JP4493805B2 - 高純度安息香酸誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高純度安息香酸誘導体の製造方法に係り、特に、ベンゾトリクロライド類を加水分解して安息香酸クロライド類を製造し、また、この安息香酸クロライド類を加水分解して安息香酸類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
安息香酸誘導体や安息香酸クロライド誘導体は、医薬や農薬等の製造原料として極めて重要な化合物であり、例えばモノクロロ安息香酸やモノクロロ安息香酸クロライドについては、従来より多用されているオルソ体及びパラ体のみならず、近年ではメタ体も利用されている。
【0003】
このような安息香酸誘導体及び安息香酸クロライド誘導体の製造方法については多くの方法が知られており、例えば、モノクロロベンゾトリクロライドを出発原料としてモノクロロ安息香酸(及びモノクロロ安息香酸クロライド)を製造する場合については、以下の方法が挙げられる。
【0004】
すなわち、第一の方法は、モノクロロベンゾトリクロライドを塩化第二鉄触媒の存在下に加水分解してモノクロロ安息香酸クロライドを合成し、得られたモノクロロ安息香酸クロライドを蒸留により精製し、この精製したモノクロロ安息香酸クロライドを過剰の熱水中で加水分解してモノクロロ安息香酸を製造する方法である(米国特許第 1,878,463号明細書)。
【0005】
この方法によれば、塩化第二鉄触媒の存在下に加水分解して得られたモノクロロ安息香酸クロライドを蒸留精製した後、熱水中で加水分解してモノクロロ安息香酸を得るので、触媒として用いた塩化第二鉄由来の金属がモノクロロ安息香酸中に残存することがなく、比較的高純度のモノクロロ安息香酸を製造することができる。
【0006】
しかしながら、この方法においては、モノクロロ安息香酸クロライドの腐蝕性が高いので、蒸留装置としてガラスライニング等の耐腐蝕性処理をした装置を用いる必要があり、経済的でない。また、過剰の熱水中で行う加水分解は、モノクロロ安息香酸の熱水への溶解度が低いため、加水分解反応と同時に生成したモノクロロ安息香酸の析出が起こり、このモノクロロ安息香酸の析出の際に未反応のモノクロロ安息香酸クロライドを取り込んでしまい、結果として得られたモノクロロ安息香酸の純度が不可避的に低下する。しかも、析出したモノクロロ安息香酸は均一な流動性のある状態に結晶化せずに塊状になり、その流動性が悪くて取り扱いが難しいほか、99重量%を超える高純度のモノクロロ安息香酸を得るためには分別再結晶による精製が必須になり、それだけ収率が低下するという問題がある。加えて、未反応のモノクロロ安息香酸クロライドを取り込んだモノクロロ安息香酸の生成物は、その保管中に、未反応のモノクロロ安息香酸クロライドが空気中の水分と徐々に反応して塩酸を生成し、更に結晶の取り扱い性が悪化するほか、金属容器を腐蝕する等の問題がある。
【0007】
また、第二の方法は、モノクロロ安息香酸クロライドの蒸留精製を行うことなく、モノクロロベンゾトリクロライドを苛性ソーダや苛性カリ等のアルカリの存在下に過剰の熱水で加水分解し、モノクロロベンゾトリクロライドから直接にモノクロロ安息香酸を製造する方法である(ドイツ特許第 2,510,139号明細書)。
【0008】
この方法によれば、加水分解反応の際に塩化第二鉄等のルイス酸触媒を使用しないため、ルイス酸触媒由来の金属を含まないモノクロロ安息香酸を得ることができるが、この方法においても、モノクロロ安息香酸の熱水への溶解度が低いために上記第一の方法と同様の問題が生じるほか、加水分解により発生する塩化水素の全てがアルカリで中和され、触媒量のアルカリ添加では加水分解反応が進行せず、多量のアルカリを消費して経済的に不利であるという問題がある。
【0009】
更に、第三の方法は、モノクロロベンゾトリクロライドをテトラクロロエタン中に溶解し、塩化第一鉄触媒と過剰の水の存在下に加水分解し、中間体のモノクロロ安息香酸クロライドを分離することなくモノクロロ安息香酸を直接に製造する方法である(ドイツ特許 2,513,952号明細書)。
【0010】
この方法においては、加水分解反応がルイス酸触媒の存在下に行われるため、上記第二の方法の場合のような問題がないほか、発生する塩化水素を水に吸収させて塩酸として回収することができ、工業的に有利である。また、精製したモノクロロ安息香酸については、有機溶剤への温度勾配による溶解度差を利用し、晶析操作により精製でき、得られるモノクロロ安息香酸の結晶の粒度制御が可能であるという利点がある。
【0011】
しかしながら、加水分解反応に用いる塩化第一鉄等のルイス酸触媒は、水相だけでなくて有機相にも一部溶解し、このルイス酸触媒由来の鉄等の金属がモノクロロ安息香酸の結晶中に不可避的に残存するという問題があるほか、水との混合溶媒系への塩素化炭化水素類等の有機溶剤の使用は環境面からも好ましくない。
【0012】
