本発明は、車両の惰性走行中に、摩擦係合要素の掴み替えによりパワーオフアップシフトを実行する車両用自動変速機の油圧制御装置に係り、特に、パワーオフアップシフト時において解放側摩擦係合要素からの作動油圧を低下させる技術に関するものである。
車両の惰性走行中に解放側摩擦係合要素の解放と係合側摩擦係合要素の係合とを実行することによりパワーオフアップシフトが実行される車両用自動変速機が知られている。例えば、特許文献1に記載されたものがそれである。この特許文献1においては、アクセル操作部材が解放されたパワーオフ状態でアップシフトを行うに際し、このパワーオフアップシフトの変速出力時に、解放側摩擦係合要素に供給される作動油圧を制御する解放側ソレノイド弁のデューティ率を100%から一気に0%にし、油圧を急速に低下(排出)させてその解放側摩擦係合要素を速やかに解放する技術が記載されている。
図17は、上記のような従来の自動変速機における、パワーオフアップシフト時の解放側摩擦係合要素や係合側摩擦係合要素のそれぞれの係合(アプライ)および解放(ドレン)の油圧制御作動の一例を示す図である。図17において、t0時点はアクセル操作部材が解放されるアクセルオフとされた時点、t1時点は3→4パワーオフアップシフトの変速出力(以下、第1変速出力)開始時点、t4時点は4→5パワーオフアップシフトの変速出力(以下、第2変速出力)開始時点をそれぞれ示している。そして、これらt1時点やt4時点に示すように各変速出力時において、解放側ソレノイド弁のデューティ率が最大値MAX例えば100%から一気に最小値MIN例えば0%とされて、解放側摩擦係合要素が速やかに解放されるドレン油圧制御が実行される。
また、一般にアクセル操作部材の操作に対して自動変速機のアウトプットトルクTOUTの変化には応答遅れがあることから、アクセル操作部材が解放されたとしてもアウトプットトルクTOUTはアクセル操作部材の解放前の正の値から徐々に低下して負の値へ変化していき、動力源は駆動状態から直ちに被駆動状態とはならない。
よって、t0時点乃至t1時点に示すようにアクセルオフとされてもアウトプットトルクTOUTは直ちに負の値へ変化せず、このようなアウトプットトルクTOUTが正の値であって動力源が駆動状態であるときに、上述したようにt1時点にて第1変速出力に伴って解放側摩擦係合要素が速やかに解放されると、アウトプットトルクTOUTはt1時点乃至t2時点に示すように正の値から負の値に向かって低下していくことから、この第1変速出力がない場合であってもアクセルオフに伴って元々アウトプットトルクTOUTが正の値から負の値へ変化することもあり、この解放側摩擦係合要素の速やかな解放はアウトプットトルクTOUTの変化に与える影響は小さく、寧ろ、変速時間を短くするうえでは好ましい。
なお、図17において、変速過渡期間の中で解放側摩擦係合要素が解放されてトルク容量を持たず且つ係合側摩擦係合要素が係合されてトルク容量を持ち始めるまでの期間例えばt2時点乃至t3時点またはt5時点乃至t6時点は、自動変速機内が動力伝達遮断状態とされることから、アウトプットトルクは0N・mとされる。
しかしながら、図17のt3時点以降に示すようにアウトプットトルクTOUTが負の値となって動力源が被駆動状態であるときに、上述したようにt4時点にて第2変速出力に伴って解放側摩擦係合要素が速やかに解放されて自動変速機内が動力伝達遮断状態とされると、アウトプットトルクTOUTはt4時点乃至t5時点に示すように負の値から0N・mに向かって急激に変化するため、ドライバビリティが悪化する可能性があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは車両の惰性走行中に第1摩擦係合要素を解放すると共に第2摩擦係合要素を係合することによりパワーオフアップシフトが実行される車両用自動変速機において、そのパワーオフアップシフトに際して、動力源が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う車両用自動変速機のアウトプットトルクの変化が抑制されてドライバビリティが向上する車両用自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) 車両の惰性走行中に、第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させてその第1摩擦係合要素を解放すると共に第2摩擦係合要素の作動油圧を上昇させてその第2摩擦係合要素を係合することによりパワーオフアップシフトを実行する車両用自動変速機の油圧制御装置であって、(b) 前記パワーオフアップシフトの変速開始時における動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断する動力源状態判断手段と、(c) 前記動力源が駆動状態であると判断されたときには前記第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に速やかに低下させる一方、前記動力源が被駆動状態であると判断されたときには前記動力源が駆動状態であると判断されたときと比較して前記第1摩擦係合要素の作動油圧をその第1摩擦係合要素が解放されるまで相対的に緩やかに低下させるように、前記動力源状態判断手段による判断結果に基づいて前記パワーオフアップシフトの際の前記第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する油圧低下制御手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記動力源が駆動状態であると判断されたときには前記第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に速やかに低下させる一方、動力源が被駆動状態であると判断されたときには動力源が駆動状態であると判断されたときと比較して第1摩擦係合要素の作動油圧を第1摩擦係合要素が解放されるまで相対的に緩やかに低下させるように、前記パワーオフアップシフトの変速開始時における動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断する前記動力源状態判断手段による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が前記油圧低下制御手段により変更されるので、パワーオフアップシフトに際して、動力源が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制されると共に、動力源が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う車両用自動変速機のアウトプットトルクが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧を動力源が駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して、抑制されることからドライバビリティが向上する。
ここで、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置において、車両用自動変速機は流体式伝動装置を介して入力される前記動力源の出力を駆動輪へ伝達するものであり、前記動力源状態判断手段は、動力源の出力軸回転速度と車両用自動変速機の入力軸回転速度との回転速度差に基づいて動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断するものである。このようにすれば、動力源が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。例えば、動力源の出力軸回転速度と車両用自動変速機の入力軸回転速度との回転速度差が所定回転速度以上であれば動力源が駆動状態であると判断される一方、その回転速度差が所定回転速度未満であれば動力源が被駆動状態であると判断される。
また、請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置において、前記動力源状態判断手段は、車両の惰性走行開始時点からの経過時間に基づいて前記動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断するものである。このようにすれば、動力源が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。例えば、車両の惰性走行開始時点からの経過時間が所定時間未満であれば動力源が駆動状態であると判断される一方、その経過時間が所定時間以上であれば動力源が被駆動状態であると判断される。
