本発明は無線LANシステムに関し、特にCSMA/CA方式の無線LANシステムにて使用する基地局及び端末に関する。
近年、周波数利用免許が不要な無線LANシステムが規格化されている。例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)による、IEEE802.11a(5GHz帯)、IEEE802.11b(2.4GHz帯)、IEEE802.11g(2.4GHz帯)等がある。
電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses of Japan)による、RCR STD-33(小電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム標準規格)(2.4GHz帯)、ARIB STD-T66(第二世代小電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム標準規格)(2.4GHz帯)、ARIB STD-T71(小電力データ通信システム/広帯域移動アクセスシステム(CSMA)標準規格)(5GHz帯)等がある。
これらの無線LANシステムでは、アクセス制御方式としてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を用いる。
図6を参照してはIEEE802.11規格によるCSMA/CA方式の無線LANシステムの概略を説明する。図示のように、CSMA/CA方式の無線LANシステムは、無線LANアクセスポイント(AP: Access Point)である基地局60とその電波到達範囲601内に存在する無線LAN端末(STA: Station)61、62、63からなる。無線LAN端末61、62、63は基地局60を介して広域ネットワーク602との間でパケットデータの通信を行う。CSMA/CA方式の無線LANシステムは、分散制御機能(DCF: Distributed Coordination Function)と呼ばれる自立分散的なアクセス制御を行う。即ち、基地局60と無線LAN端末61、62、63は基本的には同一のアクセス手順を行う。
図7を参照して、CSMA/CA方式の無線LANシステムにおける無線通信の例を説明する。図7Aは基地局60の送信状態、図7B〜図7Dは第1、第2及び第3の無線LAN端末61、62、63の送信状態、図7Eは無線チャンネルにおける送信状態、図7F〜図7Hは第1、第2及び第3の無線LAN端末61、62、63の送受信状態を示す。図7Aに示すように、基地局60は、ビーコン周期701毎にビーコン信号702、706を送信する。ビーコン信号702は、無線LAN端末のIDや時間同期のためのタイマー値を含む。
本例では、基地局60がビーコン信号を送信した後、第1の無線端末61がデータ707の送信を行う。基地局60は、第1の無線端末61からのデータ707を受信し、それが完了すると、確認信号703を第1の無線端末61に返信する。次に、第2の無線端末62がデータ708の送信を行う。基地局60は、第2の無線端末62からのデータ708を受信し、それが完了すると、確認信号704を第2の無線端末62に返信する。同様に、第3の無線端末63がデータ709の送信を行う。基地局60は、第3の無線端末63からのデータ709を受信し、それが完了すると、確認信号705を第3の無線端末63に返信する。
図7F〜図7Hに示すように、無線LAN端末は、常に、受信動作を行い、無線チャンネルを監視している。これはキャリアセンスと呼ばれる。キャリアセンスでは、各無線LAN端末は、受信信号の電力レベルを表すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を検出する。RSSI値が一定値より大きいときには、無線チャンネルが「使用中」であると判定し、一定値より小さいときには、無線チャンネルが「非使用」であると判定する。無線LAN端末61、62、63は、自身宛てのデータを受信した場合にはそれを復号化する。
無線LAN端末61、62、63は、無線チャンネルが使用中であると判定した場合には、データの送信を行わない。無線チャンネルが「使用」から「非使用」に変化したとき、データ送信を待っていた無線LAN端末が一斉にデータを送信する可能性がある。CSMA/CA方式では、無線チャンネルが「使用」から「非使用」に変化したとき、パケットデータの衝突を回避するためのアルゴリズムが規定されている。これはバックオフアルゴリズムと呼ばれる。
