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JP4475002B2 - イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイス - Google Patents

イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイス Download PDF

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Description

本発明は、イオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスに関するものである。
燃料電池は、その高効率性やクリーンであることなどの理由から、次世代の環境配慮型電気エネルギー発生装置として注目され、各方面で盛んに開発が進められている。
燃料電池は、使用温度や使用条件がプロトン伝導体の性質に強く影響を与えるために、使用されるプロトン伝導体の種類によって燃料電池自体を大別することができる。このように、使用するプロトン伝導体の特性が燃料電池性能に大きく影響することから、プロトン伝導体の性能向上が燃料電池の性能を向上する上で大きな鍵となる。
プロトン伝導体として、塩基性高分子と酸分子とを組み合わせてなる化合物を用いる研究が報告されている(例えば、後記の非特許文献1参照。)。また、硫酸エステル基(−OSO3H)又はスルホン酸基(−SO3H)のようなプロトン解離性の基を有するフラーレン化合物をプロトン伝導体として用いる例が報告されており、これによれば、10-2S/cmのプロトン伝導率を発現する。
Prog. Polym. Sci., 2000, 1463-1502
しかしながら、上記のような塩基性高分子と酸分子とを組み合わせてなる化合物をプロトン伝導体として用い、燃料電池を構成した場合、燃料電池の使用時に生成する水や燃料であるアルコール類(例えばメタノール溶液)に低分子酸が溶解してしまい、プロトン伝導の低下を招いてしまう。
プロトン伝導体として、フラーレン分子にプロトン解離性の基を結合させてなるフラーレン化合物を用いた場合もまた、フラーレン化合物は燃料であるアルコール類(例えばメタノール溶液)や、燃料電池の使用時に生成する水に対して可溶であるため、物理的に不安定であり、プロトン伝導の低下を招いてしまう。
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、水や燃料に不溶であり、安定したプロトン等のイオン伝導を行うことができるイオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスを提供することにある。
即ち、本発明は、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のポリマーと;を有する、イオン伝導体に係るものである。
また、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のポリマーと;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法に係るものである。
また、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のポリマーと;をそれぞれ溶媒に溶解させて各均一溶液にする工程と、これらの均一溶液を混合して不溶物を回収する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法に係るものである。
さらに、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のモノマーと;を混合する工程と、前記混合物の重合を行い、前記誘導体と前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとを有するイオン伝導体を作製する工程とを有する、イオン伝導体の製造方法に係るものである。
また、本発明は、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、前記イオン伝導体が、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のポリマーと;を有する、電気化学デバイスに係るものである。
本発明において、上記の「イオン解離性の基」とは、プロトン等の(以下、同様)イオンが電離により離脱し得る基を意味する。さらに、上記の「塩基性の基」は、前記イオン解離性の基によるイオンの解離を促進すると共に、解離したイオンを受け取り、更にこの受け取ったイオンを、近接する前記イオン解離性の基又は他の前記塩基性の基に供給することができる。
本発明のイオン伝導体及びその製造方法によれば、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとの間でイオンコンプレックスを形成するため、水やメタノール溶液等に不溶であり、物理的に安定している。従って、安定したプロトン等のイオン伝導を行うことができる。
また、本発明の電気化学デバイスによれば、前記第1極と前記第2極との間に挟持された前記イオン伝導体が、上記したような優れた特性を有する本発明のイオン伝導体からなるので、上述したと同様の効果が奏せられる。従って、例えば室温等の低温下、及び乾燥時のスタートアップ可能な優れた性能を有するデバイスを実現することができる。
本発明に基づくイオン伝導体は、前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質とが混合されていることが好ましい。
また、後述するように、前記イオン解離性の基としてプロトン(H+)解離性の基が用いられ、プロトン伝導体として機能することができる。
