本発明は、電子表示媒体用ガスバリア膜、それを用いた有機EL素子、および電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法を含むものである。以下、それぞれについて詳細に説明する。
A.電子表示媒体用ガスバリア膜
まず、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜について説明する。
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜は、基材と、上記基材上に形成された第1バリア層と、上記第1バリア層上にパターン状に形成された中間層と、上記中間層上に形成された第2バリア層とを有する電子表示媒体用ガスバリア膜であって、
上記電子表示媒体用ガスバリア膜は、ガスバリア性のあるバリア性領域と、ガスバリア性のない非バリア性領域とを有しており、
上記非バリア性領域は画素部が設けられない非表示部に設けられていることを特徴とするものである。
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜について図面を用いて説明する。図1は、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の一例を示すものである。図1に示すように、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜は、基材1と、上記基材1上に形成された第1バリア層2と、上記第1バリア層2上に形成された中間層3と、上記中間層3上に形成された第2バリア層4とを有するものである。また、電子表示媒体用ガスバリア膜10は、ガスバリア性のあるバリア性領域5と、ガスバリア性のない非バリア性領域6とを有している。
また、図2は本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて作製した有機EL素子の一例を示すものである。図2に示すように、有機EL素子は、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜10と、電極層11と、有機EL層12と、対向電極13と、絶縁層14と、カソードセパレータ15と、封止膜16とを有するものである。有機EL層12が形成されている部分は表示部7であり、カソードセパレータ15等が形成されている部分は非表示部8である。本発明においては、非バリア性領域6は、非表示部8に設けられている。
例えば有機EL素子を製造する際に、有機EL素子を構成する発光層や色変換層等に含まれる色素等が分解されてガスが発生する場合がある。これは、水蒸気や酸素と同様に、ダークスポットの要因となるものである。本発明によれば、バリア性領域では、第1バリア層、中間層および第2バリア層が順次積層されていることにより、第1バリア層にピンホールが存在する場合でも、第1バリア層上に中間層を形成することによりこのピンホールが埋められ、さらにその中間層上に第2バリア層を形成することにより、第1バリア層から第2バリア層表面まで貫通するピンホールの発生を抑制することができ、酸素や水蒸気等の浸入を妨げることが可能となる。一方、非バリア性領域ではガスバリア性が低いことから、上述したような発生したガスまたは水蒸気や酸素は、選択的に非バリア性領域から放出されることとなる。よって、電子表示媒体用ガスバリア膜の内部に上記のガス等が溜まることを抑制することができ、これにより中間層、第1バリア層または第2バリア層が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられており、この非表示部に選択的に上記のガス、水蒸気または酸素が放出されるため、非表示部以外の表示部にダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合、良好な画像表示を得ることが可能となる。
以下、このような電子表示媒体用ガスバリア膜の各構成について説明する。
1.基材
まず、本発明に用いられる基材について説明する。本発明において基材は、基板のみから構成されていてもよく、基板と機能層とから構成されていてもよい。以下、このような基材の各構成について説明する。
(1)基板
本発明に用いられる基板としては、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした際に基板側から光を取り出す場合や、後述する中間層を形成する際にエネルギーを基板側から照射する場合には、透明であることが好ましい。また、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした際に、基板の反対側、すなわち第2バリア層側から光を取り出す場合には、特に透明性が要求されることはない。さらに、基板としては、耐溶媒性、耐熱性を有し、寸法安定性に優れているものであることが好ましい。これにより、基板上に機能層、第1バリア層等を形成する際にも安定なものとすることができるからである。
このような透明な基板としては、例えばガラス板や、有機材料で形成されたフィルム状やシート状のもの等を用いることができる。
本発明において、透明な基板としてガラス板が用いられる場合には、可視光に対して透過性の高いものであれば、特に限定されるものではなく、例えば未加工のガラス板であってもよく、また加工されたガラス板等であってもよい。このようなガラス板としては、アルカリガラスおよび無アルカリガラスのどちらも使用可能であるが、本発明において、不純物が問題とされる場合には、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス等の無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、加工されたガラス板の種類は、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の用途に応じて適宜選択されるものであり、例えば透明ガラス基板に塗布加工をしたものや、段差加工を施したもの等が挙げられる。
このようなガラス板の膜厚は、20μm〜2mmの範囲内であることが好ましく、中でもフレキシブル基板として使用する場合には、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、リジッドな基板として使用する場合には200μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
また、透明な基板として用いられる有機材料としては、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、UV硬化型メタクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
さらに、透明な基板としては、上述した有機材料と、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂等と2種以上併せて用いることができる。
本発明においては、上記のような有機材料を用いて透明な基板とする場合には、10μm〜500μmの範囲内、中でも50〜400μmの範囲内、特に100〜300μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内より厚い場合は、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を作製する際に耐衝撃性が劣ることや、巻き取り時に巻き取りが困難となり、水蒸気や酸素等のガスバリア性の劣化が見られること等があるからである。また、上記範囲内より薄い場合には、機械適性が悪く、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性の低下が見られるからである。
また、透明性を有さない基板としては、例えば、アルミニウム、その合金等の金属、プラスチック、織物、不織布等を挙げることができる。
また、本発明においては、基板を洗浄して用いることが好ましく、その洗浄方法としては、酸素、オゾン等による紫外光照射処理や、プラズマ処理、アルゴンスパッタ処理等を行うことが好ましい。これにより、水分や酸素の吸着のない状態とすることができ、ダークスポットの低減や電子表示媒体用ガスバリア膜の長寿命化を図ることが可能となるからである。
(2)機能層
次に、本発明に用いられる機能層について説明する。本発明においては、例えば図3に示すように上記基板11上に機能層12が形成されていてもよい。機能層としては、通常、電子表示媒体に用いることができるものであれば特に限定はされなく、例えば発光層、電極層、対向電極、色変換層、カラーフィルタ層等を挙げることができる。このような機能層の層構成としては、特に限定されるものではなく、例えば基板と電極層と発光層と対向電極とから構成されているもの、基板と電極層とカラーフィルタ層と発光層と対向電極とから構成されているもの、色変換層を有するもの、色変換層とカラーフィルタ層とから構成されているもの等、電子表示媒体用ガスバリア膜の用途等に応じて適宜選択されるものである。
以下、このような機能層の例として、発光層、色変換層、カラーフィルタ層、および電極層について説明する。
(i)発光層
本発明に用いられる発光層としては、蛍光を発する材料を含み発光する層であれば特に限定はされないものである。
このような発光層に用いられる材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
上記色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
また、上記金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
さらに、上記高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
(ii)色変換層
本発明に用いられる色変換層は、発光層から発光される光を吸収し、可視光域蛍光を発光する蛍光材料を含有する層であり、発光層からの光を青色、赤色、または緑色とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、青色、赤色、緑色の3色の蛍光層をそれぞれ発光する色変換層が形成されていてもよく、また青色の発光層を用いて、青色の色変換層の代わりに透明樹脂層が形成されていてもよい。
上記色変換層には、通常、発光層からの光を吸収し、蛍光を発光する有機蛍光色素とマトリクス樹脂とが含有されるものである。
色変換層に用いられる有機蛍光色素は、発光層から発せられる近紫外領域または可視領域の光、特に青色または青緑色領域の光を吸収して異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。通常、発光層としては、青色の発光層が用いられることから、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の1種類以上を用いることが好ましく、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の1種類以上と組み合わせることが好ましい。
すなわち、光源として青色ないし青緑色領域の光を発光する発光層を用いる場合、発光層からの光を単なる赤色カラーフィルタ層に通して赤色領域の光を得ようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないために極めて暗い出力光になってしまう。したがって、発光層からの青色ないし青緑色領域の光を、蛍光色素によって赤色領域の光に変換することにより、十分な強度を有する赤色領域の光の出力が可能となるからである。
