JP4540228B2 - 繊維強化プラスチック及びその義歯床 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は高い強度を有し、且つ人体や自然など生態環境への高度な順応性を有する繊維強化プラスチック及び前記繊維強化プラスチックで形成された義歯床に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会ではその利便性から日常生活の隅々にまでプラスチック製晶が行き渡って大量に消費され続けており、プラスチックなしの生活は考え難いはどその恩恵に浴している。だが、近年においてプラスチックの中には、高度な利便性を有する反面で、危険な弊害を有するものがあることが徐々に認識され始めて来ており、社会的に問題になっている。
【0003】
歴史的には当初プラスチックとして使用されていたものは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)で、毒性が殆どなく、廃棄して燃焼する際にも比較的きれいに燃え、一定の有用性を有するものであった。その後、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は強度等において問題があるとの認識から、改良が加えられたプラスチック、例えばエチレンと塩素から製造されたポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリカーボネート(PC)、ポリスルフォン(PSF)など、強度等の特性が飛躍的に向上されたものが生まれ今日に至っている。
【0004】
しかし、ポリ塩化ビニル(PVC)などの有機塩素化合物からなるプラスチックは、生産、消費を経て廃棄焼却される際に、焼却時の高温と前記プラスチックに含有される塩素によってダイオキシンを生成する可能性がある。ダイオキシンは急性毒性と慢性毒性の2つの毒性を有し、低濃度のダイオキシンの長期間の摂取によって発ガン性や催奇形性等の慢性毒性を示すものである。例えばベトナム戦争時に使用された枯れ葉剤の中にもダイオキシンが含まれ、戦争終結後に多くの奇形児が生まれ、ガン患者が発生したことは周知である。
【0005】
さらに、上記ダイオキシンや、ポリカーボネート(PC)やポリスルフォン(PSF)を構成するビスフェノールA(bis−A)、塩化ビニルに可塑材として添加されるフタル酸エステルなどのフタル酸化合物等は、人体など生物の内分泌機能に影響を及ぼす環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)としての危険性が指摘されている。かかる環境ホルモンは生物の細胞の正常な成育を阻害し、人体や自然環境に多大な悪影響を及ぼすものであることが認識されつつあり、焼却時に発生するダイオキシンや溶出したビスフェノールA等による生態環境への影響が憂慮されている。
【0006】
従って、近年における生態環境への影響に対する認識の高まりに伴い、新たに提供されるプラスチックにおいては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)等の従来のプラスチックが有していた強度等の特性を維持しつつも、生態環境への高度な順応性を有し、地球環境の保全及び人体の健康維持を図れるものであることが切望されている。
【0007】
特に、義歯床のような人体に直接使用するプラスチックについて上記要求は格別強いが、従来の義歯床の素材としてはポリカーボネート樹脂やスルフォン樹脂等が用いられ、さらに強度を強化するためにポリ塩化ビニルを混合する場合もあった。ポリカーボネートやポリ塩化ビニル等は上述したような危険性を有するプラスチックであり、かような義歯床の現状を放置することによる人体への悪影響が強く危惧される。
【0008】
発明の開示
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、高い強度など良好な特性を発揮しつつ、且つ生態環境への高度な順応性を有し、地球環境の保全及び人体の健康維持を図ることが可能な繊維強化プラスチック、及び前記繊維強化プラスチックからなる義歯床を提供することを目的とする。本発明の繊維強化プラスチック及びその義歯床は、廃棄焼却時に発生するダイオキシンや環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)など、生態環境に対して有害な化学物質を生ずる危険性がなく、且つ強度等の特性で高機能を発揮するものである。
【0009】
本発明による繊維強化プラスチックは、生態環境に無害といえる程の生体適合性を有する合成樹脂を用い、例えば所定の機械的特性と所定の生体適合性を有するメタクリル酸メチル樹脂内、ポリエチレン内或いはポリプロピレン内に、所定割合のシルク繊維を分散添加して形成されていることを特徴とする。前記繊維強化プラスチックにおいて、前記シルク繊維を粉状徴砕片、原糸形状、撚糸形状の何れか、或いはこれらの組み合わせとすると好適である。さらに、前記繊維強化プラスチックにおいて、前重合段階のメタクリル酸メチル樹脂内に、6本撚り32デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率4.4%〜15%で方向を揃えて分散添加後、加熱重合し形成されると、また融解させたポリエチレンのペレット内に、2本撚り27デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率4.4%以上、或いは4本撚り29デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率4.4%以上、或いは6本撚り32デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率2.2%以上で方向を揃えて分散添加し再度融解させた後、加圧成形し形成されると、また融解させたポリプロピレンのペレット内に、2本撚り27デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率4.4%、或いは4本撚り29デニール撚糸のシルク繊維を混合重量比率2.2%で方向を揃えて分散添加後、加圧成形し形成されるとより好適である。
【0010】
さらに本発明による義歯床は、生態環境に無害といえる程の生体適合性を有する合成樹脂を用い、例えば所定の機械的特性と所定の生体適合性を有するメタクリル酸メチル樹脂内に、所定割合のシルク繊維を分散添加して形成されていることを特徴とする。この場合においても、前記シルク繊維を粉状微細片、原糸形状、撚糸形状の何れか、或いはこれらの組み合わせとすると好適である。さらに、前記義歯床において、前記シルク繊維を、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の何れかとし、混合重量比率2.2%〜15%とするとより好適である。なお上記繊維強化プラスチック及び義歯床の合成樹脂は組み合わせたものとしてもよい。
【0011】
上記繊維強化プラスチック及びその義歯床には、生態環境に無害な合成樹脂を母材として天然素材であるシルク繊維を添加するので、強度等の特性を向上するできると共に、人体や自然などの生態環境に対して高度な順応性を有しており安全である。
【0012】
