以下、本発明に係る歯車加工方法について実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態に係る歯車加工方法は、例えば、被削歯車の端面角部の面取り加工と歯面のシェービング加工とを有する複数の加工工程で当該被削歯車を加工する方法である。この歯車加工方法は、例えば、加工部へと被削歯車を着脱する歯車着脱装置11を搭載した歯車加工装置10(図6参照)により実施される。
歯車加工方法の説明に先立ち、歯車加工装置10について説明する。先ず、歯車着脱装置11で着脱される被削歯車14をフレージングカッタで加工する面取り加工部12と、面取り加工がなされた被削歯車14をシェービングカッタで加工するシェービング加工部13とを説明する。
図1に示すように、被削歯車14は、例えば、はすば歯車であり、ホブにより素材から粗歯切りされた状態では、左右の端面角部30、31に尖鋭部33がある。そこで、本実施の形態に係る歯車加工方法では、面取り加工部12で端面角部30、31を面取りした後、シェービング加工部13で歯26の歯面28を切削する。
なお、本実施の形態に係る歯車加工方法で加工する被削歯車14は、はすば歯車に限られず、平歯車等であってもよい。被削歯車14は、例えば、車両用変速機の歯車である。面取り加工部12及びシェービング加工部13を用いて当該歯車加工方法により加工をした歯車は高精度であり、静粛性及び耐久性に優れ、車両用変速機に好適である。
図2は、面取り加工部12の一部省略斜視図である。
図2に示すように、面取り加工部12は、被削歯車14を軸支するワーク支持部としての軸J1と、面取り工具であるフレージングカッタ18と、該フレージングカッタ18を軸支するカッタ支持部としての軸J2とを有する。軸J2は図示しない駆動源により回転可能である。軸J1は、被削歯車14がフレージングカッタ18に噛合することにより連れ回りする。
フレージングカッタ18は、厚み方向の一方に面取り用の加工歯32aの一群を有するピースと、他方に面取り用の加工歯32bの一群を有するピースとを備え、これらがボス36に対して固定された、いわゆるスリーピース型の構造である。
軸J2は、軸J1で軸支された被削歯車14に対してフレージングカッタ18を噛合させるように該フレージングカッタ18を軸支する。軸J2は、フレージングカッタ18を被削歯車14に対して0でない軸交差角ψ1をもって噛合させ、且つフレージングカッタ18の加工歯32a、32bが被削歯車14の歯面28に干渉しない角度に設けられている(図3参照)。軸交差角ψ1は、被削歯車14の軸J1とフレージングカッタ18の軸J2とのなす角度である(図3参照)。
図3は、被削歯車14の歯26と、フレージングカッタ18の加工歯32a、32bとの相対的な位置関係を示すものであり、被削歯車14とフレージングカッタ18をそれぞれ周面に沿って展開した模式図である。
図2及び図3に示すように、加工歯32aと加工歯32bは、被削歯車14の厚みに応じて離間しており、フレージングカッタ18及び被削歯車14は噛合しながら回転する。これにより、一方の加工歯32aが一方の端面角部30に対して押圧して尖鋭部33を押しつぶして面取りし、他方の加工歯32bが他方の端面角部31に対して押圧して尖鋭部33を押しつぶして面取りする。
図3から明らかなように、被削歯車14とフレージングカッタ18とは軸交差角ψ1を有し、斜めに交わる。従って、フレージングカッタ18が回転駆動されると、被削歯車14は図3の右方向(矢印A1方向)に回転し、フレージングカッタ18は角度ψ1だけ斜め方向(矢印A2方向)に回転する。
これにより、フレージングカッタ18の加工歯32aは、先ず、図3中の矢印B1で示すように歯26と噛み合いし、端面角部30の略頂部に当接する。続いて、加工歯32aは、図3中の矢印B2で示すように噛み合いして歯26の略中間高さに当接される。その後、加工歯32aは、図3中の矢印B3で示すように噛み合いして歯26の略底部に当接し、端面角部30を全長にわたって面取りして尖鋭部33をなくすことができる。当然、被削歯車14の他方の端面角部31についても、上記の端面角部30の場合と同様に、フレージングカッタ18の加工歯32bによって適切に面取りすることができる。
この際、面取り加工部12では、フレージングカッタ18が軸交差角ψ1をもって被削歯車14に噛み合いすることから、被削歯車14の端面角部30、31に対して押し潰して尖鋭部33を面取りするだけでなく、横移動成分の含まれる面同士の摺動が発生する。これにより、歯面28のうち面取り部に隣接する箇所における余肉の盛り上がりの発生を防止し、又は抑制することができる。この軸交差角ψ1は、例えば、5°〜8°の範囲で設定されるとよい。
図4は、シェービング加工部13の一部省略斜視図である。
図4に示すように、シェービング加工部13は、被削歯車14を軸支するワーク支持部としての軸J1と、シェービング工具であるシェービングカッタ20と、該シェービングカッタ20を軸支するカッタ支持部としての軸J3とを有する。軸J3は図示しない駆動源により回転可能である。軸J1は、面取り加工部12のものと同一又は同様であり、被削歯車14がシェービングカッタ20に噛合することにより連れ回りする。
図5は、被削歯車14の歯26と、シェービングカッタ20の加工歯44との相対的な位置関係を示すものであり、被削歯車14とシェービングカッタ20をそれぞれ噛み合いピッチ円筒上で周面に沿って展開した模式図である。
図4及び図5に示すように、シェービングカッタ20の各加工歯44の歯面には、切削刃としての複数のセレーション46が設けられている。セレーション46は、歯幅方向に対して直角で、換言すれば歯底から歯先に向かう方向に延在している。
軸J3は、軸J1に設けられた被削歯車14に対してシェービングカッタ20を噛合させるように該シェービングカッタ20を軸支する。軸J3は、シェービングカッタ20を被削歯車14に対して0でない軸交差角ψ2をもって噛合させる(図5参照)。軸交差角ψ2は、被削歯車14の軸J1とシェービングカッタ20の軸J3とのなす角度であり(図5参照)、上記の軸交差角ψ1(図3参照)と同一角度であっても異なる角度であってもよく、被削歯車14の種類にもよるが、例えば、4°〜20°の範囲で設定されるとよい。