一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、発光層からの光を別の有機蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力してもよい。あるいはまた、発光層の発光が緑色領域の光を十分に含む場合には、発光層からの光を単に緑色カラーフィルタ層を通して出力してもよい。さらに、青色領域の光に関しては、発光層の光を蛍光色素を用いて変換させて出力させてもよいが、発光層の光を単なる青色カラーフィルタ層に通して出力させることが好ましい。
発光層から発する青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウム パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
また、発光層から発する青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えば3−(2´−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2´−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2´−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
なお、有機蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、有機蛍光顔料としてもよい。また、これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(以下、上記2つを合わせて有機蛍光色素と総称する)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記有機蛍光色素は、色変換層に対して、その色変換層の重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%含有される。有機蛍光色素の含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な波長変換を行うことができず、また上記含有量が5重量%を超える場合には、濃度消光等の効果により色変換効率が低下するからである。
また、マトリクス樹脂は、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)を、光および/または熱処理して、ラジカル種またはイオン種を発生させて重合または架橋させ、不溶不融化させたものを用いることができ、色変換層のパターニングを行うために、上記光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、未露光の状態において有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。
このような光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤とからなる組成物、(2)ボリビニルケイ皮酸エステルと増感剤とからなる組成物、(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物、および(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物などを含む。特に(1)のアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと光または熱重合開始剤とからなる組成物が、高精細なパターニングが可能であること、および耐溶剤性、耐熱性等の信頼性が高いことから好ましい。上述したように、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂に光および/または熱を作用させて、マトリクス樹脂を形成する。
また、色変換層に用いることができる光重合開始剤、増感剤および酸発生剤は、含まれる蛍光変換色素が吸収しない波長の光によって重合を開始させるものであることが好ましい。色変換層において、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂中の樹脂自身が光または熱により重合することが可能である場合には、光重合開始剤および熱重合開始剤を添加しないことも可能である。
また、色変換層の膜厚は、5μm以上であることが好ましく、中でも8μm〜15μmの範囲内であることが好ましい。また、色変換層の形状は、目的とする電子表示媒体により適宜選択されるものであるが、例えば赤、青、および緑の矩形または円形の区域を1組としてそれぞれ基板上に形成してもよく、またストライプ状に形成してもよい。また、特定の色変換層を、他の色変換層より多く形成することも可能である。
(iii)カラーフィルタ層
本発明においては、必要に応じて、上記発光層上または上記色変換層上にカラーフィルタ層が形成されたものであってもよい。これにより、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて例えば有機EL素子等の電子表示媒体とした際に、色再現性の高い電子表示媒体とすることができるからである。
本発明に用いられるカラーフィルタ層は、上述した発光層から発せられた光または色変換層を透過した光の色調をさらに調整する層であり、上述した発光層または色変換層の各色と対応した位置に、それぞれ青色、赤色、緑色のカラーフィルタ層が形成される。このようなカラーフィルタ層が形成されることにより、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を電子表示媒体に用いた場合、高純度な発色とすることができ、色再現性の高いものとすることができる。
上記カラーフィルタ層の形成材料としては、通常カラーフィルタに用いることが可能な顔料や樹脂を用いることができる。また、各色の間にブラックマトリックスが形成されるものであってもよい。
本発明においては、後述するようにブラックマトリックスが形成される領域を非表示部とし、この非表示部の少なくとも一部は非バリア性領域である。
(iv)電極層
本発明に用いられる電極層は、陽極であっても、陰極であってもよく、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の用途に応じて適宜選択されるものである。陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましく、また陰極としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さな導電性材料であることが好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
本発明に用いられる電極層が陽極である場合には、安定な電極層であり、かつ表面が平坦であり、さらに台形状の断面を有するものであることが好ましい。具体的な例としては、酸化錫膜、酸化インジウムと酸化錫との複合酸化物膜(ITO膜)、酸化インジウムと酸化亜鉛との複合酸化物膜(IZO膜)等が挙げられる。
また、電極層が陰極である場合には、可視光を反射する性質を有し、かつ表面が平坦であり、酸化しにくく安定なものであることが好ましい。具体的な例としては、単体としてAl、Cs、Er等、合金として、MgAg、AlLi、AlLi、AlMg、CsTe等、積層として、Ca/Al、MgAl、Li/Al、Cs/Al、Cs2O/Al、LiF/Al、ErF3/Al等が挙げられる。
2.第1バリア層
次に、本発明に用いられる第1バリア層について説明する。本発明に用いられる第1バリア層としては、電気絶縁性を有し、かつ有機溶剤に対して耐性を有することが好ましく、さらに可視光に対して透過率が50%以上、中でも85%以上であることが好ましい。これにより、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした際に、明度の高いものとすることができるからである。ここで、可視光に対する透過率は、スガ試験株式会社製全光線透過率装置(COLOUR S&M COMPUTER MODEL SM−C:型番)を用いて測定した値である。
本発明に用いられる第1バリア層は、上述したような性質を有するものであれば、その材料は特に限定されるものではない。例えば、無機酸化膜、無機酸化窒化膜、無機窒化膜、または金属膜のいずれか1種または2種以上を組み合わせたものを使用することができる。上記無機酸化膜としては、酸化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化チタン膜、酸化スズ膜、酸化インジウム合金膜が挙げられる。また、上記無機窒化膜としては、窒化ケイ素膜、窒化アルミニウム膜、窒化チタン膜が挙げられる。さらに、上記金属膜としては、アルミニウム膜、銀膜、錫膜、クロム膜、ニッケル膜、チタン膜が挙げられる。
また、上記の材料の中でも、酸化ケイ素膜または酸化窒化ケイ素膜であることが好ましい。これらの材料は、基材や中間層との密着性が良好であるからである。このような酸化ケイ素の薄膜は、有機ケイ素化合物を原料として形成することができる。この有機ケイ素化合物として、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。また、上記有機ケイ素化合物の中でも、テトラメトキシシラン(TMOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いることが好ましい。これらは、取り扱い性や蒸着膜の特性に優れるからである。
また、本発明においては、ガスバリア性を向上させるために、上記のバリア膜を複数層積層してもよく、その組み合わせは同種、異種を問わない。
ここで、本発明においては、上述したような第1バリア層の膜厚は、その材料により適宜選択されるものであるが、通常50nm〜5000nmの範囲内であることが好ましく、中でも50nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。また、特に上記酸化アルミニウム膜、酸化ケイ素膜または酸化窒化ケイ素膜の場合には、10nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。第1バリア層の膜厚が上記範囲よりも薄いと、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性の低下が見られるからである。また、第1バリア層の膜厚が上記範囲よりも厚い場合には、例えば本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を作製する際に、クラック等が入る可能性があり、これにより水蒸気、酸素等に対するガスバリア性の劣化が見られるからである。
3.第2バリア層
次に、本発明に用いられる第2バリア層について説明する。本発明に用いられる第2バリア層は、後述する中間層上に形成されるものである。
本発明において、第2バリア層の最大表面粗さ(Rmax)は、10nm以下であることが好ましく、中でも5〜7nmの範囲内であることが好ましい。本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて例えば有機EL素子とする際に、この第2バリア層上に電極層が形成される場合があるが、第2バリア層に凹凸が存在すると、第2バリア層上に形成される電極層にもこの凹凸形状が反映されることとなり、厚みの薄い有機EL素子に静電破壊等による欠陥が発生し易くなる。このような欠陥箇所は不良箇所(ダークエリア)となり、表示品質を低下させる原因となる。よって、上記第2バリア層の最大表面粗さ(Rmax)が上記範囲であることにより、上述したようなダークエリアの発生を抑制することができ、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合に、良好な画像表示を得ることが可能となるからである。
