JP4038657B2 - アダマンタノンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アダマンタンおよび/または1−アダマンタノールを硫酸によって酸化し、アダマンタノンを製造する方法に関する。アダマンタノンは高機能性ポリマー、耐熱性樹脂、医薬品等の原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
アダマンタノンの製造方法としては、硫酸法(Organic Synthesis 第53巻第8ページ,H.W.Geluk and V.G.Keizer(1973))がある。具体的には、アダマンタンまたは1−アダマンタノールを濃硫酸中で加熱撹拌しアダマンタノンを得るもので、アダマンタンを原料に用いた場合収率47〜48%、1−アダマンタノールを原料に用いた場合収率70%程度となると報告されている。
【0003】
前記のアダマンタノン製造方法は、原料を濃硫酸中で加熱撹拌するという容易な操作、安価な試薬、設備で製造が可能であることから大変有益な方法であるが、収率が低く、副生成物が多量に生成する事から精製が困難であると共に、原料コストが大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
特開平11−189564号公報にはアダマンタンを濃硫酸で酸化する際、低温で一定時間保持した後、所定の昇温速度で高温にし、高温で反応させるという温度制御を行ってアダマンタノンを得ている。しかしながら、この方法においては反応時間が長くなることと煩雑な温度制御操作が必要であるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における上記したような課題を解決し、アダマンタンおよび/または1−アダマンタノールを原料とし、高収率でアダマンタノンを製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、反応温度を低くして硫酸濃度を低くした場合には、選択率は高いが反応速度が遅く、逆に反応温度を高くして硫酸濃度を高くした場合には、樹脂状物が大量に生成し、アダマンタノンの選択率が低下することが判った。そこで選択率の高い反応温度、硫酸濃度の低い条件に対して、反応の進行と共に低下する硫酸濃度を発煙硫酸の添加により維持することによって副生成物である樹脂状物質の生成を抑えつつ、しかも反応時間の短縮が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、アダマンタンおよび/または1−アダマンタノールを硫酸により酸化してアダマンタノンを製造する方法において、反応開始時の硫酸濃度を80〜90重量%とし、反応中に発煙硫酸を添加することにより反応液中の硫酸濃度の低下を1重量%以内に抑えながら反応させることを特徴とするアダマンタノンの製造方法に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
原料として用いられるアダマンタンおよび/または1−アダマンタノールは、工業グレードおよび試薬グレードとして市販されているものを使用できる。また、濃硫酸としては、一般的に反応で用いられる95〜98重量%の濃度の硫酸の使用が好ましい。硫酸濃度が95重量%未満でも使用が可能であるがそれを補うための発煙硫酸が大量に必要になる。また、99重量%以上の濃度の硫酸を使用した場合には、樹脂状物質が生成しやすくなる傾向がある。
【0009】
反応を行う際の原料と硫酸の量比は、原料100gに対して5〜15倍重量の硫酸を用いるのが好ましい。硫酸の量がこれより少ないと、原料が溶けきらず反応中に昇華する量が増えてしまう。またこれより多いと副生成物である樹脂状物質の生成が多くなり選択率が低下する。
【0010】
また、反応中にアダマンタンが昇華するのを防ぐ等の目的で、必要に応じて溶媒を使用する事も可能である。しかし、その場合には硫酸に対して安定な溶媒を選択することが必要である。このような溶媒としては、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンゼン等の不活性溶媒が挙げられる。
【0011】
硫酸法における反応では二酸化硫黄を生じるため、反応は一般に常圧で行うのが好ましい。しかしながら、水分や溶媒の留去のために減圧下で反応する事も可能である。また、反応装置としては、十分な撹拌が出来て加熱が可能な装置であり、硫酸に耐える材質を使用しているものであればよい。
【0012】
反応温度は20〜80℃、好ましくは40〜70℃の範囲である。反応温度がこの範囲よりも低い場合は反応速度が著しく低下し、大量の発煙硫酸の添加が必要となる。また、この範囲よりも高い場合は反応の最初から樹脂状物が生成してしまい本発明の効果が得られない。
【0013】
