゲッタリングサイト)を形成する工程と、ゲッタリングサイトに金属元素をゲッタリングさせる工程と、前記第2の半導体膜を除去する工程と、バリア層を除去する工程とを有している。
【0015】
本明細書で開示する作製方法に関する発明の構成1は、
絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜の表面にバリア層を形成する第4の工程と、
前記バリア層上に、プラズマCVD法で成膜室に導入する希ガスとモノシランの流量比(SiH4:希ガス)を0.1:99.9〜1:9に制御して希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成する第5工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0016】
また、本発明は、絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜の表面にバリア層を形成する第4の工程と、
前記バリア層上に、プラズマCVD法で成膜室に導入する希ガスとモノシランの流量比(SiH4:希ガス)を0.1:99.9〜1:9に制御して希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成する第5工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程とを有することを特徴とする半導体膜の作製方法である。
【0017】
本発明は、上記ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜を形成する工程として、プラズマCVD法を用い、原料ガスとしてモノシランと希ガス元素を用い、比率(モノシラン:希ガス)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御して成膜し、高濃度に希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜、代表的にはアモルファスシリコン膜を形成することを特徴としている。また、モノシランに代えて、ジシランやトリシランを用いてもよい。
【0018】
さらに、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際のRFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることが望ましい。なお、0.48W/cm2よりも高いRFパワーとすると膜にならず粉になってしまったり、膜に半球状の浮きが発生したりする成膜不良が発生しやすい。
【0019】
加えて、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際の圧力は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)、好ましくは、53.32Pa(0.4Torr)未満とすることが望ましい。なお、66.65Paよりも高い成膜圧力とすると膜にならず粉になってしまったり、膜に半球状の浮きが発生したりする成膜不良が発生しやすい。
【0020】
プラズマCVD法で成膜室に導入する希ガスとモノシランの流量比(SiH4:希ガス)を上記範囲に制御し、且つ、RFパワー密度を上記範囲とし、且つ、圧力を上記範囲として第2の半導体膜を形成することによって、バリア層との密着性を高めることができ、成膜後に行う熱処理によってピーリングが生じない。加えて、希ガス元素を高濃度に含み、高いゲッタリング能力を有するゲッタリングサイトを形成することができる。
【0021】
また、バリア層の膜厚は、1〜10nmと薄く、バリア層上に第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する場合、成膜時に発生するプラズマなどでダメージを受けて部分的にバリア層が破壊される恐れがあった。バリア層が部分的に破壊された場合、後に行われるエッチングで第2の半導体膜を除去する際にエッチングストッパーとして十分機能せず、第1の半導体膜の膜厚バラツキや第1の半導体膜に穴が形成されるといった不良が発生する。しかし、プラズマCVD法で成膜室に導入する希ガスとモノシランの流量比(SiH4:希ガス)を上記範囲に制御し、且つ、RFパワー密度を上記範囲とし、且つ、圧力を上記範囲として第2の半導体膜を形成することによって、バリア層に与えるダメージを低減することができ、第1の半導体膜の膜厚のバラツキ発生や第1の半導体膜に穴が形成されるという不良の発生を防ぐことができる。
【0022】
また、ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜は、それぞれ異なる条件(原料ガス、成膜圧力、ガス流量、RFパワー)を用いたプラズマCVD法で得られる2層以上の積層であってもよい。
【0023】
また、ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜に希ガス元素の濃度勾配をもたせ、効率よくゲッタリングさせてもよい。その場合、成膜条件(RFパワー、成膜圧力、ガス流量など)で第2の半導体膜に希ガス元素の濃度勾配をもたせればよい。第2の半導体膜に希ガス元素の濃度勾配をもたせた場合、第2の半導体膜の下層部分にゲッタリングされた金属元素が濃度の高い表面に向かって移動しやすくなり、金属元素のゲッタリング能力が飽和しにくくなる。なお、ゲッタリングの際、希ガス元素を含む第2の半導体膜にある量の金属元素がゲッタリングされると、飽和し、それ以上金属元素がゲッタリングされない。
【0024】
また、本明細書で開示する作製方法に関する発明の構成2は、
絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第4の工程と、
前記バリア層上に第2の半導体膜を形成すると同時に前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第5工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程と、
前記バリア層を除去する第8工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0025】
上記構成2においても、上記ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜を形成する工程として、プラズマCVD法を用い、原料ガスとしてモノシランと希ガス元素を用い、比率(モノシラン:希ガス)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御して成膜し、高濃度に希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜、代表的にはアモルファスシリコン膜を形成することを特徴としている。また、モノシランに代えて、ジシランやトリシランを用いてもよい。ジシランを用いる場合には、比率(ジシラン:希ガス)を0.05:99.95〜1:9に制御して成膜すればよい。さらに、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際のRFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることが望ましい。 加えて、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際の圧力は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)、好ましくは、53.32Pa(0.4Torr)未満とすることが望ましい。
【0026】
また、上記構成2においては、第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行うことを特徴としている。従って、ゲッタリングと同時に次々に新しいゲッタリングサイトを堆積することになる。比率(モノシラン:希ガス)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御し、RFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることによって、成膜速度が低下するため、成膜中は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)の圧力下でアニールされることになる。即ち、第2の半導体膜の成膜温度がアニール温度となり、成膜時間の間は第1の半導体膜中の金属元素を第2の半導体膜中に移動させることができる。成膜温度としては、300℃〜500℃とすればよい。この成膜温度の範囲であれば耐熱性ガラスの歪点以下であるため好ましい。成膜温度を上げれば上げるほど、第2の半導体膜中に含まれる希ガス元素の濃度が高くなるため、ゲッタリングサイトとして最適なものとすることができる。また、ジシランやトリシランを用いることができる。ジシランはモノシランに比べ分解する温度が低いが、第2の半導体膜中に希ガス元素を高濃度に含ませるためにはプラズマを発生させるプラズマCVD法で行うことが重要である。なお、成膜温度を上げても上記成膜条件とすることでピーリングなどの成膜不良は発生しない。また、真空下での熱処理となるので不純物の混入を防止することができる。
【0027】
第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行うことで、後に行う加熱処理によるゲッタリングに必要とされる時間を短縮することができる。また、第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行って十分に第1の半導体膜中の金属元素を低減できる場合には、後に行う加熱処理によるゲッタリングを省略することができる。
【0028】
また、単結晶シリコン基板を用いた場合にも本発明は適用することができ、本明細書で開示する作製方法に関する発明の構成3は、
結晶構造を有する第1の半導体上にバリア層を形成する第1の工程と、
前記バリア層上に第2の半導体膜を形成すると同時に前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体中の前記金属元素を除去または低減する第2工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体中の前記金属元素を除去または低減する第3工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第4工程と、
前記バリア層を除去する第5工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0029】
また、SOI技術、特にシリコン基板に酸素をイオン注入後、熱処理してシリコン基板内に酸化シリコン層を形成するSIMOX法にも本発明は有用であり、本明細書で開示する作製方法に関する発明の構成4は、
絶縁表面上に設けられた結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第1の工程と、
前記バリア層上に第2の半導体膜を形成すると同時に前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第2工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第3工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第4工程と、
前記バリア層を除去する第5工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0030】
上記構成3及び上記構成4においても、上記ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜を形成する工程として、プラズマCVD法を用い、原料ガスとしてモノシランと希ガス元素を用い、比率(モノシラン:希ガス)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御して成膜し、高濃度に希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜、代表的にはアモルファスシリコン膜を形成することを特徴としている。また、モノシランに代えて、ジシランやトリシランを用いてもよい。ジシランを用いる場合には、比率(ジシラン:希ガス)を0.05:99.95〜1:9に制御して成膜すればよい。さらに、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際のRFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることが望ましい。 加えて、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際の圧力は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)、好ましくは、53.32Pa(0.4Torr)未満とすることが望ましい。