シェービングカッタ20が回転駆動されると、シェービングカッタ20は図5の上方向(矢印A3方向)に回転し、被削歯車14は角度ψ2だけ斜め方向(矢印A1方向)に回転する。これにより、シェービングカッタ20の加工歯44と被削歯車14の歯26とは、該歯26の歯すじ方向で相対的にすべり運動をして、歯面28がセレーション46によって切削される。すなわち、加工歯44は、図5中の矢印C1で示すように歯面28に対して横方向に擦れるように当接し、歯26は、図5中の矢印C2で示すように当接し、この結果、歯面28がセレーション46によって所定の精度に成形される。この切削は、歯面28を成形するためのものであって、ホブ等による粗切削とは異なり、仕上げ切削に分類される。
次に、基本的には以上のように構成される面取り加工部12及びシェービング加工部13を有する歯車加工装置10について説明する。
図6に示すように、歯車加工装置10は、ベース台200に設けられた回転テーブル202と、該回転テーブル202上に設けられたワーク支持部204と、装置全体を総合的に制御する駆動盤(制御部)206と、該駆動盤206に隣接して設けられた工具支持部208とを有し、歯車着脱装置11が回転テーブル202上に配設されている。歯車加工装置10の説明では、横手方向をX方向、奥行き方向をY方向、高さ方向をZ方向とする。また、図6では、歯車加工装置10の操作盤、潤滑装置、油圧源及びクーラント等の図示を省略している。
ワーク支持部204は、回転テーブル202上に設けられたXスライドベース210と、該Xスライドベース210に対してX方向にスライドするXスライダ212と、Xスライダ212上で被削歯車14を左右から回転自在に支持するヘッドストック214及びテールストック216と、Y方向奥に設けられ、被削歯車14のばり取りを行うローラカッタユニット220とを有する。Xスライダ212は、Xモータ219の作用下にXスライドベース210の長尺方向(ψ1(ψ2)=0のときはX方向である。以下、簡略的にX方向ともいう。)に移動可能である。
スライドベース210にはベース回転モータ222が設けられており、該ベース回転モータ222の作用下に、スライドベース210は回転テーブル202に対して水平面内で回転をする。回転テーブル202に対してスライドベース210が回転をする機構は、例えばウォームホイール機構が用いられる。回転テーブル202にはスライドベース210の回転量を精密に計測するセンサ(例えばロータリエンコーダ)224が設けられており、該センサ224の信号に基づいてフルクローズド方式のフィードバックを行うことによりスライドベース210を正確に位置決め制御することができる。つまり、ベース回転モータ222の回転量に基づく間接的なフィードバック(いわゆるセミクローズド制御)ではなく、センサ224によりスライドベース210の回転量を直接的に検出するので、より精密な制御が可能である。
回転テーブル202には、位置決め制御の終了したスライドベース210を固定する複数(例えば4台)のクランプ226が設けられている。クランプ226は、回転テーブル202の周囲に等間隔に設けられている(図6中では1台のみ示す)。スライドベース210の回転は軸交差角ψ1、ψ2に相当し、例えば±20°程度の回転が可能に構成されている。基準状態の回転角度0°のときには、ψ1(ψ2)=0°で、被削歯車14の軸がX方向に一致する。
ヘッドストック214は、X方向のサブスライダ230aと、該サブスライダ230aに対してX方向にスライド可能な軸支持ボックス232aと、軸支持ボックス232aを駆動するストックモータ234aと、被削歯車14の一方の側を軸支する支持軸236aとを有する。支持軸236aは、前記の軸J1に相当する。テールストック216は、ヘッドストック214に対して基本的に左右対称構成であり、X方向のサブスライダ230bと、該サブスライダ230bに対してX方向にスライド可能な軸支持ボックス232bと、軸支持ボックス232bを駆動するストックモータ234bと、被削歯車14の一方の側を軸支する支持軸236bとを有する。ヘッドストック214及びテールストック216には被削歯車14を回転させる駆動源は設けられておらず、いわゆる非自立駆動とされている。
ヘッドストック214とテールストック216は、X方向に移動する駆動力が異なり、例えば、ヘッドストック214の方が駆動力が大きく設定され、該ヘッドストック214により被削歯車14のX方向位置が規定される。ヘッドストック214及びテールストック216は、被削歯車14の着脱時に接近及び離間をする。
従って、図7A及び図7Bに示すように、被削歯車14を軸支する一対のセンタ軸(センタリング軸)として、支持軸236a、236bが接近及び離間することで、被削歯車14をその軸心方向に軸支する。
この場合、互いに向い合う支持軸236a、236bの各先端には、互いに係合及び分離可能なホルダ237a、237bが設けられる。一方のホルダ237aの先端には突出軸238aが設けられ、他方のホルダ237bの先端には突出軸238aが係合する係合凹部238bが設けられる(図7A参照)。そこで、突出軸238aが、被削歯車14の軸心の貫通孔14aを挿通して係合凹部238bに係合することでホルダ237a、237bが一体的に結合され、被削歯車14をその軸心方向に円滑に且つ迅速に軸支することができる。貫通孔14a及び突出軸238aには、互いに係合可能な軸線方向のセレーション溝(図示せず)を設けておくこともできる。
図8に示すように、歯車加工装置10で順次加工される各被削歯車14に対し、ホルダ237a、237bを予め一体的に組み付けて歯車ホルダ複合体15を構成しておき、この歯車ホルダ複合体15を歯車着脱装置11で搬送及び位置決めし、一対の支持軸236a、236bで軸支するように構成してもよい。この場合には、例えば、ホルダ237a、237bの背面側に、それぞれ支持軸236a、236bの先端に形成された略円錐台形状の突出部239a、239bが係合可能な係合凹部241a、241bを設けておくとよい。この構成では、被削歯車14が予め歯車ホルダ複合体15の状態とされているため、例えば、歯車加工装置10を含めた各工程に搬送したり保管したりする際の被削歯車の取り扱い性を向上させることができる。また、一対の支持軸236a、236bは、被削歯車14を軸支する際、該被削歯車14の軸心の貫通孔14aに突出軸238a(図7A参照)を挿通させる必要がないため、該被削歯車14を一層円滑に且つ容易に軸支することができる。