また、本発明においては、第2バリア層表面の尖度が、6.0以下であることが好ましく、中でも3以下であることが好ましい。第2バリア層表面の尖度が上述した範囲であることにより、上述したように、例えば本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて有機EL素子とした際に、有機EL素子に静電破壊等を生じさせるような急峻な部位が形成されないため、ダークエリアの発生を抑制することができ、良好な画像表示を得ることが可能となる。
ここで、上記尖度とは、表面に存在する突起の急峻の程度を示すパラメータであり、数値が低い程、突起形状はなだらかなものとなる。なお、上記尖度は、デジタルインストルメント社製のディメンジョン3000シリーズ測定ソフトver.4.31リリース3にて測定評価を行うものとする。
また、上記第2バリア層の最大表面粗さ(Rmax)が10nmより大きくても、急峻な部位が存在しない場合は問題がなく、一方、Rmaxが10nm以下であっても、急峻な部位が存在する場合、上述したように電子表示媒体に悪影響を与え、品質表示が低下するおそれがある。
なお、本発明において、上記第2バリア層の最大表面粗さ(Rmax)は、走査型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメント(株)製SPM:D−3000)を用い、下記の条件にて観察範囲5μm2で測定した値を用いるものとする。
(測定条件)
タッピングモード
設定ポイント:1.6程度
スキャンライン:256
周波数:0.8Hz
なお、第2バリア層のその他のことに関しては、上述した「2.第1バリア層」に記載したものと同様であるので、ここでの記載は省略する。
4.中間層
次に、本発明に用いられる中間層について説明する。本発明において、中間層は、上記第1バリア層上にパターン状に形成されるものであり、バリア性領域の膜厚が20nm〜5000nmの範囲内であり、非バリア性領域の膜厚が20nm未満の範囲であることを特徴とするものである。
本発明によれば、バリア性領域では、中間層が所定の膜厚を有し、第1バリア層、中間層および第2バリア層が順次積層されていることにより、第1バリア層にピンホールが存在する場合でも、第1バリア層上に中間層を形成することによりこのピンホールが埋められ、さらにその中間層上に第2バリア層を形成することにより、第1バリア層から第2バリア層表面まで貫通するピンホールの発生を抑制することができ、酸素や水蒸気等の浸入を妨げることが可能となる。一方、非バリア性領域では、中間層の膜厚が上記範囲であるように薄く、ガスバリア性が低いことから、例えば本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて有機EL素子を製造した際に、有機EL素子を構成する発光層や色変換層等に含まれる色素等が分解されて発生するガスまたは水蒸気や酸素は、選択的に非バリア性領域から放出されることとなる。よって、電子表示媒体用ガスバリア膜の内部に上記のガス等が溜まることを防ぐことができ、中間層等が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられることから、この非表示部に選択的に上記のガス、水蒸気または酸素が放出されるため、非表示部以外の表示部にガス等が放出されるのを防ぐことができ、ダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合、良好な画像表示を得ることが可能となる。
なお、本発明において、パターン状に形成された中間層とは、凹凸パターンを有するものであり、例えば図4に示すような第1バリア層2上に中間層3が形成された領域および形成されない領域がある凹凸パターンの他、例えば図1に示すような第1バリア層2上に全面に中間層3が形成されており、中間層3が高低差のある凹凸パターンを有する場合も含めるものである。
本発明においては、バリア性領域の中間層の膜厚は、20nm〜5000nm、中でも50nm〜2000nm、特に100nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記膜厚が上述した範囲未満の場合、バリア性領域において第1バリア層または第2バリア層に存在するピンホールを埋めることができず、十分なガスバリア性が得られない可能性があるからである。一方、上記膜厚が上述した範囲より大きい場合、急峻な部位が形成される可能性があるからである。中間層に急峻な部分が存在すると、例えば本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を有機EL素子に用いた際に、第2バリア層上に電極層が形成される場合があるが、この電極層にも上記中間層の急峻な部分が反映されることとなり、厚みの薄い有機EL素子に静電破壊等による欠陥、ダークエリアが発生し易くなる。
また、本発明においては、非バリア性領域の中間層の膜厚は、20nm未満、中でも1nm以下であることが好ましい。特に、非バリア性領域の中間層の膜厚は0nmであることが好ましく、例えば図4に示すように非バリア性領域6は、中間層が形成されていない非中間層形成領域9を有することが好ましい。上記膜厚が上述した範囲内であることにより、第1バリア層または第2バリア層に存在するピンホールを埋める作用が不十分であり、第1バリア層から第2バリア層表面まで貫通するピンホールが生じる可能性があるため、上述したようなガス、水蒸気および酸素を選択的に非バリア性領域に放出させることができる。よって、電子表示媒体用ガスバリ膜の内部にガス等が溜まることにより、中間層等が破損することを回避することができる。また、上記非バリア性領域は非表示部に設けられるため、非表示部以外の表示部に上記のガス等が放出することを防ぐことができ、ダークスポットの発生を妨げるからである。
ここで、上記中間層の膜厚は、表面粗さ計またはエリプソメーターを用いて測定した値とする。
さらに、上記中間層の最大高低差が、4000nm以下、中でも2000nm以下、特に1000nm以下の範囲であることが好ましい。上記最大高低差が上述した範囲より大きい場合、急峻な部位が形成される可能性があるからである。中間層に急峻な部分が存在すると、例えば本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を有機EL素子に用いた際に、第2バリア層上に電極層が形成される場合があるが、この電極層にも上記中間層の急峻な部分が反映されることとなり、厚みの薄い有機EL素子に静電破壊等による欠陥、ダークエリアが発生し易くなる。
ここで、上記中間層の最大高低差は、表面粗さ計を用いて測定した値とする。
このような中間層としては、第1バリア層および第2バリア層のピンホール等を埋めることができる材料であれば特に限定されるものではないが、例えばポリアミック酸、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等の樹脂材料、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類との重合体である高分子量エポキシ重合体を含有する硬化性エポキシ樹脂、および上述の基材の形成材料として用いることできる樹脂材料を使用することができる。また、アルキルチタネート等の有機チタン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、カゼイン、ワックス、ポリブタジエン系樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、またはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂材料も使用することができる。これらの中でも、本発明においては熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
また、中間層の形成材料として、感光性樹脂を用いることもできる。感光性樹脂としては、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂を挙げることができる。光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、光および/または熱処理して、ラジカル種またはイオン種を発生させて重合または架橋させ、不溶不融化させたものであり、未露光の状態において有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。
このような光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂を含む感光性樹脂組成物としては、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤とからなる感光性樹脂組成物、(2)ボリビニルケイ皮酸エステルと増感剤とからなる感光性樹脂組成物、(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドとからなる感光性樹脂組成物、および(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる感光性樹脂組成物などを挙げることができる。特に(1)のアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと光または熱重合開始剤とからなる感光性樹脂組成物が、高精細なパターニングが可能であること、および耐溶剤性、耐熱性等の信頼性が高いことから好ましい。上述したように、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂に光および/または熱を作用させて、感光性樹脂を形成する。
さらに、中間層の形成材料としては、金属アルコキシドを用いることもできる。金属アルコキシドの金属元素としては、Si、Al、Sr、Ba、Pb、Ti、Zr、La、Na等を挙げることができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物;テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム等のチタニウムアルコキシド化合物等を挙げることができる。これらの金属アルコキシドは、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記の金属アルコキシドとしては、その取扱性、硬化反応性、経済性、その他等の点から、特に、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
また、上記金属アルコキシドには、シランカップリング剤を架橋剤等として添加することができる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。その使用量としては、微量添加するだけでよい。
このような金属アルコキシドは、水またはアルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応を起こし、または、この反応の過程や反応終了後に有機物や触媒を添加し、高分子化して、加熱することにより、非晶質のセラミック質の透明な膜を形成することができる。この金属アルコキシドを用いて形成される膜は、ガスバリア性が高いことから、中間層として有用である。
本発明においては、後述する中間層のパターニング方法により、用いる材料を適宜選択する必要がある。例えば、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングする場合は感光性樹脂を用いるが、光触媒を用いてパターニングする場合は特に限定はされない。
