本発明は、繊維直径がナノメーターサイズである極細繊維(以下、ナノファイバーと称する。)の集合体からなる合成紙およびその製造方法に関する。
最近、電子材料分野、食品加工分野、医療分野、超純水分野、化粧水分野、分析機器や分析用材料分野などで使用する紙において、不純物の少ない紙や、多くの分野で多様化する要求に対応するための機能性合成紙が求められている。具体的な材料の例としては、フィルター(例:エアーフィルター、ケミカルフィルター、浄水用フィルター)、マスク用フィルター、電池セパレータ、メディカル分野の血液フィルター材料、体外循環用基材、細胞培養基材、電子材料の絶縁材、電子用基材、化粧用紙、ワイピング紙、家具用化粧紙や壁紙、高級印刷用ペーパ、設計用ペーパ、高画質印写用ペーパなどがある。
このような分野において、従来の天然繊維と同じように繊維が割けてフィブリルを生成する抄紙可能な熱可塑性高分子からなる合成繊維が求められており、該繊維のみからなる合成紙ができれば、不純物の問題や多様化する機能性の付与も熱可塑性高分子の選択によって非常に容易に行うことができ、また幅広く対応することが可能になる。
しかし、従来の合成繊維では湿式のアクリル繊維やポリプロピレンフィルムをフィブリル化した例はあるが、他の熱可塑性合成繊維では、フィブリル化することは非常に困難であった。また、繊維直径が1〜10μm極細繊維の合成紙も検討されているが、天然パルプ(例:セルロース繊維)のようなフィブリル化は困難であって、極細繊維を均一分散することはできても、繊維同士が絡んで単独で抄紙できほどの絡み性はなく、接着用のバインダーや天然パルプを添加しないと抄紙が困難であった。
熱可塑性高分子の極細繊維から合成紙を作製する方法は従来から各種方法で検討されてきた。従来の通常合成繊維の単繊維数平均直径は10μm以上と太く、これを天然パルプやセルロースのようにミクロフィブリルまで叩解を進めてしまうと、粉末状になってしまいフィブリル化が困難で、太い繊維同士の絡み合いが少なく、地合の良好な合成紙を得ることは困難であった。このため、例えば繊維直径が約13μmの場合(特許文献1参照)、約11μmの場合(特許文献2参照)において、融着繊維をバインダーとして利用し合成紙を製造していたが、単独成分で抄紙は困難であった。
また、単繊維数平均直径が0.5〜10μmの熱可塑性繊維を利用した合成紙について検討が続けられている。例えば、海島複合繊維の海成分を適切な溶剤で除去する方法によってポリエステル繊維からなる極細繊維が得られるように、極細繊維の基本的製造方法が古くから既に開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。しかし、それらは極細繊維によってペーパーライクなものができることを示唆しているが、実用的な合成紙を開示してはいない。
その後、極細繊維の合成紙は、10μm以下の海島型複合繊維や分割型複合繊維を高圧液体流で処理する方法など各種製造方法(例えば、特許文献5、6、7、8参照)が提案されているがフィブリル化が困難であり、やはり融着繊維をバインダーとして利用し合成紙を製造しており、単独成分で抄紙は困難であった。直径が1.5〜4μmのポリエステル合成紙の例(特許文献6参照)、成分の異なるポリオレフィン樹脂の分割型複合繊維を叩解処理し繊維径が約5μmの合成紙の例(特許文献7参照)、海島型複合繊維、分割型複合繊維の極細集束繊維と該短繊維による繊維径が2〜7μmの合成紙の例(特許文献8参照)などの例において、水中で極細繊維を叩解、分散する工程が示されているが、この方法によっても、該極細繊維単独で抄紙ができるような絡み性を得ることはできず、接着用のバインダーや天然パルプの配合が必要であった。
また、上記の電子材料分野、食品加工分野、医療分野、超純水分野、化粧水分野、分析機器や分析用材料分野などにおいて、不純物を非常に嫌う分野が増えており、単一成分の高分子からなる合成紙が要求されている。このため、フィブリル化して単独で抄紙可能な高分子繊維が求められていたが、極細繊維を含め、従来の繊維では対応ができなかった。また、高分子ブレンド繊維により超極細繊維を得る方法が提案されているが(例えば、特許文献9、10参照)、ここで得られる単繊維直径は最も細いもの0.4μmであるが、単繊維間で直径のバラツキが多く1μmを越える繊維も多く含まれている。また、本発明の紡糸用ブレンド原料と異なり従来のブレンド法では島成分同士が紡糸中に合流するため、繊維の分散が阻害され実質太径繊維的になる欠点があった。これらの欠点のため、従来の繊維では本格的なフィブリル化が不十分で絡み性も小さく抄紙性が不十分であった。
以上説明したように、高分子に制約がなく、フィブリル化が可能で、単独成分で抄紙性があり、不純物の少なく広く応用展開可能な溶融性高分子の合成紙が求められていた。
特公昭49−8809号公報
特開平1−118700号公報
米国特許第3382305号明細書(1968)
米国特許第354603号明細書(1970)
特開昭56−169899号公報
特開平4−10992号公報
特開2003−59482号公報
特開2003−253555公報
特開平3−113082号公報
特開平6−272114号公報
溶融性高分子の種類に制約がなく、フィブリル化が可能で、単独成分で抄紙性があり、不純物が少なく、各種分野に幅広く応用展開可能な熱可塑性高分子合成紙とその製造方法を提供することにある。
前記課題は、次の手段によって達成される。
すなわち、本発明の合成紙は、単繊維数平均直径が1〜500nmで、単繊維比率の和Paが60%以上であり、熱可塑性高分子が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアリーレン、フェノール樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、フッ素系高分子、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種であるナノファイバー集合体からなることを特徴とするものである。
また、本発明の複合合成紙は、前記合成紙を含むことを特徴とするものである。
さらにまた、本発明の合成紙成型品は、前記合成紙を含むことを特徴とするものである。
本発明の合成紙の製造方法の一態様は、ナノファイバー集合体をフィブリル化し、バインダーを用いることなく該フィブリルを抄紙することを特徴とするものである。
また、本発明の合成紙の製造方法の他の態様は、フィブリル化したナノファイバー集合体をバインダーとして、他の非フィブリル化繊維を抄紙することを特徴とするものである。
本発明により、従来の繊維では困難であったフィブリル化が可能な熱可塑性高分子からなる繊維が得られ、該繊維によりバインダーなしで熱可塑性高分子からなる繊維単独で抄紙が可能となるため、ナノファイバー集合体のみからなる合成紙を得ることができる。
本発明によって得られた合成紙は、100%熱可塑性高分子であり不純物を含んでいないため、不純物を嫌う合成紙を必要とする電子材料分野、食品加工分野、医療分野、超純水分野、化粧水分野、分析機器や分析用材料分野などに展開可能である。
また、本発明の部分フィブリル化したナノファイバー集合体はバインダーなしで容易に抄紙ができ、ナノファイバー集合体のみからなる合成紙や該ナノファイバー集合体をバインダーとして他の繊維と複合した合成紙の製造方法を提供する。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明において熱可塑性高分子としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアリーレン等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの他、液晶ポリエステル等も挙げられる。また、ポリアミドとしてはナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)などが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポロプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。ポリアリーレンとしてはポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられる。上記した熱可塑性高分子以外にも、フェノール樹脂やポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスルホン、フッ素系高分子やそれらの誘導体を用いることももちろん可能である。これらの高分子の中でも、耐熱性の点から、融点165℃以上の高分子を用いることが好ましい。より好ましくはポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系高分子の中で高い融点を有するものである。各高分子の融点は、例えばPPは165℃、PLAは170℃、N6は220℃、PETは255℃である。また、これらの高分子には微粒子、難燃剤、帯電防止剤等の配合剤を含有させてもよい。また、ポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。さらに、溶融成形の容易さから、融点300℃以下の高分子であることが好ましい。
特にPPSは優れた耐熱性や耐薬品性を示し、さらに低吸湿性であることから、合成紙とした時の寸法安定性にも優れるため、電子情報分野における絶縁紙や回路基盤などの用途に好適に用いることができる。
通常よく用いられる繊維の繊度(dtex)と単繊維の直径φ(μm)との間には下記(1)式が成立する。
φ=10×(4×dtex/πρ)1/2 (1)
ここで、dtex:10000mの繊維が重さ1gとなる繊維の太さ(JIS L 0101)
また、比重が1.14(N6相当)で換算すると、単繊維の直径φ(μm)は、次式で求められる。
φn6=10.6×(dtex)1/2
本発明の合成紙に含まれるナノファイバーは、単繊維数平均直径が1〜500nmの範囲内にあるものである。そして、本発明では、ナノファイバーの単繊維直径の平均値およびバラツキが重要である。ここで、単繊維数平均直径は、後述する実施例中の測定法「E.ナノファイバー集合体合成紙のSEM観察」および「F.ナノファイバーの単繊維数平均直径φm」によって評価され、単繊維直径のバラツキは、「E.ナノファイバー集合体合成紙のSEM観察」および「F.ナノファイバーの単繊維数平均直径φm」、「G.ナノファイバーの単繊維比率の和Paの評価」と「H.ナノファイバーの単繊維数平均直径の集中度指数Pbの評価」によって表される。
本発明のナノファイバー集合体合成紙の表面SEM写真の一例を図3に示す。単繊維数平均直径は、ナノファイバー集合体合成紙表面のナノファイバーを超高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一表面内で無作為抽出した30本の単繊維直径をnm単位で小数の1桁目まで測定して少数の1桁目を四捨五入する。これを10枚の合成紙で評価し、合計300本の単繊維直径をそれぞれ測定して、それらの単純平均を求める。これを「単繊維数平均直径(φm)」と本発明では呼ぶ。本発明では単繊維数平均直径が1〜500nmであることが重要である。これは従来の海島複合紡糸などによる極細繊維に比べ1/100〜1/100000という細さであり、これにより本発明では従来の極細繊維を使った合成紙に比べて地合が良好で、かつ比表面積の大きな高性能の合成紙を得ることができる。単繊維数平均直径は1〜200nmであることが好ましく、1〜150nmであることがより好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましい。特に本発明の合成紙をフィルターに利用する場合には高性能・高効率捕集が要求特性とし求められ、セパレーターなどに利用する場合には液体の遮蔽性が高いことが要求特性として求められることから、ナノファイバーの単繊維直径はより小さいことが望ましく、この場合には単繊維数平均直径が1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましい。