図8を参照してCSMA/CA方式のバックオフアルゴリズムの概略を説明する。図8Aは基地局60の送受信状態、図8B及び図8Cは第1及び第2の無線LAN端末61、62の送受信状態を示す。本例では、最初に、無線チャンネルは「使用中」である。従って、基地局60、第1及び第2の無線LAN端末61、62は、「送信待機状態」(Busy)801、805、811であり、送信を行わない。無線チャンネルが「使用」から「非使用(Idle)」に変化すると、基地局及び無線LAN端末には、データの送信を禁止するフレーム間隔IFS(Inter Frame Space)が与えられる。フレーム間隔IFSには幾つかの種類があるが、通常、分散制御用フレーム間隔DIFS806、812が使用される。尚、フレーム間隔IFSの詳細については、後に、図9を参照して説明する。
分散制御用フレーム間隔DIFS806、812が終了すると、バックオフ(Backoff)807、813と称する送信待機時間になる。送信待機時間(Backoff)の長さは、各無線LAN端末が乱数を発生させて、決める。従って、各無線LAN端末は、互いに異なる長さの送信待機時間(Backoff)を設定する。
上述のように、無線LAN端末は、常に、キャリアセンスを実行し、無線チャンネルが使用中であるか否かを判断する。従って、分散制御用フレーム間隔DIFS及びバックオフ期間の間、キャリアセンスを実行する。
図示の例では、第1の無線LAN端末61のバックオフ期間807は、第2の無線LAN端末62のバックオフ期間813より短い。また、第1の無線LAN端末61のバックオフ期間807が終了したとき、無線チャンネルが空いている。従って、第1の無線LAN端末61は、基地局60へのデータ送信808に成功する。
第1の無線LAN端末61がデータ送信808を行うと、第2の無線LAN端末62はキャリアセンスによってそれを検知し、「送信待機状態」(Busy)814となる。上述のように、基地局60は、第1の無線LAN端末61からのデータ受信802が終了すると、短期フレーム間隔SIFS803の後、第1の無線LAN端末に確認信号の送信804を行う。第1の無線LAN端末は確認信号の受信810を行い、他の無線LAN端末62は、キャリアセンスによってそれを検知し、確認信号の送信804の間、「送信待機状態」(Busy)816となる。確認信号の送信804が終了すると、分散制御用フレーム間隔DIFS817となる。
図9を参照してフレーム間隔IFSを説明する。IEEE802.11には、フレーム間隔IFSとして、分散制御用フレーム間隔(DIFS: Distributed Inter Frame Space)902、集中制御用フレーム間隔(PIFS: Point Inter Frame Space)903、短期フレーム間隔(SIFS: Short Inter Frame Space)904の3つのフレーム間隔が定義され、これらは、図示のように、期間の長さが異なる。最初に、無線チャンネルは「使用」(Busy Medium)状態901であると仮定する。「使用」状態が「非使用」状態に変化すると、3つのフレーム間隔のいずれかになる。こうして3つの互いに異なる長さのフレーム間隔IFSを使用することにより、送信に優先度が付与される。
通常のデータ送信には、分散制御用フレーム間隔DIFS902が使用される。分散制御用フレーム間隔DIFS902が経過すると、バックオフ期間(Backoff)となる。バックオフ期間の長さは、図9に示したように、ゼロからコンテンション・ウィンドウ905の長さまでの範囲である。
一方、次の送信者が予め決まっており、その送信者に優先的にデータ送信を許可する必要がある場合には、短期フレーム間隔SFISが与えられる。例えば、第1の無線LAN端末61から基地局60へのデータ送信が終了すると、基地局60は第1の無線LAN端末61へ確認信号(Acknowledge)を返信する。この場合、基地局60には、短期フレーム間隔SFIS904が与えられ、確認信号の返信を確実に実行することができる。集中制御用フレーム間隔PFISは、オプションとして規定された集中制御機能(PCF: Point Coordination Function)を使用する場合に用いる。集中制御機能では、周期的に非衝突通信期間(CFP: Contention Free Period)を設け、この期間内では基地局からのポーリング制御により優先的に送受信を行う。