例えば、メタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を母材とする場合は、有機塩素化合物と同等或いはそれ以上の強度を有し、且つ焼却時にダイオキシンを発生したり、環境ホルモンを漏出しないことから、人体や自然環境に悪影響を及ぼすことがない。特にメタクリル酸メチル樹脂を母材とする前記繊維強化プラスチックは、高い強度を有すると共に、繊維強化材が目立たず高い審美性を有し、義歯床など人体に直接使用する素材として最適である。本発明の繊維強化プラスチック及びその義歯床は詳細には下記のようなメリットを有するものである。
【0013】
(1)強度を向上することで新製品の創造や製品価値の向上が可能となる。通常のメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等で実現できなかった強度の製品を製作しうる。
(2)有害な物質を生成しない母材とシルクからなるため、無害で有為である。例えば塩化ビニル(PVC)等は水や湯によって含有している毒性を漏出するが、上記繊維強化プラスチックにはかかる毒性がない。乳幼児の肌に触れたり、その口に運んだりする製品に対して多岐に適用でき、利用者の安全を守ることができる。製品の例示として、歯ブラシ、食器、玩具、水で洗う器具等がある。
(3)補強材としてのシルク繊維は、本繊維強化プラスチックからなる製品の審美性を損なうことがない。混合した補強材が透明感を有し、製品の審美性に影響を及ぼさないために、グラスファイバーや炭素繊維を使用した製品より審美性に優れている。
(4)特に口内に入れる義歯床など人体に直接使用するものについては、高い強度を有し且つ毒性がない素材であることが必須条件であり、前記条件を充足し、加えてシルク繊維の粘膜疾患や皮膚疾患に対する薬理作用等によって人体に積極的な好影響を与える本繊維強化プラスチックは最適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1はシルクの繊維構造を示す説明図、
図2はセリシンの構造を示す断面図、
図3(a)は綿状の1.0デニール原糸であるシルクを示す部分斜視図、
図3(b)は2本撚りの27デニールであるシルクを示す部分斜視図、
図3(c)は4本撚りの29デニールであるシルクを示す部分斜視図、
図3(d)は6本撚りの32デニールであるシルクを示す部分斜視図、
図4はメタクリル酸メチル樹脂(或いはポリプロピレン)の試験片を示す説明図、
図5はポリエチレンの試験片を示す説明図、
図6は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図7は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図8は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図9は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図10は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図11は母材をメタクリル酸メチル樹脂とした場合の各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図12は母材をポリエチレンとした場合の粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図13は母材をポリエチレンとした場合の綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図14は母材をポリエチレンとした場合の2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図15は母材をポリエチレンとした場合の4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図16は母材をポリエチレンとした場合の6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図17は母材をポリエチレンとした場合の各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図18は母材をポリエチレンとした場合の最大荷重時試験片伸びと最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、
図19は母材をポリプロピレンとした場合の粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図20は母材をポリプロピレンとした場合の綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図21は母材をポリプロピレンとした場合の2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図22は母材をポリプロピレンとした場合の4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図23は母材をポリプロピレンとした場合の6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図24は母材をポリプロピレンとした場合の各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、
図25は抗破折試験の概要図、
図26は添加シルクが粉状徴砕片の場合における複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を示すグラフ、
図27は添加シルクが綿状原糸1.0デニールの場合における複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を示すグラフ、
図28は添加シルクが2本撚り27デニールの場合における複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を示すグラフ、
図29は添加シルクが4本撚り29デニールの場合における複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を示すグラフ、
図30は添加シルクが6本撚り32デニールの場合における複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を示すグラフ、
図31はシルク添加量が0.1g(混合重量比0.55%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を示すグラフ、
図32はシルク添加量が0.4g(混合重量比2.2%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を示すグラフ、
図33はシルク添加量が0.8g(混合重量比4.4%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の態様】
【0015】