ローラカッタユニット220は、X方向に並列した2枚のローラカッタ228と、これらのローラカッタ228を回転自在に支持するローラカッタ支持台240と、Yスライドベース242と、Yモータ244とを有する。Yモータ244は、Yスライドベース242に対してローラカッタ支持台240をXスライドベース210の短尺方向(ψ1(ψ2)=0のときはY方向である。以下、簡略的にY方向ともいう。)に進退させる。2枚のローラカッタ228の間隔は、被削歯車14の歯幅に合うように調整されており、被削歯車14に当ててばりを除去することができる。ローラカッタユニット220にはローラカッタ228を回転させる駆動源は設けられてなく、該ローラカッタ228は被削歯車14に当接して連れ回りしながらばりを除去する。ローラカッタユニット220はスライドベース210に設けられている。
次に、工具支持部208は、Zスライドベース250と、該Zスライドベース250に対してZ方向に昇降する工具支持機構ボックス252と、工具支持機構ボックス252に対して間欠回転するターレット機構254とを有する。
Zスライドベース250は、駆動盤206に隣接して設けられてZ方向に延在しており、工具支持機構ボックス252をZ方向に昇降自在に保持する。Zスライドベース250の上部には、工具支持機構ボックス252を昇降させるZモータ256が設けられている。
工具支持機構ボックス252は、ターレット機構254を60°毎に間欠回転させるインデックスモータ258と、サーボ制御が可能なサーボモータで構成されるスピンドルモータ260とを備え、相当程度の重量を有する。工具支持機構ボックス252は、さらに図示しない位置決めピン機構及びクラッチ機構を有する。位置決めピン機構により、ターレット機構254を正確に位置決めすることができる。クラッチ機構によりターレット機構254に対する動力伝達を制御することができる。
ターレット機構254は、側面視で六角形であり、インデックスモータ258の作用下にYZ平面内で60°毎の回転をする。ターレット機構254における六角形の各頂部近傍には、順に第1アーム262a、第2アーム262b、第3アーム262c、第4アーム262d、第5アーム262e及び第6アーム262fがそれぞれX方向を指向して設けられている。これらのアーム262a〜262fは、フレージングカッタ18やシェービングカッタ20等の各種工具が着脱可能である。各アーム262a〜262fは、軸J2(図2参照)や軸J3(図4参照)に相当する。
ターレット機構254は、6つのアーム262a〜262fのうち最も下方のものが被削歯車14のちょうど上方に配置されるように構成されている。6つのアーム262a〜262fは等間隔(60°)に配置され、被削歯車14に対向するように下方に配置されたいずれか1つのアームに設けられた工具が、所定のクラッチ機構を介してスピンドルモータ260により回転可能である。ターレット機構254に設けられた工具と被削歯車14とは、後述する歯車噛合い制御方法を用いると極めて容易に噛合いさせることができる。
第1アーム262aは、被削歯車14に対してフレージングカッタ18により面取り加工を行うものであり、ワーク支持部204の支持軸236a、236b(軸J1)が、回転テーブル202の旋回によって軸交差角ψ1を有することから、第1アーム262aと支持軸236a、236bにより面取り加工部12(図2参照)が構成される。
第1アーム262aによる面取り加工をしているときに、Yモータ244の作用下に2枚のローラカッタ228を被削歯車14の両端部に押し当てることにより、該両端部のばりを除去することができる。つまり、ターレット機構254とローラカッタユニット220とは、被削歯車14に対して異なる方向(Z方向とY方向)からそれぞれ接近して、面取り加工とばりとり加工とを同時に行うことが可能であり、加工時間を短縮することができる。ばり取り加工後は、ローラカッタ228を元の位置に戻しておく。
第3アーム262cは、被削歯車14に対して1回目のシェービング加工(第1シェービング加工)をするものであり、第5アーム262eは、被削歯車14に対して2回目のシェービング加工(第2シェービング加工)をするものである。ここで、ワーク支持部204の支持軸236a、236b(軸J1)が、回転テーブル202の旋回によって軸交差角ψ2を有することから、第3アーム262c(第5アーム262e)と支持軸236a、236bによりシェービング加工部13(図4参照)が構成される。すなわち、第3アーム262cには、粗仕上げ用のシェービングカッタ20が設けられ、第5アーム262eには精密仕上げ用のシェービングカッタ20が設けられている。これらの粗仕上げ用及び精密仕上げ用のシェービングカッタ20は、同一のものであっても、各工程に適した異なるものであってもよい。
第2アーム262b、第4アーム262d及び第6アーム262fは予備であり、例えば、上記したフレージングカッタ18やシェービングカッタ20の予備を設けておくこともできるし、歯切り加工用のホブを設けておくこともできる。
このように、工具を3つ用いる場合には予備を1つおきとすることによりターレット機構254のバランスがよくなる。工具を2つ用いる場合には対向する位置に工具を設け、他を予備とするとよい。
上記のように構成される面取り加工部12やシェービング加工部13において、支持軸236a、236bで軸支される被削歯車14は、歯車着脱装置11によって搬送及び搬出されると共に、フレージングカッタ18等との円滑な噛合い位置、及び支持軸236a、236bで円滑に軸支できる位置へと適切に位置決めされる。
そこで、次に、歯車着脱装置11について説明する。
図9〜図12に示すように、歯車着脱装置11は、回転方向にフリーな状態で被削歯車14が載置・保持される歯車載置部300を有するカセット302と、該カセット302を揺動可能に弾性支持する支柱304と、該支柱が固定されるスライダ306と、該スライダ306を進退可能に支持する一対のガイドレール(スライダ受け部)308を有するベース310とを備える。
以下、当該歯車着脱装置11が歯車加工装置10に搭載された状態での方向を基準とし、横手方向をX方向、奥行き方向をY方向、高さ方向をZ方向として説明する(図6参照)。この場合、歯車着脱装置11は、歯車加工装置10の回転テーブル202上でXスライドベース210に対してベース310が固定され、この際、スライダ306の進退方向が該Xスライドベース210の短尺方向(ψ1(ψ2)=0のときはY方向である。以下、簡略的にY方向ともいう。)となるように設定される。なお、当該歯車着脱装置11は、歯車加工装置10以外の装置であっても好適に使用可能である。