CSMA/CA方式の無線LANシステムでは、無線LAN端末は、常にキャリアセンスを行い、データの受信動作を行い、電力を消費する。従って、電力消費量が多いという欠点がある。
図10を参照して、パワーセーブモード(PSM)について説明する。IEEE802.11では、パワーセーブモード(PSM)という省電力法が規定されている。図10の例では、無線LAN端末は、パワーセーブ機能を備えているものとする。基地局60は、無線LAN内にパワーセーブ機能を備えた無線LAN端末が存在する場合、外部の有線ネットワークからのデータを直ぐに無線チャンネルに送信しないで一旦保存する。
基地局60は、ビーコン周期1001毎にビーコン信号1002を送信する。このビーコン信号1002に、TIM(Traffic Indication Map)情報を含めて送信する。TIM情報は、無線LAN端末宛てのデータが存在するか否かを示す情報である。無線LAN端末は、TIM情報より、自分宛のデータが無いと判定した場合、次のビーコン信号を受信するまで省電力モード(Doze mode)になる。省電力モードでは、必要最小限の電力のみを消費し、省電力化が可能となる。
無線LAN端末は、TIM情報より、自分宛のデータがある判定した場合、データ送信要求信号1006、1009、1012を送信する。基地局60は、データ送信要求信号1006、1009、1012に基づいて、データ1003、1004、1005を送信する。無線LAN端末は、データの受信が完了すると、基地局60に確認信号1007、1010を返信する。それにより、次のビーコン信号を受信するまで電力停止可能期間1008、1011になり、省電力化を実現する。
WO03/47174号公報
特開2003−158763号公報
ANSI/IEEE Std 802.11
図10を参照して説明した省電力化方法では、無線LAN端末の数が増加すると、省電力化の効果が減少する。例えば、第1の無線LAN端末61は最初にデータ送信要求信号1006の送信に成功したため、次のビーコン信号の受信まで、電力停止可能期間1008となり、省電力化を実現できる。しかしながら、第2の無線LAN端末62は2番目にデータ送信要求信号1009の送信に成功したため、電力停止可能期間1011は短い。更に、第3の無線LAN端末63はビーコン周期1001の終わり近くにデータ送信要求信号1012の送信に成功したため、省電力モードになることができない。
更に従来の省電力方法では、データ受信動作時に省電力化を行うが、データ送信動作が必要な場合には省電効果が期待できないという問題がある。
図11を参照して説明する。基地局60は、ビーコン周期1101毎にビーコン信号1102を送信する。無線LAN端末61、62は、自分宛のデータが存在する判定した場合、データ送信要求信号1106、1110を送信する。基地局60は、データ送信要求信号1106、1110に基づいて、データ1103、1104を送信する。無線LAN端末61、62は、データ1103、1104の受信が完了すると、基地局60に確認信号1107、1111を返信する。
本例では、第1の無線LAN端末61は、最初にデータ送信要求信号1106の送信に成功するが、同一のビーコン周期1101内にて、更に、データ1109の送信を行う必要がある。従って、データ1109の送信までの間、送信待ち期間1108となり、受信動作を継続しなければならない。第1の無線LAN端末61は、2回目のデータ1109の送信を行い、基地局60は、データ1109の受信が完了すると、確認信号1105を送信する。尚、データ1109の送信中は、第3の無線LAN端末63はデータ送信要求信号1113を送信することができない。
一方、第2の無線LAN端末62は、基地局60に確認信号1111を返信すると電力停止可能期間1112となる。
このように無線LAN端末が続けてデータ送信を行う場合には、電力停止可能期間ではなく送信待ち期間1108となるため、省電力の効果は低下する。
本発明の目的は、省電力化可能なCSMA方式の無線通信システムを提供することにある。
本発明によると、基地局は、ビーコン周期毎に省電力機能付の無線LAN端末に対するデータの送受信の割当に関する割当情報を送信する。割当情報は、各無線LAN端末に対して割当てられたデータの送受信期間及び送受信の開始時点と、全ての無線LAN端末に共通の全体の割当期間を含む。