図1は、本発明に基づくイオン伝導体の一例の模式図である。なお、図1では、前記炭素材料として前記フラーレン分子(例えばC60)を用い、また前記イオン解離性の基として−PO(OH)2、で表される前記プロトン解離性の基を用い、また前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとしてポリビニルイミダゾールを用いた場合である。
本発明に基づくイオン伝導体は、前記誘導体と、ポリマー化された前記塩基性の基を有する前記物質とでイオンコンプレックスを形成してなるので、水やメタノール溶液等に不溶であり、物理的に安定している。従って、例えば燃料電池等に用いれば室温等の低温下、及び乾燥時のスタートアップ可能な優れた性能を有するデバイスを実現することができる。
ここで、本発明に基づくイオン伝導体は、前記炭素物質に、前記イオン解離性の基及び前記塩基性の基が結合されていてもよく、この場合も上記したと同様の優れたイオン伝導性能を有している。
母体となる前記炭素物質としては、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いるが、前記イオン解離性の基を導入した後に、イオン伝導性が電子伝導性よりも大であることが重要である。
前記炭素物質としての前記フラーレン分子は、球状クラスター分子であれば特に限定しないが、通常はC36、C60(図2(A)参照)、C70(図2(B)参照)、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96などから選ばれるフラーレン分子の単体、若しくはこれらの2種類以上の混合物が好ましく用いられる。
これらのフラーレン分子は、1985年に炭素のレーザアブレーションによるクラスタービームの質量分析スペクトル中に発見された(Kroto, H.W.; Heath, J.R.; O'Brien, S.C.; Curl, R.F.; Smalley, R.E. Nature 1985. 318, 162.)。実際にその製造方法が確立されるのは更に5年後のことで、1990年に炭素電極のアーク放電法による製造法が見出され、それ以来、前記フラーレンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。
例えば、前記フラーレン分子に前記イオン解離性の基を結合させてなる前記誘導体を、多数凝集させた時、それがバルクとして示すイオン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の前記イオン解離性の基に由来するイオンが移動に直接関わるため、乾燥雰囲気下においても、継続的に使用することができる。
また、前記フラーレン分子は特に求電子性の性質を持ち、このことが酸性度の高い前記イオン解離性の基としての前記プロトン解離性の基において、水素イオンの電離の促進に大きく寄与していると考えられ、優れたイオン伝導性を示す。また、一つのフラーレン分子中にかなり多くの前記イオン解離性の基を結合させることができるため、伝導に関与する水素イオンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなるので、実質的な伝導率を発現する。
本発明に基づくイオン伝導体を構成する前記誘導体は、その殆どが、前記フラーレン分子の炭素原子で構成されているため、重量が軽く、変質もし難く、また汚染物質も含まれていない。前記フラーレン分子の製造コストも急激に低下しつつある。資源的、環境的、経済的にみて、前記フラーレン分子は他のどの材料にもまして、理想に近い炭素系材料であると考えられている。
本発明においては、前記フラーレン分子を母体とする前記誘導体に代えて、例えば炭素系電極のアーク放電法によりカーボン粉末からなるクラスターを得、このカーボン粉末に前記イオン解離性の基を結合させてなるクラスター誘導体を用いることができる。
ここで、前記クラスターとは通常は、数個から数百個の原子が結合又は凝集して形成されている集合体のことであり、この凝集(集合)体によってイオン伝導性能が向上すると同時に、化学的性質を保持して膜強度が十分となり、層を形成し易い。また、このクラスターは炭素を主成分とするものであって、炭素原子が、炭素−炭素間結合の種類は問わず数個から数百個結合して形成されている集合体のことである。但し、必ずしも100%炭素クラスターのみで構成されているとは限らず、他原子の混在もあり得る。このような場合も含めて、炭素原子が多数を占める集合体を炭素クラスターと呼ぶこととする。
この本発明に基づくイオン伝導体は、母体としての前記炭素クラスターに前記イオン解離性の基を結合させたものを主成分とするので、乾燥状態でもイオンが解離し易く、イオン伝導性を始め、前記したフラーレン誘導体からなるイオン伝導体と類似した効果を奏することができる。しかも、前記炭素クラスターの範ちゅうには後述するように多種類の炭素質が含まれるので、炭素質原料の選択幅が広いという効果も奏することができる。
この場合、母体として前記炭素クラスターを用いるのは、良好なイオン伝導性を付与するためには、大量の前記イオン解離性の基を結合させることが必要であり、これは炭素クラスターによって可能になるからである。しかし、そうすると、固体状のイオン伝導体の酸性度が著しく大きくなるが、炭素クラスターは他の通常の炭素質と違って酸化劣化し難く、耐久性に優れており、構成原子間が密に結合し合っているために、酸性度が大であっても原子間の結合がくずれることはなく(即ち、化学的に変化し難いため)、膜構造を維持することができる。
このような構成のイオン伝導体も、乾燥状態でも高いイオン伝導性を発揮することができ、図3〜図6に示すような各種のものがあり、イオン伝導体の原料としての選択の幅が広いものである。
まず、図3に示すものは、炭素原子が多数個集合してなる、球体又は長球、又はこれらに類似する閉じた面構造を有する種々の炭素クラスターである(但し、分子状のフラーレンも併せて示す)。それに対して、それらの球構造の一部が欠損した炭素クラスターを図4に種々示す。この場合は、構造中に開放端を有する点が特徴的であり、このような構造体は、アーク放電によるフラーレンの製造過程で副生成物として数多く見られるものである。炭素クラスターの大部分の炭素原子がSP3結合していると、図5に示すようなダイヤモンドの構造を持つ種々のクラスターとなる。
