以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1(A),(B)から図3(A),(B)は、本発明に係る実施形態の電動ステアリングロック装置(以下「ロック装置」と略する。)を示す。このロック装置は、図示しないステアリングの回動操作に伴って回動するステアリングシャフトの周囲に配設され、エンジン等を始動または停止させるためのキー操作または始動ノブ操作に連動して動作するものである。なお、このステアリングシャフトには、従来と同様に、周方向の所定位置に係合凹部が形成されている。
本実施形態のロック装置は、一端開口のケース10およびカバー21を有し、前記ステアリングシャフトの係合凹部に位置するように固定されるケーシングを備えている。そして、このケーシングの内部には、前記係合凹部に係合するロックボルト34と、該ロックボルト34の駆動手段であるアクチュエータ46と、アクチュエータ46の駆動力をロックボルト34に伝達する伝達機構と、前記ロックボルト34の動作位置を検出する位置検出機構とが収容されている。
具体的には、前記ケース10は、図1および図2に示すように、略半分の領域に基板63を配設するための矩形状の凹部11が形成されている。この凹部11には、後述するカバー21をネジ止め固定するためのボス12が突設されている。また、ケース10には、凹部11の反対側の領域に矩形状をなす伝達機構配設部13が設けられている。この伝達機構配設部13は、凹部11の開口端より端面が突出する厚肉のもので、その略中央部分には、円形状に窪んだ位置決め凹部14が設けられている。この位置決め凹部14には、同一軸心の円形状をなす位置決め部15が、位置決め凹部14の開口端より更に突出するように設けられている。そして、位置決め凹部14の内周面と位置決め部15の外周面との間には、略C字形状をなすように凹状に窪んだ摺動溝16が形成されている。また、このケース10において、外面側となる前記位置決め部15の反側面には、矩形状をなすように外向きに突出する突出部17が設けられている。そして、位置決め部15の軸心には、ロックボルト34を進退可能に挿通させる挿通孔18が突出部17を貫通するように設けられている。さらに、位置決め部15の突出端部には、円形状に窪んだ位置決め段部19が設けられている。なお、凹部11を設けた側の側壁には、コネクタ66を位置決めするための突片部20が設けられている。
前記カバー21は、図1および図4に示すように、後述する回転ギア49およびウォーム48を配置するギア配設部22と、電動モータ47を配設するモータ配設部23とが、隔壁を突設することにより区画して設けられている。ギア配設部22は、その中心がケース10との組付状態で伝達機構配設部13と同一軸心に位置するもので、その中央には略円形状をなすように外向きに膨出する膨出部24が設けられている。この膨出部24の円形状をなす内部空間は、後述するカム部材38が配置されるもので、その内周面には、カム部材38の回転を阻止し、軸方向に進退させるためのガイド溝25が、周方向に所定間隔(90度)をもって設けられている。また、膨出部24の中心には、カム部材38の内部でロックボルト34を直接付勢する付勢手段として図1に示すスプリング26を挿通保持する保持部27が設けられている。さらに、カバー21において、膨出部24の開口縁の周囲には、膨出部24と同一軸心で円筒状に突出する位置決め凸部28が設けられている。この位置決め凸部28の内周面下部には、回転ギア49の回動を規制する第1ストッパ部29が設けられている。また、この位置決め凸部28の開口端外周部には、段状をなすように係合溝部30が設けられている。この係合溝部30は、平面視で略C字形状をなす予め設定された領域に設けられ、その両端間の切り欠かれていない部分は、回転ギア49の回動を規制する第2ストッパ部31を構成する。また、カバー21には、ケース10との組付状態でボス12に対応するネジ止め部32が設けられ、このネジ止め部32とボス12とで挟持されることによって基板63がケーシング内に固定される。さらに、ケース10の突片部20と対応する側壁には、内部にコネクタ66を配置して露出させるための切欠部33が設けられている。
前記ロックボルト34は、図1および図2に示すように、前記挿通孔18に挿通可能な四角柱形状のもので、その上端には、係合凹部に挿入係止される係合凸部35が設けられている。このロックボルト34は、後述するアクチュエータ46および伝達機構によって、ステアリングシャフトの側に進出されて係合凹部に係合するロック位置、および、後退してその係合が解除されるアンロック位置の間を進退するように移動される。また、係合凸部35が係合凹部に対して周方向に一致しない場合には、スプリング26によって進出方向に付勢され、一致するとその付勢力でもって係合される。このロックボルト34の下端には、後述するカム部材38に挿入係止される装着凸部36が設けられ、この装着凸部36に係止孔37が設けられている。