本発明では、TDMA方式の無線通信システムの方式を、既存のCSMA方式の無線通信システムに影響を与えることなく組み込む。従って、TDMA方式のように各無線LAN端末に送受信タイミングを基地局からの信号で指定することにより、各無線LAN端末は省電力動作が可能となる。
本発明によると、既存のCSMA方式の無線LAN通信システムに、省電力機能付の無線LAN端末を参加させることができる。既存の無線LNA通信システムに影響を与えることなく、また、省電力機能を有さない通常の無線LAN端末には、変更を加える必要がなく、そのまま利用できる。
以下に、図面を参照して本発明の例を説明する。
図1を参照して本発明による無線LANシステムの例を説明する。尚、本例の無線LANシステムは、図6に示した無線LANシステムと同様である。但し、第1及び第2の無線LAN端末61、62は、本例による省電力機能を有するが、第3の無線LAN端末63は本例による省電力機能を有さない通常の無線LAN端末である。基地局60は通常のCSMA方式の無線基地局である。
図1Aは基地局60の送信状態、図1B〜図1Dは第1、第2及び第3の無線LAN端末61、62、63の送信状態、図1Eは無線チャンネルにおける送信状態、図1F〜図1Hは第1、第2及び第3の無線LAN端末61、62、63の送受信状態を示す。図1Aに示すように、本例では、基地局60は、ビーコン周期101毎に、ビーコン信号103、108を送信する。ビーコン信号103の送信後に、全ての省電力機能付きの無線LAN端末61、62に対して割当情報104を送信する。割当情報104は、各省電力機能付きの無線LAN端末に対する割当と全ての省電力機能付きの無線LAN端末に共通の全体の割当期間102を含む。
省電力機能付きの無線LAN端末61、62に対する割当は、その無線LAN端末に割当てられたデータの送受信期間及び送受信の開始時点を含む。全体の割当期間102は、各ビーコン周期101における全ての省電力機能付きの無線LAN端末に与えられたデータの送受信期間である。全体の割当期間102では、省電力機能を有さない通常の無線LAN端末63はデータの送信を行うことができない。こうして、割当情報を一斉に報知することにより、省電力機能付きの無線LAN端末61、62は、他の無線LAN端末に割り込まれることなく、データの送受信を行うことができる。尚、基地局60は、ビーコン信号103を送信し、SIFS期間が経過した後に、割当情報104を送信する。更に、割当情報104をビーコン信号103とは別個に送信しないで、ビーコン信号に含めてもよい。
省電力機能付きの無線LAN端末61、62は、割当情報に従って、データの送受信を行う。本例では、図1B及び図1Cに示すように、最初に第1の無線LAN端末61にデータ109の送受信期間が割当てられ、次に、第2の無線LAN端末62にデータ112の送受信期間が割当てられている。従って、先ず、第1の無線LAN端末61がデータ109の送信を行う。基地局60は、第1の無線LAN端末61からのデータ109の受信が完了すると、確認信号105を返信する。第1の無線LAN端末61は、基地局60からの確認信号105を受信した後、電力停止可能期間110となる。第1の無線LAN端末61へ再度のデータ送受信が割当てられていない場合には、電力停止可能期間110は、ビーコン周期101が終了するまで継続される。電力停止可能期間110では、データの送受信を行わない。従って、不要な回路への電力及びクロックの供給を停止することにより省電力化を行うことが可能となる。
第2の無線LAN端末62は、自己に割当てられたデータ112の送受信期間まで、電力停止可能期間111となり、不要な回路への電力及びクロックの供給を停止することができる。データ112の送受信期間に近づくと、電力及びクロックの供給を再開する。データ112の送信が終了すると、基地局60から確認信号106を受信した後、電力停止可能期間113となる。第2の無線LAN端末62へ再度のデータ送信が割当てられていない場合には、電力停止可能期間113は、ビーコン周期101が終了するまで継続される。