更にまた、第四の方法として、モノクロロベンゾトリクロライド中に10重量%以下のトルエンを添加し、塩化第二鉄触媒と過剰の水の存在下に加水分解し、中間体のモノクロロ安息香酸クロライドを分離することなくモノクロロ安息香酸を直接に合成し、得られたモノクロロ安息香酸を分別再結晶により精製してモノクロロ安息香酸を製造する方法も知られている(ポーランド特許 155,519号明細書)。
【0013】
この方法も、上記第三の方法と同様に、加水分解反応がルイス酸触媒の存在下に行われるために、発生する塩化水素を水に吸収させて塩酸として回収できるという工業的に有利な面がある反面、触媒として用いた塩化第二鉄等のルイス酸触媒が有機相にも一部溶解し、このルイス酸触媒由来の鉄等の金属がモノクロロ安息香酸の結晶中に不可避的に残存するという問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、ルイス酸触媒由来の鉄等の金属が不純物として残存することがなく、高純度の安息香酸誘導体を工業的に有利に製造することができる方法について鋭意検討した結果、ベンゾトリクロライド類を鉱酸触媒の存在下に加水分解して安息香酸クロライド類を製造し、次いで得られた安息香酸クロライド類を加水分解する、特に好ましくは、得られた安息香酸クロライド類を水不溶性の有機溶剤中で加水分解し、得られた安息香酸類を有機相から晶析せしめることにより、高純度の安息香酸誘導体を工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
従って、本発明の目的は、ベンゾトリクロライド類から安息香酸クロライド誘導体を経て安息香酸誘導体を製造するに際し、ルイス酸触媒由来の金属が不純物として残存することがなく、高純度の安息香酸誘導体を工業的に有利に製造することができる高純度安息香酸誘導体の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化6】
(但し、式中Rは炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又はニトロ基を示し、Xはハロゲン原子を示し、lは0≦l≦5の整数であって、mは0≦m≦5の整数であって、nは1≦n≦3の整数であり、上記l、m及びnの合計が1≦l+m+n≦6である)で表されるベンゾトリクロライド類を鉱酸触媒の存在下に加水分解し、安息香酸クロライド類を合成する第1加水分解工程と、この第1加水分解工程で得られた下記一般式(2)
【0017】
【化7】
〔但し、式中のR、X、l、m、及びnは一般式(1)の場合と同じである〕で表される安息香酸クロライド類を、鉱酸触媒の存在下に又は無触媒で、かつ、安息香酸クロライド類に対して重量比1〜5倍量の水不溶性有機溶剤中で加水分解し、下記一般式(3)
【0018】
【化8】
〔但し、式中のR、X、l、m、及びnは一般式(1)の場合と同じである〕で表される安息香酸類を合成する第2加水分解工程と、第2加水分解工程で得られた反応混合物から水相を分離除去するか、あるいは、反応混合物を水洗して有機相を回収し、この回収された有機相から安息香酸類の結晶を晶析せしめる晶析工程とを有する、高純度安息香酸誘導体の製造方法である。
【0021】
本発明において、原料として用いるベンゾトリクロライド類は、側鎖にトリクロロメチル基を有するベンゼン誘導体であり、このトリクロロメチル基に対してオルソ位、パラ位、又はメタ位に炭素数1〜6、好ましくは 1〜3の低級アルキル基、炭素数1〜6、好ましくは 1〜3のハロアルキル基、又はニトロ基、更にはハロゲン原子を有する化合物である。
【0022】
このベンゾトリクロライド類としては、具体的には、トリクロロメチル基のみを1〜3個の範囲で有するベンゾトリクロライド、1,2-ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、及び1,2,4-トリ(トリクロロメチル)ベンゼン等のトリ(トリクロロメチル)ベンゼン類や、トリクロロメチル基以外にハロゲン原子、特に好ましくは塩素原子を1〜5個の範囲で有するモノクロロベンゾトリクロライド類、モノクロロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、モノクロロ−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類、ジクロロベンゾトリクロライド類、ジクロロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、ジクロロ−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類、トリクロロベンゾトリクロライド類、トリクロロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、トリクロロ−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類、テトラクロロベンゾトリクロライド類、及びテトラクロロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類や、トリクロロメチル基以外にニトロ基を有するモノニトロベンゾトリクロライド類、モノニトロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、モノニトロ−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類、ジニトロベンゾトリクロライド類、ジニトロ−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、及びジニトロ−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類や、トリクロロメチル基以外に低級アルキル基、特に好ましくはメチル基を有するメチルベンゾトリクロライド類、メチル−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン類、及びメチル−トリ(トリクロロメチル)ベンゼン類等や、トリクロロメチル基以外にハロアルキル基、特に好ましくはクロロメチル基を有するクロロメチルベンゾトリクロライド類、クロロメチル−ビス(クロロホルミル)ベンゼン類、クロロメチル−トリ(クロロホルミル)ベンゼン類等や、又はトリクロロメチル基以外に塩素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、及びメチル基等の低級アルキル基を2種以上有するメチルクロロベンゾトリクロライド類、メチルジクロロベンゾトリクロライド類、及びニトロクロロベンゾトリクロライド類等を挙げることができる。
【0023】
また、このようなベンゾトリクロライド類を加水分解する際に用いる鉱酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等を挙げることができるが、経済性や環境面を考慮すると、好ましくは硫酸触媒又はリン酸触媒であり、より好ましくは硫酸触媒である。
【0024】
本発明の第1加水分解工程は、ベンゾトリクロライド類を鉱酸触媒の存在下に加水分解して安息香酸クロライド類を合成する工程である。ここで、触媒として用いられる鉱酸は、加水分解反応に関与する水と共に鉱酸水溶液として用いられるのがよく、より好ましくはベンゾトリクロライド類にその全てのトリクロロメチル基(-CCl3) をクロロカルボニル基(-COCl) まで加水分解するのに要する水の量(反応当量の水)以上、通常1〜1.3倍当量、好ましくは1〜1.1倍当量の水が添加されるように調整して鉱酸水溶液を添加し、無溶媒で加熱攪拌下に加水分解反応を行うのがよい。
【0025】
ここで用いられる鉱酸水溶液の鉱酸濃度については、使用する鉱酸の種類によっても異なるが、通常40以上80重量%以下、好ましくは50以上70重量%以下であるのがよく、40重量%未満であると反応速度が遅くなり、また、80重量%を超えると加水分解反応の際に急激な発熱が起こって反応の制御が困難になるほか、例えば硫酸を用いた場合にはスルフォン化反応等の副反応も生じる虞がある。
【0026】
そして、鉱酸の添加量についても、使用する鉱酸の種類によっても異なるが、例えば硫酸を用いた場合、ベンゾトリクロライド類に対し、硫酸量として0.05〜5重量%、好ましくは0.1から1重量%の範囲であるのがよく、この添加量が0.05重量%より少ないと反応の進行が遅くて反応終了までに長時間を要し、また、5重量%を超えると反応時間は短縮されるものの、経済的でない。この際の鉱酸水溶液の添加は、連続的にあるいは間欠的に滴下してもよいほか、一括添加してもよい。
【0027】
そして、この第1加水分解工程での反応温度は、通常100〜160℃、好ましくは120〜150℃の範囲で行われ、100℃より低いと反応の進行が遅く、反対に、160℃を超えて加熱すると縮合反応等の副反応が進行して好ましくない。
【0028】
また、本発明の第2加水分解工程は、上記第1加水分解工程で得られた安息香酸クロライド類を水不溶性の有機溶剤中で、好ましくは水不溶性の有機溶剤に溶解して加水分解し、安息香酸類を合成する工程である。
【0029】
この第2加水分解工程においては、第1加水分解工程で得られた反応混合物から安息香酸クロライド類を一般的な蒸留操作によって分離した後、得られた安息香酸クロライド類にその全てのクロロカルボニル基(-COCl) をカルボキシル基(-COOH) まで加水分解するのに要する水の量(反応当量の水)以上の水と有機溶剤とを添加して加水分解してもよく、また、同様に安息香酸クロライド類を分離した後、反応当量以上の水及び有機溶剤に加えて、上記第1加水分解工程で用いたと同じあるいは異なる硫酸、リン酸等の鉱酸触媒を添加して加水分解してもよいが、安息香酸クロライド類の蒸留には一般的にガラスライニング処理した蒸留塔等の使用が必要になり、経済的な観点から、好ましくは第1加水分解工程で得られた反応混合物から安息香酸クロライド類を分離することなく、そのままこの反応混合物に反応当量以上の水と有機溶剤とを加えて加水分解し、安息香酸類を合成するのがよい。この第1加水分解工程での反応混合物をそのま第2加水分解工程で加水分解する場合には、第1加水分解工程で用いた鉱酸触媒がそのまま第2加水分解工程での鉱酸触媒として作用する。
【0030】
