[go: up one dir, main page]

JP4794085B2 - データ伝送装置及び無線通信システム - Google Patents

データ伝送装置及び無線通信システム Download PDF

Info

Publication number
JP4794085B2
JP4794085B2 JP2001258837A JP2001258837A JP4794085B2 JP 4794085 B2 JP4794085 B2 JP 4794085B2 JP 2001258837 A JP2001258837 A JP 2001258837A JP 2001258837 A JP2001258837 A JP 2001258837A JP 4794085 B2 JP4794085 B2 JP 4794085B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
transmission
station
signal
communication
reception
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001258837A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002152191A (ja
Inventor
雅之 折橋
豊 村上
克明 安倍
昭彦 松岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2001258837A priority Critical patent/JP4794085B2/ja
Publication of JP2002152191A publication Critical patent/JP2002152191A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4794085B2 publication Critical patent/JP4794085B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Synchronisation In Digital Transmission Systems (AREA)
  • Mobile Radio Communication Systems (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はデータ伝送装置及び無線通信システムに関し、特に無線回線を介して特定の無線局に秘匿情報を伝送する場合に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル無線通信は、伝送速度や伝送品質が飛躍的に向上したことにより、通信分野の重要な位置を占めるようになってきている。一方、無線通信では、公共財である電波空間を利用しているため、秘匿性の点から考えると、第3者による受信が可能であるといった根本的な欠点がある。すなわち、通信内容が第3者に傍受され、情報が漏洩するおそれが常にある。
【0003】
そこで従来の無線通信では、秘匿情報を暗号化することにより、伝送データが第3者に傍受されたとしても秘匿情報の内容が第3者に分からないようにするなどの工夫がなされている。暗号化は、様々な分野で研究され、また様々な分野で応用されている。これは、暗号化には、無線通信システムを変更しなくても一定セキュリティが確保できるといった長所があるからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、情報の暗号化では、暗号化するためのコードや暗号化の手順が分かれば、比較的容易に情報が解読されてしまう問題がある。特に高速のコンピュータが一般的に普及している現状では、かなり複雑な暗号化処理を行わないとセキュリティが確保できなくなる。
【0005】
特に算術的な暗号化では、暗号化された情報を復号するためには、暗号化と復号化の共通情報である暗号キーが必要となる。この暗号キーの授受が必要である場合、暗号キーが第3者に傍受されると、暗号キーと暗文とから容易に秘匿情報が解読されるおそれが常にあった。特に上述したように無線回線を介して暗号キーや暗号化情報を伝送する場合には、その危険性が一層大きくなる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、無線回線を介して特定の無線局に秘匿情報を伝送する場合に、高いセキュリティで秘匿情報を伝送し得るデータ伝送装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明のデータ伝送装置は、秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定する推定手段と、それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、前記秘匿情報を含む第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで各送信データを送信する第1及び第2の送信手段と、を具備し、前記第1及び第2の送信データは、互いに同一のフォーマットで形成されている構成を採る。
【0008】
また本発明のデータ伝送装置は、秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定する推定手段と、第1及び第2の送信データの単位通信フレームを並べたときに、前記秘匿情報を形成する秘匿シンボル同士が重ならないように、前記第1及び第2の各送信データ中に、秘匿シンボルに対して電力が非常に小さい擬似シンボルを付加する擬似シンボル付加手段と、それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、前記秘匿情報を含む前記第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで、各送信データを前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、
を具備する構成を採る。
【0009】
また本発明のデータ伝送装置は、秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定するとともに、前記第1の無線伝搬路における第1の信号電力減衰量及び前記第2の無線伝搬路における第2の信号電力減衰量を推定する推定手段と、それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで各送信データを前記無線局に送信すると共に、前記第1及び第2の信号電力減衰量に基づいて、前記無線局が前記第1及び第2の送信データを合成受信した際に復調し得る最低レベルに近い送信電力で前記第1及び第2の送信データを前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、を具備し、前記第1及び第2の送信データは、互いに同一のフォーマットで形成されている構成を採る。
【0010】
また本発明のデータ伝送装置は、秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定するとともに、前記第1の無線伝搬路における第1の信号電力減衰量及び前記第2の無線伝搬路における第2の信号電力減衰量を推定する推定手段と、所定の拡散符号を使って前記秘匿情報を拡散処理して第1の拡散信号を得る第1の拡散手段と、前記拡散符号とは異なる拡散符号を使ってかつ前記第1の拡散手段による拡散ゲインと同程度の拡散ゲインが得られるように擬似情報を拡散処理して第2の拡散信号を得る第2の拡散手段と、それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の拡散信号が予め前記無線局との間で設定された時刻に前記無線局に到達するように、前記第1及び第2の信号伝搬時間を考慮したタイミングで、前記第1及び第2の拡散信号を前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、を具備し、前記第1及び第2の送信手段は、前記第1及び第2の信号電力減衰量に基づき、前記第1及び第2の拡散信号が前記無線局に到達したときに、前記第1の拡散信号の受信電力値と前記第2の拡散信号の受信電力値に一定以上の差が生じるように送信電力を制御する構成を採る。
【0011】
また本発明のデータ伝送装置は、秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、前記無線局により発信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段により得られた受信信号に基づいて受信波の偏波面を検出することにより前記無線局との間の無線伝搬路環境を推定するとともに、前記受信信号の到来方向を推定する推定手段と、所定の拡散符号を使って前記秘匿情報を拡散処理することにより第1の拡散信号を形成する第1の拡散手段と、前記拡散符号とは異なる拡散符号を使ってかつ前記第1の拡散手段による拡散ゲインと同程度の拡散ゲインが得られるように擬似情報を拡散処理することにより第2の拡散信号を形成する第2の拡散手段と、前記推定手段によって検出された前記偏波面に対して、前記無線局の間で予め決められた量だけ前記偏波面を回転させた送信波により、前記第1及び第2の拡散信号を前記無線局に送信する送信手段と、を具備し、前記送信手段は、前記推定手段により推定された到来方向に基づいて、前記第1の拡散信号の受信電力値と前記第2の拡散信号の受信電力値に一定以上の差が生じる方向に、前記第1及び第2の拡散信号を送信すると共に、擬似データを前記無線局とは異なる方向に向けて送信する構成を採る。
【0012】
本発明の無線通信システムは、秘匿情報を含む送信データを第1の無線局から第2の無線局に無線により送信する無線通信システムであって、前記第1の無線局は、前記第2の無線局により発信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段により得られた受信信号に基づいて受信波の偏波面を検出する偏波面検出手段と、検出された偏波面に対して、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた量だけ前記偏波面を回転させた送信波により、前記秘匿情報を含む送信データを前記第2の無線局に送信する送信手段とを具備し、前記第2の無線局は、前記第1の無線局に前記偏波面検出用の信号を出力すると共に前記第1の無線局が送信した前記秘匿情報を含む送信データを受信するアンテナの偏波面特性を、前記偏波面検出用の信号を出力してから前記秘匿情報を含む送信データを受信する迄の間に、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた量だけ回転させる構成を採る。
【0079】
【発明の実施の形態】
本発明の骨子は、第1の無線局から第2の無線局に秘匿情報を含む送信データを無線伝送する場合、当該秘匿情報を伝送する前に、第1の無線局と第2の無線局の間で信号の送受信を行うことにより、第1の無線局と第2の無線局の間でのみ共有する無線伝搬路環境を推定し、推定した無線伝搬路環境を考慮して、第1の無線局から第2の無線局に秘匿情報を伝送するようにしたことである。この結果、無線伝搬路環境が異なる他の無線局では、上記秘匿情報を復元することができなくなる。
【0080】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0081】
(実施の形態1)
図1において、100は全体として本発明の実施の形態1に係る無線通信システムを示す。無線通信システム100は送信局101及び受信局102を有する。ここで送信局101及び受信局102とは、単に秘匿情報を送信する側を送信局101と呼び、その秘匿情報を受信する側を受信局102と呼んでいるだけであって、それぞれは互いに送受信部を有する。
【0082】
送信局101は送信部101a及び受信部101bに加えて、伝搬環境推定部101c及び伝搬環境適応部101dを有する。伝搬環境推定部101cは受信信号に基づいて伝送路103の伝搬環境を推定する。伝搬環境適応部101dは伝搬環境推定部101cにより得られた推定結果に応じて送信部101aの送信動作を制御する。
【0083】
受信局102は送信部102a及び受信部102bに加えて時間制御部102cを有する。時間制御部102cは受信部102bの受信時点を基準にして、送信に所定の遅延時間を与えると共に受信動作を時間的に制御する。
【0084】
ここで送信局101の具体的構成を図2に示すと共に、受信局102の具体的構成を図3に示す。送信局101は、図2に示すように、ユーザデータD1を暗号化部111に入力する。また暗号化部111には、暗号キー生成部112により生成された暗号キーが入力されると共に、基準クロック発生部113により発生された基準クロックがコントロールチャネル部114を介して入力される。暗号化部111は暗号キーを用いてユーザデータD1を暗号化することにより暗号化データを形成し、これをバースト信号形成部115に送出する。
【0085】
またバースト信号形成部115には、暗号キー及びコントロールチャネル信号が入力される。バースト信号形成部115により形成されたバースト信号は変調部116に入力される。変調部116は入力信号に対して例えばTDMA(Time Division Multiple Access)変調等の所定のディジタル変調処理を施し、処理後の信号をバッファ117に送出する。
【0086】
バッファ117は一旦格納した送信信号をタイミングコントロール部118から入力される出力制御信号のタイミングで続く無線送信部(送信RF)119に出力する。無線送信部119は送信信号に対してディジタルアナログ変換処理やアップコンバート等の無線送信処理を施し、処理後の信号をアンテナにAN11供給する。
【0087】
ここでタイミングコントロール部118は、図1の伝搬環境適応部101dに相当し、基準クロック発生部113からネットワーク基準時間を入力すると共に、遅延量推定部120から伝送遅延量を入力する。ここで遅延量推定部120は、図1の伝搬環境推定部101cに相当する。
【0088】
そしてタイミングコントロール部118は、ネットワーク基準時間と伝送遅延量を考慮して、受信局102が予め両局間で設定されるネットワーク基準時間に秘匿情報信号を受信できるようにバッファ117の出力タイミングを制御する。
【0089】
送信局101は、秘匿情報を送信する前にネットワーク基準時間を送信し、次に、暗号化されたユーザデータと暗号キーとでなる秘匿情報を、伝送路103での信号伝搬時間を考慮したタイミングで送信するようになっている。
【0090】
送信局101の受信部101bは、アンテナAN11により得られた受信信号を無線受信部(受信RF)121に入力する。無線受信部121は受信信号に対してダウンコンバートやアナログディジタル変換処理等の無線処理を施し、処理後の信号を復調部122に送出する。復調部122は入力信号に対して例えばTDMA復調等の所定のディジタル復調処理を施し、処理後の信号をストリーム形成部123及び遅延量推定部120に送出する。
【0091】
ストリーム形成部123は上述したバースト信号形成部115と逆の処理を行うことにより、バースト信号を元のデータストリームに変換する。復号部124はデータストリームを入力すると共に暗号キー生成部112から暗号キーを入力し、暗号キーを使って暗号化されたデータストリームを復号する。
【0092】
次に受信局102の具体的構成を、図3を用いて説明する。受信局102は上述したように、送信部102aと受信部102bと時間制御部102cとにより構成されている。送信部102aは、ユーザデータD2を暗号化部130に入力する。また暗号化部130には受信部102bの暗号キー抽出部131により抽出された暗号キーが入力される。これにより暗号化部130はユーザデータD2を送信局101と共通の暗号キーを用いて暗号化する。
【0093】
バースト信号形成部132には、暗号化されたユーザデータに加えて、同期コード生成部133により生成された同期コードが入力される。バースト信号形成部132は暗号化データ及び同期コードをバースト状の送信信号に変換して変調部134に送出する。変調部134は入力信号に対して例えばTDMA変調等の所定のディジタル変調を施し、変調後の信号をバッファ135に送出する。
【0094】
バッファ135は一旦格納した送信信号を時間制御部102cのタイミングコントロール部137から入力される出力制御信号のタイミングで続く無線送信部(送信RF)136に出力する。無線送信部136は送信信号に対してディジタルアナログ変換処理やアップコンバート等の無線送信処理を施し、処理後の信号をアンテナAN12に供給する。
【0095】
受信局102の受信部102bは、アンテナAN12により得られた受信信号を無線受信部(受信RF)140に入力する。無線受信部140は受信信号に対してダウンコンバートやアナログディジタル変換処理等の無線処理を施し、処理後の信号を復調部141に送出する。復調部141は入力信号に対して例えばTDMA復調等の所定のディジタル復調処理を施し、処理後の信号をストリーム形成部142に送出する。
【0096】
ストリーム形成部142は上述したバースト信号形成部132と逆の処理を行うことにより、バースト状の信号を元のデータストリームに変換する。復号部143はデータストリームを入力すると共に暗号キー抽出部131により抽出された暗号キーを入力し、暗号キーを使って暗号化されたデータストリームを復号する。
【0097】
ここで無線受信部140の出力は基準クロック抽出部144にも出力される。基準クロック抽出部144は受信信号からコントロールチャネル信号及びネットワーク基準時間を抽出し、これをタイミングコントロール部137及びタイマ145に送出する。タイミングコントロール部137は、先ずコントロールチャネル信号に動作タイミングを同期させる。次にタイミングコントロール部137は、ネットワーク基準時間を基準にして予め定められた時間Tdの後にバッファ135に対して出力制御信号を送出することにより、送信信号を発信させるようになされている。因みに時間Tdにより受信局102で発生する処理遅延分が調整される。
【0098】
これにより、送信局101では、ネットワーク基準時間と遅延時間Tdと同期コードの受信時刻とから伝送路における信号伝搬時間を算出することができるようになる。
【0099】
タイマ145は先ずコントロールチャネル信号に動作タイミングを同期させる。次にタイマ145はネットワーク時刻Tkに復調部141に復調動作を開始させるための制御信号を送出する。このように受信局102は、時間同期をせずに(或いは狭い範囲の同期範囲に限定するなどして)、ネットワーク時刻Tkに受信復調を行うようになっている。
【0100】
ここで同期は既に送信局101側で行われているので(すなわちネットワーク時刻Tkそのものが同期がとれた時刻となっている)、受信局はネットワーク時刻Tkで正常な復調処理を行うことができる。
【0101】
また暗号キー抽出部131は、ストリーム形成部142からデータストリームを入力すると共にタイマ145からネットワーク時刻情報を入力し、ネットワーク時刻Tkでデータストリームから暗号キーを抽出するようになっている。
【0102】
実際上、送信局101は、先ずコントロールチャネル部114により形成されたネットワーク基準時間を含んだ情報を送信する。場合によってはこの送信を複数回行う。この結果、受信局102はネットワーク基準時間に対して高精度に同期した受信動作を行うことができるようになる。
【0103】
送信局101は、受信局102から応答信号が到来すると、遅延量推定部120において、その受信時刻とネットワーク基準時間とから伝送路103における信号伝搬時間を推定する。送信局101では、推定精度を高めるため(例えば誤差が1シンボル時間以下)に、受信局102からの応答信号を複数回受信してもよい。
【0104】
また送信局101は、暗号キーを送信する際に、受信局が受信動作を開始するネットワーク時刻Tkと伝搬遅延とから、受信局102にネットワーク時刻Tk丁度に到達するようにタイミングコントロール部118によって送信タイミングを制御する。これにより、受信局102では、予め定められたネットワーク時刻Tkに暗号キーが到達するので、その時刻に同期させて信号を復調することで、暗号キーを入手することができるようになる。以降、送信局101は暗号キーを用いて、順次受信する暗号化データを復号すると共に、ユーザデータD2に暗号化を行いながらこれを送信する。
【0105】
次に、この実施の形態の無線通信システム100の動作について説明する。無線通信システム100の通信は、図4のような手順で行われる。
【0106】
先ず、送信局101が受信局102との同期をとるための信号(通信1)としてネットワーク基準時間を含む制御信号を発信(送信1B)する。受信局102は通信1を受信(受信1T)すると、その時刻と与えられたネットワーク基準時間とを基準にして、次の送信(送信2T)までの遅延時間(T1)と、一定時間(T2)後の次の通信3の受信端末基準時間(すなわち上述したネットワーク時刻Tk)とを設定する。受信局102は受信1Tから遅延時間(T1)だけ経過した後、送信局101に対して応答信号(通信2)を送信(送信2T)する。
【0107】
因みに、送信局101と受信局102は、上記遅延時間T1と一定時間T2の情報を、予め共有情報として互いに保持している。
【0108】
送信局101は通信2を受信(受信2B)すると同時に、送信1Bで出力した制御信号と受信2Bで受信した応答信号とから伝搬環境推定部101cが伝搬路103を推定する。具体的には、送信局101に設けられた遅延量推定部120が送信1Bと受信2Bの時間と、受信局での遅延時間(T1)と、各装置内で発生する処理遅延等とから伝搬路103における信号伝搬時間を算出する。
【0109】
ここで送信局101及び受信局102における装置内の処理遅延は、その装置の構成によってほぼ一定であり、システム運用時には既知情報として扱うことができる。送信局101の伝搬環境適応部101d(すなわちタイミングコントロール部118)は信号伝搬時間と処理遅延とから、受信局102の受信端末基準時間(すなわちネットワーク時刻Tk)に同期するようなタイミングで信号(通信3)を送信(送信3B)する。
【0110】
通信3には、受信局102以外には漏洩させたくない秘匿情報(この実施の形態の場合、暗号キー)が含まれている。通信3の情報は、送信局101の処理遅延に伝搬路103の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信3T)される。受信局102は受信1Tで設定した受信端末基準時間を基準にして受信3Tを開始し復調を行う。以後、送信局101と受信局102は、通信3で伝達した暗号キーを使って情報の暗号化及び復号を行いながら、通信4以降の通信を行う。
【0111】
ここで通信3について、図5を用いてさらに詳しく説明する。図5において、受信端末1は送信局101による秘匿情報の送信先の受信局102であり、受信端末2はその他の端末である。
【0112】
通信1から通信3までの時間が十分に短いとすると、受信局(受信端末1)102の移動速度に対して電波の伝送速度は非常に高速なので、送信局101と受信局102の位置関係に変化があっても、伝搬路103の環境、特に信号伝搬時間(伝搬路遅延1)には大きな変化がない。
【0113】
例えば通信1から通信3まで1秒かかるものとし、受信局102が毎時100[km]で移動していると仮定すると、伝搬路遅延1の変化は100[ns]程度である。このため、受信局(受信端末1)102が受信1Tで設定した受信端末基準時間1と、送信局101の伝搬環境適応部101dによって調整した送信3Bが、伝搬路103を経由して受信局102で受信される受信3Tの時刻はほぼ同期がとれており、時間調整を行う必要がない。
【0114】
これにより、受信端末1は受信端末基準時間1で受信及び復調を開始して、受信した受信端1通信信号を順次復調していくことで、通信情報を復元することができる。
【0115】
一方、この通信3を受信局(受信端末1)102以外の第3者(受信端末2)が傍受し、情報を復元しようとした場合を考える。受信端末2では、通信1から通信2間での情報を受け取ることはできるが、通信3の信号には受信及び復調開始時刻を示す基準時間情報(ネットワーク時刻Tk)がその中には含まれていないため、情報を復元できない。
【0116】
この基準時間情報は受信端末1が受信1Tを基準にして算出し、送信局101が通信1及び通信2によって伝搬路103の信号伝搬時間(伝搬路遅延1)を推定して当該基準時間に信号が到達するように送信制御するための目標時間である。この基準時間は伝搬路環境(すなわち伝搬路)によって異なる。この結果、正しい伝搬路遅延時間2を受信端末2が予め、或いは計測して知ることは不可能である。
【0117】
このように、受信端末2は通信3が送られてくる時間を知り得ない。従って受信端2通信信号に対して正しい受信端末基準時間2を設定できない。この結果、通信3の情報を正しく復元できない。これにより通信3は高いセキュリティを確保することが可能となる。
【0118】
以上の構成によれば、送信局101と受信局102間で同じ基準時間(ネットワーク基準時間)を共有すると共に送信局101と受信局102間での信号伝搬時間を推定し、送信局101がネットワーク時刻Tkに受信局102で信号が受信されるように信号伝搬時間を考慮したタイミングで送信信号を発信し、受信局102ではネットワーク時刻Tkで送られてきた信号を受信及び復調するようにしたことにより、セキュリティの高い無線通信システム100を実現できる。
【0119】
(実施の形態2)
この実施の形態の無線通信システムは、秘匿情報を予め定められたフォーマットに従って、情報の順序を並べ換える点を除いて、実施の形態1の無線通信システム100と同様の構成でなる。これによりこの実施の形態の無線通信システムは、一段とセキュリティが高い通信を行うことができる。