また、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした際に、例えば赤・緑・青の三原色表示をする場合は、各色の発光層、色変換層、カラーフィルタ層等の画素部に対応した位置に配置される中間層は、それぞれ異なる材料を用いて形成してもよく、異なる膜厚となるように形成してもよい。
この際、中間層の膜厚としては、通常、各色の波長の整数倍の厚みとすることが好ましい。例えば赤色画素部が配置される中間層の膜厚は、赤色の波長の整数倍であることが好ましい。これにより、赤色光がより赤色に観察されるからである。
また、赤色・緑色・青色の画素部が配置される中間層は、それぞれ屈折率の異なる材料で形成されることが好ましい。さらに、例えば中間層が、赤色の画素部が配置されるR領域、緑色の画素部が配置されるG領域および青色の画素部が配置されるB領域を有するとすると、R領域、G領域およびB領域の屈折率が、R領域、G領域、B領域の順に小さくなることが好ましい。RGB各領域の膜厚は、各色の波長の整数倍の厚みであることが好ましく、各色の波長を考慮するとR領域、G領域、B領域の順に薄くなる。元の中間層の形成材料より屈折率の高い材料を用いて形成すれば、その膜厚は元の膜厚より薄くなる。一方、屈折率の低い材料を用いて形成すれば、その膜厚は厚くなる。よって、最も膜厚の厚いR領域の屈折率をより高くし、最も膜厚の薄いB領域の屈折率をより低くすることにより、R領域の膜厚は薄くなり、B領域の膜厚は厚くなるため、RGB各領域の膜厚の差を小さくすることができ、中間層を平坦化することが可能となる。これにより、上述したように、ダークエリアの発生を抑制することができ、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合に、良好な画像表示を得ることが可能となる。
本発明においては、上記中間層と上記第1バリア層との間に、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層または光触媒含有濡れ性変化層が形成されていてもよい。上記濡れ性変化層または光触媒含有濡れ性変化層を有することにより、容易に濡れ性の変化したパターンを用いて中間層を形成することが可能となり、低コストで製造可能な電子表示媒体用ガスバリア膜とすることができるからである。以下、光触媒を含有しない濡れ性変化層および光触媒を含有する光触媒含有濡れ性変化層の2つの実施態様に分けて説明する。
(1)第1実施態様
本発明においては、上記第1バリア層と上記中間層との間に光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層が形成されており、上記濡れ性変化層は、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。本発明によれば、上記濡れ性変化層を有することにより、容易に濡れ性の変化したパターンを用いて中間層を形成することが可能となり、低コストで製造可能な電子表示媒体用ガスバリア膜とすることができるからである。また、濡れ性変化層は光触媒を含有しないため、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜が経時的に光触媒の影響を受けることがないという利点も有するからである。
例えば図5に示すように、本実施態様に用いられる濡れ性変化層31は第1バリア層2上に形成され(図5(a))、濡れ性変化層31上に光触媒処理層32と基体33とを有する光触媒含有層側基板34を所定の間隙をおいて配置し、フォトマスク35を介してエネルギー36を照射し(図5(b))、撥液性から親液性に濡れ性を変化させて親液性領域31´を形成し(図5(c))、これにより濡れ性変化層上に濡れ性パターンが形成されるものである。
以下、濡れ性変化層および光触媒処理層側基板について説明する。
(i)濡れ性変化層
本実施態様に用いられる濡れ性変化層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するバインダであれば特に限定されるものではなく、具体的にはオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。本実施態様においては、中でも上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
また、特にフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;および
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3 。
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、中間層形成用塗工液を全面塗布した場合に、この中間層形成用塗工液の付着を妨げることが可能となり、エネルギー照射部である親液性領域のみに中間層形成用塗工液を付着させることが可能となる。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
本実施態様においては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるのであるが、上述したように、濡れ性変化層にフッ素を含有させることが、濡れ性のパターン形成に効果的である。したがって、光触媒の作用により劣化・分解しにくい材料にフッ素を含有させる、具体的にはオルガノポリシロキサン材料にフッ素を含有させて濡れ性変化層とすることが好ましいといえる。
本実施態様における濡れ性変化層には、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
上記のような光触媒の作用により濡れ性を変化させる機能を有する分解物質を濡れ性変化層に含有させる場合は、濡れ性変化層に用いられるバインダとしては、特に光触媒の作用により濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を有さなくてもよい。このようなバインダとしては、バインダの主骨格が光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、第1バリア層上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより濡れ性変化層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
本実施態様において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
また、濡れ性変化層上の親液性領域は、撥液性領域より水との接触角が小さい領域であれば、特に限定されるものではなく、親液性領域内の濡れ性が均一であっても、不均一であってもよい。
(ii)光触媒処理層側基板
本実施態様において、光触媒処理層側基板は、光触媒を含有する光触媒処理層と基体とを有するものである。本実施態様に用いられる光触媒処理層は、光触媒処理層中の光触媒が、所定の間隙をおいて配置された濡れ性変化層の濡れ性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではない。また、その表面の濡れ性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
本実施態様において用いられる光触媒処理層は、基体上に全面に形成されたものであってもよいが、基体上にパターン状に形成されたものであってもよい。このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、光触媒処理層を濡れ性変化層と所定の間隙をおいて配置してエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、濡れ性変化層上に親液性領域と撥液性領域とからなる濡れ性パターンを形成することができる。
また、上記光触媒処理層に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
また、本実施態様における光触媒処理層は、光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。光触媒のみからなる光触媒処理層の場合は、濡れ性変化層上の濡れ性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の場合は、光触媒処理層の形成が容易であるという利点を有する。光触媒処理層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層に用いられる材料と同様のものを用いることができる。
光触媒処理層が光触媒とバインダとを有する場合は、光触媒処理層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。
また、上記光触媒処理層が形成される基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。このように、本実施態様において、光触媒処理層側基板に用いられる基体は、特にその材料を限定されるものではないが、この光触媒処理層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒処理層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にプライマー層を形成するようにしてもよい。このようなプライマー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
なお、濡れ性変化層の形成方法に関しては、後述する「C.電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
(2)第2実施態様
本発明においては、上記第1バリア層と上記中間層との間に、光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層が形成されており、上記光触媒含有濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。上記光触媒含有濡れ性変化層を有することにより、容易に濡れ性の変化したパターンを用いて中間層を形成することが可能となり、低コストで製造可能な電子表示媒体用ガスバリア膜とすることができるからである。
例えば図6に示すように、本実施態様における光触媒含有濡れ性変化層31は、第1バリア層2上に形成され(図6(a))、フォトマスク35を介してエネルギー36を照射し(図6(b))、撥液性から親液性に濡れ性を変化させて親液性領域31´を形成し(図6(c))、これにより光触媒含有濡れ性変化層上に濡れ性パターンが形成されるものである。
このような光触媒含有濡れ性変化層は、光触媒を含有していればよいものである。光触媒と光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを有する光触媒含有層であっても、光触媒により濡れ性が変化する材料を有する濡れ性変化層と光触媒を有する光触媒処理層とが積層されたものであってもよい。以下、このような2つの態様に分けて説明する。
(i)第1の態様
本態様においては、上記光触媒含有濡れ性変化層が、光触媒を含有し、光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有層であることが好ましい。上記光触媒含有濡れ性変化層が、上記光触媒含有層であることにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、中間層を形成することができるからである。また、上記光触媒含有層は、上記光触媒含有層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、製造工程が少なく、効率的に電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することが可能となるからである。