本発明のよる繊維強化プラスチック及びその義歯床の実施形態を実施例に基づき説明するが、本発明は以下の実施形態・実施例によって限定されるものではない。特に繊維強化プラスチック及びその義歯床に用いる合成樹脂は、実施例に示したもの以外でも生態環境に対して無害な合成樹脂であれば適宜である。又繊維強化プラスチックに分散・添加するシルク繊維の形状・太さ・長さ・混合重量比も、実施例に示したもの以外でも本発明の要旨の範囲内であれば適宜であり、シルク繊維を含有するものを添加する場合も含む。
【0016】
前提として、本発明の繊維強化プラスチック及びその義歯床に混合添加するシルク繊維の特徴・特性について説明する。シルクは蚕が自ら生成したタンパク質を吐糸口から外部に放出して糸にしているものであり、シルク繊維の断面形状やタンパク質の化学構造は複雑であって、これが後述するシルクの特徴・特性を生じさせる要因となる。
【0017】
図1はシルクの繊維構造を示す説明図、図2はセリシンの構造を示す断面図である。シルクの繊維構造は、図1に示すように、2本のフィブロイン繊維1の回りをニカワ質のセリシン2が包み込んだ形状で1本の原糸3が構成されている。1本のフィブロイン繊維1には、フィブロイン分子1aからなる太さ0.2〜0.4μの螺旋状のミクロフィブリル1bが束状になって900〜1400本程度あり、ミクロフィブリル1bは繊維を構成する基礎的な構造単位であるフィブリル1cを構成している。
【0018】
フィブロイン繊維1を包んでいるセリシン2は、拡大すると図2に示すような層状の構造で、外側からセリシン2のI層2a、I層2aとII層2cとの混合層2b、II層2c、III層2d、IV層2e、V層2fの6層構造である。セリシン2の各層2a〜2fには、各層や6層全体に各々特徴があっていずれもシルク繊維にとって重要な存在である。例えば繭の中の生体を守るために外気の変化や外界の環境の変化に対応して内部を守る働きをしている。
【0019】
ここで、シルク繊維の他の天然繊維と比較した特性を示す。表1はシルクと他の天然繊維との特性比較表である。表1において、ヤング率の単位g/dのd:デニールは繊維の太さを表す単位で、450mの繊維の重さが50mgのものが1デニールである。また衝撃切断エネルギーの単位Erg/cm2でErg:エルグは1dynの力が物体に作用して、その作用点が力の方向に1cm移動するときになされる仕事である。
【0020】
【表1】
【0021】
表1に示すように木綿や羊毛に比し、シルク繊維はヤング率が高くて変形しにくく、衝撃剪断エネルギーが高くて丈夫であり、熱による分解点の温度も高くて耐熱性に優れる等の特徴を有し、シルク繊維は他の天然繊維に比して総合的な物性に優れている。また合成繊維は200℃前後で分解・溶融・燃焼して有毒ガスを発生するが、シルク繊維は300〜400℃で燃焼して有毒ガスを発生することがなく、強度、安全性、コスト面で優れている。さらに母材に添加する場合でも透過性が高くて白濁等を起こさずに、母材の色調や色彩等に変化を起こすことが少なく、母材内部に混在しても目立たないので審美性が高い繊維強化プラスチックを製造することができる。
【0022】
さらにシルク繊維は単に高い強度等の特性を有するだけでなく人体等の生態環境に積極的なプラス効果を有する。即ち、シルク繊維は古来から美しさ、肌触りの良さ等から重要視され有用性が認められてきたが、現代ではシルクの外套膜であるセリシンが、粘膜疾患及び皮膚疾患に有効であるなど、その薬理効果が科学的に実証され、人体に直接適用する素材としては最適な「環境素材」といえる。シルクのフィブロインも生体への適合性がよく生体材料として最適である。
【0023】
そして、後述する実験例で母材の合成樹脂に添加するシルク繊維の形状・太さは、粉状の微砕片(原糸1mm以下のもの)、綿状の1.0デニール原糸(太さ約10μ)、2本撚り27デニールの撚糸(太さ約270μ)、4本撚り29デニールの撚糸(太さ約290μ)、6本撚り32デニールの撚糸(太さ約320μ)の5種類である。前記シルクの長さは、2本撚り27デニールの撚糸、4本撚り29デニールの撚糸、6本撚り32デニールの撚糸はいずれも試験片の長軸方向の寸法を基本として10mm以上の適切な長さとした。前記シルクのうち粉状の微砕片以外の形状を図3に示す。図3(a)は綿状1.0デニール原糸であるシルク繊維を示す部分斜視図、同図(b)は2本撚り27デニールの撚糸であるシルク繊維を示す部分斜視図、同図(c)は4本撚り29デニールの撚糸であるシルク繊維を示す部分斜視図、同図(d)は6本撚り32デニールの撚糸であるシルク繊維を示す部分斜視図である。
【0024】
以下、母材となる合成樹脂に上記5種類のシルク繊維を各々混合添加した繊維強化プラスチック及びその義歯床について、その実施例を示す。
【0025】
[実施例1]
繊維強化プラスチックの試験片は、合成樹脂の母材としてメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を用い、粉状微砕片、綿状1.0デニール原糸、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の5種類のシルク繊維を、前記メタクリル酸メチル樹脂18.0gに各々分散して添加することで製作した。試験片はJIS K7203(硬質プラスチックの曲げ試験)に準じた標準寸法・形状に成形している。図4は製作されたメタクリル酸メチル樹脂の試験片を示す説明図であり、JIS K7203の試験片の規定寸法・形状である110mm×10mm×4mmの矩形に仕上げられている。
【0026】
メタクリル酸メチル樹脂へ分散・添加するシルク繊維の混合量・混合重量比率は表2に示す通りである。尚、綿状1.0デニール原糸は嵩張るため混合量・混合重量比率を他のシルクの混合量・混合重量比率に対して1/10にしてある。
【0027】
【表2】
【0028】
前記試験片の製作に当たっては、厚さ4mm、長さ110mm、幅21mmのアルミ板の原型を製作し、型枠となる金型の中に石膏を詰めて前記原型を埋没する。前記金型の型枠は後で二分割できるようになっており、分割線にはアルミ板(原型)の厚さの中心を位置させ上下2回に分け石膏で埋没する。また埋没する型枠の石膏には上下の石膏が分離するように予め硬化した下面の石膏には分離材(合成中性洗剤)を塗布しておく。石膏が硬化した後、上下の型枠及び石膏を分割して原型のアルミ板を取り出す。上記工程で試験片を製作する際の石膏型が完成する。完成した石膏型の内面には、試験片素材と石膏との分離材としてアルギン酸ナトリウム系分離材を塗布して十分に乾燥させておく。
【0029】
試験片の母材となるメタクリル酸メチル樹脂は重合体粉末と単量体液体とから製作する。前記重合体粉末の組成は微粉末状PMMA(ポリメチルメタクリレート・重合体)99.0〜99.3%、過酸化ベンゾイル(重合開始剤)0.2〜0.5%、着色剤0.5%であり、前記単量体液体の組成はMMA(モノメチルメタクリレート・単量体)84〜100%、EDMA(エチレングリコールジメタクリレート・架橋剤)0〜16%、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.005%である。本実施例の試験片製作には、(株)ハイデンタル・ジャパン社製のイソレジンHを使用した。
【0030】
