以下、本発明に係る車両の運動状態推定装置を含んだ運動制御装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に運動制御装置10を搭載した車両の概略構成を示している。この車両は、駆動輪である前2輪(左前輪FL及び右前輪FR)と、駆動輪である後2輪(左後輪RL及び右後輪RR)を備えた4輪駆動(4WD)方式の4輪車両である。
この運動制御装置10は、各車輪にブレーキ液圧による制動力を発生させるためのブレーキ液圧制御装置30を含んで構成されている。
ブレーキ液圧制御装置30は、その概略構成を表す図2に示すように、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生部32と、各車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれ配置されたホイールシリンダWfr,Wfl,Wrr,Wrlに供給するブレーキ液圧をそれぞれ調整可能なFRブレーキ液圧調整部33,FLブレーキ液圧調整部34,RRブレーキ液圧調整部35,RLブレーキ液圧調整部36と、還流ブレーキ液供給部37とを含んで構成されている。
ブレーキ液圧発生部32は、ブレーキペダルBPの作動により応動するバキュームブースタVBと、同バキュームブースタVBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。バキュームブースタVBは、図示しないエンジンの吸気管内の空気圧力(負圧)を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合で助勢し同助勢された操作力をマスタシリンダMCに伝達するようになっている。
マスタシリンダMCは、第1ポート、及び第2ポートからなる2系統の出力ポートを有していて、リザーバRSからのブレーキ液の供給を受けて、前記助勢された操作力に応じた第1マスタシリンダ液圧を第1ポートから発生するようになっているとともに、同第1マスタシリンダ液圧と略同一の液圧である前記助勢された操作力に応じた第2マスタシリンダ液圧を第2ポートから発生するようになっている。これらマスタシリンダMC及びバキュームブースタVBの構成及び作動は周知であるので、ここではそれらの詳細な説明を省略する。このようにして、マスタシリンダMC及びバキュームブースタVBは、ブレーキペダルBPの操作力に応じた第1マスタシリンダ液圧及び第2マスタシリンダ液圧をそれぞれ発生するようになっている。
マスタシリンダMCの第1ポートは、FRブレーキ液圧調整部33の上流側及びFLブレーキ液圧調整部34の上流側の各々と接続されている。同様に、マスタシリンダMCの第2ポートは、RRブレーキ液圧調整部35の上流側及びRLブレーキ液圧調整部36の上流側の各々と接続されている。これにより、FRブレーキ液圧調整部33の上流部及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部の各々には、第1マスタシリンダ液圧が供給されるとともに、RRブレーキ液圧調整部35の上流部及びRLブレーキ液圧調整部36の上流部の各々には、第2マスタシリンダ液圧が供給されるようになっている。
FRブレーキ液圧調整部33は、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁PUfrと、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁PDfrとから構成されており、増圧弁PUfrは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときFRブレーキ液圧調整部33の上流部とホイールシリンダWfrとを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときFRブレーキ液圧調整部33の上流部とホイールシリンダWfrとの連通を遮断するようになっている。減圧弁PDfrは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWfrとリザーバRSfとの連通を遮断するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWfrとリザーバRSfとを連通するようになっている。
これにより、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧は、増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrが共に第1の位置にあるときホイールシリンダWfr内にFRブレーキ液圧調整部33の上流部の液圧が供給されることにより増圧され、増圧弁PUfrが第2の位置にあり且つ減圧弁PDfrが第1の位置にあるときFRブレーキ液圧調整部33の上流部の液圧に拘わらずその時点の液圧に保持されるとともに、増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrが共に第2の位置にあるときホイールシリンダWfr内のブレーキ液がリザーバRSfに還流されることにより減圧されるようになっている。
また、増圧弁PUfrにはブレーキ液のホイールシリンダWfr側からFRブレーキ液圧調整部33の上流部への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV1が並列に配設されており、これにより、操作されているブレーキペダルBPが開放されたときホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧が迅速に減圧されるようになっている。
同様に、FLブレーキ液圧調整部34,RRブレーキ液圧調整部35及びRLブレーキ液圧調整部36は、それぞれ、増圧弁PUfl及び減圧弁PDfl,増圧弁PUrr及び減圧弁PDrr,増圧弁PUrl及び減圧弁PDrlから構成されており、これらの各増圧弁及び各減圧弁の位置が制御されることにより、ホイールシリンダWfl,ホイールシリンダWrr及びホイールシリンダWrl内のブレーキ液圧をそれぞれ増圧、保持、減圧できるようになっている。また、増圧弁PUfl,PUrr及びPUrlの各々にも、上記チェック弁CV1と同様の機能を達成し得るチェック弁CV2,CV3及びCV4がそれぞれ並列に配設されている。
還流ブレーキ液供給部37は、直流モータMTと、同モータMTにより同時に駆動される2つの液圧ポンプHPf,HPrを含んでいる。液圧ポンプHPfは、減圧弁PDfr,PDflから還流されてきたリザーバRSf内のブレーキ液を汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液をチェック弁CV5,CV6を介してFRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部に供給するようになっている。
同様に、液圧ポンプHPrは、減圧弁PDrr,PDrlから還流されてきたリザーバRSr内のブレーキ液を汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液をチェック弁CV7,CV8を介してRRブレーキ液圧調整部35及びRLブレーキ液圧調整部36の上流部に供給するようになっている。なお、液圧ポンプHPf,HPrの吐出圧の脈動を低減するため、チェック弁CV5及びCV6の間の液圧回路、及びチェック弁CV7及びCV8の間の液圧回路には、それぞれ、ダンパDMf,DMrが配設されている。
以上、説明した構成により、ブレーキ液圧制御装置30は、全ての電磁弁が第1の位置にあるときブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を各ホイールシリンダに供給できるようになっている。また、この状態において、例えば、増圧弁PUrr及び減圧弁PDrrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWrr内のブレーキ液圧のみを所定量だけ減圧することができるようになっている。即ち、ブレーキ液圧制御装置30は、各車輪のホイールシリンダ内のブレーキ液圧をそれぞれ独立してブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧から減圧できるようになっている。