大部分の炭素原子がSP2結合しているクラスターは、グラファイトの平面構造を持つか、あるいはフラーレンやナノチューブの全体又は一部の構造を有する。このうち、グラファイトの構造を有するものは、クラスターに電子伝導性を持つものが多いため、イオン伝導体の母体としては好ましくない。
それに対し、フラーレンやナノチューブのSP2結合は、一部にSP3結合の要素を含んでいるため、電子伝導性をもたないものが多く、イオン伝導体の母体として好ましい。
また、前記誘導体が、前記炭素物質同士の化学的又は物理的な結合体又は架橋体からなっていてもよい。例えば、図6は、クラスター同士が結合した場合を種々示すものであり、このような構造体でも、本発明に適用できる。
この炭素クラスター誘導体はそのまま、バインダーなしで膜状やペレットなどの形状に加圧成形することができる。本発明において、母体である炭素クラスターは長軸の長さが100nm以下のもの、とくに100Å以下のものが好ましく、それに導入する前記基の数は2以上が望ましい。
さらに前記炭素クラスターとして、籠状構造体(前記フラーレン分子など)又は少なくとも一部に開放端をもつ構造体が好ましい。このような欠陥構造のフラーレンは、前記フラーレン分子の反応性を持つと同時に、加えて欠陥部すなわち開放部は更に高い反応性を持つ。従って、前記イオン解離性の基の導入が促進され、より高い基導入率が得られ、高いイオン伝導性が得られる。また、前記フラーレン分子に比べて大量に合成することが可能となり、非常に安価に生産できる。
他方、本発明に基づくイオン伝導体の母体として、前記筒状又は線状炭素の構造体を用いることが好ましい。前記筒状炭素の構造体としては、チューブ状、例えば直径が数nm以下、代表的には1〜2nmのカーボンナノチューブであることが好ましい。また、前記線状炭素の構造体としては、ファイバー状の形状、例えば直径が数nm以上、巨大なものでは直径が1μmにも達するカーボンファイバーであることが好ましい。
前記カーボンナノチューブ又は前記カーボンファイバーは、構造上電子を放出し易く、表面積を非常に大きくすることができるので、一層プロトン伝搬効率の向上を図ることができる。
図7(A)の斜視図及び同図(B)の一部断面図に示すような多層カーボンナノチューブのグラフェン構造(円筒状構造)は、欠陥のない高品質なカーボンナノチューブであり、これは電子放出材料として非常に高性能であることが知られている。図7(C)の斜視図に示すような構造を有する前記カーボンファイバーも本発明に好適に用いられる。
ここで好適に使用可能な前記カーボンナノチューブ又は前記カーボンファイバーは、アーク放電法又は化学的気相成長法(熱CVD法)により製造することが可能である。
一方、本発明に基づくイオン伝導体において、前記イオン解離性の基が、−SO3M、−PO(OM)2、−SO2NMSO2−、−SO2NM2、−COOM、=CPO(OM)2及び=C(SO3M)2(但し、Mは陽イオンとなる基、例えば活性水素基である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明に基づくイオン伝導体は、少なくとも前記イオン解離性の基を有する官能基が前記炭素物質に結合しており、前記官能基が−A−SO3M、−A−PO(OM)2、−A−SO2NMSO2−R0、−A−SO2NM2及び−A−COOM[但し、Aは−O−、−R−、−O−R−、−R−O−、−O−R−O−又は−R−O−R’−であり(R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよいCxHy又はCxFyHz(1≦x≦20、1≦y≦40、0≦z≦39)で表されるアルキル部位又はフッ化アルキル部位である。)、Mは陽イオンとなる基(例えば活性水素基)、R0は−CF3又は−CH3である。]からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
さらに、前記イオン解離性の基と共に、電子吸引基、例えばニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素など)などを炭素クラスターに導入してもよい。具体的には、−NO2、−CN、−F、−Cl、−COOR、−CHO、−COR、−CF3、−SO3CF3などである(ここでRはアルキル基を表わす)。このように電子吸引基が併存していると、その電子吸引効果のために、前記イオン解離性の基からプロトン等のイオンが解離し易くなり、この解離されたイオンが、前記イオン解離性の基及び前記塩基性の基を介して一層移動し易くなる。
炭素クラスターに導入する前記イオン解離性の基の数は、炭素クラスターを構成する炭素数の範囲内で任意でよいが、望ましくは5個以上とするのがよい。なお、例えば前記フラーレン分子の場合、フラーレンのπ電子性を残し、有効な電子吸引性を出すためには、前記イオン解離性の基の数は、フラーレンを構成する炭素数の半分以下であることが好ましい。
前記炭素クラスターに前記イオン解離性の基を導入するには、例えば、先ず炭素系電極のアーク放電によって炭素クラスターを合成し、続いてこの炭素クラスターを酸処理するか(硫酸などを用いる)、さらに加水分解等の処理を行うか、またはスルホン化又はリン酸エステル化等を適宜行えばよい。これによって、目的生成物である炭素クラスター誘導体(前記イオン解離性の基を有する炭素クラスター)を容易に得ることができる。
例えば、炭素クラスターであるフラーレンに前記イオン解離性の基を導入したフラーレン誘導体を多数凝集させた時、それがバルクまたはフラーレン誘導体の集合体として示すイオン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の前記イオン解離性の基(例えばOSO3H基)に由来するプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要はなく、外部からの水分の補給、とりわけ外気より水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はない。一つのフラーレン分子中にはかなり多くの前記イオン解離性の基を導入することができるため、伝導に関与する水素イオンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなる。これが、本発明に基づくイオン伝導体が実効的な伝導率を発現する理由である。
