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JP4452198B2 - シーム溶接性に優れた表面処理鋼板 - Google Patents

シーム溶接性に優れた表面処理鋼板 Download PDF

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JP4452198B2 JP2005049937A JP2005049937A JP4452198B2 JP 4452198 B2 JP4452198 B2 JP 4452198B2 JP 2005049937 A JP2005049937 A JP 2005049937A JP 2005049937 A JP2005049937 A JP 2005049937A JP 4452198 B2 JP4452198 B2 JP 4452198B2
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Description

本発明は、飲料缶、食缶等に使用する溶接缶用の表面処理鋼板に関する。
食品、飲料等に用いられる溶接缶には、ブリキや薄錫(Sn)めっき鋼板(LTS、TNS)が用いられ、缶胴を銅ワイヤーを介してシーム溶接する、”スードロニック法”として知られる溶接法により製缶される。良好なワイヤーシーム溶接性を得るためには、金属Snが一定量以上必要であるとされている。
溶接缶用のSnめっき系表面処理鋼板は、通常、Snめっき後にリフロー処理を施すことで表面の金属光沢を得ているが、Snの付着量が少ない薄Snめっき鋼板(LTS、TNS)では、下地層との合金化の割合が高くなり、溶接性の確保に必要な金属Snを十分に残存させることが難しくなる。そこで、従来、Snの下地層として、合金化を抑制するバリア性の高い皮膜を設けたり、Snが溶融する際に凝集させて島状Snを形成させることで合金化を抑える工夫がなされてきた。
特開昭60−184688号公報(特許文献1)では、Sn−Fe−Ni3元合金層上に、被覆面積率20〜70%の島状Snを有する鋼板が開示されている。特開昭60−208494号公報(特許文献2)では、凸部を有する金属Sn層を、各凸部の面積が1〜800000μm2、面積百分率20〜80%、厚さ0.007〜0.7μmとなるように形成した鋼板が開示されている。特開昭62−103390号公報(特許文献3)では、島状Snの径を30μm、0.1mm2当りの数を100個以上と規定することで、Snの厚みの効果で合金化を抑制する方法を提供している。
また、特開昭61−3886号公報(特許文献4)には、Fe−P、Fe−Mo、Fe−P−Mo合金層により、FeSn2の生成を抑制する方法が開示されている。特開昭61−264196号公報(特許文献5)には、鋼板をめっき前にpH10以上の水溶液で陽極処理することで、Snめっきのリフロー処理で島状Snを得る方法、さらに、特開平1−136993号公報(特許文献6)には、Ni系下地処理被覆層を酸化剤溶液中で陽極電解して不動態皮膜を形成することで、リフロー時の合金化を抑制する方法が提供されている。
特開昭60−184688号公報 特開昭60−208494号公報 特開昭62−103390号公報 特開昭61−3886号公報 特開昭61−264196号公報 特開平1−136993号公報
しかしながら、前記特許文献に記された手段によって形成された鋼板表面の島状Snは、粗大であったり疎らであったりして、平均的には溶接性を向上させるものの、チリ発生による不良は散発し、コイルの全長・全幅にわたって安定して良好な溶接性を得ることは稀である。それが、製缶ラインにおける生産効率を低下させる要因となっている。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、溶接性が安定して良好な表面処理鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討し、Snめっき鋼板の溶接性が金属Sn量や島状Snの面積率、面積当りの数のみに支配されるのではなく、島状Snの分布の緻密さや均一性の影響も大きいことを見出した。さらに、良好な島状Snの分布は、下地に適当なめっきを施すことで実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明の主旨とするところは、
(1)金属状態の島状錫を有する表面処理鋼板であって、島状錫の下地層の露出部が、鋼板表面の任意の方向の直線長さで20μm以上である部分が20個/mm2以下であることを特徴とするシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