再び、図1を参照すると、運動制御装置10は、対応する車輪の回転速度に応じた周波数を有する信号を出力する磁気ピックアップ式(コイル式)の車輪速度センサ41fr,41fl,41rr,41rlと、ブレーキペダルBPの操作の有無に応じてオン状態又はオフ状態になるSTP信号を出力するブレーキスイッチ42と、対応するタイヤの空気圧を直接検出し、タイヤ空気圧Pfr,Pfl,Prr,Prlを示す信号を出力する圧力センサからなるタイヤ空気圧センサ43fr,43fl,43rr,43rl(タイヤ空気圧取得手段)を備えている。なお、車輪速度センサは、半導体式のセンサ(特に、磁気抵抗素子(MR素子)を利用したセンサ)であってもよい。
電気式制御装置50は、互いにバスで接続された、CPU51、CPU51が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM52、CPU51が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM53、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM54、及びADコンバータを含むインターフェース55等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース55は、前記センサ等41〜43と接続され、CPU51にセンサ等41〜43からの信号を供給するとともに、同CPU51の指示に応じてブレーキ液圧制御装置30の各電磁弁、及びモータMTに駆動信号を送出するようになっている。
(制動力配分制御の概要)
次に、上記のように構成された本発明の実施形態に係る運動状態推定装置を含んだ運動制御装置10(以下、「本装置」と云うこともある。)が実行する制動力配分制御(以下、「BFD制御」とも称呼する。)について説明する。
車両が直進状態から旋回状態に移行する際(以下、「旋回初期状態にある」とも称呼する。)、運転者によるブレーキ操作が行われていると、車体には、同ブレーキ操作による車両の減速度(前後加速度)に応じた慣性力が車体前方に向けて働くと同時に、旋回に伴って発生する横加速度に応じた慣性力(即ち、遠心力)が旋回方向外側に向けて働く。これにより、車両の後側の車輪が受ける荷重が上記車体前方に向けて働く慣性力の大きさに応じた分だけ減少することで同後側の車輪(タイヤ)が路面から受け得る最大摩擦力が減少する。
この結果、上記ブレーキ操作に基づく減速度(従って、慣性力)の大きさ、及び上記遠心力の大きさによっては、同遠心力の大きさが、車両の後側の車輪が路面から受け得る最大摩擦力における旋回方向内側方向の成分の大きさよりも大きくなる場合がある。この場合、車両の後側の車輪が旋回方向外側に向けて滑り出し、この結果、車両にスピン傾向が発生する。
係るスピン傾向の発生を未然に抑制するためには、旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントを強制的に車両に与えることが必要である。また、旋回方向と反対方向のヨーイングモーメント(スピン抑制ヨーイングモーメントM)を強制的に車両に与えるためには、車両の旋回方向を特定し、旋回方向内側の車輪に働く制動力(の総和)が旋回方向外側の車輪に働く制動力(の総和)よりも小さくなるように、車両左側の車輪に働く制動力(の総和)と同車両右側の車輪に働く制動力(の総和)との間に差を与えればよい。
ここで、車両の旋回方向は、タイヤ空気圧の変化に基づいて特定することができる。即ち、車両が旋回初期状態にあると、車体には、上述したように遠心力が旋回方向外側に向けて作用開始する。従って、旋回初期において、旋回方向外側の車輪のタイヤ空気圧が上記遠心力の大きさに応じて増加するとともに旋回方向内側の車輪のタイヤ空気圧が同遠心力の大きさに応じて減少する。
従って、車両左側の車輪のタイヤ空気圧と車両右側の車輪のタイヤ空気圧の何れか一方が増加していて他方が減少していることは、車両がタイヤ空気圧が減少している側へ旋回する旋回初期状態にあることを意味する。これにより、車両の旋回方向が特定され得る。
また、上記スピン傾向の程度は上記遠心力の大きさに応じて増大する。他方、上記遠心力が大きくなるほど、車両左側及び右側の車輪のタイヤ空気圧の各変化量(各変化勾配)が大きくなる。即ち、上記スピン傾向の程度は、車両左側及び右側の車輪のタイヤ空気圧の各変化量(各変化勾配)が大きくなるほど大きくなる。
以上のことから、本装置は、タイヤ空気圧センサ43**から得られるタイヤ空気圧P**を車輪毎に逐次(例えば、6msec毎に)監視するとともに、タイヤ空気圧変化量ΔP**(今回値から前回値を減じた値)を車輪毎に逐次算出する。なお、各種変数等の末尾に付された「**」は、同各種変数等が各車輪FR等のいずれに関するものであるかを示すために同各種変数等の末尾に付される「fl」,「fr」等の包括表記であって、例えば、タイヤ空気圧センサ43**は、右前輪タイヤ空気圧センサ43fr,
左前輪タイヤ空気圧センサ43fl, 右後輪タイヤ空気圧センサ43rr, 左後輪タイヤ空気圧センサ43rlを包括的に示している。
そして、本装置は、STP信号がON状態となっていて、且つ、車両左側の車輪のタイヤ空気圧変化量(本例では、ΔPflとΔPrlの平均値(平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemean))と、車両右側の車輪のタイヤ空気圧変化量(本例では、ΔPfrとΔPrrの平均値(平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimean))のうちの一方がBFD制御開始判定用基準値ΔPthbfd(正の一定値)よりも大きくて他方が値「−ΔPthbfd」よりも小さいとき、BFD制御を開始する。具体的には、本装置は、タイヤ空気圧変化量が値「−ΔPthbfd」よりも小さい側(即ち、旋回方向内側)の後輪のブレーキ液圧を保持するとともに、STP信号がON状態からOFF状態に変更されるまで同ブレーキ液圧の保持を継続する。
例えば、図3に示すように、車両が左側へ旋回する旋回初期状態にある場合、車両右側の車輪のタイヤ空気圧が増加するとともに車両左側の車輪のタイヤ空気圧が減少する。このとき、STP信号がON状態となっていて、「平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimean>ΔPthbfd」、及び「平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemean<−ΔPthbfd」が共に成立していると、本装置は、その後においてSTP信号がOFF状態になるまで左後輪RLのブレーキ液圧を保持する。
これにより、上記ブレーキ液圧の保持が開始された後において運転者のブレーキ操作によるブレーキ液圧が更に増大すると、左後輪RLに働く制動力が右後輪RRに働く制動力よりも小さくなり、図3に示すように後2輪に働く制動力の間に差が生じる。この結果、車両の重心Gのまわりに車両上方から見て時計まわりのスピン抑制ヨーイングモーメントMが発生してスピン傾向の発生が未然に抑制される。
以上のように、本装置は、「横加速度を表す値」としての平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimean、及び平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemeanに基づいて車両の旋回状態を推定し、係る推定結果に基づいてBFD制御を開始・実行する。以上が、本装置によるBFD制御の概要である。
(アンチスキッド制御の概要)
次に、本装置が実行するアンチスキッド制御(以下、「ABS制御」とも称呼する。)について説明する。本装置は、後述するように車両が走行している路面が氷上路を含む所定の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する低μ路面である(可能性がある)か、アスファルト路を含む同所定の摩擦係数以上の摩擦係数を有する通常路面であるか、を判定するとともに、同判定結果に応じて通常路面用のABS制御と、低μ路面用のABS制御の何れかを選択的に実行する。通常路面用ABS制御と低μ路面用ABS制御とは制御態様(即ち、制御の開始条件、及び、ブレーキ液圧の減圧・保持・増圧パターン)が異なる。
