以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両用のエンジンの排気ガス浄化システムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンの排気ガス浄化システムのシステム構成を示す一部断面図である。
図1において、エンジンの排気ガス浄化システムは、電子制御ユニット(ECU)100、エンジン200および主排気ガス浄化装置300を備える。ECUl00は,デジタルコンピュータからなり、双方向バスによって相互に接続されたROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、CPU(セントラルプロセッサユニット)、入力ポート、出力ポートなどを備え、エンジン200の動作を制御することが可能である。また、ECUl00は、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、後述する故障診断処理を実行することが可能に構成されており、主排気ガス浄化装置300と共に本発明に係る排気ガス浄化システムの故障診断装置の一例としても機能するように構成されている。
エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成された、本発明に係る内燃機関の一例である。以下に、エンジン200の要部構成を説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し,外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、不図示の燃料タンクから燃料(ガソリン)が供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料をECU100の制御に従って、吸気管206内に墳射することが可能に横成されている。
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208による吸気ポートの開閉によって連通状態が制御される。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して排気ポートを開閉する排気バルブ209を通過して排気管210に排気される。
吸気管206の上流には、エアクリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。エアクリーナ211のシリンダ側には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、例えば、ホットワイヤー式であり、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
吸気管206におけるエアフローメータ212のシリンダ側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルバルブモータ217とスロットルポジションセンサ215が配設されており、電子制御式スロットルバルブを構成している。なお、本実施形態においては、該電子制御式スロットルバルブがアイドリング時の吸入空気量を調節するアイドル制御弁を兼用している。一方、アクセルペダル223の踏込み量は、アクセルポジションセンサ216を介してECU100に入力されており、アクセルポジションセンサ216の出力に対応するスロットルバルブ開度を示す信号がECUl00からスロットルバルブモータ217に出力され、吸入空気量が制御される。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の位置を検出することが可能に構成されたセンサであり、ECU100は、クランクポジションセンサ218の出力信号に基づいてピストン203の位置およびエンジン200の回転数などを取得することが可能に構成されている。このピストン203の位置は、前述した点火プラグ202における点火時期の制御などに使用される。点火プラグ202における点火時期は、例えば、ピストン203の位置に対応付けられて予め設定される基本値に対し遅角又は進角制御される。
また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定することが可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
排気管210の集合部には、比較的小容量のスタートアップ触媒222が設置されている。スタートアップ触媒222は、例えば、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、およびNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な三元触媒である。排気管210におけるスタートアップ触媒222の上流側には,空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
