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JP4554277B2 - 微生物によるコハク酸の製造方法 - Google Patents

微生物によるコハク酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微生物によるコハク酸の製造方法に関する。より詳しくは、微生物による発酵、膜分離、電気透析および結晶化などを行なうことにより高純度に精製された、ポリマー、食品、医薬品、その他化学品の合成原料として有用なコハク酸の製造方法に関する。
コハク酸は、ポリマー、食品、医薬品、その他化学品の合成原料として広く用いられており、特にポリマー原料としてコハク酸を用いる場合、ポリマーの重合度維持や着色防止などのために、高純度のコハク酸が要求される。コハク酸の高純度化は精製段数を重ねれば可能ではあるが、工業的生産を経済的に行なうためには、全工程にわたってのプロセスの改良、すなわち、コハク酸を生産する発酵工程における不純物の低減、コハク酸回収率の向上、工程の簡略化、副生成物の再利用などの効率化が必要となる。
発酵法による高純度のコハク酸の製造方法として、水分解電気透析によりコハク酸塩の不飽和水溶液を遊離コハク酸の過飽和水溶液に変換し、該過飽和コハク酸水溶液から結晶化させる方法が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1では、発酵工程での効率化や不純物の低減について、および培養液の除菌工程について言及されていない。また、上記方法では、コハク酸を分離精製する際に、実際には除菌工程を行なう必要があること、過飽和水溶液を得るために、水分解電気透析処理前に通常の電気透析等の工程を行なう必要があることから、処理段数が多いという問題点を有している。さらには、結晶回収後のコハク酸含有濾液を水分解電気透析に再利用する際に、副生物の酢酸を除去することについては言及されているものの、系内に蓄積することになる、共存する反応液由来の無機アニオンおよび糖類を除去することについては言及されていない。
また、コハク酸の発酵工程における効率化を図る方法として、好気的な条件で菌体増殖のための培養を行って集菌した後、反応用培地により嫌気的な条件で有機酸を生産するための菌体反応を行うにあたり、発酵時の糖濃度の最大濃度を特定の範囲に制御することにより、生産物を高濃度に蓄積させる方法が開示されている(特許文献2)。
また、生産性を高める方法として、限外濾過膜を用いて菌体濃縮液を再循環し、pH制御に消費したアルカリ量に連動させて基質を投入することによって、乳酸を主体とした有機酸を連続発酵させる方法が開示されている(特許文献3)。
しかしながら、前記特許文献2および3に記載の方法は、製品の高純度化、および、工業的生産に耐えうる効率的な分離精製などの点で、未だ充分ではなかった。そのため、コハク酸の回収率の向上、工程の簡略化、副生成物の循環再利用化、廃棄物の極小化などを図るため、発酵から分離精製までの全工程を包括的に改良し、効率的な製造方法を確立することが望まれていた。
特許番号第2944157号公報 特開2003−235592公報 特開平3−27291公報
本発明の課題は、従来の微生物によるコハク酸の製造方法における発酵から分離精製ま
での全工程を包括的に改良し、高純度に精製されたコハク酸を効率的に得ることができるコハク酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、発酵工程において、切り替え操作および除菌した反応液の回収操作の効率化を図り、培養工程と反応工程とを分割することにより、高生産性および効率化を両立した方法を見出した。また、分離精製工程において、コハク酸への酸転化およびコハク酸の結晶化を行うことにより、高純度のコハク酸を非常に簡便で効率的に製造できる主工程を見出した。さらに、コハク酸結晶回収時に発生した濾液にアルコールを添加して二層分離させ、コハク酸を上層に局在化させて回収することにより、系内に不純物を蓄積させることなく、コハク酸を含む濾液を結晶化工程に再利用できる副工程を見出した。そして、上記主工程および副工程を見出すことにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(I)は、好気的に微生物を培養する工程(1)、嫌気的にコハク酸塩を生産する工程(2)、コハク酸塩をコハク酸に転化する工程(3)、コハク酸を結晶化して固液分離することにより、コハク酸の結晶および濾液を回収する工程(4)を含むことを特徴とするコハク酸の製造方法である。
また、本発明(II)は、工程(4)で回収した濾液にアルコールを添加することにより、コハク酸を主に含む上層と、反応液由来の糖および無機アニオンを主に含む下層とに二層分離する工程(5)、および上層液を減圧濃縮することにより、コハク酸濃縮液とアルコールとを分離して回収する工程(6)を含むことを特徴とするコハク酸の製造方法である。
さらに、本発明は、例えば、以下の事項からなる。
[1]
微生物を好気的に培養する工程(1)、
微生物を嫌気的に反応させてコハク酸塩を生産する工程(2)、
コハク酸塩をコハク酸に転化する工程(3)、および
コハク酸を結晶化して固液分離することにより、コハク酸の結晶および濾液をそれぞれ回収する工程(4)
を含むことを特徴とするコハク酸の製造方法。
[2]
前記工程(1)で得られた培養液を膜濾過して菌体を濃縮し、該濃縮菌体に反応培地液を供給する操作を1回または繰り返し行なうことにより、