次に、単繊維直径のバラツキを評価する「単繊維比率の和Pa」と「集中指数Pb」について説明する。
上述で求めた単繊維直径から分布表を作成するために、単繊維数平均直径φが500nm以下の場合は1区画を10nmとして、単繊維数平均直径φが500nmを超える場合は1区画を50nmとして、n個に区分けし、各区分の両端の平均値をφiとする。同じ直径区分に入る単繊維直径を持つナノファイバーの頻度fiを数え、分布表を作成する。この頻度fiを測定サンプル総数Nで割ったものをその単繊維直径の比率Piとし、Piを1から500nmの範囲内にある区画rまで単純に加算したものを単繊維比率の和Paとする。
N=Σfi (i=1〜n) (2)
Pa=Σ(fi/N)×100 (i=1〜r) (3)
本発明においてナノファイバーではPaが60%以上であることが重要であり、70%以上であることがさらに好ましい。Paは大きいほど本発明でいうナノファイバーの本数比率が多く、粗大な単繊維直径のものが少ないことを意味している。これにより、ナノファイバーの機能を十分に発揮することができ、また製品の品質安定性も良好とすることができる。
また、単繊維直径の集中度指数Pbは、単繊維の平均直径付近の集中度を示す。上述のとおりに得られた各直径区画の頻度fiを利用し、このデータを基に「各直径区分のφiの2乗値χiに対する頻度fjの分布表」を作成する。この頻度fjを測定サンプル総数Nで割り、χiの区画まで単純に加算したものをPjとして、χiに対するPjの表を予め作成する。
Pj=Σ(fj/N)×100 (j=1〜n) (4)
各直径区分φiの2乗値χiは繊維(円筒形)の重量に比例するので、(1)式からわかるようにdtex、即ち繊度に対する分布に対応する。このχiに対する「積算頻度割合Pj」をマイクロソフト(Microsoft)社製エクセル(Excel)(商品名)でグラフ作成した後、近似関数Q(χiの6次関数とし、かかる係数や定数は有効桁数5桁とする)を作成する。その後、単繊維数平均直径φmに15nmプラスしたものの2乗値をχa、φmに15nmマイナスしたものの2乗値をχbとすると、単繊維直径の集中指数Pbは下記式から求められる。
Pb=Q(χa)−Q(χb) (5)
本発明において、合成紙中のナノファイバー全単繊維は単繊維数平均直径φmを中央値として、その前後30nm幅に入る繊維の割合を表す単繊維直径の集中度指数Pbが60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。このことは、単繊維数平均直径付近への単繊維直径のバラツキの集中度を意味しており、Pbが高いほど単繊維直径のバラツキが小さいことを意味している。実際の単繊維数平均直径φm、単繊維比率の和Pa、単繊維直径集中指数Pbの実際の測定法は、後述実施例中に示した。
従来の合成紙に含まれる極細繊維の繊維直径は通常1μm以上であり、1μm以下の繊維が含まれていても全体としてみた場合には繊維直径のバラツキが大きく、繊維自体に絡合性がないため、安定した抄紙が困難であった。また、抄紙を可能にするために、太い繊維直径のPVA繊維バインダーやパルプ性のバインダーなどを併用すると、本来目的としている合成繊維を100%使用した合成紙が得られず、特に、バイオや電池用セパレータなどの他の不純物を嫌う分野やメディカル分野での手術用の癒着防止膜のように薄くて精度が要求される分野には従来の極細繊維では対応が困難であった。
本発明の合成紙ではナノファイバーを用いることで、ナノファイバー単独で抄紙可能であるため、上述の問題を解決することができる。
また、本発明の合成紙中のナノファイバーの単繊維数平均直径は従来の極細繊維の1/10〜1/100であるため、比表面積が飛躍的に大きくなるという特徴がある。このため、該ナノファイバーは表面積の大きな超微粒子と同様に表面積を少なくするため凝集し易い。比較的少ない本数が集合したナノファイバー集合体部分、すなわちナノファイバー集合体の細い部分同士の凝集や絡み合い作用は、従来の極細繊維と比較して非常に大きく、天然パルプのフィブリル繊維と同等の作用が期待できる。一方、比較的多い本数が集合したナノファイバー集合体部分、すなわちナノファイバー集合体の太い部分は、天然パルプの幹部分と同様に、抄紙する時の補強効果と、フィブリルの凝集を阻害して適度の空隙を保持する効果が期待できる。
このように、本発明の合成紙は、天然パルプのように熱可塑性高分子のナノファイバー集合体を部分フィブリル化し、ナノファイバー集合本数の分布を調節して抄造する方法で製造される。これにより、実施例1のように、本発明はバインダーや補強用シートなしで抄紙するナノファイバー集合体合成紙の製造方法を提供する。
また、このようなナノファイバーフィブリルを得るにはナノファイバー集合体の濾水度が100以上、さらに200以上が好ましく、350以上がさらに好ましい。また、本発明の合成紙中には、ナノファイバーが叩解時に損傷を受けて粉体状になった繊維屑や他のバインダーも含まれず、熱可塑性高分子のナノファイバー集合体のみからなる合成紙を作製することができ、不純物や異物を嫌う分野の合成紙として有用である。
また、得られたナノファイバー集合体中のナノファイバーは通常の極細繊維では見られない特有の性質を示し、吸着特性の大幅な向上が期待できる。すなわち、水蒸気の吸着(すなわち吸湿性)や薬品の蒸気(臭気)、微粉末、粉塵などを吸着し易い。
例えば、従来のN6極細繊維からなる合成紙では吸湿率が2.8%程度(後述の比較例10)であるのに比べ、本発明のN6ナノファイバー合成紙では吸湿率が5.8%(後述の実施例1)になった。
メディカルやバイオ分野における細胞培養や蛋白吸着・除去においてナノサイズの材料が重要になってきているが、背景技術で述べたように従来の繊維では繊維直径を均一に制御することが不十分であった。本発明のナノファイバー集合体合成紙中や合成紙表面に存在するナノファイバーは、細胞や蛋白(各種血液中に存在する蛋白、酵素、細菌、ウィルスなど)などの吸着部位の大きさとサイズ的に適合しており、ナノファイバーとこれらの細胞や蛋白の直接的な相互作用が期待されるため、メディカルやバイオ用の吸着材料としても有用である。また、天然合成紙に比較して、材料が均一で再現性があり、また、カビや雑菌が付着しにくいため防腐剤などの不純物を混入しなくてよい。
このような用途に使用されるナノファイバー集合体合成紙は、その機能として合成紙の表面や浸透あるいは遮蔽を利用する場合と流体や微粒子などを透過させて利用する場合がある。前者の場合は、用途として、電池用セパレーターや研磨布などが挙げられるが、合成紙の目付が比較的高いほうが好ましく、合成紙を目的とする構造体に加工する際のシートの柔軟性やナノファイバーの合成紙中でのパッキング性を考慮すると、合成紙の目付を500g/m2以下にすることが好ましく、300g/m2以下にすることがより好ましくも、100g/m2以下にすることがさらに好ましい。ナノファイバー集合体は、集合数の大きな幹部分があり、ナノファイバーが凝集しにくいので適度の密度になり、柔軟性があり曲げ易く折れにくいので、該合成紙の加工性に優れる。
さらに、後者の場合、用途として、エアフィルターや液体フィルターならびに血液フィルターなどのメディカル製品などが挙げられるが、合成紙の密度との関係もあるが、気体や液体を透過するにはなるべく薄い方が好ましく、100g/m2以下にすることが好ましく、50g/m2以下にすることがさらに好ましい。
また、ナノファイバー集合体複合紙の場合、ナノファイバー成分として、50g/m2以下が好ましく、10g/m2以下がより好ましく、1g/m2以上が更に好ましい。
ナノファイバー集合体にはナノファイバーが多く集合した幹成分があるため、該繊維で構成される空隙が大きく均一である。この空隙の形成は、ナノファイバー集合体の集合数の分布や高分子の種類や、その曲げ剛性率、ナノファイバーの直径などによる繊維屈曲分布や繊維間同志の絡み合いなどに影響される。ナノファイバー集合体合成紙の空隙を確保するには、該合成紙の密度が0.2以上が好ましく、0.3以上が更に好ましく、0.4以上が更に好ましい。ナノファイバー集合体合成紙中のこのような空隙は、該空隙中に存在するナノファイバーがナノレベルでの各種の微粒子(以下微粒子、粉塵、異物、各種蛋白、細菌などの総称)と直接作用する空間を提供し、ナノファイバー同士の凝集を阻止しナノファイバーの実質の接触面積を増大させることができる。また、ナノレベルでの作用を活かした機能性合成紙が期待される。
次に、本発明の合成紙に用いるナノファイバーの製造方法について説明する。
最初に、ナノファイバーの作製原料となる「高分子アロイ繊維」の製造方法について説明する。該高分子アロイ繊維の製造方法は、例えば、以下のような方法を採用することができる。
すなわち、溶剤や薬液に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子をアロイ化した高分子アロイチップを作製し、これを紡糸装置(図1参照)のホッパー1に投入し、溶融部2でアロイ溶融体とし、加熱保温用スピンブロック3中の紡糸パック4に配した口金孔5から吐出紡糸した後、チムニー6で冷却固化し糸条7を形成し、集束給油ガイド8、第1引取ローラ9、第2引取ローラ10を経て巻取機11で繊維を巻取る。そしてこれを必要に応じて延伸・熱処理を施し、高分子アロイ繊維を得る。さらに、これを溶剤や薬液で処理して海成分を脱海し、本発明で用いるナノファイバーを得る。ここで、高分子アロイ繊維中で後にナノファイバーとなる溶剤や薬液に難溶解性の高分子を島成分とし、易溶解性の高分子を海成分とし、この島成分のサイズを制御することによって、ナノファイバーの単繊維数平均直径とバラツキを設計することができる。
ここで、島成分のサイズは、高分子アロイ繊維の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、直径換算で評価したものである。該高分子アロイ繊維中の島成分の単繊維数平均直径の評価方法は、後述する実施例中の測定法のF項、G項に示した。ナノファイバー前駆体である高分子アロイ繊維中での島成分サイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、島サイズの分布はナノファイバーの直径分布に準じて設計される。このため、アロイ化する高分子の混練が非常に重要であり、本発明では混練押出機や静止混練器等によって高混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(例えば特開平6−272114号公報)では混練が不足するため、数十nmサイズで島成分を分散するのは困難である。
具体的に混練を行う際の目安としては、組み合わせる高分子にもよるが、混練押出機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。また、島成分を数十nmサイズで超微分散させるには、高分子の組み合わせも重要である。
島ドメイン(ナノファイバー断面)を円形に近づけるためには、島高分子と海高分子は非相溶であることが好ましい。しかしながら、単なる非相溶高分子の組み合わせでは島成分高分子が十分に超微分散化し難い。このため、組み合わせる高分子の相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメーター(SP値)である。ここで、SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2 で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近いもの同士では相溶性が良い高分子アロイが得られる可能性がある。SP値は種々の高分子で知られているが、例えば「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス株式会社プラスチック編集部編、1999年12月1日株式会社工業調査会発行)の189ページ等に記載されている。
