JP4786053B2 - 防汚塗料組成物、防汚塗膜、該塗膜で被覆された基材、防汚方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体を含有する防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または海洋構造物に関し、さらに詳しくは、得られた塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体を含有する防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船舶、水中構造物または漁具、漁網に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖し、さらにそこにスライム(ヘドロ状物)が付着して腐敗を生じたり、さらに大型の付着生物が鉄鋼構造物などのような水中構造物の表面に付着・繁殖してその水中構造物の腐食防止用の塗膜などを損傷すると、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
従来では、このような被害を防止すべく、船底などには防汚性に優れた防汚塗料として、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有するものが塗布されていた。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0005】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類や奇形貝類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような錫を含有しない防汚塗料の開発が求められている。
【0006】
このような錫を含有しない防汚塗料としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸の金属塩系共重合体をビヒクル成分として使用したものが知られている(特公平7−64985号公報、特開平4−80205号公報、特開平4−80269号公報、特開平4−80270号公報、特開昭63−128008号公報、特開昭63−128084号公報、特開平1−16809号公報など参照)。
【0007】
具体的には、例えば特開平4−80269号公報には、下記式[i-1]で表される不飽和カルボン酸金属塩系共重合体から誘導される構成単位を有する重合体が開示され、特開平4−80205号公報には、下記式[i-2]で表される不飽和カルボン酸金属塩系共重合体から誘導される構成単位を有する重合体が開示されている。
【0008】
【化1】
【0009】
(式[i-1]、[i-2]中、R1は水素原子、メチルまたはアルコキシカルボニル基、R2は水素原子、またはアルコキシカルボニル基、Aは末端が酸イオンであるペンダント基(カルボキシル基)、Mは遷移金属元素(Cu、Zn)、L1は一塩基性有機酸イオン、mは金属元素Mの原子価、L2は有機配位子、nは金属元素Mの配位数を示す。)
このような不飽和カルボン酸金属塩系共重合体は、重合性単量体の(メタ)アクリル酸金属塩と不飽和カルボン酸エステル類などの他の単量体とを共重合させて得られる。
【0010】
このような不飽和カルボン酸金属塩系共重合体を含む防汚塗料は、上記したトリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(錫系共重合体)と亜酸化銅とを含有する防汚塗料中の錫系共重合体と同様にこの共重合体(ビヒクル)が、加水分解されて、水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」となる。しかしながら、上記特開平4−80269号公報などに記載の不飽和カルボン酸金属塩系共重合体は、海水のpHや液温などの使用条件によって消耗速度が変化しやすいので消耗速度を制御しにくく、しかも長期における塗膜の消耗速度が均一でないので、長期防汚性に優れた防汚塗膜が得ることができないという問題点があった。
【0011】
また、錫を含有しない防汚塗料としては、例えば、▲1▼特開平4-264170号公報、▲2▼特開平4-264169号公報、▲3▼特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。
【0012】
これらの文献に例示されたシリルエステル共重合体は、前記錫系共重合体と同様に「加水分解性自己研磨型塗料」のビヒクルとして使用可能であり、このような塗料を塗布・硬化してなる塗膜は、適度な塗膜消耗性を有し、かつ長期防汚性に優れているものの、この防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性などが充分満足しうるものではないという問題点がある。また。シリルエステル共重合体は、錫系共重合体よりはるかに高価であるという欠点もあった。
【0013】
さらにまた、非錫系共重合体をビヒクル成分として含む防汚塗料として、特公昭63−61989号公報には、下記式[ii]で表される不飽和単量体の単独重合体、または下記式[ii]で表される不飽和単量体と該単量体と共重合可能なカルボキシル基不含またはヒドロキシ基不含のエチレン性不飽和単量体とを共重合して得られる共重合体を含有する防汚塗料が開示されている。
【0014】
【化2】
【0015】
(式[ii]中、R1は水素原子または低級アルキル基を表し、R2はCH2またはC2H4を表し、R3は低級アルキル基を表す。)
そして、この特公昭63−61989号公報には、上記共重合体[ii]は、前記した錫系共重合体、(メタ)アクリル酸金属塩系共重合体、およびシリルエステル系重合体などと異なり、海水中で加水分解せずに、共重合体[ii]自体が溶解性を有する旨記載されている。しかしながら、このような溶解性重合体を含む防汚塗料を用いても、溶解が安定しないため、長期間均一な塗膜消耗性が要求され、かつ長期間にわたって防汚性を持続しうる防汚塗膜を船舶などの各種基材表面に形成することは困難であった。
【0016】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、得られた塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0017】
また本発明は、このような防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中構造物などを提供することを目的としている。
【0018】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、ビヒクル成分として
(i)下記式[1]または[2]で表されるエステル基を有するα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体、または
(ii)下記式[1]または[2]で表されるエステル基を有するα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と、該単量体と共重合可能な不飽和単量体と、の共重合体
をビヒクル成分(A)として含有することを特徴としている。
【0019】
−COO-R1-COO-R2 …[1]
−COO-R1-CO-R2 …[2]
(式中、R1は炭素数1〜30の二価炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の一価炭化水素基、炭素数1〜30のハロゲン含有一価炭化水素基、炭素数1〜30の酸素含有一価炭化水素基を示す。)
上記式[1]、[2]中のR1は、-CH2-または−CH(CH3)-であり、R2は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30の置換アルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基の何れかであることが好ましい。
【0020】
上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体はイタコン酸エステルであることが好ましい。
【0021】
上記共重合体(ii)は、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位と、該単量体と共重合可能な不飽和単量体から誘導される成分単位との合計100モル%に対し、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位を2〜70モル%の量で、該単量体と共重合可能な不飽和単量体から誘導される成分単位を30〜98モル%の量で含むことが好ましい。
【0022】
上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体(i)、またはα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(ii)は、GPCで測定した重量平均分子量が2000〜15万の範囲にあることが好ましい。
【0023】
このα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体(i)、またはα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(ii)は防汚塗料組成物100重量部中に1〜70重量部の量で含有されていることが好ましい。
【0024】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに(B)銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)を含有していることが好ましい。
【0025】
この銅および/または銅化合物(B)は、防汚塗料組成物100重量部中に、1〜70重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに、(C)有機防汚剤(銅ピリチオン類以外の銅化合物を除く)を含有していることが好ましい。
【0027】
上記有機防汚剤(C)としては、金属ピリチオン類、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2-n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0028】
この有機防汚剤(C)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.01〜70重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0029】
本発明に係る防汚塗料組成物では、さらに、(D)酸化亜鉛を含有していることが好ましい。
【0030】
上記酸化亜鉛(D)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.5〜35重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0031】
本発明に係る防汚塗料組成物では、さらに、(E)ロジン、ロジン誘導体、有機カルボン酸および有機カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の溶出促進成分を含有していることが好ましい。
【0032】
上記溶出促進成分(E)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜30重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0033】
本発明に係る防汚塗料組成物では、さらに、(F)ビニルエーテル系(共)重合体を含有していることが好ましい。
【0034】
上記ビニルエーテル系(共)重合体(F)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜10重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0035】
本発明に係る防汚塗料組成物では、さらに、(G)可塑剤を含有していることが好ましい。
【0036】
上記可塑剤(G)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.05〜20重量部の範囲で含有されていることが好ましい。このような可塑剤(G)としては、塩素化パラフィンおよび/または正リン酸エステルが好ましい。
【0037】
本発明に係る防汚塗料組成物では、さらに、(H)脱水剤を含有していることが好ましい。
【0038】
上記脱水剤(H)は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.01〜20重量部の範囲で含有まれていることが好ましい。
【0039】
本発明に係る防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物から形成されている。
【0040】
本発明に係る船舶、水中構造物または漁具・漁網は、上記防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜で表面を被覆されている。
【0041】
本発明に係る船舶、水中構造物または漁具・漁網の防汚方法は、船舶、水中構造物または漁具・漁網の基材表面に、上記防汚塗料組成物を塗布し、乾燥・硬化させて、得られた塗膜で、上記基材表面を被覆することを特徴としている。
【0042】
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記のようなα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体、または、前記単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体をビヒクル成分として含有しており、このような防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性、特に長期防汚性に優れ、しかもこれら特性がバランスよく優れた防汚塗膜が得られる。