図10に示すように、カセット302は、支柱304に対して揺動可能に弾性支持される支持体312と、前記歯車載置部300が設けられ、支持体312に着脱可能に固定される載置台314とを有する。
支持体312は、支柱304に対するカセット302の揺動軸となるシャフト316(図11参照)が挿通されるX方向の貫通孔318を設けた狭幅部320と、狭幅部320の下方からY方向に突出し、コイルばね(弾性部材)322(図11参照)に挿通されるばね支持棒324と、鉛直方向(Z方向)に延びた台形溝(係合溝)326と、ばね支持棒324の下方からY方向に突設されたストッパ328とを有する。
前記載置台314は、被削歯車14が載置される歯車載置部300と、前記台形溝326にZ方向に係合する台形凸部(係合凸部)330とを有する。歯車載置部300は、被削歯車14の略半分が挿入可能な半円状溝部である。歯車載置部300を構成する一対の側壁332には、歯車加工装置10の支持軸236a、236b(図7A参照)が被削歯車14を軸支する際の逃げ部となる略半円状の切欠き334と、被削歯車14が着座する載置面300aの略中央底部まで達した切欠き336とが形成されている。左右一対の切欠き336には、それぞれ外側に傾斜したテーパ面336aが設けられている。側壁332の先端側には、略半円状の載置面300aよりも短く切り落とされた円弧状の切欠き338が形成されている。前記一対の側壁332間は、被削歯車14の厚み方向の寸法より多少大きく設定されるとよい。
従って、図9及び図10に示すように、載置台314は、台形凸部330が台形溝326に係合されることで支持体312に係合される。この際、支持体312側のねじ孔340に止めねじ342が螺入され、台形凸部330の略中央に切欠き形成された止め凹部344に係合されることで、載置台314が支持体312に容易に着脱可能な状態で確実に固定される。
図12に示すように、歯車載置部300を構成する載置面300aは、被削歯車14を安定して保持するために、半径が変化した多少扁平な半円形状とされることが好ましい。すなわち、側壁332及び載置面300aで形成される略半円状溝部である歯車載置部300(図10参照)において、被削歯車14の挿入側の開口部の半径r2を、被削歯車14が着座する底部側の半径r1よりも大径とし(r2>r1)、該半径r1は、載置される被削歯車14の外径半径と同一(被削歯車14と比べて若干大径や小径の場合も含む)に形成する。このように開口側がやや大径の半径r2に設定されると、人手やロボット(図示せず)による歯車載置部300への被削歯車14の載置や取り出しを一層容易に行うことができる。
図11に示すように、支柱304は、図示しないボルトでスライダ306上に固定され、スライダ306と共に進退可能である。支柱304は、カセット302を構成する支持体312の狭幅部320及びストッパ328が挿入される鉛直方向(Y方向)に延びた矩形溝346と、矩形溝346の上部壁間をX方向に貫通する一対の嵌合孔348と、矩形溝346の略中央背面に窪み、コイルばね322が着座すると共に、支持体312のばね支持棒324の逃げ部となる円形凹部350とを有する。スライダ306は、例えば、ブロック状に構成されると共に、ガイドレール308が挿通される貫通孔(図示せず)を有し、図示しない車輪等を下面や側面に設けてもよい。スライダ受け部であるガイドレール308は、円柱状のシャフトであるが、他の形状のレールであってもよい。
従って、図9及び図12に示すように、支持体312と載置台314とが固定されたカセット302は、支柱304の矩形溝346に狭幅部320及びストッパ328が挿入されると共に、円形凹部350に着座したコイルばね322にばね支持棒324が挿入された状態で、シャフト316が一方の嵌合孔348から貫通孔318を通して他方の嵌合孔348に嵌着される。
これにより、カセット302が、圧縮ばねであるコイルばね322によって支柱304に対して弾性支持されつつ、シャフト316を揺動軸として上部支点支持され、当該カセット302は、図12中の矢印θ1及びθ2方向に弾性的に揺動することができる(図12の2点鎖線参照)。カセット302は、前記の上部支点支持される以外にも、シャフト316をコイルばね322より下方に配置した下部支点支持とし、コイルばね322を圧縮ばねではなく、引張ばねとして構成することもできる。
この際、ストッパ328に対応する位置の矩形溝346が止め板349で閉じられると共に、止め板349及びストッパ328にそれぞれ対向するストッパボルト351、353が固定される。ストッパボルト351、353は、基本的に、カセット302が支柱に対して直角位置(水平位置。Y方向)となる状態で互いに当接するようにセットされる(図12の実線位置)。従って、カセット302は、下方(図12の矢印θ2方向)にはストッパ328が矩形溝346に当接するまでの範囲で揺動可能である一方、原点位置である水平位置ではストッパボルト351、353が当接することから、それより上方(図12の矢印θ1方向)への揺動が規制される。すなわち、カセット302は、例えば、被削歯車14と工具との当接で下方に揺動された場合にも、コイルばね322の弾性力による跳ね返りで、水平位置より上方に揺動することが規制されることから、被削歯車14と工具との過度な接触や衝撃的な接触を防止することができる。
図9及び図11に示すように、ベース310は、4枚の側壁352が周囲に立設されると共に、その内側にスライダ306を収納しており、スライダ306上に固定された支柱304が側壁352よりも上部に突出している。側壁352のうち、ガイドレール308と並んだ所定の1枚(又は2枚)には、ガイドレール308より多少短尺な長孔354が形成されている。従って、止めねじ356を長孔354に挿通させてスライダ306側部のねじ孔358に締付け及び緩めることにより、該スライダ306をガイドレール308に沿って移動させ、所定の位置で固定することができる。スライダ306は、このように手動で動作されるが、例えば、図示しないレバー手段等により進退及びロックされるような構成や、所定の操作ボタンを押すことで図示しないモータ等を介して所定位置まで進退及びロックされるような構成とすることもできる。