また、請求項4にかかる発明は、請求項1に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置において、車両用自動変速機はロックアップクラッチ付き流体式伝動装置を介して入力される前記動力源の出力を駆動輪へ伝達するものであり、前記動力源状態判断手段は、ロックアップクラッチが解放されているときには動力源の出力軸回転速度と車両用自動変速機の入力軸回転速度との回転速度差に基づいて動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断する一方、ロックアップクラッチが係合されているときには車両の惰性走行開始時点からの経過時間に基づいて動力源が駆動状態か被駆動状態かを判断するものである。このようにすれば、ロックアップクラッチが係合しているか否かに拘わらず、動力源が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。例えば、ロックアップクラッチが解放されているときには、動力源の出力軸回転速度と車両用自動変速機の入力軸回転速度との回転速度差が所定回転速度以上であれば動力源が駆動状態であると判断される一方、その回転速度差が所定回転速度未満であれば動力源が被駆動状態であると判断される。また、ロックアップクラッチが係合されて動力源の出力軸回転速度と車両用自動変速機の入力軸回転速度との回転速度差が無いか極めて小さいようなときには、車両の惰性走行開始時点からの経過時間が所定時間未満であれば動力源が駆動状態であると判断される一方、その経過時間が所定時間以上であれば動力源が被駆動状態であると判断される。
ここで好適には、前記車両用自動変速機は、複数組の遊星歯車装置の回転要素が摩擦係合要素によって選択的に連結されることによりギヤ段が切換られる遊星歯車式多段変速機など、複数の摩擦係合要素を選択的に係合、解放して変速を行う種々の型式の自動変速機により構成される。
また、上記車両用自動変速機の車両に対する搭載姿勢は、変速機の軸線が車両の幅方向となるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型でも、変速機の軸線が車両の前後方向となるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両などの縦置き型でも良い。
また、前記遊星歯車式多段変速機は、複数のギヤ段が択一的に達成されるものであればよく、例えば、前進5段、前進6段、前進7段、前進8段等の種々の多段式自動変速機が使用され得る。
また、好適には、前記摩擦係合要素としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ、或いはベルト式のブレーキが広く用いられる。この摩擦係合要素を係合させるための作動油圧を供給するオイルポンプは、例えばエンジンや電動モータ等の走行用の動力源により駆動されて作動油を吐出するものでも良いが、走行用動力源とは別に配設された専用の電動モータなどで駆動されるものでも良い。
また、好適には、上記摩擦係合要素を含む油圧制御回路は、例えばリニアソレノイドバルブの出力油圧を直接摩擦係合要素の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)にそれぞれ供給することが応答性の点で望ましいが、そのリニアソレノイドバルブの出力油圧をパイロット油圧として用いることによりシフトコントロールバルブを制御して、そのコントロールバルブから油圧アクチュエータに作動油を供給するように構成することもできる。
また、好適には、上記複数のリニアソレノイドバルブは、例えば複数の摩擦係合要素の各々に対応して1つずつ設けられるが、同時に係合したり係合、解放制御したりすることがない複数の摩擦係合要素が存在する場合には、それ等に共通のリニアソレノイドバルブを設けることもできるなど、種々の態様が可能である。また、必ずしも全ての摩擦係合要素の油圧制御をリニアソレノイドバルブで行う必要はなく、一部乃至全ての油圧制御をON−OFFソレノイドバルブのデューティ制御など、リニアソレノイドバルブ以外の調圧手段で行っても良い。
また、好適には、前記エンジンとしては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。
また、好適には、前記流体式伝動装置としては、トルクコンバータやフルードカップリングなどが用いられる。
なお、この明細書で「油圧を供給する」という場合は、「油圧を作用させ」或いは「その油圧に制御された作動油を供給する」ことを意味する。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用自動変速機(以下、自動変速機という)10の骨子図である。図2は複数の変速段を成立させる際の摩擦係合要素すなわち摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース26内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。この入力軸22は入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体式伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸である。また、出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図3に示す差動歯車装置40に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)42と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機10、差動歯車装置40、および一対の車軸44を介して一対の駆動輪46へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその中心線Cの下半分が省略されている。
トルクコンバータ32は、エンジン30の動力を流体を介することなく入力軸22に直接伝達するロックアップ機構としてのロックアップクラッチ34を備えている。このロックアップクラッチ34は、係合側油室36内の油圧と解放側油室38内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合(ロックアップオン)させられることにより、エンジン30の動力が入力軸22に直接伝達される。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわちトルク容量がフィードバック制御されることにより、車両の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン軸(入力軸22)をエンジン30の出力軸に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でエンジン30の出力軸をタービン軸に対して追従回転させられる。
自動変速機10は、第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段)が成立させられるとともに、後進変速段「R」の後進変速段(後進ギヤ段)が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。
図2の作動表は、上記各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合要素(油圧式摩擦係合装置)であり、油圧制御回路50(図3参照)のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御される。