以上のように、前記イオン解離性の基を有する炭素クラスターは、それ自体でも酸の官能基の空間的密度が高いといった構造的性質や、母体である炭素クラスター(例えばフラーレン)の電子的性質などによりプロトン等のイオンが解離し、各サイト間をホッピングし易い構造が実現できるため、乾燥状態であってもプロトン等のイオンの伝導が実現される。
しかしながら、上述したようなフラーレン誘導体等の前記誘導体単独では、水やメタノール溶液等に可溶であり、これを燃料電池等のイオン伝導体として用いるとプロトン伝導の低下を招いてしまう。これに対し、図1に例示するような本発明に基づくイオン伝導体は、前記誘導体と、ポリマー化された前記塩基性の基を有する前記物質とでイオンコンプレックスを形成してなるので、水やメタノール溶液等に不溶であり、物理的に安定しており、例えば燃料電池等に用いれば室温等の低温下、及び乾燥時のスタートアップ可能な優れた性能を有するデバイスを実現することができる。
前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとしては、N原子、O原子及びS原子のうち少なくとも1種を構成元素として含有する化合物のポリマーが好適である。
また、前記物質のポリマーが下記構造式で表される構造部分の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらはいずれも、非共有電子対を有する原子を含み、ルイス塩基性のある基である。
Figure 0004475002
また、前記物質のポリマーの前記塩基性の部位が、アミノ基、ピロリドン基、ピリジン基、イミダゾール基、ピリミジン基、ピペラジン基、ピロール基、ピロリジン基、ピラゾール基、ベンズイミダゾール基、フェニルイミダゾール基及びピラジン基からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、前記N原子含有化合物のポリマーが複素環式化合物のポリマーであることが好ましい。
前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの具体例としては、図8に構造式を示すような、イミダゾール、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、フェニルイミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラジン、ピペラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラン及びチオフェン、又はこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の構造を有するポリマーを用いることができる。より具体的には、図8(p)に示すようなポリ[4−ビニルイミダゾール]のようなポリマーを用いるのが好ましい。勿論、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
また、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとしては、例えば図9に示す化合物を挙げることができる。
前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの混入量は、前記イオン解離性の基の数と密接に関係している。実際には、前記イオン解離性の基と、前記塩基性の基との比(前記塩基性の基/前記イオン解離性の基)が、モル比で20以下、好ましくは0.05〜20となるように、前記誘導体と前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとを混入したときに顕著に効果を発揮することができる。
上記モル比率が20を越える場合、イオン伝導体全体に対する前記イオン解離性の基の密度が減少したり、あるいは前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの占有する体積などが大きくなり過ぎたりして、かえってプロトン等のイオン伝導率が低下する悪影響が出始める恐れがある。逆に、上記モル比率が0.05未満であると、前記物質のポリマーに由来する前記塩基性の基の数が前記イオン解離性の基の数の20分の1未満ということになり、イオンコンプレックス形成により水やメタノールに不溶化させることが困難となるため、本発明に基づくイオン伝導体が本来有する上述したようなイオン伝導性を十分に発揮できないことがある。
本発明のイオン伝導体の製造方法は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と;前記塩基性の基を有する前記物質のモノマーと;を混合し、その後加熱重合を行う。これにより、前記誘導体と前記物質のポリマーとでイオンコンプレックスを形成してなる本発明に基づくイオン伝導体を製造することが可能である。
また、本発明のイオン伝導体の製造方法は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と;前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーと;を溶媒に溶解させて均一溶液にする工程と、前記溶媒を除去する工程とを有する。
また、本発明のイオン伝導体の製造方法は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、前記線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と;前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーと;をそれぞれ溶媒に溶解させて各均一溶液にする工程と、これらの均一溶液を混合して不溶物を回収する工程とを有する。