(2)金属状態の島状錫を有する表面処理鋼板であって、島状錫の下地層が、Ni量として2〜100mg/m2のFe−Ni合金層又はFe−Ni−Sn合金層であって、該合金層が、さらにMo、Mo化合物、W、W化合物の中から選ばれる1種又は2種以上を金属換算で合計1〜20mg/m2含有することを特徴とするシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
(3)島状錫の下地層の露出部が、鋼板表面の任意の方向で測定した直線長さで20μm以上である部分が20個/mm2以下であることを特徴とする前記(2)記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板、
(4)島状錫による被覆面積率が60〜90%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板、
(5)全Sn付着量が、金属錫換算で300〜1500mg/m2であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
(6)最表層に化成処理皮膜を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板、
(7)化成処理皮膜が、金属Cr換算で2〜40mg/m2のCr(III)水和酸化物又は金属Cr層の一方又は両方であることを特徴とする前記(6)記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板である。
本発明の表面処理鋼板とすることで、従来の薄Snめっき鋼板と比べ、ワイヤーシーム溶接における溶接可能電流範囲を広くし、製造チャンス間のばらつき、単体毎のばらつきを少なくして、製缶メーカーにおける溶接トラブルによる生産効率の低下を最小限に抑えることに寄与するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する鋼板の材質には、特に制限を設ける必要はない。従来から缶用鋼板に使用されているアルミキルド鋼や低炭素鋼等の成分系の鋼板でよい。また、鋼板の厚みや硬度は、ユーザーが使用目的によって指定するものであって、それに従えばよい。近年、飲料缶用鋼板は、一般に薄くなる傾向があり、溶接缶では0.18mm程度の厚みのものが多く使用されている。また、薄手化に伴って、調質度T−5CA、あるいはDR−8やDR−9と言った硬質材が一般的になっている。
本発明者らの検討の結果、鋼板表面に微細な島状Snが緻密に分布していて、鋼板面の任意の方向の直線長さで20μm以上の下地層表面の露出部が少ないほど、良好なワイヤーシーム溶接性が得られることが判明した。直線長さで20μm以上の下地層の露出部は、1mm2当り0〜20個であることが必要であり、より好ましくは0〜10個、さらに好ましくは0〜5個である。20個を超えると、溶接中にチリと呼ばれる溶融金属の飛散が頻発するようになる。
ここで、島状Snとは、不連続な島のような形態をとっている金属Snのことを意味し、SEM(走査型電子顕微鏡)による像で丸みを帯びた明るい部分として確認することが容易である。例えば、加速電圧10kV、倍率1000倍のSEMで、鋼板表面を1試料につき無作為に100視野選んで観察し、直線長さ20μm以上の下地露出部を計数するとよい。
前述のように、直線長さで20μm以上の下地層の露出部が多くなると、溶接時にチリが発生し易いことが判明したが、その理由は、以下のように考えられる。缶胴のワイヤーシーム溶接が行われる際、ごく初期の溶接電流は金属Snに流れるが、軟らかいため、電極輪による加圧で変形し、十分な通電路を確保できる。温度の上昇と共に金属Snは溶融し、また、加圧されて溶接部から大部分が排除されて、鋼板−鋼板間の接合が形成される。しかし、Snに被覆されていなかった下地層である鋼板面又は下地めっき面の露出部が長ければ、初期の溶接電流がその部分にも流れることになる。
この下地層は、金属Snとは異なり、硬い合金層であるため、変形し難く、また、電気抵抗も高いため、十分な通電路が確保されず、狭い領域に溶接電流が流れて、局部的に異常発熱する。これが、チリの原因であると考えられる。下地層表面の露出部が、鋼板面の任意の方向での直線長さで20μm以上である場合にこの現象が発生し、20μm未満の露出部からは、チリは発生しない。
鋼板面の任意の方向で測定した下地層表面の露出部が、直線長さで50μm以上である部分は、1個/mm2でもあると、溶接性の低下が著しくなる。島状Snは、EPMA(エレクトロンプローブ・マイクロアナリシス)を用いて定義することも可能である。加速電圧15kVで鋼板表面のSnをマッピングし、Snの濃度が30%以上である丸みを帯びた部分を島状Snとする。Snの濃度が0%を超え、30%未満の部分は厚みのある金属Snではなく、殆どが下地層と合金化したSnと判断される。