省電力機能を有さない通常の第3の無線LAN端末63は、全体の割当期間102にて、キャリアセンスを実行するが、省電力機能付の無線LAN端末61、62がデータ109、112の送信を終了しても、DIFS期間より短いSIFS期間が設けられるから、データの送信を行うことはできない。従って、第3の無線LAN端末63は、全体の割当期間102が終了した後に、DIFS期間とバックオフ期間の経過後に、無線チャンネルが空いていることを条件に、データ114の送信を行う。基地局60は、データ114の受信が完了すると確認信号107を送信する。
割当情報104は、CSMA方式のプリアンブルに含めて送信してよい。この場合、プリアンブルのデータ種別の欄には割当情報であることを示す値が記述される。第3の無線LAN端末63は、割当情報の受信処理を行うが、プリアンブルのデータ種別の欄には不明な情報が記載されているため、そのパケットを廃棄する。
ここでは、無線LAN端末による省電力モードを説明したが、基地局60も同様に省電力モードを実行するために省電力機能を有してよい。省電力機能付き基地局60は、自身に対して割当てられた1ビーコン周期内のデータの送受信期間と送受信の開始時点とに基づいて、データの送受信を行わない期間を求め、データの送受信を行わない期間には回路への電力供給を停止又は削減する。
図2は、本発明による省電力機能付き無線LAN端末の構成例を示すブロック図である。無線LAN端末は、アンテナ201、RF(Radio Frequency)手段202、キャリアセンス手段203、復調手段204、変調手段205、無線制御処理手段206、フレーム処理手段207、データ制御処理手段208、外部接続処理手段209、及び、省電力化処理手段210を有する。
先ず、省電力機能付き無線LAN端末による受信処理を説明する。アンテナ201によって受信されたアナログ信号は、RF手段202に送られる。RF手段202は、アナログ信号より受信信号の電力レベルを表すRSSI値を取り出し、それをキャリアセンス手段203に送る。キャリアセンス手段203は、RSSI値を閾値と比較し、RSSI値が閾値より大きい場合には、無線チャネルが使用されていると判断し、RSSI値が閾値より小さい場合には、無線チャネルが使用されていないと判断する。キャリアセンス手段203は、無線チャネルが使用されているか否かの情報を無線制御処理手段206へ通知する。キャリアセンス手段203は、RSSI値が閾値より大きくなったとき、即ち、他の無線LAN端末又は基地局が、無線チャネルの使用を開始したと判断したとき、復調手段204に無線信号の復調と受信動作の開始を指示する。
RF手段202は、アナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、それを復調手段204に送る。復調手段204は、RF手段202から送られたパケットの先頭のプリアンブルより、無線チャネル上の無線信号が自己宛のCSMA方式のデータ信号であるか否かを判定する。自己宛のCSMA方式のデータ信号であると判定した場合には、復調手段204はデジタル信号の受信を続ける。復調手段204は、復調したデジタルデータをフレーム処理手段207へ送る。フレーム処理手段207は、暗号化されたデジタルデータの復号化等の処理を行った後、デジタルデータをデータ制御処理手段208に送る。データ制御処理手段208は、外部接続処理手段209を介してノート型パーソナルコンピュータ等の外部機器にデータを送る。
次に、省電力機能付き無線LAN端末による送信処理を説明する。ノート型パーソナルコンピュータ等の外部機器からのデータは、外部接続処理手段209を介してこの無線LAN通信端末に送られる。即ち、外部機器からのデータは、外部接続処理手段209を介してデータ制御処理手段208に送られ、更に、暗号化などの処理を行うフレーム処理手段207に送られる。
無線制御処理手段206はキャリアセンス手段203より無線チャネルの使用状況の情報を入手し、データ送信が可能であるか否かを判定する。例えば、無線制御処理手段206は、DIFS期間及びそれに続くバックオフ期間の間、無線チャネルが空いていることを確認した場合、フレーム処理手段207に対して、送信データを変調手段205へ送るように指示をする。
変調手段205は、フレーム処理手段207から送信デジタルデータを受け取ると、それにプリアンブルを付加し、変調し、更に、D/A変換して、RF手段202に送る。