主排気ガス浄化装置300は、排気管210における,スタートアップ触媒222の下流側に設置された触媒装置であり、ECUl00と共に、本発明に係る排気ガス浄化システムの故障診断装置の一例として機能することが可能に構成されている。主排気ガス浄化装置300とECU100とは、制御用のバスラインを介して電気的に接続されている。
ECUl00には、車体に設置された気圧センサ251から大気圧Paを表す信号、車両の走行速度を検出可能な車速センサ(不図示)から車速VSを表す信号、およびシフト位置センサ(不図示)から選択されているレンジ信号RSが入力されるように構成されている。ECU100のROMには、各種の制御プログラム、マップ、初期値および閾値が格納され、後述する故障診断処理において参照される。
ECU100のROMには、大気圧と閾値との関係を予め定めた大気圧−閾値マップ(図5参照)が記憶されている。この大気圧−閾値マップでは、大気圧が低いほど閾値の絶対値が漸減するように設定されている。この大気圧−閾値マップは、後述する故障診断処理において参照される。
次に、図2を参照して、主排気ガス浄化装置300の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、主排気ガス浄化装置300の模式断面図である。なお、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
主排気ガス浄化装置300の外筒310の内部には内筒320がその端部に一体に形成された鍔部322を介して、外筒310と同心に且つ互いに径方向に隙間を有して設けられている。内筒320は、その上流側が外筒310の対応する端部近くまで延在され、主排気ガス浄化装置300内において開放した状態にして設置されている。また、内筒320の下流側端部は、外筒310に配置されたアンダーフロア触媒330の端面に所定の空間を介して対峙しつつ開放した状態に設置されている。また、内筒320の鍔部322には複数の通気孔324が形成されている。そして、主排気ガス浄化装置300の外筒310と内筒320との間に形成された環状空間、すなわち、後述するバイパス流路350には環状のHC吸着材340が設けられている。なお、主排気ガス浄化装置300の外筒310の上流側および下流側端部には排気管210が連結されている。
さらに、図2において、本実施形態の主排気ガス浄化装置300は、上述のアンダーフロア触媒330、HC吸着材340に加えて、切替弁370、第1および第2の温度センサ380、390および断熱層395を備えている。
アンダーフロア触媒330は、車両の床下に設置される、例えば、三元触媒であり、前段のスタートアップ触媒222((図2では不図示)を通過し、矢印A方向へ流れる排気ガスを浄化する。
バイパス流路350は、本発明に係る「第2の排気ガス通路」の一例であり、内筒320の内側に形成される本発明に係る「第1の排気ガス通路」(以下、通常流路360と称す)をバイパスして排気ガスをアンダーフロア触媒330に導くための流路である。
HC吸着材340は、例えば、ゼオライトで形成されたフィルタであり、低温(概ね100℃未満)でHC分子を吸着(或いはトラップ)する網目状のフィルタであり、トラップされたHC分子は、高温(概ね100℃以上)では熱による運動エネルギーの増加に伴って自然に脱離を開始する。
切替弁370は、スタートアップ触媒222を通過した排気ガスの流路を、バイパス350と通常流路360との間で選択的に切り替えることが可能に構成されている。切替弁370は、回動可能に支持された軸部372がロッド374の紙面左右方向への直線運動に伴って図示B方向へ回動することによって、排気ガスの流路を切り替えることが可能に構成されている。このロッド374は、ダイヤフラム機構376によって動作が制御されている。
ダイヤフラム機構376は、ダイヤフラム377を有する。ダイヤフラム377は、ダイヤフラム機構376の内部空間を、変圧室376aと大気圧室376bとに区画している。ダイヤフラム377には、上述したロッド374が接続されている。切替弁370は、ダイヤフラム377が撓んでいない状態では全開状態となることにより通常流路360を連通させ、ダイヤフラム377が変圧室376a側へ最大限に撓んだ状態では全閉状態となることにより通常流路360を遮断する。
大気圧室376b内の圧力は、常時、大気圧に維持されている。変圧室376aには、負圧供給配管379の一端が接続され負圧が導入されている。負圧供給配管379の他端は、バキュームスイッチングバルブ(VSV)381に接続されている。VSV381には、吸気管206の吸気マニホールドに連通する負圧通路383が接続されている。またVSV381は、大気に開放される大気開放口を備えている。VSV381は、オフ状態で負圧供給配管379を大気開放口に導通させ、一方、ECU100からオン信号が供給された場合に負圧供給配管379を大気開放口から遮断すると共に負圧通路383に連通させる。VSV381は、前述した制御用のバスラインを介してECUl00と電気的に接続されている。すなわち、切替弁370は吸気管206から導入される負圧によって駆動され、かつ主排気ガス浄化装置300は、ECUl00からの制御信号に応じて、切替弁370の開閉状態が変化するように構成されている。