【0031】
また、本発明において、エッチングストッパーとなる膜(バリア層)を形成する工程は、レーザー光の照射により前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化した後、さらにオゾンを含む溶液で前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する工程、或いは、オゾンを含む溶液で前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する工程、もしくは酸素雰囲気下の紫外線の照射で前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する工程とすればよい。また、バリア層を形成する他の工程としては、酸素プラズマ処理により前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する工程も挙げられる。また、バリア層を形成する他の工程としては、プラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜または酸化窒化膜を堆積して形成する工程としても良い。また、バリア層を形成する他の工程としては、クリーンオーブンを用い、200〜500℃程度に加熱して前記結晶構造を有する半導体膜の表面に薄い酸化膜を形成しても良い。なお、バリア層を形成する他の工程として、上記形成方法のいずれか一の方法、またはそれらの方法を組み合わせて形成してもよい。
【0032】
また、プラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜または酸化窒化膜を堆積して形成する工程とする場合には、バラツキを低減するため、前記バリア層を形成する前に前記第1の半導体膜表面の不純物(酸化物を含む)を除去することが好ましい。
【0033】
上記形成方法の中でも、プラズマCVD法を用い、成膜室にシラン系ガスと窒素酸化物系ガスを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて形成した酸化窒化シリコン膜をバリア層として用いた場合、希ガス元素を含む第2の半導体膜と、バリア層をともにプラズマCVD法により形成することができる。また、希ガス元素を含む第2の半導体膜と、バリア層を大気に触れさせることなく成膜することが可能であり、さらに同一チャンバーで連続的に成膜することも可能であるため、スループットに優れている。なお、プラズマCVD法はガスによる成膜室(チャンバーとも呼ぶ)内のクリーニングが行えるため、スパッタ法に比べてメンテナンスが少なくて済み、量産には適した成膜方法である。
【0034】
本明細書中、バリア層とは、ゲッタリング工程において金属元素が通過可能な膜質または膜厚を有し、且つ、ゲッタリングサイトとなる層の除去工程においてエッチングストッパーとなる層を指している。
【0035】
また、上記各構成において、金属元素は、Fe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種であることを特徴としている。これらの金属元素を非晶質構造を有する半導体膜に添加すると結晶化が良好に行われる。
【0036】
また、上記各構成において、希ガス元素はHe、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種であり、これらのイオンを半導体膜中に含有させることにより、格子歪みを形成してゲッタリングサイトを形成することができる。また、上記各構成において、前記第2の半導体膜に含まれる希ガス元素の濃度は、1×1018/cm3〜1×1022/cm3であることを特徴としている。
【0037】
本発明により十分に結晶化を助長する金属元素が低減または除去された結晶構造を有する半導体膜を得ることができ、該半導体膜を活性層とするTFTにおいて電気特性の向上、特にオフ電流を低減し、個々の素子間でのバラツキを低減することができる。
【0038】
また、結晶構造を有する半導体膜までを形成する場合、本発明は、
絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第4の工程と、
前記バリア層上に第2の半導体膜を形成すると同時に前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第5工程と、
加熱処理を行い、前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程と、
前記バリア層を除去する第8工程とを有することを特徴とする半導体膜の作製方法を提供する。
【0039】
また、上記構成において、上記ゲッタリングサイトとなる第2の半導体膜を形成する工程として、プラズマCVD法を用い、原料ガスとしてモノシランと希ガス元素を用い、比率(モノシラン:希ガス)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御して成膜し、高濃度に希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜、代表的にはアモルファスシリコン膜を形成することを特徴としている。また、モノシランに代えて、ジシランやトリシランを用いてもよい。ジシランを用いる場合には、比率(ジシラン:希ガス)を0.05:99.95〜1:9に制御して成膜すればよい。さらに、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際のRFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることが望ましい。 加えて、上記第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜する際の圧力は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)、好ましくは、53.32Pa(0.4Torr)未満とすることが望ましい。
【0040】
また、上記構成において、金属元素は、Fe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種であることを特徴としている。これらの金属元素を非晶質構造を有する半導体膜に添加すると結晶化が良好に行われる。
【0041】
また、上記構成において、希ガス元素はHe、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種であり、これらのイオンを半導体膜中に含有させることにより、格子歪みを形成してゲッタリングサイトを形成することができる。上記構成において、前記第2の半導体膜に含まれる希ガス元素の濃度は、1×1018/cm3〜1×1022/cm3であることを特徴としている。
【0042】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0043】
以下に本発明を用いた代表的なTFTの作製手順を簡略に図1を用いて示す。ここではゲッタリングサイトをプラズマCVD法で流量比(シランガス:希ガス)が1:100となるように制御して形成する例を示す。
【0044】
図1(A)中、10は、絶縁表面を有する基板、11はブロッキング層となる絶縁膜、12は非晶質構造を有する半導体膜である。
【0045】
図1(A)において、基板10はガラス基板、石英基板、セラミック基板などを用いることができる。また、シリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。また、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0046】
まず、図1(A)に示すように基板10上に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)等の絶縁膜から成る下地絶縁膜11を形成する。代表的な一例は下地絶縁膜11として2層構造から成り、SiH4、NH3、及びN2Oを反応ガスとして成膜される第1酸化窒化シリコン膜を50〜100nm、SiH4、及びN2Oを反応ガスとして成膜される第2酸化窒化シリコン膜を100〜150nmの厚さに積層形成する構造が採用される。また、下地絶縁膜11の一層として膜厚10nm以下の窒化シリコン膜(SiN膜)、或いは第2酸化窒化シリコン膜(SiNxOy膜(X≫Y))を用いることが好ましい。ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、半導体膜と接する下地絶縁膜を窒化シリコン膜とすることは極めて有効である。また、第1酸化窒化シリコン膜、第2酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜とを順次積層した3層構造を用いてもよい。
【0047】
次いで、下地絶縁膜上に非晶質構造を有する第1の半導体膜12を形成する。第1の半導体膜12は、シリコンを主成分とする半導体材料を用いる。代表的には、非晶質シリコン膜又は非晶質シリコンゲルマニウム膜などが適用され、プラズマCVD法や減圧CVD法、或いはスパッタ法で10〜200nmの厚さに形成する。後の結晶化で良質な結晶構造を有する半導体膜を得るためには、非晶質構造を有する第1の半導体膜12の膜中に含まれる酸素、窒素などの不純物濃度を5×1018/cm3(二次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した原子濃度)以下に低減させておくと良い。これらの不純物は後の結晶化を妨害する要因となり、また、結晶化後においても捕獲中心や再結合中心の密度を増加させる要因となる。そのために、高純度の材料ガスを用いることはもとより、反応室内の鏡面処理(電界研磨処理)やオイルフリーの真空排気系を備えた超高真空対応のCVD装置を用いることが望ましい。
【0048】
次いで、非晶質構造を有する第1の半導体膜12を結晶化させる技術としてここでは特開平8-78329号公報記載の技術を用いて結晶化させる。同公報記載の技術は、非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜とも呼ばれる)に対して結晶化を助長する金属元素を選択的に添加し、加熱処理を行うことで添加領域を起点として広がる結晶構造を有する半導体膜を形成するものである。まず、非晶質構造を有する第1の半導体膜12の表面に、結晶化を促進する触媒作用のある金属元素(ここでは、ニッケル)を重量換算で1〜100ppm含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布してニッケル含有層13を形成する。(図1(B))塗布によるニッケル含有層13の形成方法以外の他の手段として、スパッタ法、蒸着法、またはプラズマ処理により極薄い膜を形成する手段を用いてもよい。また、ここでは、全面に塗布する例を示したが、マスクを形成して選択的にニッケル含有層を形成してもよい。
【0049】
次いで、加熱処理を行い、結晶化を行う。この場合、結晶化は半導体の結晶化を助長する金属元素が接した半導体膜の部分でシリサイドが形成され、それを核として結晶化が進行する。こうして、図1(C)に示す結晶構造を有する第1の半導体膜14が形成される。なお、結晶化後での第1の半導体膜14に含まれる酸素濃度は、5×1018/cm3以下とすることが望ましい。ここでは、脱水素化のための熱処理(450℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃〜650℃で4〜24時間)を行う。また、強光の照射により結晶化を行う場合は、赤外光、可視光、または紫外光のいずれか一またはそれらの組み合わせを用いることが可能であるが、代表的には、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプから射出された光を用いる。ランプ光源は、1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1回〜10回繰り返し、半導体膜が瞬間的に600〜1000℃程度にまで加熱すればよい。なお、必要であれば、強光を照射する前に非晶質構造を有する第1の半導体膜14に含有する水素を放出させる熱処理を行ってもよい。また、熱処理と強光の照射とを同時に行って結晶化を行ってもよい。生産性を考慮すると、結晶化は強光の照射により結晶化を行うことが望ましい。