本実施形態のロックボルト34は、従動部材である別体のカム部材38に連結され、このカム部材38を介して進退される。このカム部材38は、その下部がカバー21の膨出部24内に配置され、上部が後述する回転ギア49の内部に配置される略円柱状のものである。このカム部材38の下端外周部には、膨出部24のガイド溝25に挿通されるガイド凸部39が周方向に所定間隔をもって突設されている。また、このカム部材38には、ロックボルト34の進退方向である軸心に沿った上下端にかけて貫通する貫通孔40が設けられている。この貫通孔40は、上部40aの内壁が装着凸部36と一致する矩形状をなし、下部40bが円形状をなすもので、その境界部分には、装着凸部36の下端を受ける係止段部41が軸心に向けて膨出するように設けられている。この係止段部41の内周面は、スプリング26の外径より僅かに大きく形成されている。また、カム部材38の上部には、ロックボルト34の組付状態で係止孔37に一致する係止孔42が設けられ、これらが連結手段である連結ピン43によって一体的に連結されている。そして、カム部材38の外周部には、その軸心と同一となる回転ギア49の回転軸心を中心として、略螺旋状をなすように旋回する略半円形状に窪んだカム溝44が径方向に対向するように一対設けられている。このカム溝44は、回転ギア49の回転動力を該カム部材38を介してロックボルト34の直線運動に変換するものである。このカム溝44は、一(下)端の所定領域がロックボルト34によるステアリングシャフトのロック領域として予め設定され、他(上)端の所定領域がロックボルト34によるステアリングシャフトのアンロック領域として予め設定されている。そして、このアンロック領域の境界部分には、カム溝44内に位置するように上向きに突出する突部45が設けられている。なお、このカム溝44および突部45については、後で更に詳細に説明する。
前記アクチュエータ46は、ロックボルト34を移動させるための動力源であり、モータ配設部23に配設される電動モータ47と、該電動モータ47の出力軸に配設されたねじ歯車であるウォーム48とからなる。前記電動モータ47は、後述する基板63に半田付けによって電気的に接続されるもので、カム部材38を進出させる正転作動と、カム部材38を後退させる逆転作動とが可能なものが使用される。
前記伝達機構は、図1および図2に示すように、カム部材38に設けた前記カム溝44と、このカム部材38を内部に進退可能に配設した状態でアクチュエータ46によって回動される回転ギア49と、該回転ギア49に配設され前記カム部材38を移動させるカムフォロワ62とを備えている。
前記回転ギア49は、外周部にウォーム48の歯と噛み合う複数のはす歯を形成したウォームホイール部50を備えている。このウォームホイール部50は、図1に示すように、カバー21のギア配設部22より若干小さい外径をなし、円形状をなす内部空間は、カム部材38より若干大きい直径をなす。そして、このウォームホイール部50の一(上)端内周縁には、図2および図5に示すように、ケース10の位置決め部15の位置決め段部19内に嵌合される第1嵌合部51が円筒状をなすように突設されている。また、この第1嵌合部51と反対側の他(下)端内周縁には、カバー21の位置決め凸部28内に嵌合される第2嵌合部52が設けられている。これにより、この回転ギア49は、ケース10の位置決め部15とカバー21の位置決め凸部28との間に挟み込まれることにより、軸方向に移動することなく、周方向に回転可能に保持される。なお、この第2嵌合部52の突端外周部には、略C字形状をなすように段部53が設けられている。この段部53は、カバー21の第1ストッパ部29と対応するもので、段部53が形成されていない部分が第1ストッパ部29に当接する第1当接部54を構成する。また、ウォームホイール部50には、第2嵌合部52の外周に位置するように、第2ストッパ部31に当接する第2当接部55が円弧状をなすように突設されている。さらに、この第2嵌合部52の内周面には、開口縁から軸方向に沿って延びる略半円形状に窪んだ縦溝56が、径方向に対向するように一対設けられている。