図3は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御やロックアップクラッチ34のオンオフ制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用やリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を制御する変速制御用や油圧制御回路50のリニアソレノイドバルブSLUおよびソレノイドバルブSLを制御するロックアップクラッチ制御用等に分けて構成される。
図3において、所謂アクセル開度として知られるアクセルペダル52の操作量Accを検出するためのアクセル操作量センサ54、動力源の出力軸回転速度としてのエンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ56、エンジン30の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、電子スロットル弁の開度θTHを検出するためのスロットル弁開度センサ64、車速V(出力回転部材24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、常用ブレーキであるフットブレーキペダル68の操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NTすなわち入力軸22の回転速度NINを検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路50内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE、エンジン冷却水温TW、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、出力軸回転速度NOUT、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT(=入力軸回転速度NIN)、AT油温TOILなどを表す信号が電子制御装置100に供給されるようになっている。
図4は、油圧制御回路50のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
図4において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置100からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、エンジン30により回転駆動される機械式のオイルポンプ28(図1参照)から発生する油圧を元圧として図示しない例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度或いはスロットル開度で表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置100により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速機10は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように3速→4速のアップシフトでは、ブレーキB3が解放されると共にクラッチC2が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。
図3に戻り、油圧制御回路50に備えられているソレノイドバルブSLやリニアソレノイドバルブSLUは電子制御装置100により励磁、非励磁され、ソレノイドバルブSLによりロックアップクラッチ34のオン(係合)とオフ(解放)とが切り換えられ、またそのオン側に切り換えられた状態においてリニアソレノイドバルブSLUによりロックアップクラッチ34のトルク容量すなわち差圧ΔPが調圧制御されてトルクコンバータ32のスリップ状態乃至ロックアップオン(完全係合)が制御される。
図5は、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、ロックアップクラッチ制御手段102は、例えば図6に示すようなスロットル弁開度θTHおよび車速Vをパラメータとする二次元座標において解放(ロックアップオフ)領域、スリップ制御領域、係合(ロックアップオン)領域を有する予め記憶された関係(マップ、ロックアップ領域線図)から実際の車両走行状態例えばスロットル弁開度θTHおよび車速Vとに基づいてロックアップクラッチ34の作動状態の切換えを制御する。
例えば、ロックアップクラッチ制御手段102は、ロックアップクラッチ34のロックアップオフへの切換え或いはスリップ乃至ロックアップオンへの切換えの為にソレノイドバルブSLの制御指令を油圧制御回路50へ出力したり、差圧ΔPの制御の為にリニアソレノイドバルブSLUの制御指令を油圧制御回路50へ出力する。
変速制御手段104は、例えば図7に示すような車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を行い、自動変速機10の変速を実行すべきか否かを判断し、例えば自動変速機10の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速機10の自動変速制御を実行する。このとき、変速制御手段104は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力、油圧指令)を油圧制御回路50へ出力する。
油圧制御回路50は、その指令に従って、自動変速機10の変速が実行されるように油圧制御回路50内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を作動させて、その変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3を作動させる。
図7の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図7の変速線図における変速線は、実際のアクセル操作量Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、この値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。
例えば、変速制御手段104は、第3速ギヤ段にて車両走行中に、アクセルオフにより実際のアクセル操作量Accが3速→4速アップシフトを実行すべき3速→4速アップシフト線を横切ったと判断し、更に4速→5速アップシフトを実行すべき4速→5速アップシフト線を横切ったと判断した場合には、第1摩擦係合要素すなわち解放側係合装置(解放側係合要素)としてのブレーキB3の作動油圧を低下させてブレーキB3を解放させると共に第2摩擦係合要素すなわち係合側係合装置(係合側係合要素)としてのクラッチC2の作動油圧を上昇させてクラッチC2を係合させる第1変速出力(3→4パワーオフアップシフト)を油圧制御回路50に出力し、第4速ギヤ段成立後に引き続き、第1摩擦係合要素としてのクラッチC1の作動油圧を低下させてクラッチC1を解放させると共に第2摩擦係合要素としてのブレーキB3の作動油圧を上昇させてブレーキB3を係合させる第2変速出力(4→5パワーオフアップシフト)を油圧制御回路50に出力する。
具体的には、図17のt1時点(或いはt4時点)に示すように第1変速出力(或いは第2変速出力)では、ブレーキB3(或いはクラッチC1)の作動油圧が速やかに低下させられるように最大値MAXから一気に最小値MINとする油圧値指令がリニアソレノイドバルブSL5(或いはリニアソレノイドバルブSL1)へ出力されて、解放側摩擦係合装置であるブレーキB3(或いはクラッチC1)が速やかに解放されるドレン油圧制御が実行される。
また、図17のt1時点乃至t4時点(或いはt4時点乃至t7時点)に示すように第1変速出力(或いは第2変速出力)では、クラッチC2(或いはブレーキB3)の作動油圧供給開始時にはそのクラッチC2(或いはブレーキB3)のパッククリアランスを速やかに詰める為に作動油が急速充填されるような高い油圧値指令が出力され、そのまま高い油圧で係合されるとショックが発生する可能性があるので係合開始時点では一旦低い油圧値指令が出力され、その後係合完了時の油圧値に向かって漸増するように油圧値指令がリニアソレノイドバルブSL2(或いはリニアソレノイドバルブSL5)へ出力されて、係合側摩擦係合装置であるクラッチC2(或いはブレーキB3)が係合されるアプライ油圧制御が実行される。