本実施の形態の第1温度センサ380は、サーミスタ素子で構成されており、主排気ガス浄化装置300におけるアンダーフロア触媒330の上流側で通常流路360の温度T1を検出することが可能に配置されている。
第2温度センサ390は、同じくサーミスタ素子で構成されており、バイパス流路350におけるHC吸着材340の上流側の温度T2を検出することが可能に構成されている。なお、第1および第2の温度センサ380,390は、かかる温度を、温度に応じた電圧値として検出すると共にECU100に出力しており、ECUl00によって温度T1、T2が特定される。なお、第2温度センサ390はバイパス流路350のHC吸着材340の下流側に配置され、バイパス流路350内の温度を検出できるようにしてもよい。
断熱層395は、バイパス流路350と通常流路360との間に形成された断熱体であり、バイパス流路350と通常流路360との間の熱交換が抑制されている。
次に、図3および図4を参照して、切替弁370の動作に伴い形成される排気ガス流路について説明する。ここに、図3は、主排気ガス浄化装置300において切替弁370が閉じている場合の排気ガス流れの模式図であり、図4は、主排気ガス浄化装置300において切替弁370が開いている場合の排気ガス流れの模式図である。なお、これらの図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
図3において、矢印A方向に流入する排気ガスは、切替弁370が閉じているために通常流路360には流れず、バイパス流路350に導かれる。そして、HC吸着材340によってHCの吸着が行われた後、HC吸着材340の下流側に形成された通気孔324から矢印C方向へ流出し、アンダーフロア触媒330に流入する。
また、図4において、矢印A方向から流入する排気ガスは、切替弁370が開いているために、排気抵抗の差から通常流路360に導かれる。その一方で、通常流路360を通過する排気ガスの一部は、通常流路360の終端部付近で図示矢印D方向に方向を変え、バイパス流路350の終端の鍔部322に形成された通気孔324を介して下流側からバイパス流路350に流入する。そしてバイパス流路350の上流側の端部において排気ガスの流れ方向(矢印A方向)へ再び向きを変えて通常流路360に導かれる。すなわち、排気ガスの一部は、主排気ガス浄化装置300の内部を還流する。主排気ガス浄化装置300では,通常流路360とバイパス流路350との断面積比率、バイパス流路350の終端部分を規定する鍔部322の曲率、並びに通気孔324の形状および大きさなどが、予めこのような還流現象を生じさせるように決定されている。なお、このような還流現象を生じさせることは、本発明との関連においては必須ではない。
冷間始動の場合、所定時間が経過するまでは上流側のスタートアップ触媒222および主排気ガス浄化装置300のアンダーフロア触媒330は通常活性化されていない。このため、排気ガスをアンダーフロア触媒330に流さずに、バイパス流路350に流すこととし(図3における矢印C)、その結果、排気ガス中の未燃HC成分はHC吸着材340に吸着されることになる。
アンダーフロア触媒330が活性化されるタイミングで、切替弁370は図4に示す開位置に駆動され、通常流路360が開放される。その結果、通常流路350と通常流路360との排気抵抗差に起因して、排気ガスは主に通常流路360を流れ、その排気熱でアンダーフロア触媒330が加熱・昇温されることになる。また、このとき通常流路350には通気孔324を介して矢印D方向に排気ガスが還流し、これによってHC吸着材340からHCが徐々に脱離させられる。
ECUl00は、排気ガス浄化システム10の動作中に、ROMに格納されるプログラムに従って故障診断処理を実行することによって、切替弁370の故障を診断することが可能に構成されている。
次いで、本実施形態における故障診断動作を説明する。図6の処理ルーチンはエンジン200の動作中にわたり所定時間ごとに繰返し実行される。まずECU100は、故障診断を実行するための前提条件として、エンジンが暖機済みの状態であるかを判断する(S10)。この判断は、例えば水温センサ220の検出値と所定値との比較によって行われ、検出値が所定値を上回っている場合に肯定される。なお、この暖機済み判断の基準には、エンジン水温が所定値を上回っていること、エンジン始動から一定時間を経過したこと、エンジン回転数やその始動からの累積値が一定値以上であること、のうち1または2以上のものを用いてもよい。暖機済みである場合には、次に、温度センサ診断処理(S20)、および弁故障・センサ逆接診断処理(S30)が行われる。
ステップS20の温度センサ診断処理は、具体的には図7のサブルーチンに従って行われる。図7において、まずECU100は、所定時間内における吸入空気量増加量が予め定められた閾値ΔGth1以上であるかを判断し(S110)、肯定すなわちエンジンの加速時の場合には、次に、その所定時間内における温度増加量が閾値ΔTth1以上であるかを判断する(S120)。ステップS120で肯定の場合には、ECU100は当該温度センサが正常である旨の出力を行う(S130)。
