本発明は、印刷性、成形性、離型性、意匠性に優れる転写箔用貼り合わせフィルムおよび転写箔用に関するものである。さらに詳しくは、深絞り性、被転写体の表面形状への追従性などの成形性に優れ、さらにまた印刷性に優れるため、印刷および成形して用いるインモールド転写箔用として好適な表面加工フィルム、また、印刷後さらに真空成形して用いる建材用化粧シートや包装容器などの印刷を転写加工で行うための転写箔用として好適なフィルムに関するものである。
印刷および成形加工して用いられる転写箔用フィルムとしては、従来、二軸延伸ポリエステルフィルム(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が用いられているが、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた転写箔は、形状の複雑な部材への転写に対しては、成形性の点で不十分であった。
また、成形性の改善を目的としたポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムに比べて成形応力の低い共重合ポリエステルフィルムを用いた転写箔(例えば、特許文献3参照)、およびポリエステルを構成するグリコール成分としてブタンジオール等の特定のグリコール成分を含有する成形、加工、印刷製品等向けのポリエステルフィルム(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、これらのポリエステルフィルムを用いた転写箔は、成形性が良いものの、印刷性に関しては特に考慮されておらず、印刷インキに含まれる溶剤、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどによって、フィルム表面の平滑性が悪化し、印刷欠点が発生しやすいなどの問題があった。
さらに、意匠性、成形性の改善を目的とした表面加工ポリエステルフィルム、およびその転写箔(例えば、特許文献5参照)が提案されているが、この転写箔は、ポリオレフィンフィルムに転写箔用塗剤を塗工した場合には、ポリオレフィン中の滑剤がブリードアウトし、経時または成形時の予熱で塗工した塗剤が剥離するなどの問題が発生していた。またポリオレフィンフィルムの厚み斑が大きいと転写箔用塗剤を塗工した場合、塗剤の厚みが均一に塗工できず、転写した成形物の意匠性が劣る問題が発生していた。
したがって、塗剤が均一に塗工でき、経時または成形時の予熱で塗工した塗剤が剥離するなどの問題を生ずることがなく、エンボス加工が可能で、成形物に転写した場合に優れた意匠性が得られ、また印刷インキに含まれる各種溶剤に対する耐薬品性、すなわち印刷性に優れ、しかも成形性に優れる転写箔用フィルムの実現が望まれていた。
特開平6−210799号公報
特開2000−344909号公報
特許第3090911号公報
特開2002−97261号公報
特開2004−188708号公報
本発明は、上記した従来の技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、転写箔に要求される成形性と印刷性の両方の特性を満足すると共にエンボス加工を施すことができ、成形物に転写した場合に深みのある意匠性が得られる転写箔用貼り合わせフィルムおよび転写箔を提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明によれば、ポリエステル無延伸フィルムの少なくとも片面にポリオレフィンフィルムが貼り合わされた転写箔用貼り合わせフィルムであって、前記ポリオレフィンフィルムが有機滑剤として脂肪酸アミドを0.01〜0.05重量%含有し、かつこのポリオレフィンフィルムの厚み斑が±5%の範囲にあり、かつ転写箔用貼り合わせフィルムの厚みが200〜600μmであることを特徴とする転写箔用貼り合わせフィルムが提供される。
なお、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいては、
前記脂肪酸アミドが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドおよびエルカ酸アミドから選ばれた少なくとも1種であること、
前記ポリオレフィンフィルム面側にエンボス加工が施され、エンボス加工により形成された平均凹凸深さが0.02〜1.0mmであること、
前記ポリエステル無延伸フィルムを構成するポリエステルが、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸を90モル%以上含み、かつジオール成分としてエチレングリコール成分を20〜99.9モル%、および、1,3−プロパンジオール成分および/または1,4−ブタンジオール成分を0.1〜80モル%含むモノマー組成からなるポリエステルであること、
前記ポリエステル無延伸フィルムの80℃での破断伸度が500%以上であり、かつ500%伸長時の応力が10〜50MPaの範囲であること、および
前記ポリオレフィンフィルムが、ポリプロピレン共重合体またはポリエチレンからなる無延伸フィルムであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の転写箔は、上記の転写箔用貼り合わせフィルムのポリオレフィンフィルム面側に、少なくともトップコート層、印刷層および接着層が順次積層されてなることを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、印刷性、成形性、離型性、意匠性に優れ、転写箔に適した転写箔用貼り合わせフィルムを得ることができる。
より具体的には、ポリオレフィンフィルムが含有する脂肪酸アミドの添加量およびポリオレフィンフィルムの厚み斑を特定し、さらにはポリオレフィンフィルム面にエンボス加工を施すことにより、エンボス加工面に少なくとも、トップコート層、印刷層、接着層を積層して転写箔とし、成形物に転写した場合に、経時および予熱で塗剤が剥離することなく、しかも均一な厚みの塗剤転写した表面が深みのある意匠性に優れた成形物を得ることができる。また、ポリオレフィン面は、印刷インクに含有される溶剤、特に酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等に対する耐溶剤性に優れるため、各種印刷インクを用いて美しく印刷することができる。さらに、深絞り性、成形物の表面形状への追従性などの成形性に優れるため、建材用化粧シート、自動車内外装部品、浴室パネル、家電製品用部品、包装容器などの印刷の転写加工を行うための転写箔用フィルムとして好適に用いられる。
以下、本発明にかかる転写箔用貼り合わせフィルムおよび転写箔の好ましい実施の形態を説明する。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、ポリエステル無延伸フィルムの少なくとも片面にポリオレフィンフィルムが貼り合わされた転写箔用貼り合わせフィルムであって、前記ポリオレフィンフィルムが有機滑剤として脂肪酸アミドを0.01〜0.05重量%含有し、かつこのポリオレフィンフィルムの厚み斑が±5%の範囲にあり、かつ転写箔用貼り合わせフィルムの厚みが200〜600μmであることを特徴とする。ポリオレフィンフィルムが含有する脂肪酸アミドの添加量およびポリオレフィンフィルムの厚み斑を特定することにより、透明性を保持し、各種塗剤を積層した場合に均一な厚みの塗剤を積層することができ、また経時および予熱・加熱で塗剤が剥離することのない転写箔を得ることができるのである。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいて、ポリオレフィンフィルムに添加する脂肪酸アミドとしては、炭素数12〜24の脂肪酸アミドの一種または混合物が好ましく、例えば、ラウリン酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデカン酸アミド、バルミチン酸アミド、ヘプタデカン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エライジン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、ステアロール酸アミド、リシノエライジン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルシン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エルカ酸アミド、リグノセリン酸アミドが挙げられる。