前述した解放側摩擦係合装置が速やかに解放されるドレン油圧制御が自動変速機10の出力トルク(アウトプットトルク)TOUTが正の値であって動力源が駆動状態であるときに実行されると、t1時点乃至t2時点に示すように出力トルクTOUTが正の値から負の値に向かって低下していくことから、アクセルオフに伴って元々アウトプットトルクTOUTが正の値から負の値へ変化することもあり、この解放側摩擦係合装置が速やかに解放されるドレン油圧制御は出力トルクTOUTの変化に与える影響は小さく、寧ろ、変速時間を短くするうえでは好ましい。
しかし、解放側摩擦係合装置が速やかに解放されるドレン油圧制御が自動変速機10の出力トルクTOUTが負の値であって動力源が被駆動状態であるときに実行されると、t4時点乃至t5時点に示すように出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって急激に変化するため、ドライバビリティが悪化する可能性があった。
そこで、パワーオフアップシフト時のドライバビリティが向上するように、動力源が駆動状態か被駆動状態かに基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する。以下に、その制御作動について説明する。
図5に戻り、惰性走行中判定手段106は、アクセル操作量Accに基づいて車両がアクセルオフの減速走行中すなわち惰性走行(コースト走行)中であるか否かを判定する。
動力源状態判断手段108は、パワーオフアップシフトの変速開始時における、例えば前記惰性走行中判定手段106により車両が惰性走行中であると判定され且つ前記変速制御手段104により図7に示すような変速線図から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて自動変速機10のアップシフトを実行すべきであると判断されたときにおける、エンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する。
例えば、動力源状態判断手段108は、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)との回転速度差ΔN(=NE−NT)に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する。つまり、トルクコンバータの入力側すなわちエンジン30側と出力側すなわち駆動輪46側との回転速度差を用いてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断するのである。
具体的には、動力源状態判断手段108は、回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であるか否かを判定する回転速度差判定手段110を備え、その回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であると判定された場合にはエンジン30が駆動状態であると判断する一方、回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であると判定された場合にはエンジン30が被駆動状態であると判断する。
上記所定回転速度ΔN*は、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NTよりも高回転速度であることをもってエンジン30が駆動状態であると判断する場合には零回転速度となるが、負の回転速度を含みその零回転速度以外であっても適用され得る。例えば、所定回転速度ΔN*は、パワーオフアップシフト時のドライバビリティが向上するように第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が変更される為にエンジン30の駆動状態か被駆動状態かが判断されるための予め実験的に求めて定められた判定回転速度でも良い。
油圧低下制御手段112は、エンジン30が駆動状態であると判断されたときには第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に速やかに低下させる一方、エンジン30が被駆動状態であると判断されたときには第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に緩やかに低下させるように、前記動力源状態判断手段108による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する。
例えば、油圧低下制御手段112は、動力源状態判断手段108によりエンジン30が駆動状態であると判断されたときには、アップシフトに際して第1摩擦係合要素の作動油圧が速やかに低下させられるように、変速制御手段104に最大値MAXから一気に最小値MINとする油圧値指令を出力させて、第1摩擦係合要素が速やかに解放される即ドレン油圧制御を実行させる。これにより、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制される。
また、油圧低下制御手段112は、動力源状態判断手段108によりエンジン30が被駆動状態であると判断されたときには、アップシフトに際して第1摩擦係合要素の作動油圧がエンジン30が駆動状態であるときのように速やかに低下させられることに比較して相対的に緩やかに低下させられるように、変速制御手段104に最大値MAXから所定割合で漸減しながら最小値MINとする油圧値指令を出力させて、第1摩擦係合要素が緩やかに解放されるスイープドレン油圧制御を実行させる。これにより、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴って出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30が駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して抑制される。
図8は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図9は、図8のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートである。
先ず、前記惰性走行中判定手段106および変速制御手段104に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、アクセル操作量Accに基づいて車両がアクセルオフの惰性走行中であるか否かが判定されると共に、例えば図7に示すような変速線図から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて自動変速機10の変速を実行すべきか否かが判断されて、パワーオフアップシフトの変速開始時であるか否かが判定される。このSA1は、既にパワーオフアップシフトの変速開始時であることが判定された場合を示している。仮に、パワーオフアップシフトの変速開始時でないことが判定された場合には本ルーチンが終了させられる。
図9のt0時点はアクセルオフの惰性走行が判定されたことを示している。また、t1時点は惰性走行中に3速→4速アップシフト(第1変速)が判断され、t4時点は惰性走行中に4速→5速アップシフト(第2変速)が判断されたことを示している。
次いで、前記動力源状態判断手段108(回転速度差判定手段110)に対応するSA2において、エンジン30が駆動状態か被駆動状態かが判断される為に、回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であるか否かが判定される。
図9のt1時点は回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であると判定されてエンジン30が駆動状態であると判断され、t4時点は回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であると判定されてエンジン30が被駆動状態であると判断されたことを示している。
前記SA2の判断が肯定される場合はエンジン30が駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSA3において、第1摩擦係合要素の作動油圧が速やかに低下させられるように、変速制御手段104に最大値MAXから一気に最小値MINとする油圧値指令を出力させて、第1摩擦係合要素が速やかに解放される即ドレン油圧制御が実行させられる。