【0120】
実際上、この情報順序の並べ換えは、送信局101のバースト信号形成部115(図2)で行うようにすればよい。そして順序の並べ換えられた信号を元に戻す処理は、受信局102のストリーム形成部142(図3)で行うようにすればよい。ここで順序の並べ換え規則は予め送信局101と受信局102との間だけで決められたものとする。
【0121】
かくして、この実施の形態の無線通信システムにおいては、送信局101と受信局102で同じ基準時間を共有すると共に、伝送路103における信号伝搬時間を推定し、送信局101では信号伝搬時間を考慮したタイミングで送信信号を発信し、受信局102ではネットワーク時刻Tk丁度に受信した信号を復調するのに加えて、互いに通信を行っている局同士でのみ既知のフォーマットで送信データを並べ換えるようにしたことにより、実施の形態1の効果に加えて、一段とセキュリティの高い無線通信システムを実現できる。
【0122】
因みに、情報の順序を定めたフォーマットを1つに限定する必要はなく、複数種類のフォーマットを用意すれば、第3者に対するセキュリティを一段と向上させることもできる。
【0123】
(実施の形態3)
この実施の形態の無線通信システムは、上述した実施の形態1の構成に加えて、秘匿情報シンボルに疑似シンボルを混合させて送信する構成を有する。実際上、秘匿情報シンボルに疑似シンボルを混合する処理はバースト信号形成部115、132(図2、図3)で行う。また受信信号から疑似シンボルを除去する処理はストリーム形成部123、142(図2、図3)で行う。これにより、この実施の形態の無線通信システムは、実施の形態1の無線通信システム100よりも一段とセキュリティを向上させることができる。
【0124】
この実施の形態の無線通信システムの動作について、実施の形態1で用いた図4及び図5を再び用いて説明する。
【0125】
この実施の形態の無線通信システムでは、通信3(図4)には、秘匿情報と疑似情報とが予め定められたフォーマットに従い配置される。ここで予め定められたフォーマットが、図5中のシンボル0、2、5、9が疑似シンボル、その他が秘匿シンボルであるとする。このとき、送信局は秘匿シンボルに正規の情報を、疑似シンボルに疑似情報を設定して通信3を送信(送信3T)する。
【0126】
通信3の情報は、送信局101の処理遅延に伝搬路103の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信3T)される。受信局102は、受信1Tで設定した受信端末基準時間(ネットワーク時刻Tk)を基準にして受信3Tを開始する。
【0127】
受信端末1では、受信端1通信信号のシンボル0が、受信端末基準時間1と同時刻であるため、前記フォーマットに従い疑似シンボルを選択、除去することで秘匿シンボルのみを抽出し、復調及び復号することができる。以後、送信局101と受信局102は、通信3で伝達した情報を基に暗号化を行いながら、通信4以降の通信を行う。
【0128】
受信端末2では、受信端2通信信号のシンボル0と受信端末基準信号2とが同時刻でないため、復調に必要な同期をとることができない。この結果受信信号を復調できない。
【0129】
これに加えて、受信信号を復調及び復号し得たとしても、正規の秘匿データを得ることは不可能となる。例えばバースト通信を行っている場合、受信電力の波形から同期時刻を推定することは可能であるが、この実施の形態のように疑似シンボルを挿入することによって、第3者が同期を行うことは非常に困難となる。これにより通信3は一段と高いセキュリティを確保することが可能となる。
【0130】
かくして以上の構成によれば、実施の形態1の構成に加えて、秘匿情報に擬似情報を混入させて送信するようにしたことにより、一段とセキュリティの高い通信システムを実現できる。
【0131】
(実施の形態4)
この実施の形態では、秘匿情報に擬似情報を混入するのに加えて、さらに同期系列を混入させて送信する。これにより、秘匿情報の送信対象外の受信局では一段と秘匿情報の復元が困難になるのに対して、秘匿情報の送信対象である受信局では同期系列を利用して受信品質のよい秘匿情報を得ることができる。
【0132】
実際上、この実施の形態の無線通信システムは、図2のバースト信号形成部115を図6に示すように構成すると共に、図3に示す復調部141及びストリーム形成部142を図7に示すように構成することで、疑似信号の混合及び疑似信号の除去を実現している。またこの実施の形態では、説明を簡単化するために、暗号化データを秘匿情報として伝送する場合についてのみ説明する。
【0133】
図6に示すように、この実施の形態のバースト信号形成部300は暗号化されたユーザデータD3をバースト信号生成回路301に入力する。またバースト信号生成回路301にはユニークワード生成回路302により生成されたユニークワード系列が入力されると共に疑似信号生成回路303により生成された疑似信号系列が入力される。バースト信号生成回路301はユーザデータ系列、ユニークワード系列及び疑似信号系列をバースト状の信号に変換し、変換後の信号をスクランブル回路304に送出する。
【0134】
スクランブル回路304は、バースト信号をスクランブルパターン生成回路306により生成されたスクランブルパターンでスクランブルし、スクランブル処理後の信号をパンクチュア回路305に送出する。パンクチュア回路305は、スクランブル信号をパンクチュアパターン生成回路307により生成されたパンクチュアパターンでパンクチュア処理する。これによりパンクチュア処理後の信号D4は、図6に示すように、ユーザデータに疑似信号及びユニークワードがランダムに混入され、かつ歯抜けの状態とされる。そしてこのパンクチュア処理後の信号D4は変調回路116(図2)に送出される。なおパンクチュア処理としては、歯抜けの状態とするのではなく、特定のシンボルを挿入してもよい。
【0135】
次に図7を用いて、スクランブル及びパンクチュア処理された信号D4からユーザデータD3のみを抽出する受信局の構成について説明する。復調回路310は無線受信部(受信RF)140(図3)から出力されたスクランブル処理及びパンクチュア処理が施された受信信号D4を、位相及び利得調整回路(位相/利得調整)311に入力すると共に、時間同期及びユニークワード抽出回路(時間同期/ユニークワード抽出)312に入力する。
【0136】
時間同期/ユニークワード抽出回路312は、タイマ145から上述の実施の形態1で説明したネットワーク時刻Tkを入力し、このネットワーク時刻Tkのタイミングに基づき、受信信号D4からユニークワード系列を抽出する。そして抽出したユニークワード系列を周波数同期回路313に送出すると共に、位相及び利得検出回路(位相/利得検出)314に送出する。
【0137】
周波数同期回路313は抽出したユニークワード系列から周波数誤差を検出し、周波数情報を位相及び利得調整回路(位相/利得調整)311に送出する。位相/利得検出回路314は、ユニークワード系列から位相回転量及び利得を検出し、当該検出結果を位相/利得調整回路311に送出する。因みに、周波数同期回路313で検出された周波数情報は他の回路の同期信号としても使われる。
【0138】
これにより位相/利得調整回路311では、ユニークワード系列に基づいて正確に検出した位相回転量及び利得を使って位相調整及び利得調整ができるので、伝送時の位相変動及び利得変動を含んだスクランブルパンクチュアデータD4を的確に補正できるようになる。
【0139】
位相及び利得調整がなされたスクランブルパンクチュアデータは、ストリーム形成部320のデータセレクタ321に送出される。データセレクタ321は、タイマ145からネットワーク時刻Tkを入力すると共に、位相/利得検出回路314から位相情報及び信号振幅情報を入力する。そしてこれらの情報に基づいてバースト状の信号を元のデータストリームに戻すと共に、パンクチュア処理により形成された信号間の隙間を埋める。このデータストリームはデスクランブル回路322に送出される。
【0140】
デスクランブル回路322はタイマ145からネットワーク時刻Tkを入力すると共に、スクランブルパターン生成回路323からスクランブルパターンを入力する。スクランブルパターン生成回路323は、送信局のスクランブルパターン生成回路306(図6)と同じスクランブルパターンを生成する。これによりデスクランブル回路322は、データストリームから疑似信号系列及びユニークワード系列を除去して、ユーザデータD3のみを出力することができる。
【0141】
ここで図8に、時間同期/ユニークワード抽出回路312の詳細構成を示す。時間同期/ユニークワード抽出回路312はスクランブルパンクチュアデータD4をコンボルバ回路330に入力する。またタイマ145(図7)からのネットワーク時刻Tkがコントローラ331に入力される。コンボルバ回路330はコントローラ331により時間制御される。そしてネットワーク時刻Tkを基準とした一定時間の間、スクランブルパンクチュアデータからフォーマットに従って抽出したユニークワード系列とユニークワード生成回路332により生成されたユニークワード系列との間の相関値をとる。因みに、ユニークワード生成回路332は送信局側と同一のユニークワード系列を生成する。コンボルバ回路330はこれにより得た相関値をピーク探索回路333に送出する。
【0142】
ピーク探索回路333は、探索範囲設定回路334により設定された探索範囲内で相関値のピークを探索する。探索範囲設定回路334は、コントローラ331から出力されたネットワーク時刻Tkから所定時間分だけ後の時点を中心として所定の時間幅をもった探索範囲を設定する。ここで受信局は、ユニークワード系列と擬似信号系列の配置を予め知っているので、ネットワーク時刻Tkからどの程度遅れた時点でユニークワード系列のデータが復調されるかも大体知ることができる。従って、探索範囲設定回路334では、このおおよその時点を中心とした探索範囲が設定される。
【0143】
ピーク探索回路333は、上記探索範囲内での相関値のピークを探索する。ピーク探索結果はユニークワード選択回路335に送られる。ユニークワード選択回路335は相関値のピークに対応する信号系列をユニークワードとして選択する。
【0144】
図9に、コンボルバ回路330により得られる相関値とユニークワード(同期ワード)との関係を示す。図9(a)はユニークワードが1つのときであり(図中Aがユニークワードである)、例えばネットワーク基準時間を伝送する場合などの例である。このような場合には、大きなピークは1つしか現れず、例えば時間幅T10のように広い範囲に亘って時間同期のための探索を行うことができる。すなわち、第3者が通信傍受の目的で同期信号を得ようとした場合、比較的容易に同期信号を検出されるおそれがある。
【0145】
これに対して、この実施の形態のように、ユニークワード系列と疑似信号系列が混合された信号を受信した場合の、コンボルバ回路330により得られる相関積分値とユニークワードとの関係を、図9(b)に示す。ここで擬似信号系列はユニークワード系列に対して一定時間ずらして配置され、さらに擬似信号系列はユニークワード系列と相関が高い信号系列であるとする。図6について上述したように、ユニークワード系列と疑似信号系列とは高い相関があるため、コンボルバ回路330が出力する相関値はユニークワード系列と擬似信号系列とで高い値を示す。例えば1つのユニークワード系列と4つの擬似信号系列がスクランブリングパンクチュアデータに存在すると、相関値には複数のピーク(図ではA〜Eの5つ)がほぼ等レベルで出現する。ユニークワードのピークがCである場合(A、B、D、Eは疑似信号によるもの)、図中の狭い時間幅T11のみでピーク探索を行うことにより、時間同期のためのユニークワードを検出することができる。
【0146】
すなわちこの実施の形態の受信局では、探索範囲設定部334においてこの受信局しか知り得ないネットワーク時刻Tkを中心とした狭い時間幅の探索範囲T11を設定することにより、時間同期、位相変動の検出及び利得変動の検出の基になるユニークワードを的確に抽出することができる。因みに、他の受信局では、ユニークワードと相関の高い擬似信号が存在しているために、ユニークワードと疑似信号との区別が付かないので、時間同期、位相変動の補正及び利得の補正が正しく行えず、一段と通信を傍受することが困難となる。なおこの実施の形態では、複数シンボルで構成されるユニークワード系列を例に挙げたが、1シンボル単位で構成されるパイロット信号に置き換えるようにしてもよい。
【0147】
次に、この実施の形態の無線通信システムの動作について、受信局102側での同期動作に焦点を絞って、図10を用いて説明する。つまり、通信1及び通信2は上述した実施の形態1と同様の動作を行うので、ここではその説明を省略する。
【0148】
送信局101の伝搬環境適応部101dは、伝搬環境推定部101cで推定した信号伝搬時間と、処理遅延とに基づいて受信局102の受信端末基準時間(ネットワーク時刻Tk)に同期するタイミングで信号(通信3)を送信(送信3B)する。通信3では、予め設定されたフォーマットに基づき同期系列、疑似同期系列(上述した擬似信号系列であるが、この実施の形態では秘匿情報に対する擬似信号というよりも同期系列に対する擬似信号として機能するので、以下このように呼ぶ)、秘匿情報が配列されて送信される。
【0149】
通信3の情報は、送信局101の処理遅延時間に信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信端末基準時間に受信局102で受信(受信3T)される。受信局102は、受信1Tで設定した受信端末基準時間を基準に受信3Tを開始し、この受信信号から前記フォーマットに基づき同期系列(ユニークワード系列)を抽出する。そしてこれを用いて時間、周波数、位相などの同期を行う。この後、受信3Tで受信した受信信号から秘匿情報を分離し、当該情報の復調及び復号を行う。以後、送信局101と受信局102は、通信3で伝達した情報(例えば暗号キー)を基に暗号化を行いながら通信4以降の通信を行う。
【0150】
ここで通信3を、図10を用いてさらに詳しく説明する。図10において、シンボル4、8、Fを同期系列、シンボル3、7、Eを疑似同期系列とする。また送信局101は受信端末1を送信先の受信局102としており、受信端末2はその他の端末としている。
【0151】
図10のように配置されたフレームが伝送された場合、受信端末1では同期系列がほぼ受信端末基準時間1に同期して受信されるため、予め設定されたフォーマットに従うことで同期系列(シンボル4、8、F)と疑似同期系列(シンボル3、7、E)を容易に選別、選択することができる。
【0152】
受信局102では、この同期系列を用いて、時間、周波数、位相の同期を行う。受信端末1が受信した信号(受信端1通信信号)が受信端末基準時間1に対して誤差が生じていても、疑似同期系列を誤選択しない程度の誤差であれば、この同期系列によって補正することができる。これにより受信品質を向上させることができる。
【0153】
また同期系列によって位相情報が変調されているような場合、位相同期をも行うことができることにより、同時に伝達された通信3の情報に対して同期検波やそれに準ずる検波が行えるため、例えば実施の形態1で説明した通信方法よりも高い品質の通信を行うことができる。
【0154】
一方、受信端末2は通信3が送られてくる時間を知ることができず、受信端2通信信号に対して正しい同期系列を検出できない。例えば疑似同期系列に同期系列と類似した、或いは同一の系列を用いると、受信端末2は、受信端末基準時間2に近い疑似同期系列(シンボル3、7、E)を用いて同期をとることになる。この結果、通信3で伝送された情報を正しく復調及び復号できない。これにより、通信3は高いセキュリティを確保することができる。
【0155】
かくして以上の構成によれば、実施の形態1の構成に加えて、送信側で秘匿情報に同期系列及び擬似同期系列を混入するようにしたことにより、一段とセキュリティの高くかつ受信品質を向上し得る無線通信システムを実現できる。
【0156】
因みに、この実施の形態では、受信局102は受信端末基準時間1を基準にして、受信信号の復調及び復号を開始するため、送信局101はフレームフォーマットなどを予め設定されていなくても、シンボル0以前や、シンボル9以降に任意に疑似シンボルを追加することもできる。このようにすることで、バーストの長さが可変となるため、信号振幅の形状から同期系列の位置を推定することが困難となり、第3者からの秘匿性をさらに高めることができる。さらにパンクチュア回路305にて挿入するシンボルの振幅を変更すれば、信号振幅の形状からの推定を一層困難にすることもできる。
【0157】
(実施の形態5)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図11において、500は全体として、本発明の実施の形態5に係る無線通信システムを示す。無線通信システム500は送信局501に2つの送信部502、503を有することを除いて、上述した実施の形態1の無線通信システム100とほぼ同様の構成でなる。
【0158】
すなわち無線通信システム500の送信局501は伝搬環境推定部101c、伝搬環境適応部101d、第1送信部502、第2送信部503、受信部101bで構成されている。実際上、第1送信部502、第2送信部503は、図2に示すような送信部101aをそれぞれ有するのではなく、異なる位置にアンテナが2つ配置され、信号処理は送信部101aと同様の構成でなる1つの処理部で行うようになっている。受信局102は送信部102a、受信部102b、時間制御部102cで構成されている。通信は第1伝送路504及び第2伝送路505を経由して、図12に示す通信手順で行われる。
【0159】
先ず送信局501が第1送信部502から、第1伝搬路504を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む制御信号(通信10)を発信(送信10B)する。受信局102は通信10を受信(受信10T)すると、その時間を基準にして、次の送信(送信20T)までの遅延時間(T10)と、一定時間(T20)後の次の通信30の受信端末基準時間10とを設定する。受信局102は受信10Tから遅延時間(T10)だけ経過した後、送信局501に対して応答信号(通信20)を送信(送信20T)する。
【0160】
因みに、送信局501と受信局102は、上記遅延時間T10と一定時間T20の情報及び後述する遅延時間T11と一定時間T21の情報を予め共有情報として互いに保持している。
【0161】
送信局501は通信20を受信(受信20B)すると同時に、送信10Bで送信した制御信号と受信20Bで受信した応答信号とから伝搬環境推定部101cが第1伝搬路504の状態を推定する。具体的には、送信局501に設けられた遅延量推定部が送信10Bと受信20Bの時間と、受信局102での遅延時間(T10)と、各装置内で発生する処理遅延等とから伝搬路504における信号伝搬時間を算出する。因みに、ここまでの処理は、実施の形態1で上述した処理と同じである。
【0162】
同様に、送信局501は第2送信部503から、第2伝搬路505を経由するように出力を制御しながら、信号(通信11)を発信(送信11B)する。受信局102は通信11を受信(受信11T)すると、その時間を基準にして、次の送信(送信21T)までの遅延時間(T11)と、一定時間(T21)後の次の通信31の受信端末基準時間20とを設定する。受信局102は受信20Tから遅延時間(T11)だけ経過した後、送信局501に対して応答信号(通信21)を送信(送信21T)する。
【0163】
送信局501は通信21を受信(受信21B)すると同時に、送信11Bで送信した信号(通信11)と受信21Bで受信した応答信号(通信21)とから伝搬環境推定部101cが第2伝搬路505の状態を推定する。具体的には、送信局501に設けられた遅延量推定部が送信11Bと受信21Bの時間と、受信局102での遅延時間(T11)と、各装置内で発生する処理遅延等とから伝搬路505における信号伝搬時間を算出する。
【0164】
送信局501の伝搬環境適応部101dは第1伝搬路504の信号伝搬時間と処理遅延とから、受信局102の受信端末基準時間10に同期するように信号(通信30)を第1送信部502から第1伝搬路504を経由するように出力を制御しながら送信(送信30B)する。
【0165】
同様にして、送信局501の伝搬環境適応部101dは第2伝搬路505の信号伝搬時間と処理遅延とから、受信局102の受信端末基準時間20に同期するように信号(通信31)を第2送信部503から第2伝搬路505を経由するように出力を制御しながら送信(送信31B)する。
【0166】
ここで通信30、通信31には、例えば暗号キー等のような秘匿情報が含まれている。通信30の情報は、送信局501の処理遅延に第1伝搬路504での信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信30T)される。同様に通信31の情報も処理遅延に第2伝搬路505での信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信31T)される。
【0167】
受信局102は、受信10T及び受信11Tで設定した各々の受信端末基準時間10、受信端末基準時間20を基準にして受信30T、受信31Tを開始し、受信データを復調及び復号する。以後、送信局501と受信局102は、通信30及び通信31で伝送した情報(暗号キー)を基に暗号化及び復号を行いながら、通信4以降の通信を行う。
【0168】
通信30、通信31について、図13を用いてさらに詳しく説明する。図13では、送信局501は受信端末1を送信先の受信局102としており、受信端末2をその他の端末としている。
【0169】
通信10、通信11から通信30、通信31までの時間が十分に短いとすると、受信局(受信端末1)102の移動速度に対して電波の伝搬速度は非常に高速なので、送信局501と受信局102の位置関係に変化があっても、伝搬路の環境、特に第1伝搬路504及び第2伝搬路505の遅延(伝搬路遅延10、伝搬路遅延20)に大きな変化はない。
【0170】
このため、受信局(受信端末1)102が受信10T、受信11Tでそれぞれ設定した受信端末基準時間10、受信端末基準時間20と、送信局501の伝搬環境適応部101dによって調整された送信30B、送信31Bが各伝搬路504、505を経由して受信局201で受信される受信端末基準時間10、20とはほぼ同期がとれており、時間調整を行う必要がない。
【0171】
このため、受信端末1は、通信30については受信端末基準時間10を基準にして、通信31については受信端末基準時間20を基準にして、受信した受信端1通信信号を順次復調していくことで、秘匿情報を復元できる。
【0172】
一方、この通信30、通信31を送信先でない第3者(受信端末2)が傍受して情報を復元しようとした場合を考える。受信端末2は通信10、通信11、通信20、通信21の情報を受信することはできるが、通信30、通信31の信号には通信開始を示す受信端末基準時間10、20がその中には含まれていないため、秘匿情報を復元できない。
【0173】
この基準時間情報は、受信端末1が受信10T、11Tを基準にして算出し、送信局501が通信10、11、20、21によって第1及び第2の伝搬路504、505信号伝搬時間(伝搬路遅延10、20)を推定して当該基準時間に信号が到達するように送信制御するための目標時間である。この基準時間は伝搬路環境(すなわち伝搬路)によって異なる。この結果、正しい伝搬路遅延時間10、20を受信端末2が予め、或いは計測して知ることはできない。
【0174】
従って、受信端末1が受信する受信端1通信信号は、通信30、通信31ともに受信端末1で設定された予定時刻に到達するので、受信端末1は受信端1通信信号を復元できる。これに対して、第1伝搬路504、第2伝搬路505とは共に異なる伝搬路を介して送信局501からの信号を受信する受信端末2では、受信端2通信信号を同期受信できない。
【0175】
その上、正しい伝搬路遅延時間11、伝搬路遅延時間21を受信端末2が予め、或いは計測して知ることはできない。これにより、受信端末2は通信30、通信31の到達時間を知り得ない。この結果、受信端2通信信号に対して正しい受信端末基準時間11、受信端末基準時間21を設定できず、通信30、通信31を正しく受信することはほぼ不可能である。
【0176】
特に秘匿情報を送信部502、送信部503に分散させて送信すれば、セキュリティの点で顕著な効果を得ることができる。
【0177】
かくして以上の構成によれば、実施の形態1の構成に加えて、送信側に複数の送信部502、503を複数設けることにより複数の伝搬路504、505を形成し、それぞれの伝搬路504、505を介して秘匿情報が受信局201の決められた時間(受信端末基準時間10、20)に到達するようにしたことにより、一段とセキュリティの高い無線通信システム500を実現できる。
【0178】
(実施の形態6)
この実施の形態では、実施の形態1で提案した互いに通信を行っている局同士でのみで知り得るタイミングで送信データの送受信を行う構成と、実施の形態2で提案した互いに通信を行っている局同士でのみ既知のフォーマットで送信データを並べ換える構成と、実施の形態3で提案した通信情報に疑似シンボルを混入する構成と、実施の形態5で提案した複数の伝搬路を経由して通信を行う構成とを組み合わせた無線通信システムを提案する。かかる構成に加えて、この実施の形態の無線通信システムでは、実施の形態5とは異なり、2つの伝搬路を経由した信号を同時刻に受信して合成するようになされている。
以下、この実施の形態の通信方法について、図12及び図14を用いて説明する。
【0179】
ここで図12の通信10から通信21までの概要は、実施の形態5で説明した内容と同じである。すなわち通信10から通信21までの通信により、送信局501と受信局102は、第1及び第2伝搬路504、505での信号伝搬時間を推定すると共に、両局間の動作を同期させるためのネットワーク基準時間及び受信端末基準時間を設定する。