【0050】
このようにして得られる第1の半導体膜14には、金属元素(ここではニッケル)が残存している。それは膜中において一様に分布していないにしろ、平均的な濃度とすれば、1×1018/cm3を越える濃度で残存している。勿論、このような状態でもTFTをはじめ各種半導体素子を形成することが可能であるが、以降に示す方法で当該元素を除去する。
【0051】
次いで、結晶化率(膜の全体積における結晶成分の割合)を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修するために、結晶構造を有する第1の半導体膜14に対してレーザー光を照射することが好ましい。レーザー光を照射した場合、表面に薄い酸化膜(図示しない)が形成される。このレーザー光としてはパルス発振であるレーザ光源から出射される波長400nm以下のエキシマレーザ光や、YAGレーザの第2高調波、第3高調波を用いればよい。また、レーザー光としては連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を用いてもよい。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用すればよい。
【0052】
上記結晶化後のレーザー光の照射により形成された酸化膜では、不十分であるため、さらに、オゾン含有水溶液(代表的にはオゾン水)で酸化膜(ケミカルオキサイドと呼ばれる)を形成して合計1〜10nmの酸化膜からなるバリア層15を形成し、このバリア層15上に希ガス元素を含む第2の半導体膜16を形成する。(図1(D))なお、ここでは、結晶構造を有する第1の半導体膜14に対してレーザー光を照射した場合に形成される酸化膜もバリア層の一部と見なしている。このバリア層15は、後の工程で第2の半導体膜16のみを選択的に除去する際にエッチングストッパーとして機能する。また、オゾン含有水溶液に代えて、硫酸、塩酸、硝酸などと過酸化水素水を混合させた水溶液で処理しても同様にケミカルオキサイドを形成することができる。また、他のバリア層15の形成方法としては、酸素雰囲気下の紫外線の照射でオゾンを発生させて前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化して形成してもよい。また、他のバリア層15の形成方法としては、プラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜を堆積してバリア層としても良い。また、他のバリア層15の形成方法としては、クリーンオーブンを用い、200〜500℃程度に加熱して薄い酸化膜を形成しても良い。なお、上記方法のいずれか一の方法、またはそれらの方法を組み合わせて形成されたバリア層15は、後のゲッタリングで第1の半導体膜中のニッケルが第2の半導体膜に移動可能な膜質または膜厚とすることが必要である。
【0053】
また、上記バリア層上に形成する希ガス元素を含む第2の半導体膜16は、プラズマCVD法にて形成し、ゲッタリングサイトを形成する。希ガス元素としてはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用いる。中でも安価なガスであるアルゴン(Ar)が好ましい。
【0054】
ここでは原料ガスとしてモノシランとアルゴンを用い、比率(モノシラン:アルゴン)を0.1:99.9〜1:9、好ましくは、1:99〜5:95に制御して成膜する。また、成膜時のRFパワー密度は、0.0017W/cm2〜0.48W/cm2とすることが望ましい。RFパワー密度は、高ければ高いほど成膜速度が向上するため好ましい。また、成膜時の圧力は、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)、好ましくは、53.32Pa(0.4Torr)未満とすることが望ましい。圧力は、高ければ高いほど成膜速度が向上するため好ましい。また、成膜温度は300℃〜500℃とすることが望ましい。こうして、膜中にアルゴンを1×1018/cm3〜1×1022/cm3、好ましくは、1×1020/cm3〜1×1021/cm3の濃度で含み、ゲッタリング効果が得られる第2の半導体膜をプラズマCVD法で成膜することができる。さらに、上記第2の半導体膜は、成膜の際、バリア層に与えるダメージを低減することができ、第1の半導体膜の膜厚のバラツキ発生や第1の半導体膜に穴が形成されるという不良の発生を防ぐことができる。なお、第2の半導体膜の成膜圧力が低いほうが、膜中により多くのアルゴンを含ませることができる。
【0055】
ここで、上記第2の半導体膜の希ガス濃度を確認するため、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)と、成膜温度を変えてアモルファスシリコン膜表面付近のアルゴン/シリコン強度比をTXRFで測定する実験を行った。
【0056】
まず、プラズマCVD法で成膜圧力を6.665Pa(0.05Torr)とし、RFパワー密度を0.087W/cm2(RFパワー:30W)として膜厚50nmのアモルファスシリコン膜の成膜を行った。このアモルファスシリコン膜の成膜条件の一つであるモノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)をそれぞれ1:99、5:95、10:90、17:83とし、さらに成膜条件の一つである成膜温度をそれぞれ40℃、100℃、200℃、300℃、350℃とし、成膜後のアモルファスシリコン膜表面付近のアルゴン/シリコン強度比をTXRFでそれぞれ測定した。
【0057】
図2(A)にモノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を1:99とし、成膜温度の条件を振って成膜されたアモルファスシリコン膜表面付近のアルゴン/シリコン強度比を示す。図2(A)からは、成膜温度を上げれば上げるほどアルゴン/シリコン強度比が高くなっている、即ち膜中のアルゴン濃度が高くなっていることが読み取れる。比較例として、スパッタ法によりシリコンターゲットを用いてアルゴン雰囲気下、0.3Paで成膜したアモルファスシリコン膜表面付近のアルゴン/シリコン強度比は、5×10-2であり、SIMS測定での膜中のアルゴン濃度は、3×1020〜5.8×1020atoms/cm3である。
【0058】
また、図2(B)に成膜温度を350℃とし、流量比の条件を振って成膜されたアモルファスシリコン膜表面のアルゴン/シリコン強度比を示す。図2(B)からは、アルゴンの流量に対してモノシランの流量を少なくすればするほどアルゴン/シリコン強度比が高くなっている、即ち膜中のアルゴン濃度が高くなっていることが読み取れる。なお、図2(B)では、横軸を総流量に対するモノシランガス流量の割合としており、例えば、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)が1:99である場合、1%として表示している。
【0059】
膜中に不活性気体である希ガス元素イオンを含有させる意味は、半導体膜の格子間に歪みを与えることである。半導体膜の格子間に歪みを与えるにはアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などシリコンより原子半径の大きな元素を用いた時に顕著に得られる。また、膜中に希ガス元素を含有させることにより、格子歪だけでなく、不対結合手も形成させてゲッタリング作用に寄与する。
【0060】
上記第2の半導体膜16を成膜した後は、加熱処理を行い、第1の半導体膜中における金属元素(ニッケル)の濃度を低減、あるいは除去するゲッタリングを行う。(図1(E))ゲッタリングを行う加熱処理としては、強光を照射する処理または熱処理を行えばよい。このゲッタリングにより、図1(E)中の矢印の方向(即ち、基板側から第2の半導体膜表面に向かう方向)に金属元素が移動し、バリア層15で覆われた第1の半導体膜14に含まれる金属元素の除去、または金属元素の濃度の低減が行われる。金属元素がゲッタリングの際に移動する距離は、少なくとも第1の半導体膜の厚さ程度の距離であればよく、比較的短時間でゲッタリングを完遂することができる。ここでは、ニッケルが第1の半導体膜14に偏析しないよう全て第2の半導体膜16に移動させ、第1の半導体膜14に含まれるニッケルがほとんど存在しない、即ち膜中のニッケル濃度が1×1018/cm3以下、望ましくは1×1017/cm3以下になるように十分ゲッタリングする。
【0061】
なお、このゲッタリングの加熱処理の条件、或いは第2の半導体膜の膜厚によっては、第2の半導体膜が一部結晶化される場合もある。第2の半導体膜が結晶化してしまうと格子歪みや不対結合手が減少してゲッタリング効果の低減を招くことから、好ましくは、第2の半導体膜が結晶化しない加熱処理の条件、或いは第2の半導体膜の膜厚とする。いずれにせよ、第2の半導体膜、即ち希ガス元素を含有する非晶質シリコン膜は、希ガス元素を含まない非晶質シリコン膜と比べて結晶化が生じにくいため、ゲッタリングサイトとして最適である。
【0062】
また、このゲッタリングの加熱処理の条件によっては、ゲッタリングと同時に第1の半導体膜の結晶化率を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修する、即ち結晶性の改善を行うことができる。
【0063】
本明細書において、ゲッタリングとは、被ゲッタリング領域(ここでは第1の半導体膜)にある金属元素が熱エネルギーにより放出され、拡散によりゲッタリングサイトに移動することを指している。従って、ゲッタリングは処理温度に依存し、より高温であるほど短時間でゲッタリングが進むことになる。
【0064】
強光を照射する処理を用いる場合は、加熱用のランプ光源を1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1〜10回、好ましくは2〜6回繰り返す。ランプ光源の発光強度は任意なものとするが、瞬間的には600〜1000℃、好ましくは700〜750℃程度に半導体膜が加熱されるようにする。
【0065】
また、熱処理で行う場合は、不活性雰囲気中、代表的には窒素雰囲気中で450〜800℃、1〜24時間、例えば550℃にて14時間の熱処理を行えばよい。また、熱処理に加えて強光を照射してもよい。
【0066】
次いで、バリア層15をエッチングストッパーとして、16で示した第2の半導体膜のみを選択的に除去した後、バリア層15を除去し、第1の半導体膜16を公知のパターニング技術を用いて所望の形状の半導体層17を形成する。(図1(F))第2の半導体膜のみを選択的にエッチングする方法としては、ClF3によるプラズマを用いないドライエッチング、或いはヒドラジンや、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(化学式 (CH3)4NOH)を含む水溶液などアルカリ溶液によるウエットエッチングで行うことができる。また、第2の半導体膜を除去した後、バリア層の表面をTXRFでニッケル濃度を測定したところ、ニッケルが高濃度で検出されるため、バリア層は除去することが望ましく、フッ酸を含むエッチャントにより除去すれば良い。また、バリア層を除去した後、レジストからなるマスクを形成する前に、オゾン水で表面に薄い酸化膜を形成することが望ましい。
【0067】
ここで、上記第2の半導体膜のゲッタリング能力を確認するため、以下に示す実験を行った。
【0068】
以下にサンプルの作製手順を示す。まず、上記工程に従い、ガラス基板(AN100)上にプラズマCVD法で膜厚50nmの第1酸化窒化シリコン膜と、膜厚100nmの第2酸化窒化シリコン膜を積層形成し、さらに第1の半導体膜として膜厚54nmのアモルファスシリコン膜を形成する。次いで、上記工程に従い、ニッケルを10ppm含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布した後、500℃、1時間の熱処理を行い、さらに550℃、4時間の熱処理を行って結晶化させる。次いで、上記工程に従い、パルス発振のエキシマレーザ光を照射して結晶化率を高める。次いで、エキシマレーザー光の照射により形成された酸化膜に加え、さらに、オゾン水で表面を酸化して合計1〜10nmのバリア層となる酸化膜を形成する。
