JP4742396B2 - 二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来のポリエステルフィルムの物性・品質を大幅に向上させた二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法に関する。
【0002】
具体的には、剛性、強靱性、寸法安定性などに優れ、例えば、磁気記録媒体用、コンデンサー用、熱転写リボン用、あるいは感熱孔版印刷原紙用などの各種の工業材料用フィルムとして非常に適した二軸配向ポリエステルフィルムと該フィルムを製造する方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、他の素材からは得られないような大面積のフィルムの連続生産が可能であり、その強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与が可能などの特徴を活かして、磁気記録媒体用、コンデンサー用、熱転写リボン用、感熱孔版印刷用原紙用などの各種工業材料用、農業用、包装用、建材用などの大量に需要のある各種分野で用いられている。
【0004】
その中でも、二軸配向ポリエステルフィルムは、機械特性や寸法安定性の観点などから様々な分野で利用されていて、特に磁気記録媒体用ベースフィルムとして有用である。磁気記録媒体用において、特に、近年は、機材の軽量化、小型化と長時間記録化のために、ベースフィルムの一層の薄膜化が要求されている。また、熱転写リボン用、コンデンサー用、あるいは感熱孔版印刷原紙用においても、近年、薄膜化の傾向が非常に強い。
【0005】
しかしながら、フィルムを薄膜化すると、機械的強度が不十分となって、フィルムの腰の強さが弱くなったり、伸びやすくなったりするため、例えば、磁気記録媒体用では、テープダメージを受けやすくなったり、ヘッドタッチが悪化して電磁変換特性が低下したりする。また、フィルムを薄膜化すると、熱転写リボン用では、印字する際のリボンの平坦性が保たれず、印字ムラや過転写が発生し、また、コンデンサ用では、絶縁破壊電圧が低下するといった問題点がある。
【0006】
このような薄膜化志向の中で、ヤング率に代表されるような引張特性などの機械特性の向上による、ますますの高強度化が望まれている。
【0007】
そのため、従来から種々の方法でフィルムの高強度化が検討されてきた。一般に知られてきた、二軸延伸ポリエステルフィルムの高強度化の手法としては、例えば、縦・横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸し、縦方向に高強度化する、いわゆる再縦延伸法が一般的である(例えば、特公昭42−9270号公報、特公昭43−3040号公報、特公昭46−1119号公報、特公昭46−1120号公報など)。
【0008】
また、さらに横方向にも強度を付与したい場合には、上述の再縦延伸を行なった後、再度横方向に延伸するという再縦再横延伸法が提案されている(例えば、特開昭50−133276号公報、特開昭55−22915号公報など)。また、一段目の延伸をフィルムの縦方向に2段階以上で行い、引き続き、フィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法が提案されている(例えば、特公昭52−33666号公報、特公昭57−49377号公報など)。
【0009】
しかし、このような従来技術で得られた高強度化ポリエステルフィルムは、例えば磁気記録媒体用において、応力伸び変形あるいは環境条件によって寸法変化し、記録トラックにずれが生じて記録再生時にエラーが発生したりするために、所望の電磁変換特性が得られなかったりする等の問題があり、大容量の高密度磁気記録テ−プへの適用に際して課題が残されているのが現状である。
【0010】
一方、ポリエステルとポリイミドの組成物については過去にも記述があり、例えば、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、一方、ポリイミドとして、熱可塑性ポリイミドの1種であるポリエーテルイミド(PEI)を用い、種々の混合比の組成物を作成すると、PEIの重量分率の増加に伴ってガラス転移温度が上昇することが示されている(例えば、「JOURNAL of APPLIED POLYMER SCIENCE」1993年,48巻,935−937頁、「Macromolecules」1995年,28巻,2845−2851頁、「POLYMER」1997年,38巻,4043−4048頁」等)。しかしながら、PETとPEIとの混合物からなるフィルムに関する報告はなされておらず、ましてや、該フィルムの機械特性や寸法安定性については全く知られてなく、検討されていないのが実状である。
【0011】
さらに、近年、リニアモーター方式の同時二軸テンターが開発され、その製膜速度の高さ等から注目を集めている(例えば、特公昭51−33590号公報、米国特許第4853602号明細書、米国特許第4675582号明細書など)。
【0012】
すなわち、従来の同時二軸延伸方式である、スクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていくスクリュー方式、あるいは、パンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていくパンタグラフ方式等においては、いずれも製膜速度が遅いこと、延伸倍率等の条件変更が容易でないこと、また、高倍率延伸が容易でないこと等の問題があった。これに対し、リニアモーター方式の同時二軸延伸法では、これらの問題を一挙に解決できる可能性があるからである。
【0013】
上述の特公昭51−33590号公報には、リニアモーターによって生じる電気力によってテンタークリップ間隔を変更して高能率生産を可能にすることが開示されている。また、上述の米国特許第4853602号明細書では、リニアモーターを使用した延伸システムが開示されており、また、上述米国特許第4675582号明細書では延伸区間にそって多数のリニアモーターを制御するのに有効なシステムについて開示されている。しかし、それら米国特許においても、本発明で得んとする高品質のポリエステルフィルムに関して言及されてはいない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヤング率などの機械強度や寸法安定性に優れた高品質の二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することであり、特に磁気記録媒体用ベースフィルムして使用したときに、保存安定性や走行耐久性に優れて高密度磁気記録テープ用ベースフィルムに好適であり、さらに、フロッピー用、感熱転写リボン用、コンデンサー用として好適な二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿う本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)とを含んでなる単一のガラス転移温度を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、広角X線回折のディフラクトメータ法による結晶配向解析で該フィルムをその法線を軸として回転した時に得られる該二軸配向ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半値幅が55〜85度の範囲である同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルムであることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル(A)は、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分から構成される。