金属Sn層の下地層として、Ni量で2〜100mg/m2のFe−Ni合金層又はFe−Ni−Sn合金層を有することが必要である。合金層を付与せずに鋼板表面に島状Snを形成すると、島状Snはさまざまな形状を取ってしまい、前記の特徴を持った島状Snの分布を得るのが困難である。また、リフロー処理前の下地層が合金層でなく、金属Ni層である場合、リフロー処理時にNi−Sn合金化が著しく進行し、通常のリフロー処理条件では前記の金属Sn量を残留させることが困難である。
合金層量をNi量で2〜100mg/m2に限定したのは、2mg/m2未満では、Snのリフローで形成する島状Snの形状に対する効果が認められないためであり、一方、100mg/m2を超えても、島状Snの形状・分布に対する効果が飽和することに加え、コスト的にも不利になるためである。Fe−Ni合金層又はFe−Ni−Sn合金層には、Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を金属換算で合計1〜20mg/m2含有することが必要である。Mo化合物として、酸化モリブデン(VI)、モリブデン(VI)酸ニッケル等、W化合物として、酸化タングステン(VI)、タングステン酸(VI)ニッケル等を挙げることができる。
これらMo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有するFe−Ni合金層は、後述する電解液中で、1〜5A/dm2以下の電流密度で電解処理することで得られるが、この範囲で電流密度の高い方から順に、モリブデンの場合、金属Mo、酸化モリブデン(VI)、モリブデン(VI)酸ニッケルの含有率が高く、タングステンの場合、金属W、酸化タングステン(VI)、タングステン(VI)酸ニッケルの含有率が高くなる。
このようにして得られる下地層によって、リフロー時にSnが適当にはじかれて凝集し、細かい島状Snとなり、また、島状Snの分布が均一になって、直線長さが20μm以上である下地露出部が生じ難くなる。但し、1mg/m2未満のMo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上の含有量では、島状Snの形態・分布に対するこれらの添加の効果が明確に現われない。一方、Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上の含有量が20mg/m2を超えると、Snがリフロー処理で島状になり難く、密着性が不十分なまま広がってしまう。なお、Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有するFe−Ni−Sn合金層は、リフロー処理でSnと下地層とが合金化することによって生じる層である。
Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有したFe−Ni合金層又はFe−Ni−Sn合金層によって、Snが細かい島状となり、また、島状Snの分布が均一になる理由の詳細は不明であるが、Mo、Mo化合物、W、W化合物とSnとの濡れ性が低いためであると推定される。鋼板表面に、Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有したFe−Ni合金層を形成する方法は限定しないが、簡便さ、経済性、また、既存の製造ラインの構造上、電気めっきによる方法を採るのが好ましく、以下の例を挙げることができる。
Niイオンを5〜50g/L、鉄(II)イオンを2〜20g/L、モリブデン(VI)酸イオンを0.05〜4g/L、クエン酸イオンを20〜100g/L、支持電解質として硫酸ナトリウムを20〜150g/L含有するpH4〜6の水溶液を20〜60℃に保ち、この浴に脱脂・酸先した鋼板を浸漬して電流密度1〜5A/dm2で陰極電解処理する。
この方法によって、Mo、Mo化合物の一方又は両方を含有するFe−Ni合金層が形成される。同様に、Niイオンを5〜50g/L、鉄(II)イオンを2〜20g/L、タングステン(VI)酸イオンを0.05〜4g/L、クエン酸イオンを20〜100g/L、支持電解質として硫酸ナトリウムを20〜150g/L含有するpH4〜6の水溶液を20〜60℃に保ち、この浴に脱脂・酸洗した鋼板を浸漬して、電流密度1〜5A/dm2で陰極電解処理する。この方法によって、W、W化合物の一方又は両方を含有するFe−Ni合金層が形成される。さらに、この上層にSnめっき後、リフロー処理を施すことで、Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有するFe−Ni−Sn合金層も形成される。