アダマンタンなどの原料を含む反応液中の硫酸濃度は原料と硫酸の仕込み比により最適値が異なるが、反応開始時に80〜90重量%にすることが好ましく、より好ましくは82〜88重量%である。反応液中の硫酸濃度がこの範囲より小さい場合は反応時間の短縮効果が得られず、この範囲より大きいと副生成物である樹脂状物の生成量が増え、アダマンタノンの収率が低下する。
【0014】
本発明では、硫酸濃度の低下を1重量%以内に抑えるため発煙硫酸を添加する。硫酸濃度の低下が1重量%を超えると、反応時間の短縮効果が得られず、転化率の低下や副生成物の増加が見られる。さらに加える発煙硫酸の量および速度は、反応開始時の硫酸濃度を維持するように調節することが好ましい。
【0015】
具体的には添加する発煙硫酸の量は、原料であるアダマンタンおよび/または1−アダマンタノール1モルに対して0.5〜10モル好ましくは1.0〜5.0モルの範囲とする。添加する発煙硫酸の量がこの範囲より少ない場合は反応時間の短縮効果が得られず、この範囲より多いと副生成物である樹脂状物の生成量が増え、アダマンタノンの収率が低下する。
【0016】
添加する発煙硫酸の速度は、仕込んだアダマンタンおよび/または1−アダマンタノール1モルに対して0.01〜1モル/時、好ましくは0.05〜0.5モル/時の範囲とする。添加する発煙硫酸の量および速度がこの範囲より少ない場合は反応時間の短縮効果が得られず、この範囲より多いと反応初期における硫酸濃度が高くなり、副生成物である樹脂状物の生成量が増え、アダマンタノンの収率が低下する。なお、反応開始直後は硫酸濃度が高くなりやすいので、0.5〜6時間程度は発煙硫酸を添加せず、その後発煙硫酸を添加し始めるとより好ましい。発煙硫酸について特に制限はないが、扱いが容易であり入手が容易な10〜60重量%濃度の発煙硫酸を用いることが好ましい。
【0017】
反応時間は、発煙硫酸添加量および添加速度に依存するため一概に決定することはできないが4〜100時間程度が好ましい。反応終了後、反応系からアダマンタノンは常法に従って分離することができる。即ち、反応終了後、生成したアダマンタノンを含む混合物を冷水または氷にあけた後、分離してくる粗アダマンタノンを濾別または抽出操作によって単離することができる。さらに精製が必要な場合には再結晶、減圧蒸留、水蒸気蒸留や昇華精製などの方法で精製することができる。
【0018】
【実施例】
本発明を具体的に説明するため、以下に実施例および比較例を挙げて説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
撹拌器、温度計、リーク管を付けた200ml容量の4つ口フラスコにアダマンタン17.0g(126mmol)、96重量%硫酸100mlを入れ、65℃で12時間加熱攪拌した。その間、反応開始から2時間後に発煙硫酸の添加を開始した。添加速度は30mmol/時で合計240mmolを添加した。反応開始時の溶液中の硫酸濃度は87.0%であり、反応中に硫酸濃度の範囲は86.4〜87.0%であった。放冷後、200mlの氷に反応混合物をあけ、エーテル200mlで2回抽出した。エーテル層を飽和食塩水200mlで2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エーテルを減圧下留去し、アダマンタノン12.8g(収率76%)を得た。
【0020】
実施例2
実施例1と同様の反応装置に、1−アダマンタノール18.9g(124mmol)、96重量%硫酸100mlを入れ、55℃で8時間加熱攪拌した。その間、反応開始から添加速度10mmol/時で合計70mmolの発煙硫酸を添加した。反応開始時の溶液中の硫酸濃度は86.9%であり、反応中に硫酸濃度の範囲は86.5〜86.9%であった。放冷後、実施例1と同様の方法でアダマンタノン15.5g(収率92%)を得た。
【0021】
比較例1
実施例1と同様の反応装置に、アダマンタン16.9g(124mmol)、96重量%硫酸100mlを入れ、65℃で12時間加熱攪拌した。発煙硫酸の添加は行わなかった。反応開始時の溶液中の硫酸濃度は86.9%であり、反応中に硫酸濃度は85.6%まで低下した。放冷後、実施例1と同様の方法でアダマンタノン7.8g(収率42%)を得た。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、収率良く簡便な方法で、アダマンタノンを得ることが出来る。
Claims (1)
- アダマンタンおよび/または1−アダマンタノールを硫酸により酸化してアダマンタノンを製造する方法において、反応開始時の硫酸濃度を80〜90重量%とし、反応中に発煙硫酸を添加することにより反応液中の硫酸濃度の低下を1重量%以内に抑えながら反応させることを特徴とするアダマンタノンの製造方法。
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