【0180】
すなわち、先ず送信局501が第1送信部502から、第1伝搬路504を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む制御信号(通信10)を発信(送信10B)する。受信局102は通信10を受信(受信10T)すると、その時間を基準にして、次の送信(送信20T)までの遅延時間(T10)と、一定時間(T20)後の次の通信30の受信端末基準時間10とを設定する。受信局102は受信10Tから遅延時間(T10)だけ経過した後、送信局501に対して応答信号(通信20)を送信(送信20T)する。
【0181】
送信局501は通信20を受信(受信20B)すると同時に、送信10Bで送信した制御信号と受信20Bで受信した応答信号とから伝搬環境推定部101cが第1伝搬路504の状態を推定する。具体的には、送信局501に設けられた遅延量推定部が送信10Bと受信20Bの時間と、受信局102での遅延時間(T10)と、各装置内で発生する処理遅延等とから伝搬路504における信号伝搬時間を算出する。
【0182】
同様に、送信局501は第2送信部503から、第2伝搬路505を経由するように出力を制御しながら、信号(通信11)を発信(送信11B)する。受信局102は通信11を受信(受信11T)すると、その時間を基準にして、次の送信(送信21T)までの遅延時間(T11)と、一定時間(T21)後の次の通信31の受信端末基準時間20とを設定する。
【0183】
この実施の形態の場合、上述した実施の形態5と異なり、この受信端末基準時間20を受信端末基準時間10と同一時刻に設定する。
【0184】
受信局102は受信20Tから遅延時間(T11)だけ経過した後、送信局501に対して応答信号(通信21)を送信(送信21T)する。
【0185】
送信局501は通信21を受信(受信21B)すると同時に、送信11Bで送信した制御信号(通信11)と受信21Bで受信した応答信号(通信21)とから伝搬環境推定部101cが第2伝搬路505の状態を推定する。具体的には、送信局501に設けられた遅延量推定部が送信11Bと受信21Bの時間と、受信局102での遅延時間(T11)と、各装置内で発生する処理遅延等とから伝搬路505における信号伝搬時間を算出する。
【0186】
送信局501の伝搬環境適応部101dは第1伝搬路504の信号伝搬時間と処理遅延とから、受信局102の受信端末基準時間10に同期するように信号(通信30)を第1送信部502から第1伝搬路504を経由するように出力を制御しながら送信(送信30B)する。
【0187】
同様にして、送信局501の伝搬環境適応部101dは第2伝搬路505の信号伝搬時間と処理遅延とから、受信局102の受信端末基準時間20に同期するように信号(通信31)を第2送信部503から第2伝搬路505を経由するように出力を制御しながら送信(送信31B)する。
【0188】
ここで通信30、通信31には、例えば暗号キー等のような秘匿情報が含まれている。通信30の情報は、送信局501の処理遅延に第1伝搬路504での信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信30T)される。同様に通信31の情報も処理遅延に第2伝搬路505での信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信局102で受信(受信31T)される。
【0189】
受信局102は、受信端末基準時間10、20を基準にして受信30T、31Tを開始する。このとき、通信30、通信31の受信端末基準時間10、20は同時刻に設定されているため、送信局501からの送信データは同一時刻に受信局102により受信される。
【0190】
この結果、受信局102では通信30及び通信31は互いに干渉を起こし、それらの合成結果が受信局102で受信される。ここで、通信30、通信31の通信情報は、予め設定されたフォーマットに従い情報シンボル(秘匿情報)と疑似シンボルが混合されて構成されている。
【0191】
まず、説明を簡単にするために疑似シンボルが全て電力0のシンボルであると仮定する。受信局102の受信端末基準時間10を基準として、通信30の全シンボルのうち、通信31の疑似シンボルが重なる時刻のシンボルだけが通信31の干渉を受けない。逆に通信31の全シンボルのうち、通信30の疑似シンボルが重なる時刻のシンボルだけが通信30の干渉を受けない。
【0192】
従って、予め両者の情報シンボルが互いに干渉しないようなフォーマットを設定しておけば、通信30及び通信31の両者から干渉による劣化の無い信号を受信できる。受信局102は、このように合成された受信信号を復調及び復号する。
【0193】
この実施の形態の通信30、通信31について、図14を用いてさらに詳しく説明する。図14では、シンボル0、3、6、7、9と、シンボルB、C、E、F、Iを疑似シンボルとする。また送信局501は受信端末1を送信先の受信局102としており、受信端末2はその他の端末としている。
【0194】
ここで受信局(受信端末1)102が受信10T、受信11Tで設定した受信端末基準時間10と、送信局501の伝搬環境適応部101dによってタイミング調整された送信30B、送信31Bが各伝搬路504、505を経由して受信局102で受信される時刻とはほぼ同期がとれており、かつ通信30、通信31は同時刻に受信されるため、受信端1通信信号はそれぞれが干渉する。
【0195】
図14では、シンボル1、2、4、5、8とそれぞれシンボルB、C、E、F、Iが合成され、シンボルA、D、G、H、Jとシンボル0、3、6、7、9が合成される。しかし、シンボル0、3、6、7、9とシンボルB、C、E、F、Iは疑似シンボルであり、その電力は0であるため、合成された受信端1通信信号は、A、1、2、D、4、5、G、H、8、Jとなる。
【0196】
これら全ての情報シンボルは互いに通信によっては干渉されないため、受信した受信端1通信信号を順次復調していくことで、通信情報(秘匿情報)を獲得できる。
【0197】
一方、この通信30、通信31を送信先でない第3者(受信端末2)が傍受して情報を復元しようとした場合を考える。受信端末2は、通信10、通信11、通信20、通信21を受信することはできるが、通信30、通信31は受信端末1に対して同時刻に受信されるように制御されており、受信端末2ではそれぞれ異なったタイミングで受信される。従って受信端末2は通信開始を示す受信端末基準時間10が分からない上に、情報シンボル同士が干渉し合うことにより、秘匿情報を復元できない。
【0198】
この基準時間情報は、受信端末1が受信10T、11Tを基準にして算出し、送信局501が通信10、11、20、21によって第1及び第2の伝搬路504、505信号伝搬時間(伝搬路遅延10、20)を推定して当該基準時間に信号が到達するように送信制御するための目標時間である。この基準時間は伝搬路環境(すなわち伝搬路)によって異なる。この結果、正しい伝搬路遅延時間10を受信端末2が予め、或いは計測して知ることはできない。
【0199】
従って、受信端末1が受信する受信端1通信信号は、通信30、通信31ともに受信端末1で設定された予定時刻に到達するので、受信端末1は受信端1通信信号を復元できる。これに対して、第1伝搬路504、第2伝搬路505とは共に異なる伝搬路を介して送信局501からの信号を受信する受信端末2では、受信端2通信信号を同期受信できない。
【0200】
その上、正しい伝搬路遅延時間11、伝搬路遅延時間21を受信端末2が予め、或いは計測して知ることはできない。これにより、受信端末2は通信30、通信31の到達時間を知り得ない。この結果、受信端2通信信号に対して正しい受信端末基準時間11を設定できず、通信30、通信31を正しく受信することはほぼ不可能である。
【0201】
またこの実施の形態の通信方法においては万一、受信端末2(第3者)により正しい伝搬路遅延時間11を計測でき、通信30に対して正しい受信端末基準時間11を設定できたとしても、秘匿情報の復元はできない。何故なら、受信端末1と異なる場所に位置する受信端末2では、通信31は受信端末基準時間11とは異なる時刻に受信端末2に到達する。この結果、受信時に通信30の信号と通信31の信号が干渉を起こし、信号が劣化するからである。
【0202】
この実施の形態では、通信30と通信31が同時刻に受信局に到達することを前提として、通信30の信号の先頭と通信31の信号の先頭が一致したとき、情報シンボル同士が重ならないフォーマットで情報シンボルと擬似シンボルを配置している。この結果、通信30と通信31が同時刻に受信できない受信局では、シンボル間干渉が生じて信号が劣化する。
【0203】
具体的には、図14の受信端2通信信号では通信30と通信31の情報シンボル2とA、5とD、8とG等が互いに干渉を起こす。この結果、シンボルの相互干渉により信号が劣化し、情報シンボルを復元できなくなる。
【0204】
かくして以上の構成によれば、2つの信号が受信局102により同時刻に受信されるように送信局501の2つの送信部502、503の送信タイミングを制御すると共に、同時刻に受信されなかった2つの信号の情報シンボル(秘匿情報)については相互干渉により劣化するようなフォーマットで2つの送信信号を配列して送信したことにより、秘匿情報の送信対象である受信局102の場所以外の場所に位置する受信局では秘匿情報の復元が不可能となる。この結果、一段とセキュリティの向上した無線通信システムを実現できる。
【0205】
(実施の形態7)
この実施の形態では、実施の形態6の構成に加えて、秘匿情報に同期系列データを混入して送信する構成を有する。この同期系列データとしては、例えば実施の形態1で説明したユニークワードなどがある。これにより、この実施の形態では、実施の形態6の効果に加えて、秘匿情報の送信対象である受信局での受信品質を向上させることができる。
【0206】
この実施の形態を、図11、図12及び図14を用いて説明する。通信30、通信31で送信されるデータは秘匿情報の送信対象である受信局102以外の受信局には漏洩させたくない秘匿データであり、予め所定のフォーマットに従い、情報シンボル、疑似シンボル及び同期系列シンボルが配置されて構成されている。
【0207】
通信30の情報は、送信局501の処理遅延に第1伝搬路504の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信端末基準時間10に受信局102で受信(受信30T)される。同様に通信31の情報も、送信局501の処理遅延に第2伝搬路505の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信端末基準時間10に受信局102で受信される。受信局102は、受信端末基準時間10を基準にして受信30Tを開始する。
【0208】
このとき、通信30、通信31の受信端末基準時間10は同時刻に設定されているため、受信局102では通信30及び通信31は同時の受信となる。従って、両者は空間上で合成されて受信局102で受信される。
【0209】
一方、通信30、通信31のデータは、情報シンボルと疑似シンボルと同期系列とが予め設定されたフォーマットに従って配置された構成となっている。ここで説明を簡単にするために疑似シンボルが全て電力0のシンボルであると仮定する。受信局102の受信端末基準時間10を基準として、通信30の全シンボルのうち、通信31の疑似シンボルが重なる時刻のシンボルだけが通信31の干渉を受けない。逆に通信31の全シンボルのうち、通信30の疑似シンボルが重なる時刻のシンボルだけが通信30の干渉を受けない。
【0210】
このように、予め送信局501により通信30、通信31による2つの信号が同時刻に受信されることを想定して、両者が互いに干渉しないようなフォーマットを設定したことにより、通信30及び通信31を同時刻に受信する受信局102では両信号の干渉による劣化の無い信号を受信できるようになる。
【0211】
これらの信号を受信すると,受信局102は、先ず、通信30の同期系列を用いて通信30のシンボルに対して時間、周波数、位相などを同期させ、通信30の情報シンボルを復調する。同様に受信局102は、通信31の同期系列を用いて通信31のシンボルに対して時間、周波数、位相などを同期させ、通信31の情報シンボルを復調する。
【0212】
次に、それぞれ復調された2つの情報シンボルを合成し、復号する。以後、送信局501と受信局102は、通信30及び通信31で伝達した情報(例えば暗号キー)を基に暗号化及び暗号復号化を行いながら、通信4以降の通信を行う。
【0213】
この実施の形態の通信30、通信31について、図14を用いてさらに詳しく説明する。図14では、シンボル0、3、6、7、9と、シンボルB、C、E、F、Iを疑似シンボルとし、シンボル1、8と、シンボルA、Gを同期系列とし、シンボル2、4、5、D、H、Jを情報シンボルとする。
【0214】
ここで受信局(受信端末1)102が受信10T、受信11Tで設定した受信端末基準時間10と、送信局501の伝搬環境適応部101dによって調整された送信30B、送信31Bが各伝搬路504、505を経由して受信局102で受信される受信30T、受信31Tの時刻とはほぼ同期がとれている。この結果、通信30、通信31は同時刻に受信されるので、受信端1通信信号ではそれぞれが干渉する。
【0215】
図14では、前記フォーマットによってシンボル1、2、4、5、8とそれぞれシンボルB、C、E、F、Iが合成され、シンボルA、D、G、H、Jとシンボル0、3、6、7、9が合成されるが、シンボル0、3、6、7、9とシンボルB、C、E、F、Iは疑似シンボルであり、その電力は0であるため、合成された受信端1通信信号は、A、1、2、D、4、5、G、H、8、Jとなる。
【0216】
このように全ての情報シンボルと同期系列は互いの通信により干渉されないため、受信した受信端1通信信号を順次復調していくことで、秘匿情報を含む通信情報を復元することができる。
【0217】
かくして以上の構成によれば、実施の形態6の構成に加えて、秘匿情報を含む送信データの中に同期系列データを混入させるようにしたことにより、実施の形態6の効果に加えて、受信局102では受信品質を一段と向上し得る無線通信システムを実現できる。
【0218】
(実施の形態8)
図15において、800は全体として、本発明の実施の形態8に係る無線通信システムを示す。無線通信システム800は第1及び第2の送信局801、802を有し、各送信局801、802が網接続部803、804を介してネットワーク805に接続されている。また第1送信局801は第1伝搬路806を介して受信局102と通信すると共に、第2送信局802は第2伝搬路807を介して受信局102と通信するようになっている。
【0219】
ここで第1及び第2送信局801、802のそれぞれの構成は、網接続部803、804を有することを除いて実施の形態1で説明した送信局101とほぼ同様の構成でなる。また受信局102は第1送信局801に加えて、第2送信局802と通信することを除いて実施の形態1で説明した受信局102とほぼ同様の構成でなる。
【0220】
さらに第1及び第2の送信局801、802は、秘匿情報を含む伝送データを受信局で設定された受信端末基準時間に到達するタイミングで送信すると共に、実施の形態6で述べたように互いの伝送データが同一の受信端末基準時間に到達するようにタイミングで送信するようになっている。
【0221】
つまり、この実施の形態の無線通信システム800を、実施の形態6で述べた無線通信システムと比較すると、実施の形態6の無線通信システムは同一の送信局から異なる伝搬路を介して受信局102に情報を送信するのに対して、無線通信システム800は異なる送信局801、802から異なる伝搬路806、807を介して受信局102に情報を送信する点で異なる。
【0222】
ここで無線通信システムの通信800は、第1伝搬路806及び第2伝搬路807を経由して、図16に示すような通信手順で行われる。
【0223】
第1送信局801は送信部101aから、第1伝搬路806を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む制御信号(通信10)を発信(送信10B)する。受信局102は通信10を受信(受信10T)すると、時間制御部102cで制御された所定の遅延時間(T10)を設定する。受信局102は受信10Tから遅延時間(T10)だけ経過した後、第1送信局801に対して応答信号(通信20)を送信(送信20T)する。
【0224】
因みに、送信局801と受信局102は、予め共有情報として互いに上記遅延時間T10を保持している。
【0225】
第1送信局801は通信20を受信(受信20B)すると同時に、送信10Bで送信した制御信号(通信10)と受信20Bで受信した応答信号とから伝搬環境推定部101cが第1伝搬路806の状態を推定する。具体的には、送信局801に設けられた伝搬環境推定部101cが送信10Bと受信20Bの時間と、受信局102での遅延時間(T10)と、各装置内で発生する処理遅延等とから第1伝搬路806における信号伝搬時間を算出する。
【0226】
同様に、第2送信局802は送信部101aから、第2伝搬路807を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む制御信号(通信11)を発信(送信11B)する。受信局102は通信11を受信(受信11T)すると、時間制御部102cで制御された所定の遅延時間(T11)を設定する。受信局102は受信11Tから遅延時間(T11)だけ経過した後、第2送信局802に対して応答信号(通信21)を送信(送信21T)する。
【0227】
因みに、送信局802と受信局102は、予め共有情報として互いに上記遅延時間T11を保持している。
【0228】
第2送信局802は通信21を受信(受信21B)すると同時に、送信11Bで送信した制御信号(通信11)と受信21Bで受信した応答信号とから伝搬環境推定部101cが第2伝搬路807の状態を推定する。具体的には、送信局802に設けられた伝搬環境推定部101cが送信11Bと受信21Bの時間と、受信局102での遅延時間(T11)と、各装置内で発生する処理遅延等とから第2伝搬路807における信号伝搬時間を算出する。
【0229】
以上のように、第1送信局801と受信局102間の信号伝搬時間、第2送信局802と受信局102間の信号伝搬時間の推定が終わると、次に受信局102は時間制御部102cを用いて一定の時間(T20)後に受信端末基準信号10を設定すると共に、第1送信局801及び第2送信局802に対して、基準時刻通知信号(通信30)を送信(送信30T)する。
【0230】
第1送信局801は受信局102に送信する秘匿情報を、ネットワーク805から網接続部803を介して取得する。同様に、第2送信局802は受信局102に送信する秘匿情報を、ネットワーク805から網接続部804を介して取得する。
【0231】
第1送信局801は通信30を受信(受信30B)すると、第1送信局801の伝搬環境適応部101dが第1伝搬路806の信号伝搬時間と、処理遅延と受信30Bの時刻とから、受信局102の受信端末基準時間10に到達するように通信40の送信タイミングを制御する。そして第1送信局801は信号(通信40)を送信部101aから第1伝搬路806を経由するように送信(送信40B)する。
【0232】
同様に、第2送信局802は通信30を受信(受信31B)すると、第2送信局802の伝搬環境適応部101dが第2伝搬路807の信号伝搬時間と、処理遅延と受信31Bの時刻とから、受信局102の受信端末基準時間10に到達するように通信40の送信タイミングを制御する。そして第2送信局802は信号(通信41)を送信部101aから第2伝搬路807を経由するように送信(送信41B)する。
【0233】
通信40の情報は、第1送信局801の処理遅延に第1伝搬路806の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信端末基準時間10に受信局102で受信(受信40T)される。同様に通信41の情報も、第2送信局802の処理遅延に第2伝搬路807の信号伝搬時間を加えた時間だけ遅延して、受信端末基準時間10に受信局102で受信される。受信局102は、受信端末基準時間10を基準にして受信40Tを開始する。
【0234】
このとき、通信40、通信41の受信端末基準時間10は同時刻に設定されているため、受信局102では通信40及び通信41は同時に受信される。すなわち、両者は合成された結果として受信局102で受信される。
【0235】
ここで通信40及び通信41で送信されるデータは、実施の形態7の送信データと同様に、同一時刻に受信されたときに、情報シンボル、疑似シンボル及び同期系列シンボルが、情報シンボル同士で干渉し合わないように配列されている。これにより、実施の形態7と同様に、通信40、通信41の内容は受信局102のみで復調及び復号できるようになる。因みに、通信40の前半部を擬似シンボルとし、同様に通信41の後半部を擬似シンボルに設定すれば(あるいは、通信40、通信41の到達時刻に一定間隔で設ける)、受信局102は第1及び第2の受信局801、802からの情報を連続して受け取ることができるようになる。
【0236】
かくして以上の構成によれば、秘匿情報を複数の情報ブロックに分割し、分割した秘匿情報を専用回線などのセキュリティの高い通信回線を用いて複数の送信局に分配し、分配された秘匿情報を受信局に送信するようにしたことにより、一段と高いセキュリティをもって秘匿情報を送信し得る無線通信システム800を実現できる。
【0237】
(実施の形態9)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図17において、900は全体として本発明の実施の形態9に係る無線通信システムを示す。無線通信システム900は、それぞれ、図1で上述した送信部101a及び受信部101bからなる第1及び第2送受信部902、903を有する。そして第1送受信部902は第1伝搬路906を経由して受信局102と通信すると共に、第2送受信部903は第2伝搬路907を経由して受信局102と通信する。
【0238】
ここで送信局901と受信局102との通信動作は、後述するように、送信局901が第1及び第2伝搬路906、907を経由して受信する受信電力を推定すると共に、推定した電力に応じて送信電力を制御して受信局102に対して信号を発信する点を除いて、図11を用いて説明した実施の形態5の無線通信システム500と同様である。
【0239】
ここで図18に、この実施の形態による送信局901の詳細構成を示す。図18では、図2と対応する部分に同一符号を付してある。この実施の形態の場合、伝搬環境推定部904は遅延量推定部904a及び電力測定部904bにより構成されている。また伝搬環境適応部905はタイミングコントロール部905a及び電力制御部905bにより構成されている。
【0240】
そして第1送受信部902の復調部122により抽出された例えばユニークワード等の既知信号が遅延量推定部904aに入力されると共に、第2送受信部903の復調部(図示せず)により抽出されたユニークワード等の既知信号が遅延量推定部904aに入力される。遅延量推定部904aは、実施の形態1でも述べたように、ネットワーク時刻と既知信号とから信号伝搬時間を推定する。この実施の形態の場合には、第1及び第2の伝搬路906、907それぞれの信号伝搬時間を推定する。
【0241】
そしてタイミングコントロール部905aが遅延量推定部904aにより得られた第1伝搬路906の信号伝搬時間を考慮して、第1送受信部902からの信号が第1伝搬路906を経由して予め決められたネットワーク時刻に受信局102に到達するようにバッファ117の出力タイミングを調整する。
【0242】
同様にタイミングコントロール部905aは遅延量推定部904aにより得られた第2伝搬路907の信号伝搬時間を考慮して、第2送受信部903からの信号が第2伝搬路907を経由して予め決められたネットワーク時刻に受信局102に到達するようにバッファ(図示せず)の出力タイミングを調整する。
【0243】
伝搬環境推定部904の電力測定部904bは、第1送受信部902の無線受信部(受信RF)121の出力を入力し、第1送受信部902で受信した受信信号の電力を測定する。同様に電力測定部904bは、第2送受信部903の無線受信部(図示せず)の出力を入力し、第2送受信部903で受信した受信信号の電力を測定する。
【0244】
伝搬環境適応部905の電力制御部905bは、予め設定された電力値と電力測定部904bで得られた受信電力測定結果とを比較し、当該比較結果に基づいて、第1及び第2送受信局902、903の送信電力を制御する。具体的には、第1又は第2送受信部902、903で受信した受信電力が所定値より小さい場合には、各送信部101aの無線送信部(送信RF)119を制御することにより送信電力が大きくなるように制御する。これとは逆に、第1又は第2送受信部902、903で受信した受信電力が所定値より大きい場合には、各送信部101aの無線送信部(送信RF)119を制御することにより、送信電力が小さくなるように制御する。
【0245】
これにより無線通信システム900においては、秘匿情報の送信対象である受信局102のみが送信局901の第1送受信部902及び第2送受信部903から受信レベルの最適な受信信号を受信できるようになる。
【0246】
この結果、受信局102では、受信レベルが伝搬路906、906に適応して最適で、かつ受信動作に同期した同一時刻に到達する2つの信号の合成結果を得ることができる。これにより受信局102では、秘匿情報を確実に復調することができる。
【0247】
これに対して、第3者は、受信局102と異なる場所で送信局901からの情報を受信するので、その信号を復調するのに適切な受信レベル及び適切な受信タイミングを得ることが困難になるので、受信信号の復調も困難となる。
【0248】