Mo、Mo化合物、W、W化合物の1種又は2種以上を含有するFe−Ni−Sn合金層中には、不純物として微量のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト等の金属又は金属塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、シリカ等を含有してもよい。島状Snによる被覆面積率は、60〜90%であることが望ましい。60%未満では、下地層の露出部分が多くなり、直線長さが20μm以上である露出部をなくすことが困難である。一方、90%を超えると、塗料や樹脂フィルム等、有機皮膜の密着性不良の原因となる。よく知られているように、Snの酸化物層は凝集破壊し易いため、下地層でそれらの密着性を確保する必要があるためである。
鋼板表面には、全Sn付着量として、300〜1500mg/m2のSnを有することが好ましい。300mg/m2より少ないと、Snをどのような形態にしても初期溶接電流は十分に安定にはならず、スプラッシュが発生し易くなって、望ましい高速ワイヤーシーム溶接性が得られない。一方、1500mg/m2を超えても、溶接性の向上が殆どなくなるばかりでなく、鋼板表面がほぼSnに覆われてしまうため、塗料や樹脂フィルムの密着性不良の原因となる。性能上のメリットがない高付着量のSnめっきは、経済的な理由からも避けるべきである。
露出した下地Fe−Ni合金層や島状Sn層上の最表層には、化成処理皮膜を有することが好ましい。化成処理皮膜がないと、塗料、樹脂フィルム等の有機化合物層の密着力を確保するのが難しい。
前記化成処理皮膜として、金属Cr換算で2〜40mg/m2のCr(III)水和酸化物又は金属Cr層の一方又は両方が適当である。2mg/m2未満では、化成処理付与による塗膜密着性向上の効果が見られない。一方、40mg/m2を超えても、塗膜密着性向上効果は飽和してしまうばかりでなく、接触電気抵抗が高くなり、シーム溶接性を低下させてしまう。
化成処理皮膜を積層させる方法は限定しないが、例として、無水クロム酸50〜150g/L、硫酸イオン0.01〜0.2g/L、ケイフッ化ナトリウム1〜5g/L、フッ化アンモニウム0.1〜2g/Lを含有する。40〜60℃の浴で、電流密度30〜60A/dm2で陰極電解するとよい。前記の島状Snは、Snめっき後、リフロー処理を施すことで形成させるものである。また、フラックス作用のあるSnめっき浴の有機化合物成分を十分に水洗してから、リフロー処理することによって、Snを島状に分布させることができる。
リフロー処理の方法は、特に限定しないが、電気抵抗加熱や高周波誘導加熱により、又は、それらを組み合わせて行うのが、昇温速度と到達板温の安定性、また、経済性の点から好ましい。これらの方法によって鋼板をSnの融点232℃以上に加熱した後、水でクエンチする。水の温度は、常温から80℃くらいまでが扱い易い。クエンチを行わないと、錫の合金化が進行してしまい、Fe−Sn合金層又はFe−Ni−Sn合金層が厚くなって、脆い皮膜となってしまうし、シーム溶接性の確保するのに必要な金属Snを残存させるのが困難になる。また、溶融したSnがロールと接触してロールにビルドアップしたり、製品外観を損なったりと、好ましくない事態が生じてしまう。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍、次いで調質圧延して得た板厚0.18mm、調質度T−5CAの鋼帯を使用した。めっき前処理として、5mass%水酸化ナトリウム溶液中で電解脱脂した後、希硫酸中で酸洗した。前処理した鋼帯を、下記組成のFe−Ni−Mo合金めっき浴中で陰極電解処理した。浴温度を40℃とし、電流密度3A/dm2で電解時間を振って電解処理し、Mo及び酸化モリブデン(VI)を含有するFe−Ni合金めっき層を得た。
Fe−Ni−Mo合金めっき浴組成
硫酸ニッケル・6水和物 : 50g/L
硫酸鉄(II)・7水和物 : 20g/L
クエン酸三ナトリウム : 75g/L
モリブデン酸ナトリウム・2水和物 : 0〜2g/L
硫酸ナトリウム : 70g/L
pH5
同様に、前処理した鋼帯を、下記組成のFe−Ni−W合金めっき浴中で陰極電解処理した。浴温度を40℃とし、電流密度3A/dm2で電解時間を振って電解処理し、W及び酸化タングステン(VI)を含有するFe−Ni合金めっき層を得た。
Fe−Ni−W合金めっき浴組成
硫酸ニッケル・6水和物 : 50g/L
硫酸鉄(II)・7水和物 : 20g/L
クエン酸三ナトリウム : 75g/L
タングステン酸ナトリウム・2水和物 : 0〜2g/L
硫酸ナトリウム : 70g/L
pH5
同様に、前処理した鋼帯を、下記組成のFe−Ni−Mo−W合金めっき浴中で陰極電解処理した。浴温度を40℃とし、電流密度3A/dm2で電解時間を振って電解処理し、Mo、酸化モリブデン(VI)、W、酸化タングステン(VI)を含有するFe−Ni合金めっき層を得た。