【0043】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物、防汚塗膜、および該塗膜で被覆された基材、防汚方法について具体的に説明する。
【0044】
<α , β - 不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体>
本発明に係る防汚塗料組成物では、ビヒクル成分として、
(i)α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体、または
(ii)α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(以後、(i)と(ii)をまとめて単に「α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体」ということもある)を含んでいる。
【0045】
まず、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体について説明する。
【0046】
α , β - 不飽和ジカルボン酸エステル単量体
α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体は、少なくとも1個のカルボキシル基のα,β位に炭素・炭素不飽和結合を有する不飽和ジカルボン酸のエステルであり、さらに具体的には分子内に1個以上の重合性二重結合および2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸のエステル化合物であり、
下記式[1]または[2]で表されるエステル基を有している。
【0047】
−COO-R1-COO-R2 …[1]
−COO-R1-CO-R2 …[2]
式[1]、[2]中、R1は(炭素数1〜30の)二価炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の一価炭化水素基、炭素数1〜30のハロゲン含有一価炭化水素基、炭素数1〜30の酸素含有一価炭化水素基を示す。これらの炭化水素基は、直鎖状のものであっても、分枝状のものであってもよく、さらにシクロアルキル環、または芳香族環などの環状構造を含んでいてもよい。
【0048】
上記式[1]、[2]中のR1は、-CH2-または−CH(CH3)-であることが好ましい。
【0049】
特に、上記式[1]または[2]で表されるエステル基は、下記式[I]〜[III]で表される少なくとも1種のエステル基が好ましい。
【0050】
−COO−CH2COOR2 …[I]
−COO−CH(CH3)COOR2 …[II]
【0051】
【化3】
【0052】
(式中、R2は、上記と同様であり、具体的にはアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。)
アルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜10で、直鎖状または分枝状のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0053】
置換アルキル基としては、上記アルキル基の水素原子の一部がたとえば炭素数1〜6程度のアルコキシ基で置換されたものが挙げられ、たとえば2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(n-プロポキシ)エチル基、2-(iso-プロポキシ)エチル基、2-(n-ブトキシ)エチル基、2-(iso-ブトキシ)エチル基;3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−(n-プロポキシ)プロピル基、3−(iso-プロポキシ)プロピル基、3−(n-ブトキシ)プロピル基;3−(iso-ブトキシ)プロピル基;4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、4−(n-プロポキシ)ブチル基、4−(iso-プロポキシ)ブチル基、4−(n-ブトキシ)ブチル基;4−(iso-ブトキシ)ブチル基などが挙げられる。
【0054】
シクロアルキル基としては、炭素数3〜30、好ましくは3〜15のものが挙げられ、たとえばシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、tert-ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
アリール基としては、炭素数6〜30、好ましくは6〜15のものが挙げられ、たとえばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0056】
アラルキル基しては、炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜15のものが挙げられ、たとえばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0057】
なお、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体は、α,β-不飽和ジカルボン酸中の2個のカルボキシル基のうち、少なくともいずれか一方が、上記式[1]または[2] で表されるエステル基であればよい。この場合、他方のカルボキシル基は、炭素数1〜30アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などでエステル化されていることが望ましい。また、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体は、α,β-不飽和ジカルボン酸中の2個のカルボキシル基がいずれも、上記式[1]または[2]で表される少なくとも1種のエステル基となるようにエステル化されたものであってもよい。
【0058】
以上のようなα,β-不飽和ジカルボン酸エステル系の単量体としては、イタコン酸エステル系、マレイン酸エステル系、フマル酸エステル系、シトラコ二塩基酸エステル系単量体などが挙げられる。
【0059】
イタコン酸エステル系単量体は、例えば下記式[A-1]〜[A-8]で表される。
【0060】
【化4】
【0061】
式[A-1]〜[A-8]中、R1およびR2は、上記と同様であり、同一分子中あるいは異なる分子中のR1およびR2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0062】
このようなイタコン酸エステル系単量体として具体的には、
イタコン酸モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノエチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノn-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-プロピル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-プロピル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-プロピル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-プロピル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノn-ブチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノn-ブチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(iso-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノiso-ブチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノメチル−モノ(シクロヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノシクロヘキシル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸モノシクロヘキシル−モノ(シクロヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノメチル−モノ(フェノキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノメチル−モノ(ベンジルオキシカルボニルメチル)エステル;イタコン酸モノメチル−モノ(2-メトキシエトキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に1個のグリコール酸エステル基を含有するイタコン酸エステル単量体(上記式[A-1]および[A-2]に相当);
イタコン酸ビス(メトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(エトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(iso-ブトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(フェノキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(2-メトキシエトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(2-エトキシエトキシカルボニルメチル)エステル、イタコン酸ビス(ベンジルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に2個のグリコール酸エステル基を含有するイタコン酸エステル単量体(上記式[A-3]に相当);
イタコン酸モノメチル−モノ(1-メトキシカルボニルエチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ[1-(エトキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に1個の乳酸エステル基を含有するイタコン酸エステル単量体(上記式[A-1]および[A-2]に相当);
イタコン酸ビス[1-(メトキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸ビス[1-(エトキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸ビス[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸ビス[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、イタコン酸ビス[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に2個の乳酸エステル基を含有するイタコン酸エステル単量体(上記式[A-3]に相当);
イタコン酸モノメチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(2-オキソブチル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(2-オキソペンチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(2-オキソブチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(2-オキソペンチル)エステル、イタコン酸モノn-プロピル−モノ(2-オキソプロピルエステル)、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソブチル)エステル、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソペンチル)エステル、イタコン酸モノiso-プロピル−モノ(2-オキソプロピルエステル)、イタコン酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソプロピルエステル)、イタコン酸モノn-ヘキシル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、イタコン酸モノメチル−モノ(2-オキソブチル)エステル、イタコン酸モノエチル−モノ(ベンゾイルメチル)エステルなどの1分子中に1個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有する単量体(上記式[A-4]および[A-5]に相当);
イタコン酸ビス(2-オキソプロピル)エステル、イタコン酸ビス(2-オキソブチル)エステル、イタコン酸ビス(2-オキソペンチル)エステル、イタコン酸ビス(ベンゾイルメチル)エステルなどの1分子中に2個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有するイタコン酸エステル単量体(上記式[A-6]に相当)等が挙げられる。
【0063】
本発明では、これらのイタコン酸エステルが、2種以上併用されてもよい。
【0064】
マレイン酸エステル系単量体は、例えば下式[B-1]〜[B-5]で表される。
【0065】
【化5】
【0066】
式[B-1]〜[B-5]中、R1およびR2は、上記と同様であり、同一分子中あるいは異なる分子中のR1およびR2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0067】
マレイン酸エステル系単量体としては、具体的に、
