JP4687494B2

JP4687494B2 - 転がり軸受装置

Info

Publication number: JP4687494B2
Application number: JP2006039313A
Authority: JP
Inventors: 良大西
Original assignee: JTEKT Corp
Current assignee: JTEKT Corp
Priority date: 2006-02-16
Filing date: 2006-02-16
Publication date: 2011-05-25
Anticipated expiration: 2026-02-16
Also published as: JP2007218351A

Description

本発明は、転がり軸受と、制振部材とを備える転がり軸受装置に関する。

従来、転がり軸受装置としては、特開２００４−１０８５３９号公報（特許文献１）に記載されているものがある。この転がり軸受装置は、回転軸の外周面に配置された玉軸受と、この玉軸受の外輪の外周面とハウジングとの間に嵌合されて固定された環状の制振部材とからなる。上記制振部材は、双晶型合金材料からなっている。上記従来の転がり軸受装置は、外輪の外周側に配置された制振部材で、上記回転軸や上記ハウジングから伝達してくる振動を制振減衰して、振動を抑制している。

しかしながら、上記従来の転がり軸受装置では、上記制振部材が、軸受で用いられる鋼材と比較して線膨張係数が大きい双晶型合金材料からなっているので、軸受装置の温度が高くなると、外輪と制振部材との線膨張係数の差異に起因して、外輪と制振部材との間に大きな隙間が発生して、上記制振部材の制振性がなくなると共に、玉軸受が軸方向に抜けでたり外輪と制振部材の嵌合い面にクリープが発生するという問題がある。
特開２００４−１０８５３９号公報

そこで、本発明の課題は、振動を減衰できると共に、軸受が軸方向に抜けでず、かつ、制振部材の軸受に対する嵌合い面にクリープが発生しにくい軸受装置を提供することにある。

上記課題を解決するため、本発明の転がり軸受装置は、
軌道面を有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
上記内輪の上記軌道面と上記外輪の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記外輪の外周面と、固定部の内周面との間に嵌合されて固定されると共に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材と
を備え、
上記外輪の外周面に嵌合される上記制振部材の内周面には、上記外輪の外周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成され、上記固定部の内周面に嵌合される上記制振部材の外周面には、上記固定部の内周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成されていることを特徴としている。

本発明者は、制振部材として、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を採用すると、温度が高くなっても、制振部材の嵌合い面にクリープが発生することがなく、かつ、転がり軸受が抜け出でることを確実に防止できることを発見した。

また、本発明者は、制振部材として、たとえ歪みが大きくなると制振性が失われる強磁性型制振合金材料からなる制振部材を採用したとしても、環状の制振部材の外周面と内周面とのうちの少なくとも一方の一部と、その外周面と内周面とのうちの少なくとも一方と径方向に対向する部材の一部との間に、隙間を形成した場合においては、制振部材の制振性が失われることがなくて、制振部材で振動を確実に減衰することができることを発見した。

本発明によれば、制振部材として、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を採用しているので、温度が高くなっても、制振部材の嵌合い面にクリープが発生することがなく、かつ、転がり軸受が抜け出でることを確実に防止できる。

また、本発明によれば、制振部材として、歪みが大きくなると制振性が失われる強磁性型制振合金材料からなる制振部材が採用されているが、上記制振部材の内周面の一部と上記外輪の外周面の一部との間と、上記制振部材の外周面の一部と上記固定部の内周面の一部との間と、のうちの少なくとも一方の間に、隙間が形成されているので、その隙間で歪みを開放できて、制振性が失われることがない。したがって、制振部材で振動を確実に減衰させることができる。

また、本発明の転がり軸受装置は、
軌道面を有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
上記内輪の上記軌道面と上記外輪の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記内輪の内周面と、軸の外周面との間に嵌合されて固定されると共に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材と
を備え、
上記内輪の内周面に嵌合される上記制振部材の外周面には、上記内輪の内周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成され、上記軸の外周面に嵌合される上記制振部材の内周面には、上記軸の外周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成されていることを特徴としている。

また、本発明によれば、制振部材として、歪みが大きくなると制振性が失われる強磁性型制振合金材料からなる制振部材が採用されているが、上記制振部材の外周面の一部と、上記内輪の内周面の一部との間と、上記制振部材の内周面の一部と、上記軸の外周面の一部との間とのうちの少なくとも一方の間に、隙間が形成されているので、その隙間で歪みを開放できて、制振性が失われることがない。したがって、制振部材で振動を確実に減衰させることができる。