以上のような歯車着脱装置11によれば、クランプ手段等の保持手段や微細制御を行うハンドリング装置等を特別に設けることなく、簡単且つ低コストなセミオート構造の着脱ローダであり、被削歯車14を歯車載置部300に容易に載置・保持することができると共に、載置した被削歯車14をスライダ306によって容易に所望の位置へと進退させて位置決めすることができ、被削歯車14を加工部に容易に着脱することができる。このため、加工前後の被削歯車14の着脱によるロスタイムを可及的に低減することができる。
図13に示すように、歯車着脱装置11によって面取り加工部12等、つまりワーク支持部204を構成するヘッドストック214及びテールストック216間に搬送及び位置決めされた被削歯車14に対しては、支持軸236a、236bを切欠き334を介して軸支させることができる。
この際、載置面300aに載置された状態での被削歯車14の中心点P1(図12参照)よりも、支持軸236a、236bの軸心を鉛直方向(Y方向)で多少上方に設定する。これにより、支持軸236a、236bで軸支された被削歯車14は、その中心点P2(図13参照)が前記中心点P1よりも多少上方に引き上げられ、載置面300aから離間する。このため、加工中に被削歯車14が載置面300a等に干渉することがなく、その結果、スライダ306等を動作させることなくカセット302を加工部へと位置決めした状態のまま加工を行うことができ、迅速且つ効率的に加工を開始することができると共に、加工後の被削歯車14の搬出も迅速に行うことができる。しかも加工時の切削油や切屑等は、載置面300a上に溜まることなく、側壁332に形成された切欠き336によって外部へと有効に排出される。
カセット302を構成する載置台314の先端側には、円弧状の切欠き338が設けられているため、例えば、フレージングカッタ18による面取り加工時に、ローラカッタ228を被削歯車14へと干渉なしにセットすることができる(図13参照)。
被削歯車14を載置するカセット302が支柱304に対して揺動可能に弾性支持されているため、後述する被削歯車14と工具(フレージングカッタ18等)との噛合い時、必要に応じてカセット302が揺動する(図16A参照)。すなわち、噛合い時、噛合い方向(Y方向)に進動する工具の歯先と被削歯車14の歯先とが相互に干渉した場合であっても、カセット302によって被削歯車14を前記噛合い方向から離脱する方向に逃がすことができる。このため、歯先干渉による工具や被削歯車14の折損等を可及的に防止することができ、さらに、噛合い位置の修正も容易に行うことができる。
カセット302は、支柱304に固定され支持される支持体312と、被削歯車14を載置する載置台314とに容易に分離及び装着可能である。このため、被削歯車14の種類によって外径等が異なる場合であっても、載置台314のみをその形状に適したものに交換するだけでよく、汎用性が高い。勿論、支持体312と載置台314とは分離不能な一体型に構成してもよい。
歯車加工装置10によれば、ターレット機構254の回転により順に第1アーム262a、第3アーム262c及び第5アーム262eがワーク支持部204の被削歯車14と対面する位置に移動し、上記した歯車着脱装置11で搬送され、支持軸236a、236bで軸支された被削歯車14を連続的に加工することができる。つまり、ターレット機構254の各工具は、Zモータ256の作用下に昇降可能であることから、被削歯車14の面取り加工やシェービング加工をするときには下降して該被削歯車14に噛み合い、ターレット機構254を回転させるときには上昇して退避する。
被削歯車14を軸支する支持軸236a、236bは非自立駆動の簡便な構成であり、加工時には被削歯車14はターレット機構254の工具が噛合することにより連れ回りで回転する。ターレット機構254に接続される各工具は被削歯車14と比較して大きいことから、イナーシャも大きく、必然的にスピンドルモータ260もある程度大型である。このような大きいスピンドルモータ260を用いることにより、工具を介して被削歯車14を加減速する時間を短くすることができる。つまり、被削歯車14はイナーシャが比較的小さいことから、工具に容易に追従して加減速するからであって、加工時間の短縮を図ることができる。
歯車加工装置10では、駆動箇所に応じて油圧駆動、空圧駆動及び電動を使い分けている。Xモータ219、ベース回転モータ222、Yモータ244及びZモータ256に係る各軸、及びサーボモータからなるスピンドルモータ260の回転角度(位相)はNC制御で精密に位置決めされる。
被削歯車14の加工をするときには、工具支持機構ボックス252及びターレット機構254の重量は被削歯車14に加わる。これらの工具支持機構ボックス252及びターレット機構254の重量は相当程度の重量を有しており、Zモータ256が過度に大きい力を発生させなくても(例えば、Zモータ256の電流が0であっても)被削歯車14に対して十分な荷重を効率的に加えることができる。これにより、被削歯車14を適度に押しながらの加工が可能となり、加工時の被削歯車14のぶれや偏心を防止でき、安定した加工をすることができる。
このように、歯車加工装置10(ターレット機構254)では、1台の装置において、第1アーム262aでフレージングカッタ18による面取り加工を行い、第3アーム262c及び第5アーム262eでシェービングカッタ20による歯面28のシェービング加工を行うことができ、効率的である。
また、ワーク支持部204は、各アーム262a〜262fに対して向きを調整する回転テーブル202に設けられていていることから被削歯車14に応じた適切な軸交差角ψ1(ψ2)を設定することができる。これにより、ターレット機構254の各アーム262a〜262fは、ワーク支持部204の軸J1に対して軸交差角ψ1(ψ2)を有する状態になる。つまり、ターレット機構254自体が軸J1に対して相対的に斜めになることから、フレージングカッタ18及びシェービングカッタ20のいずれも被削歯車14に対して容易に軸交差角ψ1(ψ2)をもって噛合させることができる。勿論、軸交差角ψ1と軸交差角ψ2を同一角度に設定する場合には、加工工程毎の個別の角度調整が不要で、より簡便な構成とすることができる。同様に、歯車着脱装置11もベース310を介して回転テーブル202に設けられていることから、該歯車着脱装置11に回転機構等を設けることなく、回転テーブル202による軸交差角ψ1、ψ2に直接的に対応させることができ、被削歯車14を面取り加工部12やシェービング加工部13へと正確に着脱することができる。
