JP4581299B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、特にノイズ低減を図った電動パワーステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に補助負荷付勢するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシストトルク(操舵補助トルク)を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、電流制御値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデュ−ティ比の調整で行っている。
【0003】
ここで、電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図6に示して説明すると、操向ハンドル1の軸2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に結合されている。軸2には、操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介して軸2に結合されている。パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット30には、バッテリ14からイグニションキー11を経て電力が供給され、コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTと車速センサ12で検出された車速Vとに基いてアシスト指令の操舵補助指令値Iの演算を行い、演算された操舵補助指令値Iに基いてモータ20に供給する電流を制御する。
【0004】
コントロールユニット30は主としてCPUで構成されるが、そのCPU(又はMCU)内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図7のようになる。例えば位相補償器31は独立したハードウェアとしての位相補償器を示すものではなく、CPU(又はMCU)で実行される位相補償機能を示している。
【0005】
コントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出されて入力される操舵トルクTは、操舵系の安定性を高めるために位相補償器31で位相補償され、位相補償された操舵トルクTAが操舵補助指令値演算器32に入力される。また、車速センサ12で検出された車速Vも操舵補助指令値演算器32に入力される。操舵補助指令値演算器32は、入力された操舵トルクTA及び車速Vに基いてモータ20に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iを決定する。操舵補助指令値Iは減算器30Aに入力されると共に、応答速度を高めるためのフィードフォワード系の微分補償器34に入力され、減算器30Aの偏差(I−i)は比例演算器35に入力されると共に、フィードバック系の特性を改善するための積分演算器36に入力される。微分補償器34及び積分補償器36の出力も加算器30Bに加算入力され、加算器30Bでの加算結果である電流制御値Eが、モータ駆動信号としてモータ駆動回路37に入力される。モータ20のモータ電流値iはモータ電流検出回路38で検出され、モータ電流値iは減算器30Aに入力されてフィードバックされる。
【0006】
一方、広く普及している油圧式パワーステアリング装置では、図8に示すようにシリンダ圧Pに比例して(横軸Tは操舵トルク)、シリンダ部の摩擦が増加する特性を有し、この摩擦特性のためにヒステリシスを持つことになり、例えばコーナリング時にセルフアライニングトルクによってハンドルが急に戻されるのを防ぎ、ドライバの操舵感の向上にも役立っている。図9はその様子を示しており、操舵トルクTが急激にΔTだけ変化した場合、ヒステリシスがない場合にはP1なるシリンダ圧が変化することになるが、ヒステリシスがある場合にはP2(<P1)の変化となる。従って、ヒステリシスがあれば操舵トルクTの変化に対して、シリンダ圧Pの変化を緩やかにすることができる。ここで、ヒステリシス幅は摩擦の大きさに応じて変化することが知られており、油圧シリンダのゴムパッキンでは、シリンダ圧の上昇に伴ってゴムが圧迫されることにより、クーロン摩擦が増えてヒステリシス幅が増える。そして、ドライバとしては中立点近くではセルフアライニングトルクを強く感じ、コーナリング時等にはセルフアライニングを余り感じないことが、操舵感の上で重要である。この意味から理想的には油圧式パワーステアリング装置のように、操舵角θが小さい領域では摩擦(ヒステリシス)が小さく、操舵角θが大きい領域では摩擦(ヒステリシス)が大きいことが望ましい。
【0007】
これに対して、電動パワーステアリング装置では、図10に示すようにアシストトルクTに関係なく一定の摩擦を有する。電動パワーステアリン装置の場合、主にモータが持つクーロン摩擦が支配的であるため、操舵力によらず一定の摩擦特性を持つことが特徴であり、このため図7に示すように一定幅のヒステリシス特性となる。但し、ヒステリシス幅は、油圧式パワーステアリン装置の高トルク時のヒステリシス幅よりも狭くなっている。従って、電動パワーステアリン装置では操舵トルクTの小さい領域での摩擦特性を重視して、摩擦を補償するようにしている。しかしながら、このような補償による場合、操舵トルクTの大きい領域では摩擦が小さくなり過ぎ、結果としてコーナリング時等の操舵トルクTが大きいときに、安定した操舵感を失なうことになっていた。