中でも少量添加での滑り発現性、フィルムの透明性の点から、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドの一種またはそれらの混合物の添加が好ましい。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいて、ポリオレフィンフィルムに対する脂肪酸アミドの添加量は、0.01〜0.05重量%の範囲が必要である。上記範囲未満であると、フィルムのブロッキング性、塗剤の離型性の点から好ましくない。また、上記範囲を超えると、各種転写箔用塗剤を積層した場合に経時および予熱で塗剤が剥離してしまい、成形物に転写すると塗剤のシワの原因となるため好ましくない。上記の添加量範囲とすることにより、ブロッキグ防止および塗剤の離型性と塗剤の剥離性を両立することができるのである。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいて、ポリオレフィンフィルムの厚み斑は、各種塗剤の塗工厚みを均一にする点から、±5%の範囲にすることが必要である。フィルムの厚み斑が上記範囲外であると、塗剤を塗工した場合に塗工厚みがバラつき、塗剤を成形物に転写した時、塗剤の厚い部分や薄い部分が生じ、成形物の色合いが悪くなり、意匠性の劣るものとなるため好ましくない。ポリオレフィンフィルムの厚み斑は、より好ましくは、±3%の範囲である。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいては、ポリオレフィンフィルム面側にエンボス加工が施され、エンボス加工により形成された平均凹凸深さが0.02〜1.0mmであることが好ましい。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、ポリエステルフィルム側にエンボス加工を施してもよいが、後工程の各種塗剤に対する耐溶剤性の点および転写する成形物の意匠性を良好にする点から、ポリオレフィンフィルム面側にエンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工を施す方法としては、例えば、フィルムをパーフォレーター(目打ち機)に通すホットニードル方法、刻印ロールに通す方法、チルドロールに通す方法、溶融押出した直後エンボス加工する方法が挙げられるが、エンボス模様の入った金属ロールと紙あるいはゴムロールの間に貼り合わせフィルムを通し、加圧することによりロールのエンボス模様をポリオレフィンフィルム面側に転写することで得ることが好ましい。エンボス模様としては、ランダムマット、四角形、ダイヤモンド型、深絞り型、砂目等の種々の模様から選択することができる。エンボス加工性を良好とする場合は、金属ロール温度をポリエステルフィルムのガラス転移温度以上に加熱し、加圧してエンボス模様を転写した後、ポリエステルフィルムのガラス転移温度以下に急冷・固化することにより、エンボス模様の形状を維持できるのである。
また、Tダイ法で溶融押出してポリオレフィンフィルムをシート化する際は、表面が凹凸加工された冷却ドラムを用い、その冷却ドラムとニップロールとの間で押圧して表面凹凸模様をフィルム表面に転写する方法であってもよい。
また、エンボス加工の他の加工方法としては、ヘアーライン加工、梨地加工、サンドブラスト加工等が挙げられるが、深みのある優れた意匠性を得るためには、エンボス加工が好ましい。さらには、エンボス加工を施す前に、予めヘアーライン加工、梨地加工、サンドブラスト加工等を施しても構わない。
このようにしてエンボス加工して得られる表面の平均凹凸深度は0.02〜1.0mmの範囲であることが好ましい。その範囲未満であると、成形物に転写した場合に成形物表面が深みのある意匠性を得にくい傾向となる。また、その範囲を超えると、平均凹凸深度が深すぎ、成形時にフィルム破れなどが生じる場合がある。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいて、ポリエステルフィルムは、主としてポリエステルから構成されるものであり、このポリエステルはジカルボン酸成分とグリコール成分とを基本的な構成単位とするポリマーである。
ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。
本発明におけるポリエステルでは、耐熱性や生産性の点から、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分および/またはテレフタル酸成分を、いずれかを必須成分、一方を任意成分として、ナフタレンジカルボン酸成分およびテレフタル酸成分の和がジカルボン酸に対し90モル%以上となる量で含有することが好ましい。それら以外のジカルボン酸成分が10モル%を超える量で含まれる場合は、耐熱性および生産性が低下しやすい傾向となる。
また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、などの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
本発明におけるポリエステルでは、成形性と生産性の点から、グリコール成分の中でエチレングリコール成分が占める割合が20〜99.9モル%の範囲であり、かつ1,3−プロパンジオール成分および1,4−ブタンジオール成分のいずれかを必須成分とし、一方を任意成分とし、1,3−プロパンジオール成分および1,4−ブタンジオール成分が占める割合が、0.1〜80モル%の範囲であることが好ましい。より好ましくはエチレングリコール成分が50〜99.9モル%の範囲で、かついずれかが任意成分である1,3−プロパンジオール成分および1,4−ブタンジオール成分の和が0.1〜50モル%の範囲であることが好ましい。特に好ましくは、エチレングリコール成分が80〜99.9モル%の範囲で、かついずれかが任意成分である1,3−プロパンジオール成分および1,4−ブタンジオール成分の和が0.1〜20モル%の範囲であることが好ましい。
本発明で特定した上記のグリコール成分条件を満足すれば、それ以外のグリコール成分が含まれていてもよいが、上記のグリコール成分条件を満たさない場合は成形性および生産性が低下しやすい傾向となる。
本発明において好ましく用いることができるポリエステルの種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリヒドロキシベンゾエート(PHB)等が挙げられるが、本発明で特定したグリコール成分条件を満足させるためには、これらのポリエステルを2種類以上併用することが好ましい。また、本発明で特定したグリコール成分条件及びジカルボン酸条件を満足する共重合ポリエステルを用いることもできる。
本発明で用いるポリエステルを製造する際には、従来から用いられている反応触媒、着色防止剤を使用することができる。反応触媒としては、例えばアルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等を用いることができ、着色防止剤としては、例えばリン化合物等を用いることができる。好ましくは、通常、ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を用いることができる。
ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を用いることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。
アンチモン化合物としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどを用いることができる。