歯車加工装置10では、Xモータ219及びZモータ256の同時協調的動作により、被削歯車14に対して種々の歯面を形成することも可能である。
次に、本実施の形態に係る歯車加工方法について、歯車着脱装置11及びこれを搭載する歯車加工装置10を用いて実施する場合を例示して説明する。
図14に示すように、本実施の形態に係る歯車加工方法では、先ず、ステップS101において、素材に対してホブ等による歯切りを行う(歯切り工程)。この歯切りにより被削歯車14の歯26の概略形状が形成される。本実施の形態の場合、歯切り工程は、歯車加工装置10以外の他の切削盤等により実施され、歯切りされた被削歯車14を歯車加工装置10で面取り及びシェービングする場合を例示する。なお、歯切り加工も歯車加工装置10で実施してもよいことは勿論である。
ステップS102において、ステップS101で歯切りされた被削歯車14を歯車着脱装置11により歯車加工装置10の加工部へと搬送及び位置決めする(歯車搬入工程)。
このようなステップS102による歯車搬入工程では、先ず、カセット302の歯車載置部300へと、人手やロボット等によって被削歯車14を載置する(図15A参照)。
次に、スライダ306を進動させ、被削歯車14を加工工具であるフレージングカッタ18の切り込み方向(Y方向)で前方、つまりフレージングカッタ18の直下の噛合待機位置まで搬送して位置決めし、スライダ306を固定する(図15B参照)。
この際、予めフレージングカッタ18を加工位置(噛合待機位置)まで下降させた状態で、加工時よりも十分に遅い低速で回転させておく。そうすると、被削歯車14は前記噛合待機位置まで移動される途中、回転方向がフリーで保持された歯車載置部300内で、低速回転されているフレージングカッタ18の加工歯32a、32bにより連れ回りされつつ、次第に噛合いする(図15B参照)。すなわち、被削歯車14は、歯車載置部300内に保持されたまま、載置面300a上で転がりつつフレージングカッタ18と噛合いする。このような転がり方式による噛合いでは、一層円滑且つ確実に噛合いさせるため、フレージングカッタ18と被削歯車14とは、互いの歯先と歯底とがやや離間した予備的な噛合い状態となるように設定される(図15B参照)。
そこで、図15Cに示すように、フレージングカッタ18の回転を停止させると共に、支持軸236a、236bを被削歯車14の両側から互いに接近させ(図7A参照)、その先端の突出軸238aと係合凹部238bとを係合させる(図7B参照)。従って、上記したように支持軸236a、236bの軸心が載置面300a上に載置される被削歯車14の中心よりも多少上方に設置されていることから(図12及び図13参照)、支持軸236a、236bで軸支された被削歯車14は、上方に引き上げられて載置面300aから離間し、同時にフレージングカッタ18と完全な噛合い状態となる(図15C参照)。
このような歯車搬入工程では、上記した転がり方式による噛合い時(図15A及び図15B参照)、被削歯車14の載置状態等によっては被削歯車14の歯先とフレージングカッタ18の歯先とが干渉する可能性もある(図16A参照)。
ところが、上記したように歯車着脱装置11では、被削歯車14が載置される歯車載置部300を設けたカセット302が、揺動可能に弾性支持されている(図12参照)。従って、フレージングカッタ18に押圧された被削歯車14は、カセット302によって矢印θ2方向へと弾性的に揺動されて退避する(図16A参照)。しかも、被削歯車14がフリーな状態で歯車載置部300に保持されていることから、コイルばね322の弾性作用による矢印θ1方向への跳ね返り時に多少回転してフレージングカッタ18と好適に噛合い、図15Bに示すものと同様な予備的な噛合い状態となる(図16B参照)。前記跳ね返り時、カセット302は、ストッパボルト351、353(図12参照)が当接して上方への過度な揺動が規制され、被削歯車14とフレージングカッタ18とが過度に接触したり衝撃的に接触したりすることを有効に防止することができる。
なお、図16Aに示すように歯先同士が干渉した際、手動等によってスライダ306を多少前後に動作させることにより、被削歯車14の位相を変動させ、一層迅速に干渉状態を解消し、図16Bに示すような噛合い状態とすることも可能である。
次に、ステップS103では、上記ステップS102によりフレージングカッタ18と被削歯車14とが噛み合いされたことから、面取り加工部12による被削歯車14の面取り加工を行う(面取り工程)。
歯車着脱装置11では、上記したように、工具と被削歯車14とを完全に噛合いさせた状態では被削歯車14が載置面300aから完全に離間するため(図13及び図15C参照)、カセット302等を前記ステップS102の完了位置に待機させたまま、すぐに当該ステップS103を開始することができる。また、カセット302の先端側に円弧状の切欠き338が設けられているため、当該面取り加工時に、ローラカッタ228を被削歯車14へとカセット302との干渉なしに円滑に当てることができ(図13参照)、面取り加工と同時にばり取り加工を行うことができる。この際、加工時の切削油や切屑等は、載置面300a等へと流れ落ちるが、載置面300a上に溜まることなく、側壁332に形成された切欠き336及びテーパ面336aから外部へと有効に排出される。
当該ステップS103において、面取り加工部12は、上記のようにフレージングカッタ18が被削歯車14に対して軸交差角ψ1を有して噛合いして面取りをする。このため、被削歯車14の端面角部30、31に対して押し潰して面取りをするだけでなく、押し潰しによる余肉の盛り上がりの発生を抑制することができ、次工程以降での切削が容易且つ高精度となる。
ステップS104において、シェービング加工部13による被削歯車14の1回目のシェービング加工を行う(第1シェービング工程)。シェービング加工部13では、上記のように、シェービングカッタ20が被削歯車14に対して軸交差角ψ2を有して噛合してシェービング加工をし、所定の取代まで歯面を粗仕上げ切削する歯面成形を行う。