図9のt1時点は、ブレーキB3の作動油圧が速やかに低下させられるように、第1変速出力の第1変速ドレン油圧制御として最大値MAXから一気に最小値MINとする油圧値指令がリニアソレノイドバルブSL5へ出力される即ドレン油圧制御が実行させられたことを示している。
前記SA2の判断が否定される場合はエンジン30が被駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSA4において、第1摩擦係合要素の作動油圧がエンジン30が駆動状態であるときのように速やかに低下させられることに比較して相対的に緩やかに低下させられるように、変速制御手段104に最大値MAXから所定割合で漸減しながら最小値MINとする油圧値指令を出力させて、第1摩擦係合要素が緩やかに解放されるスイープドレン油圧制御が実行させられる。
図9のt4時点は、クラッチC1の作動油圧が相対的に緩やかに低下させられるように、第2変速出力の第2変速ドレン油圧制御として最大値MAXから所定割合で漸減しながら最小値MINとする油圧値指令がリニアソレノイドバルブSL1へ出力されるスイープドレン油圧制御が実行させられたことを示している。これにより、破線で示す従来例のようにt4時点にて即ドレン制御が実行されてt4時点乃至t5時点にて出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって急激に変化することに比較して、t4時点乃至t5’時点に示すように出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって緩やかに変化する。
上述のように、本実施例によれば、エンジン30が駆動状態であると判断されたときには第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に速やかに低下させる一方、エンジン30が被駆動状態であると判断されたときには第1摩擦係合要素の作動油圧を相対的に緩やかに低下させるように、パワーオフアップシフトの変速開始時におけるエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する動力源状態判断手段108による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が油圧低下制御手段112により変更されるので、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制されると共に、エンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う自動変速機10の出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して、抑制されることからドライバビリティが向上する。
また、本実施例によれば、動力源状態判断手段108によりエンジン回転速度NEと入力軸回転速度NINとの回転速度差ΔN(=NE−NT)に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例では、前記動力源状態判断手段108は、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)との回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断したが、それに替えて、本実施例では車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFすなわちアクセルオフからの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する。つまり、アクセルペダル52の操作に対するエンジン30の出力トルクTE変化の応答遅れ言い換えれば出力トルクTOUT変化の応答遅れを考慮してエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断するのである。
具体的には、図10は、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、前記図5に相当する図である。図10において、前記動力源状態判断手段108は、前記回転速度差判定手段110に替えて、アクセルオフからの経過時間tOFF例えば前記惰性走行中判定手段106により車両が惰性走行中であると判定されてからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であるか否かを判定する経過時間判定手段114を備え、その経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定された場合にはエンジン30が駆動状態であると判断する一方、経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であると判定された場合にはエンジン30が被駆動状態であると判断する。
上記所定時間tOFF *は、パワーオフアップシフト時のドライバビリティが向上するように第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が変更される為にアクセルオフに伴うエンジン30の出力トルクTE変化の応答遅れが考慮されてエンジン30の駆動状態か被駆動状態かが判断されるための予め実験的に求めて定められた判定時間である。
図11は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図11は前記図8に相当する別の実施例であり、SB2にて実行されるエンジン30が駆動状態か被駆動状態かの判断の為の判定方法が図8のSA2と異なる点が特に相違するので、図11のフローチャートにおいてはこの相違点を主に説明する。また、図12は、図11のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、前記図9に相当する図である。
先ず、前記惰性走行中判定手段106および変速制御手段104に対応するSB1において、パワーオフアップシフトの変速開始時であるか否かが判定される。このSB1は、既にパワーオフアップシフトの変速開始時であることが判定された場合を示している。仮に、パワーオフアップシフトの変速開始時でないことが判定された場合には本ルーチンが終了させられる。
図12のt0時点はアクセルオフの惰性走行が判定されたことを示している。また、t1時点は惰性走行中に3速→4速アップシフト(第1変速)が判断され、t4時点は惰性走行中に4速→5速アップシフト(第2変速)が判断されたことを示している。
次いで、前記動力源状態判断手段108(経過時間判定手段114)に対応するSB2において、エンジン30が駆動状態か被駆動状態かが判断される為に、アクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であるか否かが判定される。
図12のt1時点はアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定されてエンジン30が駆動状態であると判断され、t4時点はアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であると判定されてエンジン30が被駆動状態であると判断されたことを示している。
前記SB2の判断が肯定される場合はエンジン30が駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSB3において、第1摩擦係合要素が速やかに解放される即ドレン油圧制御が実行させられる。
図12のt1時点は、ブレーキB3の作動油圧が速やかに低下させられるように、即ドレン油圧制御が実行させられたことを示している。
前記SB2の判断が否定される場合はエンジン30が被駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSB4において、第1摩擦係合要素が緩やかに解放されるスイープドレン油圧制御が実行させられる。