次に、図14及び図16を再び用いて、無線通信システム900の動作について説明する。
【0249】
先ず送信局901が第1送信部902から、第1伝搬路906を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む信号(通信10)を発信(送信10B)する。受信局102は通信10を受信(受信10T)すると、時間制御部102cで制御された所定の遅延時間(T10)を設定する。受信局102は受信10Tから遅延時間(T10)だけ経過した後、送信局901に対して応答信号(通信20)を予め定められた電力で送信(送信20T)する。因みに、送信局901と受信局102は、予め共有情報として互いに上記遅延時間T10を保持している。
【0250】
送信局901は通信20を受信(受信20B)すると同時に、送信10Bで送信した伝搬路推定用信号(通信10)と受信20Bで受信した応答信号(通信20)とから伝搬環境推定部904が第1伝搬路906の状態を推定する。具体的には、第1伝搬路906での信号伝搬時間と電力減衰量を推定する。伝搬路906での電力減衰量の推定は、受信20Bの電力を測定し、その値と予め定められた応答信号(通信20)の出力電力との差に基づいて行う。
【0251】
同様に送信局901は第2送信部903から、第2伝搬路907を経由するように出力を制御しながら、ネットワーク基準時間を含む信号(通信11)を発信(送信11B)する。受信局102は通信11を受信(受信11T)すると、時間制御部102cで制御された所定の遅延時間(T11)を設定する。受信局102は受信11Tから遅延時間(T11)だけ経過した後、送信局901に対して応答信号(通信21)を予め定められた電力で送信(送信21T)する。因みに、送信局901と受信局102は、予め共有情報として互いに上記遅延時間T11を保持している。
【0252】
送信局901は通信21を受信(受信21B)すると同時に、送信11Bで送信した伝搬路推定用信号(通信11)と受信21Bで受信した応答信号(通信21)とから伝搬環境推定部904が第2伝搬路907の状態を推定する。具体的には、第2伝搬路907での信号伝搬時間と電力減衰量を推定する。伝搬路907での電力減衰量の推定は、受信21Bの電力を測定し、その値と予め定められた応答信号(通信21)の出力電力との差に基づいて行う。
【0253】
このように送信局901は、通信30、通信31に基づいて、第1及び第2伝搬路906、907における信号伝搬時間及び信号電力減衰量を推定する。
【0254】
受信局102は時間制御部102cを用いて一定の時間(T20)後に受信端末基準信号10を設定すると共に、送信局901に対して基準時刻通知信号(通信30)を送信(送信30T)する。
【0255】
次に、送信局901は第1送受信部902から秘匿情報を含む信号を通信40で送信(送信40B)すると共に、第2送受信部903から秘匿情報を含む信号を通信41で送信(送信41B)する。このとき送信局901は、受信局102で設定された受信端末基準時間10に2つの信号が同時に到達するように送信タイミングを制御すると共に、受信局102が最適な電力で2つの信号を受信できるように送信電力を制御する。
【0256】
受信局102は、受信端末基準時間10を基準にして受信40Tを開始する。このとき通信40、通信41の受信端末基準時間10は同時刻に設定されているため、受信局102では通信40及び通信41は同時に受信される。すなわち、両者は合成された結果として受信局102で受信される。
【0257】
この実施の形態の場合、通信40、通信41において同一の情報を送信するようになされている。これにより受信局102では、パスダイバーシティ効果を得ることができる。またこの実施の形態の場合、送信局901は通信40、通信41を非常に低い電力で送信するようになっている。これにより2つの信号の互いに同じシンボル同士を合成して受信できる受信局102では復調に十分な信号レベルを得ることができるのに対して、受信局102とは異なる場所に位置する他の受信局では、通信40、通信41からは復調に必要な信号レベルを得ることはできない。
【0258】
かくして以上の構成によれば、送信局901に複数の送受信部902、903を設けることにより送信局901と受信局102との間に複数の伝搬路906、907を形成し、各伝搬路906、907で通信を行った場合の電力減衰量を推定し、受信局102が複数の伝搬路906、907を介して到達する各受信信号を合成して受信したときに復調し得る最低レベルの送信電力で上記複数の送受信部902、903から秘匿情報を送信したことにより、受信局102以外の場所に位置する他の受信局では当該秘匿情報を復調することが困難になる。この結果、一段とセキュリティの高い通信を行うことができる無線通信システム900を実現し得る。
【0259】
(実施の形態10)
図19において、1000は全体として本発明の実施の形態10に係る無線通信システムを示す。無線通信システム1000の送信局1001は、偏波面の直交した2つの直線偏波のアンテナAN20、AN21からなるアンテナ部1003を有する。また受信局1002のアンテナ部1004は1つの直線偏波のアンテナAN30を有する。
【0260】
これにより、無線通信システム1000においては、受信局1002のアンテナAN30の偏波面を、送信局1001と受信局1002のみが共有する伝搬路環境として、この伝搬路環境を考慮して送信局1001から受信局1002に秘匿情報を伝送するようになされている。
【0261】
すなわち、先ず、受信局1002から送られてくる伝送波に基づいて、送信局1001の伝搬環境推定部1006が受信局1002のアンテナAN30の偏波面を推定する。次に伝搬環境推定部1006により求めた推定結果に基づいて、送信局1001の放射特性制御部1008が受信局1002でのみ受信できるような放射特性を形成するようにアンテナ部1003を制御するようになっている。
【0262】
また無線通信システム1000の送信局1001及び受信局1002には時間制御部1007、1010が設けられており、当該時間制御部1007、1010によって実施の形態1と同様に、送信局1001と受信局1002のみで共有できる伝搬路1011での信号伝搬時間を考慮した送信タイミングで、送信局1001から受信局1002に秘匿情報を送信する。これにより受信局1002のみが秘匿情報を受信して復元できるようになっている。
【0263】
従って、図19の時間制御部1007は、図1の伝搬環境推定部101c及び伝搬環境適応部101dに相当する。受信局1002は、図3と同様の構成なので、ここでは詳細な説明を省略する。簡単に説明すると、アンテナAN30はアンテナAN12に相当し、送受信部1009は送信部102a及び受信部102bに相当し、時間制御部1010は時間制御部102cに相当する。
【0264】
送信局1001の具体的構成を図20に示す。図2との対応部分に同一符号を付して示す図20において、送信局1001は、大きく分けて、送信部1012、受信部1013、伝搬環境推定部1006及び時間制御部1007により構成されている。ここで図19の送受信部1005は、送信部1012及び受信部1013に相当する。
【0265】
送信局1001は、受信局1002からの電波を、互いの偏波面が直交するように設けられた2つの直線偏波アンテナAN20、AN21で受信する。そしてそれぞれのアンテナ出力を無線受信部(受信RF)121に入力する。無線受信部121はそれぞれのアンテナ出力に対してダウンコンバートやアナログディジタル変換処理等の無線処理を施し、処理後の信号を復調部122及び伝搬環境推定部1006に送出する。
【0266】
伝搬環境推定部1006は無線通信処理された2つのアンテナ出力に基づいて、受信局1002のアンテナの偏波面を推定し、推定結果を放射特性制御部1008に送出する。放射特性制御部1008は推定結果に基づいて、受信局1002での受信電力が最大になるように無線送信部(送信RF)119を制御する。
【0267】
伝搬環境推定部1006は、図21に示すように構成されている。また放射特性制御部1008は、図22に示すように構成されている。
【0268】
伝搬環境推定部1006は電界強度検出部1020及び位相差検出部1021を有する。電界強度検出部1020は2つのアンテナ出力に基づいて、それぞれのアンテナ出力の電界強度を検出する。また位相差検出部1021は2つのアンテナ出力に基づいて、それぞれのアンテナ出力の位相差を求める。偏波推定部1022は2つのアンテナ出力の電界強度と位相差から受信信号の偏波状態を推定する。
【0269】
一般に偏波面の直交する2つのアンテナ(V、H)を用いると、図23で示すように、電磁波の偏波(図中のp)は、アンテナの放射特性で与えられる偏波面(図中のV、H)上に投影した電界強度(図中のEv、Eh)と両受信信号の位相差で求めることができる。例えば偏波pを楕円偏波として、その長軸とアンテナ(V、H)からなる角度や扁平率は電界強度(Ev、Eh)及び位相差φを用いて求めることができる。また角度については、Ev、Ehから近似することもできる。
【0270】
この実施の形態の伝搬環境推定部1006では、このことを利用して、偏波pの長軸とアンテナとからなる角度や、扁平率などの情報からなる偏波状態を推定するようになっている。
【0271】
放射特性制御部1008は、図22に示すように、送信信号及び偏波推定部1022により得られた推定値信号を、電界強度制御部1030及び位相制御部1031にそれぞれ入力する。合成部1032は電界強度と位相とから直交するアンテナAN20、AN21に対応する信号ベクトル(Vベクトル、Hベクトル)を生成する。そしてV方向ベクトルの振幅、位相に応じた送信信号を無線送信部119を介してV方向アンテナAN21に出力すると共に、H方向ベクトルの振幅、位相に応じた送信信号を無線送信部119を介してH方向アンテナAN20に出力する。
【0272】
これにより、伝搬環境推定部1020が推定した偏波状態に基づいて、受信局1002のアンテナ部1004での受信電力が最大になるように、すわち偏波pの長軸とアンテナの放射特性で与えられる偏波面の軸とが一致するように、送信信号の偏波面を制御し得るようになっている。
【0273】
次に、図24を参照して、無線通信システム1000の動作について説明する。なおここでは送信局1001と受信局1002間での送受信タイミングは実施の形態1と同様なので、電波の偏波面を調整する点のみに着目して説明する。
【0274】
先ず、受信局1002が偏波推定用信号(通信1)を発信(送信1T)する。ここで受信局1002のアンテナ部1004は放射特性として直線偏波の特性を有するアンテナAN30で構成されているため、当該アンテナAN30が送信する電磁波はある特定の偏波面を有している。
【0275】
この送信信号は、伝搬路1011上における反射や回折などにより、偏波面が回転し、遅延が加わった状態で送信局1001のアンテナ部1003で受信される。送信局1001のアンテナ部1003には、放射特性が直線偏波のアンテナAN20、AN21が、偏波面が互いに直交するように配置されているので、受信信号の偏波面に依らず安定した受信を行うことができる。
【0276】
送信局1001はアンテナ部1003により通信1を受信(受信1B)すると、伝搬環境推定部1006aが2つのアンテナAN20、AN21で受信した各受信信号を演算処理することで受信信号の偏波状態を推定する。
【0277】
次に放射特性制御部1008は伝搬環境推定部1006が推定した偏波状態に基づいて、受信局1002のアンテナ部1004での受信電力が最大になるように、すなわち偏波pの長軸とアンテナAN30の放射特性で与えられる偏波面の軸とが一致するように、送信信号の偏波面を制御して通信2を送信(送信2B)する。この偏波面の制御は、受信時の推定方法とは逆の演算を行うことで実現できる。
【0278】
このようにして偏波面を制御して送信信号を出力すると、受信局1002のアンテナ部1004では送信局1001からの通信2の信号を最適な偏波面で受信できる。受信局1002はアンテナ部1004で通信2を受信(受信2T)する。因みに、送信局1001は通信2により秘匿情報を含む伝送データを受信局1002に送信する。無線通信システム100は以後、同様にして送信局1001と受信局1002間で通信3以降の通信を行う。
【0279】
ここで送信局1001と受信局1002が見通しの良い環境で通信を行う場合、偏波面は安定的に保たれているため、この実施の形態による通信は安定して行うことができる。一方、両者の通信路間に障害物があり、直接波のみで通信が行えないような環境では、周囲の状況により影響を受け偏波面は乱れる。しかし、伝搬路環境(この実施の形態では偏波面にあたる)を推定した時刻と、その伝搬路環境を用いて通信を実際に行う時刻との間隔が十分に短ければ、伝搬路環境は準静的であると見なすことができるので問題はない。
【0280】
例えば、送信局1001と受信局1002の双方が固定されており、両者の通信路上に人のように移動速度が低速の障害物が存在する場合がこれに相当する。また例えば送信局1001が道路上に配置され、受信局1002が自動車に搭載された場合のように、送信局1001と受信局1002の通信路間に障害物がなくても、状況の変化により偏波面が乱れるため、これに相当する。
【0281】
これらの場合、送信局1001、受信局1002の一方、或いは両方が移動していても、伝搬路環境を推定した時刻と、その伝搬路環境を用いて通信を実際に行う時刻との間隔が十分に短いと考えることができるので、伝搬路環境は準静的であると見なすことができる。
【0282】
これに対して、通信1及び通信2を正当な通信相手でない第3者が傍受し、情報を引き出そうとした場合を考える。この場合、不当な受信端末が通信2の情報を受け取るためには、偏波面を適当に合わせる必要がある。
【0283】
送信局1001と受信局1002は、偏波面の軸合わせを通信1によって行っているが、通信1は受信局1002からの出力信号であるため、不当な受信端末が送信局1001からの偏波面を推定することはできない。つまり受信局1002のアンテナ端における通信2の偏波状態を事前に知ることはできないため、これを傍受することは不可能となる。
【0284】
この結果、不当な受信局が譬え通信1を傍受することができたとしても、通信2は通信1における偏波面に適応して制御されて送られるため、不当な受信局は送信局1001から出力される電磁波の偏波面を事前に知ることはできない。
【0285】
図25を用いて詳しく説明する。図25の通信1、通信2は図24中のそれと同一である。また図25において、受信局1040は、秘匿情報の送信対象ではない不当な受信局を示す。
【0286】
ここで送信局1001及び受信局1002は通信1及び通信2を伝搬路1011を介して行う。不当な受信局1040がこれらの通信1及び通信2を受信する場合を考える。送信局1001と受信局1002間では通信1及び通信2は共に伝搬路1011を介して行われる。これに対して、受信局1040では、通信1は伝搬路1041を介して受信し、通信2は伝搬路1042を介して受信することになる。
【0287】
このように、受信局1040が受信局1002の出力する通信1を受信する際の伝搬路1041と、受信局1040が送信局1001の出力する通信2を受信する際の伝搬路1042は、伝搬路1011と異なる。この結果、受信局1040は、通信1を傍受することにより、受信局1002との間で形成される伝搬路1041を推定できたとしても、この伝搬路1041は送信局1001との間で形成される伝搬路1042とは異なるため、通信2を正しく受信することはできない。そのため、不当な受信局1040が通信1や通信2のうちのいずれかの情報、または両方の情報を安定して入手することは不可能である。
【0288】
一般に電磁波を用いた無線通信システムにおいては、送信側と受信側との間でアンテナなどの偏波特性を合わせる必要があり、これを正しく行わないと通信品質などの特性劣化を招く。例えば、アンテナの放射特性のうち偏波特性が水平方向に対して一様であれば、送信局、受信局ともにアンテナの放射特性の偏波面を接地面に対して垂直になるように偏波面の調整を行えばよい。偏波面を地表面に対して垂直とした垂直偏波の場合などは、水平方向に対して放射特性を一様に設計することが容易である。
【0289】
一方、アンテナの放射特性が水平方向に対して一様でない場合、送信局、受信局の間で偏波面の調整を行うことが必要となる。これを図26、図27を用いて具体的に説明する。電磁波が地表面方向と平行な方向に伝搬するような無線通信システムでは、図26(a)に示すように、送信装置や受信装置のアンテナANを接地面に対して垂直に配置することにより、アンテナANの放射特性を垂直偏波に設定できる。ここでは接地面がほぼ水平に保たれることを想定しており、また水平方向に対しての放射特性が一様であること想定している。
【0290】
次に図26(b)に示すように、アンテナANを水平方向に設置した場合の具体例を考える。図中のアンテナがダイポールアンテナであるとすると、水平方向に対して放射特性が一様ではなく、偏波面も装置本体1050との位置関係によって異なる。このような構成で、高さ方向へ電波を発信するようなシステムを例に考える。
【0291】
図27の1050を送信装置、1051、1052を受信装置であるとし、各装置1050、1051、1052のアンテナの放射特性はその偏波面が図中の矢印方向であると仮定する。ここで送信装置1050を送信局1001に、受信装置1052を受信局1002に置き換えて、送信装置1050が受信装置1052の偏波面を推定し、推定結果より送信装置1050の偏波面を制御した状態が、この実施の形態の無線通信システム1000に当てはまる。
【0292】
図27のように、送信装置1050の偏波面に対して、受信装置1052の接地面を水平に保って設置した場合でも、偏波面から見た自由度があるため、状況によって通信環境が大きく異なってくる。
【0293】
従って、送信装置1050、受信装置1052のように偏波面が同一軸上に揃っている場合、受信装置1052は感度よく受信できるが、受信装置1051のように偏波面が送信装置1050と直交して配置されている場合には、アンテナの放射特性により受信電力が十分でなくなるため、受信品質が悪くなる。
【0294】
ここでは送受信間の無線伝搬路において偏波面が回転しないことを仮定して説明したが、偏波面は反射などによりその軸が変化することが知られている。そのような場合でも各装置のアンテナ端における偏波面については同様のことが言える。このような状態においても、この実施の形態の構成によれば、送信装置1101が受信装置1102の偏波面と同じになるように送信波を制御するため、送信側と受信側の偏波面を調整することなく安定した通信を行うことができる。
【0295】
さらに送信装置1050と受信装置1052の通信を第3者が受信装置1051を用いて傍受しようとする場合について説明する。上述の通り、受信装置1051の偏波面を受信状況が良くなるように送信装置1050から送信される偏波面に合わせて設置する必要がある。しかし、送信波の偏波面は受信装置1052の偏波面に適応して制御されているので、受信装置1051から知ることはできない。
【0296】
また前述の通り、受信装置1052の設置方向により偏波面が異なるため、それを常時知ることは不可能である。また譬え受信装置1052の設置状況などから偏波面の状態を推測しても、送信装置1050と受信装置1052間の伝搬路と、送信装置1050と受信装置1051間の伝搬路は異なるため、この実際に正しい状態を知ることは不可能である。従って第3者が送信装置1050と受信装置1052の通信を傍受することは不可能である。
【0297】
さらに上述した通り、伝搬路上で反射や回折などの現象が起こると、電磁波の偏波面が変化するので、第3者が偏波面を推定することは困難である。反射や回折が多発する環境は屋内や室内、またパーティションのように障害物が多くあるオフィスのような場所が良く知られている。
【0298】
因みに、この実施の形態の場合、送信局1001が受信局1002のアンテナAN30に対して最適な偏波面を有する直線偏波の電磁波に秘匿情報を含む真の情報を重畳させて送信すると共に、それに直交する軸に平行な偏波面を有する直線偏波の電磁波に疑似情報を重畳させて送信することも考えられる。
【0299】
これにより無線通信システム1000においては、受信局1002ではアンテナAN30の特性により真の情報は正常に受信されるのに対して、疑似情報は受信されない。これにより複雑な構成を用いることなく、真の情報のみを選択的に受信できる。
【0300】
つまり受信局1002は、どの信号が秘匿情報で、どの信号が擬似情報かを予め知る必要はない。また送信局1001では、受信側でのデータの分離を考慮したデータ配列を行うことなく、自由に秘匿化を施すことができるようになる。さらに第3者は原理的に秘匿情報と疑似情報とを分離することができないので、高いセキュリティを確保できるようになる。
【0301】
無線通信システム1000は、通信3以降の通信を、上述した通信1、通信2と同様に偏波面を合わせながら行う。因みに、通信3以降で、全ての送信データに対して偏波面を合わせて伝送してもよいが、暗号キーのような特に重要な秘匿情報のみを偏波面を合わせて伝送した後は、通常の暗号化処理のみを施して伝送するようにしてもよい。
【0302】
かくして以上の構成によれば、実施の形態1の構成に加えて、受信局1002から送られてくる伝送波に基づいて送信局1001の伝搬環境推定部1006により受信局1002のアンテナAN30の偏波面を推定し、送信局1001が当該推定結果に基づいて受信局1002でのみ受信できるような放射特性を有する伝送波を形成し、当該伝送波に秘匿情報を重畳して受信局1002に伝送するようにしたことにより、実施の形態1の効果に加えて、一段とセキュリティの高い無線通信システム1000を実現できる。
【0303】
因みにこの実施の形態では垂直偏波、水平偏波を例に挙げたが、地表面に対して一定の角度傾いた偏波面を考えると第3者による秘匿情報の受信は一層困難になる。例えば直線偏波特性を持つダイポールアンテナを地表面に対してある角度をつけて設置する場合は、上述の通り水平方向に対してアンテナの放射特性が異なり、放射特性はアンテナの見かけの角度によって変化する。すなわち放射特性は、図27に示す送信装置1050と受信装置1052との相対的な位置関係により変化する。この結果、第3者から偏波面を推定することは一層に困難となる。
【0304】
また直交する偏波面特性を有するヘリカルアンテナなどのアンテナを用いて、直交偏波面への放射信号の振幅、位相を制御すれば、電気的に偏波面を制御することもできる。このような構成をとることで、視覚的に偏波面を推定することが困難となり、一段とセキュリティの高いシステムを実現できる。
【0305】
さらに以上の説明では、送信局1001が最初から受信局1002のアンテナAN30に対して最適な偏波面を有する直線偏波の電磁波を出力する場合について述べたが、電源投入時のように受信局1002のアンテナAN30の特性を推定するまでは、送信局1001から円偏波である電磁波を放射してもよい。このようにすれば、受信局1002はアンテナAN30の放射特性に関わらず、RACH(Random Access Channel)等の無線リンクを確立するための信号を安定して受信できるようになる。
【0306】
またこの実施の形態においては、時間的にシンボルが独立している変調方式を用いた場合、シンボル毎に上述した偏波面の制御による情報の秘匿化を実施するかしないかを設定することもできる。これによりシンボルの一部に対して秘匿化を施すことでより安定した通信を行うことができるようになる。
【0307】
(実施の形態11)
図19との対応部分に同一符号を付して示す図28において、1100は全体として、本発明の実施の形態11に係る無線通信システムを示す。無線通信システム1100は、受信局1101のアンテナ部1102が偏波面の直交した2つの直線偏波のアンテナAN60、AN61からなると共に、受信局1101にアンテナ部1102の放射特性を制御する放射特性制御部1104が設けられている点を除いて、図19の無線通信システムと同様の構成でなる。
【0308】
次に、図24を用いて、無線通信システム1100の動作について説明する。なおここでは送信局1001と受信局1101間での送受信タイミングは実施の形態1と同様なので、電波の偏波面を調整する点のみに着目して説明する。
【0309】
先ず、受信局1101が偏波推定用信号(通信1)を発信(送信1T)する。このとき放射特性制御部1104はアンテナ部1102から基準となる偏波面が出力されるように送受信部1103を介してアンテナ部1102の放射特性を制御する。この送信信号は伝搬路1011上における反射や回折などにより、偏波面が回転し、遅延が加わった状態で送信局1001のアンテナ部1003で受信される。
【0310】
送信局1001は伝搬環境推定部1006において通信1の受信(受信1B)信号から、受信局1101が基準とする偏波面を推定し、推定結果を保持する。次に放射特性制御部1008は伝搬環境推定部1006が推定した基準とする偏波面に対して予め設定してある角度だけ偏波面を回転させるよう制御し、通信2を送信(送信2B)する。
【0311】
受信局1101は放射特性制御部1104によりアンテナ部1102の放射特性を、基準とする偏波面から放射特性制御部1008が偏波面を回転させた上記角度だけ回転させるように制御して、通信2を受信(受信2T)する。
【0312】
すなわち、送信局1001の放射特性制御部1008と受信局1101の放射特性制御部1104には、予め互いの局のみで共有する偏波面の回転情報が記憶されている。従って、送信局1001からの通信2の偏波面と、受信局1101が制御した放射特性の偏波面は基準偏波面から同一角度だけ回転しているため、受信局1101は最適な放射特性で通信2を受信(受信2T)することができる。以後、同様にして送信局1001と受信局1101は通信を行う。
【0313】