【0017】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4―ナフタレンジカルボン酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4'―ジフェニルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0018】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,2―シクロヘキサンジメタノール、1,3―シクロヘキサンジメタノール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'―ビス(4'―β―ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0019】
また、ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2, 4―ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0020】
本発明のポリエステル(A)は、特に限定されないが、機械強度、生産性および取り扱い性等の点から、エチレンテレフタレートおよび/またはエチレンー2, 6―ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とするポリエステルおよびそれらの変性体よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。これらのうちでも、エチレンテレフタレート単位を80重量%以上含むポリエステルが特に望ましい。なぜならば、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルは、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とするポリエステルよりも、押出成形加工がし易く、製膜時のフィルム破れが少ないからである。ただし、後者には、ポリエーテルイミドとの相溶性がよいという利点はある。
【0021】
本発明のポリエーテルイミド(B)は、特に限定されないが、ポリエステル(A)との溶融成形性や取り扱い性などの点から、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する構造単位であることが好ましい。
【化1】
ただし、上記式中R1 は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基;R2 は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。
【0022】
上記R1 、R2 としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基
【化2】
を挙げることができる。
【0023】
本発明では、ポリエステル(A)との相溶性、コスト、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
【化3】
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。
【0024】
ここでいう相溶とは、得られたチップのガラス転移温度(Tg)が単一であることにより判断できる。。このように両者が相溶した場合のTgは、ポリエチレンテレフタレート(A)のTgとポリエーテルイミドのペレット(B)のTgの間に存在することが一般的に知られている。なお、単一のガラス転位点温度(Tg)を有するとは、理想的には、文字通り、Tgが唯一つのみ認められ、それ以外のTgないしはそれに相当するものが全く認められないことであるが、Tgの熱流束のギャップ以外に熱流束のギャップ様のものが認められたとしても、前記Tgの1/10以下の熱流束のギャップである場合には、これを無視し、単一のガラス転位点温度(Tg)を有するものと見なす。また、ガラス転移温度付近に、5mJ/mg以下のショルダーがあっても、単一のTgを有するものと見なす。なお、本発明で単一のガラス転移点温度を有する二軸配向ポリエステルフィルムというのは、フィルムの少なくとも1層がかかる特質を有することを指している。従って、本発明のフィルムに、発明の効果を妨げない範囲で、ガラス転移点の異なるフィルムが積層されていても良い。但し、積層される各層間のガラス転移点があまり異なるとフィルム製造が困難となるので、ガラス転移点の差は50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。但し、コーティング層はこの限りでないことは言うまでない。
【0025】
本発明において、ポリエーテルイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。また、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)をペレタイズしてもよい。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、広角X線回折のディフラクトメータ法による結晶配向解析で該二軸配向ポリエステルフィルムをその法線を軸として回転した時に得られる該二軸配向ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半価幅が55〜85度の範囲であることが必須である。ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半値幅は二軸配向ポリエステルフィルムの結晶の配向の方向の分布の広がりを表すものであり、この半価幅が55度未満の場合、フィルムの寸法安定性に劣って保存安定性が悪化したり、フィルムの引裂伝播抵抗が小さくなってテープ破断が生じ易くなったりする。また、半値幅が85度を越える場合には、フィルムの面内の全方位に高強度であるフィルムが得られず、本発明の目的を達成できない。ここで、ポリエステル主鎖方向の結晶面とは、広角X線ディフラクトメータ法によって回折ピークとして検知される結晶面の中で、その法線がポリエステル主鎖方向に最も近い結晶面であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは(−105)面、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは(−306)面である。前記半価幅は、60〜85度の範囲がより好ましく、65〜80度の範囲が、本発明の効果を得る上で最も好ましい。
【0027】
本発明の二軸配向フィルムについて、広角X線回折法から得られるポリエステル主鎖方向の結晶サイズは、特に限定されないが、40オングストローム以上から90オングストローム以下の範囲であることが好ましい。ここで、ポリエステル主鎖方向とは、ポリエステル主鎖方向に最も近い、結晶面の法線方向であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは(−105)面、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは(−306)面の法線方向である。該結晶サイズが40オングストローム未満では、テープの伸び変形が大きくなって、エッジダメージも発生し易く、またテープ加工後の保存安定性が悪化する。また、結晶サイズが90オングストロームを越えるとテープ破断の発生頻度が高くなることがある。該結晶サイズは、使用するポリエステルによって変わるが、ポリエチレンテレフタレートの場合、45オングストローム以上から85オングストローム以下の範囲がより好ましく、50オングストローム以上から80オングストローム以下の範囲がさらに好ましい。また使用するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合には、50オングストローム以上から65オングストローム以下の範囲がさらに好ましい。