【0008】
上述のような問題を解決した制御装置として、例えば特開平9−156526号公報に示されるものがある。これは、操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段を設け、前記操舵トルク検出手段から出力される検出信号に基づき、電気的なパワーアシスト手段のアシスト量を制御する車両用操舵制御装置において、前記操舵トルク検出手段の検出信号にヒステリシスを与える調整手段を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
調整手段を設けることにより、操舵トルク検出手段の検出信号にヒステリシスを与えることができる。よって、操舵トルクの検出信号に基づき、作動するパワーアシスト手段のヒステリシス特性を操舵状態に応じて可変することができるため、トルクアシスト量を最適化することが可能となる。 しかしながら、この従来装置では、操舵動作に断続感が残り、トルク制御系が不安定であると共に、新たにハードウェアの構成を具備するためにコストアップになるといった欠点がある。
【0010】
また、本出願人による特開2000−95131で示されるように、ハンドル戻り時に負の微分ゲインを適応し、アシスト量の急激な減少を防ぎ、切り増し時に正の微分ゲインを適応して応答性を高め、結果として高トルク領域では大きなヒステリシス特性を、中立点近傍の低トルク領域では小さなヒステリシス特性を与えるようにしているものがある。しかしながら、この装置では、ハンドル戻りと切り増し操舵パターンにより、負と正の微分ゲインを切り換えることによって負と正の微分ゲインが離れ過ぎた場合、不自然な操舵感が発生する問題がある。
【0011】
更に、走行速度及びステアリングホイールの操舵角度に拘らず快適な操舵感を得る装置として特開平10−291481号に示されるものがあるが、制御系の安定性のみに着目しているため、アシストトルクの応答性の点で問題がある。また、モータ慣性の影響を除去若しくは最小限にするための工夫も重要である。
【0012】
上述のような各問題を解決したものとして、本出願人による特願2000−274525がある。即ち、図11はその制御機能のブロック図である。操舵トルクT1(メイン)は操舵補助指令値演算部100に入力され、操舵トルクT2(サブ)はセンタ応答性改善部101に入力され、各出力が加算器102に入力され、その加算結果がトルク制御演算部103に入力されている。トルク制御演算部103の出力信号はモータロス電流補償部104に入力され、その出力が加算器105を経て最大電流制限部106に入力され、最大電流値が制限されて電流制御部110に入力される。電流制御部110の出力は、Hブリッジ特性補償部111を経て電流ドライブ回路112に入力され、これによりモータ113を駆動する。
【0013】
モータ113のモータ電流iは、モータ電流オフセット補正部120を経てモータ角速度推定部121、電流ドライブ切換部122及び電流制御部110に入力され、モータ端子電圧Vmはモータ角速度推定部121に入力される。モータ角速度推定部121で推定された角速度ωはモータ角加速度推定部・慣性補償部123、モータロストルク補償部124及びヨーレート推定部125に入力され、ヨーレート推定部125の出力は収れん制御部126に入力され、収れん制御部126及びモータロストルク補償部124の各出力は加算器127で加算され、その加算結果が加算器102に入力される。モータロストルク補償部124はモータ113のロストルクの発生する方向、つまりモータ113の回転方向に対してロストルク相当のアシストを行ない、収れん制御器126は、車両のヨーの収れん性を改善するためにハンドルが振れ回る動作に対してブレーキをかけるようになっている。
【0014】
また、ドライバが感じない程度にモータ113を微小振動させるためのディザ信号を発生する電流ディザ信号発生部130が設けられており、電流ディザ信号発生部130及びモータ角加速度推定部・慣性補償部123の各出力が加算器131で加算され、その加算結果が加算器105に入力されている。そして、加算器105での加算結果が最大電流制限部106に入力されている。
【0015】
このような構成において、センタ応答性改善部101を図12に示すように、位相進み補償部101A、近似微分部101B及びゲイン設定部101Cで構成とし、位相進み補償部101Aを図13に示す周波数特性とし、近似微分部101Bを図14に示す周波数特性とする。これにより、位相進み補償と近似微分との合成特性は図15に示すようになり、位相遅れのない位相特性を得ることができる。
【0016】
また、ゲイン設定部101Cでは、車速V及び操舵トルクTによってゲインを切り換えて設定する。更に、ハンドルが急に戻されるような不安な操舵感を低減し、保舵を安定させるため、操舵トルク大で、かつ操舵トルク変化率大とし、操舵トルク減少方向の場合にゲインを小さくする。
【0017】