省電力化処理手段210による省電力化処理を説明する。ここでは、第2の無線LAN端末62の場合について説明する。アンテナ201によって受信された割当信号は、RF手段202に送られ、そこでA/D変換され、更に、復調手段204によって復調される。復調手段204によって復調された割当信号は、フレーム処理手段207及び無線制御処理手段206を介して省電力化処理手段210に送られる。省電力化処理手段210は、割当信号を解析する。省電力化処理手段210は、割当信号より、現在のビーコン周期内における自己に割当てられたデータの送受信期間と送受信の開始時点を取得する。図1Cに示すように、第2の無線LAN端末62に割当てられた送受信期間は、第1の無線LAN端末61に割当てられた送受信期間より後である。従って、第2の無線LAN端末62は、先ず、電力停止可能期間111となる。
電力停止可能期間111においては一切のデータの送受信を行わない。省電力制御手段210は、無線制御処理手段206に対して、アンテナ201、キャリアセンス手段203、復調手段204、変調手段205への電力供給またはクロック供給の停止を指示する。省電力制御手段210は、電力停止可能期間111の終了前に各回路の再起動に必要な適当な時間の余裕を考慮し、無線制御処理手段206に対して、アンテナ201、キャリアセンス手段203、復調手段204、変調手段205への電力供給またはクロック供給の再開を指示する。それにより、第2の無線LAN端末62は、通常のCSMA方式の動作を行う。
電力停止可能期間111が終了し、SIFS期間が経過すると、無線チャンネルが空いていることを条件に、無線制御処理手段206は、フレーム処理手段207に対して、データ112の送信の実行を指示する。この時点では、データの受信は行わないので、復調手段204を起動させる必要はない。しかしながら、データ112の送信が終了し、基地局60から確認信号106を受信するときには、復調手段204は起動している必要がある。従って、データ112の送信が終了した後のSIFS期間にて、復調手段204を起動させる必要がある。
省電力制御手段210は、割当てられたデータ送受信期間が終了したとき、通常のCSMA方式の動作を行っても良いが、その必要がないと判断した場合、再び電力停止可能期間になる。省電力制御手段210は、無線制御処理手段206に対して、アンテナ201、キャリアセンス手段203、復調手段204、及び、変調手段205への電力供給またはクロック供給の停止を指示する。
省電力制御手段210は、次のビーコン信号を受信するために、ビーコン周期が終了する前に、各回路の再起動に必要な適当な時間の余裕を考慮し、無線制御処理手段206に対して、アンテナ201、キャリアセンス手段203、復調手段204、及び、変調手段205への電力供給またはクロック供給の再開を指示する。この時点では、データの送信は行わないので、変調手段205を起動させる必要はない。
以上のように、本例では、割当情報により自己に割当てられたデータの送受信期間が予め判るので、それ以外の時間は、無線チャネルを監視する必要がない。従って、このような期間において、電力供給またはクロック供給を停止することにより省電力化を実現することができる。
図3を参照して、省電力機能付き無線LAN端末の動作を説明する。ここでは、第2の無線LAN端末62の場合について説明する。ステップS301にて、第2の無線LAN端末62は、周期毎にビーコン信号受信処理を行う。即ち、基地局60から送信されるビーコン信号を受信する。ステップS302にて、第2の無線LAN端末62は、基地局60からビーコン信号に続いて送信される割当情報を受信して解析する割当情報受信処理を行う。
ステップS303にて、第2の無線LAN端末62は、割当情報を解析し、割当情報に全体の割当期間が含まれるか否かを判定する。全体の割当期間がない場合には、ステップS310に進み、全体の割当期間がある場合には、ステップS304に進む。全体の割当期間がない場合とは、全ての省電力機能付き無線LAN端末に対して割当がないことになる。ステップS304にて、第2の無線LAN端末62は、自己に割当てられたデータ送受信期間とデータ送受信の開始時点があるか否かを判定する。自己に割当てられたデータ送受信期間及びデータ送受信の開始時点がある場合には、ステップS305に進み、ない場合には、ステップS308に進む。