Fe−Ni−Mo−W合金めっき浴組成
硫酸ニッケル・6水和物 : 50g/L
硫酸鉄(II)・7水和物 : 20g/L
クエン酸三ナトリウム : 75g/L
モリブデン酸ナトリウム・2水和物 : 0.3〜1.5g/L
タングステン酸ナトリウム・2水和物 : 0.3〜1.5g/L
硫酸ナトリウム : 70g/L
pH5
次いで、フェロスタン浴を用いて電気Snめっきを施した。めっき浴組成は、Snイオン:20g/L、フェノールスルホン酸イオン:75g/L、界面活性剤:5g/L、浴温度を43℃とし、電流密度20A/dm2で電解した。所定のSnめっき量となるよう、電解時間を調節した。Snめっき後は水洗し、ローラーで水切りをした後、冷風乾燥し、通電加熱によって10秒で250℃まで昇温させ、直ちに水冷した。この処理によって、Snが溶融、凝集して島状Snが形成されると共に、Snの一部は下地層と合金化して、Mo、Mo化合物又はW、W化合物を含有するFe−Ni−Sn層が形成された。リフロー処理後、化成処理としてクロム酸処理を施した。浴組成は無水クロム酸:80g/L、硫酸イオン:0.05g/L、ケイフッ化ナトリウム:2.5g/L、フッ化アンモニウム:0.5g/L、浴温度を50℃とし、電流密度30A/dm2で陰極電解した。
上記処理材について、以下に示す(A)〜(D)の各項目について評価試験を実施した。
(A)島状Sn分布:加速電圧10kV、倍率1000倍で鋼板表面のSEM観察を行った。1試料につき、無作為に選んだ100視野を観察し、直線長さ20μm以上の下地露出部を計数した。なお、1視野のサイズは、87μm×115μm(10000μm2)であり、100視野は1mm2に相当する。島状Snによる表面の被覆率は、上記SEM像の内5視野を用いてコンピューターで画像解析して求めた。即ち、画像を明度によって二値化処理し、鋼板表面の疵や粗度等の凸部によって明度が高くなっている部分を除いた白色部分を、錫で被覆された部分として面積率を算出した。
(B)ワイヤーシーム溶接性:溶接予定部を除いてエポキシ・フェノール塗料を乾燥質量で50mg/m2塗布し、280℃で15秒焼付けを施した評価材(n=10)に、以下の溶接条件でワイヤーシーム溶接を行い、評価した。ラップ代0.4mm、溶接ワイヤースピード80m/分で溶接し、十分な溶接強度が得られる最小電流値と、チリ等の溶接欠陥が目立ち始める最大電流値とからなる適正電流範囲(ACR)の広さを評価した。また、このようにして求めた適性電流範囲の中央値に溶接電流を設定して、千缶溶接し、溶接不良(チリ発生)を生じた缶を計数した。不良缶は0が最も望ましいが、5缶未満を合格レベルとした。
(C)フィルム密着性:評価材に、予めエポキシ接着剤を2μm塗布した厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを、230℃でラミネートした後、地鉄に達するまでクロスカットを入れ、速やかに240℃に加熱し、クロスカット中央部に5kg/cm2の空気ガスを垂直に吹きつけ、フィルムの剥離状況を評価した。全く剥離が認められなかったものを◎(非常に良好)、カット部から0.5mm以下の剥離が認められたものを○(良好)、カット部から0.5mmを超える剥離が認められたものを×(不良)とした。なお、○以上をフィルム密着性の合格レベルと判断した。
(D)耐食性:評価材の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムをラミネートし、地鉄に達するまでクロスカットを入れた後、1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムからなる55℃の試験液中に、大気開放下で96時間浸漬した。水洗・乾燥後、速やかにスクラッチ部及び平面部をテープで剥離して、スクラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング腐食及び平面部のフィルム剥離状況を観察して、耐食性を評価した。テープ剥離も腐食も認められないものを◎(非常に良好)、スクラッチ部から0.4mm未満のテープ剥離又は目視で認められない僅かな腐食の一方又は両方が認められたものを○(良好)、スクラッチ部から0.4mm以上、1mm以下のテープ剥離又は目視で認められる小さい腐食の一方又は両方が認められたものを△(やや不良)とした。
以上の性能評価結果から、総合評価を◎(非常に良好)、○(良好)、△(やや不良)、×(不良)の4段階に分類し、◎、○を合格レベルとした。上記評価結果を表1に示す。
Figure 0004452198
表1に示した本発明例No.1〜20は、いずれも上記(A)〜(D)の評価項目を満足し、安定して良好な性能が得られた。