<通常路面用ABS制御の概要>
以下、先ず、通常路面用ABS制御について説明する。通常路面用ABS制御は、所望の減速度を維持することを主目的とする制御である。本装置は、ABS制御を実行するにあたり、車輪速度センサ41**の出力に基づいて車輪速度Vw**を車輪毎に逐次計算するとともに、同車輪速度Vw**の時間的変化率から車輪加速度DVw**を車輪毎に逐次計算する。
他方、本装置は、車両の推定車体速度Vsoを下記(1)式に従って逐次求める。下記(1)式において、関数maxは各引数のうちの最大値を採る関数である。また、値gradlimitは車両が減速する際に実際に達成し得る車体速度の単位時間あたりの最大減少量(車体速度の最大減少勾配)であり、本例では定数である。なお、本装置が車両が走行している路面の路面摩擦係数を逐次取得する手段を備えている場合、同取得された路面摩擦係数に応じて値gradlimitを変更するように構成してもよい。Δtは、CPU51による推定車体速度Vsoの演算周期である。
Vso=max(max(Vw**),Vso-gradlimit・Δt) ・・・(1)
上記(1)式から理解できるように、今回の推定車体速度Vsoは、今回の最大車輪速度max(Vw**)と、前回の推定車体速度Vsoから値gradlimitにΔtを乗じた値を減じた値とのうちの大きい方の値として求められる。
そして、本装置は、後述するように、車両が走行している路面が通常路面であるとの判定を行っている場合、下記(2)式、及び下記(3)式が成立したとき、車輪**について通常路面用ABS制御を開始する。即ち、下記(2)式、及び下記(3)式は、通常路面用のABS制御の開始条件(の一部)を表している。
Vso-Vw** > ΔVwrefnorm ・・・(2)
DVw** < DVwrefnorm ・・・(3)
上記(2)式において、「Vso-Vw**」は車輪**のスリップ量を表す。ΔVwrefnormは通常路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値(正の一定値)である。上記(3)式において、DVwrefnormは通常路面用のABS制御開始判定用車輪加速度基準値(負の一定値)である。
通常路面用ABS制御の開始条件が成立すると、本装置は、図4に示すように通常路面用ABS制御を直ちに開始・実行する。図4(a)は、通常路面用ABS制御(の一サイクル)が時刻t0にて開始されてから時刻t8にて終了されるまでの間における同ABS制御が実行される対象となる車輪(即ち、時刻t0にて上記通常路面用のABS制御の開始条件が成立した車輪**。以下、「制御対象車輪」と称呼する。)についての基本的なブレーキ液圧制御モード(増圧モード、保持モード、及び減圧モード)の変化を示したタイムチャートである。図4(b)は、上記ブレーキ液圧制御モードの変化に応じた制御対象車輪についてのブレーキ液圧の変化を示したタイムチャートである。
図4(a),(b)から理解できるように、本装置は、制御対象車輪についてのブレーキ液圧制御モードを、時刻t0にて増圧モード(ABS制御が実行されていない状態)から減圧モードへと切換えるとともに、同時点以降、所定の通常路面用減圧時間T1が経過する時刻t1までの間、減圧モードに維持した後、同時刻t1にて減圧モードから保持モードへと切換える。これにより、制御対象車輪についてのブレーキ液圧は、時刻t0以降時刻t1までの間、低下し続けるとともに、時刻t1以降、同時点での値に維持される。この結果、制御対象車輪の車輪加速度DVw**が増大することで、時刻t2にて同車輪加速度DVw**の値が負の値から正の値に変化したものと仮定する。
本装置は、時刻t2になると、制御対象車輪についてのブレーキ液圧制御モードを、同時点にて保持モードから増圧モードへと切換えるとともに、同時点以降、所定の通常路面用増圧時間T2が経過する時刻t3までの間、増圧モードに維持するとともに、時刻t3にて増圧モードから保持モードへと切換え、同時点以降、所定の通常路面用保持時間T3が経過する時刻t4までの間、保持モードに維持する。これにより、制御対象車輪についてのブレーキ液圧は、時刻t2以降時刻t3までの間、増大し続けるとともに、時刻t3以降時刻t4までの間、時刻t3での値に維持される。
本装置は、時刻t4以降も、時刻t4〜時刻t6、及び時刻t6〜時刻t8において、上述した時刻t2〜時刻t4と同様、制御対象車輪についてのブレーキ液圧制御モードを上記通常路面用増圧時間T2に渡って増圧モードに維持するとともにその後上記通常路面用保持時間T3に渡って保持モードに維持する処理を行い(即ち、時刻t2〜時刻t4までの処理を計3回繰り返し)、時刻t8にて、制御対象車輪についてのブレーキ液圧制御モードを保持モードから増圧モード(ABS制御が実行されていない状態)へと切換えることで通常路面用のABS制御(の一サイクル)を終了する。
上記通常路面用減圧時間T1、通常路面用増圧時間T2、及び通常路面用保持時間T3は、上記(2)式、及び上記(3)式に示した通常路面用ABS制御の開始条件が成立した時点における車輪**の車輪加速度DVw**の変化速度(時間微分値)DDVw**に応じて設定される。
なお、時刻t0以降における制御対象車輪の車輪加速度DVw**の増大速度が大きくて、上記時刻t2(即ち、制御対象車輪の車輪加速度DVw**の値が負の値から正の値に変化する時点)が上記時刻t1(即ち、時刻t0から上記通常路面用減圧時間T1が経過する時点)よりも前の時点となる場合、本装置は、制御対象車輪についてのブレーキ液圧制御モードを同時刻t2にて直ちに減圧モードから増圧モードに切換え、同時点以降、図4に示した時刻t2〜時刻t8までの処理を行う。
一方、時刻t0以降における制御対象車輪の車輪加速度DVw**の増大速度が小さくて(或いは、車輪加速度DVw**が増大せず)、時刻t1においても上記(2)式、及び上記(3)式に示した通常路面用のABS制御の開始条件がなお成立している場合、同時点を新たな時刻t0として設定し直し、同新たな時刻t0以降、再び、図4に示した時刻t0〜時刻t8までの処理を実行する。これにより、最初に通常路面用のABS制御の開始条件が成立した時点以降、減圧モードが上記通常路面用減圧時間T1の2倍の時間に渡って継続して実行されることになる。以上が、通常路面用ABS制御の概要である。
<低μ路面用ABS制御の概要>
次に、低μ路面用ABS制御について説明する。低μ路面用ABS制御は、車輪速度を回復させることを主目的とする制御である。図1に示した車両は4WD方式の車両であるから、総ての車輪が駆動系統を介して互いに連結されている。従って、低μ路面において過度のブレーキ操作が実行されると、総ての車輪(駆動輪)が略均一にスリップを開始・継続する傾向がある。即ち、総ての車輪速度Vw**が略同一の勾配をもって低下していく傾向がある。
よって、この場合、車輪速度差が発生し難くなって、各車輪のスリップ量「Vso-Vw**」が前記通常路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwrefnormを超えず(即ち、通常路面用ABS制御の開始条件が成立せず)、この結果、ABS制御が適切なタイミングで開始され難い。従って、この場合、ABS制御の開始条件を同制御が開始され易くなる方向に修正する必要がある。
また、低μ路面においては、ABS制御が開始されたとしても、タイヤが路面から受ける増速方向の回転モーメントが小さいことに起因して、一旦低下した車輪の車輪速度がブレーキ液圧の減圧制御に伴って車体速度相当まで回復するまでに比較的長い時間が必要となる。従って、この場合、車両の走行安定性を確保するため、大きい減速度を維持することよりも車輪の車輪速度を回復させることが優先されるべきである。
以上のことから、本装置は、後述するように、車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)との判定を行っている場合、下記(4)式、及び下記(5)式が成立したとき、車輪**について低μ路面用のABS制御を開始する。即ち、下記(4)式、及び下記(5)式は、低μ路面用ABS制御の開始条件を表している。