このような光触媒含有層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するバインダであれば特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様の濡れ性変化層と同様の材料を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
上記光触媒含有層に用いられる光触媒としては、上述した第1実施態様の光触媒処理層と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。また、光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。
本態様において、この光触媒含有層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
また、光触媒含有層上の親液性領域は、撥液性領域より水との接触角が小さい領域であれば、特に限定されるものではなく、親液性領域内の濡れ性が均一であっても、不均一であってもよい。
(ii)第2の態様
本態様においては、上記光触媒含有濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成され、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなることが好ましい。上記光触媒含有濡れ性変化層が、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層から構成されることにより、上記濡れ性変化層中に光触媒が含有されていない場合であっても、エネルギー照射した際に、光触媒処理層の作用により、上記濡れ性変化層を、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、中間層を形成することができるからである。また、上記光触媒処理層は、濡れ性変化層と第1バリア層との間に形成されるため、中間層が経時的に光触媒の影響を受けることを抑制できるからである。
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するバインダであれば特に限定されるものではない。なお、濡れ性変化層に関しては、上記第1実施態様の濡れ性変化層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、光触媒処理層に関しては、上記第1実施態様の光触媒処理層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
5.バリア性領域および非バリア性領域
次に、本発明におけるバリア性領域および非バリア性領域について説明する。本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜は、ガスバリア性があるバリア性領域と、ガスバリア性がない非バリア性領域とを有するものである。
本発明においては、上述したように、バリア性領域では、中間層が所定の膜厚を有しており、第1バリア層、中間層および第2バリア層が順次積層された三層構造を有していることから、ガスバリア性が付与されるものである。バリア性領域のガスバリア性としては、水蒸気透過率が0.05g/m2・day以下、中でも0.01g/m2・day以下であることが好ましく、酸素透過率が0.2cc/m2・day以下、中でも0.1cc/m2・day以下であることが好ましい。バリア性領域の水蒸気または酸素に対するガスバリア性が上述した範囲内であることにより、バリア性領域である表示部にダークスポット等の欠陥が発生することを抑制することができるからである。
ここで、酸素透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値であり、水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した値である。
また、有機EL素子を製造する際に、有機ELを構成する発光層や色変換層等に含まれる色素等が分解されてガスが発生する場合がある。本発明において、バリア性領域はこのガスに対するバリア性も良好であることが好ましい。
一方、非バリア性領域では、中間層が所定の膜厚より薄いことから、ガスバリア性の低い領域となっている。これにより、上記のガスまたは水蒸気や酸素は、選択的に非バリア性領域から放出されることとなる。よって、電子表示媒体用ガスバリ膜内部にガス等が溜まることがないため、中間層等が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられており、この非表示部に選択的に上記のガス、水蒸気または酸素が放出されるため、非表示部以外の表示部にガス等が放出されるのを防ぐことができ、ダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合、良好な画像表示を得ることが可能となる。
上記非バリア性領域6は、例えば図2に示すように、非表示部8に設けられている必要がある。これは、画像表示に影響を及ぼさない領域である非表示部にダークスポットの原因となるガス等を選択的に放出させる必要があるからである。よって、非バリア性領域の形成位置としては、非表示部に設けられていればよいものであり、非表示部の一部に設けられていてもよく、非表示部全体に設けられていてもよい。
6.非表示部
次に、本発明における非表示部について説明する。本発明において、例えば図2に示すように、非バリア性領域6は非表示部8に設けられており、この非表示部8に選択的に上述したガス、水蒸気または酸素が放出されるため、電子表示媒体用ガスバリア膜10の内部にガス等が溜まることを防ぐことができ、基材1、第1バリア層2、中間層3または第2バリア層4が破損することを回避することができる。また、非表示部8の周囲に配置された表示部7にガス等が放出されるのを防ぐことができ、ダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて表示媒体とした際に、ダークスポット等の欠陥のない良好な画像表示を得ることができる。
このような非表示部としては、画像表示に影響を及ぼさない領域であればよく、具体的にはカソードセパレータ、絶縁層、ブラックマトリックス等が設けられる領域とする。また、表示部は、上記非表示部以外の領域であり、画像が表示される領域である。
7.その他
本発明において、電子表示媒体用ガスバリア膜は、第2バリア層上または基材と第1バリア層との間のいずれかに樹脂層およびバリア層を有していてもよい。樹脂層およびバリア層をさらに積層することにより、ガスバリア性が向上するからである。この際、第2バリア層4上に樹脂層41およびバリア層42を積層する場合は、最外層がバリア層42である必要があり(図7(a))、基材1と第1バリア層2との間に樹脂層41およびバリア層42を形成する場合は、最外層が第2バリア層4である必要がある(図7(b))。
ここで、第1バリア層とは、中間層の直下に形成される層であり、第2バリア層とは、中間層の直上に形成される層である。また、バリア層とは、上記第1バリア層および第2バリア層以外の無機化合物からなる層であり、樹脂層とは、中間層以外の樹脂からなる層を示すものである。
上記の層構成の中でも、本発明においては、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて有機EL素子とした際に、カソードセパレータ、ブラックマトリックス等が配置される側の表面に近い方に中間層が形成されていることが好ましい。具体的には、基材側にカソードセパレータ等を形成する場合は、例えば図7(a)に示すように第2バリア層4上に樹脂層41およびバリア層42が形成されており、基材1に近い方に中間層3が形成されていることが好ましく、基材とは反対側、すなわち第2バリア層側にカソードセパレータ等を形成する場合は、例えば図7(b)に示すように基材1と第1バリア層2との間に樹脂層41およびバリア層42が形成されており、第2バリア層4に近い方に中間層3が形成されていることが好ましい。これにより、より効果的にカソードセパレータ等が形成される非表示部に上述したガス、水蒸気および酸素等を選択的に放出させることができ、表示部におけるダークスポットの発生を抑制することができるからである。
また、樹脂層およびバリア層を積層する順序としては、第2バリア層上に形成する場合は、樹脂層、バリア層の順に積層されていることが好ましく、基材と第1バリア層との間に形成する場合は、基材上にバリア層、樹脂層の順に積層されていることが好ましい。本発明においては、バリア層と第1バリア層との間、バリア層と第2バリア層との間、およびバリア層とバリア層との間に樹脂層が形成されることにより、基材上の層から最表面の層まで貫通するピンホールが発生するのを抑制できるからである。
上記樹脂層およびバリア層の積層数としては、2層〜10層の範囲内であることが好ましい。樹脂層およびバリア層が上記範囲を超えて積層されると、電子表示媒体用ガスバリア膜の膜厚が厚くなり、透過性が低下する可能性があるからである。
上記樹脂層の形成材料としては、第1バリア層、第2バリア層またはバリア層のピンホール等を埋めることができる材料であれば特に限定はされないものであり、上述した中間層と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
また、樹脂層の膜厚は20nm〜5000nm、中でも50nm〜2000nmの範囲内であることが好ましい。樹脂層の膜厚が、上述した範囲より小さい場合、ガスバリア性を向上させるには不十分であり、また上述した範囲より大きい場合、電子表示媒体用ガスバリア膜の膜厚が厚くなり、透過性が低下する可能性があるからである。
さらに、樹脂層およびバリア層を積層した場合は、積層した樹脂層のうち1層は、上記中間層と同様に、膜厚が上述した範囲より小さい領域を有していてもよい。この際、膜厚が所定の範囲より小さい領域を有する樹脂層は、第1バリア層または第2バリア層上に形成されることが好ましい。また、樹脂層における膜厚が所定の範囲より小さい領域は、上記中間層の場合とは異なり、非表示部のみならず、非表示部以外の領域にも設けることができる。
なお、バリア層に関しては、上述した第1バリア層および第2バリア層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜が用いられる電子表示媒体としては、液晶表示装置のようなバックライトの明るさをシャッターすることにより階調をつけて表示を行う非発光型ディスプレイと、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)のように蛍光体を何らかのエネルギーによって光らせて表示を行う自己発光型ディスプレイとを挙げることができる。本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜は、中でも有機EL素子に好適に用いられる。
B.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上記電子表示媒体用ガスバリア膜を有するものである。