チタン化合物としては、特に限定されないが、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物、またチタンと珪素、ジルコニウム、アルミニウム元素から選ばれる元素との複合酸化物などが好ましく使用できる。
これらのポリエステルの固有粘度は、0.6〜1.3dl/gの範囲にあることが好ましい。0.6dl/g未満であると、特に成形性の悪化が顕著となり、また1.3dl/g以上となると、特に製膜性の悪化、フィルムの厚み斑が顕著となる。また、ポリエステルの固有粘度は、さらに好ましくは0.65〜1.2dl/g、特に好ましくは0.7〜1.1dl/gの範囲である。
これらのポリエステルの融点は、240〜270℃の範囲であることが好ましい。この範囲未満の温度では、耐熱性が不足する場合があり、一方融点がこの範囲を超えると、成形性が低下する傾向となる。
融点を上記範囲とする好ましい手段としては特に限定されないが、例えば、エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位からなる融点250℃以上のポリエステル樹脂に、ポリプロピレンテレフタレート樹脂および/またはポリブチレンテレフタレート樹脂を所定量混合して、プロピレンテレフタレート単位および/またはブチレンテレフタレート単位を含有させる方法が挙げられる。
ここで、本発明における融点は、ポリマーに起因する結晶融解ピークの温度である。すなわち、ポリマーを示差走査型熱量計(DSC)において窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定したときのDSC曲線から結晶融解時の吸熱曲線を求め、この吸熱曲線における極小点、すなわち微分値が0となる点の温度である。ポリマーが複数の融解ピークを有する場合には、融解熱量の最も大きい主融解ピークをそのポリマーの融点とする。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムを構成するポリエステルフィルムは、DSC昇温測定におけるフィルムの結晶融解曲線が、実質的に単一のピークを示すものであることが好ましい。ポリエステルの結晶融解曲線のピークが二つ以上示されるものであると、分子構造が均一となっていないため、成形性が不良となる場合がある。ここで、一つの吸熱曲線に部分的に重なる融解熱量が2J/g以上のショルダーピーク(ピークの極小点)についても独立した結晶融解曲線のピークとし、2つ(またはそれ以上)のピークが存在するものとする。
さらに、ポリエステルのカルボキシル末端基は30eq/t以下の範囲にあることが、優れた転写性を確保するために好ましい。より好ましくは、25eq/t以下であり、特に好ましくは10eq/t以下の範囲である。
また、上述のようにポリエステルを2種類以上を混合して用いる場合には、ポリエステルが、M/P≦1の条件を満足することが、耐熱性、耐溶剤性、印刷性を向上させ、品質のバラツキを低減させる上で好ましい。ここで、式中のMはポリエステル中に残存する触媒金属元素の濃度(ミリモル%)、Pはポリエステル中に残存するリン元素の濃度(ミリモル%)を示す。またこれらのMおよびPは、ポリエステルの繰り返し単位1ユニット(モル)あたりの濃度を表すものである。さらに好ましくはM/Pが0.0001以上1未満、特に好ましくは0.001以上0.8以下である。
M/P≦1とすることにより、熱安定性が増し、ブレンドポリマー中でのエステル交換が抑制され、熱処理による融点の低下を抑えることが可能となる。この結果、上記した特性を向上させることができる。
本発明におけるポリエステルに熱安定剤として添加することができるリン化合物は特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、リン酸エステルなどが好ましい。特に、製膜中のブリードアウトを抑制する点からは、分子量300以上、特に好ましくは400以上のリン化合物が好ましく用いられる。分子量300以上のリン化合物としては、たとえばステアリルリン酸、トリフェニルホスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどが挙げられるが、特にステアリルリン酸がブリードアウト抑制の点からは好ましい。
ポリエステル中に添加するリン化合物の含有量(添加量)は、熱安定性、色調などの点からは、リン化合物をリン元素量として20〜1000ミリモル%であることが好ましく、より好ましくは90〜900ミリモル%、特に好ましくは120〜800ミリモル%の範囲である。
さらに、リン化合物の添加方法としては、重合時に添加する方法、押出機にポリマーと共に供給して添加する方法のいずれでも構わない。一般に重合時に多量のリン化合物を添加すると重合反応を阻害することから、M/P>1である通常のポリエステルと共に押出機に供給して添加する方法が好ましい。
ポリエステルフィルム中には各種帯電防止剤が添加されていてもよい。この帯電防止剤は、ポリエステルに添加する方法、ポリエステル中に共重合させる方法、またはフィルムにコーティングする方法により添加される。帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性の各種公知のものを用いることが可能である。中でも特に耐熱性などの点からはアニオン系帯電防止剤のアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
また、これらの帯電防止剤を重合時に添加する際には、併せて酸化防止剤を添加することが、取り扱い性などの点から好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などの各種公知のものを用いることができ、さらにこれらの混合の化合物なども用いることが可能である。
本発明における転写箔用フィルムを構成するポリエステルフィルムは、特に成形性の点から、無延伸フィルムであることが必要である。無延伸フィルムであることは、面配向係数が0〜0.05の範囲、好ましくは0〜0.03の範囲であることによって表すことができる。面配向係数が上記範囲を超えると、成形絞り比の大きい成形物は成形し難い場合があり、成形性が劣ることになる。ここで、面配向係数とは、下記[式1]で表されるfnのことであり、フィルムの配向度を表したものである。
面配向係数: fn=(Nx+Ny)/2−Nz ・・・[式1]
この式1において、Nx、Ny、Nzはそれぞれ長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表し、アッベ屈折率計などを用いて測定することのできる値である。なお、フィルムが不透明などの理由で屈折率の測定が困難な場合は、赤外吸収スペクトルやX線などの測定手法により求めた配向度を、屈折率による面配向係数に換算すればよい。
本発明におけるエンボス加工貼り合わせフィルムを構成するポリエステルフィルム中には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステルに不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
特にフィルムに易滑性を付与し取扱性を向上させる点からは、添加する粒子の数平均粒子径は好ましくは0.001〜20μmであり、さらに好ましくは0.01〜10μmである。数平均粒子径が20μmを超えると、フィルムの欠陥が生じやすくなり、成形性の悪化などを引き起こすことがある。また0.001μm未満では、十分な易滑性が発現しないことがある。
無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
また、有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが使用される。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーからの単独重合体または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子が挙げられる。