前記誘導体単独では前記溶媒に可溶であるが、例えば前記誘導体と前記物質のポリマーとを均一溶液にすることにより、前記誘導体と前記物質のポリマーとでイオンコンプレックスが形成され、前記溶媒に不溶となるので、前記不溶物として本発明に基づくイオン伝導体を得ることができる。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、アセトニトリル、ピリジン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の窒素化合物、硫黄化合物、又は水等の無機溶媒を用いることができる。
本発明に基づくイオン伝導体は、そのまま所望の形状、例えばペレットや薄膜に加圧成形したり、濾過したりすることによる成形を行うことができる。この際、バインダーは不必要であり、このことは、プロトン等のイオンの伝導性を高める上でも、イオン伝導体の軽量化を達成する上でも有効である。特に、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーがバインダーとしての機能も果たし、良好な成膜性、成形性が付与される。勿論、バインダーとして第3の成分を加えることも可能である。第3の成分として使用可能な高分子材料としては、プロトン等のイオンの伝導性をできるだけ阻害せず、成膜性を有し、化学的、熱的及び機械的安定性を有し、燃料のリークを低く抑えることができるものなら、特に限定はしない。通常は電子伝導性をもたず、良好な安定性を有するものが用いられる。具体例としては、ポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどを挙げることができる。また、前記第3の成分としての高分子バインダーは、例えば、上述したような本発明に基づくイオン伝導体の製造方法の製造過程において任意に混合してよい。
また、上述した以外にも、まず、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーを膜状に成形し、この膜を前記誘導体の溶液に浸漬することによって、前記物質のポリマーに前記誘導体をドープさせ、本発明に基づくイオン伝導体からなる膜を形成することもできる。さらに、前記物質のポリマーからなる膜に対し、前記誘導体の溶液を透過させることによって、前記物質のポリマーに前記誘導体をドープさせ、本発明に基づくイオン伝導体からなる膜を形成してもよい。
本発明に基づくイオン伝導体及びその製造方法によれば、前記イオン解離性の基が結合してなる前記誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとを有するので、水やメタノール溶液等に不溶であり、物理的に安定したイオン伝導体を得ることができる。
さらに、乾燥雰囲気中や、常温を含む広い温度領域(例えば約160℃〜−40℃の範囲)においても使用することができ、緻密でガス遮断性にも優れている。また、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーにより、乾燥雰囲気中においてもイオンの解離が促進されると共に、解離したイオンが前記塩基性の基を経由して円滑に移動することが可能となるので、高いイオン伝導性を示す。
本発明に基づくイオン伝導体は、上述したように、バインダーとして第3の成分を加えてもよく、前記第3の成分は、プロトン等のイオンの伝導性をできるだけ阻害せず、成膜性を有し、化学的、熱的及び機械的安定性を有し、燃料のリークを低く抑えることができるものが好適である。具体的には、上述した材料のほかに、多孔質高分子材料、より好ましくはポリイミド類が挙げられる。ポリイミド類は、寸法安定性が良く特に好適である。
また、前記多孔質高分子材料を多孔質膜として用いる場合は、空孔率は10〜85%が好ましく、また平均孔径は0.05〜5μmが好適である。空孔率が低すぎるとイオン伝導の妨げになることがあり、逆に大きすぎると機械的強度が低下する恐れがある。平均孔径が小さすぎると本発明に基づくイオン伝導体の充填が困難な場合があり、逆に大きすぎると充填物の保持能力が低下する恐れがある。また、膜厚は5〜300μmであることが好ましい。
本発明に基づくイオン伝導体に更に前記多孔質高分子材料を含有させることにより、上述したような本発明の作用効果を奏すると共に、成膜性、機械的強度、化学的強度をより向上させることができ、燃料のクロスオーバーを一層抑えた燃料電池等の電気化学デバイスを実現することができる。
ポリイミド類等の前記多孔質高分子材料を更に含有させる場合、例えば、まず前記多孔質高分子材料を前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの溶液に浸漬して、前記多孔質高分子材料に前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーを充填する。次いで、溶媒を除去した後、前記物質のポリマーを有する前記多孔質高分子材料を前記誘導体の溶液に浸漬し、イオンコンプレックスを形成することによって本発明に基づくイオン伝導体を作製することができる。
また、前記多孔質高分子材料に、前記塩基性の基を有する前記物質のモノマーの溶液を充填し、高分子量化の化学反応を誘起させた後、前記誘導体の溶液に浸漬し、イオンコンプレックスを形成することによって本発明に基づくイオン伝導体を作製してもよい。前記高分子量化の化学反応は、例えば熱や光等の外部エネルギーを加えることにより誘起させることができる(以下、同様。)。
また、前記多孔質高分子材料に、前記塩基性の基を有する前記物質のモノマーと前記誘導体との混合溶液を充填し、高分子量化の化学反応を誘起させることによって本発明に基づくイオン伝導体を作製してもよい。
また、前記多孔質高分子材料に、前記誘導体と前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとの混合溶液を充填し、溶媒を除去することによって本発明に基づくイオン伝導体を作製してもよい。