操舵補助指令値演算部100におけるアシスト量の計算において、3つの代表車速(0、30、254Km/h)によるアシスト特性を基本特性として設定し、その他の車速では車速補間ゲインに応じて各基本特性間を車速2Km/h毎の補間を行う。そして、アシスト特性の車速設定範囲0〜254Km/h、分解能2Km/hとする。
【0018】
ここにおいて、操舵補助指令値演算部100及びセンタ応答性改善部101の詳細構成を図16に示して説明する。操舵補助指令値演算部100による操舵補助指令値Iの演算は、図16のブロック100に示すような関数特性で演算出力され、△I/△T=Kとし、簡略化のためにK∝Tなる関係を仮定する。近似微分部101Bの伝達関数はゲインを“1”として図16のブロック101Bのようになっており、その後段に接続されたゲイン設定部101CのゲインKddは車速V及び操舵トルクTに従って変化するようになっている。尚、T1は積分時定数であり、sはラプラス変数である。図16のブロック図より、位相進み補償部101Aがないとした場合、電流指令値Irefについて下記(1)式が成り立つ。
【0019】
Iref = K+Kdd・s/(T1・s+1)
= (K・T1・s+K+Kdd・s)/(T1・s+1)
= {(K・T1+Kdd)s+K}/(T1・s+1)
= {K/(T1・s+1)}{(K・T1+Kdd)s/K+1} ……(1)
ここで、下記(2)式2が成り立つ。
【0020】
(K・T1+Kdd)/K >T1 ……(2)
従って、上記(1)式の周波数特性は図17のようになる。
【0021】
図17で示されるように、アシスト特性ゲインKが小のときとアシスト特性ゲインKが大のときとを比較すると、アシスト特性ゲインKが大のときの周波数a以上の帯域では、アシスト特性ゲインKの大小に拘らずゲインGの差は小さい。
即ち、周波数a以上の帯域では、アシスト特性ゲインKの大小に拘らずほぼ一定の応答性が得られる。操舵補助指令値演算部100の出力である操舵補助指令値Iは、図18に示すように操舵トルクTが小のときはアシスト特性ゲインKが小で、操舵トルクTが大のときはアシスト特性ゲインKが大となっている。この結果、操舵トルクTが小のときは、操舵トルクTが大のときに比べて応答性が低下する。従って、図17のような特性をもたせることにより、高周波帯域での応答性を保ち、モータの摩擦や慣性の影響を補償することができる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにメイントルクセンサ信号をMCUの入力信号として利用し、その信号を近似微分又は位相補償との組み合わせを通してセンタ応答性改善部が構成されており、全てソフトウェアで実現されている。ここにおいて、MCUのA/D入力信号にはノイズが混入しているため、近似微分又は位相進み補償器によりノイズが拡大され、ノイズ混入の点で近似微分のゲイン又は位相進み成分を大きくできない問題がある。このため、制御系のチューニング自由度が制限され、良い操舵フィーリングが得られない欠点を生じている。
【0023】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、ハードウェア及びソフトウェアの混合構成で、連続的なヒステリシス特性を調整可能な幅で与えることにより、連続的で安定かつ快適な操舵感を得るようにし、モータ慣性の影響がなく、しかもハンドルの操舵性能を向上した電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基いて演算された操舵補助指令値と、モータの電流値とから演算した電流制御値に基いてステアリング機構に操舵補助力を与える前記モータを制御するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置に関するもので、本発明の上記目的は、前記操舵トルクの信号を微分して前記操舵補助指令値に加算すると共に、前記微分に位相進みの位相補償を行うセンタ応答性改善部を具備すると共に、前記微分をハードウェア構成の微分回路で行うことによって達成される。
【0025】
また、本発明の上記目的は、前記操舵トルクの信号を微分して前記操舵補助指令値に加算すると共に、前記微分に位相進みの位相補償を行うセンタ応答性改善部を具備すると共に、前記位相補償をハードウェア構成の位相補償器で行うことにより達成される。
【0026】
更に、本発明の上記目的は、操舵トルクの信号をメイン信号1及び2と、サブ信号とで制御装置に入力すると共に、前記メイン信号1又は2に対してハード補償器を介挿することにより、或いは前記操舵トルクの信号をメイン信号とサブ信号とで前記制御装置に入力するようにし、前記メイン信号を増幅器で増幅して前記制御装置に入力すると共に、前記メイン信号をハード補償器で補償して前記制御装置に入力することによって達成される。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明では、従来ソフトウェアで実現しているセンタ応答性改善部の一部機能(近似微分、位相補償又はその組み合わせ)をハードウェアで実現している。アナログ信号はMCU入力におけるA/D変換により量子化ノイズが発生するが、本発明によればハードウェア構成の微分回路、位相補償器を使用しているため、量子化ノイズが拡大されることはなく、その結果ゲインを大きくできると共に、チューニングの自由度を上げることができる。