本発明における転写箔用貼り合わせフィルムを構成するポリエステルフィルムには、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
本発明における転写箔用貼り合わせフィルムを構成するポリエステルフィルムは成形性の点で80℃での破断伸度が500%以上、より好ましくは800%以上であることが好ましく、さらに好ましくは1000%以上である。好ましい範囲に上限はないが、大きいほど成形性が良く、通常での上限は2000%程度である。しかも、80℃での500%伸長時の応力が10〜50MPaの範囲であることが好ましい。特に好ましくは15〜30MPaである。上記範囲未満であると、成形時のフィルムの腰がなく印刷ズレなどを生じる場合がある。上記範囲を超えると、成形時の圧力が高く求められる場合がある。また、80℃引張測定にて得られる伸度(S)−応力(S)曲線において、降伏点が得られない曲線であることが好ましい。S−S曲線に降伏点が存在すると成形対象物に転写した後、フィルムに応力が残留し成形物からフィルム及び印刷層などの各種積層物が剥がれることがある。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、インキに含まれる溶剤に対する耐薬品性、すなわち印刷性および印刷層等の離型性の点から、ポリオレフィンフィルムを貼り合わせることが必要である。ポリオレフィンフィルムは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα−オレフィンモノマーからの重合体から構成されるものであり、そのランダム共重合体やブロック共重合体も用いられる。
ランダム共重合体は、例えばプロピレン共重合体の場合では、プロピレンと上記α−オレフィンモノマー中からプロピレンを除く1種以上のα−オレフィンモノマーとがランダムに共重合されたポリマーであり、例えば、公知の方法により1種以上のα−オレフィンモノマーを2〜15重量%の範囲で共重合したポリプロピレンが挙げられる。そのメルトフロ−インデックス(MFI)は、低温での耐衝撃性の点で、1〜10g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは2〜5g/10分である。
また、ブロック共重合体は、例えばプロピレン・エチレン・ブロック共重合体の場合では、豊富な量のプロピレンと少量のエチレンおよび/または他のα−オレフィンとからなる共重合体部分と、少量のプロピレンと豊富な量のエチレンとからなる共重合体部分とがブロック的に共重合したものである。それぞれの共重合成分の組成、各ブロックの分子量等は重合段階で制御できる。一般には、特開昭59−115312号に示されるように2段以上の重合方法によって得ることができる。例えば、プロピレン・ブロック共重合体の融点は145〜165℃の範囲である。融点は豊富な量のプロピレンと少量のエチレンおよび/または他のα−オレフィンとからなる共重合体部分のポリプロピレン成分量で変化させることができる。また、プロピレン・エチレン・ブロック共重合体中のエチレン量および/または他のα−オレフィン成分の量は、フィルムの耐衝撃性の点で5〜20重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
本発明におけるポリオレフィンフィルムが単独重合体からなる場合は、ポリエチレン、特に、低密度ポリエチレン、さらには直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。ランダム共重合体の場合では、プロピレン・ランダム共重合体が好ましく、特に、プロピレンにエチレンまたはブテン−1を共重合させた共重合体が好ましく、その共重合成分の割合は、2〜15重量%の範囲が好ましい。ブロック共重合体の場合では、ポリプロピレン・ブロック共重合体が好ましく、特に、ポリプロピレンにエチレン、ブテン−1を共重合させた共重合体が好ましく、その共重合成分の割合は、5〜20重量%の範囲が好ましい。また、これらのポリオレフィンフィルムの融点は、塗剤溶媒の乾燥温度での耐熱性の点から110〜165℃の範囲が好ましい。
本発明におけるポリオレフィンフィルムは、特に成形性の点から、無延伸フィルムであることが好ましい。無延伸のポリオレフィンフィルムは、面配向係数が0〜0.01の範囲、好ましくは0〜0.005の範囲で表すことができる。面配向係数が上記範囲を超えると、貼り合わせたポリエステルフィルムとの追従性が悪くなり易いので、印刷の歪みや成形性が悪化し易くなるという好ましくない傾向が招かれることがある。
転写箔用貼り合わせフィルムを構成するポリオレフィンフィルムには、熱可塑性エラストマーを添加することができる。熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、水添ブロック共重合体などが挙げられ、それらの1種以上の熱可塑性エラストマーを耐衝撃性の点から3〜20重量部の範囲で添加することできる。
ポリエステルフィルムとポリオレフィンフィルムとの貼り合わせには、接着剤を用いることが好ましい。その接着剤は、熱硬化タイプでも熱可塑タイプでも構わないが、好ましくは熱硬化タイプが好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、クロロプレン、ポリブタジェン等のゴム系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリブタジエン、あるいはこれらの樹脂のカルボキシル変性物、エポキシ系樹脂、セルロース系誘導体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリエチレンオキサイド、アクリル系樹脂、リグニン誘導体等からなる接着剤が挙げられる。ポリエステルフィルムとポリオレフィンフィルムとの密着性の点からは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる接着剤が好ましい。また、ポリエステルフィルムとポリオレフィンフィルムの貼り合わせには、ポリエステルフィルムに接着性樹脂層を設け、ポリオレフィン樹脂を溶融押出ラミネーションしても構わない。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、エンボス加工が施された面に、少なくとも、トップコート層、印刷層を順次積層し、その上に必要に応じて接着層を積層することにより転写箔とすることができる。転写箔をプレス成形に用いる場合は、印刷層面に接着剤あるいは接着フィルムを介して樹脂板または鋼板に貼り合わせて成形する。あるいは、真空成形、インモールド成形に用いる場合は、接着剤または接着フィルムからなる接着層を転写箔の印刷層面に積層し、成形樹脂と同時一体成形を行う。それら成形の後に、ポリエステルフィルム/ポリオレフィンフィルム部分を剥離して除去することにより、トップコート層、印刷層が成形物の表面に転写された状態となり、表面がエンボス加工による深みのある意匠性に優れた成形物を得ることができる。
トップコート層の素材としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂共重合体が好ましい。トップコート層を積層させる方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷などの印刷法がある。トップコート層は、転写後に成形物の外表面を形成する層となるので、ポリエステルフィルム/ポリオレフィンフィルムを剥離する前、あるいは剥離して除去した後で、熱硬化、紫外線硬化、あるいは熱線硬化することができる樹脂をトップコート層として積層させても構わない。また、トップコート層には耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤、紫外線反射剤を添加しても構わない。また、耐薬品性を向上させるためにポリオレフィン系樹脂をトップコート層としても構わない。