本発明の有機EL素子は、上記電子表示媒体用ガスバリア膜の欄で説明したように、基材と第1バリア層と中間層と第2バリア層とを有しており、さらに電極層と、上記電極層上に形成された有機EL層と、上記有機EL層上に形成された対向電極とを有するものであれば、特に層構成等は限定されるものではなく、有機EL素子の用途等に応じて適宜選択されるものである。本発明においては、上述したように、基材は、基板のみから構成されていてもよく、基板と機能層とから構成されていてもよいものである。よって、基材が基板のみからなる場合は、上記第2バリア層上に電極層、有機EL層および対向電極が形成されるものであり、基材が基板と機能層とからなる場合は、上記電極層、有機EL層および対向電極は機能層として形成されていてもよく、上記第2バリア層上に電極層、有機EL層および対向電極が形成されていてもよい。
図2は本発明の有機EL素子の一例を示すものである。図2に示すように、本発明の有機EL素子は、上述した電子表示媒体用ガスバリア膜10と、上記電子表示媒体用ガスバリア膜10の第2バリア層4上に形成された電極層11と、上記電極層11上にパターン状に形成された有機EL層12と、上記有機EL層12上に形成された対向電極13と、上記電極層11上であってパターン状の有機EL層12の間に形成された絶縁層14と、上記絶縁層14上に形成されたカソードセパレータ15と、対向電極13およびカソードセパレータ15を覆うように形成された封止膜16とを有するものである。有機EL層12が形成されている部分は表示部7であり、カソードセパレータ15等が形成されている部分は非表示部8である。本発明においては、非バリア性領域6は、非表示部8に設けられている。
本発明によれば、上述した利点を有する電子表示媒体用ガスバリア膜を有することから、非バリア性領域に選択的にガス、酸素または水蒸気等が放出されることとなり、電子表示媒体用ガスバリア膜の内部にガス等が溜まり、電子表示媒体用ガスバリア膜や、その上に形成された電極層、有機EL層等が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられており、この非表示部に選択的にガス等が放出されることから、非表示部以外の画像が表示される領域である表示部に上記のガス等が放出されることを防ぐことができ、表示部は経時でも酸素や水蒸気等の影響を受けることがないため、ダークスポット等の発生を抑制できる。したがって、良好な画像表示を得ることができる高品質な有機EL素子とすることができるのである。
本発明に用いられる有機EL層とは、通常有機EL素子に用いられるものを用いることが可能であり、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から形成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布による湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、通常有機EL層に用いられる層を用いることが可能であり、例えば正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化されて形成される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる電極層および対向電極としては、反対の電極を有し、対向するように形成されていればよいものである。このような電極層および対向電極は、どちらが陽極であっても、陰極であってもよく、本発明の有機EL素子の用途に応じて適宜選択されるものである。陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましく、また陰極としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さな導電性材料であることが好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
本発明に用いられる電極層または対向電極が陽極である場合には、安定な電極層または対向電極であり、かつ表面が平坦であり、さらに台形状の断面を有するものであることが好ましい。具体的な例としては、酸化錫膜、酸化インジウムと酸化錫との複合酸化物膜(ITO膜)、酸化インジウムと酸化亜鉛との複合酸化物膜(IZO膜)等が挙げられる。
また、電極層または対向電極が陰極である場合には、可視光を反射する性質を有し、かつ表面が平坦であり、酸化しにくく安定なものであることが好ましい。具体的な例としては、単体としてAl、Cs、Er等、合金として、MgAg、AlLi、AlLi、AlMg、CsTe等、積層として、Ca/Al、MgAl、Li/Al、Cs/Al、Cs2O/Al、LiF/Al、ErF3/Al等が挙げられる。
本発明に用いられる電極層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等により形成することができる。
電極層の膜厚としては、50nm〜500nm位の範囲が好ましい。電極層の膜厚が上記範囲よりも薄いと、導電性の低下が見られ、また電極層の膜厚が上記範囲を超えて厚い場合には、後加工の工程が進むにつれ、クラックなどにより導電性の劣化が見られるので好ましくないからである。
なお、本発明に用いられる基材、第1バリア層、中間層および第2バリア層に関しては、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
C.電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法
次に、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法について説明する。
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法は、基材上に第1バリア層を形成する第1バリア層形成工程と、
画素部が設けられない非表示部に非バリア性領域が設けられるように、バリア性のあるバリア性領域およびバリア性のない非バリア性領域からなるパターン状の中間層を形成する中間層形成工程と、
上記中間層上に第2バリア層を形成する第2バリア層形成工程とを有することを特徴とするものである。
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法について図面を用いて説明する。図8は、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法の一例を示す工程図である。図8(a)に示すように、まず基材1上に第1バリア層2を形成する(第1バリア層形成工程)。次に、図8(b)に示すように、電子表示媒体用ガスバリア膜がガスバリア性のあるバリア性領域5、およびガスバリア性のない非バリア性領域6を有するように、上記第1バリア層2上にパターン状に中間層3を形成する(中間層形成工程)。さらに、図8(c)に示すように、中間層3上に第2バリア層4を形成する(第2バリア層形成工程)。また、本発明により製造された電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて有機EL素子とした際に、例えば図2に示すように、非バリア性領域6は、非表示部8に設けられている。
例えば有機EL素子を製造する際に、有機EL素子を構成する発光層や色変換層等に含まれる色素等が分解されてガスが発生する場合がある。これは、水蒸気や酸素と同様に、ダークスポットの要因となるものである。また、発生したガスが電子表示媒体用ガスバリア膜の内部に溜まり、中間層、第1バリア層または第2バリア層が破損するという不具合が生じていた。本発明によれば、バリア性領域では、第1バリア層、中間層および第2バリア層が順次積層されていることにより、第1バリア層にピンホールが存在する場合でも、第1バリア層上に中間層を形成することによりこのピンホールが埋められ、さらにその中間層上に第2バリア層を形成することにより、第1バリア層から第2バリア層表面まで貫通するピンホールの発生を抑制することができ、酸素や水蒸気等の浸入を妨げることが可能となる。一方、非バリア性領域ではガスバリア性が低いことから、上述したような発生したガスまたは水蒸気や酸素は、選択的に非バリア性領域から放出されることとなり、電子表示媒体用ガスバリア膜の内部にガスが溜まり、中間層、第1バリア層または第2バリア層が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられ、この非表示部にガス等が選択的に放出されるため、非表示部以外の表示部にはガス等が放出されるのを防ぐことができ、ダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合、良好な画像表示を得ることが可能となる。
以下、このような電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法の各工程について説明する。なお、本発明に用いられる基材、第1バリア層、中間層および第2バリア層に関しては、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.第1バリア層形成工程
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法においては、まず基材上に第1バリア層を形成する第1バリア層形成工程が行われる。
本発明において、第1バリア層の形成は、蒸着法により行なわれるものであれば、特に限定されるものではない。例えば無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物または金属等を加熱して基材上に蒸着させる真空蒸着法、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属を原料として用い、酸素ガスを導入することにより酸化させて、基材上に蒸着させる酸化反応蒸着法、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属をターゲット原料として用い、アルゴンガス、酸素ガスを導入して、スパッタリングすることにより基材に蒸着させるスパッタリング法、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属にプラズマガンで発生させたプラズマビームにより加熱させて、基材上に蒸着させるイオンプレーティング法、また酸化ケイ素の蒸着膜を成膜させる場合は、有機ケイ素化合物を原料とするプラズマCVD法等が挙げられる。
2.中間層形成工程
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法においては、上記第1バリア層上に、画素部が設けられない非表示部に非バリア性領域が設けられるように、バリア性のあるバリア性領域およびバリア性のない非バリア性領域からなるパターン状の中間層を形成する中間層形成工程が行われる。
本発明においては、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」の欄に記載したように、バリア性領域では中間層が所定の膜厚を有しており、第1バリア層、中間層および第2バリア層が順次積層された三層構造を有していることから、ガスバリア性が付与されるものである。一方、非バリア性領域では、中間層が所定の膜厚より薄いことから、ガスバリア性の低い領域となっている。これにより、ダークスポットの原因となるガス、水蒸気、酸素等は、選択的に非バリア性領域から放出されることとなるため、電子表示媒体用ガスバリア膜の内部にガスが溜まり、中間層等が破損することを回避することができる。また、非バリア性領域は非表示部に設けられており、この非表示部に選択的に上記のガス、水蒸気または酸素が放出されるため、表示部以外の表示部にガス等が放出されることを防ぐことができ、ダークスポットが発生することを抑制することができる。したがって、本発明により製造された電子表示媒体用ガスバリア膜を用いて電子表示媒体とした場合、良好な画像表示を得ることが可能となる。