マレイン酸モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノiso-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル;マレイン酸モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル;マレイン酸モノメチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル;マレイン酸モノメチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル;マレイン酸モノメチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル;マレイン酸モノメチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸モノn-ヘキシル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に1個のグリコール酸エステル基を含有するマレイン酸エステル単量体(上記式[B-1]に相当);
マレイン酸ビス(メトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸ビス(エトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸ビス(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸ビス(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、マレイン酸ビス(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に2個のグリコール酸エステル基を含有するマレイン酸エステル単量体(上記式[B-2]に相当);
マレイン酸モノメチル−モノ[1-(メトキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸モノエチル−モノ[1-(エトキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸モノn-プロピル−モノ[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸モノn-ヘキシル−モノ[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に1個の乳酸エステル基を含有するマレイン酸エステル単量体(上記式[B-1]に相当);
マレイン酸ビス(1-メトキシカルボニルエチル)エステル、マレイン酸ビス(1-エトキシカルボニルエチル)エステル、マレイン酸ビス[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸ビス[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、マレイン酸ビス[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に2個の乳酸エステル基を含有するマレイン酸エステル単量体(上記式[B-2]に相当);
マレイン酸モノメチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、マレイン酸モノエチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、マレイン酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、マレイン酸モノn-ヘキシル−モノ(2-オキソプロピル)エステルなどの1分子中に1個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有する単量体(上記式[B-3]に相当);
マレイン酸ビス(2-オキソプロピル)エステル、マレイン酸ビス(2-オキソブチル)エステルなどの1分子中に2個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有するマレイン酸エステル単量体(上記式[B-4]に相当)等が挙げられる。
【0068】
これらのマレイン酸エステル単量体は、2種以上併用されてもよい。
【0069】
フマル酸エステル系単量体は、例えば下式[C-1]〜[C-5]で表される。
【0070】
【化6】
【0071】
式[C-1]〜[C-5]中、R1およびR2は、上記と同様であり、同一分子中あるいは異なる分子中のR1およびR2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0072】
フマル酸エステル系単量体として、具体的には、
フマル酸モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル;フマル酸モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル;フマル酸モノメチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル;フマル酸モノメチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル;フマル酸モノメチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル;フマル酸モノメチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸モノn-ヘキシル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に1個のグリコール酸エステル基を含有するフマル酸エステル単量体(上記式[C-1]に相当);
フマル酸ビス(メトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(エトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(iso-ブトキシカルボニルメチル)エステル、フマル酸ビス(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に2個のグリコール酸エステル基を含有するフマル酸エステル単量体(上記式[C-2]に相当);
フマル酸モノメチル−モノ(1-メトキシカルボニルエチル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(1-エトキシカルボニルエチル)エステル、フマル酸モノn-プロピル−モノ[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、フマル酸モノn-ヘキシル−モノ[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に1個の乳酸エステル基を含有するフマル酸エステル単量体(上記式[C-1]に相当);
フマル酸ビス(1-メトキシカルボニルエチル)エステル、フマル酸ビス(1-エトキシカルボニルエチル)エステル、フマル酸ビス[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、フマル酸ビス[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、フマル酸ビス[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に2個の乳酸エステル基を含有するフマル酸エステル単量体(上記式[C-2]に相当);
フマル酸モノメチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、フマル酸モノエチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、フマル酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、フマル酸モノn-ヘキシル−モノ(2-オキソプロピル)エステルなどの1分子中に1個の2-ケトアルコールエステル基を含有する単量体(上記式[C-3]に相当);
フマル酸ビス(2-オキソプロピル)エステル、フマル酸ビス(2-オキソブチル)エステルなどの1分子中に2個の2-ケトアルコールエステル基を含有する単量体(上記式[C-4]に相当)等が挙げられる。
【0073】
これらのフマル酸エステル単量体は、2種以上併用されてもよい。
【0074】
シトラコ二塩基酸エステル系単量体は、例えば下式[D-1]〜[D-8]で表される。
【0075】
【化7】
【0076】
式[D-1]〜[D-8]中、R1およびR2は、上記と同様であり、同一分子中あるいは異なる分子中のR1およびR2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0077】
シトラコ二塩基酸エステル系単量体として、具体的には、
シトラコン酸モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノiso-プロピル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル;シトラコン酸モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)エステル;シトラコン酸モノメチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル;シトラコン酸モノメチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル;シトラコン酸モノメチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル;シトラコン酸モノメチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノn-ヘキシル−モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸モノ(メトキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(メトキシカルボニルメチル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(メトキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(メトキシカルボニルメチル)−モノiso-プロピルエステル、シトラコン酸−モノ(メトキシカルボニルメチル) −モノn-ブチルエステル;シトラコン酸モノ(エトキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(エトキシカルボニルメチル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(エトキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(エトキシカルボニルメチル)−モノn-ブチルエステル;シトラコン酸モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(n-プロポキシカルボニルメチル) −モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(n-プロポキシカルボニルメチル)−モノn-ブチルエステル;シトラコン酸モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(iso-プロポキシカルボニルメチル)−モノn-ブチルエステル;シトラコン酸モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(n-ブトキシカルボニルメチル)−モノn-ブチルエステル;シトラコン酸モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)−モノn-ブチルエステル、シトラコン酸モノ(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)−モノn-ヘキシルエステルなどの1分子中に1個のグリコール酸エステル基を含有するシトラコン酸エステル単量体(上記式[D-1]または[D-2]に相当);
シトラコン酸ビス(メトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸ビス(エトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸ビス(n-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸(iso-プロポキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸ビス(iso-ブトキシカルボニルメチル)エステル、シトラコン酸ビス(n-ヘキシルオキシカルボニルメチル)エステルなどの1分子中に2個のグリコール酸エステル基を含有するシトラコン酸エステル単量体(上記式[D-3]に相当);
シトラコン酸モノメチル−モノ[1-(メトキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ[1-(エトキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸モノn-プロピル−モノ[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸モノn-ヘキシル−モノ[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸モノ[1-(メトキシカルボニル)エチル]−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ[1-(エトキシカルボニル)エチル]−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]−モノn-プロピルエステル、シトラコン酸モノ[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]−モノn-ブチルエステル、シトラコン酸モノ[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]−モノn-ヘキシルエステルなどの1分子中に1個の乳酸エステル基を含有するシトラコン酸エステル単量体(上記式[D-1]または[D-2]に相当);