【0028】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0029】
本発明のセンタ応答性改善部も、図1に示すように近似微分部200(ゲイン部201を含む)と、位相補償部203と、ゲイン設定部204とで構成されており、近似微分部200(ゲイン部201を含む)をハードウェアで構成し、位相補償部203及びゲイン設定部204をソフトウェアで構成する。そして、ハードウェアとソフトウェアの境界部にA/D変換器202を設けている。
【0030】
センタ応答性改善部全体の伝達関数は例えば下記(3)式で表される
Gcen(s) = Gd(s)×Gld(s)×Kdd ……(3)
そして、近似微分部200の伝達関数Gkd(s)は
Gkd(s) = T1・s/(T1・s+1) ……(4)
であり、ゲイン部201のゲインkdを考慮すると
Gkd(s) = kd・T1・s/(T1・s+1) ……(5)
となる。また、位相補償部203の伝達関数Gld(s)は
Gld(s) = (T2・s + 1)/(T3・s + 1) ……(6)
であり、ゲイン設定部の伝達関数(定数)はKdd/kdである。
【0031】
ここでは、近似微分部200(ゲイン部201を含む)だけをハードウェアで構成する場合を、図2に示して説明する。A/D変換器202の分解能を最大限に利用するために、入力信号の振幅と周波数を見込んでハードウェア近似微分の出力信号をA/D変換器202の入力範囲(例えば0V〜5V)に抑える必要がある。想定した操舵パターンの操舵トルク信号(トルクセンサ信号T)の入力信号より、近似微分部200の伝達関数Gkd(s)の出力はA/D変換器202の入力範囲を超えた場合、又は入力範囲よりかなり小さい場合、ゲインの調整が必要である。従って、ハードウェア近似微分の伝達関数は、下記(7)式になる。
【0032】
Gkdp(s) = kd×Gkd(s) ……(7)
即ち、トルクセンサ信号Tをバッファを通してRCの近似微分回路200Aに入力する。近似微分回路200Aの伝達特性は
Gkd(s) = T1・s/(T1・s + 1) = RC・s/(RC・s + 1) ……(8)
である。近似微分回路200Aの出力はkd倍(=(R2+R1)/R1)の同期増幅器(ゲイン部)201Aを通して出力する。同期増幅器201Aのkd=(R2+R1)/R1信号の入出力は2.5Vを中心に要求されるため、電源電圧Vdd(5V)と抵抗(R,2×R1)分圧より中心電圧2.5Vが構成される。同期増幅器(ゲイン部)201Aの出力は、RCで成るノイズ除去用のローパスフィルタ(LPF)を経てA/D変換器202に入力される。
【0033】
一方、位相補償部203をハードウェア構成とした場合の実施例を図3に示す。この場合、トルクセンサ信号Tは位相補償器203Aに入力され、ローパスフィルタ203Bを経てA/D変換器に入力される。位相補償器203Aの伝達関数G(s)は下記(9)式となる。
【0034】
G(s) = R2/(R1+R2)・(R1C1・s + 1)/{R1R2/(R1 + R2)・(C1+C2)・s + 1}……(9)
本発明を適用できる電動パワーステアリング装置では、メイントルクセンサ信号及びサブトルクセンサ信号以外に、トルクセンサ信号のメイン信号を、ハード補償器41を通してMCU(制御装置)40に入力することも可能である。図4はその例を示しており、通常はメイントルクセンサ信号(メイン1)及びサブトルクセンサ信号(サブ)を用いて制御とフェールセーフの処理を行うが、ハードウェアで補償器41を実現するためには、メイントルクセンサ信号(メイン2)を通してMCU40に入力する。
【0035】
ところで、通常は精度を上げるためにトルクセンサ信号(メイン1)を増幅し、トルク検出の分解能を上げてからMCU40に入力する。しかし、その増幅された信号を本発明のハード補償器41を通してMCU40に入力すると、急操舵した場合に、その信号が飽和してしまう可能性がある。飽和信号がハード補償器(微分又は位相進み)41に入力された場合、ハード補償器41の出力には大きな信号変化が生じ、その変化信号が操舵フィーリングに悪影響を与える。このため、ハード補償器41の入力信号を飽和させないために、図5に示すようにトルクセンサ信号の増幅前の信号を、ハード補償器41の入力信号として使用する。
【0036】
なお、図11ではセンタ応答性改善部101の出力が加算器102に加算されているが、加算器105に加算しても良く、加算器102及び105の間に加算するようにしても良い。また、近似微分と位相補償の両方をハードウェアで構成し、ゲインのみをソフトウェアで構成することも可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明では、アシストトルクの応答性向上とトルク制御系の安定性向上を目的として、アシスト量(操舵補助指令値)に対して操舵トルクの微分に比例した値を、操舵トルク及び車速の大きさに応じて微分ゲインを変化させ、応答性及び安定性を高めるために加算している。また、その構成をハードウェア及びソフトウェアの混合で構成しているため、ノイズ信号が拡大されず、低振動、低騒音、操舵フィーリングの良いパワーステアリング装置の制御装置を提供できる。