【0069】
そして、バリア層上に、第2の半導体膜としてプラズマCVD法で成膜圧力を6.665Pa(0.05Torr)とし、RFパワー密度を0.087W/cm2として膜厚50nmのアモルファスシリコン膜の成膜を行った。このアモルファスシリコン膜の成膜条件の一つであるモノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)をそれぞれ1:99、5:95、10:90、17:83とし、さらに成膜条件の一つである成膜温度をそれぞれ40℃、100℃、200℃、300℃、350℃とし、いくつかのサンプルを用意した。
【0070】
次いで、熱処理として、650℃に加熱された炉の中にサンプルを入れて6.5分保持した後、取り出してゲッタリングを終了させた。最後に、アルカリ系のエッチャント液(代表的にはテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(化学式 (CH3)4NOH):TMAHを2.38%含む水溶液を50℃としたエッチャント)で第2の半導体膜を選択的に除去し、バリア層を希フッ酸で除去した後、第1の半導体膜表面付近におけるNi濃度をそれぞれのサンプルごとにTXRFを用いて測定した。
【0071】
図3(A)は、第2の半導体膜の成膜の際、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を1:99とし、成膜温度の条件を振ったサンプルAの実験結果である。図3(A)からは、成膜温度が高いほどゲッタリングされて第1の半導体膜表面付近のNi濃度が1×1011atoms/cm2未満にまで低減されている。ちなみに第1の半導体膜をTFTの活性層として用いる場合は、表面付近のNi濃度を3×1010atoms/cm2以下とすることが好ましく、この成膜条件では成膜温度350℃で達成されている。また、サンプルAでは、全条件で熱処理後のピーリングなどの不良は発生しなかった。
【0072】
図3(B)は、第2の半導体膜の成膜の際、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を5:95とし、成膜温度の条件を振ったサンプルBの実験結果である。サンプルBでは、40℃、350℃ではピーリングが発生しなかったものの、300℃ではピーリングが発生した。
【0073】
図4(A)は、第2の半導体膜の成膜の際、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を10:90とし、成膜温度の条件を振ったサンプルCの実験結果である。サンプルCでは、40℃ではピーリングが発生しなかったものの、300℃、350℃ではピーリングが発生した。
【0074】
図4(B)は、第2の半導体膜の成膜の際、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を17:83とし、成膜温度の条件を振ったサンプルDの実験結果である。サンプルDでは、40℃以外の条件でピーリングが発生した。
【0075】
これらの実験結果から、本発明の第2の半導体膜は、ゲッタリングサイトとして優れていることが言える。
【0076】
また、図5(A)にモノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を1:99とし、成膜温度の条件を振って成膜されたアモルファスシリコン膜の成膜時間とTMAHでのエッチング時間を示す。図5(A)中、●印が50nmの膜厚を得るまでの時間を示しており、△印がエッチング時間を示している。図5(A)からは、温度を上げれば上げるほど成膜速度が低下する一方、エッチング時間が短縮している。また、図5(B)に成膜温度を350℃とし、流量比の条件を振って成膜されたアモルファスシリコン膜の成膜時間とTMAHでのエッチング時間を示す。同様に図5(B)中、●印が50nmの膜厚を得るまでの時間を示しており、△印がエッチング時間を示している。なお、図5(B)では、横軸を総流量に対するモノシランガス流量の割合としており、例えば、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)が1:99である場合、1%として表示している。図5(B)からは、アルゴンの流量に対してモノシランの流量を少なくすればするほど成膜速度が低下し、エッチング時間が長くなっている。
【0077】
バリア層を除去する工程が終了したら、半導体層を所望の形状にパターニングを行った後、半導体層の表面をフッ酸を含むエッチャントで洗浄し、ゲート絶縁膜18となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。この表面洗浄とゲート絶縁膜の形成は、大気にふれさせずに連続的に行うことが望ましい。
【0078】
次いで、ゲート絶縁膜18の表面を洗浄した後、ゲート電極19を形成する。次いで、半導体にn型を付与する不純物元素(P、As等)、ここではリンを適宜添加して、ソース領域20及びドレイン領域21を形成する。添加した後、不純物元素を活性化するために加熱処理、強光の照射、またはレーザー光の照射を行う。また、活性化と同時にゲート絶縁膜へのプラズマダメージやゲート絶縁膜と半導体層との界面へのプラズマダメージを回復することができる。特に、室温〜300℃の雰囲気中において、表面または裏面からYAGレーザーの第2高調波を照射して不純物元素を活性化させることは非常に有効である。YAGレーザーはメンテナンスが少ないため好ましい活性化手段である。
【0079】
以降の工程は、層間絶縁膜23を形成し、水素化を行って、ソース領域、ドレイン領域に達するコンタクトホールを形成し、ソース電極24、ドレイン電極25を形成してTFT(nチャネル型TFT)を完成させる。(図1(G))
【0080】
こうして得られたTFTのチャネル形成領域22に含まれる金属元素の濃度は1×1017/cm3未満とすることができる。
【0081】
また、本発明は図1(G)のTFT構造に限定されず、必要があればチャネル形成領域とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域を有する低濃度ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)構造としてもよい。この構造はチャネル形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領域またはドレイン領域との間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、この領域をLDD領域と呼んでいる。さらにゲート絶縁膜を介してLDD領域をゲート電極と重ねて配置させた、いわゆるGOLD(Gate-drain Overlapped LDD)構造としてもよい。
【0082】
また、ここではnチャネル型TFTを用いて説明したが、n型不純物元素に代えてp型不純物元素を用いることによってpチャネル型TFTを形成することができることは言うまでもない。
【0083】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTに適用することが可能である。
【0084】
また、ここでは希ガス元素を含む半導体膜を用いた例を示したが、さらにリン元素をも含む半導体膜を用いてもよく、希ガス元素を含む半導体膜に代えてリン元素及び希ガス元素を含む半導体膜を用いてもよい。リン元素及び希ガス元素を含む半導体膜を形成する場合には成膜ガスにフォスフィンを加えればよい。例えば、モノシランとフォスフィン(PH3)とアルゴンを用いて成膜すればよい。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1ではバリア層として、レーザ光での酸化膜に加えて、オゾン水を用いた酸化膜を用いた例を示したが、ここでは、レーザ光での酸化膜を除去してプラズマCVD法で形成された酸化窒化膜をバリア層として用いる例を示す。
【0086】
本実施の形態は、実施の形態1とバリア層が異なる以外は、実施の形態1と同一であるので詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施の形態で示すバリア層は、プラズマCVD法を用いて、薄い酸化窒化シリコン膜を形成することを特徴としている。原料ガスとしてシラン系ガス(モノシラン、ジシラン、トリシラン等)と窒素酸化物系ガス(NOxで表記されるガス)を用いる。例えば、原料ガスとしてモノシラン(SiH4)と亜酸化窒素(N2O)、或いは、TEOSガスとN2O、或いはTEOSガスとN2OとO2を用い、10nm以下、好ましくは2nm以下の酸化窒化シリコン膜を形成する。このバリア層は密着性が高くピーリングが発生しにくい。さらに密着性を高くするために、バリア層の形成前にアルゴンプラズマ処理を行ってもよい。また、ゲッタリングさせる工程においても、上記膜厚範囲の酸化窒化シリコン膜であれば、金属元素がバリア層を通過してゲッタリングサイトに移動させることができる。また、ゲッタリング後に各膜を除去する際、上記酸化窒化シリコン膜は、第2の半導体膜との選択比と、第1の半導体膜との選択比とが高く、非常にエッチングストッパーとして有効である。
【0088】
なお、プラズマCVD法でバリア層を形成する前に、結晶構造を有する第1の半導体膜に対してレーザー光を照射した際に形成される酸化膜を除去することが重要である。
【0089】
また、こうして形成されたバリア層上に希ガス元素を含む第2の半導体膜をプラズマCVD法で形成するため、バリア層及び第2の半導体膜ともにプラズマCVD法により形成することができる。
【0090】
また、希ガス元素を含む第2の半導体膜と、バリア層を大気に触れさせることなく成膜することが可能であり、さらに同一チャンバーで連続的に成膜することも可能であるため、スループットに優れている。なお、プラズマCVD法はガスによる成膜室(チャンバーとも呼ぶ)内のクリーニングが行えるため、スパッタ法に比べてメンテナンスが少なくて済み、量産には適した成膜方法である。
【0091】
(実施の形態3)
本実施の形態では、第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行う例を示す。
【0092】
実施の形態1において、成膜速度は上記成膜条件(比率(モノシラン:希ガス)、RFパワー密度、圧力)の範囲内で速くすることが望ましいが、本実施の形態では意図的に第2の半導体膜の成膜速度を低下させて、成膜時間を延長するとともに、できるだけ高い成膜温度とすることを特徴としている。
【0093】
本実施の形態は、実施の形態1と第2の半導体膜の条件が異なる以外は、実施の形態1とほぼ同一であるので詳細な説明は省略する。
【0094】
成膜速度を低下させる手段としては、成膜条件において、希ガスの流量に対してモノシランの流量を少なくする方法、RFパワー密度を低下させる方法、成膜圧力を低くする方法、またはこれらを組み合わせる方法がある。
【0095】
本実施の形態においては、成膜速度を低下させるため、成膜中、1.333Pa(0.01Torr)〜66.65Pa(0.5Torr)の圧力下でアニールされることになる。
【0096】
従って、第2の半導体膜の成膜温度がアニール温度となり、成膜時間の間は第1の半導体膜中の金属元素を第2の半導体膜中に移動させることができる。成膜温度としては、300℃〜500℃とすればよい。
【0097】
成膜温度を上げれば上げるほど、第2の半導体膜中に含まれる希ガス元素の濃度が高くなるため、ゲッタリングサイトとして最適なものとすることができる。また、ジシランやトリシランを用いることができる。ジシランはモノシランに比べ分解する温度が低いが、第2の半導体膜中に希ガス元素を高濃度に含ませるためにはプラズマを発生させるプラズマCVD法で行うことが重要である。
【0098】
第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行うことで、後に行う加熱処理によるゲッタリングに必要とされる時間を短縮することができる。また、第2の半導体膜の成膜と同時にゲッタリングを行って十分に第1の半導体膜中の金属元素を低減できる場合には、後に行う加熱処理によるゲッタリングを省略することができる。
【0099】
なお、上記実施の形態1では示していないが、実施の形態1においても条件によっては、本実施の形態と同様に成膜と同時にゲッタリングを行っているといえる。