シトラコン酸ビス(1-メトキシカルボニルエチル)エステル、シトラコン酸ビス(1-エトキシカルボニルエチル)エステル、シトラコン酸ビス[1-(n-プロポキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸ビス[1-(n-ブトキシカルボニル)エチル]エステル、シトラコン酸ビス[1-(n-ヘキシルオキシカルボニル)エチル]エステルなどの1分子中に2個の乳酸エステル基を含有するシトラコン酸エステル単量体(上記式[D-3]に相当);
シトラコン酸モノメチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、シトラコン酸モノエチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、シトラコン酸モノn-ブチル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、シトラコン酸モノn-ヘキシル−モノ(2-オキソプロピル)エステル、シトラコン酸モノ(2-オキソプロピル)−モノメチルエステル、シトラコン酸モノ(2-オキソプロピル)−モノエチルエステル、シトラコン酸モノ(2-オキソプロピル)−モノn-ブチルエステル、シトラコン酸モノ(2-オキソプロピル)−モノn-ヘキシルエステルなどの1分子中に1個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有する単量体(上記式[D-4]または[D-5]に相当);
シトラコン酸ビス(2-オキソプロピル)エステル、シトラコン酸ビス(2-オキソペンチル)エステル、シトラコン酸ビス(2-オキソブチル)エステルなどの1分子中に2個の2-ケトアルコールエステル基(オキソアルキル基)を含有するシトラコン酸エステル単量体(上記式[D-6]に相当)等が挙げられる。
【0078】
これらのシトラコ二塩基酸エステル単量体は、2種以上併用されてもよい。
【0079】
これらのα,β-不飽和ジカルボン酸エステル系単量体のうち、イタコン酸エステル系単量体が、ラジカル重合性が高いため特に好ましい。
【0080】
また、以上のようなα,β-不飽和ジカルボン酸エステル系の単量体は、2種以上併用してもよく、例えばイタコン酸エステル系単量体とマレイン酸エステル系との組み合わせ、イタコン酸エステル系単量体とフマル酸エステル系との組み合わせなどが挙げられる。
【0081】
α , β - 不飽和ジカルボン酸エステル単量体と共重合可能な単量体
本発明に係る防汚塗料組成物において、ビヒクル成分として使用されるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体が、上記したα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と、該単量体と共重合可能な前記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル以外の不飽和単量体(その他の単量体という)との共重合体である場合、「その他単量体」としては、公知のものを特に制限なく使用できる。このような「その他単量体」として具体的には、
▲1▼スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンのような、各種のエチレン系芳香族モノマー類(芳香族ビニル系モノマー類);
▲2▼メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレート;
またはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートもしくはベンジル(メタ)アクリレートなどの各種のアルキル(メタ)アクリレート類;
▲3▼ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレートまたはジブチルイタコネートなどの、マレイン酸、フマル酸ないしはイタコン酸などによって代表されるような、各種のジカルボン酸類と、1価アルコール類との、種々のジエステル類;
▲4▼2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;またはジ−2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2-ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートもしくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど;さらには、「プラクセルFAもしくはFM」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマー類の商品名]などで代表される、いわゆるε−カプロラクトン系のモノマー類のような各種のエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル類;
▲5▼N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドのようなカルボン酸アミド系単量体;
▲6▼メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのエーテル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート類;
▲7▼酢酸ビニル、安息香酸ビニルまたは「ベオバ」〔オランダ国シェル社製の、分枝状(分枝状)脂肪族モノカルボン酸類のビニルエステルの商品名〕などの、各種のビニルエステル類;
▲8▼グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレートまたは(メタ)アリルグリシジルエーテルなどのような、各種のグリシジル基含有ビニルモノマー類;
▲9▼(メタ)アクリル酸もしくはクロトン酸またはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸のような、各種の不飽和カルボン酸類または不飽和ジカルボン酸類など;さらには、これらの不飽和ジカルボン酸類と、1価アルコールとのモノエステル類(ハーフ・エステル類)のような、種々のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸類;
(10)ビニルエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはトリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどをはじめ、さらには、「KR−215もしくはX−22-5002」[信越化学工業(株)製品]などの、各種のシリコン系モノマー類;
(11)トリiso-プロピルシリルアクリレ−ト、トリn-ブチルシリルアクリレ−ト、トリsec-ブチルシリルアクリレ−トのようなシリルエステル基を含有する単量体類;などである。
【0082】
α,β-不飽和ジカルボン酸エステルとその他単量体との共重合体では、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位とその他単量体から誘導される成分単位との合計100モル%に対し、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位を、0を超えて70モル%以下、好ましくは2〜70モル%、さらに好ましくは10〜70モル%の量で、その他単量体から誘導される成分単位を、30モル%以上100モル%未満、好ましくは30〜98モル%、好ましくは35〜92モル%の量で含むことが望ましい。
【0083】
以上、説明した本発明で使用されるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体は、GPCで測定した重量平均分子量が2000〜15万、好ましくは5000〜10万の範囲にあることが望ましい。
【0084】
このようなα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体は、構成単位内に2個のエステル基を有し、しかもその少なくとも1つが、上記式[1]または式[2]で表されるエステル基であるので、このような共重合体を用いると、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性、特に長期防汚性に優れ、しかもこれら特性がバランスよく優れた防汚塗膜を得ることができるとともに、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、しかも塗膜性状も良好であるという優れた防汚塗膜を形成することができる。
【0085】
これに対し、上記式[1]または式[2]で表されるエステル基を有していない、たとえば、メタクリル酸メチル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルなどのエステル類またはこれらのカルボン酸金属塩類から誘導される構成単位を有する重合体では、加水分解速度が制御しにくく、しかも長期間の塗膜の消耗が均一でなく、その結果、長期防汚性に優れた防汚塗膜が得ることができない。
【0086】
また、特公昭63−61989号公報に記載されているように、各構成単位内にエステル基を一個しか有さない不飽和モノカルボン酸系共重合体では、−COO-R1-COO-R2基を各構成単位内に有していても、重合体自体が溶解し、しかも重合体の溶解が安定しないので、長期にわたる塗膜消耗性が均一ではなく、このため長期間にわたって防汚性を維持する防汚塗膜を形成することはできない。
【0087】
(共)重合体の製造
本発明で使用されるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体は、上記したα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体、および必要に応じてその他単量体を、溶液ラジカル重合法、懸濁重合、塊状重合などのような公知の方法によって(共)重合させることによって製造される。前記重合法のうち、特に、溶液ラジカル重合法が簡便であるため、好適である。
【0088】
溶液ラジカル重合法によりα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体を製造する際には、通常、有機溶剤が使用される。
【0089】
有機溶媒としては、例えば、
(イ):トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」または「ソルベッソ150」(アメリカ国エクソン社製品)のような、各種の芳香族炭化水素系溶剤類;
(ロ):「スワゾール310」[丸善石油(株)製品]または「LAWS」(シェル社製品)のような、各種の脂肪族−芳香族炭化水素混合溶剤類;
(ハ):酢酸エチル、酢酸ブチルまたはセロソルブアセテートのような、各種のエステル系溶剤類;
(ニ):アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンのような、各種のケトン系溶剤類;
(ホ):「EEP」(アメリカ国イーストマン・コダック社製品)またはブチルセロソルブのような、各種のエーテル系溶剤類;などである。
【0090】
これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0091】
これらの有機溶媒は、得られた重合体が、10〜75重量%、好ましくは15〜70重量%の範囲の濃度で溶液に含まれるような量で使用される。
【0092】
さらに、上記した溶液ラジカル重合を行なう際に用いられるラジカル重合開始剤類としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)、tert-ブチルパーベンゾエート(TBPB)、tert-ブチルハイドロパーオキシド(TBPO)、ジ-tert-ブチルパーオキシド(DTBPO)、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートまたはクメンハイドロパーオキシド(CHP)などが例示される。
【0093】
溶液ラジカル重合条件は、α,β-不飽和ジカルボン酸エステルなどが(共)重合すれば特に制限されるものではないが、通常は、窒素などの不活性ガス気流下、30〜250℃、好ましくは50〜150℃の温度で、1時間〜50時間、好ましくは2時間〜24時間反応させればよい。
【0094】
反応終了後のα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体溶液は、必要に応じて、未反応モノマー、不純物、異物などを取り除いてもよく、さらに他の溶媒に置換してもよい。また、反応終了後のα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体溶液から、減圧乾燥などの手段によって溶媒を除去すれば、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体を固体として取り出すことができる。
【0095】
なお、反応終了後のα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体溶液は、溶媒を除去せずとも、そのまま、必要に応じて後述する銅および/または銅化合物(B)などの各種成分を配合すれば、防汚塗料組成物として使用することもできる。
【0096】
<防汚塗料組成物およびその製造>
[防汚塗料組成物]
本発明に係る防汚塗料組成物は、自己研磨性を有する塗膜形成成分としての上記(i)α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体、または(ii)α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(すなわち、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体)(A)をビヒクル成分として含有している。