【0028】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのポリエーテルイミド(B)の含有量は、特に限定されないが、1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、5〜30重量%の範囲であり、より好ましくは、10〜25重量%の範囲である。ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)の溶融粘度は大きく異なるため、ポリエーテルイミド(B)の含有量が1重量%未満であれば、押出機にて十分な混練を得て互いに相溶することが困難なことがある。また、ポリエーテルイミド(B)の含有量が50重量%を超える量であれば、押出成形加工が困難であったりして、さらに得られたポリエステルフィルムに十分な強度を発現するために、延伸加工を施すことが困難であったりすることがある。
【0029】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和は、特に限定されないが、10〜25GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは12〜22GPa、さらに好ましくは14〜20GPaである。該ヤング率の和が10GPa未満であれば、例えば、磁気記録媒体用などに用いる場合、走行時の磁気記録ヘッドやガイドピンから受ける張力のため、磁気テープに伸び変形が生じやすくなり、さらに電磁変換特性(出力特性)に悪影響を与えたりして、実用上使用に耐えないことがある。また、該ヤング率の和が25GPaを越えるフィルムは工業的に製造が困難であったり、フィルムの耐引裂性や寸法安定性が著しく低下したりすることがある。
【0030】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の温度100℃、30分における熱収縮率は、特に限定されないが、テープの伸び変形性および保存性の観点から、いずれも0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜1.5%であり、さらに好ましくは、0.01〜1.0%である。温度100℃の熱収縮率が2.0%を越える場合は、寸法安定性が損なわれやすくなることがあり、例えば磁気記録媒体用においては、ベースフィルムの磁気層を塗布するなどのフィルム加工工程における熱履歴や走行時の磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱による磁気テープの昇温時にテープの熱変形が起こりやすくなったり、テープの保存性が悪化することがある。また、温度100℃の熱収縮率が0.01%未満の場合には、フィルムが膨張して、しわが発生したりすることがある。
【0031】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、エチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)からなる成分を含有する場合、その補外ガラス転移開始温度(Tg−onset )が90〜150℃であることが好ましい。Tg−onsetは、より好ましくは95〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃の範囲内にあることである。Tg-onsetが90℃未満であれば、フィルムの寸法安定性向上について、本発明の効果が小さかったりすることがある。また、Tg-onsetが150℃を越える温度であれば、溶融成形性や延伸加工性などの成形加工の点で劣ったりすることがある。
【0032】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造でもよい。特に限定されないが、2層以上の積層構造である方がより好ましい。単層であると、例えば、磁気記録媒体用として用いる場合、粒子を含有させると、表面の突起がそろわず、電磁変換特性や走行性が悪化する場合がある。さらに、3層の場合に本発明の効果がより一層良好となり好ましい。最外層の厚みは、特に限定されないが、最外層に含有された粒子の平均径の0.1〜10倍であることが、本発明の効果がより一層良好となり好ましい。なぜならば、この範囲の下限値を下回ると、電磁変換特性の不良となる恐れがあり、一方、この範囲の上限値を超えると走行性の不良の恐れがあるからである。また、積層させる場合、2層以上の積層構造の中で、少なくとも1層がポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)からなる。他の層は特に限定されないが、ポリエステルが好ましく例示され、そのポリエステルとしては、特に限定されないが、エチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2ークロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、エチレン2,6−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に、特に好ましい。
【0033】
ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)からなる層を内層に配した場合、保存性や引張強度向上などの効果が得られる。その場合その厚さは全体の厚さの80%以上であることが好ましい。また、外層に配した場合には、走行耐久性向上に効果がある。その場合その厚さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル(A)の固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性やポリエーテルイミド(B)との混合性の観点から、0.55〜3.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜2.0(dl/g)である。また、二軸配向ポリエステルフィルムの固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性や寸法安定性などの観点から、0.50〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.55〜1.0(dl/g)である。
【0035】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などが添加されてもよい。また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、積層フィルムの最外層に無機粒子、有機粒子などを添加すると、例えば、磁気記録媒体用などにおいて有用である。該添加物としては、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などがある。
【0036】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの用途は、特に限定されないが、磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷原紙用などに用いられる。
【0037】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5〜500μmの範囲である。後述のように用途、目的に応じて適宜決定できるが、例えば、0.5〜20μmの範囲が好ましい。特に、磁気記録媒体用では、高密度磁気記録用テープ、例えば、データストレージ用のベースフィルムに適したものであり、該データ記録容量としては、好ましくは30GB(ギガバイト)以上、より好ましくは70GB以上、さらに好ましくは100GB以上である。また、リニア記録密度としては、好ましくは25キロバイト/cm以上、より好ましくは34キロバイト/cm以上、さらにより好ましくは39キロバイト/cm以上である。またフィルム厚みは、通常磁気記録材料用では1〜15μm、データ用またはデジタルビデオ用塗布型磁気記録媒体用では2〜10μm、データ用またはデジタルビデオ用蒸着型磁気記録媒体用では3〜9μmの範囲が好ましい。また、コンデンサー用には、好ましくは0.5〜15μmのフィルムが適用され、絶縁破壊電圧および誘電特性の安定に優れたものとなる。熱転写リボン用途には、好ましくは1〜6μmのフィルムが適用され、印字する際のしわがなく、印字むらやインクの過転写を生じることなく、項精細な印刷が行うことができる。感熱孔版原紙用途には、好ましくは0.5〜5μmのフィルムが適用され、低エネルギーでの穿孔性にも優れ、エネルギーレベルに応じて穿孔径を変化させることが可能であり、複数版でのカラー印刷を行う場合などの印刷性にもすぐれている。