ステップS110で否定の場合には、ECU100は、同じ所定時間内における吸入空気量減少量が予め定められた閾値ΔGth2以上であるかを判断し(S140)、肯定すなわちエンジンの減速時の場合には、次にその所定時間内における温度減少量が閾値ΔTth2以上であるかを判断する(S150)。ステップS150で肯定の場合には、ECU100は当該温度センサが正常である旨の出力を行う(S130)。
ステップS140で否定の場合には、ECU100は、燃料カット運転の継続時間が予め定められた閾値Fth以上であるかを判断し(S160)、肯定の場合にはステップS150に移行し、否定の場合には処理をリターンする。
ステップS120またはS150で否定の場合は、加速時であるにもかかわらず温度増加量が小さい、あるいは減速時または燃料カット運転時であるにもかかわらず温度減少量が小さい場合であるから、ECU100は、当該温度センサが異常である旨の出力を行う(S170)。
ステップS130の正常出力、およびステップS170の異常出力は、他の処理ルーチンにおいて参照されるフラグのセットによって実行してもよいし、これらの結果に従って行われる所定の処理、例えば所定の走行ログファイルへの記録や、異常判定の場合の所定のインジケータなどによるユーザに対する警報出力によって実行してもよい。なお、以上の温度センサ診断処理は切替弁370の動作状態を考慮して、温度センサ380,390のそれぞれについて個別に行われる。以上の処理の結果、温度センサ380,390のいずれが異常である場合にもこれを検出することができる。
ステップS30(図6)の弁故障・センサ逆接診断処理は、具体的には図8のサブルーチンに従って行われる。図8において、まずECU100は、排気温度T1,T2、および吸入空気量Gaの現在値をそれぞれ取得する(S210)。排気温度T1,T2は第1および第2温度センサ380,390の、吸入空気量Gaはエアフローメータ212の検出信号に基づいてそれぞれ算出される。
次にECU100は、エンジン200が定常運転状態にあるかを判断する(S220)。この判断は具体的には、(i)吸入空気量Gaが所定範囲内にあり、且つ(ii)吸入空気量Gaの所定時間内の変動が所定範囲内にあることを条件とすることができる。
定常運転状態にある場合には、ECU100は切替弁370に対し、閉動作をすべき旨の駆動指示出力を行う(S230)。
次にECU100は、温度T1,T2および吸入空気量Gaの値を個別に積算する(S240)。この積算は、吸入空気量Gaの積算値が所定の基準値X[g]以上になるまでの間(S250)、繰返し実行される。
なお、ステップS220において定常運転状態にない場合には、閉動作をすべき旨の駆動指示出力が解除され(S330)切替弁370が再び開かれると共に、温度T1,T2および吸入空気量Gaの積算値がクリアされることになる(S340)。
ステップS250において吸入空気量Gaの積算値が基準値X[g]に達したことを条件に、ECU100は温度面積差ΔSを算出する(S260)。この温度面積差ΔSは、温度T1,T2の積算値の差として算出される。
ここで、温度面積差を用いた故障判定について説明する。切替弁370が正常に閉じられた場合、排ガスが主として通常通路360側からバイパス流路350側に供給されるようになるために、温度センサ380,390の検出値T1,T2は、概ねそれぞれ図9および図10に示されるように推移する。その結果、温度面積差ΔS(ΔS=B−A)は絶対値の大きい負の値となる(図11中曲線a)。これに対し、切替弁370が開状態で固着している場合や、異物などの外乱因子によって十分に閉じられていない場合には、温度面積A,Bの差が比較的小さくなり、温度面積差ΔSは絶対値の比較的小さい負の値か、あるいは正の値になる(図11中曲線b)。したがって、温度面積差ΔSを適切な閾値ΔSthと比較することにより、切替弁370が正常に閉じられたかを判定することができる。
具体的には、ECU100はまず、温度面積差ΔSが閾値−ΔSthよりも小さいかを判断する(S270)。肯定の場合は、温度面積差ΔSの絶対値が閾値ΔSthよりも大きく、かつ温度面積差ΔSの正負の符号が排気ガス切替弁の動作状態または動作指示状態に対応している場合であるから、ECU100は温度センサと切替弁370の両者が正常と判定し、正常出力を行う(S280)。
ステップS270で否定の場合には、ECU100は次に、温度面積差ΔSが閾値−ΔSth以上かつΔSth以下であるかを判断する(S290)。肯定の場合には、温度面積差ΔSの絶対値が閾値ΔSth以下の異常な場合であるが、ここでは次に先の温度センサ380,390の診断結果(S130,S170)を参照し、温度センサ380,390が正常の場合には(S300)、ECU100は切替弁370が故障していると判定し、弁異常出力を行う(S310)。