前記工程(1)で用いられた培養培地から、前記工程(2)で用いられる反応培地に切り替えることを特徴とする前記[1]に記載のコハク酸の製造方法。
[3]
前記工程(2)における反応液を膜濾過して菌体を濃縮し、除菌した反応液を回収するとともに、該除菌反応液の回収と平行してまたは交互に、該濃縮菌体に反応培地液を供給することにより、
微生物による反応と除菌反応液の回収とを連続的または断続的に行うことを特徴とする前記[1]または[2]に記載のコハク酸の製造方法。
[4]
前記工程(3)が、水分解電気透析処理により行なわれることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
[5]
前記工程(4)におけるコハク酸の結晶化が、コハク酸液を濃縮処理した後、冷却することにより行なわれることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載のコハク酸
の製造方法。
[6]
コハク酸液を濃縮した時のコハク酸濃度を、冷却温度における飽和溶解度以上にすることを特徴とする前記[5]に記載のコハク酸の製造方法。
[7]
前記工程(4)で回収した濾液にアルコールを添加することにより、コハク酸を主に含む上層と、反応液由来の糖および無機アニオンを主に含む下層とに二層分離する工程(5)、および
該上層液を減圧濃縮することにより、コハク酸濃縮液とアルコールとを分離して回収する工程(6)
を含むことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
[8]
前記工程(5)で添加されるアルコールが、エタノールまたはメタノールであることを特徴とする前記[7]に記載のコハク酸の製造方法。
[9]
前記工程(6)で回収したコハク酸濃縮液を、前記工程(4)に供給して結晶化処理原液の一部として再利用することを特徴とする前記[7]または[8]に記載のコハク酸の製造方法。
本発明の製造方法を用いれば、高純度のコハク酸を効率的に製造し、回収することができる。
以下、本発明に係るコハク酸の製造方法ついて詳細に説明する。
本発明(I)はコハク酸製造のための主工程からなる方法であり、本発明(II)は主工程で発生したコハク酸含有液の不純物を除去する副工程からなる方法である。本発明に係るコハク酸の製造方法の全工程を、図1のプロセスフローに示す。
主工程としては、好気的に微生物を培養する工程(1)(=培養工程)、微生物を嫌気的に反応させてコハク酸塩を生産する工程(2)(=反応工程)、コハク酸塩をコハク酸に転化する工程(3)(=酸転化工程)、およびコハク酸を結晶化して固液分離することにより、コハク酸の結晶および濾液を回収する工程(4)(=結晶回収工程)を含む。
また、副工程としては、工程(4)で回収した濾液にアルコールを添加して二層分離する工程(5)(=アルコール添加工程)および工程(5)の上層液を濃縮液とアルコールとに分離して回収する工程(6)(=アルコール分離工程)を含む。
まず、主工程からなる本発明(I)について説明する。
本発明(I)は、微生物反応液からコハク酸を製造する方法において、膜分離、水分解電気透析、結晶化、固液分離を実施することにより、高純度のコハク酸を効率的に分離精製する方法を提供するものである。
<培養工程および反応工程における膜分離の導入>
高純度に精製されたコハク酸が効率的に得られる製造方法を確立するためには、発酵工程において目的生成物であるコハク酸の生産性を向上して含有不純物を抑制できるプロセスを構築すること、および、分離精製工程において簡便かつ効率的に高純度のコハク酸を取得できるプロセスを構築することが必要である。
本発明の製造方法は、循環型の膜濾過を導入した発酵工程、水分解電気透析による酸転
化工程および濃縮冷却による結晶化を含む結晶回収工程を実施することにより、高純度に精製されたコハク酸を効率的に得ることを特徴としている。
<培養工程>
本発明の製造方法における培養工程は特に限定されず、公知の方法で行なうことができる。
本発明で用いられる微生物としては、通常の好気的な条件下で増殖し、嫌気的な条件下でコハク酸を生成する能力を有する種々の微生物、例えば、コリネバクテリウム(Cor
ynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium) 、アースロバクター(Arthrobacter)、ミクロコッカス(Micrococcu
s)、リゾビウム(Rhizobium)、バチルス(Bacillus)などの各属に属する微生物が挙げられる。
また、これらの微生物は、野生株または変異株のいずれでもよく、細胞融合もしくは遺伝子操作などの遺伝子的手法により誘導される組み替え株などを用いてもよい。
このような微生物の中でも、触媒活性および反応選択性が高く、高濃度のコハク酸を生成する微生物が好ましく用いられる。生成するコハク酸の濃度としては、70g/L以上、好ましくは100〜500g/Lが望ましい。
微生物を培養するための培地(=培養培地)の炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、フルクトース、廃糖蜜等の糖類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、通常、0.1w/v%〜30w/v%、好ましくは1w/v%〜10w/v%程度の濃度で用いられる。