本発明の転がり軸受装置によれば、制振部材として、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を採用しているので、温度が高くなっても、制振部材の嵌合い面にクリープが発生することがなく、かつ、転がり軸受が抜け出でることを確実に防止できる。

また、本発明の転がり軸受装置によれば、環状の制振部材の外周面と内周面とのうちの少なくとも一方の一部と、その外周面と内周面とのうちの少なくとも一方と径方向に対向する部材の一部との間に、隙間を形成しているので、制振部材の制振性が失われることがなくて、制振部材で振動を確実に減衰することができる。

以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。

図１は、転がり軸受装置の第１参考例である玉軸受装置の径方向の断面図の一部である（詳しくは、外輪１の軌道面である軌道溝の軌道底における径方向の断面図である）。

この玉軸受装置は、外輪１と、内輪２と、転動体の一例としての玉３と、環状の制振部材４とを備える。上記玉３は、外輪１の軌道面と内輪２の軌道面との間に、保持器６によって保持された状態で、周方向に一定の間隔を隔てられて複数配置されている。

上記制振部材４は、強磁性型制振合金材料の一例としてのＦｅ−Ａｌ系合金材料からなっている。上記制振部材４は、外輪１の外周面に外嵌されて固定されている一方、この玉軸受が配置された固定部の一例としての機械のハウジング８の内周面に内嵌されて固定されている。上記制振部材４の内周面（外輪１に対する嵌合い面）には、溝１０が形成されている。上記溝１０は、略断面矩形の形状を有し、略軸方向に延在している。上記溝１０の深さ方向は、環状の制振部材４の径方向に略一致している。上記溝１０は、周方向に略等間隔に複数配置されている。

強磁性型制振合金材料は、歪みがない状態においては制振作用を有する一方、板形状の強磁性型制振合金材料で確かめられているように、ほんの少しでも歪ませると（圧縮歪みまたは引張歪みがほんの少しでも存在すると）、制振作用が著しく低下するということが知られている。このため、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を転がり軸受の内輪の内周や外輪の外周に配置して、振動を制振するという思想が存在しなかった。すなわち、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を、締め代を持たせて内輪または外輪に嵌合固定した場合、その嵌合固定に起因する歪み（圧縮歪みまたは引張歪み）によって、制振部材の制振性が失われると考えられており、強磁性型制振合金材料からなる制振部材を転がり軸受の内輪の内周や外輪の外周に配置するという思想は存在しなかった。

しかしながら、本発明者は、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材を、外輪の外周面に外嵌させて固定した場合や、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材を、内輪の内周面に内嵌させて固定した場合に、制振部材の外周面と内周面のすくなくとも一方の一部と、その外周面と内周面の少なくとも一方と径方向に対向する部材の一部との間に、隙間を形成すると、制振部材の嵌合い面における歪みを効果的に開放できて、制振部材の制振性が失われず大きな制振性を有することを発見した。これは、上記隙間の部分に応力が発生せず、嵌合い応力を低減できるためであると推測される。

また、本発明者は、制振部材を、強磁性型制振合金材料を用いて形成した場合、温度が高くなっても、制振部材の嵌合い面にクリープが発生せず、かつ、転がり軸受が抜け出でることもないことを見出した。これは、強磁性型制振合金材料は、軸受の材料として用いられる高炭素クロム軸受鋼（ＳＵＪ２）や浸炭鋼（ＳＡＥ５１２０）と略同じ線膨張係数を有しているので、軸受の軌道輪との間の嵌合の状態が温度変動に対して略不変で、嵌合の状態が温度依存性を有さないためであると推測される。

上記第１参考例の転がり軸受装置によれば、制振部材として、強磁性型制振合金材料からなる制振部材４を採用しているので、温度が高くなっても、制振部材４の嵌合い面にクリープが発生することがなく、かつ、転がり軸受が抜け出でることを確実に防止できる。