かくして以上の構成によれば、実施の形態10の構成に加えて、受信局1101側でも放射特性を適応的に変化し得るように受信局1101を構成すると共に、送信局1001と受信局1101とで偏波面の回転情報を共有して互いの偏波面を合わせて通信を行うようにしたことにより、実施の形態10により得られる効果に加えて、一段とセキュリティの高い無線通信システム1100を実現できる。
【0314】
すなわち、譬え第3者が通信1での偏波面を知り得たとしても、通信2では偏波面が変更されるため、この変更された偏波面を知ることは困難となる。また通信毎に偏波面を回転させれば、よりセキュリティを向上させることもできる。
【0315】
さらに直交する2つの偏波面に各々独立した情報を付加し、通信1で与えられる偏波面を基準にして、各情報を分離することもできる。このようにすれば、伝送量を2倍にでき、かつ第3者からはそれらを推定できない極めて秘匿性の高い通信が実現可能となる。
【0316】
一般に、送信局1001は受信局1101に対して通信に使用可能な周波数や時刻を通知し、受信局1101はそれらのリソースを用いて通信を行う。また一般に、受信局1101はそれらのリソースを用いてキャリアの状態を監視してキャリアが空いている時刻に通信を開始する。これらの条件としては、周波数と時刻の2つが大きな要素であったが、この実施の形態では、これらに偏波を加えることで、通信自体の容量を最大2倍まで増加させることもできる。
【0317】
但しこの場合、周波数や時間は空間同一性を有しているが、偏波状況は伝搬路によって変化するため場所によってその環境が異なる。そのため偏波干渉状況は送信局1001と受信局1101では、その位置が異なることが問題となる。しかし、送信局1001と受信局1101との伝搬路1011における偏波状態がほぼ同一であるような環境、例えば送信局1001と受信局1101とが見通しできる環境やそれに近い環境におかれている場合には、上述したような偏波による多重化も可能となる。
【0318】
このように、送信局1001と受信局1101間での通信、送信局1001と他受信局間での通信の2つの通信が同時刻、同周波数で偏波多重しているような場合には、2つの通信を同期させて偏波面をある時間毎に切り換えるようにすれば、第3者からは2つの通信を分離することが困難となるため、セキュリティを高めることができる。
【0319】
一方、見通しができないような環境では、互いの通信の干渉を避けるために受信局1101により周囲の他受信局から発せられる通信状況を監視し、監視情報を送信局1001に通知し、互いに干渉しない条件が整ったときに送信を行えば、見通しができる条件の場合と同様の通信が可能となる。
【0320】
またマルチパス環境を考えた場合、各々のパスの偏波面の回転方向や角度が異なるため、各パスからの偏波面はそれぞれ異なる。この実施の形態においては、受信局1101では偏波面の状況に応じて選択的に特定のパスを受信することになる。これは結果として、送信局1001から受信局1101への伝搬路1011を制限することになるので、マルチパスによる影響を軽減する効果を得ることができる。
【0321】
(実施の形態12)
この実施の形態の無線通信システム1200は、図29に示すように、秘匿情報を送信する送信局1201が異なる位置に配置された2つの送受信部1203、1204を有する。また2つの送受信部1203、1204からそれぞれ異なる伝搬路1207、1208を介して受信局1202のみが秘匿情報を得ることができる最適な送信電力及び指向性送信を行う。
【0322】
送受信部1203、1204により受信された受信信号は伝搬環境推定部1205に送出される。伝搬環境推定部1205は2つの受信信号に基づいて2つの伝搬路1207、1208の環境を推定する。具体的には、各伝搬路1207、1208での信号伝搬時間と信号の到来方向を推定する。
【0323】
伝搬環境適応部1206は伝搬環境推定部1205の推定結果に基づいて、送受信部1203、1204が受信局1202に秘匿情報を送信する際の送信動作を制御する。具体的には、第1に、各送受信部1203、1208から発信された信号が予め設定された受信時刻に受信局1202に受信されるように各送受信部1203、1204の送信タイミングを制御する。また第2に、各送受信部1203、1204での送信時の指向性が受信局1202に向くように指向性送信を行う。
【0324】
図2との対応部分に同一符号を付して示す図30は、送信局1201の詳細構成を示す。図30からも分かるように、図29で示した2つの送受信部1203、1204は、単に、異なる位置にアレイアンテナAN70、AN71が2つ設けられているだけであり、信号処理部分は同一のものとなっている。そして図30の到来方向推定部1210及び遅延量推定部120が図29の伝搬環境推定部1205に相当すると共に、図30のビームフォーマ1222及びタイミングコントロール部118が図29の伝搬環境適応部1206に相当する。
【0325】
ここで送信局1201による秘匿情報の送信タイミングについては、上述の実施の形態で詳述したので、この実施の形態では、秘匿情報の指向性送信について重点的に説明する。
【0326】
到来方向推定部1210は、無線受信部(受信RF)121を介して2つのアレイアンテナ出力を入力すると、それらの受信信号の振幅と位相に基づいて受信局1202により発信された信号の到来方向を推定する。具体的には、2つのアレイアンテナAN70、AN71の受信信号にそれぞれ乗じる重み係数を順次変更し、重み付け加算値が最大となる重み係数を求めることで到来方向を推定する。そして到来方向推定部1210により推定された推定結果(すなわち各アレイアンテナAN70、AN71に対する重み係数)は送信部1220のビームフォーマ1222に送出される。
【0327】
ここで送信部1220のバースト信号形成部1221、ビームフォーマ1222及び変調部1223は、図31に示すように構成されている。因みに、この実施の形態の送信部1220は、送信データを符号拡散すると共に多重化するようになっている。
【0328】
バースト信号形成部1221は、データ分割回路1230に暗号キーや暗号化されたユーザデータを入力する。データ分割回路1230は入力したデータを複数のデータに分割(この実施の形態の場合には2つ)して続くコンボルバ回路1231a、1231bに送出する。実際上、データ分割回路1230は入力したデータを複数のデータD12a、D12bに分割して続くコンボルバ回路1231a、1231bに送出する。ここで送受信間では拡散符号は共有するが、分割されたデータD12a、D12bがそれぞれどの符号に対応するかを事前に共有する必要はない。但し、受信電力の大きい信号がデータD12a、他がデータD12bといったように定めておく。ここでは暗号キーや暗号化データ等の秘匿データがデータD12aであり、他の情報データがデータD12bである。
【0329】
コンボルバ回路1231a、1231bは、入力されたデータと符号生成回路1232により生成された符号とを使って畳み込み演算を行うことにより、入力データを符号拡散する。符号拡散された各データはビームフォーマ1222の利得制御(GC)回路1234b、1234cに入力される。また利得制御回路1234aには擬似信号生成回路1233により生成された擬似信号が入力される。
【0330】
利得制御回路1234a〜1234cは、到来方向推定部1210からの推定値に基づいて各入力データの利得を制御する。各利得制御回路1234a〜1234cの出力は、アンテナマトリクス回路1235a〜1235cに入力される。アンテナマトリクス回路1235a〜1235cには到来方向推定部1210からの推定値も入力される。
【0331】
各アンテナマトリクス回路1235a〜1235cは、対応する利得制御回路1234a〜1234cの出力に、到来方向推定部1210からの推定値(最適重み係数)と受信局1202における受信状態(受信電力や遅延分散など)とに基づくベクトル値を乗算する。具体的には、推定した伝搬路環境に基づき、受信局1202において受信電力を最大にしたり、最小にする信号電力制御を行う。
【0332】
ここで秘匿情報が入力されるアンテナマトリクス回路1235bでは、到来方向推定部1210で求められた推定値に基づき、データD12aが受信局1202において受信レベルが最大となるように設定される。同様にデータD12bが入力されるアンテナマトリクス回路1235cでは、推定値に基づき、データD12bが受信局1202においてその受信レベルが十分大きく、かつデータD12aより小さくなるように設定される。これにより分割された秘匿情報は、受信局1202において異なる受信レベルで受信される。
【0333】
これに対して、擬似情報が入力されるアンテナマトリクス回路1235aでは、到来方向推定部1210で求められた推定結果に基づいて、受信局1202においてヌル(波の干渉によって電力が0となる箇所)を形成するように制御する。これにより受信局1202では擬似信号は受信されず、受信局1202とは異なる位置の他の受信局では擬似信号が受信されるようになる。
【0334】
アンテナマトリクス回路1235a〜1235cによりベクトル化された各送信データは、変調部1223の合成/周波数変換回路1237でベクトル加算され、これにより得られた各エレメント値はローカル発振器1236により得られた周波数で周波数変換される。周波数変換されたエレメント信号はアレイアンテナAN70、AN71の対応するエレメントアンテナから出力される。
【0335】
上述したように送信局1201は、データD12をアンテナの放射特性のメインローブに割り当て、データD12bをサイドローブに割り当て、擬似情報をヌルに割り当てることにより、受信局1202での受信状態を制御する。これにより、秘匿情報の送信対象である受信局1202は分割された秘匿情報であるデータD12a、D12bを各々電力差をもった状態で良好に受信できるが、他の受信局では各データD12a、D12bの電力差が逆転したり、擬似情報が妨害するなどして秘匿情報の受信ができなくなる。
【0336】
図32に、受信局1202の受信部1240内の復調部1241とストリーム形成部1242の構成を示す。因みに、受信局1202の他の構成は、図3に示す受信局102の構成と同様である。復調部1241は受信RF部140(図3)の出力をコンボルバ回路1243に入力する。各コンボルバ回路1243には、送信局1201で用いられた拡散符号と同一の符号が符号生成回路1244から入力される。
【0337】
コンボルバ回路1243はタイマ145により指定されたタイミングで畳み込み演算する。これにより、各コンボルバ回路1243からは拡散符号に対応したデータD12a、D12bが各受信レベル情報と共に出力される。例えばあるコンボルバ回路1243からは秘匿情報が出力され、別のコンボルバ回路1243からは秘匿情報以外の有意情報が出力され、さらに別のコンボルバ回路1243からは擬似情報が出力される。これらの出力データと受信レベルを用いて、各データが選択/分離される。因みに、他の受信局では、拡散符号により畳み込み演算する最適なタイミングを知ることが困難な上、譬え知り得たとしても異なった受信レベルで受信されるため、これらの各データが選択/分離し得ない。
【0338】
コンボルバ回路1243から出力された各データは検波器1245を介してストリーム形成回路1242のデータ並べ換え/選択回路1247に送出されると共に、振幅検出回路1246に送出される。振幅検出回路1246は各データの振幅を検出する。ここで送信局1201は、受信局1202に対して、データ12aが最大レベルで、データD12bがそれより小さなレベルで、擬似情報が最小の受信レベルとなるように送信を制御しているので、振幅検出回路1246から各データに対応した受信レベルの情報が出力される。
【0339】
振幅検出回路1246により得られた検出結果は、データ並べ換え/選択回路1247に送出される。データ並べ換え/選択回路1247は、振幅検出回路1246により得られた検出結果に基づいて、振幅値の大小に応じて検波器1245から出力されたデータを並べ換える。そして振幅値の最大のデータをD12a、2番目のデータをD12bとしてデータ列を出力する。
【0340】
次に、この実施の形態の無線通信システム1200の動作を、図33を用いて説明する。
【0341】
まず、受信局1202は送信局1201に対して、予め定められた伝搬路推定用信号を通信1により出力(送信1T)する。送信局1201は、第1伝搬路1207を経由した信号を第1送受信部1203(図30のアレイアンテナAN70)で、第2伝搬路1208を経由した信号を第2送受信部1204(図30のアレイアンテナAN71)で受信する。
【0342】
このとき送信局1201は、既知信号としての伝搬路推定用信号を、第1送受信部1203と第2送受信部1204とで受信することにより、第1伝搬路1207と第2伝搬路1208の伝搬路環境を推定する。
【0343】
送信局1201は、受信局1202から出力された信号から推定した伝搬路環境を逆に利用して、第1送受信部1203と第2送受信部1204から出力する信号を制御する。具体的には、送信局1201の伝搬環境適応部1206が推定された伝搬路環境(受信波の到来方向)に応じて、受信局1202の受信端における秘匿情報の信号電力が高くなるように、第1送受信部1203及び第2送受信部1204を制御して信号(通信2)を出力(送信2B)する。その後、同様にして通信3以降を行う。
【0344】
通信2では、送信局1201から受信局1202に秘匿情報が送信される。通信2の情報は、送信局1201の第1送受信部1203から第1伝搬路1207を経由したものと、第2送受信部1204から第2伝搬路1208を経由したものとの合成結果として、受信局1202で受信(受信2T)される。上述した通り、通信2は受信局1202の受信端における信号電力が高くなるように制御されているため、受信局1202は安定して受信2Tを行うことができ、秘匿情報を復調できる。
【0345】
またこのようにして出力された信号(通信2)は、第1送受信部1203と第2送受信部1204の2カ所で出力されるため、空間合成された結果としての信号は受信する場所によって異なってくる。上記説明によると、受信局1202の受信端における受信電力が最大になるように送信制御したが、通信品質の高くなるように制御することが重要なので、遅延波などによって通信品質が低下するような場合には、受信電力を下げてマルチパス成分を低減することも有効である。
【0346】
一方、秘匿情報を含む通信2を送信先でない第3者が傍受し、情報を引き出そうとした場合、通信1により情報の傍受が行えたとしても、通信2では受信局1202の受信端で最適な受信信号が空間合成されるように送信制御されているため、第3者がこの信号を受信してもその受信レベルが異なっており、情報を入手することは困難である。
【0347】
またこの実施の形態の場合、通信2において、同時刻に、秘匿情報に加えて擬似情報を符号分割多重して送信するようになっている。そして受信局1202では、送信局1201と同じ拡散符号を使って各情報データを復元する。ここで実施の形態のようにデータ毎に符号系列を変えた場合、その符号系列の有する周波数要素が異なるため伝搬路環境で受ける影響も異なる。
【0348】
これにより、この実施の形態のように多重したチャネルに秘匿情報を分散させることによって、チャネル同士の伝搬状況による影響が異なってくるため、第3者は秘匿情報を入手することが一段と困難になる。
【0349】
なおここまでの説明では、受信局1202の受信端に最適な受信信号が到達するように、第1送受信部1203と第2送受信部1204の送信信号を制御する点に着目した。以下では、同時刻、同周波数に2つのチャネル(秘匿情報、擬似情報)を重畳し、2以上からなる送信信号を用いて空間的に合成し、受信局1202の受信端においての受信電力を各チャネルに対して独立に制御する点に着目して説明する。
【0350】
送信局1201は受信局1202から受信(受信1B)した既知信号である伝搬路推定用信号に基づいて、第1伝搬路1207と第2伝搬路1208とを推定する。次に送信局1201は2種類の情報を2チャネル分符号分割多重して受信局1202に対して送信する。
【0351】
ここでそれぞれに割り当てるチャネルは、拡散ゲインが等しくなるように、かつ直交した関係であるものを選択する。このとき第1情報として、秘匿情報を、推定した伝搬路状況に基づき受信局1202の受信端で最適な受信状況になるように送信する。ここでは最適な受信状況として受信電力が最大になるように制御する。第2情報として、疑似情報を、推定した伝搬路状況に基づき受信局1202の受信端で受信電力が第1情報より小さくなるように制御して送信する。
【0352】
このようにして放射された通信2は、空間的に合成され受信局1202で受信される。空間的に合成された結果として、受信端において、第1情報は電力の大きい信号として、第2情報は電力の小さい信号として、符号分割多重された状態で受信される。受信された信号系列は拡散符号を用いて逆拡散することにより、互いの信号を取り出すことができるが、拡散ゲインは等しく設定されているため、各情報の受信電力に応じて一方は電力が大きく他方は電力が小さくなる。受信局1202ではこの受信電力の大きなチャネルの情報を秘匿情報として選択し、他方のチャネルの情報を疑似情報として扱うことで、秘匿情報を容易に選択できる。
【0353】
一方、この情報を第3者が傍受し復元しようとしても、第1情報の受信状態と第2情報の受信状態は受信する場所によって異なってくるため、事前に知ることもできなければ、受信信号系列から知ることは不可能である。このため、通信2を第3者が知ることができない。
【0354】
このように周波数拡散を行うことにより、ノイズへの耐性が高まるため通信品質を高めることができるといった効果も得られる。
【0355】
因みに、疑似情報を重畳したチャネルについて、各伝搬路1207、1208を通じて合成受信した電力が小さくなるように制御する場合について述べたが、疑似情報を重畳したチャネルの受信電力を0とする、つまり互いにキャンセルさせるように制御する場合、キャンセルされる空間領域は極めて狭域であるといった特長がある。
【0356】
ここで電磁波が空間合成される様子を図34に示す。図34は、2波による定在波の様子を示したものである。横軸は位置、縦軸は電力を示している。この図からも分かるとおり、最大レベルを0dBに正規化したとき、ほとんどの位置が−10dB以上である。また−20dB以下となるような空間合成により、電波が互いにキャンセルされて電力の低い箇所は鋭いピークを有しており、位置が少しずれただけで急激に電力が上昇する。
【0357】
この特性を利用して、例えば第1情報の信号電力を−10dBm程度に設定し、第2情報を受信端においてキャンセルされるように送信制御すると、第2情報の妨害が無視できる領域は限られた領域しかなく、ほとんどの領域において第1情報を正しく受信できないことが分かる。つまり通信ターゲットである受信局1202が位置する場所以外の場所では、第1情報が第2情報によって妨害される。これにより第3者が第1情報を入手することは非常に困難となる。
【0358】
かくして以上の構成によれば、秘匿情報を、複数の伝搬路1207、1208を介して設定された時刻に受信局1202で受信されるタイミングで送信するのに加えて、秘匿情報の送信先である受信局1202で当該秘匿情報の受信電力が最大となるように送信局1201での指向性を制御したことにより、第3者による秘匿情報の入手を一段と困難にすると共に、受信局1202において通信品質の良い秘匿情報を得ることができる無線通信システム1200を実現できる。
【0359】
またこの実施の形態では、アレイアンテナ技術と高い親和性がある。この技術は、電気的に放射特性を制御できると言った大きな特長を有しており、この実施の形態ではそれを積極的に応用している。
【0360】
そのためアレイアンテナ自体が有している特長をそのまま活用することができ、例えば説明中にある通信2を行っている際に、受信局1202との通信には関係ない方向に向けて別チャネルの通信を実施することもでき、あるいはマルチパス環境下での通信において放射特性を制御することもできる。これらを行うことによって、通信容量の増加させることができ、あるいはマルチパスの影響を低減することもできる。
【0361】
(他の実施の形態)
(1)なお上述の実施の形態では、受信端末基準時間の基準となる時刻を、送信局が通信1により受信局に送信するネットワーク基準時間とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は送信局と受信局との間で一致した時刻を有していればよい。例えば予め設定してある時刻を基準とすることもできる。また受信局から基準時刻通知信号を送信局に送信すれば、伝送路遅延を推定できている送信局は、基準時刻通知信号の受信時刻から、受信局に対して基準時刻を合わせることもできる。
【0362】
(2)また上述の実施の形態4では、送信局が受信局で設定した受信端末基準時間に秘匿情報を含む送信データが到達するような送信タイミングで送信を行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、送信局が受信局で設定した受信端末基準時間に対して、所定時間分だけ時間をずらした送信タイミングで秘匿情報を含む送信データを送信するようにしてもよい。この場合、受信局は、実施の形態4で上述したように、秘匿情報の送信対象である受信局のみが抽出し得る同期系列信号を使って受信処理を行う。
【0363】
具体的に、図4を用いて説明する。先ず送信局が受信局に対してネットワーク基準時間を含む制御信号を送信する(通信1)。次に受信局は一定時間(T1)後に送信局に対して応答信号を送信する(通信2)と共に、受信端基準時刻(Tk)を設定する。次に送信局は通信1及び通信2から伝搬路の状態を推定する。具体的には、信号伝搬時間(Td)を推定する。
【0364】
次に送信局は受信局に対して通信3を行なう。このとき送信局は推定した信号伝搬時間(Td)や装置で発生する処理遅延時間から送信時刻を算出し、送信タイミングを制御する。送信局は通信3が受信局に受信端基準時刻(Tk)に到達するように時間制御するが、この際、追加情報に従って定められる遅延量(Ts)を受信端基準時刻(Tk)に加えて通信3を送信する。
この結果、受信局では、通信3が時刻(Tk+Ts)に受信される。受信局では、時刻(Tk)を中心として数シンボルにわたって通信3に対する受信処理を行うことにより時間同期を行う。ここで時間同期を行うことができるのは、送信信号中に送信局と受信局の間だけで分かっているフォーマットで同期系列信号が配置されているためである。すなわち実施の形態4で上述した構成の受信局では、受信端基準時刻(Tk)丁度に送信データが到達しなくても、同期系列信号を利用して受信処理を行うことができる。
【0365】
そして時間同期の結果と、時刻(Tk)の差(Ts)を追加情報として、別途処理系に渡す。このとき、追加情報を用いて以下の応用が考えられる。
【0366】
第1に、送受信局間で複数のスクランブルフォーマットを定めておき、追加情報によってこれらを切り替えることである。第2に、秘匿情報を複数に分割し、追加情報によってその種別を伝達することである。つまり、送信局が秘匿情報を第1及び第2の情報に分割して送信し、受信局では追加情報(Ts)がプラスの場合には第1の分割秘匿情報を復調し、マイナスの場合には第2の分割秘匿情報を復調する。さらに第3に、暗号化パターンを複数用意しておき、追加情報(Ts)によってそれらを切り替えることである。
【0367】
かくするにつき、他の受信局では、一層秘匿情報を復元することが困難となる。また秘匿情報の送受信を行っている送信局と受信局では、受信端基準時刻(Tk)丁度でなくても、秘匿情報を復元できるようになるので、設計の自由度が増す。
【0368】
(3)また上述の実施の形態では、全情報に対して、受信局で設定された受信端末基準時間に送信局から送信された信号が到達するように、送信局による送信タイミングを制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、暗号キーのように特に重要な秘匿情報の伝送に対してのみこのような送受信を行い、他の情報に対しては、パイロット信号のような同期信号を付加して通常のタイミングで送信を行うようにしてもよい。このようにすることで同期信号を付加せず、同期復調処理を行わないことにより生じる復調時の不安定さを最小限に抑制することができ、全体としての通信品質を向上させることができる。
【0369】
(4)また上述の実施の形態では、同期系列、疑似同期系列を複数シンボルにより構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、それぞれを1シンボルで構成するようにしてもよい。また疑似同期系列は疑似シンボルや情報シンボルや同期系列の一部として兼用するようにしてもよい。
【0370】
また同期系列として、例えばsin波のように単調なパターンの繰り返しを用いるようにしてもよい。この場合、秘匿情報の送信対象である受信端末1はその同期系列の開始時間を推定することができるのに対して、受信端末2はどのパターンが同期系列の開始時間かを推定できない。従って同期系列の一部を疑似同期系列にしても、同期系列から得られる基準位相がタイミングによって変化(回転)すろため、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0371】
また同期系列を1種類に限定する必要はなく、複数種類の同期系列を用いるようにしてもよい。このようにすれば、第3者による秘匿情報の復調及び復号は一層と困難となる。さらに同期系列の種類によって情報シンボルと疑似シンボルの配置を示したフォーマットを変更すれば、一段と高いセキュリティを確保できる。
【0372】
(5)また上述の実施の形態では、疑似シンボルに疑似情報を載せる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、疑似シンボルに、第1正規情報に対する誤り検出機能や誤り訂正機能を、第2正規情報として載せるようにしてもよい。また畳込符号系列や、ブロック符号系列に代表される情報系列と、その疑似情報系列に置き換えることもできる。