比較例No.21は、Snめっき下地のFe−Ni合金めっき層にMo、Wのいずれも含有せず、島状Snの分布が疎であって、直線長さで20μm以上の下地露出部が非常に多い例である。10缶の溶接評価から得られたACRの中央値での千缶溶接試験では、チリの発生頻度が高かった。
比較例No.22は、Snめっき下地のFe−Ni合金めっき層にMo、Wのいずれも含有せず、Ni量も少なく、実質的に島状Snができていない例である。Snによる被覆面積率が高いが、下地層露出部の直線長さは長い部分が多かった。ACRは400Aあるが、ACRの中央値での千缶溶接試験では、チリの発生頻度が高かった。また、Snによる被覆面積率が高く、十分なフィルム密着性も得られなかった。
比較例No.23は、下地合金めっき層にMoを含有し、微細な島状Snが得られているが、Mo含有量が適切でなく、直線長さで20μm以上の下地露出部が散見された例である。ACRの中央値での千缶溶接試験で、チリの発生が散発した。
比較例No.24は、下地合金めっき層に含有されるMo量が過剰であり、Snがリフロー時に下地層との密着性が不十分なまま広がってしまい、微細な島状にならなかった例である。ACRが狭く、フィルム密着性、耐食性も劣っていた。
比較例No.25は、Mo量が過剰で、Sn付着量が少なく、直線長さで20μm以上の下地露出部が多い例である。ACRが不足で、ACRの中央値での千缶溶接試験で、チリの発生が散発した。耐食性も劣っていた。
比較例No.26は、下地合金めっき層にMoとWを含有するが、量が過剰であり、Snがリフロー時に下地層との密着性が不十分なまま広がってしまい、微細な島状にならなかった例である。ACRが狭く、フィルム密着性、耐食性も劣っていた。
比較例No.27は、下地合金めっき層にWを含有し、微細な島状Snが得られているが、W含有量が適切でなく、直線長さで20μm以上の下地露出部が散見された例である。ACRの中央値での千缶溶接試験で、チリの発生が散発した。
比較例No.28は、下地合金めっき層に含有されるW量が過剰であり、Snがリフロー時に下地層との密着性が不十分なまま広がってしまい、微細な島状にならなかった例である。ACRが狭く、フィルム密着性、耐食性も劣っていた。
比較例No.29は、W量が過剰で、Sn付着量が少なく、直線長さで20μm以上の下地露出部が多い例である。ACRが不足で、ACRの中央値での千缶溶接試験で、チリの発生が散発した。耐食性も劣っていた。
なお、本発明例No.1〜20のいずれのサンプルも、鋼板面の任意の方向で測定した下地層表面の露出部が、直線長さで50μm以上である部分は見当たらなかった。しかし、比較例No.21、22、25、26、29のサンプルでは、直線長さで50μm以上である部分が散見された。


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (7)

  1. 金属状態の島状錫を有する表面処理鋼板であって、島状錫の下地層の露出部が、鋼板表面の任意の方向の直線長さで20μm以上である部分が20個/mm2以下であることを特徴とするシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  2. 金属状態の島状錫を有する表面処理鋼板であって、島状錫の下地層が、Ni量として2〜100mg/m2のFe−Ni合金層又はFe−Ni−Sn合金層であって、該合金層が、さらにMo、Mo化合物、W、W化合物の中から選ばれる1種又は2種以上を金属換算で合計1〜20mg/m2含有することを特徴とするシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  3. 島状錫の下地層の露出部が、鋼板表面の任意の方向で測定した直線長さで20μm以上である部分が20個/mm2以下であることを特徴とする請求項2記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  4. 島状錫による被覆面積率が60〜90%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  5. 全錫付着量が、金属錫換算で300〜1500mg/m2であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  6. 最表層に化成処理皮膜を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
  7. 化成処理皮膜が、金属Cr換算で2〜40mg/m2のCr(III)水和酸化物又は金属Cr層の一方又は両方であることを特徴とする請求項6記載のシーム溶接性に優れた表面処理鋼板。
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