そして、この第2加水分解工程で用いる水の量については、反応系に少なくとも反応当量以上の水が存在すればよいが、好ましくは加水分解反応後に用いた有機溶剤の有機相から水相が分離し、この水相から有機相を分離回収できる程度の量で存在するのがよく、通常、原料のベンゾトリクロライド類のトリクロロメチル基に対して当量比で1〜40倍当量、好ましくは2〜20倍当量である。水の使用量が1倍当量以下では、反応の進行が遅く、また反応が完結しないため好ましくない。また、40倍当量以上では、容積効率が低下して経済的でない。
【0031】
また、ここで使用される有機溶剤としては、水に対して不溶性であり、加水分解反応に不活性であって、安息香酸クロライド類及び安息香酸類が溶解する有機溶剤であればよく、具体的には、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、クロルベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素類や、ジクロロエタン、トリクロロエタン等の多塩素化エタン類等の有機溶剤を例示することができる。これらの有機溶剤のうち工業的に用いる上で好ましいのは芳香族炭化水素類であり、沸点や融点等の物性面から特に好ましいのはオルソキシレンである。
【0032】
この第2加水分解工程での有機溶剤の使用量は、原料のベンゾトリクロライド類(又は安息香酸クロライド類)に対して重量比で1〜5倍量、好ましくは1〜3倍量であるのがよい。有機溶剤の使用量が1倍量より少ないと、生成する安息香酸類の結晶の晶析制御が難しくなり、また、5倍量より多くなると、容積効率が低下して経済的でない。
【0033】
この第2加水分解工程での反応は、その反応温度が通常80℃以上還流温度以下であり、好ましくは還流温度、すなわち還流条件下で行われる。この反応温度が80℃より低いと反応の進行が遅くて好ましくない。
【0034】
なお、上記第1加水分解工程及び第2加水分解工程において、その加水分解反応の終点は、例えば、反応系から反応混合物を連続的に、あるいは、定期的にサンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析で原料のベンゾトリクロライド類又は安息香酸クロライド類を測定し、これらベンゾトリクロライド類又は安息香酸クロライド類の検出ピークが消失した時点を終点とする、等の方法により求められる。
【0035】
更に、本発明の晶析工程は、第2加水分解工程で得られた有機相から安息香酸類の結晶を晶析せしめる工程であり、第2加水分解工程で得られた反応混合物が有機相と水相とに分離している場合には、デカンターや遠心分離機等の一般的な液々分離装置を用い、例えば80〜100℃の加熱下に、そのまま液々分離して有機相を回収すればよい。また、第2加水分解工程の反応混合物中に水相が形成されていない場合には、必要により有機相を水洗するのがよい。このように水相を分離除去し、あるいは、有機相を水洗することにより、第2加水分解工程で鉱酸触媒が使用されたばあい、この鉱酸触媒を効果的に除去することができる。
【0036】
この第2加水分解工程で生成した安息香酸類は、第2加水分解工程での反応温度80℃以上では、有機相中に溶解した状態で存在しており、飽和溶解度以下にまで冷却されて結晶として析出する。
【0037】
また、この晶析工程では、回収された有機相を5〜35℃程度まで冷却してから安息香酸類の結晶を生成せしめ、この生成した結晶を重力式、加圧式、真空式、遠心式等の一般的な固液分離装置を用いて固液分離し、更に必要により、得られた結晶を水、アルコール、芳香族炭化水素等の溶剤を用いて分別再結晶により精製する。
更に、この晶析工程の固液分離で回収される濾液(有機溶剤)については、その一部又は全部を第2加水分解工程で用いる水不溶性の有機溶剤として繰り返し使用してもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0039】
実施例1
〔メタクロロベンゾトリクロライドの加水分解(第1加水分解工程)〕
還流コンデンサー及び排ガス水洗浄装置を付設した500ml反応フラスコ中に、ガスクロ百分率99.7%のメタクロロベンゾトリクロライド230.0g(1.00 mol)と60重量%硫酸2.0g(対メタクロロベンゾトリクロライド0.5重量%)とを仕込み、反応温度130〜135℃で攪拌下に水17.2g(硫酸中水分との合計で18.0g(1.00 mol))を3.4g/時の速度で約5時間かけて滴下し、滴下終了後0.5時間熟成させた。
【0040】
得られた反応混合物の収量は176.0gであり、その組成は、ガスクロ百分率で目的のメタクロロ安息香酸クロライドが99.5%であり、メタクロロ安息香酸が0.5%であった。
また、排ガス水洗浄装置において回収された塩化水素の量は72.9g(2.00 mol)であった。
【0041】
〔メタクロロ安息香酸クロライドの加水分解(第2加水分解工程)〕
上記第1加水分解工程で得られた反応混合物88.0gを反応容器に仕込み、これにオルソキシレン(特級試薬)230g(対メタクロロ安息香酸クロライド重量比2.6倍量)と水36.0g(2.00 mol; 対メタクロロ安息香酸クロライド4倍当量)とを加え、還流条件(反応温度103〜105℃)で攪拌下に4時間加水分解反応を行った。