培養培地の窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムまたは尿素などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、通常、0.1w/v%〜30w/v%、好ましくは1w/v%〜10w/v%程度の濃度で用いられる。
さらに必要に応じて、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム等のリン酸塩;硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、酢酸カルシウム、塩化マンガン等の金属塩;ビタミン類、アミノ酸、核酸などの供給源として、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カザミノ酸、ビオチン、チアミンなどを、菌の生育改善のために添加してもよい。
培養は、通常、通気撹拌または好気的条件下で、20℃〜40℃、好ましくは25℃〜35℃の温度で行うことができる。また、pHは5〜10、好ましくは7〜8の範囲であり、酸またはアルカリを添加することにより調整することができる。
培養工程に用いる槽としては、培養中の菌体と培養培地成分とを通気しながら分散混合できる機能を有する発酵槽であれば、特に限定されない。
培養工程から反応工程への切り替え操作は、菌体が増殖した後、菌体を固液分離により濃縮して回収し、この濃縮された菌体(=濃縮菌体)に、反応開始時に用いる培地(=反応培地液)を添加することにより行うことができる。
発酵工程の培養工程と反応工程とを分割するメリットは、分割することにより目的に合わせて各工程を最適な条件で実施でき、生産性を向上させることができる点である。分割の効果をより一層反映させる手法として、培養工程における副生成物が反応工程に持ち込まれることを抑制することが、反応性の阻害防止、反応液の含有不純物の低減という観点
から有効である。したがって、必要に応じて切り替え操作の前に、回収した菌体に反応培地液または水を添加して固液分離を繰り返すことにより菌体を洗浄する操作を導入することもできる。
この場合の固液分離方法は、特に限定されず、例えば、遠心分離、遠心濾過、フィルタープレス濾過、膜濾過などの方法で実施可能である。ただし、遠心分離、遠心濾過、フィルタープレス濾過、非循環型の膜濾過などの方法を採用する場合、菌体を固形分として回収し反応培地液に再懸濁する操作が必要となるため、処理段数が増える。また、遠心濾過およびフィルタープレス濾過のような濾布による濾過機においては、濾過性改善のために珪藻土等の濾過助剤を添加する必要があり、菌体とともに濾過助剤も反応工程に持ち込まれるため、反応や反応液回収の効率を妨げることにもなる。
したがって、菌体を回収して取り扱うことおよび濾過助剤を使用することを必要としない、循環型の膜濾過法を採用することが最も好ましい。
膜濾過装置における膜の種類としては、精密濾過膜および/または限外濾過膜などを使用することができるが、処理能力を考慮すれば、透過流束が格段に大きい精密濾過膜が、限外濾過膜よりも好ましい。
膜の材質は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンジフルオライドおよびテフロン(登録商標)などの有機膜や、セラミックなどの無機材質の膜を使用することができる。
膜型式についても、循環型であればクロスフロー型またはスパイラル型のいずれを使用してもよいが、濾過面の耐閉塞性を考慮すれば、閉塞しにくく処理液の濃縮限界が高いクロスフロー型が有利である
膜の分画サイズは、0.5μmを超えると菌体成分がリークする可能性があるため、0.5μm以下が好ましい。さらに、処理能力および耐菌体リーク性を考慮すれば、分画サイズは0.10〜0.25μmの精密濾過膜がより好ましい。
精密濾過膜は限外濾過膜より分画サイズが大きいため、空孔への固形分の付着閉塞が起こりやすく、透過流束が低減しやすい傾向にある。この傾向を解消するため、精密濾過膜では限外濾過膜より、濾過膜面に水平方向の線速度を上げ、濾過膜面に垂直方向の運転圧力を下げた条件を設定する。
膜濾過の場合、濃縮液を膜濾過装置の循環槽内で直接希釈した後、ポンプの液循環により直ちに再反応を開始することができる。また、膜濾過は、培養に用いた発酵槽に膜濾過装置を直接接続して、培養に引き続いて行うこともできるし、別途用意した膜濾過装置の循環槽に移して行うこともできる。
<反応工程>
反応工程では、前記微生物を用いて、反応培地液中、嫌気的な条件下で変換反応させることにより、コハク酸が生産される。
反応培地の炭素源としては、通常、グルコース、ガラクトース、フルクトース、セロビオース、シュークロース、マルトース、デキストリン、可溶性澱粉等の糖類が用いられ、中でもグルコースが好ましい。
また、微生物による反応を維持するために必要な成分として、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムまたは尿素等の窒素源、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリ
ウム等のリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、酢酸カルシウム、塩化マンガンなどの金属塩、ビタミン類、アミノ酸、核酸などを用いてもよい。
微生物による反応は、通常、嫌気的な条件下で、攪拌や循環などにより菌体と反応培地成分とを分散混合した状態で、温度を20℃〜40℃、好ましくは25℃〜35℃に、pHを5〜9、好ましくは6.5〜8.5に維持することにより行なわれる。