【0373】
(6)また上述の実施の形態では、送信局に送信部を2つ設けることにより、第1伝搬路及び第2伝搬路の2つの伝搬路を経由した通信を行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、送信部を3つ以上設けることにより通信を行う伝搬路を3つ以上にしてもよい。
【0374】
さらに上述の実施の形態では、送信局に送信部を2つ設けることにより2つの伝搬路通信を実現する場合について述べたが、複数の伝搬路通信を実現する方法はこれに限らず、例えば各送信部を別々の位置に配置することでも異なる伝搬路通信を実現できる。また送信部は同位置に設置して、各送信部の指向性を狭めたアンテナを適用してもよい。また送信部は1つとすると共に送信部にアダプティブアレイアンテナを適用し、電波の反射や回折などの特性を利用することにより異なる通信伝搬路を形成するようにしてもよい。要は、互いに秘匿情報を通信し合っている無線通信局間のみが共有できる複数の伝搬路を形成すればよい。
【0375】
(7)また上述の実施の形態では、説明を簡単化するために、疑似シンボルの電力を0と仮定して説明したが、疑似シンボルの電力は0である必要はない。有意シンボルとの干渉を小さくするには、疑似シンボル電力を十分に小さくすればよい。またベクトル合成した結果の電力が十分に小さくなるように疑似シンボルを複数部分に分割してもよい。
【0376】
(8)上述の実施の形態では、偏波状態の推定として、楕円偏波pの長軸とアンテナからなる角度と、扁平率を求める例を挙げたが、図21及び図22で示した構成のうち、電界強度検出部1020や電界強度制御部1021のみを用いることで、おおよその長軸角度のみを求めて偏波面を制御してもよく、偏波面を制御する方法としては、このような簡易な構成に換えてもよい。
【0377】
また上述の実施の形態では、直線偏波を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、円偏波についても同様の効果を得ることができる。この場合は、垂直偏波や水平偏波が右旋偏波、左旋偏波に置き換わる。
【0378】
(9)また上述の実施の形態10、11では、送信局と受信局間で1つの伝搬路を用いて通信する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、複数の伝搬路についても同様の通信を達成することができるのは明らかである。
【0379】
この場合、第1伝搬路を用いた通信と第2伝搬路を用いた通信を、時刻をずらして行えば、時間ダイバーシチ効果を得ることができる。逆に、両通信を同時刻に行えば、パスダイバーシチ効果と得ることができる。当然、2つ以上の伝搬路を第3者が推定することは1つの伝搬路を推定することよりも困難となるので、複数の伝搬路に情報を分散させれば、秘匿情報のセキュリティを飛躍的に高くすることができる。
【0380】
(10)また上述の実施の形態10では、アンテナとしてダイポールアンテナを例に挙げたが、アンテナの種類には限定されず、ヘリカルアンテナや平面アンテナ、パラボラアンテナ、八木アンテナ、その他全てのアンテナを用いた場合も同様の効果を得ることができる。さらに複数のアンテナを用いて指向性を電気的に制御するアダプティブアレイアンテナ技術を用いて、通信に関係ない方向に対して疑似情報を放射すれば、第3者による秘匿情報の傍受を一層困難にすることができる。また放射特性と共に偏波面の角度を変更できるようになる。またアレイアンテナのような電気的に指向性を制御し得るアンテナを用いれば、複数の伝搬路を用いた通信方法への適用も容易となる。
【0381】
(11)また上述の実施の形態では、秘匿情報のセキュリティに着目して説明したが、上述した秘匿情報の通信時に行った伝搬環境推定に加え、その後の通信でも伝搬環境の推定を行い、両方の推定結果を比較すれば、送信局において受信局が秘匿情報の通信相手であるか否かを認証することもできる。
【0382】
(12)また上述の実施の形態10、11では、伝搬環境推定用に偏波推定用信号を出力する場合について述べたが、この偏波推定用信号としては正弦波でもよく、1シンボル以上で構成される信号系列であってもよい。
【0383】
さらに上述の実施の形態10、11では、偏波推定用信号を直線偏波とすることで、伝搬路における偏波面の回転角と振幅を検出する場合について述べたが、ある偏波面の信号とそれに直交する偏波面の信号とを分離できるように、例えば時刻をずらして偏波推定用信号を送信したり、互いに直交する偏波推定用信号を割り当てて多重送信すれば、偏波推定用信号の送信側と受信側とで偏波の回転や位相差までも検出できる。
【0384】
(13)また上述の実施の形態12では、拡散符号を用いて秘匿情報に加えて、擬似情報を符号分割多重して受信局に送信する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば各データを周波数分割多重したり直交周波数分割多重して送信してもよい。
【0385】
(14)また上述の実施の形態12では、第1情報(秘匿情報)と第2情報(擬似情報)に用いる符号系列の拡散ゲインを等しくする場合について述べたが、必ずしも等しくする必要はない。また直交性についても必ずしも必要ではなく、受信局の受信端において受信電力に十分な差が出るよう制御すれば、全く同一の符号系列を第1情報と第2情報とに与えて拡散した場合でも、あるいは符号長が1(すなわち拡散をしない)であるような構成でも実現できる。この場合、第3者が傍受した受信信号では疑似情報を重畳した第2情報の信号が妨害波となるので、第3者は第1情報を入手できない。
【0386】
またここでは、第1情報と第2情報に同一符号を割り当てても本発明が実施できることを説明したが、第2情報が受信端において空間合成されたときの受信電力が十分小さくなるように制御すれば、受信信号はほぼ第1情報のみとなり多重された信号を分離する必要がなくなる。つまり、多重の段階で符号拡散を行わなくても同様の効果を得ることができる。
【0387】
従って、第1情報と第2情報については、推定した伝搬路状況に基づき、受信局の受信端での受信電力を、一方を大きく、他方の電力をそれに対して十分小さく制御することによってのみ重畳させるだけでよい。このようにすれば、伝送効率を落とすことなく通信2で秘匿情報を伝送できる。この場合、小さい信号の総合電力が大きい信号の電力に対して1dB程度以上の電力差がつけば受信側でこれらを分離できる。
【0388】
(15)また上記説明では、多重方式として各キャリアに対して拡散符号を割り当てる符号分割多重(CDMA)方式について述べたが、OFDM多重を用いても同様の効果を得ることができる。すなわちCDMAの場合は、拡散符号毎の合成電力を制御したが、OFDMを適用する場合は、サブキャリア毎の合成電力を制御すればよい。例えばサブキャリアを複数グループ(例えば奇数サブキャリアと偶数サブキャリア)に分割し、サブキャリアグループ毎の合成電力を制御すればよい。
【0389】
(16)また実施の形態12では、多重した第2情報を疑似情報とした場合について述べたが、第2情報は擬似情報に限らず、例えば他チャネルの情報でもよい。このようにすれば、伝送効率を高めることができる。また第1情報、第2情報共に秘匿情報として送信し、受信局において受信電力の大きさに応じて第1情報と第2情報とを分離し、復号することもできる。
【0390】
さらに送信局から送信する第1情報、第2情報に加えて、両者の電力値やその大きさの順番、或いは両者の電力比等の情報を重畳して送信してもよい。また通信2で送信するデータの多重数は2つや3つに限らず、4以上の情報を多重して送信してもよい。この場合、受信局では、それらの信号を受信電力の大きさに準じて、第1から第n(nは2以上の自然数)の情報に分離し、復号できる。このようにすれば、第3者が傍受しようとしても、伝搬路が異なるため、正しい受信電力の大きさの順番が得られないため、情報の秘匿性が高まる。
【0391】
(17)また上述の実施の形態12では、送信局が送受信部を2つ有する場合について述べたが、送受信部の数は2つに限定されない。またアレイアンテナを用いて放射特性を制御する場合、アンテナ素子をNとすると空間合成により信号がキャンセルされて信号電力が0になるようなヌル特性をN−1個だけ作れることが知られている。この特長を用いた方法について、図35を用いて説明する。
【0392】
図29との対応部分に同一符号を付した図35に示すように、無線通信システム1300は、送信局1301に第3送受信部1302が加えられ、伝搬路として第3伝搬路1307が新たに形成される。
【0393】
上述の実施の形態12と同様に、送信局1301は受信局1202から既知信号としての伝搬路推定用信号を受信することにより、伝搬環境推定部1303によって第1伝搬路1305、第2伝搬路1306、第3伝搬路1307の伝搬環境を推定する。
【0394】
次に送信局1301は3種類の情報を3チャネル分符号分割多重して受信局1202に送信する。それぞれに割り当てるチャネルは、拡散ゲインが等しくなるように、かつ直交した関係のものを選択する。
【0395】
このとき、第1情報として秘匿情報を、推定した伝搬路環境のうち、第1伝搬路1305、第2伝搬路1306、第3伝搬路1307の推定結果に基づき、受信局1202の受+信端で最適な受信状況になるように送信する。ここでは、最適な受信状況として受信電力が最大となるように制御する。第2情報として疑似情報を、推定した伝搬路環境のうち、第1伝搬路1305、第2伝搬路1306、第3伝搬路1307の推定結果に基づき、受信局1202の受信端で受信電力が最小になるようにヌル制御を行い送信する。
【0396】
このとき制御可能な2つのヌル特性のうち、一方を用いることとし、他方のヌル特性は通信が適当な状態を保てるように設定する。さらに第3情報として疑似情報を、推定した伝搬環境のうち、第1伝搬路1305、第2伝搬路1306、第3伝搬路1307の推定結果に基づき、受信局1202の受信端で受信電力が最小になるようなヌル制御を行い送信する。このとき2つのヌル特性のうち、一方のヌル特性は第2情報と同様の特性とするが、他方のヌル特性は第2情報とは異なる状態となるようにヌル制御して送信する。
【0397】
このようにして放射された3つの情報信号は、空間的に合成され受信局1202で受信される。空間的に合成された結果として、受信端において、第1情報は電力の大きい信号として、第2情報及び第3情報は電力の小さい信号として、符号分割多重された状態で受信される。
【0398】
受信された信号系列は拡散符号を用いて逆拡散することにより、互いの信号を取り出すことができる。ここで拡散ゲインは等しく設定してあるため、各情報の受信電力に応じて1つは電力が大きく他は電力が小さくなる。受信局1202では電力の大きなチャネルの情報を秘匿情報として選択し、他方のチャネルの情報を疑似情報として扱うことで、容易に秘匿情報のみを抽出できる。
【0399】
ここで、秘匿情報を第3者が傍受し復元しようとした場合を考える。この場合、第1情報の受信状態と第2、第3情報の受信状態は受信する場所によって異なってくる。この受信状態は事前に知ることもできなければ、受信信号系列から知ることは不可能である。
【0400】
さらに多重された第3情報の放射特性は第2情報と同じく、受信局1202の受信端ではヌルが形成されるように制御されているが、ヌルの状態が互いに異なるように制御されている。ここでヌルを制御する場合でも、条件によりその制御箇所以外にもヌルは形成されることがあり、例えば第3者の受信位置で、第2情報がヌル付近であったとしても、第3情報が同様の状態であることは少ない。この結果、第3者に秘匿情報の内容が漏洩する確率は大幅に減る。かくして、送受信部を3つ設けた構成では、2つの送受信部を用いたよりも秘匿性を大幅に高めることができる。
【0401】
同様にして、送信局の送受信部の数を4、5、6と増加させることで、多重数を増加させて一段と秘匿性を高めることもできる。また送受信部の数に対して多重数を抑え、多重する1情報あたりのヌル制御の自由度を向上させれば、精度の向上させることもでき、制御を高度化することもできる。またシンボル毎にヌル制御に用いるパラメータ設定を変更し、制御外で形成されるヌルの箇所が重ならないようにすれば、第3者に秘匿情報が漏洩する可能性を一段と抑制し得る。
【0402】
また第2情報及び第3情報をヌル制御することにより、受信局で第2情報及び第3情報の受信電力が小さくなるように制御した場合について述べたが、第2情報及び第3情報の受信電力を第1情報とは異なる様に制御し、第1から第3情報にそれぞれの受信電力の大きさ情報を付加すれば、更に高い秘匿性を持たせることができる。さらにシンボル毎にその制御を刻々と変化させれば、一層漏洩を防止できる。
【0403】
(18)また以上の説明では、秘匿情報でなる第1情報の送信電力と、それに多重された他の情報との送信電力は等しい場合について述べた。しかし、必ずしもこれらは等しい必要はなく、例えば第1情報の送信電力を他情報より低く設定すれば、秘匿性を向上させることができる。逆に第1情報の送信電力を他情報より高く設定すれば、秘匿情報の通信の安定させることができる。これらは、提供する無線通信システムの環境などに応じて適宜調整すればよい。
【0404】
(19)上述の実施の形態では、説明上、伝搬路推定用信号を既知信号としたが、既知信号でなくても伝搬路を推定できる。但し、既知信号であれば推定が容易になり、ノイズの影響を軽減できるといった利点がある。また包絡線が一定の信号であればアダプティブアレイアンテナの推定アルゴリズムであるCMA方式が適用できる。さらに伝搬路推定用信号は伝搬環境が変化する場合に必要なのであって、送信局と受信局の間で形成される伝搬路が固定であれば、予めその特性を計測しておくことによって秘匿通信を行うことができる。
【0405】
(20)また複数の送受信部を設ける場合のアンテナとして、アレイアンテナを例に挙げて説明したが、アレイアンテナの構成を限定するものではない。変調波のコヒーレンシが制御可能であれば2つ以上の送信局を用いて同等の制御を行うことができる。またアレイアンテナのように電気的に放射特性を制御できるアンテナを用いれば、送信局は秘匿情報を伝送している受信局との通信とは独立して別の無線局との通信を行うこともできる。この場合、それぞれの受信局に対して同時刻、同周波数に通信信号を多重して送信できることは上述した通りである。このように多重数を増やすことで第3者への秘匿情報の漏洩を防止する効果はさらに高まる。別の受信局がなく、通信が一対の送信局と受信局のみで行われている場合は、上述したように疑似情報を多重すれば、秘匿情報のセキュリティを保つことができる。
【0406】
(21)また上述の実施の形態では、秘匿情報に複数種類の情報を多重する多重方式として符号分割多重を例に挙げて説明したが、アレイアンテナの放射特性制御を用いて各情報を選択できるため、とくに多重方式に限定されない。
【0407】
(22)また本発明は変調方式や多重方式を限定することなく利用できる。例えば実施の形態1〜実施の形態4で上述した通信1、通信2、通信3、通信4、……毎、及び実施の形態5、6、7で上述した通信10、通信11、通信20、通信21、通信30、通信31、通信4、……毎に別々の変調方式や多重方式を適用することもできる。特に伝搬環境を推定する場合、通信1には実施の形態1のようにスペクトル拡散を適用することで、フェージングに強くなり推定精度の良い推定処理を行うことができる。
【0408】
またASK変調方式、FSK変調方式、差分符号変調方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を適用してもよい。これらの変調方式を用いる場合は、特に位相の同期を行う必要がないといった長所がある。
【0409】
またPSK変調やQAM変調、パルス変調等も適用し得る。さらに多重方式にも依存しないため、FDMA多重波、CDMA多重波、OFDM多重波等も適用し得る。
【0410】
すなわち上述の実施の形態では、秘匿情報の送信を時間やチャネル単位で制御する場合について述べたが、CDMA多重波やOFDM多重波などのようなマルチキャリア変調方式を用いれば、キャリア毎に偏波面の制御を行うことができる。従って時間別、チャネル別での制御に加えてキャリア別での制御を行うことにより、より高度な制御を行うことができるようになる。この結果第3者に対する秘匿性を飛躍的に向上させることができる。
【0411】
また実施の形態1の通信3におけるシンボルレートを通信1、通信2のシンボルレートに対して低く設定すれば、相対的に伝搬路遅延の精度を向上させることができる。このとき通信3のシンボルレートと、通信1から通信3までの処理時間とによって、送信局と受信局との位置関係の精度が決まってくるので、システム設計に応じて個々の値を設定すればよい。
【0412】
同様に、実施の形態5、6、7における通信30、通信31のシンボルレートと、通信10から通信30、或いは通信11から通信31までの処理時間とによって、送信局と受信局との位置関係の精度が決まってくるので、システム設計に応じて個々の値を設定すればよい。
【0413】
このように、本発明は変調方式、多重方式に限定されず、他の情報レイヤに影響を及ぼすものではないため、従来のシステムと高い親和性を有している。また暗号化技術と組み合わせることでより高いセキュリティを実現できるため、個人情報、金融情報、機密情報など高いセキュリティが必要とされる情報通信分野に広く適用し得る。
【0414】
(23)また上述の実施の形態では、伝搬路での信号伝搬時間を推定し、この信号伝搬時間を使って送受信間の送受信同期をとることにより、他のユーザが秘匿情報を復元できないようにした場合について述べたが、通信を行っている無線局同士のみが共有できるような他の伝搬路環境を利用しても上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。この伝搬環境には、例えばマルチパス環境やフェージング環境等があり、これらを複合的に活用するようにしてもよい。また送信局と受信局との装置差(例えば基準周波数の差など)までも含めて、通信に応用することでさらに高いセキュリティを実現することもできる。
【0415】
(24)また上述の実施の形態では、説明を簡単化するため、秘匿情報を含む情報を送信する無線局を送信局とし、それを受信する無線局を受信局として説明したが、本発明はこれに限らず、相互に秘匿情報の送受信を行うようにしてもよい。
【0416】
(25)さらに上述の実施の形態では、送信局が受信局との同期をとるための信号としてネットワーク基準時間を含む制御信号を発信することにより、送信局と受信局で同一の基準期間を共有し、ネットワーク時刻Tkを秘匿情報の到達時刻とする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、同一の基準時刻を共有しなくても上述の実施の形態と同様に、受信局で設定した時点に秘匿情報を到達させることができる。
【0417】
これを、図36を用いて説明する。送信局は時点t1で通信1を送信する。この通信1には、実施の形態と異なり基準時間情報が含まれていないものとする。受信局は時点t2で通信1を受信する。そして時間T1が経過した時点t3で受信局が通信2を送信する。送信局は通信2を時点t4で受信する。さらに受信局はある時間経過の後(この時間は送受間で共有する必要はない)、時点t5で通信2'を送信する。送信局は時点t6で通信2'を受信する。送信局は時点t6から時間Td経過した後の時点t7で通信3を送信する。ここで、送信局と受信局は受信1Tしてから送信2Tするまでの時間T1と、送信2'Tしてから受信3Tするまでの時間T2を共有情報として保持している。
【0418】
ここで信号伝搬時間Twとすると、次式の関係が成り立つ。
t4−t1 = 2×Tw+T1 ……… (1)
従って信号伝搬時間Twは、次式
Tw = (t4−t1−T1)/2 ……… (2)
と表すことができる。受信端基準時間1(時点t8)に到達するように、送信局が送信すべき時点t7は、時点t5、t6及びT2との関係から
Figure 0004794085
すなわち、調整時間Td(=t7−t6)は次式
Td=T2−2×Tw = T2−(t4−t1−T1)……… (4)
と表すことができる。
【0419】
このように、送信局の送信タイミングのための調整時間Tdは、送信局にとって既知の時点t1、t4と共有時間情報T1、T2で表すことができるので送信局は(4)式に基づいて時点t8に受信局に秘匿情報が到達するような送信タイミングで秘匿情報を含む送信データを送出できる。
【0420】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1の無線局から第2の無線局に秘匿情報を含む送信データを無線伝送する場合、当該秘匿情報を伝送する前に、第1の無線局と第2の無線局の間で信号の送受信を行うことにより、第1の無線局と第2の無線局の間でのみ共有する無線伝搬路環境を推定し、推定した無線伝搬路環境を考慮して、第1の無線局から第2の無線局に秘匿情報を伝送するようにしたことにより、無線回線を介して特定の無線局に秘匿情報を伝送する場合に、高いセキュリティで秘匿情報を伝送し得るデータ伝送装置、無線通信システム及び無線通信方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図
【図2】図1の送信局の構成を示すブロック図
【図3】図1の受信局の構成を示すブロック図
【図4】実施の形態1、3の無線通信システムにおける通信手順を示すシーケンス図
【図5】実施の形態1、3の通信信号の伝搬状態を示す図
【図6】実施の形態4のバースト信号形成部の構成を示すブロック図
【図7】実施の形態4の復調部及びストリーム形成部の構成を示すブロック図
【図8】実施の形態4の時間同期/ユニークワード抽出回路の構成を示すブロック図
【図9】図8の時間同期/ユニークワード抽出回路の動作の説明に供する信号波形図
【図10】実施の形態4の通信信号の伝搬状態を示す図
【図11】実施の形態5の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図12】実施の形態5、6、7の無線通信システムにおける通信手順を示すシーケンス図
【図13】実施の形態5の通信信号の伝搬状態を示す図
【図14】実施の形態6、7,9の通信信号の伝搬状態を示す図
【図15】実施の形態8の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図16】実施の形態8、9の無線通信システムにおける通信手順を示すシーケンス図
【図17】実施の形態9の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図18】図17の送信局の構成を示すブロック図
【図19】実施の形態10の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図20】図19の送信局の構成を示すブロック図
【図21】図20の伝搬環境推定部の構成を示すブロック図
【図22】図20の放射特性制御部の構成を示すブロック図
【図23】偏波面と電界強度、位相差の説明に供する図
【図24】実施の形態10、11の無線通信システムにおける通信手順を示すシーケンス図
【図25】実施の形態10の動作の説明に供する図
【図26】アンテナの位置と偏波面との説明に供する図
【図27】アンテナの位置と偏波面との説明に供する図
【図28】実施の形態11の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図29】実施の形態12の無線通信システムの構成を示すブロック図
【図30】図29の送信局の構成を示すブロック図
【図31】図30のバースト信号形成部、ビームフォーマ、変調部の構成を示すブロック図
【図32】図30の復調部及びストリーム形成部の構成を示すブロック図
【図33】実施の形態12の無線通信システムにおける通信手順を示すシーケンス図
【図34】電磁波の空間合成の説明に供する図
【図35】他の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図
【図36】他の実施の形態に係る通信手順を示すシーケンス図
【符号の説明】
100、500、800、900、1000、1100、1200、1300
無線通信システム
101、501、801、802、901、1001、1201、1301 送信局
101a、102a、502、503、1012、1220 送信部
101b、102b、1013、1240 受信部
101c、904、1006、1205、1303 伝搬環境推定部
101d、905、1206、1304 伝搬環境適応部
102、1002、1040、1101、1202 受信局
102c、1007、1010 時間制御部
103、504、505、806、807、906、907、1041、1042、1207、1208、1305、1306、1307 伝搬路
115、132、300、1221 バースト信号形成部
116、134、1223 変調部
118、905a タイミングコントロール部
120、904a 遅延量推定部
122、141、310 復調部
123、142、320 ストリーム形成部
330 コンボルバ回路
312 時間同期/ユニークワード抽出回路
333 ピーク探索回路
334 探索範囲設定回路
335 ユニークワード選択回路
803、804 網接続部
805 ネットワーク
902、903、1005、1009、1203、1204、1302 送受信部
904b 電力測定部
905b 電力制御部
1003、1004、1102、1103 アンテナ部
1008、1104 放射特性制御部
1210 到来方向推定部
1222 ビームフォーマ
AN、AN11、AN12、AN13、AN20、AN21、AN30、AN60、AN61 アンテナ
D1、D2、D3 ユーザデータ
D4 スクランブルパンクチュアデータ