このような中間層の形成は、中間層形成用塗工液を第1バリア層上に塗布し、パターニングすることにより形成することができる。上記パターニングは、公知の方法を用いることができ、例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法、光触媒を用いる方法等により行うことができる。
本発明においては、中間層の形成方法の中でも、パターニング方法として光触媒を用いる方法またはフォトリソグラフィー法を使用することが好ましい。光触媒を用いるパターニング方法は、エネルギー照射されると、それに伴う光触媒の作用から、濡れ性が変化することを利用したものである。すなわち、この濡れ性の違いによるパターンを利用することにより、中間層をパターン状に形成するのである。このように光触媒を用いる中間層の形成方法は、エネルギーの照射のみで濡れ性の違いによるパターンを形成することができることから、中間層のパターニングに要する手間を大幅に省略することができる点で有用な方法である。一方、フォトリソグラフィー法を用いた場合、中間層の形成材料として感光性樹脂組成物を用いることにより、容易に中間層をパターニングすることができる。
以下、光触媒を用いる方法およびフォトリソグラフィー法にわけて説明する。
(1)光触媒を用いる方法
本発明において、光触媒を用いる方法としては、上記中間層と上記第1バリア層との間に、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層または光触媒含有濡れ性変化層が形成し、濡れ性パターンを形成する。この濡れ性の変化したパターンを用いて、容易に中間層を形成することが可能となり、低コストで製造可能な電子表示媒体用ガスバリア膜とすることができるからである。以下、光触媒を含有しない濡れ性変化層および光触媒を含有する光触媒含有濡れ性変化層の2つの実施態様に分けて説明する。
(i)第3実施態様
本発明においては、中間層形成工程は、上記第1バリア層上に光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
上記濡れ性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記濡れ性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギーを照射し、上記濡れ性変化層に液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した濡れ性パターンを形成する濡れ性パターン形成工程と、
上記濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液を塗布する中間層形成用塗工液塗布工程とを有することが好ましい。
本実施態様において、中間層形成工程は、例えば図5(a)に示すように、まず第1バリア層2上に光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層31を形成する(濡れ性変化層形成工程)。次に、図5(b)に示すように、濡れ性変化層31と、光触媒を含有する光触媒処理層32および基体33を有する光触媒処理層側基板34とを、上記濡れ性変化層31および上記光触媒処理層32が所定の間隙となるように配置した後、フォトマスク35を介してエネルギー36を照射し、図5(c)に示すように、上記濡れ性変化層31に液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した親液性領域31´を形成し、濡れ性パターンを形成する(濡れ性パターン形成工程)。さらに、図5(d)に示すように、上記濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液3を塗布する(中間層形成用塗工液塗布工程)。
本発明によれば、上記光触媒処理層と上記濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置し、エネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面の濡れ性がパターン状に変化した濡れ性パターンを形成することが可能であり、この濡れ性パターンの濡れ性の差を利用して、容易にパターン状に中間層を形成することが可能となることから、効率的に電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することができるからである。また、上記濡れ性変化層は光触媒を含有しないことから、光触媒の影響を受けることなく、高品質な電子表示媒体用ガスバリア膜とすることが可能となるからである。
以下、このような中間層形成工程における各工程について説明する。なお、本実施態様に用いられる濡れ性変化層、光触媒処理層側基板に関しては、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(濡れ性変化層形成工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、まず第1バリア層上に光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程が行われる。
本実施態様に用いられる濡れ性変化層の形成材料としては、光触媒の作用により濡れ性が変化するものであればよく、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」の濡れ性変化層の欄で説明したものと同様のものを用いることができる。また、上記濡れ性変化層は、上述した形成材料を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を第1バリア層上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
(濡れ性パターン形成工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、上記濡れ性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記濡れ性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギーを照射し、上記濡れ性変化層に液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した濡れ性パターンを形成する濡れ性パターン形成工程が行なわれる。
本実施態様において、光触媒処理層および濡れ性変化層は、光触媒処理層と濡れ性変化層とを光触媒の作用が及ぶように所定の間隙をおいて配置するものである。ここでいう配置とは、実質的に光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隙を隔てて上記光触媒処理層と濡れ性変化層とが配置された状態とする。
また、本実施態様において上記間隙は、200μm以下であることが好ましい。中でも、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって濡れ性変化層の濡れ性変化の効率が良好である点を考慮すると、特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の濡れ性変化層に対して特に有効である。
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の濡れ性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層と濡れ性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、濡れ性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して濡れ性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに濡れ性変化層上の濡れ性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
このように比較的大面積の濡れ性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層と濡れ性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層と濡れ性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
このように光触媒処理層と濡れ性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に濡れ性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が濡れ性変化層に届き難くなり、この場合も濡れ性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
また、このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と濡れ性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを目的とする濡れ性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、濡れ性変化層上に所定の濡れ性変化パターンを形成することが可能となる。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で濡れ性変化層表面に到達することから、効率よく高精細な濡れ性変化パターンを形成することができる。
本実施態様においては、このような光触媒処理層と濡れ性変化層との配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
また、本実施態様においては、濡れ性変化層と光触媒処理層とを所定の間隙をおいて配置し、エネルギー照射することにより濡れ性を変化させるものであるので、エネルギー照射後は光触媒処理層側基板を取り外すものであることから、光触媒の影響を受けない電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することができる。
本態様でいうエネルギー照射とは、光触媒による濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように濡れ性変化層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、濡れ性変化層表面が光触媒処理層中の光触媒の作用により濡れ性変化層表面の濡れ性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
また、本実施態様においては、光触媒処理層と濡れ性変化層とを対向させてエネルギー照射を行うものであり、光触媒処理層が基体上にパターン状に形成されている場合は、実際に光触媒処理層の形成された部分のみの濡れ性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒処理層と濡れ性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
(中間層形成用塗工液塗布工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、上記濡れ性変化層上の濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液を塗布する中間層形成用塗工液塗布工程が行われる。