前記重合体粉末180gに対して前記単量体液体77.4mlを混和すると室温23℃で約15分経過後に餅状の前重合段階に入る。十分な可塑性を有する前重合段階で上下に分割された石膏型に上下均等に填入し、この間に長方向に揃えた各種類のシルクを試験片の長軸方向(110mmの方向)に対して平行に所定重量比で分散して添加する。なお微砕片のシルク繊維は予め重合体粉末に混入しておく。その後、ポリエチレンフィルムを介して石膏型を合わせて5kgf/cm-3の圧力で試圧し、試圧後に石膏型を分割して余剰の填入物を除去する。その後、ポリエチレンフィルムを介さずに石膏型を合わせて試圧同様の圧力で結合させ乾式重合法で加熱重合を行い、100℃で約15分間加熱後に徐冷して試験片材料を取り出す。重合完了後の試験片材料は規定寸法に切断し試験片が完成する。
【0031】
そして、上記製作工程で得られた試験片に対し、JIS K7203(硬質プラスチックの曲げ試験)による抗破折試験を行った。試験機器にはインストロン型万能試験機・島津AG−5000A(滋賀県工業試験所所有)を使用し、試験設定条件は、試験形態SINGLE BEND(単方向曲げ試験)、試験圧子移動速度20.000mm/分、試験圧子20.000KGF、支点間距離80.000mmとした。前記設定条件で抗破折試験を実施して、各シルク混合条件別に各四片の試験片を試験してデータを取得した(内一本試験不能)。また比較対象として、シルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂とポリスルフォン樹脂の試験片からもデータを取得した。抗破折試験による最大荷重値(曲げ応力値)を各シルク混合条件別に表3〜表7に示す。表中の最大荷重値(曲げ応力値)の単位はMPaである。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0038】
上記表3〜表7の試験結果をグラフに示す。図6は粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図7は綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図8は2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図9は4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図10は6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図11は粉状徴砕片、2本撚り27デニール、4本撚り29デニール、6本撚り32デニールの各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフである。図6〜図11中で、1点鎖線はシルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂の曲げ応力を、破線はポリスルフォン樹脂の曲げ応力を示している。
【0039】
図6〜図11の試験結果から判断すると、シルク繊維を添加したメタクリル酸メチル樹脂はシルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂に比較して、いずれも曲げ応力が向上しており強度が高まっている。特に綿状原糸1.0デニール、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の4種類を混合した場合は、図11のシルク無添加メタクリル酸メチル樹脂(1点鎖線)より上の領域で示されるように確実且つ顕著に強度が増し、最大で59.3%もの曲げ応力による強度向上がみられ、シルク繊維を添加した繊維強化プラスチックの有効性が確認された。更にシルク繊維が原糸・撚糸で混合重量比率が2.2%以上であるときには、いずれも強度の向上がより顕著であった。
【0040】
添加シルク繊維の混合重量比率を0.55%、2.2%、4.4%と増加するに従い強度が向上し、ポリスルフォン樹脂に匹敵する曲げ応力による強度が得られるようになるが、図10に示すように6本撚り32デニール撚糸の混合重量比率を15%とした場合には4.4%のときより強度が低下している傾向がみられるので、メタクリル酸メチル樹脂を母材とした場合には6本撚り32デニール撚糸で4.4%と15%との間にシルクの最適な混合重量比率が存在すると考えられる。他の傾向として、添加シルク繊維の太さが太いほど曲げ応力による強度が向上し且つその試験データの安定性がみられ、又綿状原糸1.0デニールの場合には混合量が他の添加シルク繊維に比して1/10であるにも関わらず顕著な曲げ応力による強度の向上が確認された。
【0041】
[実施例2]
繊維強化プラスチックの試験片は、合成樹脂の母材にポリエチレン(PE)を用い、粉状微砕片、綿状1.0デニール原糸、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の5種類のシルク繊維を、前記ポリエチレン4.0gに各々混合して製作した。試験片はJIS K7113(プラスチックの引張試験方法)の2号型試験片に準じた標準寸法・形状に成形している。図5はポリエチレンの試験片を示す説明図であり、試験片はJIS K7113の規定寸法・形状で全長A115mm、両端の幅B25±1mm、平行部分の長さC33±2mm、平行部分の幅D6±0.4mm、小半径E14±1mm、大半径F25±2mm、標線間距離G25±1mm、つかみ具間距離H80±5mm、厚さI1〜3mmに仕上げられている。
【0042】
母材のポリエチレンヘ混合するシルク繊維の混合量・混合重量比率は表8に示す通りである。なお綿状1.0デニール原糸は嵩張るために混合量・混合重量比率を他のシルク繊維の混合重量比率に対して1/10にしてある。
【0043】
【表8】
【0044】
前記試験片の製作に当たっては、予め凹面と平滑面で2分割される金型を製作しておく。又試験片の母材であるポリエチレンには、ノバテックLLフイルムグレードUF240((株)日本ポリケム製造)を使用する。前記UF240の特性はMFR(流れ性の度合)2.1g/10分、密度0.920g/cm3(LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン))、融点(融解終了点)124℃、軟化温度100℃、添加助剤は無添加である。
【0045】
母材のペレット4.0gと、試験片の長方向の寸法・形状に揃えて所定の重量比率に調整したシルク繊維を用意し、母材のペレットの一部を金型の凹面に溶解時に均等となるように置いて140℃の電気炉中で溶解し、スパチュラ(へラ)で気泡の無いように圧迫する。そして、シルクを長方向に分散して添加する。シルクの添加は、図5の平行部分の長さC:33mmを基本として全長A:115mmの試験片全体に均等にシルクが分布するように添加する。その後、残りのペレットを被覆後に140℃の電気炉で再度融解し、スパチュラで溶解した母材をシルク繊維に馴染ませる。その後、金型を合わせて5kgf/cm3の圧力でプレスして加圧成形後に徐冷し、余剰部分の削除など規定寸法・形状への調整を行い、試験片が完成する。
【0046】