嫌気的な条件の維持方法としては、例えば、窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガスなどを供給して封入する方法や、反応培地に二酸化炭素、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩を添加する方法などが挙げられる。
反応の進行に伴い生産したコハク酸が蓄積されるため、pHが菌体のコハク酸生産反応の適正領域から逸脱し、反応速度が低下する。そのため、アルカリを添加してpHの制御を行い、反応速度を維持する。添加するアルカリとしては、アンモニア、NaOHなどの水溶液を用いることができる。これにより反応速度の低減を防止することができ、また生産したコハク酸は中和され、コハク酸塩として反応液中に存在することになる。
反応工程の生産性を向上させるためには、反応液のコハク酸塩濃度の向上およびコハク酸塩生産量の増大が必要になる。
反応液のコハク酸濃度を向上させる方法としては、反応培地液を添加する方法、コハク酸の原料となる糖類および炭酸塩もしくは炭酸水素塩等を含む水溶液(=追添反応培地液)を添加する方法、ならびに両者を組み合わせた方法などが有効である。反応培地液および/または追添反応培地液の添加方法は、連続的あるいは間欠的のいずれで行ってもよく、追添反応培地液の濃度は用いる菌の特性に合わせて適宜設定できる。また、追添反応培地液を添加する場合、糖類と、炭酸塩もしくは炭酸水素塩等とを別々に添加しても、両者を混合して添加してもよい。
追添反応培地液には、必要に応じて窒素源、リン酸塩、金属塩、ビタミン類、アミノ酸、核酸などを、菌体反応を維持促進するために添加してもよい。これらの成分を追添反応培地に添加する方法としては、糖液に溶解して添加してもよく、あるいは別途溶解液を作成して添加してもよい。
除菌した反応液の回収(=除菌回収)は、生産性の向上および分離精製工程における負荷の軽減、すなわち水分解電気透析の効率向上および不純物除去の負荷軽減の観点から、コハク酸による生成物阻害により生産速度が頭打ちになる付近、すなわちその反応系において、できる限り高い濃度に達した点で開始することが好ましい。
除菌回収は、除菌した反応液(=除菌反応液)と濃縮された菌体(=濃縮菌体)とを固液分離することにより、行なうことができる。固液分離は、培養工程から反応工程への切り替え操作における固液分離と同様の方法で行なうことができる。さらに、分離した濃縮菌体に、反応培地液や追添反応培地液を添加して、pH制御、嫌気性の維持、温度制御および撹拌などの操作を実施することにより、再反応させることができる。
このような除菌回収と再反応は、反応におけるコハク酸塩の生産量を増大させる上で有効であり、菌体当たりの生産性を向上させるとともに、反応液中の不純物を低減した後の生成物の分取を簡便にすることができる。除菌回収と再反応は、菌体のコハク酸生産活性が維持される範囲において、何回でも繰り返すことができる。
除菌回収と再反応は、通常、並行して行うことも、交互に行うこともできる。例えば、除菌回収に循環型の膜濾過装置を用いた場合、除菌回収と濃縮菌体液の循環とを同時に行
なうことができるため、除菌回収時に平行して反応培地液や糖液の添加を連続的または断続的に実施することも、除菌回収と再反応を交互に実施することも可能である。すなわち、反応の進捗状況に応じて、除菌回収および再反応の双方を、任意のタイミングおよび任意の間隔で自由に実施することができる。
したがって、除菌回収と再反応を効率的に行う観点から、反応工程の固液分離は、循環型の膜濾過を用いることが最も好ましい形態である。
反応工程で用いられる装置として、反応槽は、反応液中の菌体と反応培地成分とが分散混合できる機能があれば特に限定されない。したがって、反応は、培養に用いた発酵槽を引き続き用いて行うこともできるし、別途用意した反応槽に移して行うこともできる。また、循環型の膜濾過装置は、反応槽とは別の循環槽を準備して接続してもよいが、反応槽に直接接続することが、好ましい形態である。
反応終点は、コハク酸の生産活性(反応速度)が維持されず、コハク酸濃度の増大が停止した点を目安とする。
<酸転化工程>
本発明では、バイポーラ膜およびカチオン交換膜の2種類を使用した水分解電気透析装置を用いて、コハク酸塩を含有する除菌反応液を水分解電気透析処理することにより、カチオンを除去し、コハク酸塩をコハク酸に転化することができる。本発明におけるバイポーラ膜とは、アニオン交換膜とカチオン交換膜とが接合された構造を有する膜である。
本発明で用いられる水分解電気透析装置の構造は、カチオンを除去しコハク酸塩をコハク酸に転化することができる機能を有すれば、特に限定されない。例えば、図2の概略図に示すように、陽極(1)および陰極(4)の間にバイポーラ膜(2)とカチオン交換膜(3)とを交互に並べ、特にアニオン交換層とカチオン交換層とからなるバイポーラ膜は、陽極側にアニオン交換層、陰極側にカチオン交換層が向くように配置される。電極と膜の間および膜と膜の間にスペーサーを挿入して両末端から締め付けることにより、陽極とバイポーラ膜との間に電極室(7)、バイポーラ膜カチオン交換層側とカチオン交換膜との間に酸室(5)、カチオン交換とバイポーラ膜アニオン交換層側との間に塩基室(6)、バイポーラ膜と陰極との間に電極室(7)が組み立てられる。
水分解電気透析処理は、酸室に処理原液である、コハク酸塩を含有する除菌反応液を、塩基室にコハク酸塩のカチオン成分と水酸基とからなるアルカリ液を、電極室にコハク酸塩のカチオン成分と水酸基とからなるアルカリ液またはコハク酸塩のカチオン成分とアニオン成分とからなる塩液を供給して行うことができる。そのための構造としては、各液を入れる槽を設置し、各室と液が循環できるラインで接続することが望ましい。