本実施形態の回転ギア49には、第1嵌合部51の外周部に位置するように、ケース10の摺動溝16内に配置される環状のスイッチカム部57が、第1嵌合部51から更に突出するように設けられている。このスイッチカム部57は、後述するマイクロスイッチ65A〜65Cをオン、オフ操作するもので、回転ギア49の回転軸心に沿って隣接した異なる位置に第1カム部58と第2カム部59とを設けたものである。第1カム部58は、スイッチカム部57においてウォームホイール部50から離れた先端側に位置するもので、予め設定した角度範囲(本実施形態では約308度)にかけて径方向内向きに窪む第1凹部60を設けることにより、該第1凹部60を除く周方向に略円弧状をなすように設けたものである。第2カム部59は、スイッチカム部57においてウォームホイール部50の側に位置するもので、第1カム部58と同様に、予め設定した角度範囲(本実施形態では約68度)にかけて径方向内向きに窪む第2凹部61を設けることにより、該第2凹部61を除く周方向に略C字形状をなすように設けたものである。なお、本実施形態では、第1カム部58と第2カム部59との位置が一致し、スイッチカム部57においてウォームホイール部50から先端までの全長にかけて延びる部分を有し、その部分の内周部は肉厚が薄くなるように凹設されている。
前記カムフォロワ62は、球状のスチールボールからなり、図1に示すように、回転ギア49の縦溝56に配設される。そして、この縦溝56から突出した部分が、カム部材38のカム溝44に嵌められた状態で、回転ギア49が回動されると、縦溝56が周方向に回転されることにより、回転不可能に規制されたカム部材38のカム溝44に沿って摺動し、該カム部材38を介してロックボルト34を、回転ギア49の回転軸心に沿って進退させる。
前記位置検出機構は、図1(A),(B)に示すように、前記回転ギア49のスイッチカム部57と、基板63に実装したマイクロスイッチ65A〜65Cとからなる。この基板63には、マイクロスイッチ65A〜65Cの他に、コネクタ66および制御手段であるマイコン(図示せず)が実装され、これらが周知のパターン回路で接続されている。この基板63は、図6に示すように、スイッチカム部57の中間部分である第1カム部58と第2カム部59との境界部分に位置し、回転ギア49の回転軸心に対して直交方向に延びるように前記ケース10およびカバー21の内部に組み付けられる。そして、この基板63の一端には、回転ギア49のスイッチカム部57の外周部に所定間隔をもって位置するように円弧状切欠部64が設けられている。
前記マイクロスイッチ65A〜65Cは、検出レバーの押圧によりオンされるもので、スイッチカム部57によりオン作動された状態ではHi信号を出力し、オン作動されない状態ではLow信号を出力する常開式のものである。そして、本実施形態では、基板63の円弧状切欠部64の縁において、第1のマイクロスイッチ65Aは、図1(A)中上側に位置する表面側に配置され、第2および第3のマイクロスイッチ65B,65Cは、下側に位置する裏面側に配置される。これにより、第1のマイクロスイッチ65Aは、回転ギア49の第1カム部58でオン、オフされ、第2および第3のマイクロスイッチ65B,65Cは、回転ギア49の第2カム部59でオン、オフされるように構成している。
前記コネクタ66は、図示しない相手方コネクタが接続されることにより、自動車から電動モータ47等を動作させるための電力や、電動モータ47をロック作動またはアンロック作動させるための制御信号を入力するとともに、マイクロスイッチ65A〜65Cによって、回転ギア49の回動位置を介して検出したロックボルト34の動作位置の検出信号を外部に出力するためのものである。
前記マイコンは、内蔵した記憶手段であるROMに記憶されたプログラムに従って、電動モータ47を正転および逆転制御することにより、ロックボルト34をロック作動およびアンロック作動させるものである。この際、マイクロスイッチ65A〜65Cの検出状態に基づいて、可動部材の動作位置を検出する位置判断手段の役割をなす。また、各マイクロスイッチ65A〜65Cの検出状態に基づいて、いずれかのマイクロスイッチ65A〜65Cの故障の有無を検出する故障判断手段の役割をなす。
次に、カム部材38のカム溝44の具体的な構成について説明する。
前記カム溝44は、図7の展開図に示すように、下端から上向きに緩勾配の傾斜角度(水平線とのなす角が約6度)で延びる第1延設部44aと、該第1延設部44aの端から該第1延設部44aより急勾配の傾斜角度(水平線とのなす角が約38度)で延びる第2延設部44bと、該第2延設部44bの端から水平方向に延びる第3延設部44cとを備えている。このカム溝44は、下端(左)側がロックボルト34によるロック位置、上端(右)側がロックボルト34によるアンロック位置を構成する。具体的には、回転ギア49の縦溝56に沿ってカムフォロワ62が上下動しない状態において、該カムフォロワ62がカム溝44の下側に位置すると、カム部材38が図3(A)に示すように上向きに移動したロック状態となり、カムフォロワ62がカム溝44の上側に位置すると、カム部材38が図3(B)に示すように下向きに移動したアンロック状態となる。なお、図7において、カム溝44に対して実線で示したカムフォロワ62の摺動位置(高さ)が、ロックボルト34の係合凸部35の先端がステアリングシャフトの係合凹部の開口端に位置した状態である。