上記製作工程で得られた試験片に対し、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)による引張試験を行った。試験機器には万能抗張力試験機(5t)INSTRON5569(滋賀県東北部工業センター所有)を使用し、試験設定条件は、試験形態引っ張り、クロスヘッド速度20.000mm/分、フルスケール荷重レンジ50kg(試験片の一部が荷重レンジを超えたために変更した荷重レンジ:5000kg)、試験片の掴み具間距離80mmとした。前記設定条件で引張試験を実施して、各シルク混合条件別に最大荷重時の引張応力(MPa)と最大荷重時の試験片の伸び(mm)のデータ、及び比較対象としてシルク無添加のポリエチレン試験片による同様のデータを取得した。各シルク混合条件別に引張試験による最大荷重時の引張応力(MPa)のデータを表9〜表13に、これに対応した最大荷重時の試験片の伸び(mm)のデータを表14〜表18に示す。
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
【表11】
【0050】
【表12】
【0051】
【表13】
【0052】
【表14】
【0053】
【表15】
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】
【表18】
【0057】
上記表9〜表13の最大荷重時の引張応力(MPa)に関する試験結果をグラフに示す。図12は粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、図13は綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、図14は2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、図15は4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、図16は6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフ、図17は粉状徴砕片、2本撚り27デニール、4本撚り29デニール、6本撚り32デニールの各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時引張応力との関係を示すグラフである。図12〜図17中で破線、一点鎖線、二点鎖線はシルク無添加のポリエチレン樹脂の最大荷重時引張応力を示している。
【0058】
図12〜図17について検討すると、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の場合、シルク繊維の添加量を順次増加するにつれて繊維強化プラスチックの引張応力に関する強度が顕著に増加し、特に6本撚り32デニール撚糸の場合については引張応力に関する強度が極めて増加している。
【0059】
さらに、上記表9〜表13に示された最大荷重時の引張応力(MPa)と上記表14〜表18に示された最大荷重時の試験片伸び(mm)の対応関係のグラフを図18に示す。図18において、○は粉状微砕片シルク、◎は綿状1.0デニール原糸シルク、□は2本撚り27デニール撚糸シルク、△は4本撚り29デニール撚糸シルク、■は6本撚り32デニール撚糸シルク、◇はシルク無添加のポリエチレンの試験結果をそれぞれ示している。
【0060】
図18について検討すると、シルク無添加ポリエチレンは最大荷重時の引張応力(MPa)が負荷されたときに試験片の伸び(変位)が約300mm以上となっているが、シルク添加ポリエチレンの場合には最大荷重時の引張応力が負荷されたときに試験片の伸びが10mm以下の範囲に移行している。この傾向は2本撚り27デニール撚糸の2.2%以上、4本撚り29デニール撚糸の2.2%以上、6本撚り32デニール撚糸の0.5%以上からみられ、2本撚り27デニール撚糸の4.4%以上、4本撚り29デニール撚糸の4.4%以上、6本撚り32デニール撚糸の2.2%以上では引張応力に関する強度が飛躍的に向上すると共に、最大荷重時の試験片伸びも11mm以下に抑えられている。故に、シルク繊維の添加が繊維強化プラスチックの強度向上に有効であることが認められると共に、特にシルク繊維の太さや量の増加に伴って繊維強化プラスチックの強度が向上していることがわかる。
【0061】
[実施例3]
繊維強化プラスチックの試験片は、合成樹脂の母材にポリプロピレン(PP)を用い、粉状微砕片、綿状1.0デニール原糸、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の5種類のシルク繊維を、前記ポリプロピレン4.1gに各々混合して製作した。試験片はJIS K7203(プラスチックの曲げ試験方法)に準じた標準寸法・形状に作成した。図5はポリプロピレンの試験片を示す説明図であり、試験片はJIS K7203の規定寸法・形状で110mm×10mm×4mmの矩形に仕上げられている。
【0062】
母材のポリプロピレンヘ混合するシルク繊維の混合量・混合重量比率は表19に示す通りである。なお綿状1.0デニール原糸は嵩張るために混合量・混合重量比率を他のシルク繊維の混合重量比率に対して1/10にしてある。
【0063】
【表19】
【0064】
前記試験片の製作に当たっては、予め凹面より構成される2分割できる金型を製作しておく。試験片の母材であるポリプロピレンには、ノバテックPP射出成形グレードMA03((株)日本ポリケム製造)を使用する。前記MA03の特性は、MFR(流れ性の度合)25g/10分、密度0.910〜0.920g/cm3、融点(融解終了点)163℃である。
【0065】
母材のペレット4.1gと、試験片の長方向の寸法・形状に揃えて所定の重量比率に調整したシルクを用意し、母材のペレットを金型の凹面に溶解時に均等になるように置いて165℃の電気炉中で溶解し、スパチュラ(へラ)で気泡の無いように圧迫する。その後、シルクを試験片の長軸方向(110mmの方向)に対して平行に均等になるように分散して添加し、余剰のシルクを試験片より切除し、スパチュラを用いて溶解した母材をシルク繊維に馴染ませる。その後、金型を合わせて5kgf/cm3の圧力でプレスして加圧成形後に徐冷し、取り出し余剰部分の削除など規定寸法・形状への調整を行って試験片が完成する。
【0066】
上記製作工程で得られた試験片に対し、JIS K7203(硬質プラスチックの曲げ試験方法)による抗破折試験を行った。試験機器にはインストロン型万能試験機ORIENTEC RTC−1350A(滋賀県工業試験所所有)を使用し、試験設定条件は、試験形態SINGLE BEND(単方向曲げ試験)、試験圧子移動速度20.000mm/分、試験圧子20.000KGF、支点間距離80.000mmとした。前記設定条件で抗破折試験を実施して、各シルク混合条件別に各四片の試験片を試験してデータを取得した。なお比較対象として、シルク無添加のポリプロピレン試験片からもデータを取得した。抗破折試験による最大荷重値(曲げ応力値)を各シルク混合条件別に表20〜表24に示す。表中の最大荷重値(曲げ応力値)の単位はMPaである。
【0067】
【表20】
【0068】
【表21】
【0069】
【表22】
【0070】
【表23】
【0071】
【表24】
【0072】