中間層形成用塗工液の塗布方法としては、上記濡れ性変化層表面に塗布することができる方法であれば特に限定はされないが、具体的にはロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコートのような濡れ性変化層全面に塗布する方法であってもよく、吐出法のように、目的とするパターン状に中間層形成用塗工液を塗布する方法であってもよい。本発明においては、中でも吐出法を用いることが好ましい。上記濡れ性変化層上の濡れ性の違いによるパターンを利用して高精細なパターンを形成することができるからである。また、吐出法の中ではインクジェット法であることが好ましい。
また、上記中間層形成用塗工液は、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」に記載した中間層の形成材料を溶剤や希釈剤等に分散して調製することができる。
上記中間層形成用塗工液を塗布した後は、溶剤や希釈剤等を乾燥除去することにより中間層を形成することができる。
(ii)第4実施態様
本発明においては、中間層形成工程は、上記第1バリア層上に、光触媒を含有し、光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層を形成する光触媒含有濡れ性変化層形成工程と、
上記光触媒含有濡れ性変化層に、パターン状にエネルギーを照射し、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した濡れ性パターンを形成する濡れ性パターン形成工程と、
上記濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液を塗布する中間層形成用塗工液塗布工程とを有することが好ましい。
本実施態様において、中間層形成工程は、例えば図6(a)に示すように、まず第1バリア層2上に光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層31を形成する(光触媒含有濡れ性変化層形成工程)。次に、図6(b)に示すように、光触媒含有濡れ性変化層31に、フォトマスク35を介してエネルギー36を照射し、図6(c)に示すように、上記光触媒含有濡れ性変化層31に液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した親液性領域31´を形成し、濡れ性パターンを形成する(濡れ性パターン形成工程)。さらに、図6(d)に示すように、上記濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液3を塗布する(中間層形成用塗工液塗布工程)。
本発明によれば、上記光触媒含有濡れ性変化層にエネルギー照射することにより、上記光触媒含有濡れ性変化層表面の濡れ性がパターン状に変化した濡れ性パターンを形成することが可能であり、この濡れ性パターンの濡れ性の差を利用して、容易にパターン状に中間層を形成することが可能となることから、効率的に電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することができるからである。
また、本実施態様においては、上記光触媒含有濡れ性変化層が、光触媒を含有し、光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有層であってもよい。上記光触媒含有濡れ性変化層が、上記光触媒含有層であることにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、中間層を形成することができるからである。また、上記光触媒含有層は、上記光触媒含有層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、製造工程が少なく、効率的に電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することが可能となるからである。
さらに、本実施態様においては、上記光触媒含有濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成され、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなるものであってもよい。上記光触媒含有濡れ性変化層が、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層から構成されることにより、上記濡れ性変化層中に光触媒が含有されていない場合であっても、エネルギー照射した際に、光触媒処理層の作用により、上記濡れ性変化層を、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、中間層を形成することができるからである。また、上記光触媒処理層が、上記第1バリア層と濡れ性変化層との間に形成されることから、中間層が経時的に光触媒の影響を受けることを抑制することができるからである。
以下、このような中間層形成工程の各工程について説明する。なお、本実施態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層に関しては、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(光触媒含有濡れ性変化層形成工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、まず第1バリア層上に光触媒を含有し、光触媒の作用により濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程が行われる。
本実施態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層の形成材料としては、光触媒を含有し、光触媒の作用により濡れ性が変化するものであればよく、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」の光触媒含有濡れ性変化層の欄で説明したものと同様のものを用いることができる。また、上記光触媒含有濡れ性変化層は、上述した形成材料を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を第1バリア層上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有濡れ性変化層を形成することができる。
(濡れ性パターン形成工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、上記光触媒含有濡れ性変化層に、パターン状にエネルギーを照射し、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した濡れ性パターンを形成する濡れ性パターン形成工程が行なわれる。
なお、エネルギー照射等に関しては、上記第3実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(中間層形成用塗工液塗布工程)
本実施態様の中間層形成工程においては、上記光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性パターンに沿って中間層形成用塗工液を塗布する中間層形成用塗工液塗布工程が行われる。なお、本工程に関しては、上記第3実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)フォトリソグラフィー法
本発明においては、中間層形成工程は、感光性樹脂組成物を塗布する感光性樹脂組成物塗布工程と、塗布された上記感光性樹脂組成物に対してパターン状に露光する露光工程と、上記感光性樹脂組成物の未硬化部分を除去してパターンを形成する現像工程とを少なくとも有することが好ましい。
本発明において、中間層形成工程では、例えば図9(a)に示すように、まず第1バリア層2上に感光性樹脂組成物51を塗布する(感光性樹脂組成物塗布工程)。次に、図9(b)に示すように、塗布された感光性樹脂組成物51に対してフォトマスク35を介してエネルギー36を照射する(露光工程)。さらに、図9(c)および(d)に示すように、上記感光性樹脂組成物51の未硬化部分52を除去して中間層3を形成する(現像工程)。
本発明によれば、中間層の形成材料として感光性樹脂組成物を用いることにより、容易に中間層をパターニングすることができ、効率的に電子表示媒体用ガスバリア膜を製造することができるからである。
以下、このような中間層形成工程の各工程について説明する。
(感光性樹脂組成物塗布工程)
本発明において、中間層形成工程では、まず第1バリア層上に感光性樹脂組成物を塗布する感光性樹脂組成物塗布工程が行われる。
本発明において用いることができる感光性樹脂組成物は、ポジ型であってもネガ型であっても特に限定されるものではなく、上述した「A.電子表示媒体用ガスバリア膜」の中間層の欄で説明したものを用いることができる。
感光性樹脂組成物を塗布する際には、溶媒に分散して塗工液を調製する。このような溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンをはじめとするケトン類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、をはじめとするセロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルをはじめとするセロソルブ類、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールをはじめとするアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられる、2種以上の混合溶媒であってもよい。
また、感光性樹脂組成物の塗布方法としては、感光性樹脂組成物を全面に塗布する方法であれば特に限定されるものではなく、具体的には、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等の塗布方法が用いられる。
(露光工程)
本発明において、中間層形成工程では、上記塗布された感光性樹脂組成物に対してパターン状に露光する露光工程が行われる。
露光方法等に関しては、一般的に用いられている露光方法により行うことができる。また、図9に示す例においては、感光性樹脂組成物がネガ型であるため、中間層に該当する部分にのみが露光するようなフォトマスクを用いているが、逆に、ポジ型の感光性樹脂組成物を用いる場合には、中間層に該当する部分が遮光するようなフォトマスクが用いられる。
(現像工程)
本発明において、中間層形成工程では、上記感光性樹脂組成物の未硬化部分を除去してパターンを形成する現像工程が行われる。現像工程においては、露光された感光性樹脂組成物を現像液により、中間層が形成される部分の感光性樹脂組成物のみが残存するように現像する。
このような現像に用いることが可能な現像液としては、上記中間層を形成する材料を溶解するものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できるが、そのほかに、無機アルカリ、または感光性樹脂層の現像が可能な水溶液を使用することができる。感光性樹脂組成物の現像を行った後は水で洗浄するのが望ましい。
本発明においては、中間層は、発光層、色変換層、カラーフィルタ層等の画素部の各色に対してそれぞれ異なる材料を用いて形成してもよく、異なる膜厚となるように形成してよいものである。その場合は、上述した中間層形成工程における各工程を繰り返して行えばよい。
3.第2バリア層形成工程
本発明の電子表示媒体用ガスバリア膜の製造方法においては、上記中間層上に第2バリア層を形成する第2バリア層形成工程が行われる。
なお、第2バリア層形成工程に関しては、上述した「1.第1バリア層形成工程」に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。