意匠性をさらに向上させるために印刷層を積層しても構わない。印刷層のバインダー樹脂素材としては、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂等が好ましく、なかでも、柔軟な被膜を作製することができる樹脂が好ましく、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを配合することが好ましい。また、ポリエステルフィルム/ポリオレフィンフィルムを剥離する前、あるいは剥離して除去した後で、熱硬化、紫外線硬化、あるいは熱線硬化することができる樹脂を印刷層として積層させても構わない。印刷層の積層方法は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが好ましい。特に多色刷りや階調色彩を必要とする場合は、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好ましい。また、単色の場合はグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。図柄に応じて、全面的に印刷層を積層する印刷法でも、部分的に印刷層を積層する印刷法でもよい。
本発明の転写箔と成形樹脂とを、真空成形、インモールド成形などで一体成形する場合は、印刷層面に接着層を積層することが好ましい。接着層の素材としては、感熱タイプあるいは感圧タイプを用いることが好ましい。成形樹脂がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂の接着剤が好ましい。また、成形樹脂がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの接着剤が好ましい。成形樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン系樹脂などの接着剤が好ましい。接着層を積層させる方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷などの印刷法が挙げられる。
成形樹脂としては、特に限定されないが、例えば、自動車内外装部品に用いられる成形品を製造する場合は、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂などが用いられる。
また、本発明の転写箔には、目的に応じて、離型層、耐候層、難燃層、防汚層、抗菌層などを、コーティングや共押出、熱ラミネート、ドライラミネートなどの手法により表面加工面に積層することもできる。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムにおいて、貼り合わせフィルムの厚みは200〜600μmの範囲である。この範囲未満では、フィルムの剛性、製膜安定性および平面性が悪化し、さらには成形時にしわなどが入りやすい傾向となる。また、上記範囲を超えると、取り扱い性や場合によっては成形性の悪化を引き起こす傾向となる。さらに、成形性、転写性および取り扱い性の点から、ポリエステルフィルムの厚みとポリオレフィンフィルムの厚みの比が3〜7:7〜3の範囲であることが好ましい。表面加工面に形成するトップコート層、印刷層、接着層の各層の厚みは、成形物の形状、素材、大きさによって、適当な厚みにすることができる。
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、立体形状への成形が可能であり、深みのある、優れた意匠性が得られるため、形状の複雑な部品表面、例えば自動車内外装部品、建材用化粧シート、浴室パネル、家電製品部品、OA製品部品、包装容器等の転写箔用として好ましく用いることができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)融点(Tm)
Seiko Instrument(株)製の示差走査熱量分析装置DSCII型を用い、試料5mgを室温より昇温速度10℃/分で昇温していった際の吸熱融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。
(2)固有粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
(3)メルトフローインデックス(MFI)
JIS−K−6758に準じて測定した。
(4)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向屈折率(Nx),幅方向屈折率(Ny),厚み方向屈折率(Nz)を測定し、下記式から面配向係数(fn)を算出した。
・fn=(Nx+Ny)/2−Nz 。
(5)ポリオレフィンフィルムの厚み斑
貼り合わせフィルムをメチルエチルケトン(MEK)中に12時間浸漬し、ポリエステルフィルムとポリオレフィンフィルムを剥離し、ポリオレフィンフィルムに付着した接着剤をMEKで除去した。このポリオレフィンフィルムを測定サンプルとし、アンリツ製フィルムシックネステスターKG601Aおよび電子マイクロメーターK306Cを用い、測定サンプルの任意の方向に30mm幅、2m長にサンプリングしたフィルムを測定間隔0.2mmで連続的に厚みを測定し、最大値Ta(μm)、最小値Tb(μm)、平均値Tc(μm)を求め、下記式(1)および下記式(2)から厚み斑(%)を求めた。
・厚み斑(プラス)=(Ta−Tc)/Tc×100・・・・(1)
・厚み斑(マイナス)=(Tb−Tc)/Tc×100・・・・(2)。
(6)80℃での破断伸度、500%伸長時の応力
貼り合わせ前のポリエステルフィルムから、機械方向(MD)又は幅方向(TD)を長手方向とするサンプル(長さ150mm、幅10mm)を切り出し、ASTM−D−882−81(A法)に従い、80℃雰囲気で引張速度100mm/分で測定した。破断伸度、500%伸長時の応力を求めた。
(7)平均凹凸深さ
KEYENCE社製レーザー顕微鏡VK8510を用いて、倍率10倍、プロファイル(複数)モード、測定長1490μm、ピッチ0.1μm間隔でエンボス加工したフィルムのエンボス6個のプロファイルを測定し、エンボス1個に相当するプロファイルを用い、最も低い値をMIN深さ、最も高い値をMAX深さとして、高低差値(=MAX深さ−MIN深さ)を求め、各プロファイルから求めた高低差値の平均値を平均凹凸深さとした。
(8)耐薬品性
貼り合わせフィルムのポリオレフィンフィルム面側の表面にトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンを各々3ml滴下させて温度23℃湿度65%RHで24時間放置した後、脱脂綿で各々の溶剤をきれいに拭き取って、表面状態を目視で観察し下記の基準で判定した。
○:白化、収縮、変形、溶剤の痕跡が認められないもの、
△:白化、収縮、変形が比較的軽い状態のもの、
×:白化、収縮、変形が認められるもの。
(9)成形性
貼り合わせフィルムのポリオレフィンフィルム面側に、120℃に加熱した深さ300μm、大きさ0.4mm角刻印ロールと紙ロールの間に1m/分の速度で通し、200MPaの圧力で加圧し、室温に急冷して、エンボス加工を施した。
次に、エンボス加工を施した面に、順にトップコート層、印刷層、接着層を形成して、転写箔を作製した。トップコート層として、紫外線硬化型アクリル系樹脂{BASFジャパン(株)製“LAROMER”LR8983}を厚み60μmで、印刷層として、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)製“ハイラミック”、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)を厚み70μmで形成し、さらに接着層としてアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)製ABSフィルム“ハイフレックス”、厚み100μm)を用いた。印刷層を硬化させるために40℃の温度で72時間エージングを行った。さらに、上記転写箔を温度80℃に加熱し、転写箔の接着層面側にABS共重合樹脂製カップ型成形物を配して、圧空成形機を用い、85℃の温度で転写成形した。圧力解放後、転写箔を貼り付けたまま、トップコート層を波長365nmの紫外線を用い紫外線硬化させた。その転写箔の成形状態を目視で観察し、下記の基準で判定した。