上記表20〜表24の最大荷重時の曲げ応力(MPa)に関する試験結果をグラフに示す。図19は粉状微砕片シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図20は綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図21は2本撚り27デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図22は4本撚り29デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図23は6本撚り32デニールシルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフ、図24は粉状微砕片、2本撚り27デニール、4本撚り29デニール、6本撚り32デニールの各添加シルクの混合重量比率と最大荷重時曲げ応力との関係を示すグラフである。図19〜図24中で破線、一点鎖線、二点鎖線、点線はシルク無添加のポリプロピレンの最大荷重時曲げ応力を示している。
【0073】
図24について検討すると、ポリプロピレンにシルク繊維を添加した本実施例においても繊維強化プラスチックの曲げ応力に関する強度の向上が認められた。特に2本撚り27デニール撚糸4.4%と4本撚り29デニール撚糸2.2%で強度の向上が顕著であった。ポリプロピレンを母材として使用した場合、シルク繊維添加の強度向上に関する有効性は、緩やかな二次曲線を伴った形で現れている。
【0074】
[実施例4]
本実施例では繊維強化プラスチックの強度向上を多角的に検証するため、多角的な試験片の強度試験を行った。母材には人体や自然環境に悪影響を与えない代表的なプラスチックであるメタクリル酸メチル樹脂を使用し、これにシルク繊維を分散・添加して繊維強化プラスチックの試験片とする。前記試験片は、上記実施例と同様に繊維強化プラスチックの強度に対するシルクの混合状態の影響を考慮し、実験的にシルクの太さ、長さ、形状等を変えつつシルクの混合量(或いは重量比)を変化させて成形した。
【0075】
具体的には母材であるメタクリル酸メチル樹脂18.0gに、試験片に適合する寸法を有する5種類の形状のシルク繊維を分散・添加して試験片を製作した。添加するシルク繊維の形状は、粉状微砕片(原糸で1mm以下のもの)、綿状1.0デニール原糸、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸とし、母材に対して均等に混合して加圧を施した。シルク混合量(混合重量比)は表25に示す通りである。なお比較対象として、ポリスルフォン樹脂とシルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂との比較試験片を製作し、前記比較試験片にも同様の実験を試みた。
【0076】
【表25】
【0077】
試験片の強度試験は、JIS K7203(硬質プラスチックの曲げ試験方法)の工業規格に基づく抗破折試験で実施した。前記曲げ試験を実施するため、試験片は上記の如く母材にシルクを均一に分散・混合して冷却が完了したもので、これを前記曲げ試験方法に規定された標準寸法(110mm×10mm×4mm)に切削加工したものとし、各シルクの混合重量比別に製作した。試験設備は、滋賀県工業試験場所有設備であるインストロン型万能試験機(島津製作所製オートグラフAG−5000A)を用い、前記試験機の設定条件は、試験形態(TEST MODE)はSINGLEBEND(単方向曲げ試験)、試験圧子移動速度(TEST SPEED)は20.000mm/分、試験圧子荷重(F/S LOAD)は20.000KGF(196.133N)とした。図25に抗破折試験の概要図を示す。
【0078】
前記抗破折試験を実施することにより、以下の強度に関するデータを取得した。このデータに基づいた応力−ひずみ関係等から、繊維強化プラスチックの材料特性を判断する。
(a)最大値(MAX)。材料である試験片が、応力が増加しないで伸びが急激に増加しはじめる降伏点以前における、最大の荷重が負荷されたときの各値である。
(b)破析値(BREAK)。試験片の応力が増加しないで伸びが急激に増加しはじめる降伏点以降における、荷重が負荷され試験片が折れ曲がったときの各値である。
(c)最大限界値(LOAD KGF)。試験片の応力がピークになったときの荷重値である。ここでは曲げ荷重を加えているので、試験片の曲げ強さの荷重である。尚、単位はN:ニュートンに換算して示した(1kgf=9.80665N)。
(d)曲げ値(ELONG MM)。圧子が移動した距離で、単位はmmである。
(e)曲げ応力(STRESS KGF/MM2)。単位はMPaに換算して示した(1MPa=9.80665N)。
(f)伸び値(STRAIN%)。試験片に荷重を加わえて応力が生じたときに、試験片の材料を構成している分子と分子は移動して試験片は変形する。伸び値はこの変形量(もとの試験片の平面と変形した平面とのなす曲がり)の割合である。
【0079】
以下には、混合添加するシルクの形状と添加量を変化させて試験片の抗破折試験を行った実験例を示す。試験片の母材はメタクリル酸メチル樹脂である。
【0080】
(実験No.1)母材量18.0gに粉状微砕片のシルク0.1g(0.55%)を添加した場合の試験結果を表26に示す。
【0081】
【表26】
【0082】
(実験No.2)母材量18.0gに粉状微砕片のシルク0.4g(2.2%)を添加した場合の試験結果を表27に示す。
【0083】
【表27】
【0084】
(実験No.3)母材量18.0gに粉状微砕片のシルク0.8g(4.4%)を添加した場合の試験結果を表28に示す。
【0085】
【表28】
【0086】
(実験No.4)母材量18.0gに1.0デニール綿状原糸であるシルク0.01g(0.055%)を添加した場合の試験結果を表29に示す。
【0087】
【表29】
【0088】
(実験No.5)母材量18.0gに1.0デニール綿状原糸であるシルク0.04g(0.22%)を添加した場合の試験結果を表30に示す。
【0089】
【表30】
【0090】
(実験No.6)母材量18.0gに1.0デニール綿状原糸であるシルク0.08g(0.44%)を添加した場合の試験結果を表31に示す。
【0091】
【表31】
【0092】
(実験No.7)母材量18.0gに、27デニール(2本撚り)のシルク0.1g(0.55%)を添加した場合の試験結果を表32に示す。
【0093】
【表32】
【0094】
(実験No.8)母材量18.0gに、27デニール(2本撚り)のシルク0.4g(2.2%)を添加した場合の試験結果を表33に示す。
【0095】
【表33】
【0096】
(実験No.9)母材量18.0gに、27デニール(2本撚り)のシルク0.8g(4.4%)を添加した場合の試験結果を表34に示す。
【0097】
【表34】
【0098】
(実験No.10)母材量18.0gに、29デニール(4本撚り)のシルク0.1g(0.55%)を添加した場合の試験結果を表35に示す。
【0099】
【表35】
【0100】
(実験No.11)母材量18.0gに、29デニール(4本撚り)のシルク0.4g(2.2%)を添加した場合の試験結果を表36に示す。
【0101】
【表36】
【0102】
(実験No.12)母材量18.0gに、29デニール(4本撚り)のシルク0.8g(4.4%)を添加した場合の試験結果を表37に示す。
【0103】
【表37】
【0104】
(実験No.13)母材量18.0gに、32デニール(6本撚り)のシルク0.1g(0.55%)を添加した場合の試験結果を表38に示す。
【0105】
【表38】
【0106】