Vso-Vw** > ΔVwreflow ・・・(4)
DVw** < DVwreflow ・・・(5)
上記(4)式において、ΔVwreflowは低μ路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値(正の一定値)であって、前記通常路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwrefnormよりも小さい値である。上記(5)式において、DVwreflowは低μ路面用のABS制御開始判定用車輪加速度基準値(負の一定値)であって、前記通常路面用のABS制御開始判定用車輪加速度基準値DVwrefnormより大きい値である。これにより、低μ路面用ABS制御の開始条件は、通常路面用ABS制御の開始条件に比してABS制御がより開始され易い条件となる。
そして、本装置は、車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)と判定している場合であって、上記低μ路面用ABS制御の開始条件が成立したとき、先の図4(b)(図5の実線に同じ)に示した通常路面用ABS制御において、図5に破線にて示したように、上記通常路面用減圧時間T1、通常路面用増圧時間T2、及び通常路面用保持時間T3をそれぞれ、低μ路面用減圧時間T1’、低μ路面用増圧時間T2’、及び低μ路面用保持時間T3’に代えた低μ路面用ABS制御を実行する。
ここで、低μ路面用減圧時間T1’、低μ路面用増圧時間T2’、及び低μ路面用保持時間T3’は、上記(4)式、及び上記(5)式に示した低μ路面用ABS制御の開始条件が成立した時点における車輪**の車輪加速度DVw**の変化速度(時間微分値)DDVw**に応じて設定され、「低μ路面用減圧時間T1’>通常路面用減圧時間T1」、「低μ路面用増圧時間T2’<通常路面用増圧時間T2」、「低μ路面用保持時間T3’>通常路面用保持時間T3」の関係がある。
即ち、図5から理解できるように、低μ路面用ABS制御では、通常路面用ABS制御に比して、制御対象車輪のブレーキ液圧の減圧の程度(減圧量、減圧期間)が大きくなって、大きい減速度を維持することよりも車輪の車輪速度を回復させることが優先される。以上が、低μ路面用ABS制御の概要である。
<路面判定の概要>
次に、車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)か否かの判定(路面判定)について説明する。運転者によるブレーキ操作により車輪にスリップが発生している場合における車体の実際の前後加速度(実車体加速度Gact。この場合、負の値。)は路面摩擦係数が大きいほど小さくなる(絶対値が大きくなる)。
係る観点に着目すると、路面判定のための路面判定用車体加速度基準値DVsoth(正の一定値)として適切な値を設定するとともに、上記(1)式に従って算出される推定車体速度Vsoを時間で微分することで得られる推定車体加速度DVso(この場合、負の値)が値「−DVsoth」よりも大きいとき低μ路面であるとの判定を行い、推定車体加速度DVsoが「−DVsoth」以下であるとき通常路面であるとの判定を行うことが考えられる。
しかしながら、上述したように、車両が低μ路面を走行中に総ての車輪が略均一にスリップを開始・継続する場合、以下に述べるように路面判定において誤判定がなされる場合がある。図6は、車体速度V0(即ち、車輪速度Vw**=V0)にて低μ路面上を車両が直進走行中において時刻t1にて運転者がブレーキペダルBPの操作を開始した場合におけるSTP信号の変化、車体加速度の変化、車体速度の変化、及び各車輪速度の変化の例を示したタイムチャートである。
図6に示したように、この例においては、時刻t1にて総ての車輪が略均一にスリップを開始し、この結果、総ての車輪速度Vw**が値V0から略同一の勾配をもって低下していくとともに時刻t2にて「0」に達している。なお、時刻t2以降も車両は移動(前進)している。
この場合、時刻t1以降において最大車輪速度max(Vw**)と車体の実際の速度(実車体速度Vact)との間に差が発生する。これにより、原則的に最大車輪速度max(Vw**)と等しい値として逐次計算される推定車体速度Vsoの変化勾配(即ち、推定車体加速度DVso。負の値)は、実車体速度Vactの変化勾配(即ち、実車体加速度Gact。負の値)よりも小さくなり得る。
この結果、図6に示すように、実車体加速度Gactが値「−DVsoth」よりも大きい場合であっても、推定車体加速度Gactが値「−DVsoth」以下の値として計算される事態が発生し得る。この場合、車両が走行している路面が低μ路面であるにもかかわらず通常路面であるとの誤判定がなされてしまう。このように、係る誤判定は、推定車体加速度DVsoの推定精度が低い場合があることにより発生する。
ところで、実車体加速度Gactの大きさは、タイヤ空気圧の変化に基づいて精度良く推定することができる。即ち、運転者がブレーキ操作を開始すると、車体には、車体前方に向けて実車体加速度Gactに応じた慣性力が働く。従って、ブレーキ操作開始直後において、車両前側の車輪のタイヤ空気圧が上記慣性力の大きさに応じて増加するとともに車両後側の車輪のタイヤ空気圧が同慣性力の大きさに応じて減少する。よって、車両前側の車輪のタイヤ空気圧の変化量(変化勾配)、或いは車両後側の車輪のタイヤ空気圧の変化量(変化勾配)は、実車体加速度Gactの大きさを精度良く表す値となる。
以上のことから、本装置は、実車体加速度Gact(この場合、負の値)が値「−DVsoth」よりも大きいか否かの判定を上記推定車体加速度DVsoに代えてタイヤ空気圧の変化を利用して行う。
具体的には、本装置は、上記路面判定用車体加速度基準値DVsothに相当する路面判定用タイヤ空気圧変化量基準値ΔPthabs(正の一定値)を設定する。そして、本装置は、車両前側の車輪のタイヤ空気圧変化量(本例では、ΔPfrとΔPflの平均値(平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmean))がΔPthabsよりも大きい場合、或いは、車両後側の車輪のタイヤ空気圧変化量(本例では、ΔPrrとΔPrlの平均値(平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremean))が値「−ΔPthabs」よりも小さい場合、車両が走行している路面が通常路面であると判定する。この場合、上記(2)式、及び上記(3)式に基づく通常路面用のABS制御の開始条件に従ってABS制御の開始判定が実行され、同条件が成立すると通常路面用ABS制御が開始・実行される。
一方、平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmeanがΔPthabs以下であり、且つ、平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremeanが値「−ΔPthabs」以上である場合、車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)と判定する。この場合、上記(4)式、及び上記(5)式に基づく低μ路面用のABS制御の開始条件に従ってABS制御の開始判定が実行され、同条件が成立すると低μ路面用ABS制御が開始・実行される。
なお、車両の通常路面を走行中において運転者が車輪にロック傾向が発生しない程度の弱いブレーキ操作を行う場合においても、「平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmean≦ΔPthabs」、及び「平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremean≧−ΔPthabs」が共に成立し、この結果、低μ路面である(可能性がある)との判定がなされる。しかしながら、この場合、車輪にロック傾向が発生していないことから、上記低μ路面用のABS制御の開始条件が成立し得ず、この結果、車両が通常路面を走行中において低μ路面用のABS制御が開始されることはない。