即ち、本実施形態では、ロックボルト34の係合凸部35がステアリングシャフトの係合凹部内に進入している状態を緩勾配の第1延設部44aで進退させ、係合凸部35が係合凹部から離脱した状態を急勾配の第2延設部44bで進退させる構成としている。ここで、ロックボルト34の進退動作において、係合凸部35が係合凹部内に進入すると、それらの間には摩擦抵抗が生じる。そのため、係合凸部35が係合凹部内に進入した状態では、係合代が徐々に増減するように進退させ、係合凸部35が係合凹部から離脱した状態では迅速に進退させて、電動モータ47に加わる負荷を低減できるように構成している。
一方、図7において、カム溝44の下端にカムフォロワ62が位置している状態は、回転ギア49の当接部54,55がカバー21のストッパ部29,31の一端に当接する位置であり、カム溝44の上端にカムフォロワ62が位置している状態が、当接部54,55がストッパ部29,31の他端に当接する位置である。言い換えれば、本実施形態では、当接部54,55およびストッパ部29,31の周方向の寸法設定により、回転ギア49が360度未満の所定範囲(以下「回動範囲」と称する。)のみ、正転および逆転できるように構成している。
このようなカム溝44において、ロックボルト34によってステアリングシャフトがロック状態であると認定できる領域は、走行中の振動等による位置ズレは勿論、ロックボルト34およびステアリングシャフトの剛性を考慮して、確実にロック状態を維持できる高さ(係合代)に設定する必要がある。また、アンロック状態であると認定できる領域は、走行中の振動等による位置ズレを考慮して、確実に係合凸部35が係合凹部に進入しない高さ(後退量)に設定する必要がある。
そのため、本実施形態では、前記条件に加え、電動モータ47の動作を停止した後の惰性動作を含めて、停止後に回転ギア49の当接部54,55がカバー21のストッパ部29,31に当接しない最低範囲を、ロック領域として設定している。また、前記条件を満足できる高さまで第2延設部44bを延ばし、電動モータ47の動作を停止した後の惰性動作を含めて、停止後に回転ギア49の当接部54,55がカバー21のストッパ部29,31に当接しない最低範囲に前記第3延設部44cを設け、この第3延設部44c内をアンロック領域として設定している。さらに、アンロック領域の始点位置である第2および第3延設部44b,44cとの境界部分に、カム溝44内でのカムフォロワ62の摺動を阻止する移動阻止手段である前記突部45を形成している。なお、この第3延設部44cは、前記突部45を設ける構成により、他の延設部44a,44bより縦方向の幅が大きくなるように構成している。また、この突部45によりカムフォロワ62は、スプリング26によってロック側に進出するように付勢されたカム部材38において、走行中の振動では突部45を乗り越えてアンロック位置からロック位置の側へは摺動できず、電動モータ47の駆動力が加わることにより、突部45を乗り越えてアンロック位置からロック位置の側へ摺動できる構成とすることができる。
次に、回転ギア49に設けるスイッチカム部57と基板63に配設するマイクロスイッチ65A〜65Cについて具体的に説明する。
まず、マイクロスイッチ65A〜65Cは、基板63に対する配置スペースを考慮して円弧状切欠部64の縁の表裏面に実装する。そして、本実施形態では、図7に示すように、第1のマイクロスイッチ65Aにより、回転ギア49およびカム部材38を介してロックボルト34がアンロック領域内に移動しているか否かを検出する。また、第2のマイクロスイッチ65Bにより、同様にロックボルト34がアンロック領域内に移動しているか否かを検出する。さらに、第3のマイクロスイッチ65Cにより、ロックボルト34がロック領域内に移動しているか否かを検出する構成としている。ここで、本実施形態では、3つのマイクロスイッチ65A〜65Cのうち、2つのマイクロスイッチ65A,65Bで、アンロック領域に動作しているか否かを検出する構成としている。これは、自動車の走行に係る安全を第1に考えると、ロックボルト34がアンロック領域内に位置している状態が最も安全であり、他の領域では安全を確実に確保できるとはいえないため、いずれかのマイクロスイッチ65A,65Bが故障しても、確実にアンロック側を検出するためである。