さらに、前記多孔質高分子材料に、前記誘導体の溶液を充填し、溶媒を除去した後、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの溶液に浸漬してイオンコンプレックスを形成することにより、本発明に基づくイオン伝導体を作製してもよい。
本発明のイオン伝導体は、各種の電気化学デバイスに好適に使用できる。即ち、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなる基本的構造体において、そのプロトン伝導体に本発明に基づくイオン伝導体を好ましく適用することができる。
更に具体的に言うと、前記第1極及び/又は前記第2極が、ガス電極である電気化学デバイスとか、前記第1極及び/又は前記第2極に活物質性電極を用いる電気化学デバイスなどに対し、本発明に基づくイオン伝導体を好ましく適用することが可能である。
以下、本発明に基づくイオン伝導体を、前記第1極に燃料が供給されかつ前記第2極に酸素が供給されてなる燃料電池に適用した例について説明する。
その燃料電池のプロトン伝導のメカニズムは図10の模式図に示すようになり、プロトン伝導部1は第1極(例えば水素極)2と第2極(例えば酸素極)3との間に挟持され、解離したプロトン(H+)は図面矢印方向に沿って第1極2側から第2極3側へと移動する。
図11には、前記プロトン伝導部に本発明に基づくイオン伝導体を用いた燃料電池の一具体例を示す。この燃料電池は、触媒2a及び3aをそれぞれ密着又は分散させた互いに対向する、端子8及び9付きの負極(燃料極又は水素極)2及び正極(酸素極)3を有し、これらの両極間にプロトン伝導部1が挟着されている。使用時には、負極2側では導入口12から水素が供給され、排出口13(これは設けないこともある。)から排出される。燃料(H2)14が流路15を通過する間にプロトンを発生し、このプロトンはプロトン伝導部1で発生したプロトンとともに正極3側へ移動し、そこで導入口16から流路17に供給されて廃棄口18へ向かう酸素(空気)19と反応し、これにより所望の起電力が取り出される。
かかる構成の燃料電池は、プロトン伝導部1に本発明に基づくイオン伝導体が用いられているので、上述したと同様の効果が奏せられる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
前記誘導体として、図12に示すようなスルホン酸系フラーレン誘導体を用い、また前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとして、図8(p)に示すポリビニルイミダゾールを用いた。ポリビニルイミダゾールは、文献Macromolec. Syn., 1974, 5, 43の合成方法に基づいて製造した。
スルホン酸系フラーレン誘導体及びポリビニルイミダゾールをそれぞれ、メタノール溶液に均一に溶解させた後、この2つの溶液を混合した。混合すると同時に、スルホン酸系フラーレン誘導体とポリビニルイミダゾールとでイオンコンプレックスが形成されるため、メタノール溶液に不溶となり、沈殿物が生成する。この沈殿物を回収し、40℃で12時間真空乾燥することによって得られた本発明に基づくイオン伝導体を水又はメタノール溶液に浸したが、1週間経過しても溶解することはなかった。
上記のようにして得られたイオン伝導体を直径4mmの円形のペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。その結果、この粉末はバインダー樹脂等を一切含まないにもかかわらず、成形性に優れており、容易にペレット化することができた。
そして、この成形したペレットを用い、交流インピーダンス法によって伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記に作製したペレット両面を直径4mmの金板で挟み、これに10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅100mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。なお、測定は乾燥雰囲気下及び加湿雰囲気下の2通りで行った。
図13は、スルホン酸系フラーレン誘導体:ポリビニルイミダゾール=6:1の割合で混合したサンプルの乾燥雰囲気下、25℃におけるコールコールプロットである。
図13より明らかなように、非常にきれいな単一の半円状円弧を見ることができる。これは、ペレット内部においてなんらかの荷電粒子の伝導挙動が存在していることを示している。さらに、低周波数領域においては、インピーダンスの虚数部分の急激な上昇が観測された。これは、徐々に直流電圧に近づくに伴って金電極との間で荷電粒子のブロッキングが生じていることを示しており、当然、金電極側における荷電粒子は電子であるから、ペレット内部の荷電粒子は電子やホールではなく、それ以外の荷電粒子、即ちイオン(プロトン)であることが分かる。
図13のコールコールプロットの高周波数側に見られる円弧のX軸切片から、このイオン伝導率を求めることができる。このイオン伝導率の温度依存性を図14に示す。図14より明らかなように、本発明に基づくイオン伝導体は、乾燥雰囲気中でも、広い温度領域において高いイオン伝導率を示し、温度の上昇と共にイオン伝導率も上昇した。
次に、スルホン酸系フラーレン誘導体:ポリビニルイミダゾール=4:1の割合で混合したサンプルについて、交流インピーダンス法によって伝導率を測定し、伝導率の湿度依存性を測定した。具体的には、作製したペレット両面を直径4mmの金板で挟み、これを所定の湿度、25℃に保った恒温恒湿槽に入れ、1MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅100mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。複素インピーダンスは、時間と共に変化し、3時間以降はほぼ一定であったため、湿度を変化させ、4時間経過した後に測定を行い、コールコールプロットの高周波数側に見られる円弧のX軸切片から、このイオン伝導率を求めた。結果を図15に示す。図15より明らかなように、湿度の上昇と共にイオン伝導率も高くなり、相対湿度95%で4.5×10-2(S/cm)の高いイオン伝導率を示した。