以上のように、本装置は、「前後加速度を表す値」としての平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmean、及び平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremeanに基づいて車両の車体前後方向の加速状態を推定し、係る推定結果に基づいて路面判定を実行する。以上が、本装置によるABS制御の概要である。
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明による運動状態推定装置を含んだ運動制御装置10の実際の作動について、電気式制御装置50のCPU51が実行するルーチンをフローチャートにより示した図7〜図12を参照しながら説明する。なお、図8に示したフローチャートは、「横加速度を表す値」に基づいて車両の旋回状態を推定する運動状態推定手段に対応し、図10に示したフローチャートは、「前後加速度を表す値」に基づいて車両の車体前後方向の加速状態を推定する運動状態推定手段に対応している。
CPU51は、図7に示した車輪速度等の算出を行うためのルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで車輪**の車輪速度(車輪**のタイヤの外周の速度)Vw**をそれぞれ算出する。具体的には、CPU51は車輪速度センサ41**の出力信号波形が有する周波数に基づいて車輪速度Vw**をそれぞれ算出する。
次いで、CPU51はステップ710に進み、前記車輪速度Vw**と、前回の本ルーチン実行時におけるステップ710にて算出した前回の推定車体速度Vsoと、上記(1)式とに基づいて、今回の推定車体速度Vsoを算出する。次に、CPU51はステップ715に進み、下記(6)式に従って前記車輪速度**の時間微分値である車輪加速度DVw**をそれぞれ算出する。下記(6)式において、Vwb**は前回の本ルーチン実行時におけるステップ705にて算出された前回の車輪速度Vw**であり、Δtは前記所定時間(CPU51の本ルーチンの実行周期)である。
DVw**=(Vw**-Vwb**)/Δt ・・・(6)
次に、CPU51はステップ720に進み、下記(7)式に従って前記車輪加速度DVw**の変化速度DDVw**をそれぞれ算出する。下記(7)式において、DVwb**は前回の本ルーチン実行時におけるステップ715にて算出された前回の車輪加速度DVw**である。
DDVw**=(DVw**-DVwb**)/Δt ・・・(7)
続いて、CPU51はステップ725に進んで、下記(8)式に従って前記推定車体速度Vsoの時間微分値である推定車体加速度DVsoを算出する。下記(8)式において、Vsobは前回の本ルーチン実行時におけるステップ710にて算出された前回の推定車体速度Vsoである。
DVso=(Vso-Vsob)/Δt ・・・(8)
そして、CPU51はステップ730に進み、タイヤ空気圧センサ43**から得られる現時点でのタイヤ空気圧P**を前回のタイヤ空気圧Pb**としてそれぞれ格納した後、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。以降も、CPU51は本ルーチンを繰り返し実行する。
次に、BFD制御の開始・終了判定を行う際の作動について説明する。CPU51は図8に示したルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで、BFD制御実行フラグBFDの値が「0」であるか否かを判定する。ここで、BFD制御実行フラグBFDは、その値が「1」のときBFD制御実行中であることを示し、その値が「0」のときBFD制御実行中でないことを示す。
いま、BFD制御が実行されていないものとすると、CPU51はステップ805にて「Yes」と判定してステップ810に進み、STP信号がON状態にあるか否か(即ち、運転者によるブレーキ操作が行われているか否か)を判定し、「Yes」と判定する場合、続くステップ815にて先のステップ710にて算出されている推定車体速度Vsoが所定車速Vsoth以上であるか否かを判定する。
ステップ815でも「Yes」と判定する場合、CPU51はステップ820に進み、タイヤ空気圧センサ43**から検出される現時点でのタイヤ空気圧P**と、先のステップ730にて格納されている前回のタイヤ空気圧Pb**とからタイヤ空気圧変化量ΔP**をそれぞれ求める。
続いて、CPU51はステップ825に進み、ステップ820にて求めた車両右側の車輪のタイヤ空気圧変化量ΔPfr,ΔPrrの平均値である上記平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimeanを求め、続くステップ830にて、ステップ825と同様にして上記平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemeanを求める。
次に、CPU51はステップ835に進んで、上記平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimeanが前記BFD制御開始判定用基準値ΔPthbfdよりも大きく、且つ上記平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemeanが値「−ΔPthbfd」よりも小さいか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ840に進んで旋回フラグLEFTの値を「1」に設定した後、ステップ855に進む。ここで、旋回フラグLEFTは、その値が「1」のとき車両が左側に旋回していることを示し、その値が「0」のとき車両が右側に旋回していることを示す。
一方、ステップ835の判定において「No」と判定する場合、CPU51はステップ845に進み、上記ΔPrimeanが上記値「−ΔPthbfd」よりも小さく、且つ上記ΔPlemeanが上記値ΔPthbfdよりも大きいか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ850に進んで旋回フラグLEFTの値を「0」に設定した後、ステップ855に進む。
CPU51はステップ855に進むと、BFD制御実行フラグBFDの値を「0」から「1」に変更し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、BFD制御実行フラグBFDの値が「1」に設定されると、後述するルーチンにより旋回フラグLEFTの値に応じた旋回方向に対応するBFD制御が開始される。
このように、ステップ810、815、835からなるAND条件は「車両が左側に旋回している場合におけるBFD制御の開始条件」に対応し、ステップ810、815、845からなるAND条件は「車両が右側に旋回している場合におけるBFD制御の開始条件」に対応している。
一方、上記BFD制御の開始条件が成立しない場合(即ち、ステップ810、815、845の何れかで「No」と判定される場合)、CPU51はステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、BFD制御実行フラグBFDの値は「0」に維持されたままであってBFD制御は開始されない。以降、上記BFD制御の開始条件が成立しない限りにおいてCPU51は、ステップ810、815、845の何れかで「No」と判定し、この結果、BFD制御実行フラグBFDの値は「0」に維持され続ける。
次に、上記BFD制御の開始条件が成立した場合について説明する。この場合、BFD制御実行フラグBFDの値は「1」になっているから、CPU51はステップ805に進んだとき「No」と判定してステップ865に進み、STP信号がOFF状態となっているか(即ち、運転者によるブレーキ操作が終了したか)、又は、後述するABS制御実行フラグABS**が「1」になっているか(即ち、車輪**についてABS制御が実行中であるか)を判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ870に進んでBFD制御実行フラグBFDの値を「1」から「0」に変更する。