水分解電気透析装置に用いられるバイポーラ膜およびカチオン交換膜は、特に限定されず、公知のバイポーラ膜およびカチオン交換膜を用いることができる。
水分解電気透析を開始すると、酸室では、反応液中のカチオンがカチオン交換膜を透過して塩基室へ移動し、バイポーラ膜から水素イオンが供給されてコハク酸塩がコハク酸に転化する。また、塩基室では、移動したカチオンが、バイポーラ膜から供給された水酸イオンと結合して塩基となる。すなわち、この水分解電気透析処理により、コハク酸塩をコハク酸とアルカリとに分離し、コハク酸およびアルカリをそれぞれ回収することができる。
水分解電気透析処理時における各液の温度は、通常、5〜70℃、好ましくは20〜50℃の範囲であることが望ましい。また、電流密度は、特に限定されないが、一般には1〜30A/dm2、好ましくは2〜20A/dm2であることが望ましい。
分離したアルカリは、培養工程および反応工程で用いるpH制御用のアルカリとして再利用することができる。
<結晶回収工程>
本発明の製造方法における結晶回収工程は、コハク酸の結晶化と結晶回収とからなる。
結晶化は、水分解電気透析処理により酸転化して得たコハク酸液を濃縮処理した後、冷却することにより実施できる。この時の濃縮方法は特に限定されず、例えば、減圧濃縮缶、薄膜濃縮機、膜濃縮機などを用いた公知の方法により実施することができる。また、濃縮液を冷却して結晶を析出させる操作に用いる装置としては、冷却機能を有する槽であれば、特に限定されない。このような結晶化は、種結晶を接種することなく、上記濃縮および冷却操作のみで実施できる。
濃縮後のコハク酸濃度および冷却温度は、冷却時の結晶化に支障をきたさなければ、特に限定されない。結晶化は、溶液中のコハク酸の実濃度を濃縮により増大させた状態下で冷却して溶解度を下げることにより、実濃度の溶解度を超えた分を析出させる。したがって、濃縮後のコハク酸濃度は、少なくとも冷却温度におけるコハク酸の溶解度以上の濃度であることが必要である。より多くの結晶を得るためには、濃縮の濃度が高く、冷却の温度が低いことが好ましい。例えば、60重量%に濃縮した後、冷却を10℃まで行うと、溶液中の90%以上のコハク酸が結晶化する。
結晶回収は、コハク酸を結晶化した液(=結晶液)を固液分離し、結晶に付着している不純物をリンスにより除去して行なわれる。
固液分離の方法としては、遠心分離、遠心濾過、フィルタープレス濾過、膜濾過などの方法を採用することができる。コハク酸の回収効率、付着不純物の除去効率などを考慮すると、濾布型固液分離が有利であり、特にフィルタープレスおよび/または遠心濾過を採用することが好ましい。また、結晶回収率維持の観点から、結晶液は冷却時の温度で維持されることが好ましく、固液分離機は装置内で結晶液を冷却できる機能を有することが望ましい。
コハク酸結晶は、結晶液をフィルタープレスおよび/または遠心濾過に供給して固液分離することにより、濾過面に回収される。また、結晶回収後の濾過面に水またはコハク酸水溶液を供給することにより、結晶に付着した不純物を洗い流すこともできる。このような洗浄液は、結晶回収率維持の観点から、結晶水の温度以下に冷却されていることが好ましい。また、コハク酸濃度は飽和濃度に近い濃度であることが好ましい。供給する液量は、濾液中の不純物の種類や量、所望の精製度、回収率などに応じて適宜調整することができる。
結晶回収の固液分離において、結晶に付着している不純物の除去が目標の濃度以下に低減しない場合は、回収したコハク酸結晶を、水または温水で溶解した後、冷却して再結晶化し、再度固液分離を行うことにより、付着している不純物を除去してもよい。
この場合、溶解後のコハク酸濃度および冷却温度は、冷却時の結晶化に支障をきたさなければ特に限定されない。また、固液分離時の処理は、必要に応じて結晶の回収のみで行っても、水またはコハク酸液の供給による洗浄を加えて行ってもよい。また、再結晶化と再固液分離の操作の回数は一回に限定されるものでもない。
回収されたコハク酸結晶は、乾燥を行い乾燥品にすることもできる。この場合の(水分)乾燥方法は、コハク酸が変質せず、不純物が混入しない範囲において実施されるものであれば、特に限定されない。
次に副工程からなる本発明(II)について説明する。
<アルコール添加工程>
結晶回収の固液分離における濾液には、冷却温度の飽和溶解度以下の範囲のコハク酸が、反応液由来の無機アニオン、カチオン、糖類などの不純物と一緒に残存する。濾液は、通常、コハク酸の回収率向上の観点から、単独で精製するか、あるいは製造工程に循環して再利用される。生産を繰り返し行うことを考えた場合、濾液を単独で精製してコハク酸を回収するよりは、濾液を主工程に戻して再利用する循環型の精製方法を採用するほうが、系外へのコハク酸のロスを極小化でき有利である。
しかしながら、大部分のコハク酸が結晶として回収されているため、濾液中のコハク酸に対する不純物の濃度比は増大しており、濾液をそのまま未処理の状態で主工程に戻すと、主工程に不純物を蓄積させる結果となる。したがって、主工程に戻すにしても濾液の不純物除去処理(=副工程)が必要である。
本発明の製造方法は、結晶回収工程における固液分離によって回収された濾液(=結晶濾液)中に残存するコハク酸を、副工程において精製処理を行った後に、主工程に戻して再利用することにより、コハク酸の工程ロスを極小化することを特徴としている。