また、上記第１参考例の転がり軸受装置によれば、制振部材４の内周面（外輪１に対する嵌合い面）に、溝１０を形成することによって、制振部材４の内周面の一部と外輪１の外周面の一部との間との間に、隙間が形成されているので、この隙間によって制振部材４の歪みを効率的に開放することができる。したがって、本参考例のように、制振部材として、強磁性型制振合金材料からなる制振部材４を採用したとしても、制振部材４の制振性が失われることがなくて、制振部材４で振動を確実に減衰させることができる。また、上記溝１０の部分は、振動が伝達しないので、この点からも、制振部材４の制振性を向上させることができる。

特に、上記第１参考例の転がり軸受装置によれば、嵌合い応力が特に高いと考えられている外輪の外周面に当接する制振部材４の内周面に、周方向に所定間隔毎に、軸方向に延在する溝１０を形成しているので、溝１０の部分で円周方向の応力を効果的に開放できて、溝１０の部分において、円周方向にひっぱる力を大幅に緩和することができる。したがって、嵌合い応力を急激に下げることができるので、制振部材の制振性の低下を防止する効果が特に大きくなる。

尚、上記第１参考例の転がり軸受装置では、外輪１の外周面に外嵌されて固定された環状の制振部材４の内周面に、軸方向に延在する溝１０を周方向に等間隔に複数形成したが、この発明では、外輪１の外周面に外嵌されて固定された環状の制振部材の内周面に、軸方向に延在する溝を周方向に等間隔でない間隔で複数形成しても良い。

また、上記第１参考例の転がり軸受装置では、環状の制振部材４の内周面に形成された軸方向に延在する溝１０の断面形状が略矩形状であったが、この発明では、環状の制振部材の内周面に形成された軸方向に延在する溝の断面形状は、半円形状や三角形状等、矩形状以外の形状であっても良い。

また、上記第１参考例の転がり軸受装置では、外輪１の外周面に外嵌されて固定された環状の制振部材４の内周面に、軸方向に延在する溝１０を周方向に等間隔に複数形成したが、図２に示すように、外輪２１の外周面と、固定部の一例としてのハウジング２８の内周面との間に、嵌合されて固定された制振部材２４の外周面に、軸方向に延在する溝３０を周方向に等間隔または等間隔でない間隔に複数形成しても良い。また、この発明では、図３に示すように、外輪４１の外周面と、固定部の一例としてのハウジング４８の内周面との間に、嵌合されて固定された制振部材４４の内周面に、軸方向に延在する溝５０を周方向に等間隔または等間隔でない間隔に複数形成すると共に、制振部材４４の外周面に、軸方向に延在する溝６０を周方向に等間隔または等間隔でない間隔に複数形成しても良い。尚、この場合、図３に示すように、制振部材４４の内周面に形成される軸方向に延在する溝５０と、制振部材４４の外周面に形成される軸方向に延在する溝６０とを、周方向に交互に配置することが好ましい。このようにすると、制振部材４４内における応力を均一にできて、制振部材の制振性の低下を防止する効果を大きくすることができる。

また、上記第１参考例の転がり軸受装置では、強磁性型制振合金材料として、Ｆｅ−Ａｌ系合金材料を採用したが、この発明では、強磁性型制振合金材料として、Ｆｅ−Ｃｒ系合金材料（例えば、サイレンタロイ（登録商標）やジェンタロイ（登録商標）等）や、特開昭５２−７３１１８号公報、特開平０４−９９１４８号公報および特開平０６−２２０５８３号公報に記載されている強磁性型制振合金材料等、如何なる強磁性型制振合金材料を採用しても良く、この場合、Ｆｅ−Ａｌ系合金材料の制振部材を採用したときと同様の作用効果を獲得できる。

図４は、転がり軸受装置の第２参考例である玉軸受装置の軸方向の断面図である。

第２参考例の玉軸受装置では、第１参考例の玉軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第１参考例の玉軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。

この玉軸受装置は、内輪７１と、外輪７２と、転動体の一例としての玉７３と、環状の制振部材７４とを備える。

上記玉７３は、内輪７１の軌道面と外輪７２の軌道面との間に、保持器７５によって保持された状態で、周方向に略等間隔毎に複数配置されている。上記制振部材７４は、強磁性型制振合金材料の一例としてのＦｅ−Ａｌ系合金材料からなっている。上記制振部材７４は、外輪７２の外周面に外嵌されて固定されている一方、この玉軸受が配置された機械のハウジング７８の内周面に内嵌されて固定されている。上記制振部材７４の内周面（外輪７２に嵌合する嵌合い面）には、溝８０が形成されている。上記溝８０は、略断面矩形の形状を有し、略周方向に延在している。上記溝８０の深さ方向は、環状の制振部材７４の径方向に略一致している。上記溝８０は、軸方向に略等間隔に複数配置されている。