実施例2
モノマーであるビニルイミダゾール(VIm)とメタノリン酸フラーレン(MPF)を混合した後、加熱して重合することを試みた。VImの融点は約82℃であり、高温状態ではモノマーが液体として存在すること、またリン酸基はカチオン重合の開始剤となりうるという2つの理由により溶媒や開始剤を別に添加せずに重合を試みた。VImとリン酸基の比が3:1及び9:1になるように混合し、16時間100℃に保温した。VImが溶解すると均一に混ざることを目視で確認した。16時間後、室温まで放冷した。得られた固体に水を添加すると徐々にMPFが水に溶解している様子が確認され、不溶化が完全に行えていないものの、単独のMPFと比較するとかなり溶け難くなっていることが分かった。
上記のようにして得られた本発明に基づくイオン伝導体について、室温下、乾燥雰囲気中にてイオン伝導率を測定した。結果を図16に示す。図16より明らかなように、MPF単独に比べ、VIm:リン酸基=3:1ではイオン伝導率が低下、9:1では上昇している。この結果は、重合後に残存する未反応モノマー量の差によるものと推察される。未反応モノマーが多く残っている方がおそらく高イオン伝導を与えると思われる。さらに、重合温度を150℃にて行った場合、不溶化が更に進行した。
実施例1及び実施例2より明らかなように、本発明に基づくイオン伝導体は、前記イオン解離性の基を有する前記誘導体としてのフラーレン誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマー化された化合物とでイオンコンプレックスを形成してなるので、水やメタノール溶液に可溶であったフラーレン誘導体を不溶化することができ、また、室温等の低温化、及び乾燥状態においても良好なプロトン伝導を発現することができた。このため、プロトン交換膜として本発明に基づくイオ伝導体を用いれば、水やメタノール溶液に不溶であるため、物理的に安定であり、かつ乾燥時のスタートアップ可能な燃料電池等の電気化学デバイスを実現することができる。
実施例3
図12に示すようなスルホン酸系フラーレン誘導体と、図8(p)に示すポリビニルイミダゾールとを有する混合溶液に、ポリイミド多孔質膜(膜厚30μm、空孔率60%、平均孔径0.5μm)を浸漬し、細孔内に溶液を充填させた。その後、徐々に溶媒を除去して溶液濃度を高くし、最終的には、完全に溶媒を除去して本発明に基づくイオン伝導体を作製した。但し、溶媒がポリイミド多孔質膜内に残存していても問題はない。上記のようにして得られた本発明に基づくイオン伝導体は、良好な成膜性と機械的強度を有していた。
上記のようにして作製したイオン伝導体について、交流インピーダンス法によって伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記に作製したイオン伝導体の両面を直径4mmの金板で挟み、これを所定の湿度、25℃に保った恒温恒湿槽に入れ、10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅100mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定し、イオン導電率を算出した。図17は、25℃におけるコールコールプロットである。図17のコールコールプロットから、このイオン伝導率を算出したところ、相対湿度30%で6.8×10-4Scm-1、相対湿度60%で1.6×10-3Scm-1、相対湿度95%で5.2×10-3Scm-1であった。図17のコールコールプロットから明らかなように、湿度が高くなるにつれて、抵抗値(インピーダンス(実数部)Z’との交点)が小さくなり、イオン伝導率が高くなっていることが分かる。
実施例4
図12に示すようなスルホン酸系フラーレン誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの前駆体(モノマー)としてのビニルイミダゾールと、開始剤とを有する溶液に、実施例3と同様のポリイミド多孔質膜を浸漬し、細孔内に溶液を充填させた。その後、熱重合し、溶媒を除去して本発明に基づくイオン伝導体を作製した。上記のようにして得られた本発明に基づくイオン伝導体は、良好な成膜性と機械的強度を有していた。
上記のようにして作製したイオン伝導体について、交流インピーダンス法によって伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記に作製したイオン伝導体の両面を直径4mmの金板で挟み、これを相対湿度60%、25℃に保った恒温恒湿槽に入れ、10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅100mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定し、イオン導電率を算出した。図18は、25℃におけるコールコールプロットである。図18のコールコールプロットから、このイオン伝導率を算出したところ、相対湿度60%で1.6×10-3Scm-1であった。
以上、本発明を実施の形態及び実施例について説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
例えば、上記に前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとが混合されている例を説明したが、本発明に基づくイオン伝導体は、前記フラーレン分子と、炭素を主成分とする前記クラスターと、線状又は筒状炭素の前記構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる前記炭素物質に、前記イオン解離性の基及び前記塩基性の基が結合されていてもよい。