ステップS305にて、自己に割当てられたデータ送受信の開始時点になったか否かを判定する。自己に割当てられたデータ送受信の開始時点になった場合には、ステップS306に進み、自己に割当てられたデータ送受信の開始時点になっていない場合には、ステップS307に進む。
ステップS306にて、データ送受信処理を行う。即ち、基地局60にデータを送信し、データの送信が完了すると、基地局60から確認信号を受信する。ステップS307及びS308にて、電力停止処理を行う。
ステップS309にて、全体の割当期間が終了したか否かを判定する。全体の割当期間が終了していない場合には、ステップS305に戻る。全体の割当期間が終了した場合にはステップS310に進む。
ステップS310にて、通常の動作に戻るか否かを判定する。即ち、省電力モードを継続するか否かを判定する。通常の動作に戻る場合には、ステップS311に進み、データの送受信処理を行う。通常の動作に戻らない場合には、ステップS312に進み、電力停止継続処理を行う。最後にステップS313にて、通信が終了したか否かを判定する。通信が終了していなければ、ステップS301に戻り、通信が終了した場合には、本処理を終了する。
本例では、各ビーコン周期にて、通信の割当の有無を含む割当情報を送信するから、自己に割当てが無い省電力機能付無線LAN端末は、省電力化処理を行うことができる。また、割当情報を受信しなかった場合には、自己に割当が無いものとしてそのビーコン周期内において省電力化処理を続けることもできる。
図4を参照して、本発明による無線LANシステムの第2の例を説明する。図4Aは基地局60の送信状態、図4B〜図4Dは第1、第2及び第3の無線LAN端末61、62、63の送信状態、図4Eは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われたと仮定した場合の無線チャンネルにおける送信状態、図4Fは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われたと仮定した場合の全体の割当期間402における無線チャンネルにおける送受信状態、図4Gは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われなかった場合の無線チャンネルにおける送信状態を示す。
図4Aに示すように、基地局60は、ビーコン周期401毎にビーコン信号403を送信し、SIFS期間の後に、割当情報404を送信する。図4Bに示すように、本例では、図1の場合と同様に、最初に省電力機能付の第1の無線LAN端末61にデータ408の送受信期間が割当てられ、次に、省電力機能付の第2の無線LAN端末62にデータ409の送受信期間が割当てられている。図4Bの破線にて示すように、第1の無線LAN端末61は、自己に割当てられたデータ送受信期間にて、何らかの理由により、データ408の送信を行うことができなかったものとする。破線は、本来ならデータ送信を行うはずであるが、実際には実行されなかったことを示す。
基地局60は、割当情報404の送信の後、SIFS期間が経過すると、第1の無線LAN端末61によるデータ408の送信を検出するはずである。しかしながら、本例では、基地局60は、SIFS期間が経過しても、データ408の送信を検出しない。そこで、基地局60はPIFS期間が経過したとき、未だ、第1の無線LAN端末61がデータ送信を行っていないことを条件に、ダミー信号405を送信する。ダミー信号405の送信は、第1の無線LAN端末61に割当てられたデータ408の送受信期間が終了するまで行われる。基地局60は、ダミー信号405の送信が終了すると、SIFS期間の経過後、確認信号の代わりに再びダミー信号406を送信する。
もし、ダミー信号405を送信しないと、割当情報404の送信後に、SIFS期間が経過し、更に、DIFS期間及びその後のバックオフ期間が経過すると、通常の第3の無線LAN端末63がデータの送信を開始することができる。それにより、割当期間における各無線LAN端末のデータ送信のスケジュールが壊れる。
もし、確認信号の代わりにダミー信号406を送信しないと、ダミー信号405の送信後に、SIFS期間が経過し、更に、DIFS期間及びその後のバックオフ期間が経過すると、通常の第3の無線LAN端末63がデータの送信を開始することができる。それにより、割当期間における各無線LAN端末のデータ送信のスケジュールが壊れる。