2つの高分子のSP値の差が1〜9(MJ/m3)1/2であると、非相溶化による島成分ドメインの円形化と超微分散化が両立させやすく好ましい。例えば、N6とPETはSP値の差が6(MJ/m3)1/2程度であり好ましい例であるが、N6とPEはSP値の差が11(MJ/m3)1/2程度であり好ましくない例として挙げられる。
また、高分子同士の融点差が20℃以下であると、特に押出混練機を用いた混練の際、押出混練機中での融解状況に差を生じにくいため高効率混練しやすく、好ましい。ここで、非晶性高分子の場合は融点が存在しないためビカット軟化温度あるいは熱変形温度でこれに代える。
さらに、溶融粘度も重要であり、島を形成する高分子の方を低く設定すると剪断力による島高分子の変形が起こりやすいため、島高分子の微分散化が進みやすく、ナノファイバー化の観点から好ましい。ただし、島高分子を過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島高分子粘度は海高分子の粘度の1/10以上とすることが好ましい。また、海高分子の溶融粘度は紡糸性に大きな影響を与える場合があり、海高分子として100Pa・s以下の低粘度ポリマーを用いると島高分子を分散させやすく好ましい。また、これにより紡糸性を著しく向上できるのである。このとき、溶融粘度は紡糸の際の口金温度で剪断速度1216sec−1での値である。
また、曳糸性や紡糸安定性を高めるために、口金温度は海高分子の融点から25℃以上、口金から冷却開始までの距離を1〜15cmとし、糸の冷却を行うことが好ましい。
紡糸速度は紡糸過程でのドラフトを高くする観点から高速紡糸ほど好ましく、100以上のドラフトが、ナノファイバー直径を小さくする観点から好ましい。また、紡糸された高分子アロイ繊維には延伸・熱処理を施すことが好ましいが、延伸の際の予熱温度は島高分子のガラス転移温度(Tg)以上の温度が、糸斑を小さくする点で好ましい。
本製造方法は、以上のような高分子の組み合わせ、紡糸・延伸条件の最適化を行うことで、島高分子が数十nmに超微分散化し、しかも糸斑の小さな高分子アロイ繊維を得ることを可能にするものであり、ある断面だけでなく長手方向のどの断面をとっても島高分子直径バラツキの小さな「高分子アロイ繊維」とすることができるのである。
以上の方法によって紡糸される「高分子アロイ繊維」は、通常の単繊維繊度は1〜15dtex(10〜40μm)であり、さらに該繊維フィラメントを集めた集束糸(5000dtex以下)とすることができる。また、繊維の単繊維直径にもよるが、「高分子アロイ繊維」の単繊維中には数千〜数百万本のナノファイバーの前駆体である島高分子(数wt%〜80wt%)が海成分中に分散している(図2参照)。
次に、ナノファイバー集合体合成紙の作製方法について説明する。
「高分子アロイ繊維」からナノファイバー集合体を作製し、さらにこれを抄紙して合成紙とするには、まず最初に、「高分子アロイ繊維」の集束糸の状態で脱海してナノファイバー束を得て、その後カットするか(先脱海法)、「高分子アロイ繊維」の集束糸をカットしてから脱海するか(後脱海法)、どちらかの方法でナノファイバー短繊維を得た後得られたナノファイバー短繊維を叩解機によって叩解するが、フィブリル化を調整し、得られたフィブリル化繊維を通常の方法で抄紙して、ナノファイバー集合体合成紙を得ることができる。
フィブリル化の程度は、実施例の評価方法の「N.ナノファイバーの濾水度試験方法」によって測定される。調整される濾水度は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、350以上が更に好ましい。
次に、本発明の合成紙の製造方法について詳しく説明する。
先脱海法の場合、初めに通常「高分子アロイ繊維」集束糸(5000dtex以下)のカセの状態やさらに集束したトウ(5000を超えて〜数百万dtex)の状態で、海高分子を溶解可能な溶剤(抽出液)や薬液で除去し、水洗、乾燥した後、ギロチンカッターやスライスマシンで適切な繊維長にカットする。後脱海法の場合、初めに「高分子アロイ繊維」集束糸のカセの状態やさらに集束したトウの状態でギロチンカッターやスライスマシンで適切な繊維長にカットした後、海成分を溶解可能な溶剤や薬液で除去し、水洗、乾燥した後に得られる。
適切なナノファイバー短繊維の繊維長としては、抄紙性の観点から、0.1〜20mmにすることが好ましく、さらに、0.1〜5mmにすることがより好ましく、0.2〜1mmにすることがさらに好ましい。
「高分子アロイ繊維」から海高分子を除去する際に用いる溶剤や薬液としては、海成分の高分子の特性によって、苛性ソーダや苛性カリなどのアルカリやギ酸などの酸、または、トリクレン、リモネン、キシレンなどの有機溶剤などを用いることができる。「高分子アロイ繊維」の集束糸やトウを脱海する場合、カセの状態やカセ枠に巻いた状態で脱海することができる。但し、カセの状態で「高分子アロイ繊維」の海成分を溶剤や薬液で脱海する場合、「高分子アロイ繊維」の海成分の脱海量が、通常20〜80wt%と非常に多いため、脱海するに従ってカセの直径方向に体積が収縮し、カセ内の「高分子アロイ繊維」間同士が密着し、溶剤や薬液などが繊維間に浸透できなくなったり、カセ表面が一旦溶解されて再析出した高分子で覆われたりして、海成分高分子が表面に溶解流出し難くなり、除去が徐々に困難になる。ひどい場合には団子状になり、「高分子アロイ繊維」の脱海を進めることが非常に困難となる場合がある。この改善には、フリーのカセ状態ではなく、カセ枠に巻くことによってカセの収縮を防止し、「高分子アロイ繊維」間の密着をさけることによって、常に溶媒が繊維の間を流れ易くなるため好ましい。この方法によって、「高分子アロイ繊維」の集束糸だけでなく、トウの状態でも脱海が可能になる。脱海をさらに効率的に行うには、トウの総繊度を五十万dtex以下にすることが好ましく、十万dtex以下にすることがさらに好ましい。一方、「高分子アロイ繊維」の総繊度は大きい方が脱海の生産性は向上するため、脱海前の「高分子アロイ繊維」は総繊度を1万dtex以上とすることが好ましい。
また、脱海にはアルカリなど薬液によによって海成分の高分子を分解することによっても除去できる。この脱海の場合には、カセ状態でも比較的容易に海成分を除去できる。これは、分解型の場合、海成分の高分子が加水分解などによって、低分子量体あるいはモノマーになることによって容易に溶解除去できるためである。また、分解によって海成分が除去されると繊維間に間隙ができ、さらにアルカリなどの薬液がナノファイバーの前駆体である、「高分子アロイ繊維」の内部まで浸透するため、脱海が進むに従って、脱海速度は加速し、有機溶剤などによる海成分の溶解除去とは異なり、カセの状態でも十分脱海が可能になる。 以上のような、ナノファイバー形成性繊維である「高分子アロイ繊維」よりなるトウやカセ、すなわちこのような繊維束を溶剤または薬液で処理して得られたナノファイバー束は、全繊維に対するナノファイバーの面積比率は、95〜100%であることが好ましい。これは脱海後のナノファイバー束中に、脱海されていない部分がほとんどないことを意味しており、これにより粗大繊維の混入を最小限とすることができ、これを後に抄紙することで品位の高いナノファイバー合成紙を得ることができる。
本発明では、「高分子アロイ繊維」、すなわちナノファイバー形成性繊維よりなる繊維束を、繊維束の繊維密度が0.01〜0.5g/cm3にした状態で溶剤または薬液で脱海処理することが好ましい。溶剤または薬液で脱海処理する際に、繊維束の繊維密度が0.01g/cm3よりも小さいと、処理される繊維束の形状が不安定になり、ナノファイバー化が均一に行われなくなる場合がある。一方、繊維束の繊維密度が0.5g/cm3を超えると、繊維束内への溶剤または薬液の浸透が悪くなり、ナノファイバー化が不完全となり、ナノファイバー束におけるナノファイバーの含有率が低下する場合がある。溶剤あるいは薬液で脱海処理する際の繊維束の繊維密度は、より好ましくは0.01〜0.4g/cm3、さらに好ましくは0.03〜0.2g/cm3である。
アルカリなどの薬液によって海成分を分解除去する場合、「高分子アロイ繊維」の海成分をアルカリで分解されやすい高分子にすることが好ましく、海成分をPLA系やPVA系高分子にすることが好ましい。
後述する実施例4に示したように、海成分を、実施例1の通常の共重合PETから実施例4のPLAに変更したことによって、水酸化ナトリウムの濃度を10wt%から1wt%と非常に低濃度化することができ。このようなアルカリによる脱海作業は、高温かつ高濃度のアルカリで処理する場合、非常に危険なため作業効率が悪く、装置的に漏れや腐食の対策が必要なことから非常に限定された装置しか使用ができなかった。また、脱海後の処理液に残存するアルカリを廃液処理する際に、アルカリが高濃度であるため、中和するにも中和発熱をさけるための大きな中間浴槽で徐々に酸を加えて中和する必要があった。アルカリ脱海時の処理液中のアルカリ濃度を低濃度化することによって、このような危険な作業を回避でき、かつ効率的に脱海ができるようになり、廃液処理工程への負荷も軽減することができる。
次に、後脱海法について、その具体的な方法について説明する。「高分子アロイ繊維」をカットして得られた短繊維の脱海は、短繊維を有機溶剤もしくはアルカリや酸などの薬液中に入れ、攪拌機で攪拌しながら海成分を溶解または分解して除去する。このような脱海は通常バッチ処理で行い、処理工程を数段階に分けて行うことが好ましい。海成分をトリクレンなどのような溶剤効率的に除去する場合、1段階目の海成分を溶解する際に、溶剤中に溶解している海成分の高分子の濃度を6wt%以下にすることが好ましく、3wt%以下にすることがさらに好ましい。2段階目以降の脱海の際には、溶剤中に溶解している高分子の濃度を徐々に少なくしなくしていき、その濃度を0.1wt%以下にすることが好ましく、0.01wt%にすることがさらに好ましい。海成分が少量でも残ると接着剤としての働きをし、ナノファイバー間にできる空隙を塞ぐからである。また、薬液による加水分解などによって海成分を効率的に分解除去する場合には、薬液中に低分子量化あるいはモノマー化した状態で溶解している海成分の濃度を10wt%以下にすることが好ましく、5wt%以下にすることがさらに好ましい。2段階目以降の脱海の際には、薬液中に低分子量化あるいはモノマー化した状態で溶解している海成分の濃度を徐々に少なくしていき、その濃度を0.1wt%以下にすることが好ましく、0.01wt%以下にすることがさらに好ましい。「高分子アロイ繊維」をカットして得られた短繊維は、上述のように各溶剤や薬液で処理された後に、適切なステンレス金網フィルターなどで濾過してナノファイバーを回収した後、ナノファイバーに付着した溶剤や薬液をよく洗浄除去した後乾燥する。
「高分子アロイ繊維」の集束糸、トウ、カット繊維のいずれの脱海方法であっても、効率的な脱海は、2段階目以降の脱海に用いる有機溶媒などの溶剤、アルカリや酸などの薬液は新しいものを使用し、脱海処理する温度をなるべく高温にし、さらに溶剤や薬液を常に攪拌して循環することが好ましい。また、脱海に用いる溶剤や薬液に対する繊維量比をなるべく小さくし、脱海処理終了後の溶剤あるいは薬液中の海成分の濃度を小さくすることが好ましい。
1段階目以降の脱海処理の各工程間で、溶剤あるいは薬液を含んだ集束糸、トウ、カット繊維は、遠心分離器である程度溶剤あるいは薬液を除去することが好ましいが繊維重量に対する溶剤あるいは薬液量を200wt%以下にすると、次工程での取扱い性が向上し、好ましい。また、繊維重量に対する溶剤あるいは薬液量を50wt%以上にすると、繊維間の溶剤あるいは薬液がスペーサーの役割を果たし、繊維の過度の密着を抑制できるため、次工程での溶剤あるいは薬液の浸透性が良く、脱海効率が向上し、好ましい。さらに、脱海効率を向上するには、脱海処理を複数回行う時、各段階での処理後に洗浄を行い、繊維に付着した海成分を除去し、その後の溶剤や薬液に混入する海成分量を少なくすることが好ましい。溶剤や薬液による脱海終了後の繊維に付着する海成分が好ましくは0.1wt%以下、さらに好ましくは0.01wt%以下になるまで洗浄することで、海成分の残査を抑制することができる。