図12のt4時点は、クラッチC1の作動油圧が相対的に緩やかに低下させられるように、スイープドレン油圧制御が実行させられたことを示している。これにより、破線で示す従来例のようにt4時点にて即ドレン制御が実行されてt4時点乃至t5時点にて出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって急激に変化することに比較して、t4時点乃至t5’時点に示すように出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって緩やかに変化する。
上述のように、本実施例によれば、動力源状態判断手段108による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が油圧低下制御手段112により変更されるので、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制されると共に、エンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う自動変速機10の出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して、抑制されることからドライバビリティが向上する。
また、本実施例によれば、動力源状態判断手段108により車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFすなわちアクセルオフからの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。
前述の実施例では、前記動力源状態判断手段108は、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)との回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断したり、或いは車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断した。
ここで、動力源状態判断手段108によるエンジン30が駆動状態か被駆動状態かの判断において、回転速度差ΔNに基づく判定方法の方がアクセルオフからの経過時間tOFFに基づく判定方法に比べて精度が高いと考えられる。反面、ロックアップクラッチ34が係合されると回転速度差ΔNに基づく判定が困難になることから、ロックアップクラッチ34の係合時にはアクセルオフからの経過時間tOFFに基づく判定方法は有効な判定方法であると考えられる。
そこで、本実施例では、前記動力源状態判断手段108は、パワーオフアップシフトの変速開始時において、ロックアップクラッチ34が解放されているときには回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する一方、ロックアップクラッチ34がスリップ状態を含み係合されているときには車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する。
具体的には、図13は、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、前記図5に相当する図である。図13において、ロックアップ中判定手段116は、前記ロックアップクラッチ制御手段102によるロックアップクラッチ34をスリップ乃至ロックアップオンへ切換える為の油圧制御回路50へ出力されるソレノイドバルブSLの制御指令に基づいて、ロックアップクラッチ34がスリップ乃至ロックアップオン中すなわちロックアップ制御実行中であるか否かを判定する。
前記動力源状態判断手段108は、前述の実施例に替えて、前記回転速度差判定手段110と前記経過時間判定手段114とを備え、ロックアップクラッチ制御手段102によりスリップ乃至ロックアップオンへ切換える為のソレノイドバルブSLへの制御指令が出力されておらずロックアップ中判定手段116によりロックアップクラッチ34が解放中であると判定されるときには、その回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であると判定された場合にエンジン30が駆動状態であると判断する一方、回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であると判定された場合にエンジン30が被駆動状態であると判断する。また、動力源状態判断手段108は、ロックアップクラッチ制御手段102によりスリップ乃至ロックアップオンへ切換える為のソレノイドバルブSLへの制御指令が出力されておりロックアップ中判定手段116によりロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であると判定されるときには、その経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定された場合にエンジン30が駆動状態であると判断する一方、経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であると判定された場合にエンジン30が被駆動状態であると判断する。
図14は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図14は前記図8や図11に相当する別の実施例であり、SC1+にて実行されるロックアップ制御実行中であるか否かの判定結果に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かの判定方法を切り換えることが追加されている点が図8や図11と特に相違するので、図14のフローチャートにおいてはこの相違点を主に説明する。
また、図15は、図14のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、ロックアップ制御実行中である場合の一例であり、前記図9や図12に相当する図である。この図9は、図14のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、ロックアップクラッチ34が解放中である場合の一例でもある。
先ず、前記惰性走行中判定手段106および変速制御手段104に対応するSC1において、パワーオフアップシフトの変速開始時であるか否かが判定される。このSC1は、既にパワーオフアップシフトの変速開始時であることが判定された場合を示している。仮に、パワーオフアップシフトの変速開始時でないことが判定された場合には本ルーチンが終了させられる。
図15のt0時点はアクセルオフの惰性走行が判定されたことを示している。また、t1時点は惰性走行中に3速→4速アップシフト(第1変速)が判断され、t4時点は惰性走行中に4速→5速アップシフト(第2変速)が判断されたことを示している。
次いで、前記ロックアップ中判定手段116に対応するSC1+において、前記ロックアップクラッチ制御手段102によるロックアップクラッチ34をスリップ乃至ロックアップオンへ切換える為の油圧制御回路50へ出力されるソレノイドバルブSLの制御指令に基づいて、パワーオフアップシフトの変速開始時においてロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であるか否かが判定される。
図15の実施例はロックアップクラッチ34がロックアップオン中であることから、エンジン回転速度NEおよびタービン回転速度NTが一致していることを示している。また、t1時点およびt4時点にてロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であると判定される。
前記図9の実施例はロックアップクラッチ34が解放中であることから、t1時点およびt4時点にてロックアップクラッチ34が解放中であると判定される。
前記SC1+の判断が肯定される場合は前記動力源状態判断手段108(経過時間判定手段114)に対応するSC2Bにおいて、エンジン30が駆動状態か被駆動状態かが判断される為に、アクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であるか否かが判定される。
図15のt1時点はアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定されてエンジン30が駆動状態であると判断され、t4時点はアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であると判定されてエンジン30が被駆動状態であると判断されたことを示している。