これにより、後述するルーチンによりBFD制御が終了する。即ち、BFD制御実行中においてABS制御が開始されると、同実行中のBFD制御は終了する。換言すれば、ABS制御はBFD制御に優先して実行される。このように、ステップ865の条件は「BFD制御の終了条件」に対応している。
一方、ステップ865にて「No」と判定される場合、CPU51はステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、BFD制御実行フラグBFDの値は「1」に維持されたままであって実行中のBFD制御はそのまま継続される。以降、上記BFD制御の終了条件が成立しない限りにおいてCPU51は、ステップ805、865の処理を繰り返し実行し、この結果、BFD制御実行フラグBFDの値は「1」に維持され続ける。
次に、BFD制御の実行に係わる作動について説明する。CPU51は図9に示したルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで、BFD制御実行フラグの値が「1」になっているか否かを判定する。
いま、先のステップ855の処理が実行された直後であるものとすると(従って、上記BFD制御の開始条件が成立した直後であるものとすると)、CPU51はステップ905にて「Yes」と判定してステップ910に進み、旋回フラグLEFTの値が「1」になっているか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ915に進んで旋回方向内側の後輪に対応する左後輪RLの増圧弁PUrlのみを励磁状態(閉状態)とした後、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、左後輪RLのホイールシリンダWrl内のブレーキ液圧が保持されて、左側旋回時におけるBFD制御が実行される。
一方、ステップ910の判定において「No」と判定する場合、CPU51はステップ920に進んで旋回方向内側の後輪に対応する右後輪RRの増圧弁PUrrのみを励磁状態(閉状態)とする。これにより、右後輪RRのホイールシリンダWrr内のブレーキ液圧が保持されて、右側旋回時におけるBFD制御が実行される。
以降、BFD制御実行フラグの値が「1」に維持される限りにおいて、CPU51は、ステップ905にて「Yes」と判定してステップ915、及びステップ920の何れか一方の処理を繰り返し実行し続け、この結果、BFD制御が継続される。
一方、この状態にて、先のステップ870の処理が実行されたものとすると(従って、上記BFD制御の終了条件が成立した直後であるものとすると)、CPU51はステップ905にて「No」と判定してステップ925に進み、励磁状態となっている旋回方向内側の後輪に対応する増圧弁PUr*を非励磁状態とすることでBFD制御を終了する。
以降、BFD制御実行フラグの値が「0」に維持される限りにおいて、CPU51は、ステップ905にて「No」と判定してステップ925の処理を繰り返し実行し続け、この結果、BFD制御が実行されない状態が継続される。
次に、ABS制御のパターンの選択に係わる作動について説明する。CPU51は図10に示したルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、車輪**についてのABS制御実行中フラグABS**の値が「0」となっているか否かを判定する。
ここで、ABS制御実行中フラグABSは、後述するように、その値が「1」のとき(通常路面用か低μ路面用かにかかわらず)ABS制御が実行されていることを示し、その値が「0」のとき同ABS制御が実行されていないことを示す。
いま、車輪**についてABS制御が実行されていないものとすると、CPU51はステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1010に進み、先のステップ725にて計算されている推定車体加速度DVsoが前記値「−DVsoth」よりも大きいか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ1015に進んで低μ判定フラグLOWの値を「1」に設定した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ここで、低μ判定フラグLOWは、その値が「1」のとき車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)こと示し、その値が「0」のとき車両が走行している路面が通常路面であること示す。
なお、上記ステップ1010にて「Yes」と判定される場合(即ち、「LOW=1」となる場合)、運転者によるブレーキ操作中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」以下となることはない。従って、仮に車輪にロック傾向が発生しているとすると、車両は低μ路面を走行していることになる。
また、この場合、車両の通常路面を走行中において運転者が車輪にロック傾向が発生しない程度の弱いブレーキ操作を行う場合が含まれる。しかしながら、この場合、車輪にロック傾向が発生していないことから、後述するルーチンにおいて低μ路面用ABS制御の開始条件が成立し得ず、この結果、車両が通常路面を走行中において低μ路面用ABS制御が開始されることはない。
一方、ステップ1010の判定において「No」と判定する場合(即ち、推定車体加速度DVso(この場合、負の値)が前記値「−DVsoth」以下である場合)、CPU51はステップ1020に進む。なお、この場合、運転者によるブレーキ操作中において、車両が通常路面を走行中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」以下である状態で車輪にロック傾向が発生している場合と、車両が低μ路面を走行中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」より大きい状態で総ての車輪に略均一にロック傾向が発生している先の図6に示した場合とが含まれ得る。
CPU51はステップ1020に進むと、タイヤ空気圧センサ43**から検出される現時点でのタイヤ空気圧P**と、先のステップ730にて格納されている前回のタイヤ空気圧Pb**とからタイヤ空気圧変化量ΔP**をそれぞれ求める。
続いて、CPU51はステップ1025に進み、ステップ1020にて求めた車両前側の車輪のタイヤ空気圧変化量ΔPfr,ΔPflの平均値である上記平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmeanを求め、続くステップ1030にて、ステップ1025と同様にして上記平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremeanを求める。
次に、CPU51はステップ1035に進んで、上記平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmeanが前記路面判定用タイヤ空気圧変化量基準値ΔPthabsよりも大きいか、又は、上記平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremeanが値「−ΔPthabs」よりも小さいか否かを判定し、「No」と判定する場合、先のステップ1015に進んで低μ判定フラグLOWの値を「1」に設定する。この場合は、車両が低μ路面を走行中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」より大きい状態で総ての車輪に略均一にロック傾向が発生する場合に対応する。
一方、ステップ1035にて「Yes」と判定する場合、CPU51はステップ1040に進んで低μ判定フラグLOWの値を「0」に設定する。この場合は、車両が通常路面を走行中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」以下である場合に対応する。
以降、CPU51は、車輪**についてのABS制御実行中フラグABS**の値が「0」となっている限りにおいて上述した処理を繰り返し実行する。この結果、車両が走行している路面が低μ路面である(可能性がある)か通常路面であるかが逐次判定されていく。