また、先脱海法でナノファイバー束を得た場合、得られたナノファイバー集束糸やトウは、ギロチンカッターやスライスマシンで、ナノファイバーの用途や目的に応じて適切な繊維長にカットすることができるが、このような集束糸やトウは、カットされる前の水分率が20〜100wt%であることが好ましい。脱海後のナノファイバー集束糸やトウは、水分をある程度含んでいたほうが集束性が良好なので、取扱い性が良く、さらにカットする際の精度も向上するため、カット長の均一性が向上する。また、カット時の発熱による短繊維同士の融着も抑制されるため、カット用刃への単繊維の付着が少なくなりカット時の生産効率も向上する。さらに、集束糸、トウへ油剤を0.01〜1.0wt%(油剤純分100%として)付与することも好ましい。
このようにして得られたナノファイバー短繊維は、ナノファイバーの直径にもよるがナノファイバーが数千から数100万本集合した繊維である。 次に、ナノファイバー短繊維を叩解機によって叩解する。叩解機としては、生産レベルではナイアガラビータ、リファイナーなどが挙げられ、実験的には、家庭用ミキサーやカッター、ラボ用粉砕器やバイオミキサー、ロールミル、乳鉢、PFI叩解機などが挙げられる。ナノファイバー単繊維の繊維断面の透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)写真では、ナノファイバーは1本1本まで離れて観察され、表面に存在するナノファイバーが少量ナノファイバー短繊維表面から遊離することがみられるが、短繊維中のナノファイバーの大半は集合体として存在しているため、この集合体を軽くしごいたり、ナノファイバー短繊維を水中にいれて攪拌しただけでは、ナノファイバーを単繊維レベルまでバラバラにすることは困難である。これは、ナノファイバーの繊維直径が非常に細く、比表面積が従来の極細繊維に比べて格段に増加しているため、微粒子粉末の場合と同様に繊維間に働く水素結合力や分子間力などの相互作用がかなり強く、凝集力が大きいためだと考えられる。
天然パルプは、叩解機で叩解すると、1本の繊維が直径1μm以上のマクロフィブリル、1μm以下のミクロフィブリルへと分解されていく。その叩解の程度には分布を持っており、非常に細いミクロフィブリルの部分と、叩解されていない太い部分とで、樹木の枝のような構造(図4)を形成しており、抄紙する際に細い部分は繊維同士が絡み合い、太い部分は合成紙の強度支持成分となり合成紙ができている。
本発明は、天然パルプ類似の構造が得られる。天然パルプも、もともとナノレベルのミクロフィブリルが集合している繊維を叩解によって分解しフィブリル化していると考えると、本発明のナノファイバー集合体は、フィブリル化する熱可塑性高分子と言うこともできる。
繊維を叩きながらマクロフィブリルやミクロフィブリルに解きほぐす叩解機を用いることができる。叩解機の中でも、カッターや粉砕的な羽根を有する装置は繊維を損傷し易く、繊維をバラバラにする効果と同時に繊維を切断して繊維長をどんどん短くする欠点がある。ナノファイバーは繊維間の凝集力が強いのに反して、繊維が細いので、カッターや粉砕的な羽根を有する装置では繊維の損傷が大きく、ひどい場合には粉状に粉砕されるおそれもある。このため、繊維を叩くとしても、粉砕やカットする力よりもむしろ、もみほぐしたり、剪断力をかけて繊維間の凝集を解くことが好ましい。特に、PFI叩解機は内羽根と外容器の周速度差による剪断力によって叩解するため、ナノファイバー集合体中を叩解する際にナノファイバーへ与える損傷が少ない。他の叩解装置を使用する場合でも、ナノファイバーに対する打撃力を緩和して繊維への損傷を少なくするためには、叩解速度や叩解時の圧力を低減するなどのソフトな条件で長時間叩解することが好ましい。カッターや粉砕的な羽根を有する家庭用やラボ用のミキサーでも低回転数などのソフトな条件で長時間叩解すれば、効率は劣るものの品質的には前述の叩解機と同様に叩解することができる。
叩解は、1次叩解と2次叩解に分けて行うことが好ましい。1次叩解では、ナノファイバー集合体を剪断力で軽く揉みほぐして、ナノファイバー集合体の大きさをある程度小さくしておくことが好ましい。1次叩解によって、繊維の叩解度の程度を表す濾水度が650以下になるまで行うことが好ましく、500以下になるまで行なうことがより好ましい。ここでいう濾水度とは、後述する実施例の「Q.ナノファイバーの濾水度試験方法」に示したJIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」に記載されているカナダ標準ろ水度試験方法に従って測定した値のことである。ナノファイバーの濾水度を測定する場合、叩解されて水中に小さく分散したナノファイバーが濾水度試験機の容器内のフィルターを目詰まりさせる場合もあるが、このことも含めた上での濾水度の値で評価する。ナイアガラビータやリファイナーで1次叩解する場合、一般的にナノファイバー短繊維を水中に分散して行なうが、この分散液全体に対するナノファイバーの濃度は、5wt%以下とすると叩解が均一に行われるため、好ましい。また、0.1〜1wt%とすると叩解の効率が向上するのでさらに好ましい。1次叩解は、ナイアガラビータやリファイナーなどの叩解機の設定クリアランスを大きめに、例えば0.5〜2mm程度にすると叩解装置にかかる圧力の負荷や、叩解処理の時間も低減できるので好ましい。ナノファイバー単繊維を叩解した後、ナノファイバーは、金網フィルターなどで濾過捕集し、脱水機などで水分率が50〜200%になるように脱水して保管すると、叩解後のナノファイバーの容量を小さくでき、保管場所の確保や次工程での取扱いが容易となることから好ましい。
さらに本発明でいう2次叩解とは、1次叩解されたナノファイバーをさらに精密に叩解することである。この時使用する装置としてはナイアガラビータやリファイナー、PFI叩解機などが挙げられるが、それぞれの叩解機の設定クリアランスを0.1〜1.0mmにすることが好ましく、0.1〜0.5mmにすることがさらに好ましく、加圧も小さくしてソフトな条件で叩解することが好ましい。リファイナーを利用する場合、装置に内蔵された加工刃の形状を適宜変更できるが、繊維を切断するよりも、むしろもみ効果や剪断効果のある形状のものを選択することが好ましい。特に、ナノファイバーの2次叩解を実験的に行うにはPFI叩解機を使用することが最適である。PFI装置は内羽根と外容器の周速度差による剪断力によって叩解するため、ナノファイバーの一部が1本1本に分離されるまでの繊維の損傷が非常に少なく、好ましい。また、叩解する時のナノファイバーの繊維濃度を5〜20wt%と高くして処理することが可能であり、叩解機の内羽部分が常時繊維に均一にあたるので、叩解に従ってナノファイバー集合体が細くなり、繊維の強力が低下したとしても、繊維がさらに繊維長方向に切断したり粉末化したりせずに均一な叩解が可能となる。このように、2次叩解によって得られたナノファイバーの濾水度は100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、350以上であることがさらに好ましい。ナノファイバー集合体中のナノファイバーの集合本数を1本や数本、数十や数百本、数千や数万、数十万本と、用途や使用目的によって調節するが、そのナノファイバーの集合本数や集合本数の分布は濾水度を変更することによって選択することができる。
また、濾水度の異なるナノファイバー集合体を作製した後、各濾水度のナノファイバー集合体を任意に配合したナノファイバー集合体を製造してもよい。
濾水度が大きい(例えば500以上)ナノファイバー集合体は、あまり叩解されないのでナノファイバー集合数が大きく、数十本以下のナノファイバー集合体は少ないが、逆に、濾水度が小さい(例えば200以下)ナノファイバー集合体は、叩解が進んでおり、数十本以下まで叩解されている量も多く、両濾水度では、ナノファイバーの集合分布が異なる。
このように、濾水度の異なるナノファイバー集合体を2種類以上組み合わせることによって、用途や使用目的に合わせたナノファイバーの集合本数に分布を有するナノファイバー集合体を作製することができる。
ナイアガラビータやリファイナー、家庭用やラボ用のミキサー、カッター類で2次叩解を行なう際には、水中のナノファイバー濃度が低濃度の状態で加工するため、叩解に従って細くなって浮遊するナノファイバーにも局所的に回転刃が繰返し当たり、繊維の切断や破砕効果が大きく、繊維長方向に切断したり粉末化し易いため、刃の形状、回転スピード、加圧条件などの叩解条件をマイルドにして叩解することが好ましい。このようにナノファイバーを水中で叩解する場合は、叩解後に金網フィルターなどで濾過捕集し、脱水機などで水分率が50〜200wt%になるように脱水して保管することが好ましい。
次に、ナノファイバー集合体合成紙を抄紙する際の原料であるナノファイバー分散液の調整方法について説明する。
叩解したナノファイバー集合体と水、必要に応じて分散剤やその他の添加剤を攪拌機に入れ、所定の濃度に分散する。ナノファイバー集合体の集合本数の分布や作製する合成紙の目付にもよるが、叩解したナノファイバー集合体は比表面積が大きく、ナノファイバー間に働く水素結合力や分子間力が大きくなるため、凝集が起こり易く、この凝集を防止するため、なるべく低濃度で分散調整することが好ましい。分散液中でのナノファイバーの分散性を均一にする観点から、分散液中のナノファイバー集合体の濃度は、0.01〜5.0wt%にすることが好ましい。さらに、このナノファイバー分散液をそのまま抄紙すると不均一な合成紙になる場合があるので、ナノファイバー分散液中に分散剤を添加することが好ましい。分散剤は、ナノファイバーの高分子の種類や特性によって、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の分散剤が適宜選択されるが、同じ構造の分散剤でもその分子量やナノファイバー濃度、他の配合剤の影響を受けるので、ナノファイバーの高分子の種類や目的とする用途によって使い分けをすれば良い。尚、適切な分散剤を選定する原理としては、例えばナノファイバー間の電荷の反発により分散させる場合、その表面電位(ゼータ電位)に応じて分散剤の種類を選定する。pH=7において、ゼータ電位が−5〜+5mVの範囲内のナノファイバーの場合にはノニオン系分散剤を添加することが好ましく、ゼータ電位が−100mV以上、−5mV未満の場合にはアニオン分散剤を添加することが好ましく、ゼータ電位が+5mVを超え、100mV以下である場合にはカチオン系分散剤を添加することが好ましい。例えば、N6ナノファイバーではレーザードプラー電気泳動法で測定したゼータ電位(pH=7付近)が−14mVと表面が負に帯電しているため、この電位の絶対値を大きくするために、アニオン系分散剤を使用するとゼータ電位が−50mVとなるため、分散性が向上する。また、立体反発により分散させる場合、分子量が大きくなりすぎると、分散剤というよりもむしろ凝集剤としての効果が大きくなるため、分散剤の分子量を制御することが好ましく、分散剤の分子量としては1000〜50000であることが好ましく、5000〜15000であることがさらに好ましい。
さらに、添加する分散剤の濃度としては、0.01〜1.0wt%であることが好ましく、0.05〜0.5wt%であることがさらに好ましい。従来の1μm以上の極細繊維を単独で抄紙した場合、繊維が絡合しないために、抄紙が困難であるが、ナノファイバー集合体の場合、ナノファイバー単独でも抄紙可能であり、この場合には抄紙性や紙力を向上させるといった観点から、ナノファイバー集合体の合成紙の目付は500g/m2以下であることが好ましく、300g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以下で5g/m2以上であることがさらに好ましい。
ナノファイバー集合体をバインダーなしで単独で抄紙する場合は、やや繊維長を長めにし、その繊維長は1〜10mmにすることが好ましく、2〜6mmにすることがさらに好ましい。