本発明の製造方法におけるアルコール添加工程では、結晶濾液にアルコールを添加し、充分混合して静置することにより、液層が二層化し、上層に大部分のコハク酸およびアルコールが局在し、下層には大部分の反応液由来の無機アニオンおよび糖類などの不純物が局在化、すなわち、水和して局在化した状態となる。この場合、下層は不純物成分にもよるが、不純物が溶解して水飴状になる場合と、不純物が析出して懸濁液状になる場合とがある。また、上下層の液比率は大部分が上層液となり、下層は半分以下である。
アルコールは、製品への臭気付着の影響が低い点、ならびに、成分の分離効率が高い点からエタノールまたはメタノールが適している。アルコール添加量は、終濃度として20〜80容量%、好ましくは30〜40容量%である。
二層化は、アルコール添加後に液を分散混合して均一化した後、静置させることにより行なわれる。この場合の温度は、結晶化時の冷却温度以上で行うことが好ましい。
二層化した液層の回収方法は 上下層を分離できれば特に限定されず、例えば、デカンテーションや遠心分離などの公知の方法で行なうことができる。
<アルコール分離工程>
分離された上層は、減圧濃縮などの公知の溶媒回収法により、濃縮液とアルコールとに分離回収され、濃縮液は結晶回収工程の結晶化処理原液として、アルコールはアルコール添加工程で用いられるアルコールとして、それぞれ再利用することができる。
また、分離された下層は、その不純物成分にもよるが、例えば、糖類の比率が高い場合は、培養工程および/または反応工程の培地原料として再利用することができ、本発明(I)の主工程に対する副工程として、コハク酸回収率の向上、ならびに工程副生物を循環再利用させ廃棄物極小に寄与することができる。
以上のように、本発明(I)による培養工程、反応工程、酸転化工程、結晶回収工程からなる主工程と、本発明(II)によるアルコール添加工程、アルコール回収工程からなる副工程を実施することにより、発酵から分離精製までの全工程が包括的に改良される。特に、本発明の製造方法は、コハク酸の生産性、コハク酸の回収率、工程の簡略化、工程発生物の循環・再利用化、廃棄物の極小化について改善し、これにより、高純度のコハク酸結晶を効率的に得ること可能としたものである。
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)培養工程
微生物としてコリネバクテリウムCorynebacterium glutamicium R(FERM P−18976)を、表1に示す条件で2Lフラスコ中に調整した液体培地(以下「培養培地」という)750mLに接種した後、温度33℃の振とう培養器にて12時間好気的に培養した。
得られた培養液750mL全量を、表1の条件で30L発酵槽中に調整した培養培地15Lに接種した後、温度33℃、撹拌300rpm、通気量15NL/min(=1.0VVM)、槽圧0.06MPaの好気的条件で24時間培養した。
Figure 0004554277
(2)反応工程
培養終了後直ちに培養液15L全量を、精密濾過膜が接続された30Lの攪拌機付き循環槽に供給し、ポンプ循環して圧力をかけ濾液を回収しながら培養液を5分の1容量まで精密濾過膜(商品名:マイクローザPSP113、旭化成工業株式会社製)を用いて濃縮した。得られた濃縮液を、表2の条件で調整した液体培地(以下「反応培地」と言う)で5倍に希釈した。この濃縮および希釈操作を再度実施し、菌体の懸濁溶液を培養培地から反応培地に切り替えた。
濃縮操作の運転条件は、圧力を入口/出口=0.20MPa/0.04MPa、線速度を2m/sとした。逆洗条件は、圧力を0.3Paとし、サイクルをOFF/ON=10分/5秒とした。
Figure 0004554277
次に、嫌気的な条件にするため、循環槽の懸濁液中に炭酸ガスを100mL/minで供給しながら、撹拌100rpm、温度33℃、pH7.5(下限制御)の条件で反応を開始した。なお、温度調節は電熱ヒータにより、pH制御は25%アンモニア水により行った。
反応開始3時間後から、表3および表4の条件で調整した追添反応培地1および追添反応培地2、各3.0Lを12時間かけて流加した。反応液の上清をHPLC(カラム:昭和電工(株)製「Shodex(登録商標)RSpak KC−811」、溶離液:0.1%リン酸水溶液、流速:1mL/min、検出:RI、カラムオーブン:40℃)により分析したところ、反応液中の主成分として、コハク酸の標準品と保持時間が一致するピークを認めた。反応開始24時間後において、コハク酸濃度110g/L、液量24L、コハク酸2.64kg、生産速度4.58g/L・Hrであった。
反応開始24時間後、精密濾過膜を用いて反応液を4Lまで濃縮し、濾液側に除菌反応液を回収した。濃縮操作の運転条件は、培養培地から反応培地に切り替えの場合と同様に実施した。運転の結果、平均透過流束85L/Hr・m2、コハク酸透過率100%で、
濾液側にコハク酸を2.20kg回収し、濃縮液側には菌体全量およびコハク酸0.44kgが残存した。濾液中には固形成分はなく、反応液から菌体が100%除去されたことを確認した。
循環槽に残存した濃縮液に、反応培地を添加して液量15Lとし、これを再反応させた後、精密濾過により4Lまで濃縮して除菌反応液を回収する工程を2サイクル繰り返した。条件は、流加する追添培地液1および2の量を、ともに2.0Lに変更したこと以外は、前記条件と同一とした。
1サイクル目は、反応20時間、液量21L、コハク酸105g/L、生産速度3.78g/L・Hr、除菌回収液中のコハク酸1.79kgであり、2サイクル目は、反応2