そして、後述するルーチンにより、車輪**についてのABS制御実行中フラグABS**の値が「0」から「1」に変更されると(即ち、車輪**についてABS制御の開始条件が成立すると)、CPU51はステップ1005に進んだとき「No」と判定してステップ1095に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了するようになる。
次に、ABS制御の開始判定に係わる作動について説明する。CPU51は図11に示したルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んで、STP信号がON状態となっていて、且つ、ABS制御実行中フラグABS**の値が「0」となっているか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ1195に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、運転者がブレーキペダルBPを操作していて、車輪**についてABS制御が実行されておらず、且つ、低μ判定フラグLOW**の値が「0」になっているものとすると、CPU51は、ステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、低μ判定フラグLOW**の値が「0」になっているか否かを判定する。
現時点では、低μ判定フラグLOW**の値が「0」になっているから、CPU51はステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1115に進み、上述した通常路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwrefnormの値を車輪**についてのABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwref**として設定するとともに、上述した通常路面用のABS制御開始判定用車輪加速度基準値DVwrefnormの値を車輪**についてのABS制御開始判定用車輪加速度基準値DVwref**として設定する。
次いで、CPU51はステップ1120に進んで、上記(2)式、及び上記(3)式に相当するステップ1120内に記載の式に基づいて、車輪**についてABS制御の開始条件(現時点では、通常路面用ABS制御の開始条件)が成立しているか否かを車輪毎に判定し、「No」と判定する場合、ステップ1195に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、車輪**について(通常路面用の)ABS制御の開始条件が成立している場合、CPU51はステップ1120にて「Yes」と判定してステップ1125に進み、低μ判定フラグLOW**の値が「0」になっているか否かを判定し、同ステップ1125にて「Yes」と判定してステップ1130に進む。
ステップ1130に進むと、CPU51は、先のステップ720にて算出されている車輪**についての車輪加速度の変化速度DDVw**に応じて設定される前記通常路面用減圧時間T1、通常路面用増圧時間T2、及び通常路面用保持時間T3の値をそれぞれ、車輪**についての減圧時間T1**、車輪**についての増圧時間T2**、車輪**についての保持時間T3**として設定する。
そして、CPU51はステップ1135に進み、車輪**についてのABS制御の開始条件が成立した時点からの経過時間T**をリセットし、続くステップ1140にて車輪**についてのABS制御実行中フラグABS**の値を「0」から「1」に変更した後、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、経過時間T**は、電気式制御装置50内に内蔵された図示しないタイマの出力に基づいて車輪毎に取得される。
この結果、ABS制御実行中フラグABS**の値が「1」に変更・維持されるから、以降、CPU51は、ステップ1105に進んだとき、車輪**(ABS制御実行中フラグABS**の値が「1」になっている車輪)について「No」と判定し、ステップ1195に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了するようになる。
一方、いま、運転者がブレーキペダルBPを操作していて、車輪**についてABS制御が実行されておらず、且つ、低μ判定フラグLOW**の値が「1」になっている場合、CPU51はステップ1110に進んだとき「No」と判定してステップ1145に進んで上述した低μ路面用のABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwreflowの値を車輪**についてのABS制御開始判定用スリップ量基準値ΔVwref**として設定するとともに、上述した低μ路面用のABS制御開始判定用車輪加速度基準値Dvwreflowの値を車輪**についてのABS制御開始判定用車輪加速度基準値DVwref**として設定する。
即ち、CPU51は続くステップ1120にて、上記(4)式、及び上記(5)式に相当するステップ1120内に記載の式に基づいて、車輪**についてABS制御の開始条件(現時点では、低μ路面用ABS制御の開始条件)が成立しているか否かを車輪毎に判定するようになる。
そして、車輪**について低μ路面用ABS制御の開始条件が成立していると、CPU51はステップ1125にて「No」と判定してステップ1150に進み、先のステップ720にて算出されている車輪**についての車輪加速度の変化速度DDVw**に応じて設定される前記低μ路面用減圧時間T1’、低μ路面用増圧時間T2’、及び低μ路面用保持時間T3’の値をそれぞれ、車輪**についての減圧時間T1**、車輪**についての増圧時間T2**、車輪**についての保持時間T3**として設定した後、ステップ1135、1140を経てステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上のように、ABS制御の開始条件、並びに、減圧時間T1**、増圧時間T2**、及び保持時間T3**が、低μ判定フラグLOW**の値に応じて、通常路面用、又は低μ路面用として設定される。以上のようにして、ABS制御の開始判定が実行される。
また、CPU51は、図12に示したABS制御の実行を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んで、ABS制御実行中フラグABS**の値が「1」になっているか否かを判定し、「No」と判定する車輪については、ステップ1295に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、先のステップ1120にて示した車輪**についてのABS制御の開始条件が成立し、車輪**について先のステップ1140の処理が実行された直後であって、且つ、運転者によるブレーキ操作が継続中であるものとすると、CPU51はステップ1205にて車輪**について「Yes」と判定してステップ1210に進み、同ABS制御の開始条件に加えて、条件「前記経過時間T**が先のステップ1130にて設定された減圧時間T1**を超えたこと」が共に成立しているか否かを判定する。
現時点は、車輪**についてのABS制御の開始条件が成立した直後であるから、経過時間T**が前記減圧時間T1**を超えていない。従って、CPU51はステップ1210にて「No」と判定してステップ1220に直ちに進む。
なお、CPU51はステップ1210にて「Yes」と判定する場合、ステップ1215に進んで経過時間T**をリセットした後にステップ1220に進む。この処理は、前述した「図4に示した時刻t1においても上記(2)式、及び上記(3)式に示した通常路面用のABS制御の開始条件がなお成立している場合」に行う処理に相当するものである。
CPU51はステップ1220に進むと、現時点での経過時間T**と、ステップ1130にて設定された減圧時間T1**、増圧時間T2**、及び保持時間T3**と、図4(a)に示したブレーキ液圧制御モードのタイムチャートに相当するステップ1220内に記載のタイムチャートとに従って、車輪**についての増圧弁PU**、及び減圧弁PD**を制御することで車輪**(制御対象車輪)についてのブレーキ液圧制御モードを経過時間T**に応じて設定する。