【0100】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【0101】
(実施例)
[実施例1]
本実施例では、同一基板上に画素部(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)と、画素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を同時に作製し、有機発光素子を有する発光装置を作製する作製方法について詳細に説明する。
【0102】
まず、厚さ0.7mmの耐熱性ガラス基板(第1の基板300)上にプラズマCVD法により下地絶縁膜の下層301として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を50nm(好ましくは10〜200nm)形成する。次いで、表面をオゾン水で洗浄した後、表面の酸化膜を希フッ酸(1/100希釈)で除去する。次いで、下地絶縁膜の上層302として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を100nm(好ましくは50〜200nm)の厚さに積層形成し、さらに大気解放せずにプラズマCVD法で成膜温度300℃、成膜ガスSiH4で非晶質構造を有する半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜)を54nmの厚さ(好ましくは25〜200nm)で形成する。
【0103】
本実施例では下地絶縁膜104を2層構造として示したが、珪素を主成分とする絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造として形成しても良い。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiXGe1-X(X=0.0001〜0.02))合金などを用い、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により形成すればよい。また、プラズマCVD装置は、枚葉式の装置でもよいし、バッチ式の装置でもよい。また、同一の成膜室で大気に触れることなく下地絶縁膜と半導体膜とを連続成膜してもよい。
【0104】
次いで、非晶質構造を有する半導体膜の表面を洗浄した後、オゾン水で表面に約2nmの極薄い酸化膜を形成する。次いで、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここでは、ジボラン(B2H6)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用い、ドーピング条件を加速電圧15kV、ジボランを水素で1%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量2×1012/cm2で非晶質シリコン膜にボロンを添加した。
【0105】
次いで、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布した。塗布に代えてスパッタ法でニッケル元素を全面に散布する方法を用いてもよい。
【0106】
次いで、加熱処理を行い結晶化させて結晶構造を有する半導体膜を形成する。この加熱処理は、電気炉の熱処理または強光の照射を用いればよい。電気炉の熱処理で行う場合は、500℃〜650℃で4〜24時間で行えばよい。ここでは脱水素化のための熱処理(500℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃、4時間)を行って結晶構造を有するシリコン膜を得た。なお、ここでは炉を用いた熱処理を用いて結晶化を行ったが、短時間での結晶化が可能なランプアニール装置で結晶化を行ってもよい。なお、ここではシリコンの結晶化を助長する金属元素としてニッケルを用いた結晶化技術を用いたが、他の公知の結晶化技術、例えば固相成長法やレーザー結晶化法を用いてもよい。
【0107】
次いで、結晶構造を有するシリコン膜表面の酸化膜を希フッ酸等で除去した後、結晶化率を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修するためのレーザー光(XeCl:波長308nm)の照射を大気中、または酸素雰囲気中で行う。レーザー光には波長400nm以下のエキシマレーザ光や、YAGレーザの第2高調波、第3高調波を用いる。ここでは、繰り返し周波数10〜1000Hz程度のパルスレーザー光を用い、当該レーザー光を光学系にて100〜500mJ/cm2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって照射し、シリコン膜表面を走査させればよい。ここでは、繰り返し周波数30Hz、エネルギー密度470mJ/cm2でレーザー光の照射を大気中で行なった。なお、大気中、または酸素雰囲気中で行うため、レーザー光の照射により表面に酸化膜が形成される。なお、ここではパルスレーザーを用いた例を示したが、連続発振のレーザーを用いてもよく、非晶質半導体膜の結晶化に際し、大粒径に結晶を得るためには、連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用すればよい。連続発振のレーザーを用いる場合には、出力10Wの連続発振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換する。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0108】
次いで、上記レーザー光の照射により形成された酸化膜に加え、オゾン水で表面を120秒処理して合計1〜5nmの酸化膜からなるバリア層を形成する。本実施例ではオゾン水を用いてバリア層を形成したが、酸素雰囲気下の紫外線の照射で結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法や酸素プラズマ処理により結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法やプラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜を堆積してバリア層を形成してもよい。また、バリア層を形成する前にレーザー光の照射により形成された酸化膜を除去してもよい。
【0109】
次いで、バリア層上にプラズマCVD法にてゲッタリングサイトとなるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を50nm〜400nm、ここでは膜厚50nmで形成する。本実施例の成膜条件は、モノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)を1:99とし、成膜圧力を6.665Pa(0.05Torr)とし、RFパワー密度を0.087W/cm2とし、成膜温度を350℃とする。
【0110】
その後、650℃に加熱された炉に入れて6.5分の熱処理を行いゲッタリングして、結晶構造を有する半導体膜中のニッケル濃度を低減する。炉に代えてランプアニール装置を用いてもよい。
【0111】
次いで、バリア層をエッチングストッパーとして、ゲッタリングサイトであるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を選択的に除去した後、バリア層を希フッ酸で選択的に除去する。なお、ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、酸化膜からなるバリア層をゲッタリング後に除去することが望ましい。
【0112】
次いで、得られた結晶構造を有するシリコン膜(ポリシリコン膜とも呼ばれる)の表面にオゾン水で薄い酸化膜を形成した後、レジストからなるマスクを形成し、所望の形状にエッチング処理して島状に分離された半導体層を形成する。半導体層を形成した後、レジストからなるマスクを除去する。
【0113】
次いで、フッ酸を含むエッチャントで酸化膜を除去すると同時にシリコン膜の表面を洗浄した後、ゲート絶縁膜303となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。ここでは、プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。
【0114】
次いで、ゲート絶縁膜上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜とを積層形成する。本実施例では、ゲート絶縁膜303上に膜厚50nmの窒化タンタル膜、膜厚370nmのタングステン膜を順次積層し、以下に示す手順でパターニングを行って各ゲート電極及び各配線を形成する。
【0115】
第1の導電膜及び第2の導電膜を形成する導電性材料としてはTa、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成する。また、第1の導電膜及び第2の導電膜としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、、AgPdCu合金を用いてもよい。また、2層構造に限定されず、例えば、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500nmのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、第1の導電膜のタングステンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、第2の導電膜のアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、第3の導電膜の窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。また、単層構造であってもよい。
【0116】
上記第1の導電膜及び第2の導電膜のエッチング(第1のエッチング処理および第2のエッチング処理)にはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いると良い。ICPエッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングすることができる。ここでは、レジストからなるマスクを形成した後、第1のエッチング条件として1Paの圧力でコイル型の電極に700WのRF(13.56MHz)電力を投入し、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、基板側の電極面積サイズは、12.5cm×12.5cmであり、コイル型の電極面積サイズ(ここではコイルの設けられた石英円板)は、直径25cmの円板である。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして端部をテーパー形状とする。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ここでは、第1のエッチング条件及び第2のエッチング条件を第1のエッチング処理と呼ぶこととする。
【0117】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う。ここでは、第3のエッチング条件としてエッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを60秒行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第4のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約20秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、ここでは、第3のエッチング条件及び第4のエッチング条件を第2のエッチング処理と呼ぶこととする。この段階で第1の導電層304aを下層とし、第2の導電層304bを上層とするゲート電極304および各電極305〜307が形成される。
【0118】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、ゲート電極304〜307をマスクとして全面にドーピングする第1のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を60〜100keVとして行う。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。自己整合的に第1の不純物領域(n--領域)322〜325が形成される。