さらに必要に応じて、ナノファイバー合成紙を抄紙する際にバインダーを用いることができる。バインダーとして繊維を用いる場合には、天然パルプ(木材パルプ、麻パルプ、楮、みつまたなど)、低融点成分や低軟化点成分を有する易融化繊維が好ましく、PE繊維やPP繊維、PLA繊維、PS繊維、共重合ポリアミドや共重合ポリエステル繊維、また、易融化成分を鞘成分とする芯鞘複合繊維などが好ましい。さらに、「高分子アロイ繊維」を抄紙した後で海成分を除去してナノファイバー合成紙を得る場合には、薬液や溶剤に対する耐性が良好なバインダー用繊維を用いることが好ましい。一般的に、市販されているバインダー用繊維の単繊維数平均直径は通常10μm以上と太いため、抄紙したときに緻密なシートを得るためには、単繊維直径が1〜10μmの極細繊維からなるバインダー繊維が好ましい。また、樹脂系のバインダーを好適に用いることも好ましい。樹脂としては、ポリウレタン系、ポリフェノール系、ポリアクリル酸系、ポリアクリルアミド系、エポキシ系、シリコーン系、フッ化ビニリデン系高分子が好ましい。ナノファイバー分散液(スラリー)には、強度、耐引裂性、耐摩耗性、制電性、表面光沢、平滑性、柔軟性、風合いなどの性能を改善するための改質剤、添加剤を併用することができる。
このようなナノファイバーを抄紙する方法としては、該スラリーを抄紙機のスラリー用ボックスに投入し、通常の機械式抄紙機で抄紙する。抄紙機としては長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、丸網式抄紙機のいずれでも抄紙可能であり、用途や目的に応じて適切な抄紙機を用いればよいが、装置の特性上、目付が比較的大きいものを抄紙したい場合には長網式抄紙機を用いることが好ましい。ラボなどの小スケールで抄紙する場合には、市販の角型シート抄紙機などを用いて抄紙することが可能であり、25cm角の容器中にナノファイバーのスラリーを投入し、金網フィルターで吸引濾過し、脱水、乾燥すればナノファイバー集合体合成紙を得ることができる。
次に、部分叩解フィブリル化したナノファイバー集合体をバインダーとして、他の非フィブリル化(叩解していない)繊維を抄紙するナノファイバー集合体、およびナノファイバー集合体と他の繊維との複合合成紙の製造方法について説明する。
本発明で用いるナノファイバー集合体には抄紙性があり、他の繊維と混合することによって、複合合成紙を得ることができる。ナノファイバー集合体の混合率は、5wt%以上とすることが好ましく、10wt%以上とすることがより好ましく、20%以上とすることがさらに好ましい。混合率が5wt%より少ない場合抄紙性が低下し、抄紙できなくなる。また、混合する他の繊維は、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維や平均直径が数十μm以上の熱可塑性高分子などの繊維に適用することが好ましい。また、他の繊維として、叩解するとフィブリルに分解できる天然パルプや他の高分子のナノファイバー集合体も含まれる。複合合成紙は、純度を必要な分野よりもむしろ、他の繊維との複合によって、平滑性、インクののり性が必要な印刷用用紙や強度、耐折性、耐熱性、耐水性、耐破断性が必要な絶縁紙や電子用基材、パッキングやシール用の基材など各種産業用途の合成紙の分野に使用することができる。また、他の繊維に抄紙性を付与すると共に他の繊維の空隙にナノファイバーが均一分散することで、ナノファイバーの機能も付与できる。このナノファイバー集合体複合合成紙を、バイオやケミカル、電池用などの触媒の担持体に用いると、繊維の空隙効果、ナノファイバーの大きな比表面積の効果、ナノレベルの細さの作用などを利用できる。
本発明においては、上述のようなナノファイバー合成紙を含む合成紙成型品とすることができる。例えば、フィルター(例:エアーフィルター、ケミカルフィルター、浄水用フィルター)、マスク用フィルター、電池セパレータ、ナノファイバー合成紙の積層品、ナノファイバー合成紙充填カラム、メディカル分野の血液フィルター材料、体外循環用基材、細胞培養基材、電子材料の絶縁材、電子用基材、化粧用紙、ワイピング紙、家具用化粧紙や壁紙、高級印刷用ペーパ、設計用ペーパ、高画質印写用ペーパなどがあげられる。
また、本発明に用いるナノファイバー集合体の部分的フィブリル化により、バインダーなしで容易に各種熱可塑性高分子を抄紙することが可能であり、上記の用途例のようなハイテク分野において、使用目的などによって、各種ナノファイバー集合体の合成紙を提供することができる。該合成紙は、ナノファイバーの集束数に分布を持ち、幹の部分に相当する集合数部分とミクロフィブリルに相当する部分を有し、天然パルプのフィブリル化繊維に相当する機能を有する。この機能によって、該合成紙は、嵩高くなり空隙率が大きく、含まれるナノファイバーの実質表面積も増大し、更に従来の通常の合成繊維や極細繊維では対応が難しい各種物質(微粒子、化学物質、蛋白など)の吸着性や吸収性、生態的適合性や相溶性などナノファイバーの形態や大きな表面積を必要とする合成紙分野に利用が可能である。本発明のナノファイバー集合体合成紙により、従来繊維合成紙の問題を解決することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.高分子の溶融粘度
東洋精機キャピログラフ1Bにより高分子の溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までの高分子の貯留時間は10分とした。
B.融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて2nd runで高分子の融解を示すピークトップ温度を高分子の融点とした。この時の昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
C.TEMによる繊維の横断面観察
繊維の横断面方向に超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維横断面を観察した。また、ナイロンはリンタングステン酸で金属染色した。
TEM装置 : 日立製作所(株)製H−7100FA型
D.「高分子アロイ繊維」中の島成分(ナノファイバー前駆体成分)の単繊維数平均直径
単繊維直径の数平均値は以下のようにして求める。すなわち、TEMによる島成分横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて同一横断面内で無作為抽出した300個の島成分の直径を測定し、個々のデータを積算後、全数で除して単純平均値を求めた。これを「高分子アロイ繊維」の長さとして互いに10m離れた5カ所で行い、合計1500個の島成分の直径を測定しその平均値を「島成分数平均直径」とした。
E.ナノファイバー集合体合成紙のSEM観察
ナノファイバー集合体合成紙の任意の場所から10cm角の合成紙を10枚カットし、各合成紙の各任意の場所で5mm角のサンプルを採取し、白金を蒸着し、日立製作所(株)製超高分解能電解放射型走査型電子顕微鏡で合成紙表面を観察した。
F.ナノファイバーの単繊維数平均直径φm
単繊維数平均直径φmは以下のようにして求める。すなわち、上記E項で撮影したナノファイバー表面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて5mm角のサンプル内で無作為抽出した30本の単繊維直径をnm単位で小数の1桁目まで測定して少数の1桁目を四捨五入する。サンプリングは合計10回行って各30本の単繊維直径のデータを取り、合計300本の単繊維直径のデータを積算後、全数で除して単純平均値を求めたものを「単繊維数平均直径φm」とした。
G.ナノファイバーの単繊維比率の和Paの評価
単繊維比率の和Paは、上記F項で測定したデータを用い、[発明を実施するための最良の形態]の欄に記載した(3)式から求めた。
H.ナノファイバーの単繊維直径の集中度指数Pbの評価
単繊維直径の集中度の評価Pbは、上記F項で測定したデータを用い、[発明を実施するための最良の形態]の欄に記載した(5)式で評価した。
I.合成紙の厚み
ナノファイバー集合体合成紙の任意の場所から10cm角の合成紙を10枚カットし、各1枚について10箇所測定する。マイクメータ付きの試料台にのせ、20℃、65%でマイクロメータで厚みを測定し、全データを合計し単純平均し、厚みt(μm)とした。
J.合成紙の目付、密度
ナノファイバー集合体合成紙の任意の場所から10cm角の合成紙を10枚カットし、各1枚毎の重量(g)を20℃、65%で測定し、5枚の平均重量を0.01m2で除して、目付Mw(g/m2)を算出した。また、密度は、この目付Mwの値を上記で測定した平均厚みをcm単位にした値で除して、平均密度(g/cm3)を算出した。
K.ナノファイバー集合体合成紙中ナノファイバーの重量混合率の測定法
ナノファイバーを含む複合や混合合成紙中のナノファイバーの重量混合率は、合成紙の断面を超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(SEM)で観察し評価する。初めに、合成紙を包埋用樹脂(エポキシ樹脂や硬化型ポリエステル樹脂など)に包埋し、包埋後の試料を合成紙の断面が露出するようにダイヤモンドカッタやミクロトームでカットする。試料のカット面をサンドペーパーや研磨材で研磨後、良く水洗して低温で乾燥する。試料に白金を蒸着し、日立製作所(株)製超高分解能電解放出型走査型電子顕微鏡で合成紙断面写真を得る。まず、写真中の繊維について、合成紙中で直径が500nm以下のナノファイバー繊維と単繊維数平均直径1μm以上の他の繊維に区分する。この場合、単繊維直径が0.5μmを超える繊維については単繊維数平均直径1μm以上の他の繊維の一部であるとして分類する。
該断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いてナノファイバー、他の繊維に分類される個々の繊維の断面積を測定し、さらに断面積について積算し、ナノファイバーの総面積をSn、0.5μm以上の繊維の総面積をSfとする。また、ナノファイバーの比重をρn、0.5μmを超える繊維の比重をρfとし、ナノファイバーの重量混合率をα(%)、1μm以上の繊維の重量混合率をβ(%)とすると次式で計算する。
A=Sn×ρn、B=Sf×ρfとすると、
α=100×A/(A+B) (7)
β=100×B/(A+B) (8)
尚、評価用試料は、合成紙から任意の箇所5箇所をとり、上記の方法でそれぞれのα又はβを5回求め、その平均値をナノファイバーあるいは他の繊維の重量混合率とした。
L.ナノファイバーの濾水度試験方法
JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」のカナダ標準ろ水度試験方法に従って、熊谷機器(株)製カナディアンフリーネステスターで測定した。20℃の室内でナノファイバーの0.30±5%濃度のスラリーを1リットル秤量し、該カナディアンフリーネステスターに投入し、これを3回測定して平均値。尚、上記JISの補正表を使用し、0.30%からの濃度のずれによるデータ補正を行い、濾水度とした。
M.力学特性
ナノファイバー合成紙の任意の場所から幅2cm、長さ18cmの合成紙を5枚カットし、初期試料長=10cm、引張速度=20cm/分とし、JIS L1013に従って引張試験を行った。測定破断時の荷重値を初期紙幅で割った値を強度(N/cm)とし、その破断時の伸びを初期試料長で割った値を伸度(%)とし、これを10枚の合成紙について測定し単純平均した。
N.吸湿性(ΔMR)
合成紙サンプルを秤量瓶に1〜2g程度はかり取り、110℃に2時間保ち乾燥させ重量を測定し(W0)、次に対象物質を20℃、相対湿度65%に24時間保持した後重量を測定する(W65)。そして、これを30℃、相対湿度90%に24時間保持した後重量を測定する(W90)。そして、以下の式で求めた。
MR65(%)=[(W65−W0)/W0]×100 (9)
MR90(%)=[(W90−W0)/W0]×100 (10)
ΔMR=MR90−MR65 (11)
以下、実施例について説明するが、実施例と比較例の作製条件や合成紙の規格、性能の比較データを表1に示した。
O.高分子の重量減少率