【0097】
このようなα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体(A)は、防汚塗料組成物100重量部中に、通常、1〜70重量部、好ましくは3〜50重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0098】
このように本発明に係る防汚塗料組成物は、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体(A)を必須成分として含有するが、該共重合体(A)に加えて、必要により、銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)(B)、ピリチオン類等の有機防汚剤に代表される有機防汚剤(C)、酸化亜鉛(D)、溶出促進成分(E)、ビニルエーテル系(共)重合体(F)、可塑剤(G)、脱水剤(H)等が含有されている。このような成分(A)を含有する防汚塗料組成物、さらには、成分(B)〜(H)のいずれか1種以上、好ましくは全成分を含有する防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性、特に長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる。
【0099】
以下、成分(B)〜(H)等について順次詳説する。
【0100】
[銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)(B)]
本発明に係る防汚塗料組成物では、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体(A)とともに、防汚剤を含んでいてもよく、防汚剤としては、無機系、有機系の何れのものであってもよく、従来より公知のものを広く用いることができるが、本発明においては、銅および/または銅化合物(B)が好ましい。上記銅化合物としては、その分子量が通常63.5〜2000、好ましくは63.5〜1000のものが用いられる。
【0101】
このような銅化合物(銅ピリチオン類を除く。)としては、有機系、無機系の銅化合物の何れであってもよく、無機系の銅化合物としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン化銅(チオシアン酸第一銅、ロダン銅)、塩基性硫酸銅、塩化銅、酸化銅等が挙げられ、
有機系の銅化合物としては、例えば、塩基性酢酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、カツパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、ナフテン酸銅、ロジン銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅などが挙げられ、好ましくは無機系の亜酸化銅、チオシアン化銅(ロダン銅)が用いられる。
【0102】
このような銅化合物は、銅に代えて、あるいは銅とともに1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0103】
このような銅および/または銅化合物は、この防汚塗料組成物100重量部中に、合計で通常、1〜70重量部、好ましくは2〜65重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、該銅および/または銅化合物は、合計で通常、3〜1400重量部、好ましくは10〜1300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0104】
この銅および/または銅化合物の含有量が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性に優れるようになる傾向がある。
【0105】
本発明においては、防汚剤として、上記銅および/または銅化合物とともに、あるいは上記銅および/または銅化合物に代えて、有機防汚剤(C)が含まれていてもよい。
【0106】
[有機防汚剤(C)]
有機防汚剤(C)としては、従来より公知の有機防汚剤が挙げられ、具体的には、例えば、金属ピリチオン類、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の化合物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン等を挙げることができる。
【0107】
金属ピリチオン類としては、下記式[IV]で示される金属-ピリチオン類[式中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を示し、Mは、Zn、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、nは価数を示す]などを挙げることができる。
【0108】
【化8】
【0109】
これらの有機防汚剤のうちでは、金属ピリチオン類、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2-n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0110】
特に、有機防汚剤としては、銅ピリチオン(上記式[IV]中、MがCu)、ジンクピリチオン(上記式[IV]中、MがZn)、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2-n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0111】
本発明においては、このような有機防汚剤を、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0112】
このような有機防汚剤(C)は、この防汚塗料組成物100重量部中に、合計で通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、有機防汚剤(C)は、合計で通常、0.07〜1200重量部、好ましくは0.1〜1000重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0113】
また、この防汚塗料組成物に含まれる銅および/または銅化合物、有機防汚剤などの合計含有量は、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、外航−内航用、各種海水域用、木造−FRP−鋼鉄船用等)などにもより一概に決定されないが、上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、防汚剤総量として通常10〜1400重量部の量で、好ましくは20〜1300重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0114】
この防汚剤総量が10重量部未満では、防汚性に劣ることがあり、また1400重量部を超えるとそれ以上の防汚性は期待できない上に、耐クラック性に劣ることがある。
【0115】
例えば、防汚剤として銅ピリチオン、ジンクピリチオン等のピリチオン類と亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、ピリチオン類は、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、この亜酸化銅は、上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。
【0116】
[酸化亜鉛(亜鉛華)(D)]
このような防汚塗料組成物には、酸化亜鉛(亜鉛華)(D)が含有されていてもよい。このように酸化亜鉛が配合された防汚塗料組成物では、得られる塗膜強度が向上し、塗膜の消耗速度を効果的に制御できる。
【0117】
また、このような酸化亜鉛は、消耗速度調整、塗膜硬度調整の観点から、この防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.5〜35重量部、好ましくは1〜25重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0118】
[溶出促進成分(E)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、溶出促進成分(E)が含まれていてもよい。かかる溶出促進成分(C-4)は塗膜の溶出性を高めることにより塗膜の消耗速度を速くする機能を有する。かかる溶出促進成分(C-4)の代表的なものとして、ロジン、ロジン誘導体、有機カルボン酸および有機カルボン酸金属塩などが挙げられる。
【0119】
ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。ロジン誘導体としては、例えば、不均化ロジン、低融点不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、アルデヒド変性ロジン、ロジンのポリオキシアルキレンエステル、還元ロジン(ロジンアルコール)、ロジンの金属塩(ロジンの銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩など)、ロジンアミン等が挙げられる。これらのロジンおよびその誘導体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0120】
有機カルボン酸としては、例えば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。有機カルボン酸の金属塩としては、Cu塩、Zn塩、Mg塩、Ca塩等が挙げられる。
【0121】
これらの溶出促進成分のうちでは、ロジンまたはその誘導体が好ましい。これらの溶出促進成分は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0122】
これらの溶出促進成分は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜30重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部の量で含有されていることが望ましい。溶出促進成分の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0123】
また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、該溶出促進成分は、合計で通常、0.3〜600重量部、好ましくは2〜300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0124】
この溶出促進成分が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性や塗膜の消耗性に優れるようになる傾向がある。
【0125】
[ビニルエーテル系(共)重合体(F)]
ビニルエーテル系(共)重合体は、下記式[V]で表されるビニルエーテル成分単位を有し、得られる塗膜の耐クラック性、耐剥離性、溶出速度安定性等の向上に寄与し、塗膜形成成分としても機能する。
【0126】
【化9】
【0127】
式[V]中、Rは炭化水素基を示す。この式[V]中の炭化水素基Rとしては、通常炭素数が1〜25の脂肪族系、芳香族系の炭化水素基が挙げられ、直鎖状でも分岐を有していてもよく、またシクロヘキシル環に代表されるような脂環構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基(炭素数が2以上の場合)を構成する炭素原子C1は、該アルキル基中に含まれ炭素原子C1に隣接する炭素原子C2と、酸素原子を介してエーテル結合(C1−O−C2)を形成していてもよく、また、炭化水素基を構成する水素原子は、他の官能基(−OH、−NH2 など)にて置換されていてもよい。
【0128】
より具体的には、上記式[V]中のRは1価の炭化水素基を示し、1価の炭化水素基としては、前述したようなアルキル基特に炭素数1〜18程度のアルキル基、置換されていてもよい前述したようなフェニル基等が挙げられる。
【0129】
上記ビニルエーテル系(共)重合体は、上記式[V]で表されるビニルエーテル成分単位のみを有するビニルエーテルの単独重合体、またはこのビニルエーテル成分単位[V]を主成分として50重量%以上の量で含有するビニルエーテル系共重合体(これらをまとめて、単に「ビニルエーテル系(共)重合体」とも言う。)であることが望ましい。
【0130】
上記ビニルエーテル系(共)重合体として具体的には、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどを例示することができる。
【0131】
このようなビニルエーテル系(共)重合体(F)は、防汚塗料組成物100重量部中に、合計で通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、該ビニルエーテル系(共)重合体は、通常、0.3〜60重量部、好ましくは0.6〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0132】
このビニルエーテル系(共)重合体が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、得られる塗膜の耐クラック性、耐剥離性、消耗速度安定性に優れるようになる傾向がある。
【0133】
上記ビニルエーテル成分単位[V]は、下記式:
H2C=CHO−R …[V-a]
(式[V-a]中、Rは上記式[V]中のRと同様の炭化水素基を示す。)
で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位である。
【0134】