このステップS104は、例えば、ステップS103の面取り加工終了後、支持軸236a、236bを被削歯車14から外して被削歯車14を歯車載置部300内でフリーな状態にすると共に、回転を停止させたフレージングカッタ18を上方に移動させて次のシェービングカッタ20を割出し、該シェービングカッタ20を被削歯車14へと噛合いさせた後に実施される。勿論、支持軸236a、236bを離間させずに被削歯車14を軸支したまま、工具交換を行って次のシェービングカッタ20と噛合いさせる方法や、上記の転がり方式等による噛合いを再度行う方法等も可能である。このような工具交換時の工具と被削歯車との間での歯車噛合い制御方法について、詳細は後述する。
ステップS105において、シェービング加工部13による被削歯車14の2回目のシェービング加工を行う(第2シェービング工程)。この第2シェービング工程についても、上記した第1シェービング工程と略同様なシェービング加工を行うとよいが、当該第2シェービング工程は精密仕上げ切削であるため、カッタ切込速度等を第1シェービング工程と異なる設定にしてもよい。
このステップS105についても、例えば、ステップS104の第1シェービング加工終了後、支持軸236a、236bを被削歯車14から離脱させ、ターレット機構254を介して回転を停止させた第1シェービング工程で用いたシェービングカッタ20を上方に移動させると共に、次のシェービングカッタ20を割出し、該シェービングカッタ20を被削歯車14へと噛合いさせた後、実施するとよい。
次に、ステップS106において、ステップS105で歯面28が成形された被削歯車14を歯車加工装置10の加工部から取り外し、歯車着脱装置11で搬出する(歯車搬出工程)。
ステップS106による歯車搬出工程は、基本的には上記したステップS102での歯車搬入工程の逆手順である。すなわち、加工が終わってシェービングカッタ20が停止された状態で、シェービングカッタ20を被削歯車14から離間させる方向に上昇させると共に、支持軸236a、236bを離間させる(図7B参照)。これにより、被削歯車14が載置面300a上に載置されるため、スライダ306を後退させ、加工部から被削歯車14を離脱させる。その後、人手やロボット等により加工を終えた被削歯車14を歯車載置部300から搬出すればよい。このように、歯車着脱装置11では、加工時にカセット302が加工部直下で待機しているため、加工後、容易に且つ迅速に被削歯車14を歯車載置部300へと載置して搬出することができ、次工程へと迅速に移送可能である。
ステップS107において、被削歯車14の熱処理による浸炭及び焼入を行う(熱処理工程)。これにより被削歯車14は硬度が高くなる。
ステップS108において、被削歯車14の歯車研削加工を行う(歯車研削工程)。歯車研削加工は、被削歯車14に対して螺旋条を有する砥石(図示せず)を噛合させながら同期回転させ、歯26の歯面28を仕上げる加工である。この時点では、熱処理によって被削歯車14は相当に硬くなっているが、面取り工程において面取りがなされるとともに盛り上がり部の発生が抑制されていることから、砥石に過度な負荷がかかることがない。
ステップS109において、被削歯車14のギアホーニング加工を行う(ホーニング工程)。ギアホーニング加工は、内歯砥石(図示せず)に対して被削歯車14を噛合させながら回転をして、歯26の歯面28をさらに高精度に仕上げる加工である。
このような歯車研削工程やホーニング工程等の歯面仕上げ工程で使用される工具についても、上記フレージングカッタ18等と同様に、歯車加工装置10のターレット機構254に設けておき、連続的に加工を実施することもできる。なお、熱処理後の歯面仕上げ工程は、歯車研削加工及びギアホーニング加工に限られず、例えば、仕上げホブ工程及びリーマ工程等で、歯面を仕上げることのできる工程のうちのいずれか1つ以上を条件に応じて選択すればよい。また上記実施の形態では、明記した工程以外にも、必要に応じて端面切削工程、内径ホーニング工程等を行ってもよいことは勿論である。
上記ステップS103、ステップS104(又はステップS105)やステップS107〜S109での各工程は、製品である加工後の被削歯車14の要求品質や種類等によっては、省略することもできる。これら各工程を適宜省略した場合であっても、製品歯車の要求精度等によっては十分な精度を持つ歯車を製造することができるからである。
次に、例えば、上記したステップS103とステップS104との間で実施される工具と被削歯車との歯車噛合い制御方法(噛合い位置出し制御方法)を例示しながら本実施の形態に係る歯車加工方法をより詳細に説明する。
この歯車噛合い制御方法は、例えば、図14に示す歯車加工方法の一部として実施される。そこで、以下では、上記したステップS102での初期的な噛合いの後、ステップS103の面取り工程からステップS104の第1シェービング工程に至る際の被削歯車と工具との噛合い制御方法を例示して、本実施の形態に係る歯車加工方法を説明する。勿論、この歯車噛合い制御方法は、別の工具と被削歯車との間での噛合いにも適用することができ、さらには、ターレット機構を用いた工具交換を伴わず被削歯車を軸支する支持軸を別の装置の加工部へと移動させながら順次加工を行うような構成であっても適用することができる。
先ず、上記ステップS102の歯車搬入工程により、被削歯車14を上記の転がり噛合いによってフレージングカッタ18と適切に噛合いさせ、図14のステップS103により、非自立駆動の支持軸236a、236bに被削歯車14を軸支した状態で面取り加工を実施する(第1加工工程)(図15A〜図15C参照)。
ここで、当該歯車噛合い制御方法では、フレージングカッタ18やシェービングカッタ20の加工装置の加工軸(J2、J3、262a等)への取付けに用いるキー溝18a、20a(図2及び図4参照)をカッタの基準位置として予め設定しておく。
すなわち、図17に示すように、例えば、フレージングカッタ18の場合、その中心点P3からキー溝18aの中心を通る直線L1上に、所定の加工歯32a、32bの噛合基準点である歯先中心Pc(歯底中心としてもよい)があるように設定し、つまり、キー溝18aと加工歯32a、32bの位相位置を合わせて構成しておく。なお、図17より明らかに、工具と被削歯車の中心点間を結ぶ方向である切り込み方向(鉛直方向)を直線L0とすると、キー溝18aの中心が前記直線L1に一致した状態では、直線L1と直線L0とが一致する。