【0038】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、これに他のポリマー層、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンおよびアクリル系ポリマーを直接、あるいは接着剤などの層を介して積層してもよい。
【0039】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0040】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は、押出機を用いた溶融押出により口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させて単一のガラス転移温度を有するシート状物を成形し、該シート状成形物を同時二軸テンターを用いて、二軸に延伸する二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法において、ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)を溶融押出により相溶させて口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形し、さらに、該シート状成型物を長手方向に1〜10倍、幅方向に1〜10倍の倍率で同時二軸テンターを用いて二軸に延伸し、しかる後に(ポリエステルフィルムのガラス転移温度)〜(ポリエステルフィルムの融点)の範囲内の温度で熱処理する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法である。
【0041】
より好ましい延伸条件は、長手方向に2〜9倍、幅方向に2〜9倍の倍率であり、さらに好ましい条件は、長手方向に3〜8倍、幅方向に3〜8倍の倍率である。ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)を相溶させる場合、ポリエーテルイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。中でも、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)をペレタイズして、マスターチップにすることが溶融成形性の観点から好ましい。
【0042】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの延伸形式としては、同時二軸テンターを用いていれば、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた逐次二軸延伸法や、長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。中でも、同時二軸延伸法を包含する方法が本発明の効果を得る上で、特に好ましい。
【0043】
このような延伸方向や延伸倍率を自由に変更できる延伸機として、本発明ではリニアモーター方式の同時二軸テンターを使用することが好ましいと言える。
【0044】
上述したように、リニアモーター式の同時二軸テンターは、
(1) 製膜速度、フィルム幅を従来の逐次二軸延伸並み、またはそれ以上に高めることができる、
(2) 高倍率延伸に対応できる、
(3) 延伸、熱処理、弛緩工程でのフィルムの変形パターンを自由に変更できる、等のことから近年注目を集めている。
【0045】
本発明において、ポリエステルフィルムに対して延伸を施す場合の延伸温度は、特に限定されないが、未延伸フィルムに対して延伸を施す場合は、(ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg))℃〜(Tg+120)℃に保つことが好ましく、(Tg+10)℃〜(Tg+80)℃がより好ましい。 延伸温度がTg℃未満では、延伸による配向が進みすぎて高倍率まで延伸しにくくなる。
【0046】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法の例について説明するが、これに限定されるものではない。ここでは、ポリエステル(A)として、ポリエチレンテレフタレートを用い、ポリエーテルイミド(B)として、ポリエーテルイミド“ウルテム”を用いた例を示すが、用いるポリエステルやポリエーテルイミドにより製造条件は異なる。
【0047】
まず、常法に従い、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応により、ビスーβ―ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移行しながら、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る。この時、所定量のポリエーテルイミドを添加しておいてもよい。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる方法としては、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。粒子の含有量、個数を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスタを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0048】
次に、該ポリエチレンテレフタレートのペレット(A)とポリエーテルイミドのペレット(B)を、一定の割合で混合して、270〜300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、溶融押出する。このときの剪断速度は50〜300sec-1が好ましく、より好ましくは100〜200sec-1、滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分の条件である。さらに、上記条件にて相溶しない場合は、得られたチップを再び二軸押出機に投入し相溶するまで押出を繰り返してもよい。上記混練によって、ポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドは相溶し、ガラス転移点が単一のポリエステルのペレットを得ることができる。
【0049】
得られたポリエーテルイミド含有のポリエステルのペレットを、180℃で3時間以上真空乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で280〜320℃に加熱された押出機に供給し、従来から行われている方法により製膜する。また、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。積層フィルムの場合には、2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルやポリエステルとポリエーテルイミドの混合物を積層したシートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。
【0050】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、同時二軸テンターを用いて、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ここでは、長手方向と幅方向に同時に延伸を行う同時二軸延伸法を用いる。延伸温度については、ポリエステル(A)やポリエーテルイミド(B)の構造成分や、積層の構成成分により異なるが、例えば、単層でポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミド“ウルテム”(登録商標)の混合ポリマーからなる場合を例示して説明する。未延伸フィルムを、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに該フィルムの両端部をクリップで把持して導き、予熱ゾーンで90〜150℃に加熱し、長手方向と幅方向のいずれにも同時に、1〜10倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する。このときにいずれの場合も、フィルム端部を把持するクリップの温度は、80〜160℃の温度範囲に設定するのが好ましい。延伸工程での延伸温度は、90〜150℃の温度範囲内に保つことが好ましいが、いったん冷却して、フィルムの結晶化を抑えながら延伸してもかまわない。また、分子量が高い原料や結晶化しにくい原料の場合には、延伸温度を200℃まで高めることも好ましく行うことができる。また、延伸工程の後半では、延伸温度を2段階以上で徐々に高めながら延伸することが好ましい。