このようなビニルエーテル[V-a]としては、具体的には、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどを例示することができる。
【0135】
また、ビニルエーテル系(共)重合体に替えて、あるいはビニルエーテル系(共)重合体とともに、各種の親水性基含有重合体を使用することができる。このような親水性基含有重合体としては、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体のような各種(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体などが挙げられ、これらの使用によって、ビニルエーテル系(共)重合体と同様の効果を得ることが可能である。
【0136】
[可塑剤(G)]
可塑剤としては、正リン酸エステル、塩素化パラフィン、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等、通常、塗料用に用いられる可塑剤が使用される。これらの可塑剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0137】
このような可塑剤を配合する場合には、可塑剤は、この防汚塗料組成物100重量部中に、例えば、0.05〜20重量部の量で配合される。
【0138】
これらの可塑剤は、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜(本明細書中では、「防汚塗膜」とも言う)の耐クラック性の向上に寄与するが、これら可塑剤のうちで、塩素化パラフィンまたは正リン酸エステルトリクレジルフォスフェート(TCP)が好ましく用いられる。
【0139】
この塩素化パラフィンとしては、直鎖状でもよく分岐を有していていてもよく、室温で液状でも固体(粉体)でもよいが、その平均炭素数が通常、8〜30、好ましくは10〜26のものが好ましく用いられ、その数平均分子量が通常、200〜1200、好ましくは300〜1100であり、粘度が通常1以上(ポイズ/25℃)、好ましくは1.2以上(ポイズ/25℃)であり、その比重が1.05〜1.80/25℃、好ましくは1.10〜1.70/25℃のものが好ましく用いられる。このような炭素数の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。なお塩素化パラフィンの炭素数が8〜30の範囲にあると、クラックの抑制効果、塗膜表面の消耗性(更新性)および防汚性に優れるようになる。
【0140】
また、この塩素化パラフィンの塩素化率(塩素含有量)は、通常35〜75重量%、好ましくは35〜65重量%であることが好ましい。このような塩素化率の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。このような塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製の「トヨパラックス150」、「トヨパラックスA-70」などが挙げられる。本発明においては、このような塩素含有率、炭素数などの異なる2種以上の塩素化パラフィンを適宜組み合わせて用いることができる。このように2種以上の塩素化パラフィンを組み合わせて用いる場合には、上記塩素化パラフィンの炭素数、塩素化率は、防汚塗料組成物中に含まれるこれらの塩素化パラフィンの炭素数あるいは塩素化率の平均値で示す。
【0141】
(G)可塑剤として、このような塩素化パラフィンを用いる場合は、防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、該塩素化パラフィンは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。また、この塩素化パラフィンの量がこの範囲にあると、塗膜のクラックの抑制効果、塗膜強度および耐ダメージ(衝撃)性に優れるようになる。
【0142】
また、(G)可塑剤として、正リン酸エステルを用いる場合、正リン酸エステルとしては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(クロロエチル)フォスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)フォスフェート、トリ(ブトキシエチル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)フォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどが挙げられる。このうち特に、TCP(トリクレジルフォスフェート)が好ましい。
【0143】
このような正リン酸エステルを用いる場合、防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0144】
また防汚塗料組成物中に含まれるα,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、正リン酸エステルは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0145】
このように可塑剤(G)として正リン酸エステルが含まれていると、割れ、刷がれの少ない塗膜が形成でき、また塗膜の消耗度を速めることができる。
【0146】
[脱水剤(H)]
この防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤が配合されていてもよい。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
【0147】
脱水剤としては、具体的には、例えば、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブT1)等が挙げられ、このうちで無機脱水剤(G)としては、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0148】
このような脱水剤は、上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体100重量部に対して、通常、0.02〜100重量部、好ましくは0.2〜50重量部の量で配合することが好ましい。
【0149】
また、このような脱水剤は、この防汚塗料組成物100重量部中に、合計で通常、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜8重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量で脱水剤が防汚塗料組成物中に含まれていると、貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0150】
<その他の成分>
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記成分以外に、タレ止め・沈降防止剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、上記ビニルエーテル系(共)重合体を除くアクリル樹脂などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤など、下記のような成分を含有していてもよい。
【0151】
[タレ止め・沈降防止剤]
タレ止め・沈降防止剤としては、従来より公知のものが任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロンA-603-20X」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0152】
[顔料、溶剤]
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ、有機赤色顔料、タルクなど)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
【0153】
顔料の形態として針状、扁平状、鱗片状のものを使用することにより塗膜の耐クラック性を一層向上させることが可能である。
【0154】
溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
【0155】
[各種樹脂]
各種樹脂としては、アクリル酸(共)重合体、アクリル酸エステル(共)重合体、メタアクリル酸(共)重合体、メタアクリル酸エステル(共)重合体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共)重合体などのアクリル樹脂が挙げられる。さらに、例えば、特開平4-264170号公報、特開平4-264169号公報、特開平4-264168号公報、特開平2-196869号公報、特表昭60-500452号、特開昭63-215780号公報、特表昭60-500452号(特公平5-32433号公報)、特開平7-18216号公報に記載されてシリルエステル系(共)重合体が、本発明に係る防汚塗料組成物に含まれていてもよい。
【0156】
さらにまた、本発明に係る防汚塗料組成物は、特公昭63−61989号公報に記載された下式[vi]で表される不飽和単量体の単独重合体または式[vi]で表される不飽和単量体と該単量体と共重合可能なカルボキシル基不含またはヒドロキシ基不含のエチレン性不飽和単量体とを共重合して得られる共重合体を含有していてもよい。
【0157】
【化10】
【0158】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜15の低級アルキル基を表し、R2はCH2またはC2H4を表し、R3は低級アルキル基を表す。)
さらに、本発明に係る防汚塗料組成物は、下式[vii]で表される不飽和単量体の単独重合体または式[vii]で表される不飽和単量体と該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を含有していてもよい。
【0159】
【化11】
【0160】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜15の低級アルキル基を表し、R2はCH2またはC2H4を表し、R3は低級アルキル基を表す。)
[防汚塗料組成物の製造]
本発明に係る防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体(A)と、該(共)重合体(A)100重量部に対して、3〜1400重量部の量の銅および/または銅化合物(B)と、0.07〜1200重量部の有機防汚剤(C)と、2〜700重量部の量の酸化亜鉛(D)と、0〜600重量部の量の溶出促進成分(E)と、0.3〜200重量部の量のビニルエーテル系(共)重合体(F)と、1〜50重量部の量の可塑剤(G)と、0.03〜200重量部の量の脱水剤(例:無水石膏、モレキュラーシーブ)(H)と、適宜量で用いられるタレ止め・沈降防止剤、顔料、溶剤などとを一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合・分散等すればよい。
【0161】
この防汚塗料組成物は、一液性で貯蔵安定性に優れ、防汚塗料の付着性、耐久性、防汚性といった各種要求性能を満足するものである。
【0162】
上記のような防汚塗料組成物を水中・水上構造物すなわち海洋構造物(例:原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体(基材)の表面に常法に従って1回〜複数回塗布・硬化させれば、耐クラック性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または海洋構造物などが得られる。なお、この防汚塗料組成物は、直接上記船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、海洋構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、海洋構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、概ね、30〜150μm/回程度である。例えば、通常1回の塗装で30〜150μmなる厚さの塗膜を形成し、1回ないし数回の塗装を行うことにより必要な厚さを有する塗膜が形成される。
【0163】
【発明の効果】
本発明によれば、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル(共)重合体(A)を必須の塗膜形成成分として含有し、必要に応じてその上銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)(B)、ピリチオン類等の有機防汚剤に代表される有機防汚剤(C)、酸化亜鉛(D)、ロジンなどの溶出促進成分(E)、ビニルエーテル系(共)重合体(F)、可塑剤(G)、 無機脱水剤(H)等をも含有する防汚塗料組成物を船体、海洋構造物のような被塗物表面に塗布すれば、得られた塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜がゲル化したりブリスターが発生することなく塗膜性状に優れ、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性、特に長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗膜が得られる。
【0164】
また本発明によれば、このような優れた特性を有する塗膜および該塗膜で被覆され、上記特性を有する船体または海洋構造物が提供される。
【0165】
また本発明によれば、このような防汚塗料組成物を用いた、環境汚染の虞の極めて少ない防汚方法が提供される。
【0166】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、「部」は「重量部」の意味である。
【0167】
実施例および比較例で使用される共重合体の分子量は以下の方法によって測定した。
【0168】
分子量測定
機種:液体クロマトグラフLC−08(日本分析工業(株)製)