(実験No.14)母材量18.0gに、32デニール(6本撚り)のシルク0.4g(2.2%)を添加した場合の試験結果を表39に示す。
【0107】
【表39】
【0108】
(実験No.15)母材量18.0gに、32デニール(6本撚り)のシルク0.8g(4.4%)を添加した場合の試験結果を表40に示す。
【0109】
【表40】
【0110】
(実験No.16)母材量18.0gに、32デニール(6本撚り)のシルク2.7g(15%)を添加した場合の試験結果を表41に示す。
【0111】
【表41】
【0112】
(実験No.17)比較例として、規定寸法を有するポリスルフォン樹脂の試験片で行った試験結果を表42に示す。
【0113】
【表42】
【0114】
(実験No.18)比較例として、規定寸法を有するメタクリル酸メチル樹脂の試験片で行った試験結果を表43に示す。
【0115】
【表43】
【0116】
次に、上記実験結果に基づき、混合添加したシルク形状別の表及びグラフを表44〜表48及び図26〜図30に示す。表44〜表48及び図26〜図30の試験結果のデータは、最大限界値(単位:N)、曲げ値(単位:mm)、曲げ応力(単位:MPa)、伸び値(単位:%)の各値として最大値(MAX)を採用している。比較のため、比較試験片であるポリスルフォン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂(シルク無添加)の試験結果についても前記表及びグラフに示した。
【0117】
(i)添加シルクが粉状微砕片の場合における、複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を表44及び図26(a)、同図(b)に示す。
【0118】
【表44】
【0119】
(ii)添加シルクが綿状原糸1.0デニールの場合における、複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を表45及び図27(a)、同図(b)に示す。
【0120】
【表45】
【0121】
(iii)添加シルクが2本撚り27デニールの場合における、複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を表46及び図28(a)、同図(b)に示す。
【0122】
【表46】
【0123】
(iv)添加シルクが4本撚り29デニールの場合における、複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を表47及び図29(a)、同図(b)に示す。
【0124】
【表47】
【0125】
(v)添加シルクが6本撚り32デニールの場合における、複合プラスチックのシルク添加量に応じた分析結果を表48及び図30(a)、同図(b)に示す。
【0126】
【表48】
【0127】
また、上記実験結果に基づき、分散・添加したシルク繊維の混合重量比(添加量)別の表及びグラフを表49〜表51及び図31〜図33に示す。表49〜表51及び図31〜図33の試験結果のデータは、最大限界値(単位:N)、曲げ値(単位:mm)、曲げ応力(単位:MPa)、伸び値(単位:%)の各値として最大値(MAX)を採用している。比較のため、比較試験片であるポリスルフォン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂(シルク無添加)の試験結果についても前記表及びグラフに示した。なお便宜上、綿状原糸1.0デニールシルクの混合重量比0.055%、0.22%、0.44%はそれぞれ混合重量比0.55%、2.2%、4.4%の表及びグラフに含めて表示し、又6本撚り32デニールシルクの混合重量比15%(添加量2.7g)は全ての表及びグラフに表示した。
【0128】
(i)シルク添加量が0.1g(混合重量比0.55%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を表49及び図31(a)、同図(b)に示す。なお1.0デニール綿状原糸の添加量は0.01g(混合重量比0.055%)である。
【0129】
【表49】
【0130】
(ii)シルク添加量が0.4g(混合重量比2.2%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を表50及び図32(a)、同図(b)に示す。なお1.0デニール綿状原糸の添加量は0.04g(混合重量比0.22%)である。
【0131】
【表50】
【0132】
(iii)シルク添加量が0.8g(混合重量比4.4%)の場合におけるシルク形状に応じた分析結果を表51及び図33(a)、同図(b)に示す。なお1.0デニール綿状原糸の添加量は0.08g(混合重量比0.44%)である。
【0133】
【表51】
【0134】
以上のシルク繊維の形状別及びシルク繊維の混合重量比(添加量)別の分析結果から、下記の結論が導かれる。
【0135】
まず、シルク繊維形状別の表44〜表48及び図26〜図30について検討すると、いずれのシルク繊維形状の場合においても、シルク添加メタクリル酸メチル樹脂の棒グラフの先端は、シルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂の棒グラフの先端より常に上方に位置している。従って、シルクの添加が明らかに母材の強度向上に寄与し、繊維強化プラスチックが高い強度を有することがわかる。
【0136】
又、シルク無添加のメタクリル酸メチル樹脂やポリスルフォン樹脂は、シルク繊維を添加したメタクリル酸メチル樹脂と比較して、最大荷重時の最大限界値/N、曲げ応力/MMPaに対する曲げ値/mmや伸び値/%が低い。一方、シルク繊維を添加した繊維強化プラスチックは、最大荷重時の最大限界値/N、曲げ応力/MPaの増加に対して、曲げ値/mmや伸び値/%も比例して増加している。このことから、シルク添加により応力ー歪み関係、換言すれば母材の機械的性質が向上し、シルク無添加の場合よりも強度が増して粘りを有する。
【0137】
また、上記グラフから、シルク繊維添加量の増加に対して強度も比例して増加しているといえない場合がある。表44〜表48から抜粋したシルク添加量に応じた強度順位をシルク繊維形状別に表52に示す。表52の強度順位は曲げ応力/MPaのデータで判定している。
【0138】
【表52】
【0139】
表52において、シルク繊維混合重量比4.4%は27、29、32デニール撚糸の各シルク形状において比較的高い強度を発揮したが、強度順位1位ではなかった。同様に、32デニール撚糸でシルク混合重量比15%は高い強度を発揮したものの、強度順位1位ではなかった。又締状原糸はシルク混合重量比0.22%で、29、32デニール撚糸はシルク混合重量比2.2%で強度順位が1位になっている。実施例1(母材をメタクリル酸メチル樹脂とする場合)等の結果を考慮すると、繊維強化プラスチックの強度は母材に添加するシルク繊維形状にも依存すると判断できることから、繊維強化プラスチックに混合添加すべきシルク繊維には、強度の観点から最適な形状や前記形状に応じた最適な混合重量比の範囲等があると思料される。
【0140】
ここで、上記実験結果に対し理論的考察を試みる。
【0141】