【0051】
続いて、二軸延伸されたポリエステルフィルムに平面性、寸法安定性を付与するために、150℃〜250℃、好ましくは、170〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃の温度範囲で熱処理を施し、さらに、熱固定温度からの冷却過程で、好ましくは100〜220℃の温度範囲で長手および幅方向に、好ましくは各方向に対して1〜6%の範囲で弛緩処理を行う。弛緩処理は1段でもよいし、多段で行ってもよく、温度分布の変化を設けてもよい。その後、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0052】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0053】
(1)広角X線回折法によるフィルムの結晶面回折ピークの円周方向の半価幅X線回折装置((株)理学電機社製 4036A2型(管球型))を用いて下記の条件で、ディフラクトメータ法により測定した。
X線回折装置 (株)理学電機社製 4036A2型(管球型)
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
出力 :40kV 20mA
ゴニオメータ (株)理学電機社製
スリット :2mmφ−1゜−1゜
検出器 :シンチレーションカウンター
計数記録装置 (株)理学電機社製 RAD−C型
2θ/θスキャンで得られた結晶面の回折ピーク位置に、2cm×2cmに切り出して、方向をそろえて重ね合わせた試料およびカウンターを固定し、試料を面内回転させることにより円周方向のプロファイルを得る(βスキャン)。βスキャンで得られたピークプロファイルのうち、ピークの両端の谷部分をバックグランドとして、ピークの半値幅(deg)を計算した。
【0054】
(2)広角X線回折法から得られる結晶サイズ
X線回折装置((株)理学電機社製 4036A2型)を用いて下記の条件で、透過法により測定した。
X線回折装置 (株)理学電機社製 4036A2型
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
出力 :40kV 20mA
ゴニオメータ (株)理学電機社製
スリット :2mmφ−1゜−1゜
検出器 :シンチレーションカウンター
計数記録装置 (株)理学電機社製 RAD−C型
2cm×2cmに切り出して、方向をそろえて重ね合わせ、コロジオン・エタノール溶液で固めた試料をセットして、広角X線回折測定で得られた2θ/θ強度データのうち、各方向の面の半値幅から、下記のScherrerの式を用いて計算した。ここで結晶サイズは、配向主軸方向を測定した。
結晶サイズL(オングストローム)=Kλ/β0cosθB
K :定数(=1.0)
λ :X線の波長(=1.5418オングストローム)
θB :ブラッグ角
β0=(βE 2−βI 2)1/2
βE :見かけの半値幅(実測値)
βI :装置定数(=1.046×10-2)。
【0055】
(3)補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)、ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に従って、測定した。
なお、DSC曲線においてガラス転移温度付近にショルダーが観測される場合は、ガラス転移温度を求めた後、ベースラインよりずれた部分の面積(単位mJ/mg)を求め、5mJ/mg以下の値であれば、単一のTgとした。
【0056】
(4)ヤング率
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件とした。
(5)熱収縮率
JIS−C2318に従って、測定した。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度100℃、処理時間30分、無荷重状態
100℃熱収縮率を次式より求めた。
【0057】
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L:加熱処理後の標線間隔。
【0058】
(6)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式から計算される値を用いる。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)ー1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0059】
(7)磁気テープの走行耐久性および保存性
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料を塗布厚さ2.0μmになるように塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、カレンダー処理した後、70℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、磁気テープとして、長さ670m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
作成したカセットテープを、IBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveを用い、100回往復走行させ、次の基準でテープの走行耐久性を評価した。○が合格品とした。
○:テープ端面の伸び、折れ曲がりがなく、削れ跡が見られない。
【0060】
△:テープ端面の伸び、折れ曲がりがないが、一部削れ跡が見られる。
【0061】
×:テープ端面の一部が伸び、ワカメ状の変形が見られ、削れ跡が見られる。
【0062】
また、上記作成したカセットテープをIBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveに、データを読み込んだ後、カセットテープを40℃、80%RHの雰囲気中に100時間保存した後、データを再生して次の基準で、テープの保存性を評価した。○が合格品とした。
○:トラックずれもなく、正常に再生した。
【0063】
△:テープ幅に異常がないが、一部に読みとり不可が見られる。
【0064】
×:テープ幅に変化があり、読みとり不可が見られる。
【0065】
(8)フロッピーディスクの耐トラッキング性
A.温度変化によるトラッキングずれテスト
トラッキングずれテストとしては、次のような方法を用いる。金属薄膜をスパッタ法により基材フィルムの両面に磁気記録層を形成してディスク状に打ち抜いた金属薄膜よりなるフロッピーディスクを温度15℃、湿度60%RHでリングヘッドを用いて磁気記録し、そのときの最大出力と磁気シートの出力エンベロープを測定する。次に、雰囲気温度40℃、湿度60%RHになるように維持して、その温度における最大出力と出力エンベロープを調べ、温度15℃、湿度60%RHのときの出力エンベロープと、温度40℃、湿度60%RHのときの出力エンベロープを比較して、トラッキングの状態を判定する。この差が小さいほど優れた耐トラッキング性を有している。この差が3dBを超えるとトラッキングが×であり、3dB以内のものは○として評価した。
【0066】
B.湿度変化によるトラッキングずれテスト
前項と同様にして作成したフロッピーディスクを温度25℃、相対湿度20%の雰囲気で記録し、さらに雰囲気条件を温度25℃、相対湿度70%に保持し、両条件における出力エンベロープを比較して、トラッキングの状態を判定する。前項と同様に、この差が3dBを超えるとトラッキングが×であり、3dB以内のものは○として評価した。
【0067】
(9)熱転写リボンの印字性
片面に融着防止層を塗布した本発明の熱転写リボン用ポリエステルフィルムに下記組成の熱転写インクを、塗布厚みが3.5μmになるようにホットメルトコーターで融着防止層とは反対面に塗工し、熱転写リボンを作成した。
(熱転写インクの組成)
カルナウバワックス :60.6重量%
マイクロクリスタリンワックス :18.2重量%
酢酸ビニル・エチレン共重合体 : 0.1重量%
カーボンブラック :21.1重量%
作成した熱転写リボンについて、オークス社製のバーコードプリンター(BC−8)で黒ベタを印字して、印字性を評価した。○が合格品とした。
○:鮮明に印字
△:印字にピッチずれが生じる
×:リボンにしわが入り、印字が乱れる
××:ホットメルト塗工時にフィルムにしわが入り、熱転写インクが均一に塗布できない。
【0068】
(10)コンデンサ用特性評価
絶縁抵抗および絶縁破壊電圧については以下の通りに評価した。
【0069】
A.絶縁抵抗
本発明のポリエステルフィルムの片面に表面抵抗値が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅57mm、マージン部の幅3mmの繰り返し)。次に各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に1.5mm幅のマージンを有する全幅30mmのテープ状の巻き取りリールとした。得られた左右対称のマージンを有するアルミ蒸着フィルム1対を重ね,1.5μFの容量となる長さに巻回した。この巻回物を120℃、20kg/cm2 の圧力で10分間プレスして成形した。両端面にメタリコンを溶射して電極とし、リード線を取り付けてコンデンサーサンプルとした。次いで、ここで作成した1.5μFのコンデンサーサンプル1000個を23℃、65%RHの雰囲気下においてYHP社製の超絶縁抵抗計4329Aにて印加電圧500Vでの1分値として測定し、絶縁抵抗が5000MΩ未満のコンデンサーサンプルを不良品として以下の基準で判定した。なお、本発明においては◎、○と△を合格とした。
◎:不良品が10個未満
○:不良品が10個以上20個未満
△:不良品が20個以上50個未満
×:不良品が50個以上。
【0070】
B.絶縁破壊電圧
JIS−C−2318に記載の方法に準じて、ただし、金属蒸着を施していないフィルムを試験片として用いて次のように評価する。
【0071】
適当な大きさの金属製平板の上にゴムショア硬さ約60度、厚さ約2mmのゴム板を一枚敷き、その上に厚さ約6μmのアルミニウム箔を10枚重ねたものを下部電極とし、約50gの重さで周辺に約1mmの丸みを持った径8mmの底面が平滑で傷のない黄銅製円柱を上部電極とする。試験片は、あらかじめ温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気に48時間以上放置しておく。上部電極と下部電極の間に試験片をはさみこみ、温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気中で両電極間に直流電源により直流電圧を印加し、該直流電圧を1秒間に100Vの速さで0Vから絶縁破壊するまで上昇させる。試料50個に対し試験を行い、絶縁破壊電圧を試験片の厚みで除したものの平均値を求め、その値が400V/μm以上を合格(○)とする。
【0072】
【実施例】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0073】
実施例1
公知の方法により得られたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.85)のペレットを50重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)50重量%を、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを50重量%含有したポリエステルチップ(I)を得た。さらに、該チップ(I)40重量%をポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、滑り剤として平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレット60重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(II)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0074】
一方、ポリエステルチップ(I)を40重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを60重量%を、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給し、同様の方法で、ポリエステルチップ(III)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0075】
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(III)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/III/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0076】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0077】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0078】
実施例2〜4
実施例1と同様にして、表1のようにポリエーテルイミドの含有量を変更して、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0079】
この二軸配向ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0080】
実施例5
実施例1と同様の方法で未延伸ポリエステルフィルムを得た後、該未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。さらに続いて、フィルム温度を150℃にして、長手方向に1.4倍に延伸し、続いて、幅方向に1.4倍に逐次に二軸再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0081】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0082】
実施例6
公知の方法により得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(固有粘度0.65、ガラス転移温度125℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレットを80重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)20重量%を、290℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(IV)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0083】
一方、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(固有粘度0.65、ガラス転移温度125℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを80重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)20重量%を、290℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、同様の方法で、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(V)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0084】