【0042】
〔晶析工程〕
反応終了後、得られた反応混合物341.5gを保温しながら液々分離し、有機相313.5gを得た。
この有機相は、オルソキシレン中に目的のメタクロロ安息香酸と中間原料のメタクロロ安息香酸クロライドとが溶解した溶液であり、メタクロロ安息香酸とメタクロロ安息香酸クロライドとの割合はガスクロ百分率で前者が99.7%であり、後者が0.3%であった。
【0043】
このようにして得られた有機相313.5gを、攪拌下に、83℃までは40℃/時の速度で冷却し、この段階でメタクロロ安息香酸の結晶0.2gを種子として添加し、その後更に10℃/時の速度で25℃まで冷却し、メタクロロ安息香酸の結晶のスラリー溶液を得た。
【0044】
このスラリー溶液を遠心濾過装置により固液分離し、オルソキシレン濾液218gを回収すると共に、得られた結晶を常圧下60℃で3時間乾燥し、白色のメタクロロ安息香酸の乾燥結晶71.5g(0.457 mol;対メタクロロベンゾトリクロライド収率91.6重量%) を得た。
得られたメタクロロ安息香酸はガスクロ百分率で100%であった。
【0045】
実施例2
上記実施例1の第1加水分解工程で得られた反応混合物88.0gを用い、また、実施例1で得られたオルソキシレン濾液218gにオルソキシレン(特級試薬)12gを補給して有機溶剤とした以外は、上記実施例1の第2加水分解工程と全く同様の操作を行い、メタクロロ安息香酸クロライドの加水分解を行った。
【0046】
得られた反応混合物342.0gを保温しながら液々分離し、有機相314.0gを得た。
この有機相におけるメタクロロ安息香酸とメタクロロ安息香酸クロライドとの割合はガスクロ百分率で前者が99.7%であり、後者が0.3%であった。
【0047】
このようにして得られた有機相314.0gを、上記実施例1と全く同様に晶析処理して乾燥し、メタクロロ安息香酸の乾燥結晶73.5g(0.469 mol;対メタクロロベンゾトリクロライド収率93.8重量%) を得た。
得られたメタクロロ安息香酸はガスクロ百分率で100%であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明方法によれば、ルイス酸触媒由来の金属が不純物として残存することがなく、ベンゾトリクロライド類を原料にして高純度の安息香酸誘導体を工業的に有利に製造することができる。
Claims (12)
- 下記一般式(1)
- 第1加水分解工程で用いる鉱酸触媒が、硫酸触媒である請求項1に記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 硫酸触媒の使用量が、ベンゾトリクロライド類に対し硫酸量として0.05〜5重量%の範囲である請求項2に記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 硫酸触媒は、硫酸濃度40〜80重量%の硫酸水溶液として添加される請求項2又は3に記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 第1加水分解工程での水の使用量が、ベンゾトリクロライド類の反応当量に対して1〜1.1倍当量の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 第2加水分解工程での水の使用量が、安息香酸クロライド類の反応当量に対して2〜20倍当量の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 第2加水分解工程で用いる水不溶性の有機溶剤が芳香族炭化水素類である請求項1〜6のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 芳香族炭化水素がオルソキシレンである請求項7に記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 晶析工程の固液分離で回収される有機溶剤濾液の一部又は全部を第2加水分解工程で用いるとして繰り返し使用する請求項1〜8のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- 第2加水分解工程では、第1加水分解工程で得られた反応混合物から安息香酸クロライド類を分離することなく、この反応混合物に反応当量以上の水と有機溶剤とを添加し、過剰の水の存在下に再び加水分解し、安息香酸類を合成する請求項1〜9のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- ベンゾトリクロライド類がモノクロロベンゾトリクロライド類である請求項1〜10のいずれかに記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
- モノクロロベンゾトリクロライド類がメタモノクロロベンゾトリクロライドである請求項11に記載の高純度安息香酸誘導体の製造方法。
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