セイコー・インストルメンツ社製TG/DTA6200を用い、窒素雰囲気下で室温から10℃/分で300℃まで昇温し、その後300℃で5分間保持した時の重量減少率を測定した。
P.高分子の重量減少率
セイコー・インストルメンツ社製TG/DTA6200を用い、窒素雰囲気下で室温から10℃/分で300℃まで昇温し、その後300℃で5分間保持した時の重量減少率を測定した。
実施例1
溶融粘度53Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6(20重量%)と溶融粘度310Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を2軸押し出し混練機で260℃で混練してb*値=4の高分子アロイチップを得た。なお、この共重合PETの262℃、1216sec−1での溶融粘度は180Pa・sであった。このときの混練条件は以下のとおりであった。
スクリュー型式 同方向完全噛合型 2条ネジ
スクリュー 直径37mm、有効長さ1670mm、L/D=45.1
混練部長さはスクリュー有効長さの28%
混練部はスクリュー有効長さの1/3より吐出側に位置させた。
途中3個所のバックフロー部有り
高分子供給 N6と共重合PETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。
温度 260℃
ベント 2個所
溶融紡糸に用いた溶融紡糸装置のモデル図を図1に示した。同図において、1はホッパー、2は溶融部、3はスピンブロック、4は紡糸パック、5は口金、6はチムニー、7は溶融吐出された糸条、8は集束給油ガイド、9は第1引き取りローラー、10は第2引き取りローラー、11は巻き取り糸である。 この高分子アロイチップを275℃の溶融部2で溶融し、紡糸温度280℃のスピンブロック3に導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布で高分子アロイ溶融体を濾過した後、口金面温度262℃とした口金5から溶融紡糸した。この時、口金としては吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.7mm、吐出孔長が1.75mmのものを用いた。そして、この時の単孔あたりの吐出量は2.9g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点(チムニー6の上端部)までの距離は9cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、口金5から1.8m下方に設置した給油ガイド8で給油された後、非加熱の第1引取ローラー9および第2引取ローラー10を介して900m/分で巻取られた。この時の紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。そして、これを第1ホットローラーの温度を98℃、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。この時、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.2倍とした。
得られた高分子アロイ繊維は120dtex、12フィラメント、強度4.0cN/dtex、伸度35%、U%=1.7%の優れた特性を示した。また、得られた高分子アロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、N6が島成分(丸い部分)、共重合PETが海(他の部分)の海島成分構造を示し(図2参照)、島成分N6の直径は53nmであり、N6が超微分散化した高分子アロイ繊維が得られた。
以下、100%ナノファイバー集合体合成紙について説明する。
得られた120dtex、12フィラメントの「高分子アロイ繊維」をギロチンカッターで2mmにカットた。カットした「高分子アロイ繊維」を98℃、10%水酸化ナトリウムで1時間処理し、海成分のポリエステル成分を除去した後、フィルターで濾過し、さらに、含水率が約100%になるまで遠心分離器で脱水し短繊維を得た。該短繊維を水洗と脱水を5回繰返し、水酸化ナトリウムを除去してナノファイバー集合体短繊維を得た。ここで得られたN6ナノファイバー短繊維の横断面をTEM観察したところ、単繊維数平均直径φmは57nmであった。
ナイアガラビータに約20リットルの水と30gのナノファイバー短繊維を投入し、繊維を5分間1次叩解した。1次叩解したナノファイバーの濾水度は568であった。この繊維を遠心分離器で水分を除去し、繊維濃度が12wt%の1次叩解繊維を250g得た。この1次叩解繊維をPFI叩解装置で2分間2次叩解した後に脱水して、繊維濃度が10wt%のナノファイバー2次叩解繊維を得た。2次叩解したナノファイバーの濾水度は362であった。
さらに、2次叩解繊維25.0gと第一工業製薬製のアニオン系分散剤(シャロールAN−103P:分子量10000)0.5gを1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を熊谷理機製の実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加し20リットルの調製溶液とした。この調製溶液のゼータ電位を測定したところ、−50mVであった。事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角のアドバンテック(株)製濾紙#2(5μm)上に調製溶液を抄紙し、ローラーで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥後、濾紙からシートを剥離した後、さらに再乾燥し、ナノファイバーのみからなる合成紙を得た。
得られたナノファイバー集合体合成紙の表面をSEM観察した結果を図3に示すが、従来の合成繊維の合成紙と異なり、ナノファイバーが複数本集束している部分とナノファイバーが1本1本まで分散した部分を有しており、天然パルプのフィブリル類似の構造になっていた。また、ナノファイバー集合体は抄紙が容易に行うことができた。
合成紙の単繊維直径の分布を表2に示したが、ナノファイバーの単繊維数平均直径φmは56nmであり、単繊維比率の和Paは100%であり、単繊維直径の集中度指数Pbは64%であり、繊維直径のバラツキが非常に少なく、均一なものであった。また、合成紙の目付が36.7g/m2、厚みが107μmのナノファイバー集合体合成紙が得られた。また、ナノファイバー100%であったが、ナノファイバー同士の凝集力や交絡の強さによって、バインダーがなくても良好に抄紙することができ、ナイロンナノファイバーのみからなる合成紙が得られた。得られた合成紙の強度は、14.6N/cm、伸度が9.7%と市販の天然パルプと同程度の力学特性を有する合成紙が得られた。また、市販されている紙の密度は0.5g/cm3程度に対して、ナノファイバーの合成紙の密度は0.34g/cm3と凝集力が大きなナノファイバーの合成紙としては比較的低密度な合成紙が得られた。これは、抄紙、乾燥後に熱プレスを行っていないことと、ナノファイバー集合体中のナノファイバー集合本数の多い部分が幹となり、ナノファイバーの凝集を阻止して合成紙中に空隙をつくったためと考えられる。得られたナノファイバー合成紙の吸湿率(ΔMR)を測定したところ、5.8%と比較例10の従来合成紙の2.8%に比較し優れた吸湿性を示した。
実施例2
メルトブロー不織布とナノファイバー集合体合成紙との複合合成紙について説明する。
メルトブロー法で作製した単繊維数平均直径が3μmのPPメルトブロー不織布(目付30g/m2、厚み130μm、密度0.231g/cm3)を抄紙用のフィルターとして用い、実施例1と同様にこの不織布上にナノファイバー集合体25gを20リットルに希釈し、ナノファイバー集合体調製溶液作製後、不織布上に抄紙し、PPメルトブロー不織布とナノファイバー集合体との複合合成紙を得た。
得られた複合合成紙の表面をSEMで観察した結果、ナノファイバーの単繊維数平均直径φmは57nm、単繊維比率の和Paは100%、単繊維直径の集中度指数Pbは62%であった。また、得られた複合合成紙は総目付が55.4g/m2、厚みが227μm、強度が45.7N/cm、伸度が43%であった。単に、ナノファイバーをPPメルトブロー不織布上に積層したとすれば、複合合成紙全体とPPメルトブロー不織布のみの部分との差がナノファイバー部分になるので、ナノファイバーのみの目付は25.4g/m2、厚み67μm、密度0.38g/cm3である。このように、PPメルトブロー不織布を利用し、極細繊維の空間にナノファイバー集合体を均一に分散することができた。片側がナノファイバーがリッチな合成紙と片側が寸法安定性のあるスパンボンド不織布のため、高精度な研磨用合成紙や浄化用濾過用合成紙として利用が可能である。
実施例3
高分子アロイ繊維を先脱海した後にカット加工するナノファイバー集合体合成紙について説明する。実施例1と同様な方法で高分子アロイ繊維を得た。得られた120dtex、12フィラメントの高分子アロイ繊維を約13万dtexのカセにして、10%の水酸化ナトリウム溶液で98℃、1時間処理して海成分のポリエステル成分を除去後、水洗して乾燥した。得られたナノファイバーのカセをギロチンカッターで2mmにカットしてナノファイバー短繊維を得た。さらに、得られた短繊維を実施例1と同様に1次叩解、2次叩解して、濾水度が385、繊維濃度が10wt%のナノファイバー集合体とし、実施例1と同様にして調製溶液を作製後抄紙して、ナノファイバー集合体合成紙を得た。合成紙の表面をSEM観察した結果、単繊維数平均直径φmは55nmであり、単繊維比率の和Paは100%であり、単繊維直径の集中度指数Pbは65%であった。得られたナノファイバー集合体合成紙は、目付が33.1g/m2、厚みが97μm、密度が0.34g/cm3、強度13.2N/cm、伸度11.3%であり、実施例1と同様な合成紙を得た。
実施例4
海成分がPLAの高分子アロイ繊維からナノファイバー合成紙を得る場合について説明する。 実施例1で用いたN6と重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、2432sec−1)、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)を用い、N6の含有率を20重量%とし、混練温度を220℃として実施例1と同様に溶融混練し、b*値=3の高分子アロイチップを得た。なお、ポリL乳酸の重量平均分子量は以下のようにして求めた。試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフラン(THF)を混合し、測定溶液とした。これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、実施例1で用いたN6の240℃、2432sec−1での溶融粘度は57Pa・sであった。また、このポリL乳酸の215℃、1216sec−1での溶融粘度は86Pa・sであった。
これを溶融温度230℃、紡糸温度230℃(口金面温度215℃)、紡糸速度3500m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。この時、口金として口金孔径0.3mm、孔長0.55mmの通常の紡糸口金を使用したが、バラス現象はほとんど観察されず、実施例1に比べても大幅に紡糸性が向上し、120時間の連続紡糸での糸切れは0回であった。この時の単孔吐出量は0.94g/分とした。これにより、92dtex、36フィラメントの高配向未延伸糸を得たが、これの強度は2.4cN/dtex、伸度90%、沸騰水収縮率43%、U%=0.7%と高配向未延伸糸として極めて優れたものであった。特に、実施例1に比べてバラスが大幅に減少したのに伴い、糸斑が大幅に改善された。