そして、第1のマイクロスイッチ65Aによって、回転ギア49を介してロックボルト34がアンロック領域内に位置しているか否かを検出するには、カムフォロワ62が第3延設部44cに進入した状態で、第1のマイクロスイッチ65Aがオン作動するように、第1カム部58を設ける。また、第2のマイクロスイッチ65Bによって回転ギア49を介してロックボルト34がアンロック領域内に位置しているか否かを検出するには、第1のマイクロスイッチ65Aと同様に、カムフォロワ62が第3延設部44cに進入した状態で、第2のマイクロスイッチ65Bがオフ作動するように、第2カム部59を設ける。さらに、第3のマイクロスイッチ65Cによって回転ギア49を介してロックボルト34がロック領域内に位置しているか否かを検出するには、カムフォロワ62が第1延設部44aのロック領域に進入した状態で、第3のマイクロスイッチ65Cがオン作動するように、第2カム部59を設ける。
即ち、第1カム部58は、カムフォロワ62が第3延設部44cに進入した時点の第1のマイクロスイッチ65Aの位置から、ロック回転側に向けて延びるように設ける。また、第2カム部59は、カムフォロワ62が第3延設部44cに進入した時点の第2のマイクロスイッチ65Bの位置から、アンロック回転側に向けて延びるように設ける。そして、その延び範囲は、カムフォロワ62がロック領域に進入した時点の第3のマイクロスイッチ65Cの位置までの範囲とする。
このように構成した本実施形態のロック装置は、カム部材38に設けた貫通孔40の一端にロックボルト34を装着し、これらに設けた係止孔37,42に連結ピン43を貫通させて連結するという非常に簡単な連結手段を採用している。この連結構造では、図1(A)に示すように、係止孔37,42と連結ピン43との間や、装着凸部36を装着する貫通孔40の上部40aとの間に従来と同様の隙間S1,S2が生じる。
しかし、本実施形態では、ロックボルト34と別体で形成したカム部材38には、ロックボルト34の装着孔とスプリング26の装着孔とを別個に設けることなく、1つの貫通孔40で構成し、ロックボルト34の装着凸部36の下端をスプリング26で直接進出方向に付勢する構成としている。そのため、特に隙間S1は付勢により部材同士が当接した状態に維持される。その結果、その隙間S1(遊び)により発生するガタツキ音の発生を確実に防止できる。
よって、ロックボルト34とカム部材38との間に生じる隙間S1,S2に緩衝材を配設する等の複雑なノイズ対策は不要になるため、製造コストが高くなることはない。しかも、カム部材38に対するロックボルト34の装着状態が安定し、ロック装置のケーシングからのロックボルト34の進出量が安定するため、ステアリングシャフトの係合凹部への係合代の安定を図ることができる。これにより、前記位置検出機構によるロックボルト34の作動位置の検出をより正確に行うことが可能となる。また、本実施形態のロック装置においては、ロックボルト34がスプリング26の付勢力によって進出方向に付勢されており、連結ピン43によってロックボルト34に連結されているカム部材38もまた進出方向に付勢された状態となっている。これにより、カム部材38のカム溝44の側壁とカムフォロワ62との隙間、および、回転ギア49の縦溝56の側壁とカムフォロワ62との隙間が吸収され、さらにロックボルト34の進出量を安定させることが可能となる。
次に、前記ロック装置のアンロック作動およびロック作動について説明する。
前記ロックボルト34をロック状態からアンロック状態にするには、図3(A)に示すロック状態で、電動モータ47が正転駆動される。そうすると、図7に示すように、ウォーム48を介して回転ギア49が反時計回りに回動され、カム溝44の下端近傍に位置していたカムフォロワ62がカム溝44内を摺動または回転しながら移動する。しかし、カムフォロワ62は、回転ギア49の縦溝56内に位置していて周方向には移動できないので、回転ギア49の回転によってロックボルト34が後退方向に移動し始める。
この際、カムフォロワ62がカム溝44の第1延設部44aに沿って移動するときには、ロックボルト34は、ロック位置から比較的ゆっくりと後退する。これにより、ロックボルト34の係合凸部35がステアリングシャフトの係合凹部から引き抜かれるときの引き抜き荷重を大きくすることができる。そのため、ステアリングシャフトに据え切りトルクが加わっており、係合凹部の内面が係合凸部35の外面に圧接している状態でもロックボルト34を確実に引き抜くことができる。また、引き抜き荷重増大のための減速ギア等を廃止できるとともに、電動モータ47を小型化することができる。その結果、ロック装置全体の小型化を図ることができる。
引き続き、回転ギア49の回転にしたがってカムフォロワ62がカム溝44の第2延設部44bに沿って移動するときは、ロックボルト34は比較的速く後退する。このように、ステアリングシャフトの係合凹部から先端が引き抜かれた後はロックボルト34の動作を速くすることで、電動モータ47の作動時間を短くできる。さらに、ステアリングのロックを解除した後のエンジン始動までの時間を短くすることもでき、ユーザの利便性を向上することができる。
このようにして、ロックボルト34がロック位置からアンロック位置に移動することで、ステアリングシャフトの係合凹部に対するロックボルト34の係合凸部35の係合が解除される。その結果、ステアリングシャフトの回動規制が解除され、図3(B)に示すアンロック状態になる。
逆に、ロックボルト34をアンロック状態からロック状態にするには、アンロック状態で、電動モータ47が逆転駆動される。そうすると、ウォーム48を介して回転ギア49が時計回りに回転され、カムフォロワ62がカム溝44内に沿って移動する。この際、第3延設部44cの端部にカムフォロワ62が位置すると、突部45に当接して移動を妨げる。しかし、電動モータ47による回転ギア49の回転駆動力によって、スプリング26の付勢力に抗してカム部材38を軸方向下向きに移動させて、カムフォロワ62が突部45を乗り越えて、第2延設部44bの側に進入する。
その後、ロックボルト34がスプリング26の付勢力も伴って図3(B)に示すアンロック位置から図3(A)に示すロック位置まで進出する。これにより、ロックボルト34の係合凸部35がステアリングシャフトの係合凹部内に進入して係合し、ステアリングシャフトは回動規制されてロック状態になる。
この際、ステアリングシャフトの係合凹部がロックボルト34の係合凸部35と一致していない場合が多い。この場合には、ロックボルト34を係合凹部に進入できないため、図3(A)に示すロック状態とすることはできない。しかし、回転ギア49を回動させることによるカムフォロワ62とカム溝44との摺動は、前記と同様に行われ、カムフォロワ62が縦溝56に沿って下向きに移動する点でのみ相違する。そして、この状態でステアリングシャフトが回転され、ロックボルト34に係合凹部が一致すると、スプリング26の付勢力によって図3(A)に示すロック状態とすることができる。
次に、前記ロック作動およびアンロック作動に伴う回転ギア49によるマイクロスイッチ65A〜65Cのオン、オフ動作について説明する。
図7の状態Iに示すように、カム溝44の下端にカムフォロワ62が位置するロック状態では、第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態、第3のマイクロスイッチ65Cはオフ状態をなす。
そして、マイコンがアンロック作動させ、電動モータ47を正転駆動させて回転ギア49を反時計回りに回転させることにより、ロックボルト34がロック領域から逸脱すると、状態IIに示すように、第3のマイクロスイッチ65Cがオン状態になり、他の第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態を維持する。
その後、ロックボルト34がステアリングシャフトの係合凹部から完全に離脱すると、状態IIIに示すように、第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態、第3のマイクロスイッチ65Cはオン状態をそれぞれ維持する。
そして、ロックボルト34がアンロック領域まで後退すると、状態IVに示すように、第1のマイクロスイッチ65Aはオン状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオフ状態になり、他の第3のマイクロスイッチ65Cはオン状態を維持する。
なお、アンロック作動時には、マイコンは、この状態IVをマイクロスイッチ65A〜65Cを介して検出することにより、カムフォロワ62がアンロック領域に至り、回転ギア49を介してロックボルト34がアンロック状態になったと判断し、電動モータ47を停止させる。なお、回転ギア49は、惰性動作により、状態Vに示す位置まで回転する。この状態では、第1のマイクロスイッチ65Aはオン状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオフ状態、第3のマイクロスイッチ65Cはオン状態をそれぞれ維持する。