4時間、液量21L、コハク酸104g/L、生産速度3.17g/L・Hr、除菌回収液中のコハク酸1.77kgであった。
合計3回で、反応によるコハク酸生産量6.17kg、除菌回収液量54L、コハク酸107g/L、5.75kg、コハク酸回収率93.2%であった。
Figure 0004554277
Figure 0004554277
(3)酸転化工程
得られた除菌回収液は、水分解電気透析による処理を行った。電気透析装置として(株)アストム製の電気透析装置TS2B−2−10型を用い、以下の装置条件および運転条件で、除菌回収液54Lを酸室に供給して行った。24時間の通電により、コハク酸濃度110g/L、酸転化率95%のコハク酸転化液51.4Lが得られた。電流値は、開始時が30A、終了時が5Aであり、電流効率は90%であった。
(装置条件)
有効膜面積:0.02m2/枚
対数:10対
膜種:バイポーラ膜BP−1E(10枚)およびカチオン交換膜CMB(10枚)
電極材質:Ni陽極およびNi陰極、
(運転条件)
方式:バッチ式
流量:3.0L/min、
温度:20〜35℃、
塩基室アルカリ液:0.5N−Na2SO4
電極室電極液:1.0N−NaOH、
電流制御2V/対(20V/10対)
定電圧
(4)結晶回収工程
得られたコハク酸転化液は、30L減圧濃縮缶により、温度50℃、圧力0.001MPa、撹拌120rpmの条件で、断続的にコハク酸液を追添加しながら51Lから15Lまで濃縮した。濃縮液のコハク酸濃度は376g/Lであった。濃縮液は引き続き濃縮
缶内で冷却し、10℃、撹拌80rpmの条件で15時間保持してコハク酸の結晶を析出させた。
得られた結晶液10Lは、10℃を保持し、遠心濾過機(上部排出型遠心分離機H−122、株式会社コクサン製、回転数3000rpm、濾過面積0.15m2)に結晶がオ
ーバーフローしないように給液し、濾液を回収しながら固液分離した。次いで、10℃に冷却した水を5L供給し、濾布上の結晶を洗浄した。遠心濾過機は、給液終了後濾液が出なくなるまで運転を継続した後、停止して結晶の回収を行った結果、5.46kgの結晶を得た。
得られた結晶は、含水率が6%であり、水分以外の固形分が純度99.9%以上のコハク酸であり、重量が5.13kgあった。回収された濾液は、液量が14.8L、コハク酸濃度が35g/L、重量が0.52kgであった。
結晶回収工程におけるコハク酸回収率は90.9%、コハク酸の反応液から結晶回収までのワンパスの回収率は84.8%であった。
(5)アルコール添加工程
50L撹拌付きSUS槽に、回収した遠心濾液14.8Lとエタノール29.5Lとを投入し、25℃、120rpmの条件で3時間撹拌して充分混合した後、撹拌を停止して20時間静置した。静置後、ボトムバルブより下層液3Lを抜き出し、分液ロートに回収静置して2層分離させた後、各層を回収した結果、上層0.8L、下層2.2Lが得られた。50L槽に残された液は、回収された0.8Lの上層と同成分であった。
この分離の結果、エタノール添加した44.3Lの原液中に含まれるコハク酸0.52kg、グルコース0.20kgおよび硫酸イオン0.18kgが、42.1Lの上層にコハク酸0.52kg、グルコース0.05kgおよび硫酸イオン0.04kgの量で分配され、2.2Lの下層にコハク酸0kg、グルコース0.15kgおよび硫酸イオン0.14kgの量で分配された。
(6)アルコール分離工程
回収された上層液42.1Lを減圧濃縮してエタノールを除去した結果、コハク酸103.0g/L、グルコース9.8g/L、硫酸8.4g/L、エタノール濃度5容量%の濃縮液5Lが回収された。
[実施例2]
(1)培養工程および(2)反応工程
実施例1と同様に培養、反応、精密濾過処理を行った結果、液量50L、コハク酸98g/L、4.9kgの除菌反応液を得た。反応生産量に対する回収率は92.1%となった。
(3)酸転化工程
回収した除菌反応液50.0Lを、実施例1と同条件でバイポーラ電気透析処理した。24時間の通電により、コハク酸濃度103g/L、酸転化率95%のコハク酸転化液52.5Lが得られた。電流値は、開始時が28A、終了時が5Aであり、電流効率は90%であった。
(4)結晶回収工程
酸転化液52.5Lに、実施例1のアルコール回収工程で回収した濃縮液5Lを投入して、減圧濃縮により13Lまで濃縮を行った後、実施例1と同条件で結晶回収を行い、5.18kgの結晶を得た。
得られた結晶は、含水率が6%であり、水分以外の固形分が純度99.9%以上のコハク酸であり、重量が4.87kgあった。回収された濾液は、液量が12.8L、コハク酸濃度が43g/L、重量が0.55kgであり、結晶回収工程のコハク酸回収率は90.0%であった。反応液と追加濃縮液とを合計したコハク酸量を100%とした場合、結晶コハク酸は76.2%の回収率であった。
(5)アルコール添加工程
実施例1と同じ装置に、回収した遠心濾液12.8Lとエタノール25.6Lとを投入し、実施例1と同条件で処理した後、ボトムバルブより下層液3Lを抜き出し、分液ロートに回収静置して2層分離させた後、各層を回収した結果、上層1.1Lおよび下層1.9Lが得られた。50L槽に残された液は、回収された1.1Lの上層と同成分であった。
この分離の結果、エタノール添加した38.4Lの原液中に含まれるコハク酸0.55kg、グルコース0.22kgおよび硫酸イオン0.19kgが、36.5Lの上層にコハク酸0.55kg、グルコース0.05kgおよび硫酸イオン0.04kgの量で分配され、1.9Lの下層にコハク酸0kg、グルコース0.17kgおよび硫酸イオン0.15kgの量で分配された。