この高配向未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率1.39倍、熱セット温度130℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は67dtex、36フィラメントであり、強度3.6cN/dtex、伸度40%、沸騰水収縮率9%、U%=0.7%の優れた特性を示した。得られた高分子アロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリL乳酸が海(薄い部分)、N6が島(濃い部分)の海島構造を示し、島N6の単繊維数平均直径は55nmであり、N6がナノサイズで均一分散化した高分子アロイ繊維が得られた。
該67dtex、36フィラメントの「高分子アロイ繊維」を2220dtexに集束した後、ギロチンカッターで2mmにカットした。カットした「高分子アロイ繊維」を98℃、1%水酸化ナトリウムで1時間処理し、海成分のポリエステル成分を除去した後、フィルターで濾過し、さらに、含水率が約100%になるまで遠心分離器で脱水して短繊維を得た。このように、海成分を実施例1の共重合PETから本実施例のPLAに変更したことによって、水酸化ナトリウムの濃度を10%から1%に非常に低濃度化することが可能になった。その後、実施例1と同様に1次叩解し濾水度が596のナノファイバー集合体を得た。更に、2次叩解し濾水度が384、濃度が10wt%のナノファイバー集合体を得た。得られたナノファイバー集合体を実施例1と同様にして調製溶液を作製後抄紙して、ナノファイバー集合体合成紙を得た。
得られた合成紙の表面をSEM観察した結果、ナノファイバーが複数本集束している部分とナノファイバーが1本1本まで分散した部分を有しており、天然パルプのフィブリル類似の構造になっていた。また、合成紙中のナノファイバーの単繊維数平均直径φmが57nm、単繊維比率の和Paが100%、単繊維直径の集中度指数Pbが63%と繊維直径が非常に細く均一であった。また、得られた合成紙は、目付が34.9g/m2、厚みが102μm、強度的が13.8N/cm、伸度が10.4%であった。該ナノファイバー合成紙の吸湿率(ΔMR)を測定したところ、5.5%と比較例10の従来の極細繊維からなる合成紙の2.8%に比較して、優れた吸湿特性を示した。
比較例1、2、3
溶融粘度180Pa・s(290℃、剪断速度121.6sec−1)、融点255℃のPETを島成分に、溶融粘度100Pa・s(290℃、剪断速度121.6sec−1)、ビカット軟化温度107℃のポリスチレン(PS)を海成分に用いて、特開昭53−106872号公報の実施例1記載のように海島複合繊維を得た。そして、これをやはり特開昭53−106872号公報の実施例記載のようにトリクロロエチレン処理によりPSを99%以上除去してPET極細繊維を得た。これの繊維横断面をTEM観察したところ、極細繊維の単繊維数平均直径は2.0μmと大きいものであった。
得られた繊維を、2mm(比較例1)、3mm(比較例2)、5mm(比較例3)に切断し、極細繊維の短繊維をそれぞれ得た。それぞれの短繊維を各2g(合成紙とした時の目付が30g/m2相当)を採取し1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加して20リットルの調製溶液とし、さらに分散剤として第一工業製薬製のアニオン系分散剤(シャロールAN−103P:分子量10000)を0.2%添加した。この調製溶液をメッシュが#100の抄紙用金網ネット上に置いたアドバンテック(株)製5μm仕様濾紙#2の上に抄紙したが、どの繊維長の極細繊維とも繊維がバラバラの状態となり、濾紙から極細繊維を剥離できなかったため、合成紙として取出すことは困難であった。このような極細繊維はナノファイバーとは異なり、繊維同士の凝集力が小さいために、バインダーなどを使用しない場合、極細繊維単独では抄紙することが難しいと考えられる。
比較例4、5、6
比較例1で得られた単繊維直径が2.0μmのPET極細繊維を3mmに切断し極細繊維の短繊維を得た。この短繊維を2g(合成紙とした時の目付が30g/m2相当)を採取し1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加して20リットルの調製溶液とした後、分散剤として第一工業製薬製のアニオン系分散剤(シャロールAN−103P:分子量10000)を調製溶液に対して0.2wt%となるように添加した。この調製溶液をメッシュ#100の抄紙用金網ネット上に(比較例4)、アドバンテック(株)製5μm仕様濾紙#2上に(比較例5)、スクリーン紗(繊維径45μm、孔径80μm角:比較例6)など各種フィルター上に抄紙したが、各フィルターから剥離できず、極細繊維がバラバラになり、合成紙として取出すことはできなかった。極細繊維はナノファイバーとは異なり、繊維同士の凝集力が小さいために、バインダーなどを使用しない場合、極細繊維単独では抄紙することが困難であった。
また、スクリーン紗上に抄紙した極細繊維は(比較例6)スクリーン紗の格子繊維とは交絡しないため、スクリーン紗と一体化した合成紙も得られなかった。
比較例7、8、9
比較例1で得られた2.0μmのPET極細繊維を3mmに切断してPET極細繊維の短繊維を得た。得られた短繊維を4g(合成紙とした時の目付が60g/m2相当:比較例7)、6g(合成紙とした時の目付が90g/m2相当:比較例8)、8g(合成紙とした時の目付が120g/m2相当:比較例9)を採取し、1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加し20リットルの分散液とした後、分散剤として第一工業製薬製のアニオン系分散剤(シャロールAN−103P:分子量10000)を調製溶液に対して0.2wt%となるように添加した。分散液をメッシュ#100の抄紙用金網ネット上あるいはアドバンテック(株)製5μm仕様濾紙#2上に抄紙したが、いずれの比較例でも極細繊維がバラバラになり、濾紙から剥離できず、合成紙として取出すことはできなかった。このように、極細繊維はナノファイバーとは異なり、目付を大きくしても繊維同士の凝集力が小さく、バインダーなどを使用しない場合、極細繊維単独では抄紙することが困難であった。
比較例10
単繊維の平均直径がおよそ1μmの極細繊維の場合について説明する
溶融粘度50Pa・s(280℃、121.6sec−1)、融点220℃のN6と溶融粘度210Pa・s(280℃、121.6sec−1)、融点255℃のPETをN6ブレンド比を20重量%となるようにチップブレンドした後、290℃で溶融し、紡糸温度を296℃、口金面温度280℃、口金孔数36、吐出孔径0.30mm、吐出孔長0.50mmのずん胴口金として実施例1と同様に溶融紡糸を行い、紡糸速度1000m/分で未延伸糸を巻き取った。ただし、単純なチップブレンドであり、高分子同士の融点差も大きいためN6とPETのブレンド斑が大きく、口金下で大きなバラスが発生しただけでなく、曳糸性にも乏しく、安定して糸を巻き取ることはできなかったが、少量の未延伸糸を得て、第1ホットローラーの温度を85℃、延伸倍率3倍として実施例1と同様に延伸を行い、100dtex、36フィラメントの延伸糸を得た。TEMにより該繊維横断面観察を行ったところ、単繊維直径が550〜1400nmの範囲の島が生成していることを確認した。また、これの島成分の直径は850nmmと大きいものであった。
得られた繊維の海成分をアルカリ脱海後、実施例1のナノファイバー集合体と同様に2mmに切断してN6極細繊維の短繊維を得た。得られた短繊維を2g(合成紙とした時の目付が30g/m2相当)採取し、1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加して20リットルの調製溶液とした後、分散剤として第一工業製薬製のアニオン系分散剤(シャロールAN−103P:分子量10000)を調製溶液に対して0.2wt%となるように添加した。この調製溶液をメッシュ#100の抄紙用金網ネット上に抄紙したが、合成紙として取出すことはできたが、強度が弱く部分的に破れたり崩れたりして均一な合成紙としては得ることができなかった。これは極細繊維がナノファイバー集合体とは異なり、繊維同士の凝集力が小さく、特に濡れた時の強力が低いためだと考えられる。
得られた合成紙の地合の良好な部分をサンプリングし、SEMで観察した結果、単繊維数平均直径φmは883nm、単繊維直径の分布(表4参照)から得られた単繊維比率の和Paは0%、単繊維直径の集中度指数Pbは8.3%であり、繊維直径は太く、バラツキも大きいものであった。また、合成紙の総目付は28.3g/m2、厚みは122μm、密度は0.23g/cm3であった。該合成紙の吸湿性を測定したところ、2.8%と実施例1のナノファイバーに比べて吸湿特性は低いものであった。一方、合成紙が弱いため、強度、伸度、通気量は測定することができなかった。
比較例11
単繊維直径が2μmの極細繊維を叩解する場合について説明する。
比較例1で得られた単繊維直径2μm、繊維長2mmのPET極細繊維短繊維60gを採取して、25リットルの水と共にナイアガラビータで15分間叩解した。この叩解した短繊維の濾水度は780であった。叩解した該短繊維を少量乾燥しSEM観察した結果、ナノファイバー単繊維数平均直径φmは2065nm、単繊維比率の和Paは0%、単繊維直径の集中度指数Pbは96.2%と繊維直径にほとんど変化がなかった。また、極細繊維が叩解されて、細くなったり、繊維が割けてフィブリルが生成されることはなかった。叩解した繊維の濃度を10wt%に調整した後、比較例1と同様に抄紙したが、抄紙性はなかった。
比較例12
単繊維の平均直径がおよそ1μmの極細繊維を叩解する場合について説明する。
比較例10で得られた単繊維直径が850nmmのN6極細繊維を繊維長2mmにカットしてN6極細繊維の短繊維を得た。この短繊維を60gを採取して25リットルの水と共にナイアガラビータで15分間叩解した。この叩解した短繊維の濾水度は720であった。叩解した該短繊維を少量乾燥しSEM観察した結果、ナノファイバー単繊維数平均直径φmは862nm、単繊維比率の和Paは0%、単繊維直径の集中度指数Pbは8.7%と繊維径にほとんど変化がなく、極細繊維が叩解されて、細くなったり、繊維が割けてフィブリルが生成されることはなかった。叩解した繊維の濃度を10wt%に調整した後、比較例10と同様に抄紙したが、抄紙性が向上することはなく、安定して抄紙できなかった。
得られた合成紙の地合の良好な部分をサンプリングし、SEMで観察した結果、単繊維数平均直径φmは867nm、単繊維直径の分布から得られた単繊維比率の和Paは0%、単繊維直径の集中度指数Pbは8.6%であり、繊維直径は太く、バラツキも大きいものであった。また、合成紙の総目付は31.2g/m2、厚みは126μm、密度は0.25g/cm3であった。該合成紙の吸湿性を測定したところ、2.6%と実施例1のナノファイバーに比べて吸湿特性は低いものであった。一方、合成紙が弱いため、強度、伸度、通気量は測定することができなかった。
実施例5
溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点225℃のPBTと2エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレン(co−PS)、PBTの含有率を20重量%とし、混練温度を240℃として実施例1と同様に溶融混練し、高分子アロイチップを得た。
これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、単孔吐出量1.0g/分、紡糸速度1200m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度100℃、延伸倍率を2.49倍とし、熱セット温度115℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は161dtex、36フィラメントであり、強度1.4cN/dtex、伸度33%、U%=2.0%であった。 得られた高分子アロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、co−PSが海、PBTが島の海島構造を示し、PBTの数平均による直径は100nmであり、共重合PETがナノサイズで均一分散化した高分子アロイ繊維が得られた。この高分子アロイ繊維をトリクレンに浸漬することにより、海成分であるco−PSの99%以上を溶出した後に乾燥し、ギロチンカッターで2mmにカットして、PBTナノファイバー集合体短繊維を得た。このカット繊維から実施例1と同様に2次叩解繊維を得た。この2次叩解後のPBTナノファイバーの繊維濃度は8wt%であり、濾水度は457であった。