また、前記燃料電池等の本発明に基づく電気化学デバイスにおいて、その形状、構成、材質等は本発明を逸脱しない限り、適宜選択可能である。
さらに、本発明に基づくイオン伝導体は、上述したプロトン(H+)の他にもリチウムイオン等のイオン伝導に用いることができ、アルカリ二次電池等にも適用可能である。
本発明の実施の形態による、本発明に基づくイオン伝導体の模式図である。 同、本発明のイオン伝導体において母体となるフラーレン分子を示す模式図である。 同、本発明のイオン伝導体において母体となるカーボンクラスターの種々の例を示す模式図である。 同、カーボンクラスターの他の例(部分フラーレン構造)を示す模式図である。 同、カーボンクラスターの他の例(ダイヤモンド構造)を示す模式図である。 同、カーボンクラスターの更に他の例(クラスター同士が結合しているもの)を示す模式図である。 同、本発明のイオン伝導体の母体となるカーボンナノチューブ及びカーボンファイバーの概略図である。 同、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーとして用いることができる材料の構造式である。 同、前記塩基性の基を有する前記物質のポリマーの一例の構造式である。 同、燃料電池のプロトン伝導のメカニズムを示す模式図である。 同、燃料電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施例による、実施例1で用いた前記誘導体としてのスルホン酸系フラーレン誘導体の模式図である。 同、本発明に基づくイオン伝導体の複素インピーダンスの測定結果を示すグラフである。 同、本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導率の測定結果を示すグラフである。 同、本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導率の湿度依存性を示すグラフである。 同、本発明に基づくイオン伝導体のイオン伝導の温度依存性を示すグラフである。 同、本発明に基づくイオン伝導体の複素インピーダンスの測定結果を示すグラフである。 同、本発明に基づくイオン伝導体の複素インピーダンスの測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1…イオン伝導体(プロトン伝導部)、2…第1極(負極)、2a…触媒、
3…第2極(正極)、3a…触媒、8、9…端子、12…導入口(水素用)、
13…排出口(水素用)、14…燃料(H2)、15…流路(水素用)、
16…導入口(酸素用)、17…流路(酸素用)、18…排出口(酸素用)、
19…酸素(空気)

Claims (11)

  1. フラーレン分子からなる炭素物質に、下記構造式で表されるイオン解離性の基が直接又は間接的に結合してなる誘導体と;塩基性の基を有するポリビニルイミダゾールからなるポリマーと;バインダーとしての多孔質の高分子材料と;し、前記誘導体及び前記ポリマーが前記多孔質の高分子材料の細孔内に保持されている、イオン伝導体。
    イオン解離性の基:
    −SO 3 M、−PO(OM) 2 、−SO 2 NMSO 2 −、−SO 2 NM 2 、−COOM、= CPO(OM) 2 及び=C(SO 3 M) 2 (但し、Mは陽イオンとなる基である。)から なる群より選ばれた少なくとも1種。
  2. 前記イオン解離性の基が結合された前記誘導体と、前記塩基性の基を有する前記ポリマーとが混合されている、請求項1に記載したイオン伝導体。
  3. 前記イオン解離性の基の少なくとも1個が酸性官能基である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  4. 前記イオン解離性の基と、前記塩基性の基との比(前記塩基性の基/前記イオン解離性の基)が、モル比で20以下である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  5. 少なくとも前記イオン解離性の基を有する官能基が前記炭素物質に結合しており、前記官能基が−A−SO3M、−A−PO(OM)2、−A−SO2NMSO2−R0、−A−SO2NM2及び−A−COOM[但し、Aは−O−、−R−、−O−R−、−R−O−、−O−R−O−又は−R−O−R’−であり(R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよいCxHy又はCxFyHz(1≦x≦20、1≦y≦40、0≦z≦39)で表されるアルキル部位又はフッ化アルキル部位である。)、Mは陽イオンとなる基、R0は−CF3又は−CH3である。]からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載したイオン伝導体。
  6. 前記多孔質高分子材料がポリイミド類である、請求項に記載したイオン伝導体。
  7. 請求項1に記載した前記炭素物質の前記誘導体と、請求項1に記載した前記ポリマーとを溶媒に溶解させ、得られた溶液前記バインダーとなる高分子材料の多孔質体を浸漬して、この多孔質体の細孔内に前記溶液を充填し、しかる後に前記溶媒を除去する、イオン伝導体の製造方法。
  8. 請求項1に記載した前記炭素物質の前記誘導体と、請求項1に記載した前記塩基性の基を有するビニルイミダゾールとを溶媒に溶解させ、得られた溶液に、前記バインダーとなる高分子材料の多孔質体を浸漬して、この多孔質体の細孔内に前記溶液を充填し、しかる後に前記ビニルイミダゾールを重合させて請求項1に記載した前記ポリマーを生成させ、更に前記溶媒を除去する、イオン伝導体の製造方法。
  9. 請求項2〜6のいずれか1項に記載したイオン伝導体を製造する、請求項7又は8に記載したイオン伝導体の製造方法。
  10. 第1極と、第2極との間に、請求項1〜6のいずれか1項に記載したイオン伝導体が挟持されてなる、電気化学デバイス。
  11. 燃料電池として構成されている、請求項10に記載した電気化学デバイス。
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