前記SC1+の判断が否定される場合は前記動力源状態判断手段108(回転速度差判定手段110)に対応するSC2Aにおいて、エンジン30が駆動状態か被駆動状態かが判断される為に、回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であるか否かが判定される。
前記SC2Aの判断が否定されるか、或いは前記SC2Bの判断が否定される場合はエンジン30が駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSC3において、第1摩擦係合要素が速やかに解放される即ドレン油圧制御が実行させられる。
図15のt1時点は、ブレーキB3の作動油圧が速やかに低下させられるように、即ドレン油圧制御が実行させられたことを示している。
前記SC2Aの判断が肯定されるか、或いは前記SC2Bの判断が肯定される場合はエンジン30が被駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSC4において、第1摩擦係合要素が緩やかに解放されるスイープドレン油圧制御が実行させられる。
図15のt4時点は、クラッチC1の作動油圧が相対的に緩やかに低下させられるように、スイープドレン油圧制御が実行させられたことを示している。これにより、破線で示す従来例のようにt4時点にて即ドレン制御が実行されてt4時点乃至t5時点にて出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって急激に変化することに比較して、t4時点乃至t5’時点に示すように出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって緩やかに変化する。
上述のように、本実施例によれば、動力源状態判断手段108による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が油圧低下制御手段112により変更されるので、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制されると共に、エンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う自動変速機10の出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して、抑制されることからドライバビリティが向上する。
また、本実施例によれば、動力源状態判断手段108により、ロックアップクラッチ34が解放されているときにはエンジン回転速度NEと入力軸回転速度NINとの回転速度差ΔN(=NE−NT)に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される一方、ロックアップクラッチ34が係合されているときには車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFすなわちアクセルオフからの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。このように、ロックアップクラッチ34が係合しているか否かに拘わらずエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。
前記実施例3では、前記動力源状態判断手段108は、ロックアップクラッチ34が解放されているときには回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する一方、ロックアップクラッチ34がスリップ状態を含み係合されているときには車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断した。
ところで、ロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であると判定されるときには、ロックアップオフからの過渡的な状態をも含んでおり、特に、フィードバック制御されるスリップ状態においてはエンジン回転速度NEやタービン回転速度NTが不安定な状態である可能性があり、経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定された場合であっても一律にエンジン30が駆動状態とはならない可能性がある。
そこで、本実施例では、パワーオフアップシフトの変速開始時においてロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であるか否かに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かの判定方法を切り換えることは前記実施例3と同様であるが、前記動力源状態判断手段108は、ロックアップクラッチ34が係合されているときに車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFが所定時間tOFF *を経過していない場合には、更に回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断する。
具体的には、図13において前記動力源状態判断手段108は、前記実施例3における機能に加えて、ロックアップ中判定手段116によりロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であると判定されるときにその経過時間判定手段114により経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定された場合には、前記回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であると判定された場合にエンジン30が駆動状態であると判断する一方、回転速度差判定手段110により回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であると判定された場合にはエンジン30が被駆動状態であると判断する。
図16は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図16は前記図14に相当する別の実施例であり、SD2Bにて実行されるアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であるか否かの判定が否定された場合に更にSD2Aにて回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であるか否かが判定されることが図14のSC2Bの判定が否定された場合に実行されることと異なる点が特に相違するので、図16のフローチャートにおいてはこの相違点を主に説明する。
先ず、前記惰性走行中判定手段106および変速制御手段104に対応するSD1において、パワーオフアップシフトの変速開始時であるか否かが判定される。このSD1は、既にパワーオフアップシフトの変速開始時であることが判定された場合を示している。仮に、パワーオフアップシフトの変速開始時でないことが判定された場合には本ルーチンが終了させられる。
次いで、前記ロックアップ中判定手段116に対応するSD1+において、パワーオフアップシフトの変速開始時においてロックアップクラッチ34がロックアップ制御実行中であるか否かが判定される。
前記SD1+の判断が肯定される場合は前記動力源状態判断手段108(経過時間判定手段114)に対応するSD2Bにおいて、アクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *以上であるか否かが判定される。
前記SD1+の判断が否定されるか、或いは前記SD2Bの判断が否定される場合は前記動力源状態判断手段108(回転速度差判定手段110)に対応するSD2Aにおいて、回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*未満であるか否かが判定される。
前記SD2Aの判断が否定される場合はエンジン30が駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSD3において、第1摩擦係合要素が速やかに解放される即ドレン油圧制御が実行させられる。