【0038】
更に、操舵補助指令値に対して位相進み補償を挿入しているため、モータ慣性の補償を行うことができ、中立近傍での応答性とコーナリング時のアシスト量の急激な減少を両立でき、かつ不自然な操舵感を防ぐことができ、快適な操舵フィーリングを得ることができる。また、ノイズを低減できるため、補償器の位相進み成分若しくはゲインを大きくでき、その結果チューニングの自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成例を示すブロック図である。
【図2】近似微分部のハードウェア構成例を示す結線図である。
【図3】位相補償器のハードウェア構成例を示す結線図である。
【図4】本発明の他の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】電動パワーステアリング装置の一例を示すブロック構成図である
【図7】コントロールユニットの一般的な内部構成を示すブロック図である。
【図8】油圧式パワーステアリング装置の動作例を示す図である。
【図9】ヒステリシス特性の効果を説明するための図である。
【図10】電動パワーステアリング装置の動作例を示す図である。
【図11】センタ応答性改善部を有するパワーステアリング装置の制御装置のブロック構成図である。
【図12】センタ応答性改善部のブロック構成図である。
【図13】位相進み補償部の特性例を示す図である。
【図14】近似微分部の特性例を示す図である。
【図15】位相進み補償部及び近似微分部の合成特性を示す図である。
【図16】センタ応答性改善部の要部を示す伝達関数ブロック図である。
【図17】センタ応答性改善部の動作を説明するための図である。
【図18】操舵補助演算部の特性例を示す図である。
【符号の説明】
100 操舵補助指令値演算部
101 センタ応答性改善部
101A 位相進み補償部
101B 近似微分部
101C ゲイン設定部
103 トルク制御演算部
104 モータロス電流補償部
106 最大電流制限部
110 電流制御部
113 モータ
121 モータ角速度推定部
125 ヨーレート推定部
130 ディザ信号発生部
Claims (6)
- ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基いて演算手段で演算された操舵補助指令値と、モータの電流値とから演算した電流制御値に基いてステアリング機構に操舵補助力を与える前記モータを制御するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記操舵トルクの信号を微分して前記操舵補助指令値に加算すると共に、前記微分に位相進みの位相補償を行うセンタ応答性改善部を具備すると共に、前記微分をハードウェア構成の微分回路で行うことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記微分を前記位相補償の前に行うようになっている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基いて演算手段で演算された操舵補助指令値と、モータの電流値とから演算した電流制御値に基いてステアリング機構に操舵補助力を与える前記モータを制御するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記操舵トルクの信号を微分して前記操舵補助指令値に加算すると共に、前記微分に位相進みの位相補償を行うセンタ応答性改善部を具備すると共に、前記位相補償をハードウェア構成の位相補償器で行うことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記微分もハードウェア構成で行い、ゲインをソフトで実現するようになっている請求項3に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基いて演算手段で演算された操舵補助指令値と、モータの電流値とから演算した電流制御値に基いてステアリング機構に操舵補助力を与える前記モータを制御するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記操舵トルクの信号をメイン信号1及び2と、サブ信号とで前記制御装置に入力すると共に、前記メイン信号1又は2に対してハード補償器を介挿したことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基いて演算手段で演算された操舵補助指令値と、モータの電流値とから演算した電流制御値に基いてステアリング機構に操舵補助力を与える前記モータを制御するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記操舵トルクの信号をメイン信号とサブ信号とで前記制御装置に入力するようになっており、前記メイン信号を増幅器で増幅して前記制御装置に入力すると共に、前記メイン信号をハード補償器で補償して前記制御装置に入力するようになっていることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
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