上記第２参考例の転がり軸受装置によれば、周方向に延在する溝８０が軸方向に所定間隔毎に形成されているので、主に、嵌合い面の軸方向の歪みを低減できて、制振部材７４の制振性の低下を防止できる。

尚、上記第２参考例の転がり軸受装置では、上記溝８０は、環状溝で、略周方向に延在していたが、外輪の外周面に外嵌されて固定される制振部材の内周面（嵌合い面）に形成される溝は、軸受装置の中心軸のまわりをスパイラス状に延在するスパイラル型の溝であっても良い。このように、スパイラル状型の溝を採用した場合、軸方向の歪みだけでなくて、周方向の歪みも低減できて、制振部材の制振性の低下を防止する効果が大きくなる。

また、上記第２参考例の転がり軸受装置では、外輪７２の外周面に外嵌されて固定される制振部材７４の内周面に、周方向に延在する溝８０を軸方向に所定間隔毎に形成したが、外輪の外周面に外嵌されて固定される制振部材の外周面に、周方向に延在する溝を軸方向に所定間隔毎に形成しても良い。また、外輪の外周面に外嵌されて固定される制振部材の外周面に、転がり軸受の中心軸のまわりをスパイラル状に延在するスパイラル形状の溝を形成しても良い。

また、上記第２参考例の転がり軸受では、外輪の外周面に外嵌されて固定される制振部材の内周面に、周方向に延在する溝を軸方向に所定間隔毎に形成したが、転がり軸受の内輪と回転軸の間に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材を配置すると共に、この環状の制振部材の外周面または内周面に、周方向に延在する溝を軸方向に所定間隔毎に形成しても良い。また、転がり軸受の内輪と回転軸の間に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材を配置すると共に、この環状の制振部材の外周面または内周面に、転がり軸受の中心軸のまわりをスパイラル状に延在するスパイラル形状の溝を形成しても良い。

尚、上記第１、２参考例の転がり軸受装置およびそれらの変形例では、制振部材は、外輪の外周面または内輪の内周面のみに当接するような形状をしていたが、この発明では、制振部材は、外輪の外周面に当接すると共に、外輪の軸方向の端面の少なくとも一部に当接するような形状であっても良い。また、制振部材は、内輪の内周面に当接すると共に、内輪の軸方向の端面の少なくとも一部に当接するような形状であっても良い。

また、上記第１および第２参考例では、転がり軸受装置が有する転がり軸受が玉軸受であったが、この発明の転がり軸受装置が有する転がり軸受が、玉軸受に限らないことは勿論であり、ころ軸受等、玉軸受以外の転がり軸受であっても良いことは、勿論である。

転がり軸受装置の第１参考例である玉軸受装置の径方向の断面図の一部である。第１参考例の変形例の玉軸受装置の径方向の断面図の一部である。本発明の一実施形態の玉軸受装置の径方向の断面図の一部である。転がり軸受装置の第２参考例である玉軸受装置の軸方向の断面図である。

１,２１,４１,７２外輪
２,７１内輪
３,７３玉
４,２４,４４,７４制振部材
８,２８,４８,７８ハウジング
１０,３０,５０,６０,８０溝

Claims

軌道面を有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
上記内輪の上記軌道面と上記外輪の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記外輪の外周面と、固定部の内周面との間に嵌合されて固定されると共に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材と
を備え、
上記外輪の外周面に嵌合される上記制振部材の内周面には、上記外輪の外周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成され、上記固定部の内周面に嵌合される上記制振部材の外周面には、上記固定部の内周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成されていることを特徴とする転がり軸受装置。
軌道面を有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
上記内輪の上記軌道面と上記外輪の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記内輪の内周面と、軸の外周面との間に嵌合されて固定されると共に、強磁性型制振合金材料からなる環状の制振部材と
を備え、
上記内輪の内周面に嵌合される上記制振部材の外周面には、上記内輪の内周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成され、上記軸の外周面に嵌合される上記制振部材の内周面には、上記軸の外周面との間に隙間を形成する軸方向に延在する溝が形成されていることを特徴とする転がり軸受装置。