図15を用いて説明するならば、t1時点にてアクセルオフからの経過時間tOFFが所定時間tOFF *未満であると判定され且つ回転速度差ΔNが所定回転速度ΔN*以上であると判定されてエンジン30が駆動状態であると判断される。
前記SD2Aの判断が肯定されるか、或いは前記SD2Bの判断が肯定される場合はエンジン30が被駆動状態であることから前記油圧低下制御手段112に対応するSD4において、第1摩擦係合要素が緩やかに解放されるスイープドレン油圧制御が実行させられる。
これにより、図示はしていないが図15のt4時点と同様に、クラッチC1の作動油圧が相対的に緩やかに低下させられるようにスイープドレン油圧制御が実行させられ、従来例のように出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって急激に変化することに比較して、出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かって緩やかに変化する。
上述のように、本実施例によれば、動力源状態判断手段108による判断結果に基づいてパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様が油圧低下制御手段112により変更されるので、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制されると共に、エンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴う自動変速機10の出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して、抑制されることからドライバビリティが向上する。
また、本実施例によれば、ロックアップクラッチ34が係合されているときに車両の惰性走行開始時点からの経過時間tOFFが所定時間tOFF *を経過していない場合には、動力源状態判断手段108により更にエンジン回転速度NEと入力軸回転速度NINとの回転速度差ΔNに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かが適切に判断される。また、その経過時間tOFFが所定時間tOFF *を経過した場合には、回転速度差ΔNが安定しているので、確実に被駆動状態が判断される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、動力源状態判断手段108は、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)との回転速度差ΔN(=NE−NT)が所定回転速度ΔN*以上であるか否かに基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断したが、所定回転速度ΔN*を用いず単にエンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとを比較し、その比較した結果に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断しても良い。また、動力源状態判断手段108は、回転速度ΔNおよびその変化率に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かの予測判断をしても良い。また、動力源状態判断手段108は、動力伝達経路の回転軸等例えばエンジンクランク軸や入力軸22や車軸44等に備えられたトルクセンサによって検出された実際のトルクの正負に基づいてエンジン30が駆動状態か被駆動状態かを判断しても良い。
また、前述の実施例において、変速制御手段104による即ドレン油圧制御は最大値MAXから一気に最小値MINとする油圧値指令を出力するものであり、スイープドレン油圧制御は最大値MAXから所定割合で漸減しながら最小値MINとする油圧値指令を出力するものであったが、スイープドレン油圧制御によるアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧の低下が即ドレン油圧制御によるその作動油圧の低下に比較して相対的に緩やかであれば良く、変速制御手段104による即ドレン油圧制御が最大値MAXから所定割合で漸減しながら最小値MINとする油圧値指令を出力するものであっても良い。このようにしても、パワーオフアップシフトに際して、エンジン30が駆動状態であるときの変速時間の長期化が抑制され、またエンジン30が被駆動状態であるときの第1摩擦係合要素の解放に伴って出力トルクTOUTが負の値から0N・mに向かう変化が、第1摩擦係合要素の作動油圧をエンジン30が駆動状態であるときのように速やかに低下させることに比較して抑制される。
また、前述の実施例は2段のアップシフトについて適用されていたが、1段又は3段以上のアップシフトにも適用され得る。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明が適用された車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。
図1の車両用自動変速機の複数の変速段を成立させる際の摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。
図1の車両用自動変速機が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図である。
図3の油圧制御回路のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
トルクコンバータにおけるロックアップクラッチの制御に用いられるロックアップ領域線図の一例を説明する図である。
自動変速機の変速制御において用いられる変速線図の一例を示す図である。
図5の電子制御装置の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートである。
図8のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートである。また、図14のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、ロックアップクラッチが解放中である場合の一例でもある。
図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
図10の電子制御装置の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであって、図8に相当する別の実施例である。
図11のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、図9に相当する図である。
図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
図13の電子制御装置の制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する制御作動を説明するフローチャートであって、図8や図11に相当する別の実施例である。
図14のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、ロックアップ制御実行中である場合の一例であり、図9や図12に相当する図である。また、図16のフローチャートに示す制御作動の説明にも用いられる図である。
図13の電子制御装置の別の実施例における制御作動の要部すなわちパワーオフアップシフトの際の第1摩擦係合要素の作動油圧を低下させる態様を変更する図14とは別の実施例における制御作動を説明するフローチャートである。
従来における、パワーオフアップシフト時の解放側摩擦係合装置や係合側摩擦係合装置のそれぞれの係合(アプライ)および解放(ドレン)の油圧制御作動例を示すタイムチャートである。
符号の説明
10:車両用自動変速機
30:エンジン(動力源)
32:トルクコンバータ(流体式伝動装置)
34:ロックアップクラッチ
100:電子制御装置(油圧制御装置)
108:動力源状態判断手段
112:油圧低下制御手段
C1、C2:クラッチ(摩擦係合要素)
B1、B2、B3:ブレーキ(摩擦係合要素)