これにより、上記したサーボ制御が可能なサーボモータで構成されるスピンドルモータ260(図6参照)の回転位相を制御することにより、キー溝18aを基準位置として、例えば、図17に示すように切り込み方向(鉛直方向)で最先端位置(最下部位置)である直線L0上に、所定の加工歯32a、32bの歯先中心Pcを容易に一致させることが可能となる。例えば、キー溝18aの位置を切り込み方向に一致させれば加工歯32a、32bの歯先中心Pcもそれに一致する。
この場合において、例えば、加工歯32a、32bの歯数が偶数の場合には、キー溝18aが鉛直上方にある位置でも反対側の加工歯32a、32bの歯先中心Pcが切り込み方向で最先端位置(直線L0)に一致する。換言すれば、加工歯32a、32bの歯数が偶数及び奇数のどちらであっても、キー溝18aの停止位置である基準位置の位相に基づき、加工歯32a、32bの歯数から算出した1歯分(1ピッチ分)の角度を基準として、フレージングカッタ18を所定角度回転させて位相をずらし、いずれかの加工歯32a、32bを前記直線L0と一致させることにより、当該加工歯32a、32bを切り込み方向で最先端位置とすることができる。シェービングカッタ20についても、同様に、基準位置や噛合基準点等を設定すればよく、上記した歯車研削工程やホーニング工程に用いる砥石等についても同様に設定すれば、当該歯車噛合い制御方法を適用することができる。
そこで、面取り加工が終了後、フレージングカッタ(第1のカッタ)18の回転を停止し、予め設定しておいたフレージングカッタ18の基準位置であるキー溝18aに基づき、いずれかの加工歯32a、32bの噛合基準点である歯先中心Pcを切り込み方向で最先端位置(鉛直方向で最下部位置)である直線L0に一致させる(図18A参照)。すなわち、キー溝18aを前記最先端位置に一致させてもよいし(この場合、図18Aでは直線L0が直線L1と一致する)、上記したようにキー溝18aの停止位置の位相に基づきいずれかの加工歯32a、32bの歯先中心Pcが前記最先端位置に一致するようにしてもよい。この際、フレージングカッタ18と被削歯車14とは未だ噛合い状態にあることから、被削歯車14の歯26も加工歯32a、32bに伴って所定の噛合位置に回転され、次のシェービングカッタ20との噛合いに好適な位置となる。
なお、図19に示すように、噛合いに要する時間を一層短縮するためには、フレージングカッタ18の停止時、前記最先端位置である直線L0に最も近接した加工歯32a、32bの歯先中心Pc1を該直線L0(最先端位置)へと一致するように位相制御(角度補正)すれば、実質的にフレージングカッタ18の停止後の回転角度を加工歯32a、32bの1歯分の回転角度内で調整できるため、効率的且つ迅速である。勿論、図18Bに示す後述するシェービングカッタ20の場合にも同様な位相制御を行ってもよい。
また、前記基準位置としては、キー溝以外、例えば歯車加工装置の加工工具取付け軸と加工工具との取付け位相を一致させるマーク等を用いてもよい。要は、歯車加工装置10のスピンドルモータ260及び駆動盤206のように、加工工具(カッタ)を自立駆動させる駆動装置が駆動制御機構(例えば、サーボ機構)を有する場合に、該駆動制御機構によってカッタの加工歯の位相を正確に制御できるような構成がなされていればよい。
次に、このように位相制御されたフレージングカッタ18を後退(上昇)させ、ターレット機構254により、次の加工工程である第1シェービング工程(上記ステップS104)で使用するシェービングカッタ(第2のカッタ)20を割り出す。この際、フレージングカッタ18が被削歯車14から離間すると共に、支持軸236a、236bを取り外し、被削歯車14をカセット302の歯車載置部300内でフリーな状態とするとよい。
続いて、図18Bに示すように、割り出されたシェービングカッタ20についても基準位置であるキー溝20aに基づき、その加工歯44の噛合基準点である歯先中心Pcを切り込み方向で最先端位置(鉛直方向で最下部位置)である直線L0に一致させる。この動作は、上記したフレージングカッタ18の場合と略同様に行うことができる(噛合工程)。
従って、図18Cに示すように、シェービングカッタ20を前進(下降)させるだけで、その加工歯44を被削歯車14の歯26に円滑に噛合いさせることができ、次の第1シェービング工程(第2加工工程)を迅速に開始することができる。この際、被削歯車14が歯車載置部300内でフリーな状態とされていることから、被削歯車14が多少動くことができ、シェービングカッタ20を一層円滑に噛合いさせることができる。
このような歯車噛合い制御方法は、例えば、歯車加工装置10では、制御部である駆動盤206のNC制御下に実施される。
以上、この歯車噛合い制御方法を含む本実施の形態に係る歯車加工方法によれば、少なくとも2つの加工工程(第1及び第2加工工程)を順に実施して被削歯車を加工する場合に、先の加工工程で用いる第1のカッタ(フレージングカッタ18)の加工歯と被削歯車14の歯との間での噛合位置情報(噛合位相情報)であるセッティングデータを活用し、後の加工工程で用いる第2のカッタ(シェービングカッタ20)の加工歯と被削歯車14の歯との噛合いを一度で円滑に短時間で行うことができ(噛合工程)、効率的である。従って、工具交換時の噛合いミスによるロスタイムを可及的に低減することができ、生産効率を向上させることができる。
また、例えば、工具交換後の第2のカッタ(シェービングカッタ20)の加工歯の噛合基準点である歯先中心Pc(又は歯底中心)を切り込み方向で最先端位置とする際には(図18B参照)、前記基準位置に基づき、加工工程毎(被削歯車毎)に順次、異なる加工歯の歯先中心Pcを直線L0に一致させるように制御するとよい。これにより、当該カッタの加工開始位置を加工工程毎に適宜変更することができるため、工具磨耗の偏りを防止することができ、工具寿命を延ばすことができる。なお、最初に噛合いされる第1のカッタ(フレージングカッタ18)は、転がり方式で噛合いさせることにより、加工工程毎の加工開始位置をランダムに変更できるため、工具磨耗の偏りを防止することができる。
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。