Claims (13)

  1. 秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、
    互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、
    前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定する推定手段と、
    それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、前記秘匿情報を含む第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで各送信データを送信する第1及び第2の送信手段と
    を具備し、
    前記第1及び第2の送信データは、互いに同一のフォーマットで形成されている、
    データ伝送装置。
  2. 前記秘匿情報を含む前記第1及び第2の送信データ中の、前記無線局との間で予め決められた位置に、擬似シンボルを付加する擬似シンボル付加手段を具備し、
    前記第1及び第2の送信手段は、擬似シンボルが付加された前記第1及び第2の送信データを前記無線局に送信する
    請求項記載のデータ伝送装置。
  3. 前記秘匿情報を含む前記第1及び第2の送信データ中の、前記無線局との間で予め決められた位置に、互いに同期関係にある同期系列信号を付加する同期信号付加手段と、
    前記同期系列信号についての擬似同期信号であり、互いに同期関係にある擬似同期系列信号を付加する擬似同期信号付加手段と
    を具備する請求項記載のデータ伝送装置。
  4. 秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、
    互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、
    前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定する推定手段と、
    第1及び第2の送信データの単位通信フレームを並べたときに、前記秘匿情報を形成する秘匿シンボル同士が重ならないように、前記第1及び第2の各送信データ中に、秘匿シンボルに対して電力が非常に小さい擬似シンボルを付加する擬似シンボル付加手段と、
    それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、前記秘匿情報を含む前記第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで、各送信データを前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、
    を具備するデータ伝送装置。
  5. 秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、
    互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、
    前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定するとともに、前記第1の無線伝搬路における第1の信号電力減衰量及び前記第2の無線伝搬路における第2の信号電力減衰量を推定する推定手段と、
    それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の信号伝搬時間に基づいて、第1及び第2の送信データが同時刻に前記無線局に到達するタイミングで各送信データを前記無線局に送信すると共に、前記第1及び第2の信号電力減衰量に基づいて、前記無線局が前記第1及び第2の送信データを合成受信した際に復調し得る最低レベルに近い送信電力で前記第1及び第2の送信データを前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、
    を具備し、
    前記第1及び第2の送信データは、互いに同一のフォーマットで形成されている、
    データ伝送装置。
  6. 秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、
    互いに異なる位置に配置され、前記無線局により発信された信号を受信する第1及び第2の受信手段と、
    前記第1及び第2の受信手段により得られた各受信信号に基づいて、前記無線局と前記第1の受信手段との間の第1の無線伝搬路における第1の信号伝搬時間及び前記無線局と前記第2の受信手段との間の第2の無線伝搬路における第2の信号伝搬時間を推定するとともに、前記第1の無線伝搬路における第1の信号電力減衰量及び前記第2の無線伝搬路における第2の信号電力減衰量を推定する推定手段と、
    所定の拡散符号を使って前記秘匿情報を拡散処理して第1の拡散信号を得る第1の拡散手段と、
    前記拡散符号とは異なる拡散符号を使ってかつ前記第1の拡散手段による拡散ゲインと同程度の拡散ゲインが得られるように擬似情報を拡散処理して第2の拡散信号を得る第2の拡散手段と、
    それぞれ前記第1及び第2の受信手段と同じ位置に配置され、前記第1及び第2の拡散信号が予め前記無線局との間で設定された時刻に前記無線局に到達するように、前記第1及び第2の信号伝搬時間を考慮したタイミングで、前記第1及び第2の拡散信号を前記無線局に送信する第1及び第2の送信手段と、
    を具備し、
    前記第1及び第2の送信手段は、前記第1及び第2の信号電力減衰量に基づき、前記第1及び第2の拡散信号が前記無線局に到達したときに、前記第1の拡散信号の受信電力値と前記第2の拡散信号の受信電力値に一定以上の差が生じるように送信電力を制御する、
    データ伝送装置。
  7. 秘匿情報を含む送信データを無線により無線局に伝送するデータ伝送装置であって、
    前記無線局により発信された信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段により得られた受信信号に基づいて受信波の偏波面を検出することにより前記無線局との間の無線伝搬路環境を推定するとともに、前記受信信号の到来方向を推定する推定手段と、
    所定の拡散符号を使って前記秘匿情報を拡散処理することにより第1の拡散信号を形成する第1の拡散手段と、
    前記拡散符号とは異なる拡散符号を使ってかつ前記第1の拡散手段による拡散ゲインと同程度の拡散ゲインが得られるように擬似情報を拡散処理することにより第2の拡散信号を形成する第2の拡散手段と、
    前記推定手段によって検出された前記偏波面に対して、前記無線局の間で予め決められた量だけ前記偏波面を回転させた送信波により、前記第1及び第2の拡散信号を前記無線局に送信する送信手段と、
    を具備し、
    前記送信手段は、前記推定手段により推定された到来方向に基づいて、前記第1の拡散信号の受信電力値と前記第2の拡散信号の受信電力値に一定以上の差が生じる方向に、前記第1及び第2の拡散信号を送信すると共に、擬似データを前記無線局とは異なる方向に向けて送信する、
    データ伝送装置。
  8. 前記推定手段は、さらに、前記受信信号の到来方向を推定し、
    前記送信手段は、前記到来方向を考慮した方向に前記秘匿情報を含む送信データを送信する
    請求項から請求項のいずれかに記載のデータ伝送装置。
  9. 前記送信手段は、前記推定手段により推定された到来方向に基づいて、前記秘匿情報を含む送信データを前記無線局の方向に向けて送信すると共に、擬似データを前記無線局とは異なる方向に向けて送信する
    請求項に記載のデータ伝送装置。
  10. 前記送信手段は、アダプティブアレーアンテナを有し、前記秘匿情報を含む送信データを送信する際には、前記到来方向に指向性が向くように各アレーアンテナを重み付けすると共に、前記擬似データを送信する際には、前記到来方向以外の方向に指向性が向くように各アレーアンテナを重み付けする
    請求項に記載のデータ伝送装置。
  11. 前記秘匿情報を含む送信データを、前記無線局との間で予め決められた順序で並べ換えるデータ並べ換え手段を具備し、
    前記送信手段は、当該データ並べ換え手段により並べ換えられた送信データを前記無線局に送信する
    請求項から請求項10のいずれかに記載のデータ伝送装置。
  12. 秘匿情報を含む送信データを第1の無線局から第2の無線局に無線により送信する無線通信システムであって、
    前記第1の無線局は、前記第2の無線局により発信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段により得られた受信信号に基づいて受信波の偏波面を検出する偏波面検出手段と、検出された偏波面に対して、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた量だけ前記偏波面を回転させた送信波により、前記秘匿情報を含む送信データを前記第2の無線局に送信する送信手段とを具備し、
    前記第2の無線局は、前記第1の無線局に前記偏波面検出用の信号を出力すると共に前記第1の無線局が送信した前記秘匿情報を含む送信データを受信するアンテナの偏波面特性を、前記偏波面検出用の信号を出力してから前記秘匿情報を含む送信データを受信する迄の間に、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた量だけ回転させる
    無線通信システム。
  13. 前記第1及び第2の無線局は、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた量だけ偏波面を回転させる処理を、前記第1及び第2の無線局間で予め決められた間隔で繰り返して行う
    請求項12に記載の無線通信システム。
JP2001258837A 2000-08-30 2001-08-28 データ伝送装置及び無線通信システム Expired - Fee Related JP4794085B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001258837A JP4794085B2 (ja) 2000-08-30 2001-08-28 データ伝送装置及び無線通信システム