カラム:SHODEX (A-805)+(A-804)+(A-803)+(A-802) (昭和電工(株)製ポリスチレン充填カラム)
溶出溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1ml/min
濃度:0.4%
測定温度:25℃
測定値処理:分子量320未満の成分は除外して、計算した数値を測定値とした。
【0169】
[ポリマーの製造例]
共重合体QA−1の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0170】
次いで、同温度で、イタコン酸モノメチル-モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)エステル〔CH2=C(COOCH3)CH2COOCH2COOC4H9〕の450部と、メチルメタクリレートの550部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(QA−1)を得た。
【0171】
得られた共重合体溶液(QA−1)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がBで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を24.1モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、9,376であった。
【0172】
共重合体QA−2の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0173】
次いで、同温度で、イタコン酸モノメチル-モノ(メトキシカルボニルメチル)エステル〔CH2=C(COOCH3)CH2COOCH2COOCH3〕の450部と、メチルメタクリレートの550部、および酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(QA−2)を得た。
【0174】
得られた共重合体溶液(QA−2)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がM2−Nで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を27.5モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は9,772であった。
【0175】
共重合体QA−3の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0176】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステルの450部と、メチルメタクリレートの550部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート25部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(QA−3)を得た。
【0177】
得られた共重合体溶液(QA−3)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がL2−Mで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を18.6モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は15,461であった。
【0178】
共重合体QA−4の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0179】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステルの350部と、メチルメタクリレートの650部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート25部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(QA−4)を得た。
【0180】
得られた共重合体溶液(QA−4)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がTで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を13.1モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は17,412であった。
【0181】
共重合体QA−5の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0182】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(n-ブトキシカルボニルメチル)エステルの450部と、メチルメタクリレートの450部、2-メトキシエチルアクリレート(MEA)100部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート20部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(QA−5)を得た。
【0183】
得られた共重合体溶液(QA−5)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がR3−Sで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を19.3モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は24,751であった。
共重合体QA−6の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン200部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)200部および酢酸n-ブチル350部を仕込んで、窒素ガスの通気下に80℃に昇温した。
【0184】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(n-メトキシカルボニルメチル)エステルの400部と、メチルメタクリレートの400部、酢酸ビニル150部、N−メトキシメチルアクリルアミド50部、酢酸n-ブチル250部、および重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート30部とからなる混合物を四時間に亘って滴下した。滴下終了二時間後にtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート3部添加し、その後、同温度にて十時間攪拌して、共重合体液(QA−6)を得た。
【0185】
得られた共重合体溶液(QA−6)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50.2%であり、ガードナー粘度がVで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を19.1モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は29,600であった。
共重合体QA−7の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン200部、プロピレングリコールモノメチルエーテル200部および酢酸n-ブチル350部を仕込んで、窒素ガスの通気下に80℃に昇温した。
【0186】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(n-メトキシカルボニルメチル)エステルの500部と、メチルメタクリレートの200部、酢酸ビニル200部、数平均分子量が490なるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート100部、酢酸n-ブチル250部、および重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート30部とからなる混合物を四時間に亘って滴下した。滴下終了二時間後にtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート3部添加し、その後、同温度にて十時間攪拌して、共重合体液(QA−7)を得た。
【0187】
得られた共重合体溶液(QA−7)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50.3%であり、ガードナー粘度がH−Iで、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を28.7モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は26,500であった。
共重合体QA−8の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン100部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に80℃に昇温した。
【0188】
次いで、同温度で、イタコン酸ビス(2-オキソプロピル)エステルの200部と、メチルメタクリレートの186部と酢酸ビニル64部、2-メトキシエチルメタクリレート50部、酢酸n-ブチル150部、および重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート10部とからなる混合物を四時間に亘って滴下した。滴下終了二時間後にtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート2.5部添加し、その後、同温度にて十時間攪拌して、共重合体液(QA−8)を得た。
【0189】
得られた共重合体溶液(QA−8)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50.1%であり、ガードナー粘度がZ−Z1で、樹脂固形分中にイタコン酸エステル単量体から誘導される成分単位を21.9モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は41,200であった。
共重合体QA−9の製造(比較実験に使用する共重合体)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル300部を仕込んで、窒素ガスの通気下に80℃に昇温した。
【0190】
次いで、同温度で、メトキシカルボニルメチルメタクリレートの366部と、メチルメタクリレートの500部と酢酸ビニル134部、酢酸n-ブチル200部、および重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート20部およびアゾビスイソブチロニトリル20部とからなる混合物を四時間に亘って滴下した。滴下終了二時間後にtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート5部添加し、その後、同温度にて十時間攪拌して、共重合体液(QA−9)を得た。
【0191】
得られた共重合体溶液(QA−9)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50.0%であり、ガードナー粘度がU−Vであった。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は25,500であった。
【0192】
共重合体(A−6)の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0193】
次いで、同温度で、メタクリル酸の172部と、メチルメタクリレートの500部、エチルアクリレートの328部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(A−6)を得た。
【0194】
得られた共重合体溶液(A−6)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度がZ8であり、固形分酸価が112であり、樹脂固形分1000g中にメタクリル酸から誘導される構成単位を19.5モル%含有していた。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は14,760であった。
【0195】
共重合体(A−7)の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0196】
次いで、同温度で、2−ヒドロキシエチルアクリレートの260部、メチルメタクリレートの500部、2−メトキシエチルアクリレート240部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(A−7)を得た。
【0197】
得られた共重合体溶液(A−7)は、不揮発分(105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分)が50%であり、ガードナー粘度はZであった。また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は15,250であった。
【0198】
共重合体(A−8)の製造
温度計、環流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン500部および酢酸n-ブチル250部を仕込んで、窒素ガスの通気下に90℃に昇温した。
【0199】
次いで、同温度で、トリブチル錫メタクリレートの563部と、メチルメタクリレートの437部、酢酸n−ブチル250部および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とからなる混合物を3時間に亘って滴下した。その後、同温度にて10時間撹拌して、共重合体溶液(A−8)を得た。