一方、状態Vに示すアンロック状態で、マイコンが電動モータ47を逆転駆動させ、回転ギア49を時計回りに回転させると、前記とは逆に、ロックボルト34がアンロック領域から逸脱すると、状態IVに示すように、第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態になり、他の第3のマイクロスイッチ65Cはオン状態を維持する。
その後、ロックボルト34がステアリングシャフトの係合凹部まで進出すると、状態IIIに示すように、第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態、第3のマイクロスイッチ65Cはオン状態をそれぞれ維持する。
そして、ロックボルト34がロック領域まで進出すると、状態IIに示すように、第3のマイクロスイッチ65Cがオフ状態になり、他の第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態を維持する。
なお、ロック作動時には、マイコンは、この状態IIをマイクロスイッチ65A〜65Cを介して検出することにより、カムフォロワ62がロック領域に至り、回転ギア49を介してロックボルト34がロック状態になったと判断し、電動モータ47を停止させる。なお、回転ギア49は、惰性動作により、状態Iに示す位置まで回転する。この状態では、第1のマイクロスイッチ65Aはオフ状態、第2のマイクロスイッチ65Bはオン状態、第3のマイクロスイッチ65Cがオフ状態をそれぞれ維持する。
このように、本実施形態のロック装置では、回転ギア49のスイッチカム部57の中間位置に基板63を配設し、この基板63の表裏両面にマイクロスイッチ65A〜65Cを配設するため、限られた配設スペースであっても十分に3以上配設することができる。その結果、ロックボルト34の動作位置を検出可能な状況を増減でき、安全かつ正確な制御が可能になる。
また、スイッチカム部57を異なる第1カム部58と第2カム部59とで構成し、第1カム部58で第1のマイクロスイッチ65Aをオン、オフ操作するとともに、第2カム部59で異なる第2および第3のマイクロスイッチ65B,65Cをオン、オフ操作する。そのため、マイクロスイッチ65Aとマイクロスイッチ65B,65Cとは、全く無関係な独立した状況を検出することが可能になる。そのため、安全かつ正確な制御を行うための設計の自由度を広げることができる。
例えば、前記実施形態では、図7に示すように、マイクロスイッチ65A,65Bでロックボルト34のアンロック状態を検出し、マイクロスイッチ65Cでロックボルト34のロック状態を検出したが、図8に示すように、第1カム部58の設計を変更することにより、マイクロスイッチ65Aは、ロックボルト34の係合凸部35の先端が、ステアリングシャフトの係合凹部の開口端に丁度位置する状態を検出するように設定することができる。
このようにすれば、マイクロスイッチ65B,65Cのいずれかが故障した場合に、ロックボルト34がステアリングシャフトの係合凹部に少しでも係合している走行には危険な状態か、全く係合していない走行には比較的安全な状態であるかを判断することができる。
なお、本発明のステアリングロック装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、ロックボルト34がカム部材38に対して進退方向に対して横方向に若干向きを変えることが可能となるように、ロックボルト34の装着凸部36とカム部材38の貫通孔40との間に隙間S2を設けるとともに、ロックボルト34の係止孔37と連結ピン43との間に意図的に隙間S1を設けるようにしてもよい。これは、ロックボルト34がステアリングシャフトの係合凹部に係合しているロック状態において、ステアリングシャフトが無理に回転され、ロックボルト34に横方向の荷重が加わったときに、ロックボルト34とカム部材38との連結箇所に負荷が加わることを防止するためのものである。このように、ロックボルト34に横方向の荷重が加わったときに、連結ピン43よりも先にケース10の挿通孔18によってロックボルト34を保持するように構成すれば、ロックボルト34とカム部材38との連結箇所に負荷が加わることがなく、連結箇所が破損することを防止できる。このように構成しても、ロックボルト34はスプリング26によって直接進出方向に付勢されているため、ロックボルト34の進出量が不安定になることはない。
また、前記実施形態では、連結手段を係止孔37,42に連結ピン43を貫通させる構成としたが、従来と同様に互いに設けた係合溝を噛み合わせる構成を使用してもよく、希望に応じて変更が可能である。