ステップS290で否定の場合には、温度面積差ΔSの絶対値が閾値ΔSthより大ではあるが、正負の符号が切替弁370の動作状態に対応していない場合であるから、ECU100は、温度センサ380,390が互いに逆に設置されていると判定し、温度センサ逆接出力を行う(S320)。
ステップS280の正常出力、ステップS310の弁異常出力、およびステップS320の温度センサ逆接出力は、他の処理ルーチンにおいて参照されるフラグのセットによって実行してもよいし、これらの結果に従って行われる所定の処理、例えば所定の走行ログファイルへの記録や、異常判定の場合の所定のインジケータなどによるユーザに対する警報出力によって実行してもよい。
以上の処理の結果、本実施形態では、温度センサ380,390が異常である場合(S170)、切替弁370が故障している場合(S310)、および温度センサ380,390が互いに逆に設置されている場合(S320)に、これらが検出されることになる。
以上のとおり、本実施形態では、温度センサ380,390の両検出値の偏差である温度面積差ΔSが絶対値において予め定められた閾値ΔSthよりも大きく、かつ正負の符号が切替弁370の動作状態に対応していない場合に、複数の温度センサ380,390が互いに逆に設置されていると判定(S320)することによって、誤結線を検出することができ、エミッションの悪化を抑制することが可能になる。
また、本実施形態では、温度センサ380,390の診断(S130,S170)と弁故障判定(S290)の両者を行うので、温度センサ380,390が正常である場合に故障原因が切替弁370の故障にあることを検出でき、故障原因の特定と修理作業を促進することができる。
また、本実施形態では、温度面積差ΔSの絶対値が閾値ΔSthよりも大きく、かつ正負の符号が切替弁370の動作状態または動作指示状態に対応している場合に、切替弁370が正常であると判定するので、簡易な構成によって切替弁370が正常であることを好適に判定できる。
また、本実施形態では、選択されることが指示されている排気ガス通路の温度センサの出力値が、エンジンの加速時に増加せず、且つ減速時に減少しない場合に、当該温度センサが異常であると判定するので、故障原因の特定と修理作業を促進することができる。
なお、上記実施形態では、本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。例えば、閾値ΔSthは大気圧に応じて変更してもよい。すなわち、切替弁370が負圧によって駆動される機械的構造においては、大気圧が低い環境、例えば高地にいる場合には、大気圧減少に起因する弁の不完全作動時にも、それが故障と判定されてしまうおそれがある。そこで、閾値ΔSthを大気圧に応じて変更すれば、この問題を抑制することができる。具体的には、気圧センサ251から大気圧Paを取得すると共に、予め作成しECU100のROMに格納した大気圧−閾値マップ(図5参照)を検索し、現在の大気圧Paに対応する閾値を算出する。この大気圧−閾値マップでは、大気圧が低いほど閾値の絶対値が漸減するように設定されている。そしてECU100は、算出された閾値ΔSthと温度面積差ΔSとを絶対値で比較する(S270,S290)。このような処理の結果、図11に示されるように、例えば高地走行時のように大気圧が低い場合には、閾値ΔSthが高い(負の値であって絶対値が小さい)値ΔSth1へと変更される。その結果、高地における大気圧減少に起因する切替弁370の不完全作動時(図11における曲線d)であっても、故障判定時における温度面積差ΔSが閾値ΔSth1を絶対値で下回り、正常判定がされることになる。したがって、このような場合に故障と判定してしまうおそれを抑制することが可能になる。なお、閾値の変更は連続的に行うほか、例えば二段階のように離散的に行ってもよい。また大気圧は気圧センサ251によって直接検出するほかGPS等の地理情報に基づいて推定してもよい。
また、上記実施形態では切替弁370または温度センサ380,390の故障の有無を二値的に検出することとしたが、本発明は予め定められた基準或いは何らかのアルゴリズムに従って、多段階に故障の程度が特定される構成を広く含む。また上記実施形態では温度面積差ΔSを閾値と比較することによってシステムを診断したが、本発明では温度センサ380,390の検出値の偏差を所定の閾値と比較することによってシステムを診断してもよい。
また、上記実施形態では、第2排気ガス通路(通常流路360)の外側を囲むように第1排気ガス通路350が形成された二重円筒型の構造に本発明を適用したが、本発明における第1および第2排気ガス通路は、両者が排気経路中で分岐し且つ後段の触媒よりも上流側で合流するものである限り、互いに離間していてもよい。
また、排気ガス切替弁は他の構造のものを任意に採用でき、第1排気ガス通路を閉塞できるものであってもよい。また、HC吸着材、触媒および温度センサの種類および構造も、実施形態に例示したもの以外のものを任意に採用することができる。さらに、温度センサは各部の温度を直接検出するもののほか、車両の運転状態に関する各種の物理量から温度を推定するものを含むものであって、かかる構成も本発明の範疇に属するものである。