【0119】
次いで、新たにレジストからなるマスクを形成するが、この際、スイッチングTFT403のオフ電流値を下げるため、マスクは、画素部401のスイッチングTFT403を形成する半導体層のチャネル形成領域及びその一部を覆って形成する。また、マスクは駆動回路のpチャネル型TFT406を形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を保護するためにも設けられる。加えて、マスクは、画素部401の電流制御用TFT404を形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を覆って形成される。
【0120】
次いで、上記レジストからなるマスクを用い、選択的に第2のドーピング処理を行って、ゲート電極の一部と重なる不純物領域(n-領域)を形成する。第2のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を90keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第2の導電層とがn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第2の不純物領域311、312が形成される。第2の不純物領域には1×1016〜1×1017/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第2の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn-領域とも呼ぶ。
【0121】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第3のドーピング処理を行う。第3のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量40sccmとし、ドーズ量を2×1015atoms/cm2とし、加速電圧を80keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第1の導電層及び第2の導電層がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第3の不純物領域313、314、326〜328が形成される。第3の不純物領域には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第3の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn+領域とも呼ぶ。
【0122】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクを形成して第4のドーピング処理を行う。第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTを形成する半導体層を形成する半導体層にp型の導電型を付与する不純物元素が添加された第4の不純物領域318、319、332、333及び第5の不純物領域316、317、330、331を形成する。
【0123】
また、第4の不純物領域318、319、332、333には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。尚、第4の不純物領域318、319、332、333には先の工程でリン(P)が添加された領域(n--領域)であるが、p型を付与する不純物元素の濃度がその1.5〜3倍添加されていて導電型はp型となっている。ここでは、第4の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp+領域とも呼ぶ。
【0124】
また、第5の不純物領域316、317、330、331は第2の導電層のテーパー部と重なる領域に形成されるものであり、1×1018〜1×1020/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。ここでは、第5の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp-領域とも呼ぶ。
【0125】
以上までの工程でそれぞれの半導体層にn型またはp型の導電型を有する不純物領域が形成される。導電層304〜307はTFTのゲート電極となる。
【0126】
次いで、ほぼ全面を覆う絶縁膜(図示しない)を形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚50nmの酸化シリコン膜を形成した。勿論、この絶縁膜は酸化シリコン膜に限定されるものでなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0127】
次いで、それぞれの半導体層に添加された不純物元素を活性化処理する工程を行う。この活性化工程は、ランプ光源を用いたラピッドサーマルアニール法(RTA法)、或いはYAGレーザーまたはエキシマレーザーを裏面から照射する方法、或いは炉を用いた熱処理、或いはこれらの方法のうち、いずれかと組み合わせた方法によって行う。
【0128】
また、本実施例では、上記活性化の前に絶縁膜を形成した例を示したが、上記活性化を行った後、絶縁膜を形成する工程としてもよい。
【0129】
次いで、窒化シリコン膜からなる第1の層間絶縁膜308を形成して熱処理(300〜550℃で1〜12時間の熱処理)を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は第1の層間絶縁膜308に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。酸化シリコン膜からなる絶縁膜(図示しない)の存在に関係なく半導体層を水素化することができる。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0130】
次いで、第1の層間絶縁膜308上に有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜309を形成する。本実施例では塗布法により膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜309aを形成し、スパッタ法により200nmの窒化シリコン膜309bを積層する。
【0131】
次いで、pチャネル型TFTからなる電流制御用TFT404のドレイン領域に接して後で形成される接続電極に接して重なるよう画素電極334を形成する。本実施例では、画素電極は有機発光素子の陽極として機能させ、有機発光素子の発光を画素電極に通過させるため、透明導電膜とする。
【0132】
次いで、ゲート電極またはゲート配線となる導電層に達するコンタクトホールと、各不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。本実施例では複数のエッチング処理を順次行う。本実施例では第2の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第3の層間絶縁膜をエッチングした後、第1の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第2の層間絶縁膜をエッチングしてから第1の層間絶縁膜をエッチングした。
【0133】
その後、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて電極335〜341、具体的にはソース配線、電源供給線、引き出し電極及び接続電極などを形成する。ここでは、これらの電極及び配線の材料は、Ti膜(膜厚100nm)とシリコンを含むAl膜(膜厚350nm)とTi膜(膜厚50nm)との積層膜を用い、パターニングを行った。こうして、ソース電極及びソース配線、接続電極、引き出し電極、電源供給線などが適宜、形成される。なお、層間絶縁膜に覆われたゲート配線とコンタクトを取るための引き出し電極は、ゲート配線の端部に設けられ、他の各配線の端部にも、外部回路や外部電源と接続するための電極が複数設けられた入出力端子部を形成する。また、先に形成された画素電極334と接して重なるよう設けられた接続電極341は、電流制御用TFT404のドレイン領域に接している。
【0134】
以上の様にして、nチャネル型TFT405、pチャネル型TFT406、およびこれらを相補的に組み合わせたCMOS回路を有する駆動回路402と、1つの画素内にnチャネル型TFT403またはpチャネル型TFT404を複数備えた画素部401を形成することができる。
【0135】
各電極のパターニングが終了したら、レジストを除去して熱処理を行い、次いで、画素電極334の端部を覆うように両端にバンクとよばれる絶縁物342a、342bを形成する。バンク342a、342bは珪素を含む絶縁膜もしくは樹脂膜で形成すれば良い。ここでは、有機樹脂膜からなる絶縁膜をパターニングしてバンク342aを形成した後、スパッタ法で窒化シリコン膜を成膜し、パターニングしてバンク342bを形成する。
【0136】
次いで、両端がバンクで覆われている画素電極334上にEL層343および有機発光素子の陰極344を形成する。
【0137】
EL層343としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせてEL層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、低分子系有機EL材料や高分子系有機EL材料を用いればよい。また、EL層として一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレット化合物)からなる薄膜、または三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプレット化合物)からなる薄膜を用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機EL材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0138】
また、陰極344に用いる材料としては仕事関数の小さい金属(代表的には周期表の1族もしくは2族に属する金属元素)や、これらを含む合金を用いることが好ましいとされている。仕事関数が小さければ小さいほど発光効率が向上するため、中でも、陰極に用いる材料としては、アルカリ金属の一つであるLi(リチウム)を含む合金材料が望ましい。なお、陰極は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線を経由して入力端子部に端子電極を有している。
【0139】
ここまでの工程が終了した段階が図6である。なお、図6では、スイッチングTFT403と、有機発光素子に電流を供給するTFT(電流制御用TFT404)とを示したが、該TFTのゲート電極の先には複数のTFTなどからなる様々な回路を設けてもよく、特に限定されないことは言うまでもない。
【0140】
次いで、陰極と、有機化合物層と、陽極とを少なくとも有する有機発光素子を有機樹脂、保護膜、封止基板、或いは封止缶で封入することにより、有機発光素子を外部から完全に遮断し、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことが好ましい。ただし、後でFPCと接続する必要のある入出力端子部には保護膜などは設けなくともよい。
【0141】
次いで、異方性導電材で入出力端子部の各電極にFPC(フレキシブルプリントサーキット)を貼りつける。異方性導電材は、樹脂と、表面にAuなどがメッキされた数十〜数百μm径の導電性粒子とから成り、導電性粒子により入出力端子部の各電極とFPCに形成された配線とが電気的に接続する。
【0142】
また、必要があれば、偏光板と位相差板とで構成される円偏光板等の光学フィルムを設けてもよいし、ICチップなどを実装させてもよい。
【0143】
以上の工程でFPCが接続されたモジュール型の発光装置が完成する。
【0144】
また、本実施例は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0145】
[実施例2]
実施例1により得られるモジュール型の発光装置(ELモジュールとも呼ぶ)の上面図及び断面図を示す。
【0146】