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000260413 2000-08-30
JP2000-260413 2000-08-30
JP2000260413 2000-08-30
JP2001258837A JP4794085B2 (ja) 2000-08-30 2001-08-28 データ伝送装置及び無線通信システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002152191A JP2002152191A (ja) 2002-05-24
JP4794085B2 true JP4794085B2 (ja) 2011-10-12

Family

ID=26598751

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001258837A Expired - Fee Related JP4794085B2 (ja) 2000-08-30 2001-08-28 データ伝送装置及び無線通信システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4794085B2 (ja)

Families Citing this family (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006180549A (ja) * 2002-02-28 2006-07-06 Matsushita Electric Ind Co Ltd 通信装置及び通信方法
JP4381749B2 (ja) 2002-09-19 2009-12-09 パナソニック株式会社 無線通信装置及び無線通信方法
JP4514463B2 (ja) 2003-02-12 2010-07-28 パナソニック株式会社 送信装置及び無線通信方法
CN1784703A (zh) * 2003-05-07 2006-06-07 皇家飞利浦电子股份有限公司 传递信息给司机的交通信息系统
EP1612986A4 (en) * 2003-09-04 2006-02-22 Doshisha RADIO COMMUNICATION SYSTEM
JP2005110228A (ja) * 2003-09-10 2005-04-21 Matsushita Electric Ind Co Ltd セキュア通信方法および送信装置、受信装置
US9130602B2 (en) 2006-01-18 2015-09-08 Qualcomm Incorporated Method and apparatus for delivering energy to an electrical or electronic device via a wireless link
US8447234B2 (en) * 2006-01-18 2013-05-21 Qualcomm Incorporated Method and system for powering an electronic device via a wireless link
US9774086B2 (en) 2007-03-02 2017-09-26 Qualcomm Incorporated Wireless power apparatus and methods
US9124120B2 (en) 2007-06-11 2015-09-01 Qualcomm Incorporated Wireless power system and proximity effects
CN103187629B (zh) 2007-08-09 2016-08-24 高通股份有限公司 增加谐振器的q因数
US8629576B2 (en) 2008-03-28 2014-01-14 Qualcomm Incorporated Tuning and gain control in electro-magnetic power systems
JP2012044298A (ja) * 2010-08-16 2012-03-01 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 無線通信システム
JP5840925B2 (ja) * 2011-03-29 2016-01-06 株式会社日立国際電気 射撃訓練装置
US9362989B2 (en) * 2012-05-22 2016-06-07 Sun Patent Trust Transmission method, reception method, transmitter, and receiver
US9601267B2 (en) 2013-07-03 2017-03-21 Qualcomm Incorporated Wireless power transmitter with a plurality of magnetic oscillators
WO2015056353A1 (ja) * 2013-10-18 2015-04-23 株式会社日立製作所 高セキュア無線通信システム
WO2016006068A1 (ja) * 2014-07-09 2016-01-14 株式会社日立製作所 無線通信システム、送信機、及び受信機
WO2023248834A1 (ja) * 2022-06-24 2023-12-28 国立大学法人東北大学 電波伝搬特性の計測システム

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63248240A (ja) * 1987-04-03 1988-10-14 Canon Inc 符号化装置
JPH05249216A (ja) * 1992-02-04 1993-09-28 Nec Corp データリンクシステム
JPH09200115A (ja) * 1996-01-23 1997-07-31 Toshiba Corp 無線通信システムにおける無線基地局のアンテナ指向性制御方法および可変指向性アンテナ
JPH10327143A (ja) * 1997-05-23 1998-12-08 Nec Corp データ伝送システム
JPH11145933A (ja) * 1997-11-12 1999-05-28 Oki Electric Ind Co Ltd スペクトラム拡散通信方式及び装置
JP2000046939A (ja) * 1998-07-31 2000-02-18 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> ワイヤレスカード位置検出システム及び方法及び位置検出プログラムを記録した記録媒体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002152191A (ja) 2002-05-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4794085B2 (ja) データ伝送装置及び無線通信システム
EP1233547A1 (en) Data transmitting apparatus, radio communication system and radio communication method
USRE49244E1 (en) Communication apparatus and communication system
Kapetanovic et al. Physical layer security for massive MIMO: An overview on passive eavesdropping and active attacks
US7079480B2 (en) Enhancing security and efficiency of wireless communications through structural embedding
US9473226B2 (en) Sharing resources between wireless networks
CN1846367B (zh) 安全通信方法、发送装置和接收装置
US20070036353A1 (en) Authentication and encryption methods using shared secret randomness in a joint channel
CN105119645B (zh) Mimo系统中接收天线跳空的保密通信方法
US8358613B1 (en) Transmitter-directed security for wireless-communications
JP2004266818A (ja) 送信装置及び無線通信方法
JP2006230025A (ja) 通信装置及び通信方法
JP2004135302A (ja) 送信装置、受信装置、無線通信方法及び無線通信システム
WO2021023494A1 (en) Communication devices and methods for secure communication
US20090103720A1 (en) Method and system for secure and anti jamming wireless communication with high spectral efficiency
Wu et al. A unified mathematical model for spatial scrambling based secure wireless transmission and its wiretap method
Shi et al. Physical layer security techniques for future wireless networks
FI131066B1 (en) Phase-shifted transmission of signals with one or more antennas
Ankaralı et al. Channel independent physical layer security
Li Physical-layer security enhancement in wireless communication systems
JP2005142980A (ja) 無線通信装置
Yusuf Physical layer security schemes for wireless communication systems
Vo-Huu Robust Wireless Communication for Multi-Antenna, Multi-Rate, Multi-Carrier Systems
KR20170109948A (ko) 데이터 전송 보안이 강화된 데이터 전송 방법 및 이를 위한 무선 장치

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080605

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080605

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110412

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110613

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110705

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110726

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4794085

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140805

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees