[1]電子写真感光体およびその製造方法:
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも下引層と感光層とを有する。そして、下引層が加水分解性有機金属化合物と、当該加水分解性有機金属化合物と反応可能な基を有するアクセプター性化合物と、シランカップリング剤とを含有する。また、下引層において、2950〜2960cm−1の範囲でのCH吸収の最大ピーク値(A)と、1375〜1385cm−1の範囲でのアセチルアセトン吸収の最大ピーク値(B)との比(B/A)が1.3以下となっている。
下引層に上記3つの成分を含有し、上記所定のピーク比(B/A)を満足することで、濃度ムラやかぶりのない良好な画像を形成することができる。
上記構成が適用される限り、本発明の電子写真感光体の感光層の層構成は、特に限定されるものではない。電荷輸送層を表面層とする積層型感光体が繰り返し安定性や環境変動等の性能面で優れているので、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、図1に、本発明の電子写真感光体の層構成を例示する模式断面図を示す。図1に示した電子写真感光体1においては、導電性基体(導電性支持体)11上に下引層12が形成されており、さらに下引層12上に電荷発生層13および電荷輸送層14がこの順で形成されている。図1に示した電子写真感光体1は、電荷発生材料を含有する電荷発生層13と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層14とに機能が分離された機能分離型の感光層15を備えるものである
(導電性支持体)
導電性支持体の材料としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属材料;高分子材料(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、フェノール樹脂等)又は硬質紙等の絶縁材料に導電物質(カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、金属、ヨウ化銅等)を分散させて導電処理したもの;上記の絶縁材料に金属泊を積層したもの;上記の絶縁材料に金属の蒸着膜を形成したもの、等を用いることができる。また、導電性支持体の形状としては、円筒状、プレート状、シート状等が挙げられる。
導電性基体11として金属パイプを用いる場合、当該金属パイプは素管のまま用いてもよく、又は、予め鏡面研削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウェットホーニング等の処理を施していてもよい。
(下引層)
下引層には、加水分解性有機金属化合物と、当該加水分解性有機金属化合物と反応可能な基を有するアクセプター性化合物と、シランカップリング剤とが含有されている。以下、これらについて説明する。
−アクセプター性化合物−
下引層に用いられるアクセプター性化合物としては、水酸基(ヒドロキシル基)を有するアントラキノン系の化合物が用いられる。
水酸基を有するアントラキノン構造を有する化合物としては、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などのヒドロキシアントラキノン系化合物が挙げられ好ましく用いることができる。ヒドロキシアントラキノン系化合物は、水酸基がシランカップリング剤と反応することで繰返し使用された場合においても、下引き層中に電荷蓄積させるトラップサイトをより形成しにくくなるため、特に好ましい材料といえる。
さらに具体的にはアリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3―ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
アクセプター性化合物の付与量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、好ましくは後述の加水分解性有機金属化合物に対して0.01〜20質量%の範囲で用いられる。さらに好ましくは0.05〜10質量%の範囲で用いられる。
0.01質量%未満では下引層内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすい。また、20質量%を超えると金属化合物同士の凝集を引き起こしやすく、その為下引層形成時に下引層内で有機金属化合物が良好な導電路を形成することが出来ず、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
−加水分解性有機金属化合物−
加水分解性有機金属化合物は、アセチルアセトン吸収を伴う化学構造を有し、かつ、所望の特性が得られるものであれば、いかなる公知の材料を用いることもできるが、好ましくはケイ素、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属を含有する加水分解性有機金属化合物が用いられる。特に好ましくは、ジルコニウムもしくはケイ素を含有する加水分解性有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。なお、本明細書でいう加水分解性有機金属化合物の金属には、ケイ素が含まれるものとする。以下、加水分解性有機金属化合物の具体例を示すが、本発明においては、下記加水分解性有機金属化合物のうち、アセチルアセトン吸収を伴う化学構造を有する化合物を用いる。
ケイ素化合物の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。
これらのなかでも特に好ましく用いられるシリコン化合物はビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
有機チタン化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は主に有機金属化合物の加水分解反応の加速および促進として作用する。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、モノフェニルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。
加水分解性有機金属化合物の含有量は、シランカップリング剤に対して5〜95%の範囲で任意に設定することが出来、高分子樹脂などの結着樹脂を含有させる場合は、有機金属化合物とシランカップリング剤の合計量に対し、結着樹脂は5〜50質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。5〜25質量%であることで、塗布液をゲル化させること無く成膜性が良好となり、形成された塗膜のクラックも防止することができる。
−その他の成分−
下引層は、加水分解性有機金属化合物等の他に、成膜性向上、厚膜化などのために他の高分子樹脂化合物を含有させることができる。さらに、下引層には金属酸化物微粒子を含有させることができる。
高分子樹脂化合物としては例えば、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、う樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
金属酸化物微粒子は、所望の特性が得られるものであれば、公知のいかなるものでも用いることができる。酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子を用いるのが好ましい。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、前記金属酸化物微粒子は表面処理を施してもよい。
表面処理は加水分解性有機金属化合物が好ましく用いられるが、加水分解性有機金属化合物としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。
例えば、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
具体的な加水分解性有機金属化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、
ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどのジルコニウムキレート化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの加水分解性有機金属化合物は2種以上混合して使用することもできる。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒まに溶解させた加水分解性有機金属化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、加水分解性有機金属化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があり好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、加水分解性有機金属化合物溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法は蒸留により留去される。ろ過による除去方法では未反応の加水分解性有機金属化合物が流出しやすく、所望の特性を得るための加水分解性有機金属化合物量をコントロールし難い欠点があり、好ましくない。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物微粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
金属酸化物微粒子を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。
また、下引層に用いられる結着剤として、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂の外に、シランカップリング剤やジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン等を含有する有機金属化合物等の加水分解により縮重合反応をする化合物が主として用いられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。中でも、シランカップリング剤およびジルコニウムを含有する有機金属化合物は高い成膜性を有し、また、残留電位が低く環境による変化が少なく、また、繰り返し使用による電位の変化が少ない等、性能上優れているので好ましい。
下引層の塗布溶剤としては、加水分解性有機金属化合物や高分子樹脂化合物を溶解させ、または、金属酸化物を分散させることができるものであればいかなるものでも用いることができる。
下引層では、塗液中で有機金属化合物と反応可能な基を有するアクセプター性化合物が反応しても、塗布膜乾燥・硬化中に反応しても良いが、分散液中で反応する方が均一に反応するため好ましい。
下引層の形成(塗布工程)に適用される塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
下引層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす為、アクセプターの効果を阻害することともなる。従って、下引層を形成する場合には、0.1〜3μmの膜厚範囲に設定される。
下引層は膜形成直後もしくは塗布後に、有機金属化合物およびアクセプター性化合物の反応促進のために、適度な湿度条件下において加湿処理を行う(加湿処理工程)。加湿処理については絶対湿度20g/kg以上の条件でおこなわれることで反応が行われるが、本発明では、絶対湿度135g/kg以上の加湿処理を行う。135g/kg以上とすることで更なる良好な帯電安定性が得られるため好ましい。
また、下引層形成直後に絶対湿度135g/kg以上の加湿処理を行い、さらに電荷発生層などを積層後に加湿処理を行う。このように、加湿処理を2回以上行うことにより安定した帯電安定性が得られる。
以上のようにして形成された下引層は、2950〜2960cm−1の範囲でのCH吸収の最大ピーク値(A)と、1375〜1385cm−1の範囲でのアセチルアセトン吸収の最大ピーク値(B)との比(B/A)が1.3以下となっている。当該比が1.3を超えると、加水分解反応が不足し、低温低湿時の残留電位が増加してしまい画像特性が低下してしまう。また、かかる範囲とするには、既述の3つの成分を下引層に含有させて、上記加湿処理を施せばよい。当該比は、1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
ここで、それぞれの最大ピーク値は、IR測定装置によりもとめることができる。まず、CH吸収の最大ピーク値(A)は、ベースラインからの値であり、このベースラインは、3005cm−1と2760cm−1とを直線で結んだものとなる。同様に、アセチルアセトン吸収の最大ピーク値(B)もベースラインからの値であり、1480cm−1と1210cm−1とを直線で結んだものとなる。測定条件としては、一般的なフーリエ変換赤外分光光度計で下引き層の塗膜を測定すればよく、透過法もしくは反射法にて測定されるが、本案件に記載した測定法は下引き層を剥離したのちに透過法によって測定されたものであり、反射法を用いる場合は値の逆数で計算すればよい。上記それぞれの最大ピーク値の測定は、下引層形成後に行ってもよく、または、電子写真感光体の感光層を取り除いて行ってもよい。
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生材料、及び結着樹脂を含んで構成されている。本発明においては、電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いることが好ましい。フタロシアニン顔料が、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのうち、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが、感度および環境安定性の観点からより好ましい。
フタロシアニン顔料は、公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
湿式粉砕処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノールエタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)又はこれらの数種の混合系、あるいは水とこれら有機溶剤との混合系が挙げられる。
溶剤の使用量は、顔料結晶1質量部に対して1〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。また、湿式粉砕処理における処理温度は、0℃〜溶剤の沸点以下が好ましく、10〜60℃がより好ましい。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。用いる磨砕助剤の量は、顔料の質量に対して0.5〜20倍が好ましく、1〜10倍(いずれも質量換算値)がより好ましい。
公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料結晶は、アシッドペースティング、あるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕又は湿式粉砕との組み合わせによって結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、濃硫酸が好ましく、濃度70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、濃硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、好ましくは1〜100倍、より好ましくは3〜50倍(いずれも質量換算値)の範囲に設定される。また、溶解温度は、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜60℃の範囲に設定される。結晶を酸から析出させる際の溶剤としては、水、あるいは水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
さらに、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが特に好ましい。これにより、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とを得ることができる。
さらに、本発明で用いるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、体積平均粒径(d50平均粒径:堀場製作所遠心沈降式粒度分布計にて測定)が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、体積平均粒径が0.20μm以下であることが好ましく、0.01〜0.15μmであることがより好ましい。一方、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55〜120m2/gであることが特に好ましい。
体積平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積値が45m2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成されており、電荷発生層における分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じやすい傾向にある。
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが好ましい。
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、25℃から400℃まで昇温したときの熱重量減少率が2.0〜4.0%であることが好ましく、2.5〜3.8%であることがより好ましい。なお、熱重量減少率は熱天秤等により測定することができる。
上記熱重量減少率が4.0%を超えると、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に含有される不純物が電子写真感光体に影響を及ぼし、感度特性、繰り返し使用時における電位の安定性や画像品質の低下が生じる傾向にある。また、2.0%未満であると、感度の低下が生じる傾向にある。これは、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が結晶中に微量含有する溶剤分子との相互作用によって増感作用を示すことに起因する。
上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得る方法としては、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を湿式粉砕処理することによって結晶変換させる製造方法が挙げられる。湿式粉砕処理は、外径0.1〜3.0mmの球形状のメディアを使用した粉砕装置により行うことができる。ここで、メディアの使用量をヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して50質量部以上として行い、湿式粉砕処理の時間を、粉砕過程のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の吸収波長を測定することにより決定することができる。例えば、湿式粉砕処理において、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するものとなるように、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターしながら湿式粉砕処理時間を決定することができる。
かかる製造方法において原料として使用される、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(以下、「I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料」という)は、従来公知の方法によって得ることができる。以下にその一例を示す。
まず、o−フタロジニトリル又は1,3−ジイミノイソインドリンと三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウムおよびエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)、等により粗ガリウムフタロシアニンを製造する。上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどの不活性且つ高沸点の溶剤を用いることが好ましい。
次に、上記の工程で得られた粗ガリウムフタロシアニンについてアシッドペースティング処理を行うことによって、粗ガリウムフタロシアニンを微粒子化するとともにI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に変換する。ここで、アシッドペースティング処理とは、具体的には、粗ガリウムフタロシアニンを硫酸などの酸に溶解させたものあるいは硫酸塩などの酸塩としたものを、アルカリ水溶液、水又は氷水中に注ぎ、再結晶させることをいう。前記アシッドペースティング処理に用いる酸としては硫酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(特に好ましくは95〜100%)の硫酸がより好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の製造方法においては、上記のアシッドペースティング処理によって得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を溶剤とともに湿式粉砕処理して結晶変換する。
ここで、上記湿式粉砕処理は、例えば、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置を用いて行うことができるが、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いて行うことがより好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成しやすい傾向にある。また、メディアの外径が0.1mmより小さい場合、メディアとヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とを分離し難くなる傾向にある。更に、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる傾向がある。
上記メディアの材質は特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー等が好ましい。
また、上記湿式粉砕処理を行う容器の材質についても特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリフェニレンサルファイド等が好ましい。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリフェニレンサルファイド等をライニングしたものであっても良い。
上記メディアの使用量は、使用する装置によっても異なるが、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して50質量部以上であり、好ましくは55〜100質量部である。また、メディアの外径が小さくなると、同じ質量(使用量)でも装置内に占めるメディア密度が高まり、混合溶液の粘度が上昇して粉砕効率が変化するため、メディア外径を小さくするに従い、適宜メディア使用量と溶剤使用量とをコントロールすることによって最適な混合比で湿式処理を行うことが望ましい。
また、湿式粉砕処理の温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは5〜80℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなる傾向にあり、また、温度が高すぎる場合には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく微粒化が困難となる傾向にある。
湿式粉砕処理に使用される溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶剤の使用量は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して通常1〜200質量部であり、好ましくは1〜100質量部である。
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の製造方法において、結晶変換の進行スピードは、湿式粉砕処理の工程のスケール、攪拌スピード、メディア材質などに大きく影響されるが、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するように、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターしながら湿式粉砕処理時間を決定し、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に結晶変換されるまで継続することが好ましい。
ここで、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターする手法として具体的には、湿式粉砕処理装置より結晶変換処理中の顔料溶液を少量サンプリングし、アセトン、酢酸エチルなどの溶剤で希釈した溶液を分光光度計を用いて液セル法により測定する方法が挙げられる。
このようにして決定される湿式粉砕処理時間は、通常5〜500時間の範囲、好ましくは7〜300時間の範囲である。処理時間が5時間未満であると、結晶変換が完結せず、電子写真特性の低下、特に感度不足が生じやすくなる傾向にある。また、処理時間が500時間を超えると、粉砕ストレスの影響による感度低下、生産性低下、メディアの摩滅粉の混入などが生じやすくなる傾向にある。湿式粉砕処理時間を上記のように決定することにより、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料粒子が均一に微粒子化した状態で湿式粉砕処理を完了することが可能となり、更に、複数ロットの繰り返し湿式粉砕処理を実施した場合には、ロット間の品質のばらつきを抑制することが可能となる。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の製造方法においては、上記湿式粉砕処理後、更に溶剤による洗浄及び/又は加熱乾燥を行うことが好ましい。このような溶剤による洗浄や加熱乾燥によって、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の不純物濃度をコントロールすることができ、特に、25℃から400℃まで昇温したときの熱重量減少率が2.0〜4.0%であるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を効率的に且つ確実に得ることが可能となる。
溶剤による洗浄処理により不純物濃度をコントロールする場合、使用する溶剤としては、例えば、水、エタノール、メタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤、及びこれらの混合溶剤等、並びに二酸化炭素や窒素等の超臨界流体等が挙げられる。
洗浄方法としては、公知の方法を特に制限なく使用することができるが、洗浄効率の観点から、セラミックフィルター、超音波洗浄器、ソックスレー抽出器、又は流路径が10〜1000μmのマイクロミキサー等を使用する洗浄方法が効果的である。
また、加熱乾燥により不純物濃度をコントロールする場合、加熱乾燥の温度としては、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜180℃である。加熱温度が50℃未満であると、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の諸特性に影響を及ぼす不純物を完全に除去することが困難となる傾向にあり、200℃を越えると、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の感度が著しく低下する傾向にある。また、加熱乾燥の処理時間は、処理するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の質量に応じて適宜調節することが好ましい。
加熱乾燥によりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の不純物を効率良く除去するためには、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの加熱乾燥を減圧下で行うことが好ましい。減圧下で加熱乾燥を行う場合には、加熱乾燥の温度を常圧下で行う場合よりも低温にすることができるという利点がある。このときの加熱乾燥の温度は、減圧の程度にもよるが、50℃〜200℃の範囲であることが好ましい。
また、加熱乾燥は不活性気体の存在下で行うことが好ましい。不活性気体としては、周期律表第0族のヘリウム、ネオン、アルゴン等、及び窒素等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を混合して使用することができる。これら不活性気体の存在下で加熱乾燥を行うことにより、空気中の酸素によりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が酸化されるのを防止し、高温での加熱乾燥が可能となるという利点がある。また、加熱乾燥は光を遮断した状態で行うことも好ましい。これにより、加熱乾燥の際にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が光疲労するのを防止することができる。
フタロシアニン顔料は、加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤で被覆処理してもよい。かかる被覆処理によって電荷発生材料の分散性や後述する電荷発生層用の塗布液の塗布性が向上し、平滑で分散均一性の高い電荷発生層を容易に且つ確実に成膜することができ、その結果、カブリやゴースト等の画質欠陥が防止され、画質維持性を向上させることができる。また、電荷発生層用塗布液の保存性も著しく向上するので、ポットライフ(pot life)の延長の点でも効果的であり、感光体のコストダウンも可能となる。
加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Rp−M−Yq …(1)
ただし、上記式(1)中、Rは有機基を表し、Mはアルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子を表し、Yは加水分解性基を表し、p及びqはそれぞれ1〜4の整数であり、pとqとの和はMの原子価に相当する。
一般式(1)中、Rで表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基等のアルカリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルキル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロリジニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等の複素環残基等が挙げられる。これらの有機基は1種または2種以上の各種の置換基を有していてもよい。
また、一般式(1)中、Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジロキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
また、一般式(1)中、Mはアルカリ金属以外であれば特に制限されるものではないが、好ましくはチタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子又はケイ素原子である。すなわち、本発明においては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換した有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、さらにはシランカップリング剤が好ましく用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
また、上記の有機金属化合物及びシランカップリング剤の加水分解生成物も使用することができる。この加水分解生成物としては、前記一般式で示される有機金属化合物のM(アルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子)に結合するY(加水分解性基)やR(有機基)に置換する加水分解性基が加水分解したものが挙げられる。なお。有機金属化合物及びシランカップリング剤が加水分解基を複数含有する場合は、必ずしも全ての官能基を加水分解する必要はなく部分的に加水分解された生成物であってもよい。また、これらの有機金属化合物及びシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
加水分解性基を有する有機金属化合物及び/又はシランカップリング剤(以下、単に「有機金属化合物」という)を用いてフタロシアニン顔料を被覆処理する方法としては、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で該フタロシアニン顔料を被覆処理する方法、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散時に有機金属化合物を混合処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散後に有機金属化合物で更に分散処理する方法等が挙げられる。
より具体的には、顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法としては、有機金属化合物と結晶が整う前のフタロシアニン顔料とを混合した後加熱する方法、有機金属化合物を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し機械的に乾式粉砕する方法、有機金属化合物の水または有機溶剤中の混合液を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し湿式粉砕処理方法等が挙げられる。
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法としては、有機金属化合物、水又は水と有機溶剤との混合液、並びにフタロシアニン顔料を混合して加熱する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料に直接噴霧する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料と混合しミリングする方法等がある。
分散時に混合処理する方法としては、分散溶剤に有機金属化合物、フタロシアニン顔料、結着樹脂を順次添加しながら混合する方法、これらの電荷発生層形成成分を同時に添加し混合する方法等が挙げられる。
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂中に分散した後に有機金属化合物で更に分散処理する方法としては、例えば溶剤で希釈した有機金属化合物を分散液に添加し攪拌しながら分散する方法が挙げられる。また、かかる分散処理の際、より強固にフタロシアニン顔料に付着させるために、触媒として硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を添加してもよい。
これらの中でも、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法、又はフタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法が好ましい。
電荷発生層は、フタロシアニン顔料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂等が挙げられる。これらのうち、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、又はポリビニルブチラール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂が特に好ましい。これらの結着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生層におけるフタロシアニン顔料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。塗布液の溶媒としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限されず、例えばアルコール、芳香族化合物、ハロゲン化炭化水素、ケトン、ケトンアルコール、エーテル、エステル等から任意で選択することができ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
フタロシアニン顔料及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。この分散の際、フタロシアニン顔料を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
かかる塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
上記のようにして形成した塗膜の膜厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることがより好ましい。膜厚が0.05μm未満の場合は、電荷発生層を均一に形成することが困難となる傾向にあり、5μmを越えると電子写真特性が著しく低下する傾向がある。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成されるものである。かかる電荷輸送材料としては、具体的には、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)−]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、
2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニルキノン、ブロモアニルキノン、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質;あるいは上記した化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送層の結着樹脂は特に制限されないが、フィルム形成可能な電気絶縁性の樹脂が好ましい。このような結着樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂は電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れており好ましく用いられる。これらの結着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送層には、耐磨耗性向上、現像剤の転写効率向上、クリーニングブレードへのダメージ低減などの目的で、にフッ素系樹脂粒子を含有させることができる。フッ素系樹脂粒子の電荷輸送層中での含有量は、電荷輸送層全量に対し、0.1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。含有量が1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果を十分に得ることができず、一方、40質量%を越えると光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向にある。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
また、フッ素系樹脂粒子の一次粒径は0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると、分散時の凝集が進みやすくなる傾向にあり、1μmを上回ると画質欠陥が発生し易くなる傾向にある。
電荷輸送層は、上記の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に混合/分散した塗布液を用いて形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては電荷発生層用塗布液の説明において例示された溶媒が使用できるが、電荷発生層の結着樹脂に対する溶解性が低いものを選定することが好ましい。また、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、好ましくは3:7〜6:4である。当該配合比が前記の範囲外の場合には、電気特性又は膜強度の少なくとも一方が低下する傾向にある。また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。塗布液を調製する際の分散方法及び塗布液の塗布方法としては、電荷発生層の場合と同様の方法が適用可能である。また、電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmが好ましく、高寿命と高画質を両立させる点においては20〜35μmが特に好ましい。
なお、本発明の電子写真感光体は図1で例示される電子写真感光体に限定されるものではない。例えば図1に示した電荷輸送層14の上に保護層を設けてより高硬度の表面層を設けて高寿命用として用いる事もできる。
上記構成を有する本発明の電子写真感光体は、電気特性及び画像特性に優れるものであるが、特に、10℃、15%RHの条件下、スコロトロン帯電器で該電子写真感光体の表面電位を−700Vに帯電させ、帯電の0.26秒後に50.0erg/cm2の赤色LED光を照射して露光する露光工程を、プロセス速度500mm/秒で繰り返し300,000回行った後、帯電、露光を止め30分間レストさせ、前記と同じプロセス速度で露光1秒後に帯電スタートした際のVHの1サイクル目をV1、2サイクル目をV2とした際、下記式(i)を満たす事ができる。
式(i);0≦|V2−V1|<150
上記式(i)を満たすことで、400mm/秒以上の高速使用で300kサイクル以上の使用された低温低湿環境下においても帯電性の低下が小さくファーストプリント時の感光体の電位を低下させることなく濃度ムラのない画像を提供することができる。
[2]プロセスカートリッジおよび画像形成装置
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を必須とし、当該電子写真感光体を帯電させるための帯電手段、前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、および前記電子写真感光体上に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種の手段と、を備える。これらの各手段については、後述の画像形成装置で説明する。
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、前記電子写真感光体上残存したトナーを除去するためのクリーニング手段とを有し、前記電子写真感光体が、本発明の電子写真感光体となっている。
図2に、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を示す概略構成図を示す。図2に示した画像形成装置200は、本発明の電子写真感光体1が矢印の方向に所定の回転速度で回転可能となっている。そして、電子写真感光体1の回転方向に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置7がこの順で配置されている。また、当該装置は像定着装置6を備えており、被転写媒体Pは転写装置5を経て像定着装置6へと搬送される。
帯電装置2(帯電手段)は、電源9とつながり、スコロトロン型の非接触帯電装置を備えるもので、SUS材質シールドタングステンワイヤーおよび適切な開口部が設置されたグリッドから構成されるものであるが、各部材の形状には特に制限されない。またかかる帯電装置2は接触帯電部材も設けても同様の作用はえられ、ローラー状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状、等の中から選択される。
露光装置3(露光手段)としては、電子写真感光体1表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体1の支持体(導電性基体)と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
現像装置4(現像手段)としては、一成分系、二成分系等の正規または反転現像剤を用いた公知の現像装置等を用いることができる。また、使用されるトナーの形状は特に制限されず、例えば粉砕法による不定形トナーや重合法による球形トナーが好適に使用される。
転写装置5(転写手段)としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
クリーニング装置7(クリーニング手段)は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置7としては、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
また、本発明の画像形成装置はイレース光照射装置等の除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
1…電子写真感光体、2…帯電装置、3…露光装置、4…現像装置、5…転写装置、6…像定着装置、7…クリーニング装置、11…導電性基体(導電性支持体)、12…下引層、13…電荷発生層、14…電荷輸送層、15…感光層、200…画像形成装置