【0200】
得られた共重合体溶液は、不揮発分が50%、ガードナー粘度がXであり、樹脂固形分中トリブチル錫メタクリレートから誘導される成分単位を25.6モル%含有する重合体を有していた。
【0201】
また共重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は13,230であった。
【0202】
【実施例1】
表1に示す配合組成の防汚塗料を常法に従って調製した。
【0203】
すなわち、上記共重合体(QA−1)含有液[固形分50wt%]を37重量部、亜酸化銅41重量部、チタン白6重量部、タレ止め防止剤「ディスパロンA603-20X」2重量部、溶剤(キシレン)14重量部からなる防汚塗料組成物をガラスビーズを分散材として、ペイントコンディショナーにて分散し調製したのち、100メッシュのフィルターにてロ過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0204】
次いで、防汚塗料と防汚塗膜を調製し、性能を評価した。
【0205】
結果を表2に合わせて示す。
【0206】
なお、表中の成分名称等は以下の通りである。
▲1▼亜酸化銅:商品名「NC303」(日進ケムコ(株)製)
▲2▼亜鉛華:酸化亜鉛、JIS3種
▲3▼「ロジン溶液」WWロジンの50%キシレン溶液
▲4▼「ナフテン酸銅溶液」ナフテン酸銅のキシレン溶液、
溶液中の銅含有率:8%。
▲5▼「ルトナールA−25」BASF社製のポリビニルエチルエーテル(PVA)、
粘度:2.5〜6.0Pa・s/23℃、比重:0.96/20℃。
▲6▼「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、
平均炭素数:14.5、塩素含有量:50%、
粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃。
▲7▼TCP:トリクレジルフォスフェート
▲8▼「可溶性無水石膏D−1」(株)ノリタケカンパニーリミテド製、
▲9▼チタン白:酸化チタン;商品名「チタン白 R−5N」(堺化学工業(株)製)
(10)弁柄:赤色酸化鉄(酸化第二鉄80重量%以上)
(11)「ディスパロンA603−20X」楠本化成(株)製
脂肪酸アマイドワックス 20%キシレンペースト
また、防汚性、消耗度および塗膜性状の評価を下記のようにして行った。
【0207】
[防汚性の評価]
広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付け可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラストした鋼板を用意した。
【0208】
このサンドブラスト板に、エポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるように1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。次いで選られた複層塗膜の上に、上記防汚塗料組成物をその乾燥後の膜厚が200μmとなるように塗装し、7日間室内で乾燥を行って試験板を得た。回転ドラムにこの試験板を取り付けて周速15ノット、50%稼動条件(夜間12時間稼動、昼間12時間停止の交互運転)にて3、6、12、18ヶ月間高汚損環境条件での試験を行い防汚性の評価を行った。
【0209】
防汚性の評価については目視で行い以下の基準を用いた。
【0210】
(評価基準)
5:塗膜表面に付着物を認めない
4:塗膜表面に薄いスライムの付着を認める
3:塗膜表面に濃いスライムの付着を認める
2:塗膜表面にスライムの付着および部分的にシオミドロなど植物の付着を認める
1:塗膜表面全体がシオミドロ(アオノリ)などの植物で覆われている
また、下記のような条件で消耗度の評価を行った。
【0211】
[消耗速度の評価]
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。その後隙間500μmのアプリケーターを用い上記防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装し、7日間室内で乾燥を行って試験板を得た。25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで6ヶ月間回転し、1、3および6ヶ月経過後における円周付近の消耗速度(膜厚の減少)を測定した。
【0212】
[塗膜性状評価]
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。その後隙間500μmのアプリケーターを用い上記防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装し、7日間室内で乾燥を行って試験板を得た。25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで24ヶ月間回転し、24ヶ月経過後における円周付近の塗膜の性状を目視により観察した。
【0213】
【実施例2〜17、比較例1〜4】
[防汚塗料組成物の製造例]
表1に示す配合組成の防汚塗料組成物を製造するに際しては、ガラスビーズを入れたペイントシェーカー内でこれらの配合成分を一緒にして2時間振とうした後、100メッシュのフィルターにてロ過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0214】
得られた防汚塗料組成物を使用して、上記したような防汚性、消耗速度および塗膜性状の評価を行った。
【0215】
評価結果を表2に示す。
【0216】
【表1】
【0217】
【表2】
【0218】
表2から明らかなように、本発明の防汚塗料組成物からなる塗膜は、適度な塗膜消耗速度を有し、長期に亘り優れた防汚性を示し、かつ24カ月浸漬後であっても、ブリスター(ふくれ)クラック、剥離が発生したりすることなく優れた塗膜性状を有していた。これに対し、比較例1(メタクリル酸・メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体)および比較例2(2-ヒドロキシエチルアクリレート・メチルメタクリレート・2-メトキシエチルアクリレート共重合体)のように、(i)式[1] :−COO-R1-COO-R2または[2]:−COO-R1-CO-R2で表されるエステル基を含まない共重合体では、塗料がゲル化したり(その結果、塗膜ができなかったり)、防汚性が不充分であり、ブリスター(ふくれ)が発生するなど塗膜の耐水性にも劣っていた。
【0219】
また、特公昭63−61989号公報の共重合体[ii]である比較例4では、防汚性が不充分であり、クラックが発生するなど塗膜の性能が劣っていた。
Claims (24)
- (i)下記式[1]または[2]で表されるエステル基を有するα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体、または
(ii)下記式[1]または[2]で表されるエステル基を有するα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と、該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体、をビヒクル成分(A)として含有し、
かつ、上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体がイタコン酸エステルであることを特徴とする防汚塗料組成物。
−COO-R1-COO-R2 …[1]
−COO-R1-CO-R2 …[2]
(式中、R1は炭素数1〜30の二価炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の一価炭化水素基、炭素数1〜30のハロゲン含有一価炭化水素基、炭素数1〜30の酸素含有一価炭化水素基を示す。) - 上記式[1]、[2]中のR1が-CH2-または−CH(CH3)-であり、R2が、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30の置換アルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
- 上記共重合体(ii)が、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位と、該単量体と共重合可能な不飽和単量体から誘導される成分単位との合計100モル%に対し、α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体から誘導される成分単位を2〜70モル%の量で、該単量体と共重合可能な不飽和単量体から誘導される成分単位を30〜98モル%の量で含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体の単独重合体(i)、またはα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(ii)は、GPCで測定した重量平均分子量が2000〜15万の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記α,β-不飽和ジカルボン酸エステルの単独重合体(i)またはα,β-不飽和ジカルボン酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な不飽和単量体との共重合体(ii)を、防汚塗料組成物100重量部中に1〜70重量部の量で含有する請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- さらに(B)銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記銅および/または銅化合物(B)を、防汚塗料組成物100重量部中に、1〜70重量部の範囲で含有する請求項6に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(C)有機防汚剤(銅ピリチオン類以外の銅化合物を除く)を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記有機防汚剤(C)が、金属ピリチオン類、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2-n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項8に記載の防汚塗料組成物。
- 上記有機防汚剤(C)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜50重量部の範囲で含有する請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(D)酸化亜鉛を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記酸化亜鉛(D)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.5〜35重量部の範囲で含有する請求項11に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(E)ロジン、ロジン誘導体、有機カルボン酸および有機カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の溶出促進成分を含有する請求項1〜12のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記溶出促進成分(E)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜30重量部の範囲で含有する請求項13に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(F)ビニルエーテル系(共)重合体を含有する請求項1〜14のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記ビニルエーテル系(共)重合体(F)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜10重量部の範囲で含有する請求項15に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(G)可塑剤を含有する請求項1〜16のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記可塑剤(G)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.05〜20重量部の範囲で含有する請求項17に記載の防汚塗料組成物。
- 上記可塑剤(G)が塩素化パラフィンおよび/または正リン酸エステルであることを特徴とする請求項18に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、(H)脱水剤を含有する請求項1〜19のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記脱水剤(H)を、防汚塗料組成物100重量部中に、0.01〜20重量部の範囲で含有する請求項20に記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜21のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。
- 請求項1〜21のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜で表面を被覆された船舶、水中構造物または漁具・漁網。
- 船舶、水中構造物または漁具・漁網の基材表面に、請求項1〜21のいずれかに記載の防汚塗料組成物を塗布し硬化させて、得られた塗膜で、上記基材表面を被覆する船舶、水中構造物または漁具・漁網の防汚方法。
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