○:成形物のコーナーもシャープに成形され、成形後の厚みも均一であった、
△:成形物のコーナーにやや丸みがあり、成形後の厚みがやや不均一であった、
×:成形後の厚みが不均一であり、シワ又は破れが発生した。
(10)剥離性
上記(8)の成形性で得られた転写箔貼り合わせABS樹脂製カップ型成形物を用い、外表面の貼り合わせフィルム層を剥離して、外表面から印刷が見えるABS樹脂製カップ型成形物を作製した。貼り合わせフィルムの剥離状態を目視で観察し、剥離性を下記の基準で判定した。
○:成形物に綺麗に転写され、剥離性が優れるもの、
△:成形物に一部が転写されず、剥離性がやや劣るが、実用上問題ないもの、
×:成形物に一部が転写されず、剥離性が劣り、実用上問題となるもの。
(11)意匠性
上記(8)の剥離性で得られたABS樹脂製カップ型成形物を用い、成形品の表面状態を目視で観察し、意匠性を下記の基準で判定した。
○:表面加工性が良好であり、深みのある意匠性が得られるもの、
△:表面加工性がやや不足し、意匠性がやや劣るが、実用上問題ないもの、
×:表面がギラギラとし、意匠性が劣るもの。
(12)総合評価
表面加工性、耐薬品性、成形性、剥離性、意匠性としての実用性について、優れるものを○、やや劣るものを△、劣るものを×として評価した。
実施例および比較例には、以下のポリエステルおよび粒子マスターを使用した。
[ポリエチレンテレフタレートA(PET−A)]
テレフタル酸ジメチル100重量部およびエチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量%、三酸化アンチモン0.03重量%を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量%を添加した後、重縮合反応槽に移送した。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、融点257℃、固有粘度0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
[帯電防止剤および粒子含有のポリエチレンテレフタレートマスターB(PET−B)]
PET−Aの重合時に、帯電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6重量%およびポリエチレングリコール(分子量4000)4重量%、酸化防止剤として、“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.10重量%、さらに下記手法で得られた凝集シリカ粒子(富士ディビソン(株)製、数粒子径2.5μm)6重量%を添加し、上記PET−Aと同様の方法で重合して、帯電防止剤および粒子を含有するポリエチレンテレフタレートのマスター樹脂(固有粘度0.65dl/g、融点264℃)を作製した。
凝集シリカ粒子:4塩化珪素1当量に対し、酸素1当量、および、水素1当量を気化装置において気化させ、酸水素炎中において1,000℃で加水分解を行い、酸化ケイ素粒子を得た。さらに、直径0.5mmのビーズを用いた湿式サンドミルにて粉砕し所望の平均粒子径を有する凝集シリカを得た。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートC(PET−C)]
テレフタル酸ジメチル100重量部を、テレフタル酸ジメチル89モル%、イソフタル酸ジメチル11モル%からなるジカルボン酸系モノマーを100重量部と変更したこと以外は、PET−Aと同様にして、イソフタル酸11モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.60dl/g、融点229℃)を作製した。
[1,4−シクロへキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートD(PET−D)]
イーストマン・ケミカル社製商品名:6763”(融点190℃、固有粘度0.72)を用いた。1,4−シクロへキサンジメタノールの共重合割合は30モル%であった。
[ポリエチレンナフタレートA(PEN−A)]
テレフタル酸ジメチルの替わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部としたこと以外は、PET−Aと同様にしてポリエチレンナフタレート樹脂(融点270℃、固有粘度0.69dl/g)を作製した。
[ポリブチレンテレフタレートA(PBT−A)]
東レ(株)製、商品名“トレコン”1200Sのポリブチレンテレフタレート(融点228℃、固有粘度1.26dl/g)を用いた。
[ポリプロピレンテレフタレートA(PPT−A)]
シェル化学(株)製の商品名“コルテラ”CP509201のポリプロピレンテレフタレート(固有粘度0.9dl/g、融点222℃)を用いた。
[脂肪酸アミドのエチレン・ブタン・プロピレンマスタ−A(AB−A)]
住友化学(株)製エチレン・ブタン・プロピレン共重合体(FL6633A、エチレン量=2.1%、ブタン量=5.5%、MI=6g/分、融点=137℃)98重量部、脂肪酸アミドとして、日本精化(株)エルカ酸アミド(商品名ニュートロン−S)2重量部を用い、真空ベント部2ヶ所付ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は230℃で溶融させた後、水槽にガット状に押出し、エルカ酸アミド2重量%のマスター樹脂を作製した。
[脂肪酸アミドのエチレン・ブタン・プロピレンマスタ−B(AB−B)]
脂肪酸アミドとして、日本精化(株)オレイン酸アミド(商品名ニュートロン−P)2重量部を用いた以外は、AB−Aと同様にしてオレイン酸アミド2重量%のマスター樹脂を作製した。
[脂肪酸アミドのエチレン・ブタン・プロピレンマスタ−C(AB−C)]
脂肪酸アミドとして、日本精化(株)ステアリン酸アミド(商品名ニュートロン−2)2重量部を用いた以外は、AB−Aと同様にしてステアリン酸アミド2重量%のマスター樹脂を作製した。
(実施例1)
ポリエステルフィルムとして、PET−A、PBT−AおよびPET−Bのポリエステルを表1の配合で混合した。さらに別途ステアリルリン酸(旭電化(株)製の“アデカスタブ”AX−71)0.1重量%を添加し、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は280℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加し、表面温度50℃に調整した鏡面キャスティングドラム(CD)に密着させ、溶融状態から冷却固化し、厚み100μmのポリエステル無延伸フィルムを得た。
ポリオレフィンフィルムとして、住友化学(株)製エチレン・ブタン・プロピレン共重合体(FL6633A、エチレン量=2.1%、ブタン量=5.5%、MI=6g/分、融点=137℃)97.5重量%、脂肪酸アミドとして、AB−Cを2.5重量%(脂肪酸アミド添加量0.05重量%)の混合物を用い、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は230℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部を50MPa圧空で表面温度20℃に調整した梨地キャスティングドラムに密着させ、溶融状態から冷却固化し、厚み100μmのポリオレフィン無延伸フィルムを得た。
このポリオレフィン無延伸フィルムに、ポリウレタン接着剤{三井武田ケミカル(株)製“タケラック”A610(濃度35〜45%)/三井武田ケミカル(株)製“タケネート”A50(濃度20〜30%)=9/1(混合重量比)、25重量%酢酸エチル溶液}を用いて、100℃で溶剤を乾燥後上記ポリエステル系無延伸フィルムを貼り合わせて、貼り合わせフィルムを作製した。
得られた、貼り合わせフィルムのポリオレフィンフィルム面側に、120℃に加熱した深さ300μm、大きさ0.4mm角刻印ロールと紙ロールの間に4m/分の速度で通し、200MPaの圧力で加圧し、室温に急冷して、平均凹凸深さ15μmのエンボス加工を施し、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムを作製した。