得られた2次叩解後のPBTナノファイバーを6.9gと第一工業製薬性のノニオン系分散剤(ノイゲンEA−87:分子量10000)0.7gを1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を熊谷理機製の実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加し20リットルの調製溶液とした。事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角の「スクリーン紗(PET製、繊維直径70μm、孔径80μm角)」上に調製溶液を抄紙し、ローラーで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥後、スクリーン紗をベース基材としたPBTナノファイバー合成紙を得た。
得られた合成紙の表面をSEM観察した結果、PBTナノファイバーが複数本集束している部分とナノファイバーが1本1本まで分散した部分を有しており、天然パルプのフィブリル類似の構造になっていた。また、単繊維数平均直径はφmは102nmであり、単繊維比率の和Paは100%であり、単繊維直径の集中度指数Pbは69%であった。また、この合成紙の総目付は45.8g/m2、厚みは100μm、密度は0.46g/cm3 、強度が90.4N/cm、伸度が32%であった。この合成紙からスクリーン紗部分(目付37.4g/m2、厚み70μm、密度が0.53g/cm3 )を除去して考えた場合、ナノファイバーのみの目付は8.4g/m2、厚みは30μm、密度が0.28g/cm3 であった。
実施例6
溶融粘度300Pa・s(220℃、121.6sec-1)、融点162℃のPP(20重量%)と実施例4のポリL乳酸(80重量%)とし、混練温度を220℃として実施例1と同様に溶融混練し、高分子アロイチップを得た。
これを溶融温度220℃、紡糸温度220℃(口金面温度205℃)、単孔吐出量2.0g/分、紡糸速度1200m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率を2.0倍とし、熱セット温度130℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は101dtex、12フィラメントであり、強度2.0cN/dtex、伸度47%であった。
得られた高分子アロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリL乳酸が海、PPが島の海島構造を示し、PPの数平均による直径は150nmであり、PPがナノサイズで均一分散化した高分子アロイ繊維が得られた。
得られた高分子アロイ繊維を98℃の3%水酸化ナトリウム水溶液にて2時間浸漬することで、高分子アロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥し、ギロチンカッターで2mm長に切断して、PPナノファイバー短繊維を得た。このカット繊維から実施例1と同様に2次叩解繊維を得た。この2次叩解後のPPナノファイバーの繊維濃度は6wt%であり、濾水度は489であった。
得られた2次叩解繊を9.2gと第一工業製薬性のノニオン系分散剤(ノイゲンEA−87:分子量10000)0.9gを1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。
該離解機中の分散液を熊谷理機製の実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加し20リットルの調製溶液とした。事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角の「スクリーン紗(PET製、繊維直径70μm、孔径80μm角)」上にこの調製溶液を抄紙し、ローラーで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥後、スクリーン紗をベース基材としたPPナノファイバー合成紙を得た。 得られた合成紙の表面をSEMで観察した結果、PPナノファイバーが複数本集束している部分とナノファイバーが1本1本まで分散した部分を有しており、天然パルプのフィブリル類似の構造になっていた。また、PPナノファイバーの単繊維数平均直径はφmは154nmであり、単繊維比率の和Paは100%であり、単繊維直径の集中度指数Pbは69%であった。さらにこの合成紙の総目付は45.7g/m2、厚みは102μm、密度は0.45g/cm3 、強度が91.2N/cm、伸度が33%であった。この合成紙からスクリーン紗部分(目付37.4g/m2、厚み70μm、密度が0.53g/cm3 )を除去して考えた場合、ナノファイバーのみの目付は8.3g/m2、厚みは32μm、密度が0.26g/cm3 であった。また、この合成紙の孔面積は0.0062μm2であった。
実施例7
溶融粘度280Pa・s(300℃、1216sec−1)のPETを80重量%、溶融粘度160Pa・s(300℃、1216sec−1)のPPSを20重量%として、下記条件で2軸押出混練機を用いて溶融混練を行い、高分子アロイチップを得た。ここで、PPSは直鎖型で分子鎖末端がカルシウムイオンで置換された物を用いた。また、ここで用いたPETを300℃で5分間保持した時の重量減少率は1%であった。
スクリュー L/D=45
混練部長さはスクリュー有効長さの34%
混練部はスクリュー全体に分散させた。
途中2個所のバックフロー部有り
ポリマー供給 PPSとPETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。
温度 300℃
ベント 無し
ここで得られた高分子アロイチップを実施例1と同様に紡糸機に導き、紡糸を行った。この時、紡糸温度は315℃、限界濾過径15μmの金属不織布で高分子アロイ溶融体を濾過した後、口金面温度292℃とした口金から溶融紡糸した。この時、口金としては、吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.6mmのものを用いた。そして、この時の単孔あたりの吐出量は1.1g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点までの距離は7.5cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、脂肪酸エステルが主体の工程油剤が給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して1000m/分で巻き取られた。この時の紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。そして、これを第1ホットローラーの温度を100℃、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。この時、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.3倍とした。得られた高分子アロイ繊維は400dtex、240フィラメント、強度4.4cN/dtex、伸度27%、U%=1.3%の優れた特性を示した。また、得られた高分子アロイ繊維の横断面をTEM観察したところ、海高分子であるPET中にPPSが島として直径100nm未満で均一に分散していた。また、島の円換算直径を画像解析ソフトWINROOFで解析したところ、島の平均直径は65nmであり、PPSが超微分散化した高分子アロイ繊維が得られた。
得られた高分子アロイ繊維をカセ取りし、繊度10万dtexのカセ状のトウとした。この時、トウ外周を綿糸で結んで30cm毎に固定することで、脱海処理中にトウがバラバラになることを抑制した。そして、このトウの繊維密度が0.05g/cm3となるようにかせ張力を調製し、図5の脱海装置にセットした。そして、このトウを98℃、10重量%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」5%owfを併用してアルカリ加水分解処理し、高分子アロイ繊維から海高分子であるPETを脱海し、トウ繊度2万dtexのPPSナノファイバーから成るトウを得た。ここで得られたPPSナノファイバートウの横断面をTEM観察したところ、単繊維数平均直径φmは60nm、単繊維比率の和Paは100%であった。
上記PPSナノファイバーから成るトウをギロチンカッターを用いて繊維長1mmにカットし、PPSナノファイバーから成る短繊維を得た。
そして、このPPSナノファイバーから成る短繊維をナイアガラビータの容器に約20リットルの水と30gの上記PPSナノファイバーから成る短繊維を投入し、繊維を5分間1次叩解した。この繊維を遠心分離器で水分を除去し、繊維濃度が10wt%の1次叩解繊維を得た。この1次叩解繊維をさらにPFI叩解装置で2分間2次叩解した後に脱水した。得られた2次叩解繊維のPPSナノファイバーの繊維濃度は10wt%であり、濾水度は460であった。
そして、上記2次叩解繊維5.5gと第一工業製薬性のノニオン系分散剤(ノイゲンEA−87:分子量10000)0.5gを1リットルの水と共に離解機に入れ、5分間分散した。該離解機中の分散液を実験用抄紙機(角形シートマシン)の容器に入れ、水を追加して20リットルの調製溶液とし、これを事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角の「スクリーン紗(PET製、繊維直径70μm、孔径80μm角)」上に抄紙し、ローラーで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥して、PPSナノファイバー合成紙を得た。
得られたPPSナノファイバーから成る紙の表面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーが複数本集束している部分とナノファイバーが1本1本まで分散した部分を有しており、天然パルプのフィブリル類似の構造になっていた。また、単繊維数平均直径φmは60nm、単繊維比率の和Paは100%、単繊維直径の集中度指数Pbは63%であった。この合成紙の総目付は45.6g/m2、厚みは101μm、密度は0.45g/cm3 、強度が91.4N/cm、伸度が32%であった。この合成紙からスクリーン紗部分(目付37.4g/m2、厚み70μm、密度が0.53g/cm3 )を除去して考えた場合、ナノファイバーのみの目付は8.2g/m2、厚みは31μm、密度が0.26g/cm3 であった。
上記、PPSナノファイバー紙をさらに180℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPS紙を得た。これは吸湿による寸法変化のほとんど無い回路基板などに好適な物であった。
ナノファイバーの原糸となる「高分子アロイ繊維」用紡糸機の一例を示す概略図である。
実施例1の高分子アロイ繊維の横断面の繊維の形状の一例を示すTEM写真である。
実施例1の合成紙表面ナイロンナノファイバーの繊維の形状の一例を示すSEM写真である。
天然パルプのフィブリルの一例を示すSEM写真である。
カセ脱海装置の概略図である。
符号の説明
1:ホッパー
2:溶融部
3:スピンブロック
4:紡糸パック
5:口金
6:チムニー
7:糸条
8:集束給油ガイド
9:第1引取ローラー
10:第2引取ローラー
11:巻取機
12:脱海処理槽
13:脱海処理液配管
14:ポンプ
15:上バー
16:下バー
17:処理液吐出穴
18:カセ状のトウ
19:脱海処理液