本例では、ダミー信号405を送信するための待ち時間として、PIFS期間を使用する。しかしながら、SIFS期間より長く且つDIFS期間より短い期間であれば何でも良い。この期間をSIFS期間より長くするのは、ダミー信号405の送信よりも、第1の無線LAN端末61によるデータ408の送信を優先させるためである。この期間をDIFS期間より短くするのは、ダミー信号405の送信を他の無線LAN端末によるデータ送信より優先させるためである。
ダミー信号405の送信が終了すると、第2の無線LAN端末62は、自己に割当てられたデータ送受信期間にて、データ409を送信する。基地局60は、第2の無線LAN端末62からのデータ409の受信が完了すると、第2の無線LAN端末62へ確認信号407を返信する。割当期間402が終了すると、第3の無線LAN端末63がデータ10の送信を行う。
図5を参照して、本発明による無線LANシステムの第3の例を説明する。図5Aは基地局60の送信状態、図5B及び図5Cは第1及び第2の無線LAN端末61、62の送信状態、図5Dは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われたと仮定した場合の無線チャンネルにおける送信状態、図5Eは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われたと仮定した場合の全体の割当期間502における無線チャンネルにおける送受信状態、図5Fは無線LAN端末によるデータ送信が正常に行われなかった場合の無線チャンネルにおける送信状態を示す。
本例では、図1の場合と同様に、最初に省電力機能付の第1の無線LAN端末61にデータの送受信期間が割当てられ、次に、省電力機能付の第2の無線LAN端末62にデータ507の送受信期間が割当てられている。
基地局60は、ビーコン周期501毎にビーコン信号503を送信し、SIFS期間の後に、割当情報504を送信する。次に、第1の無線LAN端末61がデータ507の送信を行う。基地局60は、第1の無線LAN端末61からのデータ507の受信が完了すると、確認信号505を返信する。第1の無線LAN端末61は、基地局60からの確認信号505を受信した後、電力停止可能期間(図示なし)となることができる。本例では、第1の無線LAN端末61がデータ507の送信を終了した後、第2の無線LAN端末62がデータ508の送信を行うまで十分時間がある。この間に、第3の無線LAN端末63がデータ送信を行う可能性がある。従って、基地局60は、第1の無線LAN端末61へ確認信号505を返信した後、SIFS期間が経過すると、ダミー信号506を送信する。それにより、第3の無線LAN端末63がデータ送信を行うことを阻止し、全体の割当期間502において、省電力機能付の無線LAN端末のデータ送信を確保することができる。
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者により容易に理解されるであろう。
本発明の無線LAN通信システムの第1の例におけるフレームの構成例を示す図である。
本発明による無線LAN端末の構成例を示すブロック図である。
本発明による無線LAN端末の動作を示すフローチャート図である。
本発明の無線LAN通信システムの第2の例におけるフレームの構成例を示す図である。
本発明の無線LAN通信システムの第3の例におけるフレームの構成例を示す図である。
無線LAN通信システムの構成例を示すブロック図である。
従来のCSMA/CA方式の無線LAN通信システムの概略を説明するための説明図である。
従来のCSMA/CA方式の無線LAN通信システムにおけるバックオフアルゴリズムの概略を説明するための説明図である。
分散制御用フレーム間隔(DIFS)、集中制御用フレーム間隔(PIFS)、及び、短期フレーム間隔(SIFS)の3つのフレーム間隔を説明するための説明図である。
従来のCSMA/CA方式の無線LAN通信システムにおけるパワーセーブモード(PSM)を説明するための説明図である。
従来のCSMA/CA方式の無線LAN通信システムにおけるパワーセーブモード(PSM)の他の例を説明するための説明図である。
符号の説明
201…アンテナ、202…RF手段、203…キャリアセンス手段、204…復調手段、205…変調手段、206…無線制御処理手段、207…フレーム処理手段、208…データ制御処理手段、209…外部接続処理手段、210…省電力化処理手段