図7(A)は、ELモジュールを示す上面図、図7(B)は図7(A)をA−A’で切断した断面図である。図7(A)において、基板500(例えば、耐熱性ガラス等)に、下地絶縁膜501が設けられ、その上に画素部502、ソース側駆動回路504、及びゲート側駆動回路503を形成されている。これらの画素部や駆動回路は、上記実施例1に従えば得ることができる。
【0147】
また、518は有機樹脂、519は保護膜であり、画素部および駆動回路部は有機樹脂518で覆われ、その有機樹脂は保護膜519で覆われている。さらに、接着剤を用いてカバー材で封止してもよい。カバー材は、封止基板、或いは封止缶を用い、EL層とカバー材の空隙には、不活性ガスまたはシリコンオイルを封入すればよい。
【0148】
なお、508はソース側駆動回路504及びゲート側駆動回路503に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)509からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0149】
次に、断面構造について図7(B)を用いて説明する。基板500上に接して下地絶縁膜501が設けられ、絶縁膜501の上方には画素部502、ゲート側駆動回路503が形成されており、画素部502は電流制御用TFT511とそのドレインに電気的に接続された画素電極512を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路503はnチャネル型TFT513とpチャネル型TFT514とを組み合わせたCMOS回路を用いて形成される。
【0150】
これらのTFT(511、513、514を含む)は、上記実施の形態1または上記実施例1のnチャネル型TFT、上記実施の形態1または上記実施例1のpチャネル型TFTに従って作製すればよい。図7では、有機発光素子に電流を供給するTFT(電流制御用TFT511)のみを示したが、該TFTのゲート電極の先には複数のTFTなどからなる様々な回路を設けてもよく、特に限定されないことは言うまでもない。
【0151】
なお、実施例1に従って同一基板上に画素部502、ソース側駆動回路504、及びゲート側駆動回路503形成する。
【0152】
画素電極512は発光素子(有機発光素子)の陰極として機能する。また、画素電極512の両端にはバンク515が形成され、画素電極512上には有機化合物層516および発光素子の陽極517が形成される。
【0153】
有機化合物層516としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて有機化合物層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、低分子系有機化合物材料や高分子系有機化合物材料を用いればよい。また、有機化合物層516として一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレット化合物)からなる薄膜、または三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプレット化合物)からなる薄膜を用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0154】
陽極517は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線508を経由してFPC509に電気的に接続されている。さらに、画素部502及びゲート側駆動回路503に含まれる素子は全て陽極517、有機樹脂518、及び保護膜519で覆われている。
【0155】
なお、有機樹脂518としては、できるだけ可視光に対して透明もしくは半透明な材料を用いるのが好ましい。また、有機樹脂518はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
【0156】
また、有機樹脂518を用いて発光素子を完全に覆った後、すくなくとも図7に示すように保護膜519を有機樹脂518の表面(露呈面)に設けることが好ましい。また、基板500の裏面を含む全面に保護膜を設けてもよい。ここで、外部入力端子(FPC)が設けられる部分に保護膜が成膜されないように注意することが必要である。マスクを用いて保護膜が成膜されないようにしてもよいし、CVD装置でマスキングテープとして用いるテフロン(登録商標)等のテープで外部入力端子部分を覆うことで保護膜が成膜されないようにしてもよい。保護膜519として、窒化珪素膜、DLC膜、またはAlNXOY膜を用いればよい。
【0157】
以上のような構造で発光素子を保護膜519で封入することにより、発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機化合物層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0158】
また、画素電極を陽極とし、有機化合物層と陰極を積層して図7とは逆方向に発光する構成としてもよい。図8にその一例を示す。なお、上面図は同一であるので省略する。
【0159】
図8に示した断面構造について以下に説明する。基板600上に絶縁膜610が設けられ、絶縁膜610の上方には画素部602、ゲート側駆動回路603が形成されており、画素部602は電流制御用TFT611とそのドレインに電気的に接続された画素電極612を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路603はnチャネル型TFT613とpチャネル型TFT614とを組み合わせたCMOS回路を用いて形成される。
【0160】
これらのTFT(611、613、614を含む)は、上記実施の形態1または上記実施例1のnチャネル型TFT、上記実施の形態1または上記実施例1のpチャネル型TFTに従って作製すればよい。なお、図8では、有機発光素子に電流を供給するTFT(電流制御用TFT611)のみを示したが、該TFTのゲート電極の先には複数のTFTなどからなる様々な回路を設けてもよく、特に限定されないことは言うまでもない。
【0161】
画素電極612は発光素子(有機発光素子)の陽極として機能する。また、画素電極612の両端にはバンク615が形成され、画素電極612上には有機化合物層616および発光素子の陰極617が形成される。
【0162】
陰極617は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線608を経由してFPC609に電気的に接続されている。さらに、画素部602及びゲート側駆動回路603に含まれる素子は全て陰極617、有機樹脂618、及び保護膜619で覆われている。さらに、カバー材620と接着剤で貼り合わせてもよい。また、カバー材620には凹部を設け、乾燥剤621を設置してもよい。
【0163】
また、図8では、画素電極を陽極とし、有機化合物層と陰極を積層したため、発光方向は図8に示す矢印の方向となっている。
【0164】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTに適用することが可能である。
【0165】
また、本実施例は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0166】
[実施例3]
本実施例では画素電極を透光性を有する導電膜と、反射性を有する金属材料との両方で形成した半透過型の液晶表示装置の例を図9に示す。
【0167】
液晶表示装置においてもTFTは、上記実施の形態1または上記実施例1に従えば、画素TFTとなるnチャネル型TFTを形成することができる。TFTを覆う層間絶縁膜708を形成する工程までは実施例1と同様であり、ここでは詳細な説明は、省略する。画素部においてTFTのソース領域またはドレイン領域と接する電極の一方を反射性を有する金属材料で形成し、画素電極(反射部)702を形成する。次いで、画素電極(反射部)702と一部重なるように、透光性を有する導電膜からなる画素電極(透過部)701を形成する。透光性を有する導電膜としては、ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を用いればよい。
【0168】
以上の工程で基板700上に画素TFTが形成される。
【0169】
次いで、配向膜を形成しラビング処理を行う。なお、本実施例では配向膜を形成する前に、アクリル樹脂膜等の有機樹脂膜をパターニングすることによって基板間隔を保持するための柱状のスペーサ(図示しない)を所望の位置に形成した。また、柱状のスペーサに代えて、球状のスペーサを基板全面に散布してもよい。
【0170】
次いで、支持体となる対向基板を用意する。この対向基板には、着色層、遮光層が各画素に対応して配置されたカラーフィルタ(図示しない)が設けられている。また、駆動回路の部分にも遮光層を設けた。このカラーフィルタと遮光層とを覆う平坦化膜(図示しない)を設けた。次いで、平坦化膜上に透明導電膜からなる対向電極を画素部に形成し、対向基板の全面に配向膜を形成し、ラビング処理を施した。
【0171】
そして、画素部と駆動回路が形成された基板700と対向基板とをシール材で貼り合わせる。シール材にはフィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサによって均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられる。その後、両基板の間に液晶材料を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料には公知の液晶材料を用いれば良い。こうして得られた液晶モジュールにバックライト704、導光板705を設け、カバー706で覆えば、図9にその断面図の一部を示したようなアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成する。なお、カバーと液晶モジュールは接着剤や有機樹脂を用いて貼り合わせる。また、プラスチック基板と対向基板を貼り合わせる際、枠で囲んで有機樹脂を枠と基板との間に充填して接着してもよい。また、半透過型であるので偏光板703は、基板700と対向基板の両方に貼り付ける。
【0172】
外光が十分である場合には、反射型として駆動させるため、バックライトをオフ状態としたまま、対向基板に設けられた対向電極と画素電極(反射部)702との間の液晶を制御することによって表示を行い、外光が不十分である場合には、バックライトをオン状態として対向基板に設けられた対向電極と画素電極(透過部)701との間の液晶を制御することによって表示を行う。
【0173】
ただし、用いる液晶が、TN液晶やSTN液晶の場合、反射型と透過型とで液晶のねじれ角が変わるため、偏光板や位相差板を最適化する必要がある。例えば、液晶のねじれ角の量を調節する旋光補償機構(例えば、高分子液晶などを用いた偏光板)が別途必要となる。
【0174】
また、本実施例では半透過型の液晶表示装置の例を示したが、画素電極を全て透明導電膜で形成すれば透過型の液晶表示装置を作製することもでき、画素電極を反射性の高い導電膜で形成すれば反射型の液晶表示装置を作製することもできることはいうまでもない。
【0175】
また、本実施例は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0176】
[実施例4]
本発明を実施して形成された駆動回路や画素部は様々なモジュール(アクティブマトリクス型液晶モジュール、アクティブマトリクス型ELモジュール、アクティブマトリクス型ECモジュール)に用いることができる。即ち、本発明を実施することによって、それらを組み込んだ全ての電子機器が完成される。
【0177】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、プロジェクタ、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図10〜図12に示す。
【0178】
図10(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。
【0179】
図10(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。
【0180】
図10(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。
【0181】
図10(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。