続いて、CPU51はステップ1225に進んで、車輪**(制御対象車輪)についての経過時間T**がステップ1220内の時刻t8に相当する時間に一致しているか否か(即ち、車輪**についてABS制御(の一サイクル)が終了したか否か)、又はSTP信号がOFF状態となっているか否かを判定し、現時点では同経過時間T**が同時刻t8に相当する時間に到達しておらず、且つ運転者によるブレーキ操作が継続中であるから、「No」と判定してステップ1295に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
以降、CPU51は、前記経過時間T**が前記時刻t8に相当する時間に到達するまでの間、或いは運転者によるブレーキ操作が終了するまでの間、ステップ1200、1205、1210、(1215)、1220、1225、1295の処理を繰り返し実行する。これにより、経過時間T**の増大に従って、車輪**についてのブレーキ液圧制御モードが変更されていく。
そして、所定時間が経過して前記経過時間T**が前記時刻t8に相当する時間に到達するか、或いは運転者によるブレーキ操作が終了すると、CPU51はステップ1225に進んでとき「Yes」と判定してステップ1230に進み、ABS制御実行中フラグABS**の値を「1」から「0」に変更し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、ABS制御実行中フラグABS**の値が「0」になるから、以降、CPU51はステップ1205に進んだとき、車輪**について「No」と判定してステップ1295に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了するようになる。このようにして、図10のルーチンにて選択されたABS制御パターンによるABS制御が実行される。
以上、説明したように、本発明による運動状態推定装置の実施形態によれば、車両の右側、及び左側の車輪のタイヤ空気圧の各変化(平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimean、及び平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemean)が車両の横加速度の大きさ、方向を精度良く表す値となることを利用して車両の旋回状態を推定するとともに、車両の前側、及び後側の車輪のタイヤ空気圧の各変化(平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmean、及び平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremean)が車両の前後加速度の大きさ、方向を精度良く表す値となることを利用して車両の車体前後方向の加速状態を推定する。従って、高価な加速度センサを用いることなく車両の加速状態、従って、車両の運動状態を精度良く推定できる。
また、上記運動状態推定装置の実施形態による推定結果を利用した本発明による運動制御装置の実施形態によれば、上記推定された車両の旋回状態に基づいて制動力配分制御(BFD制御)を実行する。従って、車両の旋回状態についての精度のよい推定結果に基づいて適切なBFD制御が実行され得る。
更には、本発明による運動制御装置の実施形態は、上記推定された車両の車体前後方向の加速状態に基づいて路面判定(通常路面であるか低μ路面であるか)を行い、同判定結果に基づいて通常路面用アンチスキッド制御(ABS制御)、或いは低μ路面用ABS制御を選択的に実行する。従って、車両の車体前後方向の加速状態についての精度のよい推定結果に基づいて路面判定が精度良く実行され得、走行路面に応じた適切なABS制御態様をもってABS制御が実行され得る。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、タイヤ空気圧取得手段としてタイヤ空気圧を直接検出する圧力センサ(タイヤ空気圧センサ43**)が使用されているが、タイヤの振動周波数成分を含む信号を出力し得る車輪速度センサ(例えば、磁気ピックアップ式(コイル式)の車輪速度センサ41**)の同出力信号から抽出される車両のばね下の共振周波数に基づいてタイヤ空気圧を間接的に取得する公知の装置を使用してもよい。係る公知の装置の例の一つは、例えば、特開平5−133831号公報に詳細に記載されている。
また、上記実施形態においては、右前後輪のタイヤ空気圧の各変化に基づく車両右側の車輪のタイヤ空気圧の変化(平均右側タイヤ空気圧変化量ΔPrimean)と、左前後輪のタイヤ空気圧の各変化に基づく車両左側の車輪のタイヤ空気圧の変化(平均左側タイヤ空気圧変化量ΔPlemean)とに基づいて車両の旋回状態を推定しているが(図8のステップ825、830を参照)、車両右側の何れか一方の車輪のタイヤ空気圧の変化と、車両左側の何れか一方の車輪のタイヤ空気圧の変化とに基づいて車両の旋回状態を推定するように構成してもよい。また、車両右側の車輪(右前後輪の何れか一方、又は両方)のタイヤ空気圧の変化と、車両左側の車輪(左前後輪の何れか一方、又は両方)のタイヤ空気圧の変化の何れか一方のみに基づいて車両の旋回状態を推定するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、前2輪のタイヤ空気圧の各変化に基づく車両前側の車輪のタイヤ空気圧の変化(平均前側タイヤ空気圧変化量ΔPfrmean)と、後2輪のタイヤ空気圧の各変化に基づく車両後側の車輪のタイヤ空気圧の変化(平均後側タイヤ空気圧変化量ΔPremean)とに基づいて車両の車体前後方向の加速状態を推定しているが(図10のステップ1035を参照)、車両前側の何れか一方の車輪のタイヤ空気圧の変化と、車両後側の何れか一方の車輪のタイヤ空気圧の変化とに基づいて車両の車体前後方向の加速状態を推定するように構成してもよい。また、車両前側の車輪(前2輪の何れか一方、又は両方)のタイヤ空気圧の変化と、車両後側の車輪(後2輪の何れか一方、又は両方)のタイヤ空気圧の変化の何れか一方のみに基づいて車両の車体前後方向の加速状態を推定するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、タイヤ空気圧の変化量として、タイヤ空気圧取得手段(タイヤ空気圧センサ43**)から所定時間(CPU51によるルーチン(プログラム)の実行周期。例えば、6msec)の経過毎に取得されるタイヤ空気圧の今回値から前回値を減じた値を使用しているが、運転者によるブレーキ操作が開始された時点でのタイヤ空気圧(制動開始時タイヤ空気圧)を記憶しておき、同ブレーキ操作継続中における現時点でのタイヤ空気圧から同制動開始時タイヤ空気圧を減じた値をタイヤ空気圧の変化量として使用するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、車輪速度センサの出力から取得される推定車体加速度DVso(図10のステップ1010)、並びに、車両の前側、及び後側の車輪のタイヤ空気圧変化量ΔPfrmean,ΔPremean(図10のステップ1035)に基づいてABS制御における路面判定を行うように構成されているが(図10のルーチンを参照)、車両の前側、及び後側の車輪のタイヤ空気圧変化量ΔPfrmean,ΔPremeanにのみ基づいてABS制御における路面判定を行うように構成してもよい(即ち、ステップ1010の判定を省略してもよい)。上記ステップ1035にて「No」と判定されることは、運転者によるブレーキ操作中において実車体加速度Gact(この場合、負の値)が上記値「−DVsoth」以下となることはないことを意味しているから、上記ステップ1035にて「No」と判定されることと、上記ステップ1010にて「Yes」と判定することは等価だからである。
10…運動制御装置、30…ブレーキ液圧制御装置、41**…車輪速度センサ、42…ブレーキスイッチ、43**…タイヤ空気圧センサ、50…電気式制御装置、51…CPU