次に、得られた転写箔用貼り合わせフィルムのエンボス加工面に、順にトップコート層、印刷層、接着層を形成して、転写箔を作製した。トップコート層として、紫外線硬化型アクリル系樹脂{BASFジャパン(株)製“LAROMER”LR8983}を厚み60μmで、印刷層として、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)製“ハイラミック”、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)を厚み70μmで形成し、さらに、接着層として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)製ABSフィルム“ハイフレックス”、厚み100μm)を用いた。印刷層を硬化させるために40℃の温度で72時間エージングを行った。
次に、絞り比1.0、直径50mmカップ凹金型、射出成型機、成形樹脂として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂(東レ(株)製、ABS樹脂“トヨラック”930)を用い、射出成形して、ABS共重合樹脂製カップ型成形物を作製した。
さらに、上記転写箔を温度80℃に加熱し、転写箔の接着層面側にABS共重合樹脂製カップ型成形物を配して、圧空成形機を用い、85℃の温度で転写成形した。圧力解放後、転写箔を貼り付けたまま、トップコート層を波長365nmの紫外線を用い紫外線硬化させた後、外表面の貼り合わせフィルム層を剥離して、外表面から印刷が見えるABS樹脂製カップ型成形物を作製した。
得られたABS共重合樹脂製成形物は、表面に表れた印刷がエンボス加工の効いた印刷で深みのある、優れた意匠性で、しかも形のきれいな成形物であった。
(比較例7)
ポリエステルの配合組成を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同等の手法により厚み50μmのポリエステル無延伸フィルムを得た。
ポリオレフィンフィルムとして、住友化学(株)製直鎖状低密度ポリエチレン(FZ202−0、融点=118℃)98.5重量%、脂肪酸アミドとして、AB−Aを1.5重量%(脂肪酸アミド添加量0.03重量%)の混合物を用い、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は230℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部を50MPa圧空で表面温度20℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ、溶融状態から冷却固化し、厚み50μmのポリオレフィン無延伸フィルムを得た。
得られたポリオレフィン無延伸フィルムにポリエステル無延伸フィルムを実施例1と同等の手法により貼り合わせて、転写箔用貼り合わせフィルムを得た。
次に、得られた転写箔用貼り合わせフィルムのポリオレフィン面に、実施例1と同等の手法によりトップコート層、印刷層、接着層を順次、積層し転写箔を作製した。印刷層のインキは、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)“NT−ハイラミック”、主要溶剤:酢酸エチル/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:12銀)を用いた。
次に、得られた転写箔を用い、実施例1と同等の手法で転写成形して、ABS共重合樹脂製カップ型成形物を作製した。
(実施例2)
ポリエステルの配合組成を表1の通りに変更し、鏡面キャスティングドラムへの密着の方法を針状エッジピニング装置を用いた端部静電印加方式から、ワイヤーを用いた全面静電印加方式に変更し、さらに押出温度を290℃と変更した以外は、実施例1と同等の手法により厚み80μmのポリエステル無延伸フィルムを作製した。
ポリオレフィンフィルムとして、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体に脂肪酸アミドとして、AB−Aを1重量%(脂肪酸アミド添加量0.02重量%)添加した以外は実施例1と同等の手法にて厚み125μmのポリプロピレン系無延伸フィルムを作製し、実施例1と同等の手法により貼り合わせて、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムを得た。
次に、研磨布(日本研紙(株)製“レジンクロス”SRCX-S16)を巻き付けた金属ロールの表面(研磨布)にフィルムをフリーロールで押し付け、その状態のままフィルムを走行させ、かつ、フィルム走行方向と逆方向に金属ロールを回転させて、ポリオレフィン面にヘアーライン加工を施し、平均凹凸深さ0.9μmの転写箔用貼り合わせフィルムを作製した。
次に、得られた転写箔用貼り合わせフィルムのヘアーライン加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写箔を得て、転写成形して、ABS共重合樹脂製成形物を得た。
(比較例8)
ポリエステルの配合を表1の通りに変更し、キャスティングドラムの温度を20℃と変更した以外は、実施例2と同等の手法にてポリエステル無延伸フィルムを作製した。
ポリオレフィンフィルムとして、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体に脂肪酸アミドとして、AB−Aを5重量%(脂肪酸アミド添加量0.01重量%)添加した以外は実施例1と同等の手法にて厚み80μmのポリプロピレン系無延伸フィルムを作製し、実施例1と同等の手法により貼り合わせて、貼り合わせフィルムを得た。
次に、ポリプロピレン系無延伸フィルム面に新東ブレーター製エアーブラスター“MYBLAST”MY−30Aを用い、粒径10〜200μmのセラミック系噴射材、0.5MPaの圧縮空気で3秒間フィルム表面に均一に吹き付け、サンドブラストを施した。平均凹凸深さ0.4μmのサンドブラスト表面有する、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムを作製した。
次に、得られた転写箔用貼り合わせフィルムのエンボス加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写箔を得て、転写成形して、ABS共重合樹脂製成形物を得た。
(比較例9)
ポリエステルの配合を表1の通りに変更し、実施例1と同等の手法で、厚み30μmのポリエステル無延伸フィルムを得た。ポリオレフィンフィルムとして、住友化学製エチレン・ブタン・プロピレン共重合体(FL6633A、エチレン量=2.1%、ブタン量=5.5%、MI=6g/分、融点=137℃)、脂肪酸アミドとして、AB−Aを0.25重量%およびAB−Cを0.25重量%(脂肪酸アミド合計添加量0.01重量%)の混合物を用い、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は230℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部を50MPa圧空で表面温度20℃に調整した梨地キャスティングドラムに密着させ、溶融状態から冷却固化し、厚み30μmの梨地転写のポリオレフィン無延伸フィルムを得た。
先に得たポリエステル無延伸フィルムとポリオレフィン無延伸フィルムのCD面の反対面とを実施例1と同等の手法で貼り合わせた。平均凹凸深さ0.4μmの梨地表面を有する、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムを作製した。
次に、得られた転写箔用貼り合わせフィルムのエンボス加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写箔を得て、転写成形して、ABS共重合樹脂製成形物を得た。