試験結果から判断すると、母材であるメタクリル酸メチル樹脂等ヘシルク繊維を添加して母材の強度向上を図る場合、単純にシルク繊維の混合重量比に依存して強度が向上するというよりも、添加するシルク繊維の母材に対する体積比、シルク繊維の母材粒子との比率、シルク繊維自体の分子レベルでの断面積比などが影響して強度が向上するように思われる。そして、シルクは繊維の束の表面を取り巻くセリシンが母材である高分子プラスチック材料と親和性があるので、混合したシルクが架橋作用を発揮して母材の強度を向上し、或いはシルクの繊維構造の束自体による強化作用で母材の強度を向上すると考えられる。従って、高分子の状態であるメタクリル酸メチル樹脂等を鎖状にして結合するための形状などが添加するシルク繊維にとって重要になると思われ、かかる架橋作用や強化作用が相乗して働くことによって、強度が飛躍的に増加した繊維強化プラスチックになると考えられる。
【0142】
また、上述のように強度向上等の観点から、より望ましい添加シルク繊維の形状やその混合重量比等が存在すると考えられる。例えば、上記実施例1〜4で判断すると、添加シルク繊維の形状・太さは2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸等が望ましく、その混合重量比も2.2%〜15%程度が望ましい。これは、シルクのフィブロイン繊維自体が高分子と馴染みやすい構造で適度な強度を有すること、フィブロイン繊維束はねじれ合って細く不規則な断面を有しており、母材分子と交わり易く母材の強度を向上することの他、精錬でセリシンが除去された隙間には母材分子を取り込みやすくなって、より母材の強度を向上すること等の理由による。なお前記理由から、シルク繊維の精錬度を調整することで、高い強度が要求される場合には高い精錬を行ったシルク繊維を使用して強度を向上し、義歯床などセリシン等による薬理効果が期待される場合には比較的低い精錬度のシルク繊維を使用して薬理効果を発揮させる等が可能であり、本発明の繊維強化プラスチックには用途の多様性がある。
【0143】
次に、上記繊維強化プラスチックの義歯床としての適格性について説明する。
【0144】
表53には義歯床に使用可能な代表的素材であるメタクリル酸メチル樹脂とポリスルフォンの特性を示す。
【0145】
【表53】
【0146】
メタクリル酸メチル樹脂とポリスルフォン樹脂は上記のような長所、短所を備えているが、いずれも理想的な義歯床材料とはいえない。そこで、毒性がないメタクリル酸メチル樹脂にシルク繊維を混合添加した繊維強化プラスチックによって義歯床を製作する。前記義歯床の製造方法は、繊維強化プラスチックを使用して製造する以外は、通常の義歯床材料であるメタクリル酸メチル樹脂等によって義歯床を製造する技法とほぼ同様である。
【0147】
上記のように本繊維強化プラスチックを素材として製造した義歯床の特性について検討すると、(ア)前記繊維強化プラスチックによる義歯床はメタクリル酸メチル樹脂の義歯床よりも強度が高い、(イ)義歯床材料に使用する母材プラスチックの量を削減できる、(ウ)環境ホルモンやダイオキシンを発生する危険性がないので人体等に対し安全である、(エ)添加シルク繊維による保水作用やセリシンによる薬効作用など積極的な人体等への効果が期待できる、セリシンには血中のコレステロール値を良性にコントロールする能力もある、(オ)繊維強化プラスチックの製造に伴う環境面へのプラス作用がある、(カ)シルク繊維強化プラスチックやその義歯床は製造上容易且つ低コストであり、個々人に対するオーダーメイド等にも容易に対処しうる、等の特性があり、通常の義歯床には無い高い強度や人体への好影響等の有効性を有する。
【0148】
尚、ガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックなど他の繊維強化プラスチックを義歯床等の人体に直接使用する製品に用いる場合には、シルク繊維強化プラスチックと異なり、以下のような問題がある。例えば、ガラス繊維を混合した強化プラスチックを義歯床として使用することを想定した場合、義歯床は人体に装着されるものであるから、人体に対して大変危険且つ有害で安全基準をクリアできない。即ち、プラスチックとガラス繊維の摩耗率を比較するとプラスチックの摩耗率の方が大きいため、露出した繊維が口腔内に迷入する恐れがある。また、炭素繊維強化プラスチックを義歯床として使用することを想定した場合、義歯及び義歯床は個々人のオーダーメイドであるが、炭素繊維強化プラスチックの義歯床で前記オーダーメイドに対処するのは操作上困難であり、又実際に炭素繊維強化プラスチックで上記のように義歯床を製作すると、機械設備等に対する膨大な費用がかかる。これに対し、本発明によるシルク繊維強化プラスチック及びその義歯床等には上記のようなデメリットは全くなく、例えば義歯床からシルク繊維が露出してもむしろ人体等に対し積極的な好影響を与え、又容易な操作性を有するものである。
【0149】
本発明による繊維強化プラスチック及びその義歯床は上記構成であるから、高い強度など良好な特性を発揮すると共に、人体や自然など生態環境に対する高度な順応性を有し、地球環境の保全及び人体の健康維持を図ることができるという効果がある。即ち、前記繊維強化プラスチック及びその義歯床は、廃棄焼却時に発生するダイオキシンや環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)など、生態環境に対して有害な化学物質を生ずる危険性がなく、且つ強度等の特性で高機能を発揮することができる。
【0150】
また、上記繊維強化プラスチック及びその義歯床は合成樹脂から成形されるものであるから、加工が容易で高度な操作性及び利便性を有すると共に、製造コストが安価で経済性に優れているという効果がある。
【0151】
さらに上記繊維強化プラスチック及びその義歯床は、生態環境への悪影響がないばかりでなく、人体などへ積極的に好影響を与えるという効果がある。即ち、シルクの繊維構造を形成しているセリシンは粘膜疾患や皮膚疾患等に有効な薬理作用を発揮するものであり、例えば直接人体などに使用する義歯床等では、前記疾患を有する患者をはじめとする義歯床使用者の健康を維持・増進することができ、且つ医療費の抑制・削減を実現することができる。
【0152】
上記繊維強化プラスチックは生態環境に配慮した工業製品等に幅広く利用可能なものであり、前記繊維強化プラスチックを生産・普及することによって環境産業といえるような産業を勃興しうる。即ち、前記繊維強化プラスチックに必要なシルク繊維が生産されるため、繭、養蚕が不可欠となり、広範囲な桑畑が必要となる。そのため、休耕田が利用されて農業が盛んになり、農村地域の雇用が拡大される。さらに桑を植樹することにより緑が増加し、大気中のCO2が削減でき、落葉樹として土質の改善に寄与し、周辺水系の水質も改善できるという効果も期待できる。
Claims (2)
- 所定の機械的特性と所定の生体適合性を有するメタクリル酸メチル樹脂内に、所定割合のシルク繊維を分散添加して形成されていることを特徴とする義歯床。
- 所定の機械的特性と所定の生体適合性を有するメタクリル酸メチル樹脂内に、2本撚り27デニール撚糸、4本撚り29デニール撚糸、6本撚り32デニール撚糸の何れかのシルク繊維を混合重量比率2.2%〜15%で分散添加して形成されている繊維プラスチックで構成されていることを特徴とする義歯床。
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