【0182】
図10(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行うことができる。
【0183】
図10(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。
【0184】
図11(A)はフロント型プロジェクターであり、投射装置2601、スクリーン2602等を含む。本発明を投射装置2601の一部を構成する液晶モジュール2808に適用し、装置全体を完成させることができる。
【0185】
図11(B)はリア型プロジェクターであり、本体2701、投射装置2702、ミラー2703、スクリーン2704等を含む。本発明を投射装置2702の一部を構成する液晶モジュール2808に適用し、装置全体を完成させることができる。
【0186】
なお、図11(C)は、図11(A)及び図11(B)中における投射装置2601、2702の構造の一例を示した図である。投射装置2601、2702は、光源光学系2801、ミラー2802、2804〜2806、ダイクロイックミラー2803、プリズム2807、液晶モジュール2808、位相差板2809、投射光学系2810で構成される。投射光学系2810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図11(C)中において矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0187】
また、図11(D)は、図11(C)中における光源光学系2801の構造の一例を示した図である。本実施例では、光源光学系2801は、リフレクター2811、光源2812、レンズアレイ2813、2814、偏光変換素子2815、集光レンズ2816で構成される。なお、図11(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0188】
ただし、図11に示したプロジェクターにおいては、透過型の電気光学装置を用いた場合を示しており、反射型の電気光学装置及びELモジュールでの適用例は図示していない。
【0189】
図12(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部2903、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906、画像入力部(CCD、イメージセンサ等)2907等を含む。
【0190】
図12(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、3003、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。
【0191】
図12(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103等を含む。
【0192】
ちなみに図12(C)に示すディスプレイは中小型または大型のもの、例えば5〜20インチの画面サイズのものである。また、このようなサイズの表示部を形成するためには、基板の一辺が1mのものを用い、多面取りを行って量産することが好ましい。
【0193】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器の作製方法に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は、実施の形態1乃至3、実施例1乃至3のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【0194】
[実施例5]
本発明で得られる半導体膜のゲッタリング能力を確認するため、以下に示す実験を行った。
【0195】
以下にサンプルの作製手順を示す。まず、ガラス基板(AN100)上にプラズマCVD法で膜厚50nmの第1酸化窒化シリコン膜と、膜厚100nmの第2酸化窒化シリコン膜を積層形成し、さらに第1の半導体膜として膜厚54nmのアモルファスシリコン膜を形成する。次いで、上記工程に従い、ニッケルを10ppm含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布した後、650℃に加熱された炉の中で5分間の熱処理を行って結晶化させる。次いで、上記工程に従い、酸素:窒素を1:4に制御した雰囲気下でパルス発振のエキシマレーザ光を照射して結晶化率を高める。次いで、エキシマレーザー光の照射により形成された酸化膜に加え、さらに、オゾン水で表面を酸化して合計1〜10nmのバリア層となる酸化膜を形成する。
【0196】
そして、バリア層上に、第2の半導体膜としてプラズマCVD法で成膜圧力を13.33Pa(0.1Torr)とし、RFパワー密度を0.083W/cm2(RFパワー:50W)として膜厚30nmのアモルファスシリコン膜の成膜を行った。このアモルファスシリコン膜の成膜条件の一つであるモノシランとアルゴンの流量比(SiH4:Ar)をそれぞれ1:199、2:398、4:446とし、さらに成膜条件の一つである成膜温度を350℃とし、3つのサンプルを用意した。
【0197】
次いで、熱処理として、650℃に加熱された炉の中にサンプルを入れて3分保持した後、取り出してゲッタリングを終了させた。最後に、アルカリ系のエッチャント液(代表的にはテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(化学式(CH3)4NOH):TMAHを2.38%含む水溶液を50℃としたエッチャント)で第2の半導体膜を選択的に除去し、バリア層を希フッ酸で除去した後、第1の半導体膜表面付近におけるNi濃度をそれぞれのサンプルごとにTXRFを用いて測定した。3つのサンプルを測定した結果が図13である。
【0198】
図13では、ゲッタリングされて第1の半導体膜表面付近のNi濃度が1×1010atoms/cm2未満にまで低減されている。ちなみに第1の半導体膜をTFTの活性層として用いる場合は、表面付近のNi濃度を1×1010atoms/cm2以下とすることが好ましく、本実施例の3つの成膜条件全てで達成されている。また、3つのサンプル全てで熱処理後のピーリングなどの不良は発生しなかった。
【0199】
この実験結果から、本実施例の第2の半導体膜は、ゲッタリングサイトとして優れていることが言える。
【0200】
【発明の効果】
本発明により十分に結晶化を助長する金属元素が低減または除去された結晶構造を有する半導体膜を得ることができ、該半導体膜を活性層とするTFTにおいて電気特性の向上、及び、個々の素子間でのバラツキを低減することができる。特に、液晶表示装置においては、TFT特性のバラツキに起因する表示むらを低減できる。
【0201】
加えて、有機発光素子を有する半導体装置においては、画素電極に一定の電流が流れるように配置されたTFT(駆動回路または画素に配置される有機発光素子に電流を供給するTFT)のオン電流(Ion)のバラツキを低減することができ、輝度のバラツキを低減できる。
【0202】
また、本発明により結晶化を助長する金属元素だけでなく、不純物となる他の金属元素(Fe、Cuなど)も除去または低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1を示す工程図。
【図2】 流量比と成膜温度とAr/Si強度比との関係を示す図。
【図3】 流量比と成膜温度とNi濃度との関係を示す図。
【図4】 流量比と成膜温度とNi濃度との関係を示す図。
【図5】 流量比と成膜温度と成膜時間とエッチング時間との関係を示す図。
【図6】 断面を示す図である。(実施例1)
【図7】 モジュールを示す図である。(実施例2)
【図8】 モジュールを示す図である。(実施例2)
【図9】 液晶表示装置の断面図を示す図である。(実施例3)
【図10】 電子機器を示す図である。(実施例4)
【図11】 電子機器を示す図である。(実施例4)
【図12】 電子機器を示す図である。(実施例4)
【図13】 流量比とNi濃度との関係を示す図。(実施例5)
Claims (8)
- 絶縁表面上に設けられた結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第1工程と、
成膜室に希ガスとモノシランを導入し、前記成膜室内におけるRFパワー密度が0.0017W/cm 2 〜0.48W/cm 2 、圧力が1.333Pa〜66.65Pa、成膜温度が300℃〜500℃で、プラズマCVD法により前記バリア層上に希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成すると同時に、前記第1の半導体膜中の金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第2工程と、
加熱処理を行い、前記第1の半導体膜中の前記金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第3工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第4工程と、
前記バリア層を除去する第5工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第1工程と、
成膜室に希ガスとモノシランを導入し、前記成膜室内におけるRFパワー密度が0.0017W/cm 2 〜0.48W/cm 2 、圧力が1.333Pa〜66.65Pa、成膜温度が300℃〜500℃で、プラズマCVD法により前記バリア層上に希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成すると同時に、前記第1の半導体膜中の金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第2工程と、
加熱処理を行い、前記第1の半導体膜中の前記金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第3工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第4工程と、
前記バリア層を除去する第5工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜上にバリア層を形成する第4工程と、
成膜室に希ガスとモノシランを導入し、前記成膜室内におけるRFパワー密度が0.0017W/cm 2 〜0.48W/cm 2 、圧力が1.333Pa〜66.65Pa、成膜温度が300℃〜500℃で、プラズマCVD法により前記バリア層上に希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成すると同時に、前記第1の半導体膜中の金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第5工程と、
加熱処理を行い、前記第1の半導体膜中の前記金属元素を前記第2の半導体膜にゲッタリングする第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程と、
前記バリア層を除去する第8工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 請求項1乃至3のいずれか一において、前記成膜室に導入する前記希ガスと前記モノシランの流量比(SiH4:希ガス)を0.1:99.9〜1:9に制御することを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一において、前記成膜室に導入する前記希ガスと前記モノシランの流量比(SiH4:希ガス)を1:99〜5:95に制御することを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至5のいずれか一において、前記金属元素はFe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至6のいずれか一において、前記第2の半導体膜に含まれる前記希ガス元素の濃度は、1×1018/cm3 〜1×1022/cm3 であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至7のいずれか一において、前記希ガス元素は、He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
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