実施例1および2で得られたポリオレフィンフィルムは、表1に示した通り、脂肪酸アミドの添加量および厚み斑を特定範囲内にすることにより、透明性、ブロッキング性が優れ、転写箔の塗剤が均一に塗工でき、成形時の予熱および加熱に対して、塗剤の剥離がなく、成形でも、ポリエステル無延伸フィルムをポリオレフィンフィルムに積層することにより、成形性、剥離性に優れたものが得られた。また、実施例1では、ポリオレフィンフィルム面に凹凸加工を施すことにより、成形物の表面に現れた印刷が、それぞれエンボス模様、金属の地肌調、半光沢、梨地調で意匠性に優れたものが得られた。
(比較例1)
厚み200μmとした以外は、実施例5と同等の手法でポリオレフィンフィルムを得た。このフィルムを用い、実施例1と同等の手法でエンボス加工を施し、エンボス加工フィルムを得て、エンボス加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形して、ABS共重合樹脂成形物を得た。
得られたポリオレフィンフィルムは、脂肪酸アミドの添加量および厚み斑が特定範囲外であるので、ブロッキング性が劣り、取り扱い性が悪く、塗剤の塗工性も劣るものであった。また、ポリエステル無延伸フィルムが貼り合わされてないため、成形では成形性が劣り、また成形物との剥離性が劣るものであった。
(比較例2)
ポリエステルの配合組成を表1の通りとし変更した以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムを作製した後、90℃で予熱後、95℃にて長手方向に3.0倍にロール延伸し、さらに110℃で予熱後、幅方向に115℃で3.3倍にテンター延伸した後、230℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚みを50μmに調整したポリエステル2軸延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの面配向係数は0.16であった。得られたポリエステル2軸延伸フィルムに実施例1と同等の手法でポリオレフィンフィルムと貼り合わせて、貼り合わせフィルムを得た。
次に、ポリオレフィン面に実施例3と同等の手法で、ヘアーライン加工を施し、平均凹凸深さ0.9μmの表面加工フィルムを作製した。ヘアーライン加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形してABS共重合樹脂成形物を得た。
得られたポリオレフィンフィルムは、滑剤が脂肪酸アミドでないため、ブロッキング性は良いものの、透明性が劣るものであった。また、成形ではポリエステルフィルムが2軸延伸フィルムのため、成形物に追従せず、成形性が劣るものであった。
(比較例3)
ポリエステルの配合組成を表1の通りとし変更した以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムを作製した後、85℃で予熱後、90℃にて長手方向に3.1倍にロール延伸し、さらに110℃で予熱後、幅方向に115℃で3.3倍にテンター延伸した後、熱処理をフィルム温度200℃にて幅方向に5%の弛緩、5秒間行ったと変更したこと以外は、比較例2と同等の手法により、厚み50μmのポリエステル2軸延伸フィルムを得た。
ポリオレフィンフィルムとして、住友化学(株)ブロック型エチレン・プロピレン共重合体(WF183C、エチレン量=8%、融点=165℃)を用い、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は230℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部を50MPa圧空で表面温度20℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ、溶融状態から冷却固化し、厚み100μmのポリオレフィン無延伸フィルムを得た。
また、実施例1と同等の手法でポリオレフィンフィルムと貼り合わせて、貼り合わせフィルムを得て、ポリエステル無延伸フィルム面に実施例1と同等の手法でエンボス加工を施し、エンボス加工面に実施例2と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形してABS共重合樹脂成形物を得た。
得られたポリオレフィンフィルムは、脂肪酸アミドを含有していないため、ブロッキング性がやや劣り、透明性が劣り、成形では、成形物に追従せず、成形性および剥離性が劣り、成形物は塗剤がシワになり、外観が劣るものであった。
(比較例4)
ポリエステルの配合組成を表1の通りと変更した以外は実施例1と同等の手法により厚み120μmのポリエステル無延伸フィルムを得た。次に、ポリプロピレン系無延伸フィルム面に新東ブレーター製エアーブラスター“MYBLAST”MY−30Aを用い、粒径10〜200μmのセラミック系噴射材、0.5MPaの圧縮空気で3秒間フィルム表面に均一に吹き付け、サンドブラストを施して、平均凹凸深さ0.4μmの表面加工フィルムを作製した。サンドブラスト加工面に実施例1と同等の手法で、トップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形してABS共重合樹脂成形物を得た。
得られたポリオレフィンフィルムは、脂肪酸アミド添加量および厚み斑が特定範囲外で塗剤の塗工性が劣り、また、貼り合わせフィルムの成形時の予熱・加熱で塗剤が剥離し、成形物は塗剤がシワになり、外観が劣るものであった。
(比較例5)
ポリエステルの配合組成を表1の通り変更した以外は、実施例1と同等の手法により厚み90μmのポリエステル無延伸フィルムを得た。また、実施例1と同等の手法でポリオレフィンフィルムとして東レ製“トレファン”2500S(厚み60μm)と貼り合わせて、貼り合わせフィルムを得て、ポリオレフィンフィルム面に実施例1と同等の手法でエンボス加工を施し、エンボス加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形してABS共重合樹脂成形物を得た。
ポリオレフィンフィルムが2軸延伸フィルムのため、成形物に追従せず、成形性に劣るものであった。
(比較例6)
ポリエステルフィルムとして、比較例2と同等の手法により、厚みを100μmに調整したポリエステル2軸延伸フィルムを用い、また実施例1と同等の手法でポリオレフィンフィルムとして東レ製“トレファン”2500S(厚み60μm)と貼り合わせて、貼り合わせフィルムを得て、ポリオレフィンフィルム面に実施例1と同等の手法でエンボス加工を施し、エンボス加工面に実施例1と同等の手法でトップコート層、印刷層、接着層を積層し、転写成形してABS共重合樹脂成形物を得た。
ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムが2軸延伸フィルムのため、成形物に追従せず、成形性に劣るものであった。
但し、表中の略号は以下の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
PPT:ポリプロピレンテレフタレート
CPP:ポリプロピレン系無延伸フィルム
LLD-PE:直鎖状低密度ポリエチレン無延伸フィルム
b-EPC:ブロック型-エチレン・プロピレン共重合無延伸フィルム
PP-BO:ポリプロピレン2軸延伸フィルム
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
DMT量:全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分の割合(モル%)
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
F500値:500%伸長時の応力
本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、印刷性、成形性、離型性、意匠性に優れるため、転写箔用フィルムとして好ましく用いることができる。すなわち、本発明の転写箔用貼り合わせフィルムは、各種塗剤を塗工し、転写箔を成形物に転写した場合に、均一に転写箔を転写することができ、優れた意匠性の成形物を得ることができるため、建材用化粧シート、自動車内外装部品、浴室パネル、家電製品用部品、包装容器などに好適に用いることができる。