押出機2台を用い、290℃に加熱された押出機Aには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(V)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく290℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(IV)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(IV)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比IV/V/IV=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0085】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を145℃に加熱し、面積延伸倍率25.0倍(縦倍率:5.0倍、横倍率:5.0倍)で同時二軸延伸する。続いて、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0086】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0087】
実施例7
実施例1と同様にして、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(III)を得た後、押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、該ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(III)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)(VI)(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、滑り剤として平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエチレンテレフタレート(VI)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比VI/III/VI=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0088】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を105℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0089】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0090】
実施例8
実施例1と同様にして、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)を得た後、押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、該ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)(VII)(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/VII/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0091】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0092】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
【0093】
比較例1
3層積層(II/III/II)において、3層ともポリエーテルイミドが混合されていないポリエチレンテレフタレート(PET)にすること以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムを作成する。
【0094】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を90℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0095】
この二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリイミドエーテルを含有していておらず、その組成・特性等は、表1および表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
【0096】
比較例2
実施例1と同様にして得た未延伸ポリエステルフィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、長手方向に3.1倍に延伸し、続いて、幅方向に3.5倍に逐次二軸延伸する。さらに続いて、フィルム温度を150℃にして、長手方向に1.4倍延伸し、さらに幅方向に1.4倍延伸する。定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0097】
このポリエステルフィルムは、表1に示したとおり、結晶配向解析による半値幅が本発明の範囲外であり、その特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
【0098】
比較例3
実施例1と同様にして得た未延伸ポリエステルフィルムを、ロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度110℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度100℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度135℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.4倍再延伸した。定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
このポリエステルフィルムは、表1に示したとおり、結晶配向解析による半値幅が本発明の範囲外であり、その特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
【0100】
実施例9
実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(I)を40重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65,平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子6重量%配合)のペレット60重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(VIII)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0101】
一方、実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(I)を40重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、粒子なし)のペレット60重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(IX)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0102】