(6)アルコール分離工程
回収された上層液36.5Lを減圧濃縮してエタノールを除去した結果、コハク酸110.0g/L、グルコース10.1g/L、硫酸8.0g/L、エタノール濃度5容量%の濃縮液5Lが回収された。
[実施例3]
(1)培養工程および(2)反応工程
実施例1の培養工程および反応工程において、反応工程のpH制御用アルカリを10%NaOH水溶液に変更したこと以外は実施例1と同様に行なった結果、液量50L、コハク酸80g/L、4.0kgの除菌反応液を得た。反応生産量に対する回収率は92.1%であった。
(3)酸転化工程
回収した除菌反応液50.0Lを、実施例1と同条件でバイポーラ電気透析処理した。22時間の通電により、コハク酸濃度84g/L、酸転化率95%のコハク酸転化液52.5Lが得られた。電流値は、開始時が29A、終了時が4Aであり、電流効率は92%であった。
(4)結晶回収工程
酸転化液52.5Lを減圧濃縮により10Lまで濃縮した後、実施例1と同条件で結晶を回収した結果、3.87kgの結晶が得られた。この結晶は、含水率が6%であり、水分以外の固形分が純度99.9%以上のコハク酸であり、重量は3.64kgであった。回収された濾液は、液量が9.8L、コハク酸濃度が13.2g/L、重量が0.13kgであり、結晶回収工程のコハク酸回収率は91.0%であった。反応工程のコハク酸生産量を100%とした場合、結晶コハク酸は83.8%の回収率であった。
(5)アルコール添加工程
実施例1と同じ装置に、回収した遠心濾液9.8Lとエタノール19.6Lとを投入し、実施例1と同条件で処理した後、ボトムバルブより下層液2Lを抜き出し、分液ロートに回収静置して2層分離させた後、各層を回収した結果、上層1.0Lおよび下層1.0
Lが得られた。50L槽に残された液は、回収された1.0Lの上層と同成分であった。
この分離の結果、エタノール添加した29.4Lの原液中に含まれるコハク酸0.13kg、グルコース0.30kgおよび硫酸イオン0.19kgが、28.4Lの上層にコハク酸0.13kg、グルコース0.07kgおよび硫酸イオン0.04kgの量で分配され、1.0L下層にコハク酸0kg、グルコース0.23kgおよび硫酸イオン0.15kgの量で分配された。
(6)アルコール分離工程
回収された上層液28.4Lを減圧濃縮してエタノールを除去した結果、コハク酸126.0g/L、グルコース14.1g/L、硫酸8.0g/L、エタノール濃度5容量%の濃縮液5Lが回収された。
本発明に係るコハク酸の製造方法のフローシートである。 水分解電気透析装置の概略図である。
符号の説明
(1)・・・陽極
(2)・・・バイポーラ膜
(3)・・・カチオン交換膜
(4)・・・陰極
(5)・・・酸室
(6)・・・塩基室
(7)・・・電極室

Claims (8)

  1. 微生物を好気的に培養する工程(1)、
    微生物を嫌気的に反応させてコハク酸塩を生産する工程(2)、
    コハク酸塩をコハク酸に転化する工程(3)
    コハク酸を結晶化して固液分離することにより、コハク酸の結晶および濾液をそれぞれ回収する工程(4)
    前記工程(4)で回収した濾液にアルコールを添加することにより、コハク酸を主に含む上層と、反応液由来の糖および無機アニオンを主に含む下層とに二層分離する工程(5)、および
    該上層液を減圧濃縮することにより、コハク酸濃縮液とアルコールとを分離して回収する工程(6)
    を含むことを特徴とするコハク酸の製造方法。
  2. 前記工程(1)で得られた培養液を膜濾過して菌体を濃縮し、該濃縮菌体に反応培地液を供給する操作を1回または繰り返し行なうことにより、
    前記工程(1)で用いられた培養培地から、前記工程(2)で用いられる反応培地に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のコハク酸の製造方法。
  3. 前記工程(2)における反応液を膜濾過して菌体を濃縮し、除菌した反応液を回収するとともに、該除菌反応液の回収と平行してまたは交互に、該濃縮菌体に反応培地液を供給することにより、
    微生物による反応と除菌反応液の回収とを連続的または断続的に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のコハク酸の製造方法。
  4. 前記工程(3)が、水分解電気透析処理により行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
  5. 前記工程(4)におけるコハク酸の結晶化が、コハク酸液を濃縮処理した後、冷却することにより行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
  6. コハク酸液を濃縮した時のコハク酸濃度を、冷却温度における飽和溶解度以上にするこ
    とを特徴とする請求項5に記載のコハク酸の製造方法。
  7. 前記工程(5)で添加されるアルコールが、エタノールまたはメタノールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
  8. 前記工程(6)で回収したコハク酸濃縮液を、前記工程(4)に供給して結晶化処理原液の一部として再利用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
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