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(VIII)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(IX)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、Tダイ中で合流し(積層比VIII/IX=1/250)、表面温度25℃のキャストドラムに静電密着させて、冷却固化し、未延伸フィルムを作成する。得られた未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。得られた二軸配向ポリエステルフィルムに磁気記録媒体用の加工を施して、フロッピーディスクとしての実用特性を評価する。結果は、表3のとおり、優れた特性を有している。
【0103】
比較例4
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65,平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子6重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、粒子なし)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、Tダイ中で合流し(積層比A/B=1/250)、表面温度25℃のキャストドラムに静電密着させて、冷却固化し、未延伸フィルムを作成する。
【0104】
得られた未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0105】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムに磁気記録媒体用の加工を施して、フロッピーディスクとしての実用特性を評価する。結果は、表3のとおり、実用特性に劣るものである。
【0106】
実施例10
実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(I)を40重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、平均径1.0μmの二酸化ケイ素粒子0.2重量%配合)のペレット60重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(X)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0107】
該ポリエステルチップ(X)を180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出する。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを得る。この未延伸フィルムの片面に融着防止層として下記組成の塗剤を乾燥後の塗布厚みが0.5μmになるようにグラビアコーターで塗工する。
(塗剤の組成)
アクリル酸エステル :14.0重量%
アミノ変性シリコーン : 5.9重量%
イソシアネート : 0.1重量%
水 :80.0重量%
その後、得られた未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、実施例1と同様の延伸条件で製造する。得られた厚さ4μmのフィルムに熱転写リボン用加工を施して、熱転写リボン用としての実用特性を評価する。結果は、表4のとおり、優れた特性を有している。
【0108】
比較例5
実施例10において、ポリエーテルイミドを含有しないポリエチレンテレフタレートを用いて、比較例1と同様に延伸して、二軸配向ポリエステルフィルムを得る。得られた厚さ4μmのフィルムに熱転写リボン用加工を施して、熱転写リボン用としての実用特性を評価する。結果は、表4のとおり、実用特性に劣るものである。
【0109】
実施例11
実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(I)を40重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、平均径1.2μmの凝集シリカ粒子0.1重量%配合)のペレット60重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップ(XI)を得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0110】
該ポリエステルチップ(XI)を180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出する。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを得る。この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、実施例1と同様の延伸条件で製造した厚さ4μmのフィルムを、コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価する。結果は、表5のとおり、優れた特性を有している。
【0111】
比較例6
実施例11において、ポリエーテルイミドを含有しないポリエチレンテレフタレートを用いて、比較例1と同様に延伸して、二軸配向ポリエステルフィルムを得る。得られた厚さ4μmのフィルムを、コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価する。結果は、表5のとおり、実用特性に劣るものである。
【0112】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルムのヤング率などの機械特性や寸法安定性を向上させた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷用原紙用などの各種フィルム用途に広く活用が可能である。具体的には、磁気記録媒体用として、走行耐久性、保存性、フロッピー用耐トラッキング性などに優れ、さらに、感熱転写リボン用として印字性に優れたベースフィルムを得ることができる。
Claims (6)
- ポリエステル(A)とポリエーテルイミド(B)とを含んでなる単一のガラス転移温度を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、広角X線回折のディフラクトメータ法による結晶配向解析で該フィルムをその法線を軸として回転した時に得られる該二軸配向ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半値幅が55〜85度の範囲であることを特徴とする同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
- ポリエーテルイミド(B)が1〜50重量%含有されている請求項1に記載の同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
- 長手方向と幅方向のヤング率の和が10〜25(GPa)である請求項1または2に記載の同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
- 長手方向と幅方向の100℃、30分における熱収縮率がいずれも0.01〜2.0%である請求項1〜3のいずれかに記載の同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
- ポリエステル(A)がエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするものである請求項1〜4のいずれかに記載の同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
- 補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)が90〜150℃である請求項5に記載の同時二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム。
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